エネルギー白書2025のポイントと周辺事業機会をわかりやすく完全解説

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

むずかしいエネルギー診断を簡単に「エネがえる」
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エネルギー白書2025のポイントと周辺事業機会をわかりやすく完全解説

エネルギー白書2025を事業機会探索に使えるような視点でわかりやすく解説します。

I. エグゼクティブサマリー:日本エネルギー白書2025の核心と事業機会の展望

日本のエネルギー政策は、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故以来、大きな転換点を迎えています。近年では、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化といった地政学的なリスクの高まりに加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)の進展に伴う電力需要の増加という複合的な課題に直面しています 1

これに対し、政府は「S+3E」(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)原則を大前提としつつ、2050年カーボンニュートラル実現に向けた「第7次エネルギー基本計画」「GX2040ビジョン」「地球温暖化対策計画」を2025年2月に閣議決定し、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指す戦略的転換を加速させています 1

この戦略は、過去約30年続いた日本の停滞を打破する大きな好機と捉えられており、GX分野への投資を通じて、革新技術を活かした新たな事業の創出や、日本の強みであるサプライチェーンの高度化を目指しています 5。特に、GX経済移行債の発行など、10年間で150兆円規模の官民投資を呼び込むための先行投資支援策が講じられており、これは民間企業にとって極めて大きな事業機会を意味します 1

このような状況下で、日本のエネルギー政策は、単にS+3Eのバランスを取るだけでなく、不安定な国際情勢や国内の需要構造の変化に対応しながら、各要素の優先順位を動的に調整し、シナジーを生み出す必要があります。例えば、地政学的な不安定要素はエネルギー安全保障の重要性を高め、コスト効率性や環境適合性との間で新たなバランスが求められます。この動的な変化に対応できるソリューションこそが、今後の市場を牽引する力となるでしょう。

再生可能エネルギー(再エネ)の導入は、固定価格買取制度(FIT)開始以降急速に拡大したものの、国際水準と比較して発電コストは依然高く、国民負担の増大が懸念されています 1。また、太陽光発電設備の廃棄対策、地域住民との合意形成の困難さ(NIMBY問題)といった事業規律や社会受容性の課題が顕在化しており、これらは再エネ導入の「量」の拡大が先行した結果、顕在化した「質」の課題と言えます 1

系統制約も再エネ大量導入のボトルネックとなっており、調整力の確保や次世代ネットワーク形成が急務です 1。これらの課題は、再エネの持続的な普及に向けた本質的な障壁であり、同時に、これらの解決策を提供する企業にとっての新たな事業領域を切り開きます。例えば、高コストや社会受容性の問題は、単なる技術導入だけでなく、地域経済への貢献や環境配慮を統合したビジネスモデルの需要を生み出します。

未来を拓く革新技術としては、光電融合技術、ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力、次世代型地熱発電、次世代革新炉、水素・アンモニア、CCUS/カーボンリサイクル、バイオ燃料・合成燃料など、多岐にわたります 1。日本はこれらの分野で世界をリードする技術力を有していますが、その技術的優位性をいかにビジネスとしての市場優位性へと転換するかが問われています。

海外では、他国が政府の強力な支援のもと、これらの技術の商業化と量産化を加速させており、日本もグリーンイノベーション基金等の活用を通じて、早期の社会実装と大規模サプライチェーン構築を目指しています 1。この状況は、日本の技術開発が「技術で勝って、ビジネスでも勝つ」という目標を達成するための、戦略的な商業化とグローバル市場獲得の緊急性を浮き彫りにしています。

II. 日本のエネルギー政策の全体像:2025年エネルギー白書が示す戦略的転換

A. 福島復興の進捗とエネルギー政策への影響

1. 廃炉・汚染水・ALPS処理水対策の現状と国際的評価

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の発生から14年が経過し、廃炉・汚染水・ALPS処理水(多核種除去設備等処理水)対策は、「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」に基づき、予防的かつ重層的なアプローチで着実に進展しています 1。このロードマップは、汚染源に水を「近づけない」、汚染水を「漏らさない」、汚染源を「取り除く」という3つの基本方針に沿って対策を進めています 1

具体的な進捗として、汚染水発生量は、対策実施前(2014年5月)の1日あたり540立方メートル程度から、2024年度には平均で70立方メートル程度まで大幅に低減されました 1。これは、2025年内に100立方メートル/日以下に抑制するという目標を前倒しで達成したことを意味します 1。この低減は、地下水バイパス、サブドレン、陸側遮水壁(凍土壁)の運用、敷地舗装(フェーシング)の完了など、多角的な対策の成果です 1

ALPS処理水の海洋放出は、6年以上にわたる有識者の検討と、安全確保および風評対策の徹底を前提に、2023年8月24日に開始されました 1。放出に際しては、トリチウム以外の放射性物質が規制基準を確実に下回るまで浄化され、トリチウムも規制基準の40分の1にあたる1,500ベクレル/リットル未満まで海水で大幅に希釈されています 1

この放出の安全性については、東京電力だけでなく、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)のような第三者機関も分析を実施し、確認しています 1。さらに、国際原子力機関(IAEA)が安全性レビューを実施しており、2023年7月に公表された包括報告書では、ALPS処理水の海洋放出が関連する国際安全基準に合致し、人および環境に対する放射線影響は無視できるほどであると結論付けられました 1。海洋放出開始後もIAEAによるレビューミッションが継続的に実施され、日本の取り組みが国際安全基準の要求事項と合致しない点はないと報告されています 1。2024年9月には、関係国の関心を踏まえ、IAEAの枠組みの下での追加的モニタリングの拡充が合意され、韓国、スイス、中国、フランス、ロシアといった第三国分析機関の関係者による海水や水産物の採水、ALPS処理水の採水も実施されています 1。これらのモニタリング結果は、経済産業省や東京電力のウェブサイトで透明性高く公開されています 1

このような透明性と国際協力の徹底は、単に技術的な安全性を確保するだけでなく、過去の不信感を払拭し、国内外の信頼を回復するための重要な戦略です。特に、中国との間で2024年9月に「日中間の共有された認識」が発表され、IAEAの枠組みの下での長期的な国際モニタリングへの参加後、科学的証拠に基づき日本産水産物の輸入規制措置の調整に着手することが合意されました 1。これは、科学的根拠に基づく情報公開と国際的な検証が、地政学的な摩擦を乗り越え、経済的な関係を再構築する上でいかに重要であるかを示しています。

この取り組みは、高度なモニタリング技術やデータ分析、国際連携のノウハウが、将来的に他の産業分野における環境規制や国際協力のモデルとなり得ることを示唆しています。例えば、環境影響が大きい産業や、国際的なサプライチェーンを持つ企業にとって、第三者機関による透明性の高い検証と情報公開は、消費者や投資家からの信頼を得る上で不可欠な要素となるでしょう。

2. 原子力被災者支援と「福島新エネ社会構想」の具体化

福島復興は、避難指示解除の進展とともに、新たな産業基盤の構築へと焦点を移しています。2023年11月までに「特定復興再生拠点区域」の避難指示が全て解除され、「特定帰還居住区域」の整備も進んでいます 1。これにより、2025年3月時点で避難対象者数は約7,400人まで減少しました 1

産業復興の核となるのが「福島イノベーション・コースト構想」です。この構想は、ロボット、廃炉、エネルギー、環境・リサイクルといった重点分野における産業集積と雇用創出を目指しています 1。特に注目すべきは、2023年4月に設立された「福島国際研究教育機構」(F-REI)の存在です。F-REIは、ロボット、農林水産業、エネルギー、放射線科学・創薬医療、原子力災害に関するデータ・知見の集積・発信の5分野を基本とした研究開発を推進し、福島の復興と産業化を加速する中核拠点となっています 1

エネルギー分野においては、「福島新エネ社会構想」が推進されています。これは、福島を再エネや未来の水素社会を切り拓く「先駆けの地」とし、新たなエネルギー社会を先取りするモデル創出拠点とすることを目指しています 1。2040年頃までに福島県内の一次エネルギー需要量の100%以上を再エネで賄うという目標は維持されており、その達成に向けた「加速化プラン2.0」が2024年9月に策定されました 1。このプランに基づき、次世代の国産技術として期待されるペロブスカイト太陽電池がJヴィレッジで日本初の試みとして設置されるなど、先行活用が進んでいます 1。また、阿武隈山地等での大規模風力発電導入に向けた送電線増強も進められています 1

水素社会実現に向けた取り組みも活発です。浪江町に開所した福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)では、世界有数の1万kW水電解装置を活用し、再エネからの水素製造実証が行われています 1。製造された水素は、道の駅なみえの純水素燃料電池や水素ステーションで活用されており、2026年度以降の水素サプライチェーン構築に向けた検討も進んでいます 1

福島におけるこれらの取り組みは、単なる復旧を超えた「地域主導型GX」のモデルケースとして、その潜在力を示しています。大規模災害からの復興という特殊な背景が、従来の枠組みにとらわれない大胆なエネルギー転換と産業創出を可能にしているのです。これは、他の地域、特に過疎化や産業構造転換の課題を抱える地域にとって、再エネ導入と地域活性化を両立させるための具体的な青写真を提供します。

