目次
- 1 ICAP世界排出量取引レポート2025 日本のGX-ETSが学ぶべきグローバル戦略と本質的課題
- 2 序章:気候変動政策の「世界標準」へ – 拡大する排出量取引制度(ETS)の最前線
- 3 第1章:【ファクトベース】ICAPレポート2025が描き出す世界のETSランドスケープ
- 4 第2章:ETSの心臓部を理解する – 「キャップ&トレード」のメカニズムと経済合理性
- 5 第3章:成熟するETSは何を目指すか – EUとカリフォルニアの先進事例
- 6 第4章:アジア・新興国の挑戦 – 中国・韓国に学ぶ「現実解」
- 7 第5章:国境を超える炭素価格 – カーボンリーケージとCBAMという「盾」
- 8 第6章:価格から投資へ – ETS収入がGXを加速する仕組み
- 9 第7章:日本の岐路 – GX-ETSと成長志向型カーボンプライシングの現在地
- 10 第8章:【本質分析】世界のETSから浮かび上がる日本の根源的課題
- 11 第9章:【政策提言】日本のGXを成功に導く戦略的インサイト
- 12 結論:適応し進化する制度こそが、日本の脱炭素を加速する
ICAP世界排出量取引レポート2025 日本のGX-ETSが学ぶべきグローバル戦略と本質的課題
序章:気候変動政策の「世界標準」へ – 拡大する排出量取引制度(ETS)の最前線
気候変動という人類共通の課題に対し、世界は今、経済と環境を統合する新たな政策パラダイムへと大きく舵を切っている。その中核をなすのが、排出量取引制度(Emissions Trading System, ETS)である。
国際炭素行動パートナーシップ(ICAP)が発行した最新の年次報告書「Emissions Trading Worldwide – ICAP Status Report 2025」は、このETSがもはや一部の先進国における実験的な政策ではなく、グローバルな気候変動対策の「世界標準」としての地位を確立しつつある現実を明確に示している
本レポートの中心的なメッセージは、ETSが量的な拡大だけでなく、質的な深化と洗練のフェーズに突入したことにある。2025年現在、世界で稼働中のETSは38制度に達し、さらに20制度が開発・検討段階にある。
これらを合わせると、世界の温室効果ガス(GHG)総排出量の実に23%が、何らかの形で炭素に価格が付けられる市場メカニズムの下に置かれていることになる
今、なぜETSがこれほどまでに世界の潮流となっているのか。その理由は、ETSが単なる環境規制ではなく、経済成長、産業競争力、エネルギー安全保障といった国家戦略の根幹を統合するプラットフォームとして機能するからに他ならない。排出量に上限(キャップ)を設定することで環境目標の達成を確実にし、市場での排出枠取引(トレード)を認めることで最も経済合理性の高い削減を促す。
このメカニズムは、政府が未来への明確なシグナルを発し、民間企業のイノベーションと投資を正しい方向へと導くための羅針盤となる。
本稿は、この世界的な潮流と、まさにその導入の途上にある日本の「成長志向型カーボンプライシング構想」およびその中核をなすGX-ETSとの間に、決定的に重要な橋を架けることを目的とする。
ICAPレポート2025の詳細な分析を通じて、世界のETSが直面する課題、乗り越えてきた困難、そして生み出してきた革新的な解決策を解き明かす。これにより、日本の政策担当者、産業界のリーダー、そして研究者が、自国の制度設計を世界のベストプラクティスに照らしてベンチマーキングし、欧州連合(EU)の炭素国境調整メカニズム(CBAM)のような将来の外部環境変化を的確に予測し、戦略的に対応するための知見を提供することを目指す。
世界のETSの動向を深く観察すると、一つの重要な分岐が見えてくる。
EU-ETSのような成熟した制度が、より野心的な目標(キャップの引き締め、対象セクターの拡大)を追求し、制度の「深化」を目指しているのに対し、中国やブラジル、インドといった新興国は、自国の経済発展段階や産業構造に合わせた「適応」的な制度設計を模索している
例えば、経済成長と排出量の完全なデカップリングが未達の国々では、総排出量に上限を設ける「絶対量キャップ」ではなく、生産量あたりの排出原単位を目標とする「原単位方式」が現実的な出発点として採用されている。
これは、ETSが画一的な青写真から、各国の固有の状況に応じてカスタマイズ可能な柔軟な政策フレームワークへと進化したことを示している。日本は、成熟した経済と、国際競争力に敏感な重厚長大な産業構造を併せ持つという、両者の中間的な特性を持つ。
したがって、日本が学ぶべきは、単一のモデルではない。EUが示す野心と市場安定化メカニズムの洗練、そして韓国や中国が示す産業競争力への配慮と現実的なアプローチ、その両方から複眼的な視点で洞察を抽出し、自らの進むべき道を設計しなければならないのである。本稿は、そのための詳細かつ戦略的な地図を提供するものである。
第1章:【ファクトベース】ICAPレポート2025が描き出す世界のETSランドスケープ
ICAP Status Report 2025は、データとファクトに基づき、世界の排出量取引制度が拡大と進化のダイナミズムの中にあることを明確に示している。気候変動対策における市場メカニズムの役割が、かつてないほど重要になっている現状を、具体的な数値が裏付けている。
世界のETSマップと最新統計
2025年時点での世界のETSの概観は、以下の通りである。
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稼働中の制度数: 全世界で38のETSが稼働しており、気候変動対策の主要な政策ツールとして定着している
。2 -
開発・検討中の制度数: さらに20の制度が開発または検討段階にあり、この政策が今後さらに広がりを見せることを示唆している
。2 -
GHG排出量カバー率: これらの制度がカバーするGHG排出量は、世界全体の23%に達する
。これは前年のデータから4パーセントポイントの上昇であり2 、カーボンプライシングの影響範囲が着実に拡大していることを示している。5 -
GDPカバー率: ETSを導入している国・地域は、世界のGDPの65%を占めており、経済の主要プレイヤーがこのメカニズムを採用していることがわかる
。5
世界が示す二つの大きな潮流
ICAPレポートは、現在のETSの発展における二つの主要なトレンドを浮き彫りにしている。
-
成熟市場の「深化」: EUや英国、カリフォルニア州といった、ETSの導入で先行してきた地域では、制度の野心を引き上げるための改革が進んでいる。具体的には、対象セクターの拡大(例:海運、建築・道路輸送)、排出上限(キャップ)の削減ペース加速、そして無償排出枠の段階的廃止といった措置が取られている
。これは、ETSをより強力な脱炭素化のドライバーとするための動きである。1 -
新興国の台頭と「適応」: 第二の波は、ブラジル、インド、インドネシア、トルコ、ベトナムといった新興国によって牽引されている
。これらの国々では、自国の経済状況や産業構造に合わせた革新的な制度設計が模索されている。多くの場合、国内のクレジット創出メカニズム(オフセット)との連携が重視されており、柔軟な制度運用を目指している点が特徴である。特に、中国が電力セクターに加えて鉄鋼、セメント、アルミ精錬へとETSを拡大したことは、世界のカバー率を約5%(3 GtCO₂e)押し上げるほどの大きなインパクトを持つ1 。2
これらの動きの背景には、各国が掲げる「ネットゼロ」目標がある。長期的な脱炭素化というゴールが、ETSの制度設計に強力な影響を与え、より野心的で長期的な価格シグナルを生み出す方向へと改革を促しているのである
表1:世界の主要排出量取引制度:2025年スナップショット | ||||||
地域/国 | 制度名 | ステータス | GHGカバー率(国・地域内) | 主要対象セクター | 配分方法(主流) | 直近の排出枠価格(USD/tCO2e) |
EU | EU-ETS | 稼働中 | 約40% | 発電、産業、航空、海運 | オークション |
約70.60 |
英国 | UK-ETS | 稼働中 | 約30% | 発電、産業、航空 | オークション | – |
カリフォルニア州 | Cap-and-Trade | 稼働中 | 約85% | 発電、産業、燃料供給 | オークション | – |
