産業用太陽光発電に蓄電池を導入するには?導入手順やメリット・デメリットを紹介

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

目次

産業用太陽光発電に蓄電池を導入するには?導入手順やメリット・デメリットを紹介

この記事では、産業用蓄電池について解説します。産業用太陽光発電に蓄電池を導入するために何から始めればよいのか分からない人や、産業用太陽光発電と蓄電池について知識を深めたい人に向け、産業用太陽光発電に蓄電池を導入した際のメリット・デメリットも解説します。実際に導入する際の参考にしてください。

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産業用太陽光発電の蓄電池システムとは?

産業用太陽光発電の蓄電池システムとは、一般住宅以外の建物に設置する蓄電システムです。公共施設やオフィスビル、工場や倉庫、大型ショッピングモールなどの商業施設に設置されていて、産業用蓄電池と呼ばれます。産業用蓄電池は、太陽光発電で発電した電気を蓄えることができるので、自然災害などの非常時に必要なバックアップ電源となります。

 

また、余剰分の電力を蓄電池に蓄えることで、平常時も活用できます。夜間の発電しない時間帯のクリーン電力の有効活用が可能になります。電力の制御システムも組み込まれているので、省エネルギー効果が高まり、電気料金の削減になります。

 

産業用太陽光発電の蓄電池が注目された理由

自家発電した電気を買い取ってきた「FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)」の条件変更や、世界的な環境の取り組みである「RE100」などによって、蓄電池の注目度は高まっています。RE100とは、日本だけでなく世界の企業が参加している自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブです。

 

蓄電池は、停電時の非常用電力としての機能や、災害対策としても活用可能です。太陽光発電とセットで導入することでより効果的な災害・BCP対策(事業継続計画)に繋がるので、企業に注目されています。

 

産業用蓄電と家庭用蓄電池の違いとは

産業用蓄電池と家庭用蓄電池は、サイズや蓄電容量などに違いがあります。ここでは、それぞれの蓄電池の具体的な違いを解説します。

 

1.サイズ

産業用蓄電池は大容量なので、サイズは家庭用蓄電池より大きくなります。排熱するためのスペースも含めると、より広い設置スペースが必要になります。家庭用蓄電池は、種類によっては1人で運ぶことも可能なコンパクト設計です。

 

2.蓄電容量

産業用蓄電池は家庭で消費する電気量よりも多くの電気量が必要なため、家庭用蓄電池に比べ数倍~数十倍もの蓄電容量を備えています。工場や商業施設などで使用する電気量は莫大であるため、産業用蓄電池は複数の蓄電池で構成されています。

 

3.電池の種類

家庭用蓄電池ではリチウムイオン電池が一般的です。多くの産業用蓄電池は、リチウムイオン電池とNAS電池が使われています。NAS電池は大容量な蓄電池向きで、定期的なメンテナンスが必要なため、産業用蓄電池に用いられます。

 

4.寿命

家庭用蓄電池で使われているリチウムイオン電池の寿命は約10年、産業用蓄電池に使われるNAS電池の寿命は約15年といわれています。家庭用蓄電池に比べ、NAS電池を使った産業用蓄電池の方が長持ちします。

 

5.導入コスト

リチウムイオン電池よりもNAS電池の方が安価ではありますが、家庭用蓄電池よりも産業用蓄電池の容量の方が多いため、産業用蓄電池の方が導入コストは高額になります。補助金制度を上手く活用し、コストの削減が可能です。

 

産業用太陽光発電に蓄電池を導入するメリット

産業用太陽光発電に蓄電池を導入すると、多くのメリットが生まれます。代表的な5つのメリットを解説します。

 

災害などの非常時に非常用電源を確保できる

産業用蓄電池は、1週間程度の非常用電源の確保が見込めます。災害による停電時にバックアップ電源が確保できることは大きなメリットです。BCP(事業継続計画)対策の非常用電源確保として、産業用蓄電池の導入は一般的になりつつあります。大規模施設では、災害時の地域の避難拠点としての活用も可能です。

 

ピークカットによる電力コストの削減

産業用蓄電池を導入すると、ピーク時の電力を抑えるピークカットが可能になります。電力のピークカットは、蓄電池では定番の電気料金の削減方法です。再生可能エネルギー機器と連携させることで、太陽光発電で作った電力を自社で消費する「自家消費」が可能になるため、電気料金のコスト削減に繋がります。

 

過積載率を向上して売電ロスを回避

過積載とは、太陽光発電の容量を超えた出力の太陽光パネルを積載することです。そこに蓄電池を導入すると、ロスしていた発電量の活用や過積載率の向上が期待できます。ピークカットでロスされてしまう電力を、一旦蓄電池に充電し、発電しない時間帯に放電・逆潮流して売電ができるようになります。過積載をしながらロスを減らし、売電収入を最大化できます。

 

出力抑制実施時に起こる損失を軽減する

太陽光発電の出力抑制とは、電力会社が電力の需要と供給のバランスをとるために行う接続制限です。電力の需給バランスが崩れると、大規模な停電につながります。出力抑制実施時に蓄電池を併用することで、発電した電気を一旦蓄電できます。抑制解除後に売電できるので、発電した電気の損失を軽減することが可能になります。

 