企業にとっては、このような地域主導型のGXモデルは、分散型エネルギーシステム、スマートコミュニティ技術、地域に根ざしたサプライチェーン構築、そして地域住民との共生を前提とした事業開発において大きな機会を創出します。例えば、地域の未利用資源を活用したバイオマス発電、地域マイクログリッドの構築、EV充電インフラと連携したエネルギーマネジメントシステムの導入など、地域特性に応じた多様なソリューションが求められるでしょう。

テーブル:福島第一原発の廃炉・汚染水対策の主要進捗と目標年

項目

対策実施前 (2014年5月)

2024年度実績/現状 (2025年3月末時点)

目標/見通し

汚染水発生量

540㎥/日程度

平均70㎥/日程度

2025年内に100㎥/日以下に抑制 (前倒し達成)

ALPS処理水海洋放出開始

2023年8月24日

使用済燃料プールからの燃料取出し完了

4号機: 2014年12月

3号機: 2021年2月

全号機: 2031年内完了

燃料デブリ試験的取出し

2号機: 2024年9月着手, 2024年11月成功, 2025年4月2回目成功

構内一般作業服等エリア拡大率

96%

この表は、福島第一原発における廃炉・汚染水対策の進捗を具体的な数値と目標年で示しています。汚染水発生量の大幅な削減は、対策の有効性と政府・東京電力のコミットメントの証左であり、国際的な信頼回復に寄与しています。また、燃料デブリの試験的取出し成功は、廃炉作業の最も困難な段階への移行を示唆しており、今後の技術開発と国際協力の重要性を強調します。構内作業環境の改善は、長期にわたる廃炉作業を支える人材確保と安全管理の基盤強化を示しており、関連するロボット技術や遠隔操作技術、放射線管理技術などの進展は、新たな事業機会を生み出す可能性があります。

B. GX(グリーントランスフォーメーション)と2050年カーボンニュートラルへの道筋

1. 日本を取り巻くエネルギー情勢の変化と経済安全保障上の要請

日本のエネルギー情勢は、国際的な地政学リスクの高まりにより、その脆弱性が改めて浮き彫りになっています。2023年度時点で、日本のエネルギー自給率はわずか15.3%とG7各国で最も低い水準にあり、一次エネルギー供給の8割以上を海外からの化石燃料輸入に依存しています 1。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化は、液化天然ガス(LNG)の需給ひっ迫や世界的な化石燃料価格の高騰を招き、日本の貿易収支にも大きな影響を与えました 1

このような状況は、エネルギー安定供給の確保が喫緊の課題であることを強く示しており、従来の輸入先多角化に加え、国内でのエネルギー自給率向上とサプライチェーンの強靭化が不可欠となっています。これは、単なる経済的な課題に留まらず、国家の経済安全保障上の要請として、国内産業の育成とエネルギー供給構造の抜本的な転換を迫るものです。

この文脈において、エネルギー安全保障の概念は大きく再定義されています。かつては、安定的な輸入先の確保が主眼でしたが、現在は、国内での再生可能エネルギーの最大限の導入、原子力の活用、そして次世代エネルギー技術の国産化とサプライチェーンの強靭化が、国家戦略の柱となっています。これは、海外情勢に左右されない「自律的なエネルギー供給体制」の構築を目指すものであり、国内企業にとっては、この国家的な要請に応える形で、新たな投資と事業展開の機会が生まれています。例えば、国内での洋上風力発電や地熱発電の大規模開発、重要鉱物資源のリサイクル技術の確立、そして蓄電池や水素製造装置といったGX関連技術の国内生産能力強化への投資は、政府からの強力な支援を受ける分野となるでしょう。

2. DX・GX進展に伴う電力需要増加の可能性と「ワット・ビット連携」の戦略的意義

デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)の進展は、日本の電力需要構造に大きな変化をもたらしつつあります。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、データセンター需要、平均気温上昇、電気自動車(EV)需要拡大などが電力需要増加の主な要因として挙げられており、日本の電力広域的運営推進機関も、経済成長とデータセンター・半導体工場の新増設に伴い、電力需要が増加に転じると見込んでいます 1

しかし、現在のデータセンターの約90%が東京圏と大阪圏に集中している一方で、再エネや原子力といった脱炭素電源は北海道、九州、関西エリアに偏在しており、大規模な電力需要地と脱炭素電源の供給地の間に地理的なギャップが存在します 1。さらに、電源の建設リードタイムがデータセンター建設よりも長い(電源1~15年に対し、DCは1~2年)という時間的なミスマッチも課題です 1

この課題に対応するため、政府は「ワット・ビット連携」構想を打ち出しました。これは、電力インフラから見て望ましい地域(脱炭素電源が豊富で系統運用に余裕がある地域)にデータセンターの立地を促進し、光ケーブルを伸ばしてデータの需要地に情報を伝送することで、脱炭素電源とエネルギー需要地の空間的制約を解消することを目指すものです 1。この構想の実現に向け、「ワット・ビット連携官民懇談会」が2025年3月に立ち上げられ、2025年6月を目途に具体的な検討方向性をまとめる予定です 1

この「ワット・ビット連携」は、単なるエネルギー効率化に留まらず、国家のデジタルインフラとエネルギーインフラを一体的に再構築するという、極めて戦略的な意味合いを持っています。これは、物理的な電力系統の増強に多大な時間とコストがかかるという制約を、通信技術の進化によって補完し、新たな産業立地の創出と地方創生を同時に実現しようとするものです。

この戦略的転換は、以下のような新たな事業機会を創出します。

  • 地方におけるデータセンター開発と運営: 脱炭素電源が豊富で系統運用に余裕がある地域(北海道、九州、東北の一部など)での新たなデータセンターパークの開発、誘致、運営。これには、土地開発、建設、冷却システム、そしてデータセンターへの安定的な脱炭素電力供給ソリューションが含まれます。

  • 先進的な通信インフラ整備: 地域分散型データセンターと大都市圏を結ぶ、低遅延・大容量の光通信ネットワーク(オール光ネットワーク: APN)の構築。これには、光ケーブル敷設、光電融合デバイスの開発・製造、そして関連するネットワーク機器の提供が含まれます 1

  • スマートエネルギーマネジメントソリューション: データセンターの電力消費を最適化し、変動する再エネ供給に合わせて需要を調整するAI/IoTを活用したエネルギーマネジメントシステム(EMS)の開発と導入。

  • 政策コンサルティングと地域連携支援: 新たな産業立地政策や補助金制度を活用し、地方自治体と企業が連携してデータセンター誘致や関連インフラ整備を進めるためのコンサルティングサービス。

3. 気候変動目標の野心と現実的対応:新たなNDC(国が決定する貢献)の意義と国際比較

日本は、2050年カーボンニュートラル(ネット・ゼロ)の実現に向け、野心的な温室効果ガス(GHG)削減目標を掲げています。2025年2月には、新たな「日本のNDC(国が決定する貢献)」を国連気候変動枠組条約事務局に提出し、2035年度に2013年度比60%削減、2040年度に73%削減を目指すことを表明しました 1。これは、世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロに向けた直線的な経路を示すものです 1

しかし、世界のGHG排出量は依然として増加傾向にあり、2023年には過去最高水準の571億トンに達しています 1。主要国は、野心的な脱炭素目標を維持しつつも、各国の固有の状況(経済性、エネルギー安定供給)を踏まえ、現実路線への転換を進める傾向も見られます 1。例えば、米国ではトランプ政権がパリ協定からの脱退を表明するなど、政策の不確実性が高まっています 1

このような「目標」と「現実」の間のギャップは、日本にとって大きな挑戦であると同時に、新たな技術や市場ソリューションの強力な需要を生み出しています。日本が掲げる高目標を達成するためには、既存技術の効率化だけでは不十分であり、非連続なイノベーションと、それを社会実装するスピードが不可欠です。

このギャップを埋めるための事業機会は多岐にわたります。

  • 革新的な脱炭素技術の開発と大規模実証: GHG排出量を劇的に削減できる次世代技術(例:ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力、次世代革新炉、水素・アンモニア、CCUS/カーボンリサイクル)の研究開発への投資と、その実用化に向けた大規模実証プロジェクトへの参画。政府のグリーンイノベーション基金などがこの分野を強力に支援しています 1

  • 国際市場への展開: 日本の強みである脱炭素技術を、アジアを中心とした他国に展開し、グローバルな排出削減に貢献すると同時に、新たな市場を獲得すること。特に、鉄鋼や化学といった脱炭素化が困難な産業(ハード・トゥ・アベート・セクター)向けのソリューションは、国際的な需要が高いと見込まれます。

  • カーボンプライシングと市場メカニズムへの対応: 2026年度からの排出量取引制度(GX-ETS)の本格稼働や、2028年度からの炭素に対する賦課金の導入など、カーボンプライシングの強化は、企業にとって新たなコスト要因となる一方で、排出削減努力を収益化する機会(J-クレジット制度など)を生み出します 4。企業は、排出削減技術への投資や、効率的な排出量管理システムの導入を通じて、競争優位性を確立できます。