米国北東部 | RGGI | 稼働中 | – | 発電 | オークション | – |
中国 | National ETS | 稼働中 | 約60%以上 | 発電、鉄鋼、セメント、アルミ | 無償配分 |
約13.33 |
韓国 | K-ETS | 稼働中 | 約79% | 発電、産業、ビル、輸送 | 無償配分/オークション | – |
ニュージーランド | NZ-ETS | 稼働中 | 約50% | ほぼ全セクター | オークション | – |
ブラジル | – | 開発中 | – | 産業、エネルギー | – | – |
インド | – | 開発中 | – | エネルギー、産業 | – | – |
日本 | GX-ETS | 開発中(試行中) | – | (2026年より)大規模排出者 | 無償配分(当面) | – |
この表は、世界のETSがいかに多様な形で設計・運用されているかを一目で示している。EUのようなオークション主導の成熟市場から、中国のような無償配分・原単位方式でスタートした巨大市場まで、各国の選択は様々である。この多様性こそが、これから本格的な制度設計に臨む日本にとって、貴重な学びの源泉となる。
第2章:ETSの心臓部を理解する – 「キャップ&トレード」のメカニズムと経済合理性
排出量取引制度(ETS)を理解する上で、その核心にある「キャップ&トレード」という概念を把握することが不可欠である。この独創的なメカニズムは、環境保護という社会的な要請と、経済効率性という市場原理を巧みに融合させたものだ。
「キャップ&トレード」の基本原理
この制度を、限られた空間でのパーティーに例えてみよう。
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キャップ(Cap): 政府はまず、科学的知見に基づき、国全体あるいは特定の産業部門が一定期間内に排出できる温室効果ガスの総量の上限、すなわち「キャップ」を設定する。これは、パーティー会場の定員を決めるようなものだ。このキャップがあることで、排出総量が確実にその範囲内に収まるという「環境目標の確実性」が担保される
。8 -
排出枠(Allowances): 次に、政府はこのキャップに相当する総量の「排出枠」(アローアンス)を発行する。1排出枠は通常、1トンの二酸化炭素(CO2)を排出する権利に相当する。これは、パーティーの入場券のようなものである。
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トレード(Trade): 政府は、これらの排出枠を対象企業に割り当てる(無償で配分するか、オークションで販売する)。企業は、自社の排出量をカバーするだけの排出枠を保有しなければならない。ここで重要なのが「トレード」の仕組みだ。
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排出削減が比較的容易で、コストが低い企業は、自社の排出枠に余剰を生み出すことができる。この余った排出枠を、市場で他の企業に売却して利益を得ることができる
。9 -
一方、排出削減に多額のコストがかかる企業は、自社で無理に削減する代わりに、市場から不足分の排出枠を購入することで、コンプライアンス義務を果たすことができる
。10
-
この取引を通じて、社会全体として最もコストの低いところから排出削減が進むことになる。つまり、市場メカニズムが、最も効率的な排出削減方法を自動的に見つけ出すのである。これが「経済効率性」の源泉だ
メリットとデメリットの構造的分析
キャップ&トレードの仕組みは、多くの利点を持つ一方で、制度設計と運用における課題も内包している。
メリット
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環境目標の確実性: キャップによって排出総量が物理的に制限されるため、目標達成の確実性が高い
。10 -
経済効率性: 排出削減コストの低い企業がより多く削減し、そのインセンティブとして排出枠を売却できるため、社会全体の削減コストが最小化される
。10 -
企業への柔軟性: 企業は「自社で削減する」か「排出枠を購入する」かを選択でき、最もコスト効率の良い方法で目標達成が可能となる
。10 -
イノベーションの促進: 炭素に価格がつくことで、省エネ技術や低炭素技術への投資インセンティブが生まれ、長期的なイノベーションを促進する
。9
デメリットと課題
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価格の変動性: 排出枠の価格は、景気動向やエネルギー価格、技術革新の進展などによって大きく変動する可能性がある。価格が暴落すれば削減インセンティブが失われ、高騰すれば企業の経済的負担が過大になるリスクがある
。12 -
カーボンリーケージ: ある国・地域だけで厳しい排出規制を課すと、エネルギー多消費型産業が規制の緩い国・地域へ生産拠点を移転してしまい、結果として地球全体の排出量が減らない、あるいはかえって増加してしまう「炭素の漏洩」が懸念される
。10 -
制度設計の複雑さ: キャップの水準、排出枠の配分方法(無償か有償か、その比率はどうするか)、対象セクターの選定など、制度が有効に機能するためには、極めて精緻な設計が求められる。キャップが緩すぎれば効果がなく、厳しすぎれば経済を過度に制約してしまう
。12 -
市場の信頼性: 不正取引やデータ改ざんを防ぎ、市場の透明性と信頼性を確保するための厳格な監視体制が不可欠である
。12
ETSを支える重要専門用語の解説
ETSの議論を理解するためには、いくつかの専門用語を把握しておく必要がある。
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MRV(測定・報告・検証):
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Measurement, Reporting, and Verificationの略。ETSの信頼性の根幹をなす「炭素の会計システム」である
。対象企業は、自社の温室効果ガス排出量を定められた手法で測定(Measurement)14 し、規制当局に報告(Reporting)する。そして、その報告内容が正確かつ客観的であることを、独立した第三者機関が検証(Verification)する。このMRVプロセスが厳格に運用されることで、「1トンの排出枠は、実際に1トンの排出量に相当する」という市場の信頼が担保される。
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オフセット・クレジット:
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ETSの対象範囲「外」で実現された排出削減・吸収量を、クレジットとして認証したもの。例えば、ETS対象外のセクターにおける省エネプロジェクトや、植林によるCO2吸収プロジェクトなどがこれにあたる
。ETS参加企業は、定められた上限の範囲内でこのクレジットを購入し、自社の排出枠の代わりに提出することが認められる場合がある。これにより、企業はより多様な削減手段を得ることができ、制度全体の柔軟性が高まる。しかし、そのクレジットが本当に「追加的」(そのプロジェクトがなければ実現しなかった削減)であるかなど、品質をめぐる議論が常に伴う15 。17
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バンキングとボロウィング:
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排出枠の時間的な利用の柔軟性を確保する仕組みである。
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バンキング(Banking): ある年に使用しなかった余剰の排出枠を、翌年以降に繰り越して使用すること
。将来、キャップが厳しくなり排出枠価格が上昇することを見越して、企業は早期の削減努力を行うインセンティブを持つ。これは価格の安定にも寄与する。18 -
