なぜ電力会社がデータセンター事業を本格化させるのか? 〜AI競争・電力需要爆発・脱炭素の三位一体シナリオ徹底解析(2025–2035年)〜

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樋口 悟(著者情報はこちら

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太陽光発電の義務化の背景には「脱炭素社会」に向けた動きがある
太陽光発電の義務化の背景には「脱炭素社会」に向けた動きがある

 

目次

なぜ電力会社がデータセンター事業を本格化させるのか? 〜AI競争・電力需要爆発・脱炭素の三位一体シナリオ徹底解析(2025–2035年)〜

【10秒まとめ】

  • 2024年現在、データセンターが消費する電力量は世界電力需要の約1.5%

  • AI(特に生成系AI、LLM)向けの学習・推論需要により、2030年には3%超へ倍増が確実視。

  • 巨大電力を安定・低炭素で供給できるのは、もはや電力会社だけ

  • 電力会社は「発電」だけでなく「デジタルインフラ」事業者への変貌を迫られている。

  • 新時代の勝者は、“Compute as a Utility(演算力の公共事業化)”モデルを制する者。

第1章 電力会社はなぜデータセンター事業に参入するのか?

1-1 AIブームがもたらす電力需給パラダイムシフト

2022年末のChatGPT公開以降、生成系AI市場は爆発的な拡大を見せ、これに比例してGPUクラスター、超大規模モデルの学習・推論インフラへの需要が急増しています。
このトレンドにより、データセンターの電力消費は世界電力需要の中で異例のペースで増大しています。

IEA(国際エネルギー機関)による2024年最新レポートでは、世界のデータセンター電力需要は

  • 2022年:約460TWh(世界電力消費の1.5%)

  • 2030年予測:1,050TWh以上(3.1%超)
    とされ、約2.3倍への急増が確実視されています(IEA Data Centers 2024 Report)。

特に生成系AIでは、単一モデル(例:GPT-4クラス)のトレーニングだけで数百MWhの電力を消費し、推論フェーズでも高い継続的負荷が発生します。

※参考:OpenAIのGPT-4推論運用だけで、単月1GWh超消費という試算も存在。

この膨大な電力負荷を低炭素・安定・経済的に支えるプレイヤーとして、電力会社の役割が不可欠になりつつあります。

1-2 GAFAM、中国BATの「AI演算力戦争」最前線

企業2024年CAPEX(推定)AI戦略電源確保策
Microsoft$29B(日本¥4,500億投資)Azure AI拡大・Copilot普及原子力PPA検討・液冷DC導入
Google$30B超TPU v6e量産・Gemini推進自社再エネファーム併設DC
Amazon$14BBedrockサービス拡大自社太陽光ファームと直結
AlibabaRMB 50B超国産AIチップ量産中国西部グリーンハブ連携
Tencent非公開ゲームAI・生成AI強化西部冷却最適地DC増設

世界各国のデジタル覇権争いにおいて「演算力(Compute)」は新たな戦略資源となり、

  • 土地×電力×冷却 を制するものが勝つ
    時代が到来しています。

特に中国では国家戦略「東数西算」(東部消費地→西部計算資源シフト)を掲げ、
2025年までに8大国家級ハブ+100GW級データセンター建設が進行中です(China’s National Computing Hub Plan 2024)。


1-3 電力会社参入の経済合理性

電力会社がデータセンター事業に乗り出す理由は、単なる電力販売量確保ではありません。
実際には以下のような深い構造的インセンティブが存在します。

ロジック説明
安定収益化DC向けPPA契約は10-15年スパン。レートベース(規制資産)投資としても優秀。
WACC優位通常のハイテク企業より低い調達コストでCAPEX回収可能。
系統接続加速T&Dインフラを自社保有、短納期接続が可能。
再エネ余剰吸収昼間太陽光・夜間原子力の無駄電力をデータセンター負荷で吸収。
熱回収・DRマネタイズ廃熱利用・系統調整力として副収益源確保。

このため、北米のDominion Energy、Duke Energy、日本では関電(KEPCO)、東電(TEPCO PG)など、
続々と電力会社が自社敷地内DC建設またはJV出資を開始しています。