4. エネルギー政策と産業政策の一体化:GX経済移行債と官民投資の加速

世界各国は、気候変動対策を自国の産業競争力強化に直結させる戦略を推進しています。EUの「グリーンディール産業計画」や米国の「インフレ削減法」などがその代表例であり、脱炭素を新たな経済成長の源泉と位置付けています 1

日本もこの潮流に乗り、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へと転換する「GX」の取り組みを通じて、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指しています 1。その核となるのが、2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」です 1。この方針に基づき、政府は10年間で150兆円規模の官民投資を呼び込むため、20兆円規模の先行投資支援策や成長志向型カーボンプライシング構想を順次実施しています 1

この先行投資の主要な財源が「GX経済移行債」であり、2024年2月から発行が開始されました 5。この債券は、民間企業だけでは投資判断が困難な、排出削減と産業競争力強化・経済成長に貢献する分野への投資に優先的に資金を供給します 22

このエネルギー政策と産業政策の一体化は、単なる補助金制度の枠を超え、国を挙げて新たな産業エコシステムを創出しようとするものです。政府資金が戦略的に投入されることで、初期リスクの高いグリーン産業への民間投資が促進され、企業は長期的な事業の予見可能性を得ることができます 23

これにより生まれる事業機会は以下の通りです。

  • GXサプライチェーンの構築・強化: 蓄電池、パワー半導体、水素・アンモニア製造装置など、GX推進に不可欠な基幹部品や設備の国内製造拠点への投資。これらはエネルギー安全保障と産業競争力の両面から重視されており、強力な政府支援が見込まれます 1

  • 多排出産業の脱炭素化ソリューション: 鉄鋼、化学、セメント、紙・パルプといったCO2多排出産業における製造プロセスの転換(例:革新電炉、アンモニア燃料化、ケミカルリサイクル、CCUS)を支援する技術や設備、サービス。これらの分野には、GX経済移行債から大規模な投資が想定されています 6

  • トランジション・ファイナンスとESG投資: GX経済移行債の資金使途やレポーティングに関する専門知識を持つ金融機関やコンサルティングファームは、企業のGX投資を促進するための重要な役割を担います。これは、企業のESG評価向上にも繋がり、新たな資金調達の機会を創出します。

  • 国際連携とアジア展開: 日本のGX戦略は、アジアを中心とした世界の脱炭素化への貢献も重視しています 5。日本の技術や資金を活用し、アジア各国の脱炭素移行を支援する事業(例:アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ: AETI、アジア・ゼロエミッション共同体: AZEC)は、新たな国際ビジネスのフロンティアとなるでしょう 1

テーブル:日本のGHG排出削減目標と主要国の比較(2013年比)

国/地域名

基準年

2030年GHG排出削減目標

2035年GHG排出削減目標

2040年GHG排出削減目標

次期NDC提出状況

2022年時点のGHG排出量削減実績

非化石電源比率(2022年)

日本

2013年度

▲46%

▲60%

▲73%

提出済 (2025年2月)

▲19% (2022年)

31% (2023年度)

米国

2005年

▲50%~52%

▲61%~66%

提出済 (2024年12月)

▲17%

39%

EU

1990年

▲55%

▲81% (提案)

▲90% (提案)

未提出

▲33%

61%

英国

1990年

▲68%

▲81%

提出済 (2025年1月)

▲50%

57%

韓国

2018年

▲40%

未提出

▲0.4% (2021年)

36%

カナダ

2005年

▲40%~45%

▲45%~50%

提出済 (2025年2月)

▲8%

82%

フランス

1990年

▲50%

EU未提出

▲28%

87%

ドイツ

1990年

▲65%

▲88%

EU未提出

▲41%

50%

イタリア

1990年

EU未提出

▲24%

36%

中国

2005年

GDP当たりCO2削減率▲65%

未提出

+79% (2021年)

35%

*注1: 日本のGHG排出削減目標年は年度。

*注2: 米国の目標は前バイデン政権時のもの。トランプ政権はパリ協定脱退を表明。

*注3: フランス・ドイツ・イタリアの目標はEUの目標とは別途、各国政府が発表した目標値。

*注4: GHG排出量削減実績は、LULUCF分野における排出・吸収量を考慮して算出。

*注5: 非化石電源比率は、発電に占める再エネと原子力の比率の合計。

この表は、日本が主要国と比較して、GHG排出削減目標において野心的な姿勢を示している一方で、エネルギー自給率の低さや化石燃料依存度の高さという構造的な課題を抱えていることを明確に示しています。特に、GHG排出削減実績と目標との間に依然としてギャップがあることは、今後の政策実行のスピードと実効性が問われることを意味します。このギャップは、同時に、それを埋めるための技術革新や市場メカニズム、そして新たなビジネスモデルに対する強い需要が存在することを示唆しています。例えば、中国のようにGHG排出量が増加傾向にある国々との連携は、日本の脱炭素技術の国際展開における大きな機会となるでしょう。

III. 再生可能エネルギー普及加速の根源的課題と事業機会

A. 再エネ導入拡大の現状と課題:コスト、地域共生、市場統合

1. FIT/FIP制度の成果と国民負担、国際水準とのコストギャップの構造的要因

日本における再生可能エネルギー(再エネ)の導入は、2012年7月に施行された固定価格買取制度(FIT制度)を契機に急速に拡大しました。2024年3月末時点で、FIT制度の開始後に新たに運転を開始した設備は約7,900万kWに達し、2023年度の電源構成に占める再エネの割合は22.9%となりました 1。これは、再エネが日本のエネルギーミックスにおいて重要な役割を担うようになったことを示しています。

しかし、その一方で、日本の再エネ発電コストは国際水準と比較して依然として高い水準にあり、これがFIT制度に伴う国民負担の増大に繋がっています 1。この高コストの背景には、日本特有の地理的・気象的制約が構造的な要因として存在します。具体的には、平野部が少なく大規模な再エネ発電所の適地が限られること、洋上は急峻な海底地形が多いこと、そして台風や地震といった自然災害が頻発するため、発電設備の建設費や災害対策費用、メンテナンス費用が増加することが挙げられます 1

これらの地理的・気象的制約は、一見すると再エネ導入の障壁に過ぎないように見えます。しかし、この制約は、同時に、日本が世界に先駆けて「ニッチな技術革新」と「特殊な市場」を創出する機会を提供しています。例えば、従来のシリコン系太陽電池では設置が困難だった場所(耐荷重性の低い屋根や壁面、傾斜地など)への設置を可能にする軽量・柔軟なペロブスカイト太陽電池の開発は、この制約から生まれた革新技術の典型です 1。また、水深の深い日本の洋上環境に適した浮体式洋上風力発電技術も同様です 1

したがって、今後の事業機会は、これらの「困難」を克服する技術とソリューションに集中します。具体的には、以下のような分野が挙げられます。

  • 耐災害型エネルギーシステム開発: 地震や台風に強い再エネ発電設備、送電網、およびその運用・保守技術の開発。これには、早期の損傷検知、遠隔診断、迅速な復旧を可能にする技術が含まれます。

  • 分散型エネルギーソリューションの最適化: 大規模集中型電源が難しい環境下で、地域ごとの需要と供給を最適化する分散型エネルギーシステム(DERs)やマイクログリッドの構築。これには、蓄電池、コージェネレーション、EV充電インフラとの連携などが含まれます。

  • 高付加価値なサプライチェーンの構築: 日本の地理的制約や災害リスクに対応できる、高品質で信頼性の高い部品やサービスの国内サプライチェーンの育成。これにより、輸入依存度を下げ、コスト競争力を高めることを目指します。

2. 地域共生と事業規律の確保:地元理解の促進、廃棄物対策、環境影響評価

再エネの最大限の導入を促進するためには、技術的・経済的な側面だけでなく、地域社会からの信頼獲得と共生が不可欠です。しかし、FIT制度の導入以降、再エネ発電事業、特に太陽光発電事業においては、安全面、防災面、景観や環境への影響、そして将来の設備廃棄に対する地域の懸念が依然として存在しています 1。これらの懸念は、時に事業の遅延や中止、住民との摩擦(NIMBY: Not In My Back Yard)を引き起こす要因となっています 9

このような課題に対応するため、2024年4月に施行された改正再エネ特措法では、地域住民等への事業内容の事前周知がFIT・FIP制度の認定要件とされ、関係法令に違反する事業者に対しては交付金の一時停止措置が導入されました 1。また、太陽光発電設備の適正な廃棄・リサイクルを確実にするため、廃棄等費用の外部積立制度が導入され、リサイクル制度のあり方についても検討が進められています 1

これらの政策的な対応は、再エネ事業者が単に発電設備を設置するだけでなく、事業のライフサイクル全体を通じて地域社会と責任ある関係を築くことの重要性を明確に示しています。これは、再エネ事業における「社会受容性」が、技術的・経済的側面と同様に、事業の成否を左右する決定的な要素となっていることを意味します。

この状況は、以下のような新たな事業機会を生み出します。

  • 地域共生型事業開発モデルの提供: 地域のニーズや特性に合わせた再エネ事業計画の策定、地域住民との対話・合意形成プロセスの設計と実行支援。これには、地域経済への貢献(雇用創出、収益分配)、景観・環境への配慮、災害時のレジリエンス強化といった要素を組み込んだ事業モデルの開発が含まれます 31

