目次
COP30ベレン開幕直前 世界は1.5℃目標をどう「実施」するのか?
— 全交渉トラックの徹底解剖と、日本が直面する「再エネ・脱炭素」の根源的課題 —
2025年11月6日、世界の視線はブラジル、アマゾンの玄関口ベレンに注がれています
これは、COP28の「グローバル・ストックテイク(GST)」という名の初の「通信簿」で、世界が「1.5℃目標達成の道筋から絶望的に逸脱している」という厳しい現実を突きつけられてから初となる、歴史的な岐路です
議長国ブラジルは、この会議を「実施のCOP(COP of Implementation)」と明確に位置づけ
本レポートは、この歴史的な岐路を、3つの視点から世界最高水準の解像度で徹底的にファクト分析します。
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ブラジル議長国が仕掛ける3つのアジェンダ:TFFF(森林金融)、GES(倫理)、Action Agenda(非国家アクター)という、交渉の力学を変えようとする戦略。
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1.5℃の運命を握る4大交渉トラック:NDC 3.0(緩和)、資金、損失と損害、適応——COP30の核心的な争点。
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COP30の鏡が映す、日本の脱炭素の「根源的課題」:日本が提出した「野心的なNDC」と、その「実施計画」であるエネルギー基本計画との間に横たわる致命的な乖離。
第1部:COP30の舞台設定 — ブラジル議長国が仕掛ける「3つのアジェンダ」
本章では、ブラジルがなぜベレン(アマゾンの中心地)を舞台に選び、従来の交渉とは異なる「実施」「金融」「倫理」という3つのアジェンダを推進するのか、その戦略的意図を解明します。
1-1. 「アマゾンのCOP」の象徴性とブラジルの戦略的ジレンマ
ブラジルのルラ大統領は、COP30を「アマゾンのCOP」と定義しました
ブラジル議長国の優先事項は明確です。(1)多国間主義の強化
しかし、まさにこの開催地に、世界の気候変動交渉を象徴する戦略的ジレンマが存在します。ブラジルは「アマゾンの守護者」であると同時に、「世界第8位の石油・ガス輸出国」でもあるのです
1-2. アジェンダ (1): 「実施のアジェンダ(Action Agenda)」 — 非国家アクターの結集
COP30の主要な柱の一つが「実施のアジェンダ(Action Agenda)」です
その目的は、COP28のGST-1(第1回グローバル・ストックテイク)で明らかになった「実施の遅れ」という結果を、具体的な「行動」に移すことです
Action Agenda 6つの柱
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エネルギー・産業・運輸
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森林・海洋・生物多様性
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農業・食料システム
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都市・インフラ・水
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人間・社会開発
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横断的課題
ブラジルは、膠着状態にある国家間の公式交渉(Parties-driven)を半ば諦めているかのように見えます。GST-1で「実施」の遅れが明確になった今、国家間の公式交渉だけでは「実施」が担保できないという認識が広がっています。
そこでブラジルが設計したのが、このパラレル・トラック(並行軌道)です。すでに具体的なソリューションを持って動いている企業や都市(非国家アクター)の「実施」をCOPの前面に押し出し
1-3. アジェンダ (2): 森林金融の革命「TFFF(Tropical Forest Forever Facility)」
ブラジル議長国の「看板政策」
これは、目標総額1,250億ドル(約950億ポンド)という壮大な規模の基金です