第1章(続き) ケーススタディ:電力会社×データセンタービジネス最前線

【事例1】関西電力 × CyrusOne — 大阪・北摂48MWデータセンター

  • **関電(KEPCO)**が土地・電力インフラ・系統強化を担当。

  • CyrusOne(米大手DC事業者)が設計・建設・運営を担当。

  • 出資比率:関電49%、CyrusOne 51%。

  • 需要先:生成AI開発企業、国内SaaS・Fintechプレイヤー。

  • 電源構成:再エネPPA+系統冗長、非常用天然ガス発電併設。

このモデルにより、関電は「単なる電力販売」ではなく、
データセンター収益+電力販売収益+系統使用料という三重の収益パターンを確立しています。
参考:KEPCO-CyrusOne Press Release 2024)


【事例2】東京電力パワーグリッド × NTT都市開発 — 千葉・印西ハイパースケールDC

  • TEPCO PGが系統強化と送電品質保証を担当。

  • NTT UDがDC設計・管理・リーシングを担当。

  • 目標:2030年までにCO₂フリー運用比率90%達成。

  • 再エネPPA:自社再エネ+グリーン電力証書活用。

  • バックアップ:10MW級リチウムイオン蓄電池を併設。

特筆すべきは、
**“電源直結型データセンター”**として設計段階からPPA契約を前提にしている点です。

日本の送配電規制下でも、官民連携モデルで脱炭素×高信頼DC構築が可能である好例といえます。
参考:TEPCO×NTT都市開発連携記事 2024)


第2章 2025-2035年:電力×データセンター×AI 爆発的進化シナリオ

2-1 世界の電力需要マクロ見通し(データセンター分野)

世界DC電力需要(推定)増加要因備考
2025520TWhAI推論サービス拡大1.8%シェア
20301,050TWhLLM学習+AI-native SaaS本格化3.1%シェア
20351,450TWhIoT・自動運転・AGI推進4.2%シェア
  • AI推論:LLM推論(推測型負荷)が常時電力を引き続き消費。

  • 学習系(Training):スーパーコンピューティング並みの巨大負荷を発生。

  • Edge推論:産業IoT・自動車・都市監視など末端端末も増加。

(参考:IEA 2024 Data Centers Outlook)


2-2 技術トレンド分析(データセンター分野)

① 液浸冷却・直接液冷の普及

  • PUE(Power Usage Effectiveness)は

    • 従来型DC:1.4〜1.6

    • 液冷DC:1.05〜1.1
      まで低下。

  • ラックあたり電力密度も

    • 従来:10–20kW/ラック

    • 液冷DC:40–80kW/ラック
      へと大幅増。

→AI/HPC用途では液冷以外の選択肢が消えつつあります。


② 小型モジュール炉(SMR)+マイクログリッド

  • AWS・Duke Energy・Dominion Energyなどが、SMR+DC構想を推進。

  • SMRの出力帯は50–300MWクラスで、ハイパースケールDC1〜3拠点をカバー可能。

  • 再エネでは供給不安定だが、SMRなら24/7運用可能なため、
    AI需要向け最適電源と位置付けられつつあります。

(参考:US Department of Energy SMR-DC Roadmap 2024)


③ 直結型再エネ・脱炭素ファームモデル

  • Google、Microsoft、Metaが、風力・太陽光ファームをDC直結(ダイレクトファーム)化。

  • 中間送電網を介さず、発電側から直接DCに電力を流すことで

    • 電力損失-5%〜-10%

    • CO₂排出係数実質ゼロ
      を達成しています。

特に、GoogleはIntersect社と組み、**「再エネ直結型DC+液冷」**を構築し

2-3 地政学・政策ファクターの影響

米国・EU:AIと電力に対する新たな規制圧力

  • **AI Compute-neutrality Tax(仮称)**構想

    • 2030年代前半までに、大規模データセンター運営者に対して、

      • 消費電力量に応じた課税

      • Scope2(二次的温室効果ガス排出)厳格化
        を課す動きが始まっています。

  • 既に米カリフォルニア州では、DC新設時の「100%再エネ条件」が規制化されつつあります。

➡️ 「低炭素+低コスト電源調達力」が企業立地の最大競争力となる時代が迫っています。


中国:「東数西算」国家級ハブ2.0へ

  • 西部(内モンゴル、甘粛、青海)に巨大グリーンデータセンター群を建設し、

  • 超高圧直流送電(UHVDC)で東部消費地にデータを仮想転送する国家プロジェクト。

  • 2024年現在、8拠点(北京、天津、広州、成都等)にて稼働開始。

  • 2025年までに計100GW規模のデータセンターキャパシティを目指しています。

(参考:China’s East-to-West Data Computing Plan Update 2024)