  • 環境・社会影響評価(ESIA)の高度化サービス: 再エネプロジェクトが地域に与える環境的・社会的な影響を正確に評価し、その緩和策を提案する専門的なコンサルティングサービス。GISデータや機械学習を活用した空間情報分析など、客観的なデータに基づく評価が重要となります 36

  • 再エネ設備のリサイクル・廃棄物管理ソリューション: 将来的に大量発生が予想される太陽光パネル等の再エネ設備の適正な回収、リサイクル、最終処分に関する技術開発とビジネスモデルの構築。これには、使用済みパネルからの有用物質回収技術、リサイクルプロセスの効率化、そしてトレーサビリティシステムの構築などが含まれます 1

  • 地域エネルギー事業者の育成・支援: 地域新電力やコミュニティ電力事業など、地域主導でエネルギーの地産地消を進める事業体の設立・運営支援。これにより、地域住民が再エネ事業に主体的に関与し、その恩恵を享受できる仕組みを構築します 37

3. 未稼働案件問題と電力市場への統合に向けた課題

FIT制度の導入後、高い調達価格を保持したまま運転を開始しない「未稼働案件」が大量に滞留するという問題が発生しました 1。これは、将来的な国民負担の増大、新規開発の停滞、そして電力系統容量の圧迫といった課題を引き起こしました 1。この問題に対応するため、2022年度からは、認定取得後一定期間を経過しても運転が開始されない場合には認定を失効させる制度が導入され、2025年3月時点で約8万件/約7GWが失効となりました 1

また、2022年度からは、市場連動型のFIP(Feed-in Premium)制度が導入され、再エネ発電事業者が卸電力取引市場や相対取引で売電を行うことが促進されています 1。FIP制度は、再エネの市場統合を進める上で重要な役割を担いますが、市場価格の変動による収入の不確実性や、発電事業者の運用コスト増といったデメリットも指摘されています 38。これに対応するためには、アグリゲーターの活性化や、変動する再エネに対応するための「調整力」の確保が不可欠です 1

この市場原理への移行は、再エネ導入の「量」から「質」への転換を促し、電力システム全体の「最適化」と「効率化」を追求する新たな事業機会を生み出しています。

  • エネルギーマネジメントシステム(EMS)とAIを活用した予測技術: FIP制度下での収益最大化のため、再エネ発電量の高精度予測、需要予測、およびそれらを基にした最適な売電計画を策定するEMSの開発と提供。AIやビッグデータを活用したエネルギーマネジメントは、エネルギー効率の向上とコスト削減を実現します 40

  • アグリゲーターサービスとVPP(仮想発電所)構築: 多数の分散型電源(再エネ、蓄電池、EVなど)や需要家側のエネルギーリソースを束ね、電力市場や需給調整市場に参入し、調整力や供給力を提供するアグリゲータービジネス。これは、再エネの変動性を吸収し、系統安定化に貢献する重要な役割を担います 1

  • 電力先物市場を活用したリスクヘッジ: 電力価格の変動リスクをヘッジするための電力先物市場の活用支援。これにより、発電事業者や小売電気事業者は、長期的な収益の予見性を高めることができます 1

  • リパワリングと既存アセットの最適化: 運転期間が終了したFIT案件や、老朽化した再エネ設備の性能向上を図るリパワリング事業。これにより、既存のインフラを最大限に活用し、発電効率と収益性を高めることができます 46

テーブル:FIT/FIP制度導入後の再エネ設備容量の推移とコスト動向

年度

FIT制度認定設備容量 (万kW)

FIT制度開始後運転開始設備容量 (万kW)

電源構成に占める再エネ割合 (%)

未稼働案件失効件数/容量 (累積)

2012年7月 (FIT開始)

2023年度

9,900

7,900

22.9

2025年3月末

約8万件/約7GW

この表は、FIT制度導入後の再エネ設備容量の急速な拡大と、それに伴う未稼働案件の課題を明確に示しています。運転開始済み容量が認定容量を下回ることは、制度設計上の課題や、事業者の予見性の低さを示唆しています。2025年3月末時点での未稼働案件の大量失効は、市場がより実効性のあるプロジェクトを求める方向へと転換していることを表しています。このデータは、今後の再エネ市場が、単なる設備導入だけでなく、事業の実行可能性、効率性、そして市場への統合を重視するフェーズに入ったことを示しており、これらの側面を支援するビジネスに大きな機会があることを裏付けています。

B. 立地制約克服と次世代再エネ技術のフロンティア

1. 洋上風力発電:導入ポテンシャル、再エネ海域利用法の運用、サプライチェーン構築の課題と機会

洋上風力発電は、日本の電力供給の「切り札」として位置づけられています 1。陸上風力と比較して風況が優れ、大型風車の設置が可能であることから、高い設備利用率とコスト競争力を有し、関連産業への大きな経済波及効果が期待されています 1。政府は、2030年までに1,000万kW、2040年までに浮体式を含む3,000万~4,500万kWの導入目標を掲げています 1

この目標達成に向け、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(再エネ海域利用法)に基づき、促進区域の指定と公募による事業者選定が着実に進められています 1。2025年3月時点で、10の促進区域が指定され、合計約4.6GWの案件が形成されています 1。さらに、排他的経済水域(EEZ)における洋上風力発電設備の設置に係る改正法案が2025年3月に閣議決定され、第217回通常国会に提出されました 1。これは、日本の広大なEEZが洋上風力開発の新たなフロンティアとなる可能性を示唆しています。

しかし、洋上風力開発は世界的にサプライチェーンのひっ迫やインフレによる事業中断・撤退が発生しており、日本においても国内での強靭なサプライチェーン構築が喫緊の課題となっています 1。政府は、国内調達比率を2040年までに60%に引き上げる目標を掲げ、JOGMECによる政府主導のサイト調査「セントラル方式」や、大型資機材の取り扱いが可能な基地港湾の整備を進めています 1

この状況は、洋上風力における「産業育成」と「国際競争力」という二律背反する目標の間で、戦略的なバランスを取ることの重要性を示しています。国内調達比率の向上は、エネルギー安全保障と国内産業の活性化に貢献しますが、過度な国産化はコスト増を招き、導入目標達成を阻害する可能性があります。

このバランスの中で、以下のような事業機会が生まれます。

  • 洋上風力サプライチェーンの特定分野への集中投資: 風車本体、浮体基礎、海底ケーブル、設置・保守用特殊船舶など、洋上風力発電の各構成要素において、日本が技術的優位性を持つ分野や、早期に競争力を確立できる分野に特化して国内投資を集中させる。特に、浮体基礎の量産化技術や、係留ロープ製造など、日本の造船・重工業技術が活かせる分野は有望です 1

  • 国際連携による技術導入と共同開発: 海外の先進的な洋上風力技術(例:大型風車設計、効率的な施工方法)を日本に導入し、国内での技術習得とコスト削減を加速させるための国際パートナーシップ。同時に、日本の強み(例:浮体式洋上変電所、耐災害技術)を活かした共同開発を通じて、グローバル市場での競争力を高めます 1

  • 港湾インフラの高度化と運用効率化: 洋上風力発電設備の大型化に対応できる港湾施設の整備・拡張、および資機材の効率的な輸送・保管・組み立てを可能にする港湾運営システムの開発。

  • 専門人材の育成と確保: 洋上風力発電の設計、建設、運用、保守に必要な専門技術者や作業員の育成プログラム。政府も人材育成への補助を開始しており、産学連携による取り組みが求められます 1

2. 次世代型太陽電池(ペロブスカイト):軽量・柔軟性の可能性、量産化戦略と先行事例

太陽光発電のさらなる導入拡大には、日本の限られた土地資源と設置場所の制約を克服することが不可欠です。この課題に対する画期的なソリューションとして期待されているのが、軽量かつ柔軟な特性を持つ「ペロブスカイト太陽電池」です 1。従来のシリコン型太陽電池では設置が困難だった耐荷重性の小さい屋根や壁面、湾曲した表面など、多様な場所への設置を可能にします 1

日本は、このペロブスカイト太陽電池の開発において、特にフィルム型において世界をリードしており、製品化のカギとなる耐久性や大型化の面で技術的優位性を確立しています 1。例えば、積水化学工業は、セルを全工程ロール状に製造する「ロールtoロールプロセス」で、耐久性10年相当/30cm幅のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を効率的に作製できる工程を確立し、2025年度までに製造を開始、2027年中に100MW規模、2030年度にはGW級の製造ライン稼働を目指しています 1

この技術革新は、日本の「設置場所の制約」という課題を「新たな市場」へと転換させる大きな可能性を秘めています。

  • 建材一体型太陽光発電(BIPV)市場の開拓: ペロブスカイト太陽電池を建材(屋根材、壁材、窓ガラスなど)に統合し、建築物自体を発電所とするソリューション。これにより、都市部や産業施設の未利用空間を最大限に活用し、自家消費型の再エネ導入を加速できます。

  • フレキシブル・軽量アプリケーションの多様化: 自動車、ドローン、ウェアラブルデバイス、仮設構造物など、軽量性や柔軟性が求められる分野への応用。これにより、新たなモビリティやインフラの脱炭素化に貢献します。