TFFFが革命的と呼ばれる理由は、その金融モデルにあります。これは従来の「援助(Aid)」や「慈善(Philanthropy)」ではありません
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資金源(Seed):まず、各国政府や民間セクターが「ジュニア資本(種銭)」を拠出します
。この初期目標が250億ドルです17 。21 -
レバレッジ(Leverage):次に、この250億ドルを元手に、公的市場で債券を発行するなどして3〜4倍のレバレッジをかけ、総額1,250億ドルの巨大な投資基金(TFIF)を設立します
。15 -
運用(Investment):基金は世界銀行が管理し
、化石燃料関連を除外した低リスク商品(新興国債券など)で運用されます15 。19 -
支払い(Payout):その運用益(推定年間30億ドル)
を、森林被覆を維持した国に対し、「成果報酬型」で支払います(例:1ヘクタールあたり4ドル)15 。15
ブラジル(や他の熱帯雨林国)が石油・ガス開発や森林伐採に頼るのは、それが唯一の確実な収入源だからです
ガバナンス面でも革新的です。TFFFは、支払額の最低20%を、先住民・地域コミュニティ(IPLCs)に直接配分することを義務付けており、これは「画期的」な仕組みとして評価されています
このTFFFは、11月6日のリーダーズ・サミットで正式に発足しました
TFFFの最大のリスクは、その革新性そのものにあります。金融市場の変動に依存する
1-4. アジェンダ (3): 交渉の「倫理」を問う「GES(Global Ethical Stocktake)」
ブラジルが仕掛ける3つ目のアジェンダが、「世界倫理的棚卸(Global Ethical Stocktake: GES)」です。これは、従来の交渉当事者(政府)ではなく、宗教指導者、アーティスト、先住民、若者、科学者、哲学者など、多様なステークホルダーが集まり
ブラジルのマリーナ・シルバ環境大臣は、その目的を「愛、連帯、コミットメント、責任といった、これまで交渉プロセスから抜け落ちていた『倫理的側面』を統合すること」だと述べています
このGESは、ブラジルの巧みな「ソフトパワー戦略」です。資金や緩和目標といった「量的」な交渉は、各国の利害が対立し、ゼロサムゲームに陥りデッドロックしています。そこでブラジルは、「なぜ約束が守られないのか」という「質的」かつ「倫理的」な問いを立てました
これは、アントニオ・グテーレス国連事務総長が「1.5℃目標の逸脱は『道徳的失敗であり、致命的な怠慢だ』」と厳しく非難したことと軌を一にしています
1-5. COP30 テーマ別デイズ:公式スケジュールと戦略的意図
ブラジル議長国は、COP30の公式テーマ別デイズの日程を発表しました
注目すべきは、閣僚級会合が本格化する第1週の後半(11月14-15日)に、「エネルギー」「産業」「運輸」「金融」「炭素市場」といった、最も利害が対立する核心的テーマが集中配置されている点です
そして、その直前(11月12-13日)に、「健康」「雇用」「正義」、そして「世界倫理的棚卸(GES)」が配置されています
この配置は意図的です。「(倫理的に)これだけ追い込まれているのだから、金融・エネルギーでも妥協すべきだ」という政治的空気感を醸成した上で、最も困難な交渉に臨もうとする、ブラジル議長国の高度なアジェンダ設定戦略が透けて見えます。
表1:COP30公式テーマ別デイズ・スケジュール一覧(2025年11月)
(出典:14 に基づき作成)
| 日程 | 曜日 | テーマ |
| 11月10–11日 | 月・火 | 適応、都市、インフラ、水、廃棄物、地方政府、バイオエコノミー、サーキュラーエコノミー、科学技術、AI |
| 11月12–13日 | 水・木 | 健康、雇用、教育、文化、正義と人権、情報の完全性、世界倫理的棚卸(GES)、労働者 |
| 11月14–15日 | 金・土 | エネルギー、産業、運輸、貿易、金融、炭素市場、非CO2ガス |
| 11月16日 | 日 | (-) |
| 11月17–18日 | 月・火 | 森林、海洋、生物多様性、中小企業、先住民、地域・伝統コミュニティ、子供と若者 |
| 11月19–20日 | 水・木 |
農業、食料システムと食料安全保障、漁業、家族農業、女性、ジェンダー、アフリカ系住民、観光 |
| 11月21日 | 金 | 閉会 |
第2部:COP30の核心 — 4大交渉トラックと1.5℃への狭き道