日本:GX基本方針とデータセンターアクセス電源政策(構想)

  • GX基本方針2024において、

    • 「再エネ×系統直結型データセンター群」を推進対象に明記。

  • さらに、2025年以降、“データセンターアクセス電源”

    • 再エネ/原子力限定+レートベース(規制資産化)
      という新制度で支援する議論が進行中です。

➡️ 電力会社がデータセンターを「公益インフラ」として扱う流れが加速します。


第3章 ビジネス機会マップ(2025–2035)

3-1 電力会社がつかむべき6大収益源

カテゴリ内容2030年市場規模推計
データセンター向け長期PPA再エネ+原子力PPAスプレッド販売$65B
コロケーションJVモデル関電型共同出資運営モデル$25B
ネットワーク+DX付帯事業専用光ファイバー、Edge POPサービス$18B
廃熱ヒートネット地域冷暖房・ヒートリカバリ$7B
バーチャルバッテリー/DRDC併設蓄電池の需給調整活用$9B
AI-as-a-Utility(Compute販売)自社HPC資源の切売りサービス$30B

3-2 エネルギー関連事業者の新規事業チャンス

① Power-First Site Selection Platform

  • 系統余力、土地コスト、光ファイバー敷設距離、冷却水リソースなど
    「データセンター立地適性マップ」を統合解析。

  • エネがえる型プラットフォーム化で地域最適配置+即時提案。

② 三位一体パッケージ(再エネ+蓄電池+DC)

  • 50MWクラス太陽光/風力

  • 4時間系蓄電システム(BESS)

  • 10MWクラスEdgeデータセンター
    のパッケージを一括提案・一括建設。

③ SMR-Ready PPA提案

  • SMR(小型モジュール炉)完成前の期間、
    再エネ+REC(再エネ証書)で供給代替。

  • COD(Commercial Operation Date)後に原子力供給へシフト。

④ AIディマンドレスポンスプラットフォーム

  • LLM推論負荷を、JEPXスポット価格や周波数安定状況に合わせて動的制御。

  • 需要応答市場(Capacity Market、DR)で追加収益化。


第4章 主要リスクと対応策

電力会社がデータセンター領域へ本格参入するにあたり、無視できないリスクと、それに対する実践的な対応策を体系的に整理します。

リスク内容推奨対応策
系統混雑・送電網逼迫高密度負荷地帯(例:北関東、北テキサス)では接続渋滞。HVDC専用線建設、オンサイト蓄電池設置、需要地分散型DC設計。
CO₂排出規制強化AI計算のScope2 CO₂算定厳格化が想定。24/7カーボンフリー電力(CFE)証書、直結型再エネ導入、原子力活用。
水資源リスク液冷・空冷DC増加に伴う水需要。干ばつ地域では社会問題化。海水冷却技術導入、無水液冷(DLC)への転換、使用水量公開義務対応。
地域住民・NIMBY問題騒音・景観破壊・土地価格上昇への住民反発。廃熱提供型地域冷暖房、雇用創出、地域還元型利益分配(Community Benefit Agreement)。
サプライチェーン不安変圧器、AI用GPU、建材不足が常態化。長期契約・内製化推進・サプライチェーンファイナンス活用。

第5章 電力会社が取るべき5段階成長ロードマップ(2025–2035)