  • 量産技術と製造装置の開発: GW級の生産体制構築を目指す積水化学工業のような企業を支援する、高効率・低コストなペロブスカイト太陽電池の量産技術や製造装置の開発。これには、精密塗布技術、乾燥技術、品質管理システムなどが含まれます。

  • 国際市場への技術輸出: 日本で培われたペロブスカイト太陽電池の技術と量産ノウハウを、同様に土地制約や都市化が進むアジア諸国などへ輸出する。

3. 次世代型地熱発電:クローズドループ・超臨界地熱の展望、開発リスク低減策とJOGMECの役割

地熱発電は、天候に左右されず安定的に発電が可能な国産エネルギー源であり、日本は世界第3位の地熱資源量を誇ります 1。しかし、その開発は、目に見えない地下資源の探査・掘削に伴う高いリスクとコスト、そして温泉事業者をはじめとする地元関係者の理解促進や複雑な許認可手続といった課題に直面し、開発が遅れてきました 1

こうした課題を克服し、地熱開発を加速させるため、次世代型の地熱発電技術が注目されています。

  • クローズドループ方式: 地下の高温の地層に人工的にループを掘削・設置し、内部に水等を循環させて発電する方式です。これにより、温泉資源への影響を最小限に抑えつつ、従来技術では開発が困難だった場所での電源開発が可能となります 1。カナダのEavor社がこの分野で先行しており、ドイツでは商用施設の建設が進んでいます。日本企業もEavor社への出資や、北海道ニセコ地域での実証実験を通じてノウハウ蓄積を進めています 1

  • 超臨界地熱発電: 地下深部(3~6km以上)の超高温・高圧の地熱流体を利用することで、従来よりも高出力で発電が可能となり、発電効率の向上も期待される技術です 1。日本を含む各国で技術開発が進められており、NEDOは国内4地点で資源量評価や事業化に必要な研究開発を推進しています 1

政府は、これらの次世代型地熱発電の開発を加速するため、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が主導的な役割を担っています。JOGMECは、噴気試験を通じて蒸気の有無まで確認する「先導的資源量調査拡充」や、事業者調査への助成拡充を行うことで、初期段階の開発リスクとコストを低減し、事業の着実な開発段階への移行を支援しています 1。また、環境省や林野庁等と連携し、許認可手続の円滑化に向けた「地熱連絡会」を立ち上げ、有望地域での開発促進を図っています 1

地熱発電の「見えない資源」という特性が開発リスクを高めてきた一方で、これを「見える化」し、地域との共生を図るアプローチが、新たな事業機会を創出しています。

  • 高度な地下探査・評価技術: 地熱資源の賦存状況を正確に把握するための、AIを活用した地質・地球物理探査、シミュレーション、モデリング技術の開発と提供。これにより、掘削の成功率を高め、開発コストを削減できます。

  • リスクシェアリング型開発モデル: JOGMECのような公的機関と連携し、初期探査リスクを分担する新たな事業スキームの構築。これにより、民間企業の参入障壁を下げ、投資を呼び込みます。

  • 地域共生型地熱利用ソリューション: 発電後の熱水を利用した農業(ハウス栽培)、養殖、地域暖房、観光施設など、地域経済に直接貢献する多角的な事業展開。これにより、地元住民の理解を深め、事業の社会受容性を高めます 56

  • 次世代地熱技術の国際展開: 日本の超臨界地熱やクローズドループ地熱に関する研究開発成果を、同様に地熱資源が豊富な海外諸国へ展開し、国際貢献と市場獲得を目指します。

テーブル:主要次世代再エネ技術の現状、日本の競争力、商業化見通し(2025-2028)

技術名

日本の技術的優位性/強み

主要な国内企業/研究機関

世界における競争状況(主要競合国/企業)

商業化見通し(具体的な目標年、規模、課題)

関連する政府支援(GI基金、補助金等)

ペロブスカイト太陽電池

フィルム型での耐久性・大型化技術

積水化学工業、東芝、パナソニックHD、JAEA

中国、欧州が量産化で先行、開発競争激化

2025年度製造開始、2027年100MW級、2030年GW級製造ライン稼働目標。量産技術確立とコスト低減が課題 1

グリーンイノベーション基金、次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会 1

浮体式洋上風力

世界初の複数基セミサブ型実証、浮体式洋上変電所、造船技術

丸紅、三菱重工業、東京大学、大島造船所、日鉄エンジニアリング、ナロック

欧州が先行、バージ型、セミサブ型、TLP型、スパー型でプロジェクト進展

2030年10GW、2040年30-45GW目標。サプライチェーン構築、コスト低減、大水深対応技術確立が課題 1

グリーンイノベーション基金、GXサプライチェーン構築支援事業、セントラル方式によるサイト調査 1

クローズドループ地熱

Eavor社への出資・連携、国内実証

中部電力、鹿島、三井物産、シェブロン

カナダEavor社が先行、ドイツで商用施設建設中

国内での実証実験積み重ねが必要。技術ノウハウ蓄積段階 1

JOGMECによる先導的資源量調査拡充、事業者調査助成 1

超臨界地熱

NEDOによる国内資源量評価、研究開発

NEDO、JAEA

世界各国で技術開発段階

2050年頃の商用発電実現目標。調査井掘削、実証実験の継続が必要 1

JOGMECによる先導的資源量調査拡充、事業者調査助成 1

この表は、日本が特定の次世代再エネ技術において世界的な強みを持つ一方で、その商業化と量産化においては、海外勢との競争に直面している現状を示しています。特に、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力のように、具体的な量産目標が設定されている分野は、今後の投資と事業展開の加速が期待されます。これらの技術は、日本の地理的制約を克服し、エネルギー自給率向上に貢献する可能性を秘めており、関連するサプライチェーンの構築や専門人材の育成が、今後の事業機会の鍵となるでしょう。

C. 系統制約の克服と次世代電力ネットワークの形成

1. 「日本版コネクト&マネージ」と広域系統整備計画の進捗とボトルネック

再生可能エネルギーの大量導入は、電力系統の安定性維持に新たな課題をもたらしています。特に、太陽光や風力といった変動型再エネの出力変動は、系統の周波数や電圧の安定性を損なう可能性があり、これを吸収するための「調整力」の確保が不可欠です 1

日本は、この課題に対応するため、「日本版コネクト&マネージ」という概念に基づき、電力系統の効率的な活用と増強を進めています 1。電力広域的運営推進機関(広域機関)は、主要送電線の整備計画を定める「広域系統整備計画」を順次策定しており、全国大の「広域連系系統のマスタープラン」も2023年3月に策定されました 1。東地域(北海道~東北~東京間)や中西地域(関門連系線、中地域)では、マスタープランに先行して計画策定プロセスが開始され、中地域では2024年6月に広域系統整備計画が策定されるなど、物理的な系統増強が進められています 1

しかし、大規模な系統増強工事は、多大な時間と費用を要します。電源の建設リードタイムがデータセンターなどの需要地のリードタイムよりも長いという問題に加え、系統増強自体も数年単位の期間を要するため、再エネ導入や新たな産業立地のスピードに追いつかない可能性があります 1。この物理的なインフラのボトルネックは、同時に、デジタル技術を活用した「ソフト」な解決策に対する強い需要を生み出しています。

この状況は、以下のような事業機会を創出します。

  • 高度な系統運用・管理システム: AIを活用した電力需給予測、リアルタイムでの系統混雑管理、および再エネ出力予測に基づく最適な電力潮流制御を行うソフトウェアおよびハードウェアソリューション。これにより、既存の送電容量を最大限に活用し、出力制御を抑制することが可能になります 1

  • デジタルツイン技術による系統計画の最適化: 仮想空間で電力系統の挙動をシミュレーションし、ボトルネックの特定、増強計画の最適化、および新規電源接続の影響評価を行うデジタルツイン技術の開発と提供。これにより、計画策定の効率化と投資の最適化が図られます。

  • グリッドフォーミングインバータ(GFM)の開発と導入: 再エネ電源が系統の安定化に貢献できるような機能を持つGFMインバータは、系統の慣性力不足や短絡容量低下といった課題に対応し、再エネ大量導入時の系統安定化に寄与します 64。GFMインバータは、電力品質の維持、広域停電の回避にも貢献し、その実用化と普及は、日本の電力系統のレジリエンスを抜本的に強化するでしょう 63

  • フレキシブルな系統接続ソリューション: 新規再エネ電源の系統接続を加速するための、ノンファーム型接続の推進や、スマートインバータの導入など、柔軟な接続を可能にする技術と制度設計。

2. 調整力の確保と需給調整市場の課題:出力制御の抑制と市場競争の促進

再エネの導入拡大に伴い、発電量が需要量を上回る場合に、電力の安定供給を維持するために再エネの出力制御が実施される地域が全国に拡大しています 1。2023年6月までに、東京エリアを除く全国のエリアで出力制御が行われました 1。これは、再エネの変動性を吸収するための「調整力」が不足していることを示しています。