本章では、COP30の公式交渉(Formal Negotiation)における4つの主要な争点(緩和、資金、L&D、適応)を、最新のファクトに基づき徹底解剖します。COP30は、パリ協定の「ラチェット・メカニズム」が機能するかどうかの、最終的な「ストレステスト」の場です。
2-1. 【原理原則】「ラチェット・メカニズム」と「グローバル・ストックテイク(GST)」
COP30の重要性を理解するために、まずパリ協定の心臓部である「ラチェット・メカニズム」を理解する必要があります
これは、各国が5年ごとに、「前回よりも野心的な(Progressive)」NDC(排出削減目標)を提出し、世界全体の目標を「ラチェット(歯止め)」のようにカチカチと引き上げていく仕組みです
このサイクルこそが、COP30の重要性を決定づけています。
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[評価:C] 2023年 (COP28) に、第1回GST (GST-1) が実施されました
。5 -
[結果:C] その結果は「世界は1.5℃目標の軌道から大きく外れている」という「落第」でした
。39 -
[対応:A] 2025年 (COP30) は、その「落第」という結果(GST-1)を受けて
、各国が「2035年に向けた新しい(そして、より野心的な)NDC 3.0」を提出する、「対応」の年なのです40 。6
平易に言えば、ラチェット・メカニズムとは、**世界規模の「PDCAサイクル」です。GST-1が「C(Check=評価)」であり、COP30で提出するNDC 3.0が「A(Act=改善行動)」に相当します。COP30は、世界が「C(落第)」の結果を見て、「A(改善計画)」を本気で出せるかを試す、パリ協定の真価が問われる正念場です。
2-2. 交渉トラック1:【緩和】2035年NDCと「野心ギャップ」という現実
しかし、その「改善計画」の提出状況は、ベレン開幕直前時点で惨憺たるものです。
2025年10月28日、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局は、COP30に向けた「NDC統合報告書」を発表しました
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提出状況:9月30日の期限までに提出したのは、全締約国のうち、わずか64カ国
。43 -
カバレッジ:これは世界全体の排出量の約30%しかカバーしていません
。43 -
野心度:提出されたNDCが示す2035年の排出レベル(2019年比17%減)では、1.5℃目標達成に必要な排出レベル(IPCCシナリオ)よりも「2倍」も多い(=削減が全く足りていない)ことが示されました
。43
Climate Action Tracker (CAT) の2025年11月6日時点の分析でも、この厳しい状況が裏付けられています
さらに、CATの評価によれば、提出されたNDCのうち、米国、ブラジル、UAEなどの目標は「1.5℃非整合」と評価されています
これに対し、AOSIS(小島嶼国連合)は「祝う理由はない」と失望の声明を発表
ラチェット・メカニズムは、「手続き上は」機能していますが(一部の国が提出したため)、「実質上は」1.5℃目標との「野心ギャップ」を埋められず、失敗しつつあります。
この問題の核心は、インドのような大排出途上国の「遅延」にあります。インドはなぜNDCを出さないのか? ある報道は、その理由を「インドのNDCは、COP29(バクー)での気候変動資金の結果に対する失望を反映するものになるだろう」と示唆しています
これは、気候変動対策が科学の問題ではなく、「地政学的な人質交渉」であることを示しています。途上国(インド)は、先進国が(トラック2と3で議論する)「資金」を出すまで、「緩和(排出削減)」(トラック1)の野心を人質に取り、出し惜しみしているのです。
表2:主要排出国の2035年NDC提出状況と1.5℃整合性評価
(出典:46 に基づき作成)
| 国・地域 | 2035年NDC提出状況(11/6時点) | 1.5℃整合性評価(CATによる) |
| 中国 |
提出済み |
(分析中) |
| 米国 |
提出済み |
1.5℃非整合 |
| EU |
提出済み |
(分析中) |
| インド |
未提出 |
– (※COP29の資金結果への失望を理由に遅延 |
| 日本 |
提出済み |
(分析中) |
| 英国 |
提出済み |