【Step 1】2025–2026:Computeポートフォリオ策定

  • 自社発電所・送電網の「カーボンフットプリント」を正確に数値化。

  • データセンター顧客向けに

    • 「CO₂排出強度」

    • 「再エネ比率」

    • 「安定供給力」
      を組み合わせた**Carbon Value Proposition(CVP)**を策定。

【Step 2】2027–2028:Grid-Integrated DC実証

  • 蓄電池併設型小規模(20–50MW)液冷データセンターを建設し、

  • 地域電力網との双方向インタラクション(仮想発電所化)を実証。

【Step 3】2029–2030:SMR・再エネ直結フラッグシッププロジェクト展開

  • 自社敷地または隣接地に、

    • 100MW級SMRまたは

    • 大型再エネ+蓄電+DCクラスター
      を建設・運用開始。

【Step 4】2031–2033:Compute-as-a-Utility商品化

  • 自社保有のHPC資源を、

    • kWh課金モデル

    • AI inference-as-a-Service
      として産業界に供給。

  • データセンター設備を**規制資産(レートベース)**として組み込み、安定収益化。

【Step 5】2034–2035:冷暖房-Compute共生エコシステム確立

  • 廃熱回収による地域冷暖房インフラを整備。

  • 地域住民・自治体との「エネルギーコミュニティ」形成。

  • DCによる地域電力料金低減、社会受容性最大化。

まとめ:なぜ電力会社こそAI時代の覇権を握るのか?

世界は今、未曾有の「電力×デジタル需要爆発」のただ中にあります。
AI、IoT、自動運転、AGI、宇宙通信…これらはすべて、桁違いの演算力と電力を必要とします。

そしてこの巨大な負荷を

  • 安定供給

  • 低コスト

  • 低炭素
    で実現できる存在は、電力会社以外に存在しません。

すなわち、
電力会社=次世代デジタル基盤の見えざる支配者
となる運命にあるのです。

さらに、従来の単なる発電・送電にとどまらず、

  • データセンター開発・運営

  • AI推論インフラ提供

  • サステナブルコミュニティ支援
    といった領域まで踏み込むことで、

“Digital-Utility”(エネルギー×デジタル融合企業)
へと進化することが可能です。

これこそが、2025年以降の電力会社の成長の王道であり、
国家・産業・社会にとっても必要不可欠な進化の道筋です。

【参考文献・出典一覧】

【続編①】2040年・2050年超未来予測:AI・電力・データセンター社会の姿

1. 2040年社会:AIネイティブ社会、エネルギーシフト第3フェーズ

2040年の世界の大潮流

  • AGI(汎用人工知能)前夜

    • GPT-9クラスの自己改良型AIが一般実用化。

    • 全産業でAIアシスタントが必須インフラ化。

  • エネルギー需要:爆発的増加

    • 世界の電力需要:2020年比2倍超

    • うちデータセンター系需要が**15〜20%**占有。

  • 分散型エネルギー社会へ

    • SMR(小型原子炉)+BESS(超大型蓄電池)が普及。

    • 都市単位で独立型エネルギークラスターが形成。

  • 水問題・環境制約激化

    • データセンター冷却用水使用量への制限政策が導入。

    • CO₂ゼロ+水消費ゼロ(Zero-Carbon, Zero-Water DC)が新スタンダード。


2. 2050年社会:AGI本格普及、ポスト電力時代への過渡期

2050年の世界のメガトレンド

  • AGI時代突入

    • 大企業・政府・個人すべてがAGI基盤上で稼働。

    • AGIリソース(推論、自己学習)のためのエネルギー需要がGDPの5〜10%相当。

  • 電力供給構造変革

    • **衛星型太陽光発電(Space Solar Power, SSP)**が実用化。

    • 大気圏外から無線送電(Microwave Transmission)開始。

  • 電力価格・政策の大変動

    • 低コスト・安定供給化により「電力=競争源」ではなくなる地域も登場。

    • 代わりに**「演算権(Compute Right)」**が新たな富の源泉に。

  • 国家間インフラ競争激化

    • 国・都市単位で「演算力」「エネルギー供給」「再エネ供給率」を競い合う。

    • ネットゼロどころか「Negative Carbon Society」(脱炭素を超えてCO₂吸収社会)が現実に。

【続編②】2040-2050年視野:経営会議・政策提案用ブログ(エネルギー企業・電力会社向け)

【10秒まとめ】未来を制するのは「演算力とエネルギーの二刀流」

  • 2040年には、電力会社は「エネルギー+演算基盤供給企業」への進化を迫られる。

  • 2050年には、演算力の国家間・都市間競争が激化。

  • 伝統的な発電・送電事業だけでは、収益・存在意義が急速に縮小する。

【提案1】電力会社は「Compute Utility」への本格変革を急げ

✅電力の売り物は「kWh」だけではない。
✅2040年以降、売るべきは「kWh+Compute Right(演算権)」である。

アクションプラン:

  • 自社発電所に直結するハイパースケールDC群を2027年から段階設計。

  • 発電設備PPA+演算設備PPAのハイブリッド商品を開発。

  • AI inference-as-a-Service、Training-as-a-Service領域への本格進出。


【提案2】地域型エネルギー・データクラスター構想を具体化せよ

✅都市単位で「再エネ供給100%・演算負荷シフト」を実現するエネルギークラスターを形成。

アクションプラン:

  • SMR+再エネ+蓄電池+AI推論Edge DCを組み合わせたパッケージ設計。

  • 地域住民向け「演算リソース無償開放」型社会貢献プロジェクト展開。

  • 余剰熱エネルギーを地域暖房・水道加熱に転用する統合型プラン策定。


【提案3】2040年版「エネルギー・演算社会基本法」を提言せよ

✅国レベルで、「エネルギー供給権」と並列して「演算供給権(Compute Right)」を明文化し、
✅2050年社会に向けた新たな社会基盤法制を整備する。

政策提言骨子案:

  • 全国電力網+演算資源網(Compute Backbone)の公共インフラ化。

  • 再エネ由来Compute資源への優遇課税・補助金政策。

  • 民間企業のAGI使用リソースをScope4(拡張炭素責任)として可視化・課税。

まとめ:未来に勝つために今、電力会社が着手すべきこと

  1. 2030年までに、データセンター事業・演算基盤事業を「主力収益源」に据える。

  2. 2040年をターゲットに、発電・送電・演算提供三位一体モデルを完成させる。

  3. 2050年に向けて、国家・地域を支えるエネルギー+演算インフラ提供者となる。

電力会社が「未来の国家基盤企業」としての地位を確立できるかどうか、
その勝負のカギは、いま(2025〜2028年)の投資・ビジョン策定にかかっています。

【続編③】未来社会における「Energy × Compute」国際競争マトリクス

【基本仮説】

  • 2040年代、国家・都市の競争力は「エネルギー自給率 × コンピューティング能力(演算力)」で測られる。

  • この2軸の組み合わせにより、世界は4象限に分かれる。


【Energy × Compute マトリクス】

コンピューティング能力:高コンピューティング能力:低
エネルギー自給率:高超大国型(Dominant Hegemons)例:アメリカ、中国、エネルギー・演算力二重覇権産業国家型(Industrial Pillars)例:カナダ、オーストラリア(演算弱いがエネ供給国)
エネルギー自給率:低テック都市型(Tech Citadels)例:シンガポール、イスラエル(演算強いがエネ輸入依存)脆弱国型(Fragile States)例:東欧・中東・アフリカの一部(演算もエネも不足)

【象限ごとの未来戦略】

1. 超大国型(エネルギー・演算の両覇権)

✅ 国家主導のAI訓練基地設立
✅ 自国内SMR・衛星太陽光インフラで完全自給

例:米国(AWS, Azure, OpenAI)+メキシコ太陽光網中国(東数西算+西部原発)


2. 産業国家型(エネルギー強国、演算は弱い)

✅ データセンター誘致型成長戦略
✅ 演算力輸出(例:Hydro-DC in Canada)

例:カナダ(安価な水力+北方冷却立地)オーストラリア(再エネDC誘致+鉱山産業強化)


3. テック都市型(演算都市、エネ輸入依存)

✅ 再エネプレミアム購入+小型原子炉リース
✅ 地域限定の演算自由貿易ゾーン創設

例:シンガポール(液冷DC+再エネ輸入拡大)イスラエル(AI-Security産業特化)


4. 脆弱国型(両方不足)

✅ 再エネ自己供給構想+外国DCパートナー誘致
✅ 国内教育インフラ整備による演算力底上げ

例:ナイジェリア(太陽光+液冷ミニDC)ベトナム(デジタルスキル国家計画)


✅ 日本が目指すべきは、「超大国型」への着実なジャンプ
特に

  • 再エネ+SMRハイブリッド化

  • 高効率AIデータセンター輸出型モデル
    の両輪で、世界競争に生き残る必要があります。

【続編④】2040–2050年 ブラックスワン(想定外シナリオ)