出力制御を抑制し、再エネの最大限の導入を可能にするため、2023年12月には「再エネ出力制御対策パッケージ」が取りまとめられました 1。これには、新設火力発電の最低出力を50%から30%以下に引き下げる方針などが含まれています 1。これは、火力発電が再エネの変動を補う「調整力」としての役割を強化し、より柔軟な運用を可能にすることを目指すものです。

調整力を効率的に確保するため、電力市場では「需給調整市場」が創設され、2025年4月現在、一次から三次までの全調整力商品が取引されています 1。しかし、この市場では、募集量に対する約定不足や調達単価の高騰といった課題が発生しており、市場競争が十分に機能していない状況が見られます 1。これは、調整力の供給が需要に追いついていないか、市場参加者のインセンティブが十分に機能していないことを示唆しています。

この「調整力不足」は、電力システム全体の安定性維持における根源的な課題であり、同時に、この課題を解決するソリューションに対して大きな市場機会を生み出しています。

  • 大規模蓄電システムの導入加速: 系統用蓄電池は、再エネの出力変動を吸収し、余剰電力を貯蔵して必要な時に放電することで、調整力として機能します 1。2025年4月からは、系統増強工事を待たずに蓄電池の早期連系を可能にする「N-1充電停止」や「充電条件設定」といった暫定措置が導入されており、これにより蓄電池導入が加速されると期待されています 42

  • V2G(Vehicle-to-Grid)技術の社会実装: 電気自動車(EV)のバッテリーを電力系統の調整力として活用するV2G技術は、電力需要のピーク時にEVが電力を供給することで、需給バランスの調整に貢献します 71。日本では2018年度からV2Gの実証事業が開始されており、欧米では既に商業化に向けた取り組みが進んでいます 43

  • DR(デマンドレスポンス)の高度化とDRready機器の普及: 需要家側で電力消費を最適化するDRは、余剰再エネの有効活用や需給ひっ迫時の対策として重要です 1。特に家庭におけるDRでは、遠隔制御や自動制御といった高度化が求められており、2025年1月にはヒートポンプ給湯器のDRready要件案が作成されました 72。DRready機器の普及は、電力需要の柔軟性を高め、系統安定化に貢献します 77

  • 需給調整市場の競争促進と市場設計の改善: 需給調整市場における約定不足や調達単価高騰の課題に対し、市場競争を促進するための施策検討が継続されています 68。将来的には、kWhとΔkWを同時約定する「同時市場」の導入が検討されており、これにより電源の一元的な情報把握と効率的な需給運用が期待されます 68

IV. 脱炭素化を加速する革新技術の最前線と事業機会

A. 水素・アンモニア:サプライチェーン構築と利用拡大の戦略

1. 製造・輸送・貯蔵技術の進化とコスト競争力

水素は、アンモニアや合成燃料、合成メタンの基盤となる材料であり、鉄鋼、化学、モビリティ、産業熱、発電など幅広い分野のカーボンニュートラル化に寄与する次世代燃料として期待されています 1。アンモニアは、既存のサプライチェーンを活用できるメリットがあり、欧州では水素キャリアとして、アジアでは混焼発電の燃料として注目されています 1

近年、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、水素社会実現に向けた動きが世界的に加速しています 1。各国が自国の強みを活かした産業戦略を展開し、水素・アンモニアの供給網確立に向けた国際競争が激化しています 32

日本は、水素製造や輸送技術、燃焼技術など複数分野で世界をリードしています 1

  • 製造技術: 水電解装置の大規模化では欧米が先行していますが、日本は膜・触媒などの要素部材で優位性を持ち、海外企業に多く採用されています 1。旭化成とカナデビアは、水電解システムの大型化・モジュール化技術開発に取り組み、2030年頃の商用化を目指しています 1

  • 輸送・貯蔵技術: 日本は海上輸送技術で世界をリードしており、川崎重工業が建造した世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」による豪州からの海上輸送に成功しました 1。同社は2030年代に複数の液化水素サプライチェーンを立ち上げ、中型の液化水素運搬船(小型の約32倍の運搬能力)の建造を目指しています 46。また、国内では商用規模の水素サプライチェーン基地の建設が2025年5月に着工されました 78。水素パイプラインの整備も進められており、2024年7月には東京ガスがHARUMI FLAGへの水素パイプライン供給を開始しました 79。NEDOは2030年までに輸入港・製造拠点周辺で半径10km程度のパイプライン整備、2040年までに内陸へ50km程度の幹線パイプライン延伸、2050年までにさらに50km程度の延伸を目指す計画を示しています 80

  • 利用技術: 日本は燃焼技術で世界をリードしています 1。三菱重工業は2023年に世界初の水素10%混焼大型ガスタービン発電実証に成功し、2025年度の開発完了を目指して水素専焼ガスタービンの燃焼器開発を進めています 1。IHIと三菱重工業はアンモニア専焼ガスタービンの開発を進め、IHIは2026年度を目途に商用運転を開始し、2030年までに数万~数十万kW級の専焼技術開発を目指しています 81。JERAとIHIは2024年に大型商用石炭火力発電所でのアンモニア20%混焼発電実証に成功しました 1

これらの技術的優位性をビジネスとしての市場優位性へと転換するためには、供給コスト低減と需要拡大に寄与する大規模サプライチェーンの確立に向けた先行投資が不可欠です 1

2. 水素社会推進法と官民連携による投資促進

水素等の社会実装に向けて、2024年10月に施行された「水素社会推進法」に基づき、低炭素水素等のサプライチェーン構築のための大規模な支援が開始されています 1

  • 価格差に着目した支援: 3兆円規模の価格差に着目した支援により、代替技術が少なく転換が困難な鉄鋼・化学等の産業・用途の脱炭素化を目指し、水素等のサプライチェーン組成に必要な発電等における水素等の利用を促進します 1。2024年11月から2025年3月にかけて、商用規模のサプライチェーン組成に向けた計画申請の受付が行われました 1

  • 拠点整備支援: 水素等の大規模な利用ニーズを創出し、スケールメリットを獲得するための供給基盤整備を支援します 1。2025年3月からは、効率的なサプライチェーン構築に資する設備への支援(拠点整備支援)の申請受付が開始されました 1

  • 市場メカニズムとの連携: 長期脱炭素電源オークションでは、2025年1月実施の第2回入札から、水素・アンモニアの燃料費のうち固定的な支払部分(take or pay等)が支援対象に追加されました 1。また、都市ガスのカーボンニュートラル化に向けて、合成メタン・バイオガスの導入目標を高度化法の判断基準に位置付け、導入コストのうち割高になる部分を託送料金原価に含める仕組みが検討されています 1

これらの政策は、民間企業が水素・アンモニア分野への投資を加速させるための予見性を高め、新たな事業機会を創出します。特に、大規模なサプライチェーン構築や、既存インフラを活用した低コスト供給モデル、そして地域特性に応じた水素利活用モデルの開発が期待されます。

B. CCUS/カーボンリサイクル:ハード・トゥ・アベート産業の救世主

1. CCUS技術の社会実装と貯留事業の展望

CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)は、鉄鋼、セメント、化学、石油精製といった脱炭素化が困難な産業(ハード・トゥ・アベート・セクター)や発電所から排出されるCO2を回収し、地中貯留または有効利用することで、脱炭素化を実現する不可欠な技術です 1

  • 事業環境整備: 2024年5月に「二酸化炭素の貯留事業に関する法律」の一部が施行され、2025年2月には北海道苫小牧市沖の一部区域が特定区域として指定されるなど、事業環境の整備が進んでいます 1

  • 先進的CCS事業: 2030年までの事業開始を目標とした事業者主導の「先進的CCS事業」では、2024年6月に改めて9件のプロジェクトが採択され、設計作業等の支援が行われています 82。これらのプロジェクトは、国内貯留だけでなく、アジア大洋州を中心とした海外貯留も含まれており、年間約2,000万トンのCO2貯留を目指しています 82

  • 資金支援: 「第7次エネルギー基本計画」では、事業者によるCCS事業への投資を促すための支援制度が検討されており、2025年2月からは「CCS事業の支援措置に関するワーキンググループ」で詳細設計が進められています 1。GX経済移行債の資金使途にもCCUSが含まれており、約4兆円規模の投資が想定されています 6

  • 国際連携: 「アジアCCUSネットワークフォーラム」などを活用し、関係国との具体的な対話や、将来的な貯留権益確保を目指した共同調査が実施されています 1

これらの取り組みは、CCUSが単なる技術開発に留まらず、大規模な産業として確立されるための基盤を築きつつあり、関連するエンジニアリング、建設、運用、モニタリング、そして国際的なCO2輸送・貯留サービスといった分野で大きな事業機会を創出します 52

2. カーボンリサイクル:CO2を資源に変える革新

カーボンリサイクルは、CO2を単なる排出物ではなく、燃料や原料として再利用する革新的な技術です 1

  • 技術開発と実証: 広島県大崎上島にあるカーボンリサイクル実証研究拠点を活用し、技術開発が進められています 1。NEDOは2025年度から、バイオマスや炭素系廃棄物等を燃料とするガス化技術を適用し、発電とともに有価物を併産するCO2分離・回収型ポリジェネレーションシステムの技術開発を支援します 89。また、CO2と水素を利用してメタンを合成する「メタネーション」技術や、ペットボトルや繊維の原料となるパラキシレンの製造技術、CO2から高付加価値な炭素材料を製造する鉱物化技術などの開発も推進されています 1