既存太陽光発電システムに設置することが可能

産業用蓄電池は、大幅な改修工事不要で既存の産業用太陽光発電システムに設置・接続できます。新しい発電システムは必要ないので、設置コストの削減というメリットがあります。蓄電池メーカーは、太陽光発電設備の互換性に関する試験を実施していることがほとんどです。導入前には、太陽光発電と蓄電池のメーカーへ確認することが大切です。

 

産業用太陽光発電に蓄電池を導入するデメリット

産業用太陽光発電に蓄電池を導入すると生じるデメリットがあります。知っておくべきデメリットを解説します。

 

蓄電池本体や設置費用など導入コストの負担

蓄電池を導入する際、初期費用などの導入コストが大きくなるのがデメリットです。蓄電池本体だけでなく、関連機械の設備や工事も同時に必要になります。一般的に、数百万円単位の初期費用が必要なため、手軽に導入することはできない設備です。蓄電池の設置は、売電量とのバランスを考えて費用を検討することが大切です。

 

設置スペースの確保が絶対条件

蓄電池を設置するためには、適切な場所を確保する必要があります。極端な暑さや寒さに弱いため、熱がこもらず風通しのよい場所を選ぶことが基本です。多くの電力を蓄える産業用蓄電池はサイズが大きいので、広々としたスペースも必要です。蓄電池は数百kgあるため、重量に耐えられるコンクリート床の場所に設置しましょう。

 

経年劣化や寿命に備える必要がある

蓄電池の寿命は10~15年といわれており、設置から10年経過した時点の蓄電容量は70~80%程度まで低下します。蓄電容量が低下してしまうと、利用効率が下がります。収益性に大きく影響するので、投資対効果と対処法を考える必要があります。交換するか、使い続けるかの決断をしなければなりません。

 

産業用太陽光発電に蓄電池を導入する手順

蓄電池を実際に導入するためには、何から始めればよいのでしょう。産業用太陽光発電に導入する手順を解説します。

 

1.業者による事前の現地調査

まずは、施工業者立ち会いのもと、事前に現地調査を行います。希望する蓄電池の設置場所は十分な設置スペースを確保できているか、設置するための基本条件を満たしているかを確認する必要があるためです。設置場所として問題がなければ、周辺機器の配置や配線の取り回しの確認や、施工日の日程調整も合わせて行います。

 

2.配置場所の基礎工事を行う

蓄電池はかなりの重量があるため、コンクリート基礎を打って安定した蓄電池の設置場所を作ります。コンクリート基礎は、打設してから固まるまで1~2日程度の時間を要します。浸水や水没を防ぐために、十分な高さを確保することも必要です。屋内設置は基礎工事がありませんが、重量に耐えられないと判断される場合には補強工事の必要があります。

 

3.蓄電池本体と周辺機器の設置作業

基礎が完成したら、蓄電池本体の設置工事に移ります。蓄電池を組み立て、アンカーボルトでコンクリート基礎にしっかりと固定します。屋内設置の場合、転倒防止のため壁面を利用してボルトで固定します。壁の種類によって固定方法が変わるので注意が必要です。蓄電池の設置が完了したら、パワーコンディショナや特定負荷分電盤などの周辺機器の設置を行います。

 

4.配線工事に移る

各種機器の設置が完了したら配線工事に移ります。基本的には、蓄電池本体、蓄電池用パワーコンディショナ、住宅分電盤、特定負荷分電盤(重要負荷分電盤)という流れで配線します。

 

太陽光発電がある場合は、太陽光発電用のパワーコンディショナと蓄電池用のパワーコンディショナを配線によって接続します。HEMSなどを設置している場合は通信ユニットの接続も必要です。

 

5.産業用蓄電池の設定と最終確認

配線工事が完了したら、蓄電池の充放電モード等の設定を行います。経済モード・グリーンモード・安心モード等のモード設定、蓄電残量の設定、停電時の充電電力設定を行うことがポイントです。非常時の挙動までを設定していくので、内容を充分に理解した上で進める必要があります。設定が終われば、最後に蓄電池の動作確認をして終了です。

 

2022年の電気代高騰の背景

電気代高騰の大きな原因は、発電燃料費の高騰や再エネルギー賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)です。発電燃料であるLNG(液化天然ガス)の価格が高騰しているため、電気代にも反映されます。

 

世界的にLNGの需要が増加しているなか、LNGが不足していることやウクライナ危機の影響もあります。電気代の高騰を抑えるためには、省エネを意識した電気の使い方をしていく必要があります。

 

太陽光自家消費のトレンド

太陽光自家消費とは、太陽光発電で作った電気を電力会社に売らずに、自社設備で自家消費するシステムです。政府は、2030年度の温室効果ガス削減の目標達成を目指し、太陽光発電機能設備の導入を推奨しています。

 

FIT制度(固定価格買取制度)の期間が終わった家庭に、太陽光自家消費の人気が高まることが予想されています。太陽光自家消費の普及に伴い、今後の蓄電池の導入コストが安くなる可能性も期待されています。

 

まとめ

産業用太陽光発電に蓄電池を導入するには、十分なスペースと適切な設置環境の確保が重要です。導入コストの負担は大きいですが、蓄電池には多くのメリットがあります。実際に導入する際には、売電量とのバランスを考えながら、費用を検討することが大切です。

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●著者プロフィール

会社名:国際航業株式会社

部署名:公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

執筆者名:樋口 悟

執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。
https://energy-shift.com/news/author/71cbba7e-dbbc-4728-9349-9cdbed975c6e

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