ボロウィング(Borrowing): 将来の排出枠を前借りして、現在の排出量をカバーすること。予期せぬ排出増に対応できる柔軟性をもたらすが、将来の削減義務を先送りすることになるため、多くの制度では厳しく制限されている
。20
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これらのメカニズムと概念を理解することが、次章以降で詳述する世界の先進事例を深く読み解くための鍵となる。
第3章:成熟するETSは何を目指すか – EUとカリフォルニアの先進事例
排出量取引制度(ETS)は、導入から20年近くを経て、一部の地域では単なる排出削減ツールから、より広範な社会経済変革を促すための戦略的政策へと進化を遂げている。その最前線を走るのが、欧州連合(EU)と米カリフォルニア州である。両者の取り組みは、制度の野心、公平性、そして経済への統合という点で、世界中のETSが目指すべき一つの到達点を示している。
ケーススタディ1:EU-ETS フェーズ4(2021-2030)- 野心のゴールドスタンダード
2005年に世界初の国際的なETSとして発足したEU-ETSは、現在第4フェーズにあり、EUの野心的な気候目標「Fit for 55」(2030年までに1990年比でGHG排出量を55%削減)を達成するための中心的な役割を担っている
主な改革内容
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キャップ削減の加速: 制度の最も重要な要素である排出上限(キャップ)は、年々直線的に削減されていく。この年間削減率(Linear Reduction Factor, LRF)が、2024年から従来の2.2%から4.3%へ、さらに2028年からは4.4%へと大幅に引き上げられた
。これは、市場に供給される排出枠の総量を急速に減少させ、炭素価格を高く維持し、企業に強力な削減インセンティブを与えることを意図している。目標は、対象セクターの排出量を2030年までに2005年比で6 62%削減することである 。22 -
無償配分の段階的廃止: これまで産業の国際競争力保護(カーボンリーケージ防止)のために行われてきた無償配分は、段階的に廃止される方向にある。特に、後述する炭素国境調整メカニズム(CBAM)の対象となるセクターでは、CBAMの本格導入に合わせて無償配分が削減され、「汚染者負担の原則」が徹底される
。航空セクターに至っては、2026年までに無償配分が完全に廃止される予定である22 。22 -
対象セクターの拡大: 2024年から、EUの排出量の3-4%を占める海運セクターが段階的にEU-ETSの対象に含まれることになった
。さらに、2027年からは、これまで対象外であった6 建築物および道路輸送セクターを対象とする、新たなETS(通称「ETS2」)が導入される。これにより、EU経済のより広い範囲でカーボンプライシングが適用されることになる 。22 -
市場安定化準備金(MSR)の強化: 過去の経験から、EU-ETSは市場の排出枠の過剰供給による価格低迷に悩まされてきた。この問題を解決するために導入されたのが市場安定化準備金(Market Stability Reserve, MSR)である。これは、市場の排出枠の余剰量が一定の水準を超えた場合に、その一部を自動的に市場から引き揚げてMSRに吸収する仕組みである
。今回の改革では、このMSRの吸収率が強化され、市場の需給バランスをより迅速に調整し、価格シグナルを安定させる機能が向上した24 。21
ケーススタディ2:カリフォルニア州キャップ&トレード – 歳入活用と環境正義のモデル
米国最大の州経済を誇るカリフォルニア州のキャップ&トレード制度は、2013年に開始され、州のGHG排出量の約85%をカバーする広範な制度である
オークション歳入の戦略的活用
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温室効果ガス削減基金(GGRF): オークションによる歳入は、「温室効果ガス削減基金(Greenhouse Gas Reduction Fund, GGRF)」に預託される
。この基金は、州議会の決定に基づき、さらなる排出削減に貢献する様々なプログラムに投資される。18 -
環境正義の法制化: 州法(SB 535)により、GGRFの歳入の少なくとも35%は、大気汚染などの環境被害に不釣り合いに苦しんできた「不利な立場にあるコミュニティ(disadvantaged communities)」や低所得者層に利益をもたらすプロジェクトに投資することが義務付けられている
。これは、気候変動対策の恩恵が社会全体に公平に行き渡ることを保証する「環境正義(Environmental Justice)」の理念を具体化したものである。18 -
具体的な投資プログラム: GGRFの資金は、以下のような具体的なプログラムに配分されている。
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アフォーダブル住宅・持続可能コミュニティ(AHSC)プログラム: 年間8億ドルが配分され、公共交通機関の近くに手頃な価格の集合住宅を建設することを支援する。これにより、自動車利用を減らし、GHG排出量を削減すると同時に、住宅問題の解決にも貢献している
。26 -
低炭素交通オペレーションプログラム(LCTOP): 公共交通機関の運行を支援し、利用を促進する
。26 -
その他、森林保全、持続可能な農業、クリーンエネルギー研究など、多岐にわたる分野に投資されている
。18
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成果と評価: GGRFによる投資プロジェクトは、GHG排出削減において着実な成果を上げている。ただし、プログラムごとの費用対効果にはばらつきがあることも指摘されており、継続的なプロジェクト評価と改善の重要性が示唆されている
。18
これら二つの先進事例の進化を分析すると、カーボンプライシングの哲学そのものが重要な転換点を迎えていることがわかる。もはや、単に汚染に「コストを課す」だけの政策ではない。それは、脱炭素社会への移行を積極的に「資金供給する」ための歳入源を生み出す戦略的ツールへと変貌を遂げているのである。
EUがその歳入を産業の技術革新(イノベーション基金)や低所得加盟国の近代化(近代化基金)に振り向ける一方で、カリフォルニアはコミュニティレベルの具体的な便益や環境正義の実現に焦点を当てている。
この歳入還元の仕組みは、政策に対する政治的・社会的な支持を維持する上で決定的に重要である。炭素価格という、ともすれば不人気な「税」のような負担を、クリーンテクノロジー分野での新たな雇用創出や、地域住民の生活の質を向上させる公共交通の改善といった、目に見える形で社会に還元する。
これにより、負担が未来への「投資」へと転換され、より野心的な気候変動対策を可能にする好循環が生まれる。日本のGX経済移行債(将来の炭素価格収入を償還財源とする)も、この歳入還流の一形態と捉えることができる。
しかし、EUやカリフォルニアの事例は、償還だけでなく、進行中の具体的なプロジェクトへの歳入の一部を割り当てることが、国民の理解と支持を得て政策を推進する上でいかに有効であるかを示唆している。これは、日本の現行の枠組みにおいて、見過ごされがちな重要な視点かもしれない。
第4章:アジア・新興国の挑戦 – 中国・韓国に学ぶ「現実解」
EUやカリフォルニアが野心的な目標を掲げて制度を深化させる一方、アジアの主要経済国である中国と韓国は、自国の産業構造と経済発展の現実を踏まえた、よりプラグマティックなアプローチでETSを導入・運用している。これらの事例は、特に製造業の国際競争力を重視する日本にとって、多くの示唆に富む「現実解」を提供してくれる。
ケーススタディ3:中国全国ETS – 世界最大の排出国を律する試み
2021年に本格稼働した中国の全国ETSは、対象排出量の点で世界最大の炭素市場である。当初は電力セクター(約51億トンCO2)に限定されていたが、2025年には鉄鋼、セメント、アルミ精錬セクターへと正式に拡大され、対象排出量はさらに約30億トンCO2e増加する見込みだ
制度の核心:「アウトプットベース・ベンチマーキング」
