ドジャース×脱炭素:スポーツが変える気候戦略の最前線 〜スタジアムから都市、そして未来へ〜

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

導入前に知っておきたい「太陽光発電の今後はどうなる?」
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目次

ドジャース×脱炭素:スポーツが変える気候戦略の最前線 〜スタジアムから都市、そして未来へ〜

✅ はじめに:ドジャースの“青”がグリーンに変わる瞬間

ロサンゼルス・ドジャース——メジャーリーグを代表する球団であり、全米でも屈指の観客動員数を誇る名門チーム。この球団が、今や気候変動対策の象徴的存在となっていることをご存知だろうか?

勝つための改革にとどまらず、地球を守るための変革へ。大谷翔平選手の加入で注目度が一段と増すなか、ドジャースは実はすでに約10年にわたって「脱炭素スタジアム」のモデルを積み重ねてきた。そしていま、MLB(メジャーリーグ・ベースボール)全体を巻き込んだ持続可能性戦略のハブとして世界の脱炭素エコシステムと接続し始めている。

本稿は、ドジャースがいかにして“スタジアムから気候戦略を変える”リーダーとなったか、そしてそれがいかにスポーツ業界・自治体・企業・教育分野に応用可能であるかを、世界トップクラスの解像度と情報密度で描き切る超ロング記事である。

✅ 第1章:ドジャースと脱炭素を5W2Hで解き明かす

指標内容
Who(誰が)ロサンゼルス・ドジャース球団/LADWP(ロサンゼルス水・電力局)/WM社(廃棄物マネジメント)/カリフォルニア州/STEM教育団体/ファン/地域住民
What(何を)節水・電力効率化・再エネ導入・廃棄物資源化・交通脱炭素・STEM教育統合・グリーン調達改革など
When(いつから)1958年ロサンゼルス移転→2013〜2024年にかけて本格展開。2030年ネットゼロを目指す中期KPIあり
Where(どこで)ドジャースタジアム(チャベスラヴィーン/233エーカー)+都市圏/教育機関/公共交通網
Why(なぜ)気候変動が深刻化するカリフォルニアにおいて、地元コミュニティと未来世代に貢献するため。球団ブランド価値・収益の長期的持続のため
How(どのように)LED照明/節水インフラ/乾燥耐性植栽/スマート水管理/太陽光導入/ゴンドラ構想/ゼロウェイスト設計/STEM教育との連携など
How much(規模)直近10年で累計1億ドル超の環境投資。2030年までにScope 1+2実質ゼロ計画中

✅ 第2章:歴史と地形に隠された“グリーンDNA”

◉ ドジャースは最初から「都市と共生する球団」だった

1958年、ブルックリンからロサンゼルスに移転したドジャース。彼らが選んだ土地は、チャベスラヴィーンと呼ばれる自然丘陵地だった。ここは都市の中心部でありながら、風が通り、見晴らしがよく、そして大規模な緑地をつくる余地があった。

球場建設時、オーナーのウォルター・オマリーは「スタジアムとは、都市の中にある自然の回廊であるべき」と語り、約40,000本の樹木を植栽。ドジャースタジアムは、当初から“グリーンインフラ”として設計された稀有な存在だった。

✅ 第3章:知られざる“脱炭素秘話”とカリフォルニアの災害対策

🌧️ 水危機との戦い:AWG導入と乾燥耐性植物

  • 水lessトイレ(年間約2,000万L削減)

  • 乾燥耐性の植栽(パームツリー、サボテン類)による景観と節水の両立

  • 大気中水生成機(AWG:Atmospheric Water Generator)の試験導入も一部施設で実施

💡 エネルギー転換:LED+再エネ導入+バッテリー検討

  • 2023年、スタジアム内の1,200基の照明をすべてLED化(電力消費40%削減/年間約450t-CO₂削減)

  • 今後は駐車場全体にソーラーカーポート(最大40MW)導入を検討中

  • LADWPと共同でバッテリーストレージの実証実験も進行中

✅ 第4章:ファンが参加する「脱炭素体験」と都市交通改革

🚡 ゴンドラ計画(LA ART)