  • バイオものづくり: グリーンイノベーション基金を活用し、微生物等が持つCO2固定能力を最大限に引き出し、CO2を原料としたバイオものづくりによるカーボンリサイクルを推進する取り組みが開始されています 1。廃木材や食品・農業残渣等の未利用資源を活用し、燃料や素材等を生産する技術開発も進められています 1

  • 国際普及展開: 「カーボンリサイクル産学官国際会議」等を通じて、グローバルな普及展開や大学と連携した人材育成の取り組みも進められています 1

カーボンリサイクルは、CO2排出削減と同時に新たな製品や燃料を生み出す「一石二鳥」のソリューションであり、化学、素材、燃料、建設など多岐にわたる産業で新たな価値創造の機会を提供します 90

C. 原子力:安定供給と脱炭素を両立する選択肢

1. 既設炉の最大限活用と安全性向上

原子力発電は、温室効果ガスを排出しない脱炭素電源であり、日本のエネルギー安定供給に不可欠な役割を担っています 1

  • 再稼働の加速: 原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原子炉の再稼働が、地元の理解を得ながら進められています 1。2024年11月には東北電力女川原子力発電所2号機が、同年12月には中国電力島根原子力発電所2号機が再稼働し、2025年3月時点で全国で計14基が再稼働しています 1

  • 運転期間の延長: 2023年5月に成立したGX脱炭素電源法により、原子力発電所の運転期間は最長60年という従来の枠組みを維持しつつ、東日本大震災以降の他律的な停止期間を60年のカウントから除外することが可能となりました 1

  • 設備利用率の向上: 「第7次エネルギー基本計画」では、設備利用率の向上に向けた取り組みが重視されており、トラブル低減、効率的な定期検査、運転中保全の導入拡大、運転サイクルの長期化などが進められています 1

これらの取り組みは、既存の原子力発電所が日本のエネルギーミックスにおいて、引き続き安定した脱炭素電源として貢献するための基盤を強化します。関連する保守・点検、安全管理、人材育成などの分野で事業機会が生まれます。

2. 次世代革新炉の開発と建設:SMR、高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギー

2040年より前に既設炉の多くが運転期間60年に到達することを踏まえ、長期的な脱炭素電源を確保するため、次世代革新炉の開発・設置が推進されています 1

  • 革新軽水炉: 安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ革新軽水炉の開発が進められています 1。サプライチェーンの競争力強化のため、技術開発が促進されています 1

  • 小型軽水炉(SMR): 小出力を活かした自然循環冷却システムを目指し、米国やカナダ等でデータセンターなどの電力多消費設備への脱炭素・安定電源としてのニーズが高まっています 37。日本のIHIと日揮は、米国のNuScale社と連携し、2029年頃の運転開始を目指してモジュール工法の技術実証に取り組んでいます 1。日立GEはカナダのBWRX-300初号機プロジェクトに主要機器を提供予定で、2030年末までの運転開始を目指しています 1

  • 高速炉: 高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や資源の有効利用に資する核燃料サイクルの効果を高めることが期待されており、日本は実験炉「常陽」、原型炉「もんじゅ」の経験を活かし、国際連携も活用しながら実証炉開発に取り組んでいます 1

  • 高温ガス炉: 高温熱を活かしたカーボンフリーの水素や熱の供給により、製鉄や化学などの素材産業の脱炭素化への貢献が期待されています 1。高温工学試験研究炉(HTTR)では、950℃の高温熱生成や、原子炉冷却不能時でも自然に原子炉出力が低下し安定状態を維持する実証試験に世界で初めて成功しました 1

  • フュージョンエネルギー(核融合エネルギー): 高レベル放射性廃棄物を排出しないメリットがありますが、核融合反応の連続化や投入エネルギー量を超えるエネルギー回収など、解決すべき課題は多いです [1, 8, 19.2]。日本は国際熱核融合実験炉(ITER)計画において超伝導コイルや加熱機器などの機器製作を担当し、JT-60SA計画ではトカマク型超伝導プラズマ実験装置JT-60SAを建設する技術力を有しています 1。2023年4月に策定された「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」に基づき、早期実現と産業化を目指し、官民の研究開発力強化に取り組んでいます 95

次世代革新炉の開発・建設は、日本の重工業、建設業、IT産業など多岐にわたる分野で大規模な投資と技術革新の機会を創出します。特に、SMRは分散型電源としての可能性も秘めており、新たなビジネスモデルの創出が期待されます。

3. 核燃料サイクルと最終処分:長期的な課題解決への道筋

核燃料サイクルの推進は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減の観点から、日本の基本的方針です 1

  • 再処理工場・MOX燃料工場の竣工: 六ヶ所再処理工場は2026年度中、MOX燃料工場は2027年度中の竣工を目指し、官民一体で取り組んでいます 1

  • プルトニウムバランスの確保: 「利用目的のないプルトニウムは持たない」原則を堅持し、プルトニウム保有量の削減に取り組んでいます 1。電気事業連合会は2025年2月に新たな「プルトニウム利用計画」を策定し、プルサーマルの推進に取り組む方針です 1

  • 使用済燃料貯蔵能力の拡大: 2024年11月にはリサイクル燃料貯蔵株式会社のむつ中間貯蔵施設が事業を開始するなど、貯蔵能力拡大に向けた取り組みが進展しています 1

  • 高レベル放射性廃棄物の最終処分: これは国家的な課題であり、国が前面に立ち、原子力発電環境整備機構(NUMO)とともに、対話活動を進めています 1。2020年11月には北海道の寿都町及び神恵内村で文献調査が開始されましたが、最終処分事業に関心を持つ他の地域は限定的な状況でした 32。2024年11月には文献調査報告書が取りまとめられました 1。2024年6月には佐賀県玄海町でも文献調査が開始されるなど、調査実施地域の拡大に向けた取り組みが強化されています 1

最終処分問題は、住民の拒否反応や不安、特に若年層への理解促進が課題となっています 32。これに対し、政府はシンポジウムや説明会、広報活動、専門家の派遣、深地層研究施設の活用などを通じて、国民各層、特に若年層への教育・学習機会の増加を図っています 99

この分野では、放射性廃棄物管理技術、地質調査・評価技術、リスクコミュニケーション、地域共生モデルの構築、そして国際協力の分野で事業機会が存在します。

V. 事業機会探索のための高解像度な洞察とソリューション

A. 根源的課題の特定と事業機会への転換

日本のエネルギー転換は、単なる技術導入や政策変更に留まらず、社会構造、経済構造、そして人々の意識そのものを変革する壮大な挑戦です。この挑戦の根源には、以下の本質的な課題が横たわっています。

  1. 地理的・気象的制約と高コスト構造: 平野部の少なさ、急峻な海底地形、自然災害の多発といった日本の地理的・気象的制約は、再エネ導入コストを国際水準より高くし、国民負担増大の懸念を生んでいます 7

  2. 社会受容性の壁: 再エネや原子力、最終処分地選定など、大規模エネルギープロジェクトに対する地域住民の懸念(NIMBY問題)は、事業の遅延や中止、住民との摩擦を引き起こし、導入拡大の大きな障壁となっています 9

  3. 系統制約と調整力不足: 変動型再エネの大量導入は、電力系統の安定性維持に課題をもたらし、出力制御の頻発や調整力不足が顕在化しています 10

  4. GX投資の予見性不足と資金調達の課題: 政府は大規模な官民投資を呼び込む方針ですが、民間企業は政策の単年度措置や将来の不確実性から、中長期的なGX投資に躊躇する傾向があります 23

  5. サプライチェーンの脆弱性と国際競争の激化: 重要鉱物資源の特定国への依存、洋上風力部品の国内調達比率の低さ、水素・アンモニア分野における国際競争の激化など、サプライチェーンの強靭化が喫緊の課題です 48

これらの課題は、一見すると日本のエネルギー転換を阻む壁のように見えますが、視点を変えれば、これらこそが新たな事業機会の宝庫となります。

B. ありそうでなかった切り口の地味だが実効性のあるソリューション

1. 地域共生型再エネ事業の深化:NIMBYからWIN-WINへ

再エネ導入における社会受容性の課題は、単に説明会を開催するだけでは解決しません。地域住民が事業の「当事者」となり、その恩恵を直接享受できる仕組みを構築することが重要です。

  • 地域主導型エネルギー事業の推進: 地域新電力やコミュニティ電力事業の設立・運営支援を強化し、地域の未利用資源(例:小水力、バイオマス)を活用した地産地消モデルを構築します 34。これにより、地域経済への貢献(雇用創出、収益分配)を明確にし、住民の理解と協力を得ます 31

  • 環境・社会影響評価(ESIA)の透明化と住民参加: GISデータや機械学習を活用した客観的な環境影響評価を導入し、その結果を住民に分かりやすく開示します 36。評価プロセスに住民が早期から参加できる仕組みを設け、懸念事項を事前に特定し、緩和策を共同で検討します。