1.5℃整合(国内目標) (※ただし国際金融の貢献は不足 |
| ブラジル |
提出済み |
1.5℃非整合 |
2-3. 交渉トラック2:【資金】「年間1.3兆ドル」へのロードマップ
トラック1(緩和)の失敗は、トラック2(資金)の失敗と表裏一体です。
COP29(バクー)では、2025年以降の新気候資金目標(NCQG)が設定されました。先進国から途上国への支援として、中核となる公的資金は「年間3,000億ドル」と合意されました
そこで、交渉決裂を避けるための政治的妥協として、「公的・民間含め年間1.3兆ドル」の気候資金を動員するという「呼びかけ」がなされ、その実現方法(How)を描くための「バクーからベレンへのロードマップ」の作成が、COP29の成果文書に「遅れて追加」されました
COP30は、この「1.3兆ドル」という天文学的な数字への、信頼に足る道筋(ロードマップ)を提示する責任を負わされています
しかし、ここにも深刻な「信頼のギャップ」があります。先進国は「2022年に1,160億ドルを動員した」と主張しています。しかし、途上国やNGOの分析によれば、その中身(実質的な贈与額)は「280~350億ドル」に過ぎず、3分の2近くが「債務を増やすローン(融資)」であると指摘されています
この対立の根源には、「共通だが差異ある責任(CBDR)」の原則があります
この「1.3兆ドル」の道筋が示されなければ、途上国がNDCの野心を(合理的に)引き下げることは、UNFCCCのNDC統合報告書がすでに証明しています。報告書によれば、「NDCを提出した締約国の66%が、その実施はキャパシティ・ビルディング支援(=資金)を受けることが条件である」と明記しているのです
2-4. 交渉トラック3:【損失と損害(L&D)】「空の基金」の危機
COP30における最大の火種であり、「信頼の欠如」を象徴する問題が、「損失と損害(L&D)対応基金(FRLD)」です。
この基金はCOP28で運用が決定し
しかし、その中身(資金)が伴っていません。これがCOP30における最大の危機です。
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拠出約束(Pledge)額(COP28以降):合計 約7億6,840万ドル
58 -
実際の入金(Paid-in)額(2025年11月時点):わずか 3億2,100万ドル
58
基金の半分以上が「空」(未入金)なのです。実際のニーズが数兆ドル規模
皮肉なことに、FRLDはCOP30期間中の11月10日に、「バルバドス実施モダリティ(BIM)」の下で、**最初の「資金要請の公募(CFR)」**を開始すると発表しています
L&D基金は、最初の一銭を分配する前に、深刻な「信頼性の危機」に直面しています。「空の基金」に「資金要請」を開始するという事態は、途上国にとって、先進国の「裏切り」の証左と映っています。この失敗は、トラック2(資金)の議論と、トラック1(緩和)の野心に、壊滅的な影響を与えます。
表3:「損失と損害」基金:約束と現実のギャップ(2025年11月時点)
(出典:58 に基づき作成)
| 項目 | 金額(米ドル) |
| 総拠出「約束(Pledge)」額 | 7億6,840万ドル |
| 総「入金(Paid-in)」額 | 3億2,100万ドル |
| 未入金額(ギャップ) | 4億4,740万ドル (58.2%が未入金) |
2-5. 交渉トラック4:【適応】「計測」の壁に挑む
最後の主要トラックが「適応」です。
「世界全体の適応目標(GGA)」はパリ協定
ここでの最大の問題は、「緩和(CO2トン)」と異なり、「適応」には単一の指標がないことです
この難題を解決するため、COP28で、GGAのための「測定可能な指標」を策定するための「UAE-ベレン作業計画」が開始されました
しかし、進捗は遅れています。専門家たちは、当初10,000近くあった指標の候補を、2年近くかけて100まで絞り込み、これをCOP30で合意する必要があります
これは単なる技術的な議論ではありません。「適応の指標」をめぐる戦いは、「責任(Liability)」をめぐる代理戦争です。
なぜ指標が重要か? 「計測(Measure)」できなければ、「管理(Manage)」も「要求(Demand)」もできないからです。「適応の指標」が合意されなければ、各国がどれだけ適応で遅れているか、どれだけ資金が必要か(=「適応ファイナンス・ギャップ」