中国ETSの最大の特徴は、排出枠の配分方法にある。
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原単位方式の採用: EUのような「絶対量キャップ」ではなく、生産量あたりの排出量(排出原単位)を基準とする「アウトプットベース・ベンチマーキング」方式を採用している
。具体的には、「石炭火力発電1MWhあたり〇〇トンCO2」「セメント1トンあたり〇〇トンCO2」といったベンチマーク(基準値)が設定される。7 -
100%無償配分: 排出枠はすべて、このベンチマークと各企業の実際の生産量に基づいて無償で配分される。
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仕組みとインセンティブ: この方式では、ベンチマークよりも効率的(排出原単位が低い)な企業は排出枠が余り、それを売却できる。逆に、非効率な企業は排出枠が不足し、購入しなければならない。これにより、セクター内で最も効率的な企業が報われるインセンティブが働く。しかし、セクター全体の生産量が増加すれば、総排出量も増加しうるため、これは排出総量を制限する「強度目標(Intensity Target)」であり、絶対量を制限するものではない
。29
絶対量キャップへの道筋
中国のこのアプローチは、経済成長を続けながら排出削減を進めるという、発展段階にある国特有の課題に対応するための戦略的な選択である。初期段階では、厳格なMRV(測定・報告・検証)体制の構築と、参加企業が市場メカニズムに習熟することに重点が置かれている
オークション(有償配分)を導入し、段階的に拡大することが明記されている
ケーススタディ4:韓国(K-ETS) – 製造業中心経済の保護
2015年に東アジアで初めて全国規模のETSを導入した韓国は、エネルギー多消費型で貿易依存度の高い(EITE)製造業が経済の根幹をなすという、日本と非常に似た産業構造を持つ
競争力保護のための措置
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EITEセクターへの手厚い無償配分: 国際競争にさらされ、かつエネルギーコストの割合が高いと認定されたEITEセクター(鉄鋼、石油化学、セメントなど)に対しては、排出枠の100%が無償で配分される
。これにより、炭素コストによる直接的な競争力低下を防いでいる。31 -
市場安定化措置: 価格の急騰・急落を防ぐため、韓国版市場安定化準備金(K-MSR)や、価格の上下限制の設定、借入(ボロウィング)やオフセット利用上限の調整など、政府が市場に介入できる複数の措置が用意されている
。31
市場流動性向上のための改革(2024年以降)
一方で、K-ETSは取引が低調で市場の流動性が低いという課題を抱えてきた。これに対応するため、韓国政府は2024年以降、市場を活性化させるための新たなルールを導入した。
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参加者の拡大: これまで限定されていた金融機関の市場参加を拡大し、将来的には個人の参加も視野に入れている
。31 -
取引手法の多様化: 証券会社などを通じた委託売買(コンサイメント取引)を導入
。31 -
金融商品の創設: 炭素価格に連動した金融商品(ETN、ETFなど)の組成を奨励し、2025年までには先物市場を開設する計画である
。31 -
規制緩和: 排出枠の繰越(バンキング)制限を緩和し、オフセット・クレジットの転換期間を延長するなど、企業の柔軟な対応を可能にした
。31
これらの改革は、K-ETSを単なる規制ツールから、より洗練された金融市場へと発展させようとする韓国政府の強い意志を示している。
表2:主要ETSの制度設計比較分析 | ||||
特徴 | EU-ETS | カリフォルニア C&T | 中国 National ETS | 韓国 K-ETS |
キャップの種類 | 絶対量キャップ | 絶対量キャップ | 原単位キャップ(強度目標) | 絶対量キャップ |
主要な配分方法 | オークション(57%以上) | オークション | 100%無償配分 | 無償配分+オークション(3%→10%以上へ) |
主な競争力保護措置 | 無償配分(段階的廃止)、CBAM | 無償配分、歳入還元 | 100%無償配分、原単位方式 | EITEセクターへの100%無償配分 |
歳入活用戦略 | イノベーション基金、近代化基金 | 温室効果ガス削減基金(GGRF)による多様なプログラムへの投資 | なし(現状は無償配分のみ) | オークション歳入を低炭素技術支援等に活用 |
価格安定化メカニズム | 市場安定化準備金(MSR) | オークション価格の下限・上限設定、価格抑制引当金 | なし(現状は価格が低位安定) | 韓国版MSR、価格介入措置 |
この比較表は、ETSの制度設計における「理想」と「現実」のトレードオフを明確に示している。EUやカリフォルニアが追求するのは、厳格な絶対量キャップとオークションによる歳入最大化という「理想的」なモデルである。対照的に、中国や韓国は、産業保護を優先した無償配分や、経済成長を阻害しない原単位方式といった「現実的」な選択からスタートし、徐々に制度を強化・洗練させていくアプローチを取っている。
日本がGX-ETSを設計する上で、この比較分析は極めて重要な示唆を与える。日本の産業構造は韓国に近く、国際競争力への配慮は不可欠である。一方で、CBAMのような国際的な潮流に対応するためには、EU並みの制度の信頼性と野心も求められる。
したがって、日本の進むべき道は、どちらか一方のモデルを模倣することではなく、両者の長所を組み合わせ、自国の状況に合わせて最適化するハイブリッドなアプローチとなるだろう。
第5章:国境を超える炭素価格 – カーボンリーケージとCBAMという「盾」
排出量取引制度(ETS)のような野心的な気候変動政策を導入する国が直面する最も深刻な課題の一つが、「カーボンリーケージ(炭素漏洩)」である。そして、この課題に対する最も強力な対抗策として登場したのが、欧州連合(EU)の「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」だ。これは、国内の気候変動政策を国境の外にまで拡張する、画期的な試みである。
カーボンリーケージという脅威
カーボンリーケージとは、ある国が厳しい炭素価格(炭素税やETS)を導入した結果、国内の排出量は減少するものの、その排出削減分が規制の緩い他国での排出増によって相殺、あるいはそれ以上に増加してしまう現象を指す
-
投資リーケージ(生産拠点の移転): 鉄鋼やセメント、化学といったエネルギー多消費型産業が、国内の高い炭素コストを嫌い、生産拠点を規制のない、あるいは緩い国へと移転する。
-
貿易リーケージ(国際競争力の変化): 生産拠点の移転は伴わないものの、国内製品の価格が炭素コストを転嫁して上昇する。その結果、炭素コストのかからない安価な輸入品との競争に敗れ、国内生産が減少し、輸入が増加する。
いずれのケースも、国内の排出統計は見かけ上改善されるが、地球全体の排出量は削減されず、グローバルな気候変動対策の努力を無に帰してしまうリスクをはらんでいる
EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)という「盾」
このカーボンリーケージ問題に正面から取り組むために、EUが導入したのがCBAMである。これは単なる環境政策ではなく、通商政策と一体化した戦略的なツールである。
-
目的: EU域内で生産される製品と、域外から輸入される製品との間で、炭素コストに関する競争条件を公平にすること(レベリング・ザ・プレイング・フィールド)。これにより、EU域内産業の競争力を保護し、カーボンリーケージを防止する
。同時に、貿易相手国に対して、よりクリーンな生産方法への転換を促すことも狙いとしている35 。23 -
メカニズム:
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EUの輸入事業者は、対象となる製品を輸入する際に、その製品の製造過程で排出された「内在的排出量(embedded emissions)」を報告する義務を負う。