  • 再エネ設備廃棄・リサイクルの一貫管理サービス: 太陽光パネル等の廃棄・リサイクル費用積立制度の運用を支援し、使用済みパネルからの有用物質回収、リサイクルプロセスの効率化、トレーサビリティシステム構築を一体的に提供するビジネスモデルを確立します 1。これにより、将来的な環境負荷と地域への懸念を解消します。

2. 系統制約の「ソフト」な解決策:デジタルと市場メカニズムの融合

物理的な系統増強には限界があるため、デジタル技術と市場メカニズムを組み合わせた「ソフト」な解決策が、再エネ大量導入の鍵となります。

  • AI/IoTを活用した高度エネルギーマネジメント: 再エネ発電量・需要予測の精度向上、リアルタイムでの系統混雑管理、最適な電力潮流制御を行うAI/IoTプラットフォームを開発・提供します 1。これにより、既存系統の利用効率を最大化し、出力制御を抑制します。

  • グリッドフォーミングインバータ(GFM)の普及加速: GFMインバータは、再エネ電源が系統の慣性力不足や短絡容量低下といった課題に対応し、系統安定化に貢献します 63。GFMインバータを搭載した蓄電池システムや再エネ発電設備の導入を促進し、電力品質の維持と広域停電の回避に貢献します。

  • VPP(仮想発電所)とDRready機器の市場統合: 分散型エネルギーリソースを束ねるアグリゲータービジネスを強化し、需給調整市場でのVPPの活用を促進します 1。家庭用・業務産業用蓄電池やEVバッテリー、ヒートポンプ給湯器などのDRready機器の普及を加速し、需要家が電力市場に柔軟に参加できる環境を整備します 72

3. GX投資の予見性向上とリスクマネーの最適活用

民間企業がGX投資に踏み切るためには、政策の予見性とリスクマネーの適切な供給が不可欠です。

  • 長期的な政策フレームワークの明確化: GX経済移行債の資金使途や償還計画をより具体的に示し、民間企業が長期的な投資判断を下せるよう予見性を高めます 6。特に、多排出産業の脱炭素化や次世代技術開発など、初期投資リスクの高い分野への優先的な資金供給を継続します 6

  • リスクシェアリングモデルの多様化: JOGMECによる地熱発電の先導的資源量調査拡充 53や、CCS事業への支援 82など、公的機関が初期リスクを分担する仕組みを他のGX分野にも拡大します。これにより、民間企業の参入障壁を下げ、投資を呼び込みます。

  • トランジション・ファイナンスの普及促進: GX経済移行債の資金使途やレポーティングに関する専門知識を持つ金融機関やコンサルティングファームが、企業のGX投資を促進するためのサービスを提供します 21。企業のESG評価向上に繋がる新たな資金調達機会を創出します。

4. 社会受容性向上への多角的アプローチ:対話と透明性の強化

大規模エネルギープロジェクトの推進には、国民各層、特に地域住民の理解と信頼が不可欠です。

  • ターゲット層に合わせた情報発信: 原子力最終処分地問題における若年層へのアプローチ不足 98を解消するため、映画館やSNSを活用した情報提供 101、シンポジウムやワークショップの開催 100など、対象者の関心に合わせた双方向のコミュニケーションを強化します。

  • 第三者機関による客観的検証と情報公開: ALPS処理水の海洋放出におけるIAEAやJAEAによるモニタリングと透明性の高い情報公開 14をモデルに、他のエネルギープロジェクトにおいても第三者機関による客観的な安全性・環境影響評価を導入し、その結果を分かりやすく公開します。

  • 地域共生と経済的インセンティブの連動: 最終処分事業に関心を持つ地域が限定的である課題 1に対し、電源三法交付金 100に加え、地域振興策や経済的メリットを具体的に提示し、地域との共生関係を築くことで、社会全体の利益と地域住民の利益を両立させます 99

C. 今後3年間の最新動向と事業機会の具体化

1. 政策動向:補助金、規制緩和、市場設計の進化

2025年から2028年にかけて、日本のエネルギー政策は、脱炭素化と経済成長の同時実現に向けた具体的な施策が加速します。

  • カーボンプライシングの本格稼働: 2026年度から排出量取引制度(GX-ETS)が本格稼働し、2028年度からは炭素に対する賦課金が導入されます 3。企業は排出削減努力を収益化する機会を得るとともに、排出量管理システムの導入や排出削減技術への投資が不可欠となります 100

  • 再エネ関連補助金の継続と拡充:

    • ペロブスカイト太陽電池: 2025年度に新たな補助事業が新設され、製造開始、量産化に向けた設備投資が支援されます 121

    • 自家消費型太陽光発電・蓄電池: 2025年度は採択済み案件の後年度負担分のみの予算計上となる見込みですが、引き続き自家消費型太陽光発電や蓄電池導入への支援は継続されます 70

    • 洋上風力発電: グリーンイノベーション基金やGXサプライチェーン構築支援事業を通じて、技術開発、実証、国内サプライヤー育成が継続されます 1

    • CCUS: 2025年度以降も、JOGMECによる「先進的CCS支援事業」の公募が継続され、CO2分離回収・輸送・貯留に関する調査や設計作業が支援されます 82。NEDOもカーボンリサイクル関連の実証事業の公募を2025年度に実施します 89

    • 水素エネルギー: 水素社会推進法に基づき、低炭素水素等のサプライチェーン構築のための価格差に着目した支援や拠点整備支援が継続されます 1。水素ステーションの整備目標は2025年までに320箇所、2027年までに約500箇所とされており、関連する補助金も提供されます 66

  • 電力市場改革の進展: 需給調整市場の運用改善が継続され、2026年4月以降の週間商品の前日取引移行などが検討されています 68。また、電力システム改革の検証結果を踏まえ、将来の電力システムを支える取引市場の全体像(供給力確保、中長期取引、短期取引)が整備されていきます 1

2. 市場動向:技術革新とサプライチェーンの変容

革新技術の商業化とサプライチェーンの強靭化が、今後の市場を大きく変容させます。

  • ペロブスカイト太陽電池の量産化: 積水化学工業は2025年度に製造を開始し、2027年中に100MW級、2030年度にはGW級の製造ライン稼働を目指しています 1。これにより、建材一体型太陽光発電(BIPV)市場やフレキシブルアプリケーション市場が本格的に立ち上がります 58

  • 浮体式洋上風力のサプライチェーン構築: 2030年までに10GW、2040年までに30-45GWの導入目標 47に向け、浮体基礎の量産化技術や係留ロープ製造など、日本の造船・重工業技術を活かした国内サプライチェーンの構築が加速します 51

  • 水素・アンモニアの商業化とインフラ整備: 川崎重工業は中型液化水素運搬船の建造を進め、2030年代に複数の液化水素サプライチェーンを立ち上げることを目指しています 1。IHIは2026年度を目途にアンモニア専焼ガスタービンの商用運転を開始する方針です 81。水素パイプラインの整備も進み、地域での水素利活用モデルが具体化します 79

  • 系統用蓄電池とV2Gの普及: 2025年4月からの暫定措置により、系統用蓄電池の導入が加速し、電力系統の安定化に貢献します 42。V2G技術の実用化も進み、EVが電力系統の調整力として機能する新たなビジネスモデルが生まれます 43

  • 地域マイクログリッドの拡大: 災害時のレジリエンス強化やエネルギーの地産地消を目指し、地域マイクログリッドの構築が全国で進められます 37

3. 投資動向:官民連携と新たなファイナンスモデル

GX経済移行債の発行は、民間投資を呼び込む強力な触媒となります。

  • GX経済移行債による先行投資支援: 10年間で150兆円規模の官民投資を呼び込むための20兆円規模の先行投資支援策が継続されます 6。特に、民間企業だけでは投資判断が困難な、排出削減と産業競争力強化・経済成長に貢献する分野に優先的に資金が供給されます 22

  • トランジション・ファイナンスの拡大: GX経済移行債の資金使途やレポーティングに関する専門知識を持つ金融機関やコンサルティングファームは、企業のGX投資を促進する上で重要な役割を担います 21。ESG投資の拡大と相まって、新たな資金調達の機会が創出されます。

  • スタートアップ・中小企業への支援強化: GX推進におけるスタートアップ企業への優遇措置 1や、中小企業向けの省エネ・脱炭素化補助金 122が継続・拡充されます。これにより、新たな技術やビジネスモデルを持つ中小企業やスタートアップがGX市場に参入しやすくなります。

VI. まとめ:日本のエネルギー転換が拓く未来

日本のエネルギー転換は、地理的・気象的制約、社会受容性の壁、系統制約、GX投資の予見性不足、サプライチェーンの脆弱性といった根源的な課題に直面しています。しかし、これらの課題は、同時に、日本が世界をリードする革新的な技術とビジネスモデルを創出する機会でもあります。

政府は、「S+3E」原則を大前提としつつ、「第7次エネルギー基本計画」「GX2040ビジョン」「地球温暖化対策計画」を一体的に推進することで、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指しています 2。福島復興の経験から得られた知見、DX・GXの進展、そして革新技術への戦略的投資は、この目標達成に向けた強力な推進力となります。

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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