もし「強靭性」に関する明確な指標が採択されれば、それは「ベースライン」となります。資金不足によってそのベースラインが達成されなければ、それは「適応の失敗」であり、自動的に「損失と損害(L&D)」の請求根拠となり得ます。
したがって、先進国は「責任」を問われにくい(=曖昧な)指標を、途上国は「責任」を問いやすい(=明確な)指標を求めて、水面下で激しく対立しています。COP30でこの指標群が合意されるか
第3部:【核心的課題】COP30の鏡が映し出す、日本の「脱炭素」の隘路
COP30は「実施のCOP(COP of Implementation)」です
本章では、このCOP30のレンズを通して、日本が提出した「野心的な目標(NDC)」と、その達成手段である「エネルギー基本計画」との間に横たわる、致命的な乖離と根源的な課題を明らかにします。
3-1. ファクト1:日本の「野心的」なNDC提出 (The “What”)
まず、日本の「目標(What)」です。日本は2025年のNDC 3.0をすでに提出しています
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2030年度:46%削減(2013年度比)、50%の高みへ
68 -
2035年度:60%削減(2013年度比)
68 -
2040年度:73%削減(2013年度比)
68 -
2050年度:ネットゼロ
68
日本政府はこれを、「1.5℃目標と整合的」であり、「ネットゼロへの直線的な道筋」に乗った「野心的な目標」として提出しています
表面上、日本はラチェット・メカニズム
3-2. ファクト2:目標を裏付ける「第7次エネルギー基本計画」 (The “How”)
次に、その「実施計画(How)」です。このNDC(特に2040年73%削減)を裏付ける国内の実施計画が、2025年2月18日に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画(SEP)」です
この計画が示す「2040年の電源構成目標」は以下の通りです。
-
再生可能エネルギー:40-50%
(内訳:太陽光 23-29%, 風力 4-8%, 水力 8-10%, 地熱 1-2%, バイオ 5-6%)71
-
原子力:約20% 71
(※第6次計画にあった「原発依存度低減」の方針は削除されました 71)
-
火力(化石燃料):30-40%
71
この「実施計画(How)」は、「目標(What)」との間に深刻な矛盾を抱えています。「2040年にGHGを73%削減」という野心的な目標
この「火力30-40%維持」という目標設定こそが、日本のエネルギー戦略全体を歪める「根源」です。日本の戦略は「クリーンエネルギーを最大化する」ことではなく、「既存の火力と原子力のシェアをまず確保し、残りを再エネで埋める」という発想で構築されています。この「火力枠(30-40%)」を正当化するために、後述する「アンモニア混焼」や「CCS」
3-3. 課題の特定(1):再生可能エネルギーの「上限」設定という構造的問題
日本の第一の根源的課題は、再生可能エネルギーのポテンシャルを意図的に低く見積もっている点にあります。
政府の2040年再エネ目標は「40-50%」です
REIは、政府の「40-50%」目標を「不十分」
コストとエネルギー安全保障の観点からも、この差は決定的です。
REIの「90%再エネ」シナリオは、低コストかつ「エネルギー自給率75%」を達成可能と試算しています 74。
一方、政府計画(SEP)は、原発を再稼働させても自給率30-40%に留まり、化石燃料と(後述する)アンモニアの輸入に依存し続け、地政学リスクが高いままです 74。
なぜ政府は「90%」のポテンシャル
日本の根源的課題は、再エネのポテンシャル(技術や資源)の欠如ではありません。それは「政策的な選択」です。第7次エネ基は、再エネを主力電源化するための計画ではなく、「既存の火力・原子力発電所の稼働率を維持するため」に、再エネの導入量に「事実上の『上限(キャップ)』」をはめている計画なのです。
これは、COP28(GST-1)で世界が合意した「2030年までに世界全体で再エネ設備容量を3倍にする」というグローバルな潮流
3-4. 課題の特定(2):高コスト・高リスク技術への依存と「移行」の罠
日本の第二の根源的課題は、第一の課題(再エネキャップ)から必然的に生じる「症状」です。
「火力30-40%」枠
1. 経済性(高コスト)
REIの指摘によれば、これらの技術は「莫大なコスト」がかかります 72。