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その排出量に相当する「CBAM証書」を購入し、当局に提出(surrender)しなければならない。
-
CBAM証書の価格は、EU-ETSの排出枠の週間平均オークション価格に連動して決定される
。これにより、輸入品にもEU域内製品と同等の炭素価格が課されることになる。23
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-
対象セクター: 当初は、リーケージのリスクが最も高いとされる、鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の6分野が対象となる
。将来的には対象品目が拡大される可能性がある。23 -
導入スケジュール:
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移行期間(2023年10月〜2025年末): 輸入事業者は、内在的排出量の報告義務のみを負う。この期間は、関係者が制度に習熟するための学習期間と位置づけられている
。23 -
本格導入(2026年1月〜): CBAM証書の購入・提出義務が開始され、金銭的な負担が発生する
。23
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EU-ETS無償配分との関係: CBAMの導入は、EU-ETSにおける無償配分の段階的廃止と完全に連動している。CBAM対象セクターに対するEU-ETSの無償配分は、2026年から徐々に削減され、2034年には完全に廃止される
。これにより、EU域内外の生産者間で公平な競争条件が確保される。23
日本への示唆:貿易戦略としてのカーボンプライシング
CBAMの導入は、日本の輸出企業、特に鉄鋼やアルミニウムといった対象品目をEUに輸出する企業にとって、直接的な影響をもたらす。2026年以降、これらの企業はEUの顧客に対して、製品ごとの詳細な内在的排出量データを提供する必要に迫られる。そして、その排出量に応じた炭素コストがEUの国境で課されるため、価格競争力が低下するリスクに直面する
しかし、CBAMが持つ戦略的な意味合いは、それ以上に深い。CBAMの制度設計には、輸入事業者が、輸出国ですでに支払った炭素価格を控除できる仕組みが組み込まれている
この点が、日本の政策決定にとって決定的に重要である。
もし日本が、自国の鉄鋼製品に対して国内で実効性のある炭素価格(例えば、GX-ETSにおける有償オークション)を課した場合、その歳入は日本政府の国庫に入る。そして、その鉄鋼製品がEUに輸出される際、日本の輸入事業者は、日本で支払った炭素価格分をCBAMの支払額から控除できる。
一方で、もし日本が国内で同等の炭素価格を導入しなければ、EUの輸入事業者はCBAMの支払いを全額EU当局に対して行うことになる。結果として、日本の製品に由来する炭素コストの歳入が、EUに流出することになる。
このように、CBAMは単なる環境規制や貿易障壁ではない。それは、EUの気候変動政策の野心を事実上、世界に「輸出」する強力な外交ツールである。EUの貿易相手国に対し、「我々と同等のカーボンプライシングを導入しなければ、その分の炭素コストは我々が徴収する」という強いインセンティブを突きつけているのだ。
これにより、各国のカーボンプライシング導入を促し、世界的な政策の収斂(コンバージェンス)を加速させるドミノ効果を生み出す可能性がある。
この力学を理解すれば、日本のGX-ETSの制度設計が、もはや単なる国内問題ではなく、EUをはじめとする主要貿易相手国との関係を左右する、極めて重要な通商戦略の一部であることがわかる。CBAMへの対応は、日本が自国のカーボンプライシングをいかに迅速に、かつ国際的に信頼される形で構築できるかにかかっている。
第6章:価格から投資へ – ETS収入がGXを加速する仕組み
排出量取引制度(ETS)の進化における最も重要な側面の一つは、それが単に排出にコストを課すだけでなく、グリーン・トランスフォーメーション(GX)を加速するための巨大な財源を生み出す 金融ツールへと変貌を遂げている点である。特に、排出枠のオークション(有償配分)から得られる歳入を戦略的に再投資する「歳入還元(Revenue Recycling)」の仕組みは、気候変動対策を自己充足的な成長サイクルへと転換させる可能性を秘めている。
汚染者負担から未来への投資へ
歳入還元の基本思想は、「汚染者負担の原則」をさらに一歩進め、汚染者が支払ったコストを、その汚染そのものをなくすための解決策に投資するという好循環(virtuous cycle)を生み出すことにある。この仕組みは、政策の経済的効率性を高めるだけでなく、新たな産業や雇用を創出し、社会的な便益をもたらすことで、カーボンプライシングに対する国民の支持を確保する上でも極めて重要な役割を果たす。EUとカリフォルニア州は、この歳入還元の先進的なモデルを構築している。
EUの事例:イノベーションと公正な移行を資金供給
EU-ETSのオークション収入は、EUの脱炭素化戦略を支える二つの重要な基金の財源となっている。
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イノベーション基金(Innovation Fund):
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目的: 革新的な低炭素技術の商業化に向けた大規模実証プロジェクトを支援し、市場投入までの「死の谷」を乗り越えさせることを目的とする
。21 -
規模: EU-ETSの歳入を原資とし、現在の炭素価格で約400億ユーロの予算規模を持つ、世界最大級のクリーンテック投資プログラムである
。40 -
支援対象: 炭素回収・利用・貯留(CCUS)、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵、グリーン水素の製造・利用、エネルギー多消費産業の製造プロセス転換など、GHG排出削減ポテンシャルの高い画期的なプロジェクトが対象となる
。最近の公募では、85のプロジェクトに総額48億ユーロの助成が決定し、そのうち約3分の1が水素関連プロジェクトであった42 。これにより、産業界が直面する技術的・経済的リスクを直接的に低減し、次世代技術の社会実装を加速させている。40
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近代化基金(Modernisation Fund):
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目的: EU域内でも比較的所得の低い13の加盟国(中東欧諸国が中心)が、エネルギーシステムの近代化とエネルギー効率の改善を進め、気候目標を達成できるよう支援する
。44 -
規模: こちらもEU-ETSの歳入を財源とし、約570億ユーロの予算規模が見込まれている
。44 -
支援対象: 再生可能エネルギーの導入、エネルギーネットワークの近代化、石炭火力からの脱却に伴う「公正な移行(Just Transition)」支援などに資金が供給される
。これにより、EU全体の脱炭素化を、域内の経済格差を考慮しながら、連帯して進めることを可能にしている。46
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カリフォルニア州の事例:気候変動対策と社会政策の統合
カリフォルニア州の温室効果ガス削減基金(GGRF)は、ETS歳入を気候変動対策と社会政策の目標を同時に達成するために活用するモデルである。前述の通り、基金の35%以上が不利な立場にあるコミュニティに投資されることが法制化されており、歳入が具体的な地域社会の課題解決に直結している
GGRFの投資は、単にGHGを削減するだけでなく、大気汚染の改善、公共交通の利便性向上、手頃な価格の住宅供給、グリーンな雇用の創出といった、地域住民が直接的に便益を感じられる「コベネフィット(co-benefits)」を生み出すように設計されている
このアプローチは、気候変動対策が一部の環境保護論者のためだけのものではなく、社会全体の幸福度を高めるための投資であるという認識を広げ、政策への幅広い支持を構築する上で大きな成功を収めている。
