産業用太陽光発電の収支シミュレーション方法|計算方法やツール、注意点も解説

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

産業用太陽光発電の収支シミュレーション方法|計算方法やツール、注意点も解説

産業用太陽光発電の導入を考えている場合、実際にどのような収支になるのか気になる人も多いでしょう。この記事では、産業用太陽光発電のシミュレーションを行いたい人に向けて、シミュレーション方法や必要な項目、計算方法などを解説します。注意点などについても解説するため、ぜひシミュレーションに役立ててください。

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産業用太陽光発電のシミュレーション方法

産業用太陽光発電の収支をシミュレーションする方法は大きく分けて3つあります。以下では、それぞれのシミュレーション方法について解説します。

 

自身でシミュレーションを行う

産業用太陽光発電のシミュレーションは自分で行うことも可能です。自分でシミュレーションする場合には、エクセルや計算機を使って手計算を行います。詳しい計算方法は後述するため、自身でシミュレーションしてみたい場合は、そちらを参考にしてください。

この方法はお金がかからずできるのですが、膨大な調査計算の手間はかかります。発電量のみの計算であればみなさんやられていると思いますが、ここに負荷側、電力消費量の計算、自家消費量や余剰電力の推計、さらに蓄電池を設置した場合のピークカットの計算など、もはやエクセルや計算機では不可能に近い時代になりつつあります。

さらに、kWやkWhの計算のみならず、需要家に提案する立場の方にとっては「いくら電気代が削減できるのか?」という視点でも計算するかと思います。その場合は、電気料金プラン毎の単価(基本料金+電力料金+燃料調整費単価+再エネ賦課金)を調べたり、既契約の情報を聞き出したりする手間もかかりますので、なかなかアナログでは難しい状況です。

 

太陽光発電の設置業者やパネルメーカーに依頼する

太陽光発電の設置業者、もしくはパネルメーカーにシミュレーションを依頼することも可能です。設置業者などでは、さまざまな条件でシミュレーションしてくれるため、多くの情報が得られます。ただし、すべてを鵜呑みにしないようにしましょう。手計算でのシミュレーション結果と比較して確認するなどの工夫が必要です。

メーカーや商社では太陽光発電や太陽光導入時の経済効果のシミュレーションまでは簡易なレポートを提示してくれるところが多いと思います。が、こちらも昨今の自家消費型太陽光、第三者保有型のPPA/TPOモデルの需要増や引き合い増、および材料・在庫不足などさまざまな要因で、「シミュレーションをもらえるまでに1ヶ月かかる。2ヶ月かかる」といった声も販売店、施工店の皆様からお聞きするケースが増えてきました。

当社調べでは、月10件以上シミュレーションされるお客様の場合だと相当な負荷になっていると思います。月30件を超えると、手元で自社で計算、シミュレーションできる環境を作っておかないと、シミュレーション作業そのものに忙殺されて、肝心要の需要家目線での設備提案や設計の仕事に支障をきたすケースも出ているようです。ここも悩ましいところです。

シミュレーションツールを導入する

手計算でのシミュレーションが難しい場合には、シミュレーションツールを導入してもよいでしょう。近年では、太陽光発電のシミュレーションツールやソフトなどが多数開発されており、ツールを利用することで手軽に収支のシミュレーションが可能です。シミュレーションできるツールとしては以下のサイトが挙げられます。

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産業用自家消費型太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションツール「エネがえるBiz」
https://biz.enegaeru.com/

 

産業用太陽光発電のシミュレーションに必要な項目

産業用太陽光発電のシミュレーションを行う場合には、5つの要素が重要です。ここでは、シミュレーションに必要な5項目を解説します。

 

太陽光パネルの設置地域や設置角度

設置する地域によって、日射量は大きく変わります。また、太陽光の入射角によって発電量も変動するため、シミュレーションの際には太陽光パネルを設置する地域や設置角度などを必ず調べておきましょう。シミュレーションにおいて、太陽光パネルの設置角度や方角、地域といった周辺環境は重要な情報になります。