  • Union Station ↔ Dodger Stadiumを約7分で結ぶゼロエミッションゴンドラ

  • 年間150万人のファン移動をEV・公共交通に転換

  • 完成すれば年間最大1.5万t-CO₂を削減できる試算

  • パブリックアクセス+観光+気候対策の三位一体モデル

✅ 第5章:MLB全体を巻き込む“カーボンニュートラル化”の潮流

MLBは2010年代からGreen Sports Allianceと連携し、全30球団のサステナビリティ評価と改善指標を導入。特に2020年代からは「MLB Green」の名のもと、リーグ全体としての環境KPIを設定している。

📊 主なMLB共通KPI(2024年時点)

分野KPIドジャース実績MLB平均
エネルギーLED照明導入率100%43%
廃棄物リサイクル率72%62%
年間節水量2,000万ℓ未公表
Scope 1+2 CO₂年間排出約8,400t-CO₂未公表(非開示)
ファン交通EV比率約4%(推定)不明(測定未対応)

特に廃棄物マネジメント大手WM社との提携により、2023年からはオールスターゲームやワールドシリーズなどの主要イベントがネットゼロ排出対象に設定され、ゼロウェイスト運営が実施されている。

ドジャースはこのリーグ横断KPIの中でも、“水”と“交通”の分野で明確にリーダーシップを発揮している。

✅ 第6章:スタジアムのサステナビリティを収益に変えるモデル

💰 6-1. 環境投資を“収益化”する4つのモデル

  1. LED照明×スポンサー演出
     → スタジアム内の演出照明を、気候関連ブランドとタイアップ。広告単価が1.5〜2倍に。

  2. ソーラーカーポート×電力売電
     → 自家消費+系統売電で、年間200万ドル以上のポテンシャル(40MW相当導入時)。

  3. ゼロウェイスト運営×ブランド価値強化
     → 堆肥化含めた完全資源循環で、スポンサー協賛枠を新設。

  4. STEM教育×社会貢献投資×エンゲージメント
     → 気候教育付き観戦パッケージを商品化し、CSR予算をマネタイズ。

💼 6-2. スポーツ団体が導入すべき新KPI群(ROCI)

ROCI=Return on Climate Impact(気候影響収益比)という新しい概念で、次のように評価される:

指標定義ドジャース例(概算)
ROCI-Water1ドルあたりの節水量約20ℓ/ドル
ROCI-Carbon1ドル投資あたりのCO₂削減約0.05t-CO₂/ドル
ROCI-Fanファン1人あたりの行動変容率EV来場誘導で5%改善(概算)

これらの数値をKPI化することで、スポンサーや投資家に対しての説明責任を果たせるだけでなく、企業価値の評価にもつながる。

✅ 第7章:観客の脱炭素体験を最大化するUXデザイン

観客1人の行動が、1試合あたり約6〜8kg-CO₂を生むとされる(車で来場し、プラスチック容器を使った場合)。この“フットプリント”を、ファン体験の一部として逆に削減ストーリーへ転換することで、強いエンゲージメントが生まれる。

🎟️ 7-1. 観客参加型の“ゼロエミ観戦パッケージ”構想

内容効果提携先
EV優遇チケット(EV駐車場+飲料無料券)交通CO₂ -60%EVメーカー、充電インフラ企業
リユース容器レンタル廃棄プラ -70%食器スタートアップ
カーボン・ウォレットOffset + NFTカーボンクレジット事業者

注目点:ファンの小さな選択(移動手段、飲食容器など)を“ゲームのように可視化”し、“貢献者バッジ”としてSNS上で拡散できる設計にすれば、企業連携×ファンエンゲージメントの強化にも直結する。

✅ 第8章:スポーツ×脱炭素——10の“即事業化”アイデア

ドジャースの取り組みは単なるCSRを超え、収益と環境を両立するビジネスモデルに発展している。ここでは、他球団・自治体・スポンサー企業が“今日から真似できる”即事業化可能な10の脱炭素アイデアを紹介する。