これらの事例は、ETSのオークション収入が、単なる「罰金」ではなく、未来の社会経済システムを構築するための貴重な「原資」となりうることを示している。それは、技術革新のフロンティアを切り拓き、社会の脆弱な部分を支え、持続可能な成長を実現するための戦略的な資本なのである。
第7章:日本の岐路 – GX-ETSと成長志向型カーボンプライシングの現在地
世界がETSの導入と深化を加速させる中、日本もまた、独自のカーボンプライシング制度の構築に向けて大きな一歩を踏み出した。2023年5月に成立した「GX推進法」は、「成長志向型カーボンプライシング構想」の法的根拠となり、今後の日本の脱炭素政策の根幹をなすものである。この構想は、ETS、化石燃料賦課金、そして未来への先行投資を組み合わせた、多角的かつ長期的なアプローチを特徴としている。
段階的発展を目指すGX-ETS
日本の排出量取引制度、通称「GX-ETS」は、一足飛びに完成形を目指すのではなく、段階的に制度を発展させていく方針が採られている
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第1フェーズ(2023年度〜2025年度):
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経済産業省が主導する「GXリーグ」に参加する企業による、自主的な取り組みとして開始された
。50 -
参加企業は自ら排出削減目標を設定し、目標達成に向けて排出枠の取引を行う。ただし、この段階では目標未達の場合でもペナルティはなく、あくまで制度への習熟と知見の蓄積を目的とした試行的な位置づけである
。52
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第2フェーズ(2026年度〜):
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GX推進法に基づき、一定規模以上の排出を行う事業者を対象に、排出量取引制度への参加が義務化される
。49 -
対象企業は、排出実績と同量の排出枠を保有することが求められる。具体的な対象者の範囲、排出枠の算定・検証・割当方法、価格安定化措置などの詳細なルールは、現在、専門の小委員会で検討が進められている段階である
。51
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カーボンプライシングの二本柱
日本の制度のユニークな点は、ETSと並行して、より広範な化石燃料に価格を付ける仕組みを導入する点にある。
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化石燃料賦課金:
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導入時期: 2028年度から導入予定
。54 -
対象: 石油や天然ガス、石炭といった化石燃料の輸入事業者等が対象となる
。サプライチェーンの上流で課金することで、経済全体に広く浅く炭素価格を浸透させることを狙う。57 -
特徴: 当初は低い負担で導入し、経済状況を見ながら段階的に引き上げていく方針が示されている
。57
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特定事業者負担金(発電事業者に対する有償オークション):
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導入時期: 2033年度から導入予定
。55 -
対象: 発電事業者が対象となる。
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仕組み: これは実質的に、電力セクターにおける排出枠の有償オークションの導入を意味する
。発電事業者は、排出枠の一部を入札(オークション)によって有償で取得する必要が生じ、その対価が「特定事業者負担金」として徴収される。これにより、電力の脱炭素化を加速させることが期待されている。54
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未来への投資:「GX経済移行債」
この構想の最も特徴的な要素が、「GX経済移行債」である。
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仕組み: 政府は、今後10年間で20兆円規模の「GX経済移行債」を発行する
。これにより調達した資金を、民間のGX投資を呼び込むための先行投資支援に充てる。51 -
償還財源: この国債の償還財源として、将来の「化石燃料賦課金」および「特定事業者負担金(有償オークション)」による歳入が充てられる
。つまり、「未来の炭素価格収入」を担保に、「現在の脱炭素投資」をファイナンスするという、時間軸を越えた仕組みである。55 -
支援対象: 支援の対象は、水素・アンモニアのサプライチェーン構築、次世代再生可能エネルギー(ペロブスカイト太陽電池など)、蓄電池の製造基盤強化、鉄鋼・化学などの産業プロセスの転換といった、野心的だがリスクも高い分野に重点が置かれている
。58
表3:日本の成長志向型カーボンプライシング構想 タイムライン | ||||
年度 | GX-ETSの動向 | 化石燃料賦課金 | 発電事業者への有償オークション | GX経済移行債 |
2023 | 第1フェーズ開始(GXリーグでの自主的取組) | – | – | 支援策の具体化 |
2024 | GXリーグでの取引継続 | – | – | 1.6兆円規模で発行開始 |
2025 | 第1フェーズ最終年 | – | – | 継続発行 |
2026 | 第2フェーズ開始(義務化) | 制度設計 | – | 継続発行 |
2027 | 本格稼働 | 制度設計 | – | 継続発行 |
2028 | 本格稼働 | 導入開始 | 制度設計 | 継続発行 |
… | … | 段階的引き上げ | … | … |
2033 | 本格稼働 | 継続 | 導入開始 | 継続発行(〜2032年度まで) |
… | … | … | 段階的拡大 | 賦課金・負担金による償還開始 |
2050 | – | – | – | 償還完了 |
このタイムラインは、日本のカーボンプライシングが、非常に長期的かつ段階的に導入されることを示している。まず先行投資(GX経済移行債)で産業界の体質改善を促し、その後、緩やかなカーボンプライシング(賦課金、ETS)を導入して、その投資の回収とさらなる行動変容を促すという戦略である。この「投資と価格付けの連携」という思想は独創的だが、その成功は、各制度の詳細設計と、それらが有機的に連携できるかどうかにかかっている。
第8章:【本質分析】世界のETSから浮かび上がる日本の根源的課題
ICAPレポート2025が示す世界の潮流と、EU、カリフォルニア、中国、韓国といった多様な先行事例に日本の現状を照らし合わせると、日本の脱炭素化とGX-ETSの成功を左右する、より根源的かつ構造的な四つの課題が浮かび上がってくる。これらは、単なる制度設計上の技術的な論点を超え、日本のエネルギー政策、産業構造、そして政策決定のあり方そのものに深く根差した課題である。
課題1:エネルギーミックスの構造的脆弱性
日本の脱炭素化における最大の制約条件は、そのエネルギー供給構造にある。2023年時点でも、日本の総発電量の約69%を化石燃料(LNG、石炭、石油)に依存している
すなわち、実効性のある高い炭素価格を導入すれば、電力コストの高騰を通じて、経済全体に与えるマクロ経済的インパクトが他国に比べて格段に大きくなる。国民生活や企業活動への負担増に対する懸念が、政府をしてカーボンプライシングの導入に極めて慎重かつ漸進的なアプローチ(2028年からの低位での賦課金導入)を採らざるを得なくさせている根本的な理由である
第6次エネルギー基本計画で示された2030年の再エネ比率目標36〜38%は野心的ではあるが
課題2:産業構造と国際競争力への強い懸念
日本の経済は、鉄鋼、化学、セメントといった、いわゆるエネルギー多消費型で排出削減が困難な(EITE / Hard-to-Abate)セクターに深く依存している