 

太陽光パネルの種類

太陽光パネルと一口にいっても、さまざまな種類があります。たとえば、シリコン系や化合物系など複数の種類があり、どの太陽光パネルを選ぶかによって発電量も変動します。そのため、シミュレーションの際には種類を把握して、シミュレーション内容に反映させましょう。

 

売電単価と売電期間

産業用太陽光発電の場合、FIT制度(固定買取価格制度)を活用した売電が可能です。FIT制度は固定の売電単価で電力会社に電力を買い取ってもらえる制度です。売電単価は毎年更新され、FITに申請した年によって変動するため、確認しておくとよいでしょう。2022年度の売電価格は以下のとおりです。

 

・50kW以上:10円

・10kW以上50kW未満:11円

 

固定の売電価格で売電できる期間は無期限ではなく、定められた期間があります。産業用太陽光発電の場合には、20年です。

エネがえるBizの場合は、非FIT・自家消費型を想定しているため売電単価は取り扱いません。

初期費用

太陽光発電の新規設置には、本体と設置工事費用がかかります。初期費用は、設置業者や出力、本体価格などによっても異なるため、事前に正確な費用を把握することが難しくなっています。しかし、経済産業省では一般的な費用について確認できる資料を公開しているため、チェックしておきましょう。

 

※参考:調達価格等算定委員会「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」について|経済産業省

 

維持費用

産業用太陽光発電では、初期費用だけではなく維持費用もかかります。産業用太陽光発電でかかる維持費用としては、以下のような内容が挙げられます。

 

・メンテナンス費用

・固定資産税

・保険料など

 

初期費用と同様に、維持費用の正確な価格は把握しにくくなっていますが、経済産業省が公開している一般的な費用についての資料で確認可能です。

 

※参考:調達価格等算定委員会「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」について|経済産業省

 

発電量から年間収支を計算する方法

上記の項目が分かっていれば、年間予想発電量の計算が可能です。年間予想発電量を計算した上で、年間の収支を計算しましょう。以下では、年間予想発電量、年間収支の計算方法について解説します。

 

年間の発電量を計算

年間の発電量は、「出力×設置予定場所の日射量×損失係数×365日」で算出できます。日射量については、NEDOが公開しているデータベースなどで確認しましょう。損失係数とは、パワーコンディショナーや各設備の損失などで構成された項目で、一般的に80%程度だといわれています。

 

出力20kW、設置予定場所の日射量5kWh/㎡、損失係数80%と仮定して計算してみましょう。計算式は「20kW×5kWh/㎡×80%×365日」となり、年間発電量は29,200kWhです。

※エネがえるASP/エネがえるBizでは、発電量推計にNEDO METPV20を利用しています。

年間発電量をもとに年間収支を計算

年間収支は、「売電収入-維持費用-初期費用(1年分)」という計算式で算出可能です。売電収入は、前述した年間発電量をもとに計算し、「年間発電量×売電価格」で求められます。維持費用と初期費用は、経済産業省が公開しているデータをもとにします。

 

年間発電量が29,200kWh、売電価格が11円として売電収入を算出してみましょう。「29,200kWh×11円」となり、売電収入は32万1,200円となります。維持費用を5万円、初期費用を12万円と仮定した場合、32万1,200円-5万円-12万円」という計算式となり、年間収支は15万1,200円です。

 

産業用太陽光発電のシミュレーションでは利回りにも注目

太陽光発電では、利回りも重要です。太陽光発電における利回りとは、初期費用や維持費用に対する売電収益の割合のことであり、表面利回りと実質利回りの2種類があります。ここでは、表面利回り・実質利回りそれぞれについて解説します。

 