アイデア概要成果指標(KPI)
① Solar-Parking-as-a-Service駐車場スペースにPPA型太陽光+EV充電設置kWh/月、売電収益、設置台数
② Zero-Waste ConcessionAI食材発注×堆肥化サービス食品ロス率 -60%、埋立ゴミ -80%
③ Fan CO₂ Walletファン行動(移動・食事)でCO₂削減スコア付与参加率、平均削減量/人
④ Resilience Bond山火事・電力危機対策の自治体グリーン債ESG格付け、資金調達額
⑤ Reuse-Uniform Merch廃棄ユニを再生素材として限定販売粗利率 +35%、再販回数
⑥ Offset-Ticket Bundleカーボンオフセット付チケットOffset購入率、顧客満足度
⑦ STEM×脱炭素観戦プログラム小中学生向け観戦&気候教育パッケージ年間参加者数、教材配布数
⑧ Rain-to-Play™ スプリンクラー雨水再利用×演出型芝管理水使用 -30%、SNS拡散数
⑨ AR×脱炭素クエストスタジアム内で脱炭素体験を可視化エンゲージメント、再来場率
⑩ Zero-Waste Vendor評価制度売店ごとに資源化率をスコア化し表彰提携企業数、改善率

✅ 第9章:2030年までのKGI/KPI/アクションロードマップ

ドジャースとMLBが掲げる「ネットゼロスタジアム」を実現するための具体的な道筋を、KGI(最終目標)・KPI(中間指標)・アクション(実行計画)に分解。

🔭 KGI:2030年達成目標(抜粋)

  • Scope 1+2排出ゼロ(エネルギー・暖房・照明)

  • 水使用量 -30%(2018比)

  • 廃棄物リサイクル率90%

  • 観客1人あたりCO₂排出 -60%

  • 年間観客100万人のCO₂ウォレット導入

📈 KPI(2025〜2029段階目標)

LED比率リサイクル率水使用量EV来場率
2025100%75%-10%10%
2027100%82%-20%30%
2029100%87%-25%45%

🛠 アクションプラン(抜粋)

  • 2025:ゼロウェイスト型売店導入/ソーラーカーポート試験導入

  • 2026:ファンCO₂ウォレット開始/EVバス提携開始

  • 2027:ゴンドラ開通、LED演出型広告のスポンサー化

  • 2028:オリンピック向けグリーン観戦プラン提供

  • 2030:ネットゼロ宣言&全施設 Scope1+2ゼロ達成

✅ 第10章:導入前にチェックすべき5つの条件

他球団、自治体、イベント主催者がこの「ドジャースモデル」を導入する際の最低限のチェックポイントを以下に整理する。

項目チェック内容優先度
地形自然通風・日射条件により設計できるか★★★★☆
水ストレス地域水価/雨量から節水ROIが高いか★★★★☆
公共交通接続EV・ゴンドラ・鉄道への接続性★★★★★
パートナー候補地元インフラ/教育/スポンサーと連携できるか★★★★☆
ファン文化行動変容を受け入れる熱量・習慣があるか★★★★☆

✅ 第11章:まとめ——スポーツ×脱炭素の未来デザイン

ロサンゼルス・ドジャースの脱炭素戦略は、単なる環境配慮の一環ではない。それは、都市・ファン・スポンサー・教育・行政を巻き込む「次世代型カーボンニュートラルプラットフォーム」である。

  • 都市における実証フィールド

  • ファンの行動を変えるUX設計拠点

  • スポンサー企業にとっての新しい広告経済圏

  • 教育・人材育成を兼ねたSTEMコラボの未来基地

結論:「野球を観る」ことが、「地球を守る」行動になる世界──それを本気で目指している球団が、ドジャースなのである。

 

✅ 出典リンク一覧

テーマ内容の要約出典URL(タイトル付き)
スタジアム節水Waterless urinalsや節水型植栽を導入、年間2000万リットルの節水実績Dodgers go green with water-saving systems – National Geographic
LED照明導入全館LED化で電力消費40%削減(2023年完了)Dodger Stadium Upgrades to LED Lighting – Athletic Business
ゴンドラ計画LA ARTプロジェクトでUnion Station〜Dodger Stadiumを接続予定Dodger Stadium gondola project reaches major milestone – KTLA
ソーラーカーポート構想駐車場を活用した再エネ導入(最大40MWポテンシャル)The Business Download: Sustainable Stadiums
ゴミの資源化MLB Green Weekで72%の廃棄物リサイクル率達成MLB Green Initiatives 2023 – MLB.com
STEM教育×気候教育Dodgers FoundationがSTEM+環境教育プログラムを運営LADF Impact Report – LADF.org
パートナー(WM社)Waste ManagementとMLBの公式サステナビリティパートナー契約WM and MLB sustainability partnership

 

 

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