この産業構造を背景に、経団連や日本鉄鋼連盟といった産業界からは、追加的な炭素コスト負担に対する強い懸念が繰り返し表明されている
この産業界からの強い政治的圧力が、GX-ETSの制度設計において、韓国のK-ETSと同様に、手厚い無償配分などの競争力保護措置を重視せざるを得ない状況を生み出している。いかにして産業の競争力を維持しながら脱炭素投資を促すか、という二律背反の課題が、政策の自由度を著しく制約している。
課題3:政策シグナルの野心と予見可能性の欠如
企業の長期的な大規模投資を促す上で最も重要なのは、将来の政策に対する「予見可能性(Predictability)」である。EU-ETSが、2030年までの明確なキャップ削減率(LRF)を法的に定め、市場に強力かつ明確な長期シグナルを送っているのとは対照的に
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2026年度から本格稼働するGX-ETSの排出総量キャップの水準と、その将来的な削減経路。
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2028年度から導入される化石燃料賦課金、および2033年度からの有償オークションにおける将来の炭素価格水準。
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GX-ETSにおける無償配分と有償オークションの比率とその移行スケジュール。
これらの重要なパラメータが未定であることは、企業が将来の炭素コストを予測し、投資計画を立てることを困難にしている。EU-ETSの初期フェーズに関する多くの学術研究が示すように、規制の不確実性は企業の低炭素投資を躊躇させる最大の要因の一つである
日本が掲げる「成長志向型」という理念を実現するためには、まさにその成長の源泉となるべき民間投資を呼び込むための、野心的で予見可能な政策シグナルの提示が不可欠である。
課題4:投資支援と価格付けの相乗効果の最大化
20兆円規模のGX経済移行債による先行投資支援は、日本のGX戦略の強力なエンジンである。しかし、世界の経験は、投資支援策(補助金)だけでは持続的な市場変革は起こせないことを示している
日本の現在の課題は、この「投資」と「価格付け」という二つの歯車をいかに噛み合わせ、相乗効果を最大化するかにある。GX経済移行債によって今日行われる巨額の先行投資を正当化し、その成果を市場に根付かせるためには、2028年以降に導入される炭素価格シグナルが十分に強力でなければならない。
しかし、前述の課題1、2が、その価格シグナルを弱める方向への圧力となっている。投資は価格シグナルを待ち、価格シグナルは投資への悪影響を恐れて先送りされる、という「鶏と卵」のジレンマに陥るリスクを内包している。この構造的課題を克服する制度設計こそが、日本のGXの成否を分ける鍵となる。
第9章:【政策提言】日本のGXを成功に導く戦略的インサイト
前章で分析した日本の根源的課題を踏まえ、世界のETSの先進事例から得られる知見を応用することで、日本のGX-ETSおよび成長志向型カーボンプライシング構想をより実効性の高いものにするための、4つの戦略的提言を行う。これらは、単なる制度の模倣ではなく、日本の特殊な状況を乗り越え、国際的な潮流に適応するための具体的な処方箋である。
提言1:野心的かつ動的なキャップ(排出上限)の設定と公表
課題: 政策シグナルの予見可能性の欠如。
処方箋: 2026年度から本格稼働するGX-ETSにおいて、単年度のキャップを設定するのではなく、複数年度(例えば5年間)にわたる明確なキャップ削減経路を早期に法制化し、公表するべきである。この削減経路は、日本の2030年NDC(46%削減目標)およびパリ協定の1.5℃目標との整合性を明確に示す、野心的な水準に設定する必要がある 39。
これにより、企業は将来の排出枠の希少性を予測し、長期的な視点での設備投資や研究開発の意思決定を行うことが可能となる。EUがLRF(年間削減率)を明示しているように、日本も将来のキャップ水準を具体的に示すことで、市場に不可欠な「予見可能性」を提供することができる。
提言2:オークション歳入の戦略的再投資(レベニュー・サイクリング)
課題: 投資支援と価格付けの相乗効果の最大化。
処方箋: 将来の化石燃料賦課金および有償オークションによる歳入の使途を、GX経済移行債の償還に限定するべきではない。その歳入の一部を、二つの目的を持つ基金に戦略的に再投資することを検討すべきである。
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「日本版GXイノベーション基金」の創設: EUのイノベーション基金をモデルに
、特に商業化直前の段階にある革新的技術(例:次世代CCUS、直接空気回収(DAC))のリスクマネーを供給する。これにより、GX経済移行債による支援の「その先」を担い、技術の社会実装を切れ目なく支援する。40 -
「公正な移行(Just Transition)基金」への充当: カリフォルニア州のGGRFの思想に学び
、エネルギー転換によって影響を受ける地域や労働者の再教育、中小企業の省エネ投資支援などに歳入の一部を充てる。これにより、カーボンプライシングに対する社会全体の理解と支持を醸成し、政策の持続可能性を高める。18
提言3:CBAMへの戦略的・能動的な対応
課題: 国際競争力への懸念とカーボンリーケージ。
処方箋: EUのCBAMを受動的な貿易障壁として捉えるのではなく、日本の国内制度を国際標準に適合させるための好機として能動的に活用するべきである。具体的には、EU当局との対話を通じて、日本のGX-ETSがCBAMにおける「同等性(equivalency)」の認定を受けられるような制度設計を目指す。
そのための要件は、①広範なセクターカバレッジ、②国際的に信頼されるMRV制度、そして③意味のある水準の炭素価格である 39。同等性が認められれば、日本企業がEUに輸出する際にCBAMの負担が軽減される。
これは、国内の産業界に対して「国際的に通用しない緩やかな制度では、結局、海外で炭素コストを支払うことになる」という明確なメッセージとなり、国内制度強化への理解を促す強力なドライバーとなる。
提言4:【独自提案】無償配分と移行計画を連動させる「日本型インセンティブ設計」
課題: 産業界の「投資原資の毀損」懸念と、投資支援策(GX債)とETSの連携不足。
処方箋: これまでの世界のETSにはない、日本独自の革新的なソリューションとして、EITEセクターへの排出枠の無償配分量を、政府が認定する企業の「移行計画(Transition Plan)」の野心度と進捗度に連動させるメカニズムを導入する。
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具体的な仕組み:
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企業は、GX経済移行債などの支援も活用しつつ、2050年カーボンニュートラルに向けた具体的な技術開発・設備投資ロードマップを含む「移行計画」を策定し、政府の認定を受ける。
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GX-ETSにおける無償配分の基準量を、従来の生産量ベンチマークに加え、この「移行計画評価係数」で調整する。
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より野心的で、かつ着実に実行されていると評価された計画を持つ企業は、高い係数(例:1.0)が適用され、手厚い無償配分を受けられる。
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一方で、計画が不十分であったり、進捗が遅れている企業の係数は低く(例:0.8)設定され、無償配分が削減される。不足分は市場での排出枠購入で補う必要が生じる。
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期待される効果:
