お話を伺った方

環境省 近畿地方環境事務所 環境対策室長 鈴木 啓太様

業種

行政

背景:低迷する補助金利用率という課題

ー本日はお忙しい中、ありがとうございます。まず、重点対策加速化事業の現状について教えてください。

はい。重点対策加速化事業(以下、重点事業)は、各自治体が太陽光発電設備等の導入を促進するための補助制度なのですが、実は大きな課題を抱えていました。多くの自治体で執行率が非常に低く、予算を有効活用できていない状況でした。

ー具体的にはどの程度の執行率だったのでしょうか?

例えば、人口10万人規模の自治体で、年間120件以上のFIT住宅太陽光が設置されているにも関わらず、重点事業の補助金は1件しか利用されていないというケースもありました。これは非常に深刻な状況でしたね。

根深い誤解:「非FITはFITより経済性がない」という常識

ーなぜそのような低い利用率になってしまったのでしょうか?

最大の要因は、販売事業者から自治体まで、業界全体に「非FITの太陽光はFITに経済的に勝てない」という固定観念が根強くあったことです。誰もが「FITで売って儲けましょう」と言うんですが、実は誰も定量的な数字を持っていませんでした 。

ーつまり、感覚的な判断で非FIT案件が敬遠されていたということですね。

そうです。補助金を活用した非FIT太陽光では、FITに「2000パーセント負ける」といった極端な表現まで使われていましたが、実際に検証した人はいませんでした。これでは何も前に進まないということで、まずはファクトを検証する必要があると判断しました 。

エネがえる導入の決断:客観的データの必要性

ーそこでエネがえるの活用を決めた経緯を教えてください。

きっかけは、出向元でエネがえるBiz版を利用していた同僚からの紹介で知りました。自分で色々調べてみると、エネがえるは経済シミュレーション分析の草分け的な存在だと知り、家庭用と事業者用で、売電目的ではなく自家消費サイズの100kW、200kW程度の規模でやってみた時の経済性を詳しく分析してみることにしました。

底的な分析:30パターン以上のシミュレーション

ー実際にはどの程度のパターンを分析されたのでしょうか?

個人用だけでも20パターン以上、事業者用と合わせて30弱ぐらいのパターンを分析しました 。個人向けでは、大阪府内在住の4人家族(共働き)を基本データセットとして、オール電化かガス併用か、蓄電池の有無などで分岐させるなど、様々な角度から分析をしました。

事業者向けはどのような分析をされましたか?

事業者向けでは、大型スーパーから始まって、ホームセンター、ドラッグストア、大型のレストランチェーン、さらに製造業の中規模・小規模工場、デイサービスなどの事業所も含めて幅広く分析しました 。

驚きの結果:非FIT+補助金の圧倒的優位性

ーシミュレーション結果はどうでしたか?

結果は我々の予想を大きく上回るものでした。個人向けでは、太陽光5kW、蓄電池9.8kWhをセットで導入した場合、オール電化では毎月の電気代が約19,000円から6,000円に、つまり約1/3に削減できることがわかりました 。ガス併用でも約6割削減できます。

ー具体的な経済効果はいかがでしたか?

15年間の総経済効果で比較すると、FITの場合はオール電化で約280万円、ガス併用で約199万円でした。一方、非FITの場合はオール電化で約279万円、ガス併用で約184万円でした。蓄電池をセットにすると、発電した電気をほとんど自家消費できるので余剰電力が出ず、FITでも非FITでも経済効果に大きな差がないということが分かりました

ーそれに加えて重点事業の補助金約80万円が上乗せされるということですね。

その通りです。自治体によって補助額が異なる場合はありますが、7万円/kW×5kW=35万円の太陽光補助金と、蓄電池価格×1/3=約45万円の蓄電池補助金で、合計約80万円です。これを加味すると、「非FIT+補助金セット」が、近畿で一番お買い得であることが定量的に証明されました 。

事業者向けでも明確な投資回収効果

ー事業者向けの結果はいかがでしたか?

中規模工場(100kW導入)では年間電気代約195万円の削減、補助金活用により投資回収は約8年 。小規模工場(40kW導入)では年間電気代約84万円の削減、補助金活用により投資回収は約7年 。大規模スーパー(180kW導入)では年間電気代約400万円の削減、補助金活用により投資回収は約7年という結果でした 。特に大型冷凍冷蔵設備を持つスーパーなどは、季節・曜日問わず基底負荷が高く、日中の太陽光発電を余すことなく活用できるため、非常に高い経済効果が期待できることがわかりました 。

ーどの業種でも明確な経済メリットが示されたということですね。

 はい。これは、事業者にとって非常に魅力的な投資判断材料となります 。

説明資料の作成と業界への展開

ーこの結果をどのように活用されましたか?