-
アンモニア混焼(石炭):23.1円/kWh
72 -
水素混焼(LNG):29.9円/kWh
72 -
石炭+CCS:27.6円/kWh 72
バークレー校の分析によれば、これは「90%クリーン電力網」(試算で約10.5円/kWh、70ドル/MWh)の2倍以上のコストです 76。
2. 環境(高排出)
アンモニア混焼は「クリーン」ではありません。ブルームバーグNEF(BNEF)の分析では、「アンモニア50%混焼」の火力発電所は、最新の「天然ガス火力」よりも多くのCO2を排出すると結論付けられています 77。現在「実現可能」な混焼率は最大20%に過ぎず、2030年代の100%専焼に期待するのは「失敗運命づけられた戦略」です 78。
3. 安全保障(輸入依存)
この戦略はエネルギー安全保障にも寄与しません。国産のクリーンアンモニアは高すぎるため 77、結局、高価なアンモニアのほぼ全量を輸入に頼ることになり、化石燃料がアンモニアに置き換わるだけです 79。
4. 真の目的(座礁資産)
専門家は、この戦略の真の目的を「石炭火力の閉鎖時期を決定せず、既存の石炭火力の『延命策』」 79 に他ならないと指摘しています。これは「新たな世代の座礁資産」を生み出す「移行リスク」そのものです 78。
日本のアンモニア混焼戦略は、石炭産業(既存の電力会社)を淘汰するという「政治的決断」を避け
さらに最大の問題は、日本がこの破綻したモデルを「アジア輸出戦略」としていることです
表4:日本の2040年電源構成:政府計画 vs REI試算 の比較
(出典:71 に基づき作成)
| 項目 | 政府「第7次エネルギー基本計画」 | 自然エネルギー財団(REI)「90%シナリオ」 |
| 再生可能エネルギー | 40-50% | 90%以上 |
| 原子力 | 約20% | (-) |
| 火力(CCS・アンモニア等) | 30-40% | 10%未満(調整力など) |
| エネルギー自給率 |
30-40%(原発含む) |
約75% |
| コスト評価 |
非常に高コスト |
低コスト |
| 戦略的リスク |
高コスト・輸入依存・座礁資産 |
(-) |
3-5. 結論的示唆:「公正な移行(Just Transition)」の真の意味
COP30は「公正な移行(Just Transition)」を中心テーマの一つに据えています 63。
「公正な移行」とは、単なる排出削減ではなく、その過程で必然的に衰退する産業(石炭など)から、取り残される労働者や地域社会への影響を最小限に抑えるため、政府が調整的アプローチ 80 を取り、社会保障や再教育を通じて「システム変革」 81 を導くプロセスです 83。
日本の「アンモニア戦略」は、この「公正な移行」の対極にあるアプローチです。
「公正な移行」とは、石炭産業からの「撤退(Phase-out)」を計画し、「労働者」の移行を支援するプロセスです。
一方、日本の戦略は、石炭産業の「既存資産(火力発電所)」を「保護・延命」するために巨額の追加資本を投下する 79 ものであり、「労働者の移行」ではなく、「既存資産の延命」に焦点を当てています。
これが、COP30の鏡に映し出された、日本の脱炭素における「根源的かつ本質的な課題」です。
第4部:結論 — ベレンの森から日本が学ぶべきこと
ブラジル・ベレンで開幕するCOP30
議長国ブラジルは、TFFF(熱帯林永久基金)
しかし、世界は1.5℃のテストに「落第」しつつあります。UNFCCCが突きつけたNDC統合報告書
この絶望的な状況下で、日本は一見、「優等生」のように見えます。「2035年60%削減」
しかし、COP30が問う「実施(Implementation)」
日本が世界に提示した「実施計画」は、最も安価でクリーンな解決策(再エネ)のポテンシャル
日本が世界の脱炭素で真のリーダーシップを発揮する道は、高リスクなアンモニア技術
日本がベレンの森から学ぶべきことは、国内に眠る「90%」の再エネ・ポテンシャル
第5部:COP30徹底理解FAQ(AI検索最適化)
Q1: COP30の主な目的は何ですか?
A: 2023年の第1回グローバル・ストックテイク(GST)5 で判明した「1.5℃目標達成の深刻な遅れ」に対応するため、各国が2035年までの新しい排出削減目標(NDC 3.0)を提出し、「実施(Implementation)」を加速させることが最大の目的です 6。
Q2: 2035年のNDC(国が決定する貢献)とは何ですか? なぜ重要なのですか?