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この仕組みは、産業界の最大の懸念である「ETSコストが投資原資を奪う」という主張に直接応えるものとなる。なぜなら、脱炭素化に真剣に投資する企業ほど、ETSによるコスト負担が軽減されるからである。
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GX経済移行債による支援を有効に活用し、具体的な行動を起こす企業に直接的なインセンティブを与えることで、「投資支援」と「カーボンプライシング」という二つの政策が有機的に結合する。
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単なる排出量の多寡ではなく、「未来に向けた変革への努力」を評価軸に加えることで、企業の行動変容をより強力に促すことができる。
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この「日本型インセンティブ設計」は、国際競争力への配慮と野心的な排出削減を両立させるための、現実的かつ効果的な解決策となりうる。
結論:適応し進化する制度こそが、日本の脱炭素を加速する
ICAP Status Report 2025が描き出す世界の排出量取引制度(ETS)のランドスケープは、もはや静的な地図ではなく、地殻変動を続けるダイナミックな生態系である。EU-ETSが経験した試行錯誤の歴史が示すように、ETSは一度設計すれば完成する静的な政策ではない。それは、経済状況の変化、技術の進展、そして国際社会の要請に応じて、絶えず学び、適応し、進化していく「学習する制度」なのである。
日本は、世界の20年にわたる経験を後発者として学ぶことができるという、またとない好位置にいる。我々が直面する課題は、特定の国のモデルを盲目的に模倣することではない。EUが示す野心と制度の堅牢性、カリフォルニアが実践する社会・環境正義との統合、そして韓国や中国が見せる産業構造への現実的な配慮――これらの多様な経験から最良の要素を抽出し、日本のエネルギー構造、産業競争力、そして社会的文脈という固有の条件に合わせて再統合(シンセサイズ)する「賢い制度設計」こそが求められている。
本稿で提言した、野心的かつ予見可能なキャップの設定、オークション歳入の戦略的再投資、CBAMへの能動的対応、そして無償配分と移行計画を連動させる日本独自のインセンティブ設計は、そのための具体的な道筋である。これらの要素を組み込んだGX-ETSは、単なるコスト負担の仕組みではなく、日本の産業界が未来への投資を加速させ、国際的なグリーン市場で勝ち抜くための強力な羅針盤となりうる。
気候変動という待ったなしの課題に対し、完璧な制度設計を待つ時間的猶予はない。重要なのは、まずは実効性のある制度を始動させ、その運用を通じて得られるデータと知見に基づき、制度を継続的に改善・強化していくという、適応的なアプローチである。柔軟に進化し続ける制度こそが、日本の経済成長と脱炭素化という二つの目標を両立させ、真のグリーントランスフォーメーションを加速させる唯一の道である。
FAQ(よくある質問)
Q1. 排出量取引制度(ETS)と炭素税の違いは何ですか?
A1. どちらも炭素に価格を付けるカーボンプライシングの手法ですが、仕組みが異なります。炭素税は、CO2排出量1トンあたりに固定の税率(例:3,000円/tCO2)を課す「価格アプローチ」です。価格が固定されるため企業のコスト予測が容易ですが、最終的な排出削減量が経済状況によって変動する不確実性があります。一方、ETSは、排出総量の上限(キャップ)を先に決める「数量アプローチ」です。削減目標の達成が確実になる一方で、排出枠の価格は市場の需給によって変動します。
Q2. 日本のGX-ETSは、企業にとって新たな負担になるだけではないのですか?
A2. 短期的には、排出削減のためのコストや排出枠購入の費用が発生するため、負担増となる側面はあります。しかし、「成長志向型カーボンプライシング構想」の核心は、この負担を未来への投資に転換することにあります。まず、GX経済移行債による20兆円規模の先行投資支援で、企業の脱炭素化への挑戦を後押しします。そして、ETSが創出する炭素価格は、そうした脱炭素技術や製品(グリーン鋼材など)に市場での付加価値を与え、投資の回収を可能にします。努力して排出量を削減した企業は、余った排出枠を売却して利益を得ることもできます。適切に設計されれば、ETSは負担ではなく、企業の競争力を強化するインセンティブとなりえます。
Q3. EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、日本の輸出企業にどのような影響を与えますか?
A3. 2026年から本格導入されるCBAMは、鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料などをEUに輸出する日本企業に直接的な影響を与えます。これらの企業のEUの顧客(輸入事業者)は、製品の製造過程で排出されたCO2量に相当する「CBAM証書」を購入・提出する必要が生じます。これにより、日本の製品はEU市場で実質的な炭素コストを課されることになり、価格競争力が低下する恐れがあります。ただし、日本国内で同等の炭素価格がすでに支払われている場合、その分はCBAMの支払額から控除されます。したがって、日本が国際的に認められる水準のカーボンプライシングを導入することが、企業の競争力を守る上で重要になります。
Q4. 排出枠の価格はどのように決まるのですか?価格が高騰するリスクはありませんか?
A4. 排出枠の価格は、証券市場の株価などと同様に、需要と供給のバランスによって決まります。需要サイドは、対象企業の排出量(景気や生産活動に連動)や削減技術のコストが影響します。供給サイドは、政府が設定するキャップ(排出枠の総量)によって決まります。景気が良く生産活動が活発になれば排出枠の需要が高まり価格は上昇し、逆に不況になれば需要が減り価格は下落します。価格の急激な変動は企業の投資計画を不安定にするため、多くのETSでは、EUの市場安定化準備金(MSR)や、オークション価格の上下限設定といった「価格安定化措置」が導入されています。日本のGX-ETSでも、こうした措置の導入が検討されています
ファクトチェック・サマリー
本レポートで引用した主要なデータは、以下の出典に基づいています。
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世界のETSの数とカバー率: 2025年時点で稼働中38、開発・検討中20、世界のGHG排出量の23%をカバー。出典はICAP Status Report 2025
。2 -
EU-ETSの目標: 2030年までに2005年比で対象セクターの排出量を62%削減。年間削減率(LRF)を2024年から4.3%に引き上げ。出典はEU公式資料および関連分析
。6 -
カリフォルニア州の歳入活用: オークション歳入(GGRF)の35%以上を不利な立場にあるコミュニティに投資することが法制化。出典は関連法および分析レポート
。18 -
中国全国ETSの規模と方式: 電力、鉄鋼、セメント、アルミを対象とし、世界のGHG排出量の大きな割合をカバー。配分方法はアウトプットベースの100%無償配分。出典はICAPファクトシートおよび関連レポート
。7 -
韓国K-ETSの改革: 市場流動性向上のため、2024年以降、金融機関の参加拡大や委託売買の導入などを実施。出典はICAPファクトシート
。31 -
EU CBAMのスケジュール: 2023年10月から報告義務のみの移行期間開始、2026年1月から支払い義務を伴う本格導入。出典はEU委員会公式情報
。23 -
日本のGX政策: 2026年度からGX-ETS義務化、2028年度から化石燃料賦課金導入、2033年度から発電事業者への有償オークション導入。10年間で20兆円規模のGX経済移行債を発行。出典はGX推進法および政府関連資料
。51
これらの情報は、すべて公開されている一次情報源または信頼性の高い国際機関のレポートに基づいており、本稿の分析の客観性と信頼性を担保するものです。
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