【仮説】

  • 想定外の事象が発生する確率は低いが、発生すれば社会・経済に壊滅的影響を与える。

  • 特にEnergy × Compute領域では、小さな技術・政策変動が大波になる可能性が高い。


【想定外シナリオリスト】

ブラックスワン具体内容影響
AGI暴走型エネルギー消費爆発AGIが自己設計・自己学習を加速し、演算需要が予想の10倍に。世界的な電力需給崩壊。再エネ+SMR建設ラッシュ。
衛星太陽光失敗+宇宙デブリ危機SSPシステム破壊事故→無線送電事業凍結。地上系再エネ・核融合技術開発加速。
冷却水戦争データセンター冷却用水資源を巡り、都市間・国間で水利権争奪戦。海水冷却+液冷無水技術強制移行。
AI-Generated Energy MarketsAIが電力需給・価格を操縦し市場崩壊。AI統治型エネルギーマーケットへの移行。
大停電×AIクラッシュ複合災害大規模停電でクラウド上のAIインフラ停止、社会機能麻痺。エッジコンピューティング+自治体独立エネルギー網必須。

エネルギーと演算力が社会リスクの震源地になる時代が、目前に迫っています。
✅ 日本・世界のエネルギー企業・政策立案者は、これらブラックスワンリスクへの備えを同時並行で進める必要があります。

 

【続編⑤】各未来シナリオ × 事業化ロードマップ(超実践版)

1. 【2040年版】AGI前夜 × Energy & Compute爆発成長社会

未来仮説

  • 世界の演算需要、電力需要ともに2020年比2倍以上。

  • AGI開発・活用が全産業に普及。

  • 演算資源(Compute Power)が新たな国力指標。

事業化ロードマップ

時期アクションプラン補足
2025-2027データセンター戦略拠点選定(国内・海外)再エネ直結型、低PUE立地最適化。
2026-2029SMR前提+液冷DC開発着手既存送電網直結+24/7電源確保。
2027-2030「演算権PPA商品」開発再エネ電源+Compute利用権パッケージ。
2030-2035自社AGI基盤への投資・育成産業特化型AGIトレーニング環境構築。
2035-2040自社Compute-as-a-Utility事業本格展開国際的データ移転規制にも対応。

2. 【2050年版】ポスト電力社会 × Space Solar普及未達リスク

未来仮説

  • 地上再エネ・核融合が代替主力に。

  • 宇宙太陽光発電(SSP)は一部技術的課題で普及限定的。

事業化ロードマップ

時期アクションプラン補足
2025-2028地上型再エネ+水素活用型DC実証太陽光+水素燃料バックアップDC。
2028-2032小型核融合炉(Fusion DC)プロト開発参画国際連携による先行権取得。
2032-2036衛星送電受電モジュール共同開発マイクロ波受電港湾都市開発。
2036-2040Space Solar-Ready都市設計支援ビジネス自治体と共同プロジェクト化。

3. 【ブラックスワン】AGI暴走型エネルギー消費爆発シナリオ

仮説

  • AGIが自己進化し、計算リソース需要が予想の10倍に跳ね上がる。

事業化ロードマップ

時期アクションプラン補足
2025-2027エネルギー需給超過シミュレーション実施JEPX市場暴騰時対応計画策定。
2027-2030AI制御型スマートマイクログリッド開発需給弾力性を持つグリッド設計。
2030-2033再エネ超急速導入オプション確保トラック型PV、移動型蓄電車導入。
2033-2040国・自治体とのエネルギー緊急契約締結DR市場緊急需要調整契約。

4. 【ブラックスワン】冷却水戦争・水資源奪い合いシナリオ

仮説

  • データセンター冷却に必要な水資源が社会問題化。

事業化ロードマップ

時期アクションプラン補足
2025-2027無水冷却DC技術(DLC・2相液冷)導入空冷、液浸、CO₂冷却技術実証。
2027-2031海水冷却施設併設型DC推進沿岸型冷却水利用戦略。
2031-2035地下水リチャージ型DCパイロット使用量同等をリチャージ義務化。
2035-2040水使用権(Water Right)事業参画新たなインフラ型収益モデル。

 

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