表面利回り

表面利回りとは、維持費用を含めずに収益の割合を計算するものです。表面利回りは、「年間の売電収入÷初期費用×100」という計算式で算出できます。年間の売電収入が32万円、初期費用が300万円だとしましょう。「32万÷600万×100」となるため、利回りは10.6%程度になります。

 

利回りは高ければ高いほどよいとされており、利回りが高ければ効率的に収益を得られます。ただし、表面利回りの場合は維持費用を含めていません。そのため、大まかな収益指標を表すものであり、利回りも高めに算出されます。

 

実質利回り

実質利回りとは、表面利回りでは含めなかった維持費用も含めて収益の割合を計算するものです。「(年間の売電収入-年間の維持費用)÷初期費用×100」という計算式で算出できます。実質利回りは、維持費用も含めるため表面利回りよりも2%程度低くなるとされています。

 

たとえば、年間売電収入32万円、年間維持費5万円、初期費用300万円の場合、「(32万-5万)÷600万×100」となるため、実質利回りは9%です。すべての費用を考慮した利回りで、細かく利回りを求める場合に向いています。

 

産業用太陽光発電のシミュレーションをするときの注意点

産業用太陽光発電のシミュレーションをする際には、注意したいポイントがあります。以下では、4つの注意点について解説します。

 

発電量は日射量に左右される

太陽光発電は、太陽光をエネルギーとして電力を発電するため、発電量は日射量に比例して増減します。先述したように、日射量の目安はNEDOが公開しているデータベースなどで確認できますが、土地の角度や形状によっても日射量が異なります。そのため、太陽光を遮るような木や山などに囲まれていないか、しっかりと確認しましょう。

※エネがえるBizの場合は、NEDO METPV20:全国800地点以上の地域別の過去日射量DB(時間別)を参照して発電量の推計を行っております。

自然災害による故障リスクがある

自然災害によって、産業用発電が故障してしまうリスクもあります。たとえば、地震で太陽光パネルが損傷した、台風や落雷でパワーコンディショナーが故障したなどの理由で、発電できなくなる可能性もあります。そのため、災害による破損も想定してシミュレーションし、予算を確保しておくと安心です。

 

経年劣化により発電効率低下のおそれがある

メンテナンスをし丁寧に取り扱っていたとしても、太陽光発電システムは経年劣化します。10年20年と経つごとに徐々に発電効率が下がります。また、太陽光パネルの修理や交換などが必要になるケースがあり、費用がかかる場合も多いです。シミュレーションの際には、部品交換の費用やパネルの劣化率なども考慮しておくとよいでしょう。

 

出力10kW以上50kW未満の産業用太陽光発電では発電量の70%しか売電できない

出力10kW以上50kW未満の産業用太陽光発電の場合、発電した電力をすべて売電できるわけではありません。2020年4月以降に産業用太陽光発電を新設し、FIT申請した場合は発電した電力の内30%は自家消費に回さなければいけないという要件があります。そのため、発電量の70%しか売電できません。

 

このように、出力10kW以上50kW未満の産業用太陽光発電の新設では、発電した電力すべてを売電できるわけではないため、収益性の低下が予想されます。

 

融資の際の金利も考慮する必要がある

出力50kW以上の産業用太陽光発電の場合は、全量買取の対象です。しかし、出力が50kW以上の太陽光発電を設置する場合は多額の資金が必要になるため、金融機関から融資してもらい、太陽光発電を設置するケースが一般的です。借入先やタイミングなどによって金利に差が出るため、金利が収支シミュレーションに大きな影響を与える点にも注意しましょう。

 

まとめ

産業用太陽光発電の収支シミュレーションを行う場合には、設置場所や日射量、太陽光パネルの種類や売電価格、維持費用や初期費用などのデータが必要です。手計算でシミュレーションすることも可能ですが、シミュレーションツールを利用する方法もあります。

 

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●執筆者情報

会社名:国際航業株式会社

部署名:公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

執筆者名:樋口 悟

執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。
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