エネがえるの分析結果をもとに、重点事業についての個人向けと事業者向けの広報資料を作成しました。これらの資料は、シミュレーション結果を表示して経済的メリットを強調し、導入効果を目立つように表示しています。

ー具体的にはどのような内容でしょうか?

重点事業について、国の削減目標、削減目標達成に向けた重点事業の意義、重点事業の現状と課題認識、 経済性分析、 重点事業を知り、使っていただくための取組、使い勝手を高めるための取組についてまとめた資料を作成し、自治体や販売店に向けて説明会を行いました。

この説明会の中で、エネがえるを活用した経済性分析の結果として定量的なデータを示しました。

また、チラシを作成し、表面では、太陽光発電設備導入の効果とシミュレーション結果を大きく表示し、経済性メリットを強調しました 。例えば、個人の方向けには、「手取り増!毎月の電気代を大幅削減。FITよりお得」といったキャッチフレーズと共に、オール電化とガス併用の場合の電気代削減額を具体的に示しました 。事業者向けには、「コスト削減!毎月の電気代削減&電力価格高騰対策」「脱炭素経営!企業価値向上!」といったメリットを提示し、具体的な業種ごとの電気代削減額と投資回収年数を明記しました 。

裏面では、重点対策加速化事業の選定自治体一覧(2025年2月時点)を掲載し、お住まいの地域が対象かどうかを確認できるようにしました。また、「近畿地方再エネ導入促進のための協力宣言事業者登録制度」の案内を掲載し、この制度に登録した事業者のリストを確認できるウェブサイトへのQRコードも設けました 。さらに、事業者向け資料には一般的な太陽光発電設備の導入フローを提示し、個人向け資料には余剰電力の買取事業者について案内しました。販売店が営業活動で活用できるよう、社判などを押せる欄も設けています 。

これらの広報資料、つまりこの説明資料自体が、自治体や金融機関、そして特に最前線で活動するメーカー、商社、販売店の皆様へのアプローチに用いた重要なツールです 。私たちは、これらの資料を持って直接説明に赴き、自治体にも同様の広報資料の作成を呼びかけました 。この資料を配布し、内容を説明することで、補助金の経済的メリットがどれほど大きいかを定量的に示し、これまで補助金活用に懐疑的だった方々の意識を変えることができたのです 。

劇的な意識変化:販売事業者の反応

ー販売事業者の反応はいかがでしたか?

とてもいい反応でしたね。やはり定量的な効果を示せるのはビジネスにおいては非常に大切で、太陽光販売事業者、商社系、金融関係、みんな、もう真剣に話を聞いてくれます。これを見せると、「本当ですね」といった反応が返ってきますね 。

ー具体的にはどのような変化がありましたか?

 30社ぐらいの販売店にヒアリングしたんですが、多くの人が「本当だ」という感じでした 。中には「うますぎる話で怪しい」として、メーカーに電話して裏取りを始めた販売店もありました(笑)。でも、本当だとわかって、従来活用していた補助金より、重点事業の補助金を優先して活用する方針にしたという事業者もいます 。

自治体の変化:執行率の劇的改善

ー自治体側の変化はいかがでしたか?

まず、我々自身が自信を持って各所で話すことができるようになりました。今までは「脱炭素にいいんです、レジリエンスにいいんです」といった定性的な説明でしたが、「あなたにとってこれだけ経済メリットがあります」という定量的な分析を示せるようになったのです 。

ーその結果、執行率に変化はありましたか?

はい、劇的に改善しました。例えば、過去3年間で2件しか実績がなかった自治体が、開始から1ヶ月半で数倍もの実績を達成したケースや、既に住宅太陽光予算は使い切り、省エネ機器などのために用意していた予算を住宅太陽光に振り替える検討を始める自治体も出てきています 。奈良市の事業者向けでは、もう予算が売り切れている状況です。問い合わせもものすごく増えていますね。

ー 具体的な数字で示せることの効果は大きかったということですね。

そうです。確実に変わっている兆しがあります。手応えを感じている状況ですね。

政策立案への影響:データ駆動の意思決定

ーエネがえるの分析結果は政策立案にも影響を与えましたか?

はい、大きく影響しました。従来は「太陽光はFITで売るもの」という常識がありましたが、この分析によって常識の転換、すなわち「太陽光は『売電』ではなく『自家消費』の時代」だということを示すことができました。我々も確信を持てたので、行政サイドも事業者サイドも消費者サイドも、みんなウィンウィンなスキームだということがわかりました。

ーそれによって施策も変化したということでしょうか?