A: パリ協定の「ラチェット・メカニズム」 34 に基づき、各国が5年ごとに提出する、より野心的な気候変動対策計画です。2025年に提出されるNDC 3.0は2035年までの目標を定めるもので、1.5℃目標の達成に向けた今後10年間の道筋を決めるため、極めて重要です 6。
Q3: 「損失と損害(ロス&ダメージ)基金」の現状はどうなっていますか?
A: 基金は運用開始段階ですが、深刻な資金不足に直面しています。2025年11月時点で、各国からの拠出「約束額」(約7.68億ドル)に対し、実際の「入金額」はわずか3.21億ドルに留まっており、その信頼性が揺らいでいます 58。
Q4: ブラジルが提案する「TFFF(熱帯林永久基金)」とは何ですか?
A: 従来の「援助」ではなく、「投資」モデル 22 を用いた1,250億ドル規模の基金です 15。熱帯雨林国が森林を伐採せず「保護」することに対して、基金の運用益から「成果報酬」を支払い、森林保護を経済的に価値のあるものに変えようとする革新的な試みです 19。
Q5: 日本の脱炭素における「アンモニア混焼」の問題点は何ですか?
A: 日本のエネルギー基本計画 71 の柱ですが、(1)再エネの2倍以上という「高コスト」 72、(2)50%混焼でも最新の天然ガス火力よりCO2排出が多い「低い削減効果」 77、(3)燃料の「輸入依存」 79、(4)古い石炭火力を延命させる「座礁資産リスク」 78 など、多くの専門家から深刻な問題が指摘されています。
第6部:ファクトチェック・サマリー
本レポートは、2025年11月6日時点でクロールされた公開情報を基に構成されています。主要なファクトは以下の通りです。
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COP30日程:2025年11月10日~21日、ブラジル・ベレン
。1 -
NDC統合報告書:UNFCCCが2025年10月28日に公表。9月30日時点で64カ国(排出量30%)のみが提出。提出された目標では、1.5℃目標達成に必要なレベルに対し「2倍」の排出量となる見込み
。43 -
L&D基金:拠出約束額7億6,840万ドルに対し、実際の入金額は3億2,100万ドル(2025年11月時点)
。58 -
TFFF:11月6日にリーダーズ・サミットで正式発足。目標1,250億ドル。ノルウェーが30億ドルの拠出を表明(条件付き)
。英国は拠出を拒否25 。21 -
日本のNDC:2035年度 60%削減(2013年度比)、2040年度 73%削減
。68 -
日本のエネ基(2040年目標):第7次エネルギー基本計画(2025年2月決定)は、2040年の電源構成を、再生可能エネルギー 40-50%, 原子力 ~20%, 火力 30-40% と設定
。71 -
エネ基への批判:自然エネルギー財団(REI)は「再エネ90%」が可能と試算
。政府計画のアンモニア混焼やCCSは、再エネの2倍以上の高コスト74 であり、石炭火力の延命策72 であると批判されている。79
全てのファクトは、UNFCCC、ブラジル政府(cop30.br)、主要シンクタンク(WRI, IISD, CAT, REI)、信頼できる報道機関(Reuters, AP, The Guardian, Carbon Brief)の公開情報(スニペットとして提供)に準拠しています。
第7部:出典・参考文献一覧
(本レポートは提供されたリサーチ素材のみに基づいて構成されています。以下は参照したURLの完全なリストです。)
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COP30: What does the ‘Baku to Belém roadmap’ mean for climate finance?
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https://www.wri.org/insights/assessing-2025-ndcs
https://climateactiontracker.org/publications/mid-year-check-on-2035-climate-plans/
Analysis: 95% of countries miss UN deadline to submit 2035 climate pledges
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Indigenous delegates prepare for COP30 with focus on justice, land and finance
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https://buescholar.bue.edu.eg/cgi/viewcontent.cgi?article=1090&context=cop30
https://www.wri.org/insights/loss-damage-climate-change
https://climateactiontracker.org/countries/japan/2035-ndc/
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https://www.journalofpoliticalscience.com/uploads/archives/7-1-49-840.pdf
https://www.bsg.ox.ac.uk/blog/thirty-years-common-differentiated-responsibility-why-do-we-need-it-ever-more-today
https://www.nyuelj.org/wp-content/uploads/2019/07/Harris_Common_But_DIfferentiated_Responsibility.pdf
What is the just transition and what does it mean for climate action?