 そうです。今までは自治体も「どうしていいかわからない」という状況で止まっていました。しかし、このような定量分析があることを我々自身も学ばせていただき、それを活用することで、周知資料も作成でき、補助金の使い勝手も高まりました。

エネがえる活用の推奨ポイント

ー環境省として、エネがえるを自治体や事業者におすすめできるポイントは何でしょうか?

 一番は、太陽光促進の基盤となる経済シミュレーション分析の重要性です。太陽光は説得商材と言われています。経済性があると言われても、では導入しようと能動的にアプローチする人は少ない。そこで納得感を高めるツール、透明性を高めるツールとして絶対に有効だと思います。

ーシミュレーション代行サービスについてはいかがですか?

 我々のような行政機関にとって、自分たちでシミュレーション分析ツールを開発し、常に最新のデータをシステムにインプットして運用するのは難しいので、代行サービスは非常にありがたいです 。特に説明責任が問われる行政の立場では、「何を根拠に言っているのか」と聞かれた時に、「エネがえるです」とすぐに答えられる 。業界ナンバーワンの信頼性があるので、ありがたく活用させてもらっています 。

メッセージ:データが変える太陽光市場の未来

ー最後に、この取り組みの意義について聞かせてください。

この取り組みの最大の成果は、太陽光を導入する場合の経済的メリットを定量的に説明できるようにしたことです。これまで感覚的に判断されていた市場に、客観的な分析結果というデータに光を当てることができました。

ー実際の申請率向上という結果にも表れていますね。

そうです。データがあることで、行政サイドも事業者サイドも消費者サイドも、みんなが自信を持って判断できるようになりました。これが政策の成功につながっていると思います。

ー今後、他の地域でも同様の取り組みが広がることを期待されていますか?

ぜひ広がって欲しいですね。近畿で圧倒的な成果を出して、他の地域でも広まっていくといいなと思います。

ーエネがえるとしても、このような政策支援により多くの地域で太陽光導入が進むことを願っています。

取材を終えて

この取材を通じて見えてきたのは、定量的なデータが持つ圧倒的な説得力でした。「非FITはFITに勝てない」という業界の常識を、エネがえるによる詳細なシミュレーション分析が完全に覆したのです。

特に印象的だったのは、鈴木室長が繰り返し強調していた「定量分析の重要性」です。感覚的な判断ではなく、具体的な数字で示すことで、販売事業者から自治体まで、すべてのステークホルダーの意識を変えることができたという事実は、太陽光業界にとって大きな示唆を与えています。

また、補助金申請率の劇的な改善という結果は、適切なツールと正確なデータがあれば、政策の実効性を大幅に向上させることができることを証明しています。環境省近畿地方環境事務所とエネがえるの協働は、データ駆動型政策立案の成功事例として、今後多くの地域で参考にされることでしょう。

太陽光発電の普及促進において、経済性の見える化がいかに重要かを改めて認識させられる、貴重な事例取材でした。

参考ソリューション

参考:国際航業、エコリンクスと提携し、再エネ導入・提案業務を支援する 「エネがえるBPO/BPaaS」を提供開始 経済効果の試算・設計・補助金申請・教育研修を1件単発から丸ごと代行まで柔軟に提供 ~経済効果試算は1件10,000円から 最短1営業日でスピード納品~ | 国際航業株式会社 

参考:「自治体スマエネ補助金データAPIサービス」を提供開始 ~約2,000件に及ぶ補助金情報活用のDXを推進し、開発工数削減とシステム連携を強化~ | 国際航業株式会社 

参考:わずか10分で見える化「投資対効果・投資回収期間の自動計算機能」提供開始 ~産業用自家消費型太陽光・産業用蓄電池の販売事業者向け「エネがえるBiz」の診断レポートをバージョンアップ~ | 国際航業株式会社 

参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 ~大手新電力、EV充電器メーカー、産業用太陽光・蓄電池メーカー、商社が続々導入~ | 国際航業株式会社 

 

「エネがえる」が環境省の脱炭素推進を支援 ~補助金申請が劇的に増加した定量分析の力~

概要
近畿地方環境事務所 - 環境省
政策 地域脱炭素、資源循環、環境保存対策、自然環境の保全管理、野生生物の保護管理、自然環境の整備
サイト https://www.nextenergy.jp/

無料30日お試し登録
今すぐエネがえるBizの全機能を
体験してみませんか?

無料トライアル後に勝手に課金されることはありません。安心してお試しください。

たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
たった15秒でシミュレーション完了!
誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!