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https://www.eesi.org/briefings/view/112723cop
https://napglobalnetwork.org/wp-content/uploads/2025/07/napgn-en-2025-global-stocktake-nap-process-1.pdf
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COP30 Global Ethical Stocktake Initiative and the Earth Charter
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https://cop30.br/en/brazilian-presidency/cop-30-circles/global-ethical-stocktake
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https://centerforearthethics.org/our-work/global-ethical-stocktake/
COP30: What does the ‘Baku to Belém roadmap’ mean for climate finance?
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https://www.reccessary.com/en/news/cop30-global-goal-on-adaptation
https://www.iisd.org/articles/explainer/climate-change-adaptation-cop-30
https://www.concern.net/news/cop30-climate-conference-what-to-expect
Q&A: COP30 could – finally – agree how to track the ‘global goal on adaptation’
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https://www.wri.org/insights/global-goal-on-adaptation-explained
https://unfccc.int/sites/default/files/resource/GGA_dt_sb62_2.pdf
https://sdg.iisd.org/events/unfccc-cop30-high-level-meeting-of-the-baku-dialogue-on-water-for-climate-action/
https://www.c2es.org/wp-content/uploads/2025/04/C2ES-Baku-Adaptation-Roadmap-Submission.pdf
https://www.uneca.org/eca-events/sites/default/files/resources/documents/ACPC/cop29/gga_cma2024_l20_adv.pdf
https://www.mitsui.com/solution/contents/solutions/re/the-7th-strategic-energy-plan
https://gspp.berkeley.edu/assets/uploads/page/Japan_ammonia_co-firing_working_paper.pptx.pdf
https://www.e3g.org/wp-content/uploads/E3G-Briefing-Challenging-Japans-promotion-of-ammonia-co-firing-for-coal-power-generation.pdf
https://about.bnef.com/insights/clean-energy/japans-ammonia-coal-co-firing-strategy-a-costly-approach-to-decarbonization-renewables-present-more-economic-alternative/
https://www.transitionzero.org/insights/japans-toxic-narrative-on-ammonia-cofiring
https://www.e3g.org/wp-content/uploads/E3G-Briefing-Challenging-Japans-promotion-of-ammonia-co-firing-for-coal-power-generation.pdf
https://www.renewable-ei.org/en/activities/reports/20241220.php
https://www.wri.org/insights/financing-nature-conservation-tropical-forest-forever-facility
https://cop30.br/en/news-about-cop30/over-usd-5-5-billion-announced-for-tropical-forest-forever-facility-as-53-countries-endorse-the-historic-tfff-launch-declaration
COP30: Could Brazil’s ‘Tropical Forest Forever’ fund help tackle climate change?
https://www.cgdev.org/blog/what-were-watching-cop30
https://fiscalnote.com/blog/understanding-cop30
https://www.theguardian.com/environment/2025/nov/06/who-are-the-major-players-at-cop30-and-what-do-they-want
https://www.wri.org/news/statement-brazil-launches-tropical-forests-forever-facility
Norway pledges $3bn in boost for Brazil-led tropical forest fund
https://cop30.br/en/news-about-cop30/tropical-forests-forever-facility-tfff-proposes-innovative-financing-model-for-conservation
https://www.theguardian.com/environment/2025/nov/06/tropical-forest-forever-fund-proposed-cop30-tackle-climate-change
https://www.wri.org/insights/financing-nature-conservation-tropical-forest-forever-facility
https://www.theguardian.com/environment/2025/nov/05/were-leading-the-way-starmer-defends-plans-for-green-economy-before-cop30
https://earthshotprize.org/winners-finalists/tropical-forest-forever-facility/



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