太陽光発電量計算に必要なNEDO日射量データベースガイド:バージョン3.0(2021年4月)の詳細解説

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

太陽光発電と蓄電池のシミュレーション結果
太陽光発電と蓄電池のシミュレーション結果

発電量計算に必要なNEDO日射量データベースガイド:バージョン3.0(2021年4月)の詳細解説

30秒で読めるまとめ

NEDOの日射量データベースが更新され、MONSOLA-20とMETPV-20という2つの主要データベースが公開されました。これらは2010年から2018年のデータを基に、日本全国の日射量を高精度かつ高解像度で提供しています。更新のポイントは、統計期間の統一、精度向上、空間解像度の向上です。このデータベースは、太陽光発電システムの設計や性能評価に不可欠なツールとなっています。

目次

  1. はじめに
  2. データベース更新の概要
  3. METPV-20の作成方法
  4. MONSOLA-20の作成方法
  5. 参考文献

1. はじめに

日本気象協会は、NEDOの委託研究の一環として、太陽光発電システムのための様々な気象データベースを開発してきました。その中でも特に重要な2つのデータベースが存在します:

  1. MONSOLA(MONthly mean SOLAr radiation data throughout Japan):日本全国の月平均日射量データを含むデータベース
  2. METPV(MEteorological Test data for PhotoVoltaic systems):毎時の気象データを含むデータベース

今回の更新で、これらのデータベースはそれぞれMONSOLA-20とMETPV-20に改名されました。

MONSOLA-20の概要

  • 統計期間:2010年〜2018年
  • 対象範囲:日本全国の1kmメッシュ
  • データ種別:月平均の推定値
  • 推定方法:日照時間から全天日射量を推定するモデルと、ひまわり8号のデータから推定した日射量分布を組み合わせたもの

METPV-20の概要

  • 統計期間:2010年〜2018年
  • 対象範囲:全国835地点
  • データ種別:平均年、多照年、寡照年の毎時推定値
  • 推定方法:日照時間から全天日射量を推定するモデルを使用

2. データベース更新の概要

日射量データベースの更新には、以下の3つの主要な改善点が含まれています:

  1. 統計期間の更新と統一:両データベースが2010年〜2018年をカバーするように更新されました。
  2. 精度の向上:改良された日照-日射モデルが使用されました。
  3. 空間解像度の向上:MONSOLA-20では、より高解像度のハイブリッドメッシュ法が採用されました。

2.1 統計期間の更新

統計期間を2010年〜2018年に更新したことで、地球規模の気候変動や都市化による局所的な気候変動を考慮した、より最近の日射条件を反映させることができました。

2.2 精度の向上

新しいデータベースでは、改良された日照-日射モデルが使用されています。このモデルは、以前のモデルで見られた過小評価傾向や低日射量域での大きなばらつきなどの問題に対処しています。

2.3 空間解像度の向上

MONSOLA-20では、地上観測データと衛星データを組み合わせた「ハイブリッドメッシュ法」が採用され、より詳細な日射量の空間分布が作成されました。

3. METPV-20の作成方法

METPV-20の作成プロセスは以下の手順で行われました:

  1. データの収集
  2. 欠測データの補間
  3. 日射量データの整備
  4. 代表年の選定
  5. 月の境界データの補正

3.1 データの収集

METPV-20は、気象庁のアメダス(地域気象観測システム)データを基に作成されています。日本全国の835地点で観測された日照時間データが使用されました。

3.2 欠測データの補間

データの連続性を確保するため、欠測データは相関係数の高い近隣地点のデータを用いて補間されました。

3.3 日射量データの整備

  1. 水平面全天日射量:直接日射量測定が行われていない地点では、機械学習ベースの「日照-日射モデル」を用いて推定されました。
  2. 直達日射量と散乱日射量:晴天指数、太陽高度、日照率、積雪、大気混濁度の季節変化などを考慮した分離モデルを用いて計算されました。
  3. 傾斜面日射量:直達成分、天空散乱成分、地面反射成分を考慮したモデルを用いて計算されました。

3.4 代表年の選定

以下の3種類の代表年データが作成されました:

  • 平均年
  • 多照年
  • 寡照年

これらは2010年〜2018年の月平均日射量値に基づいて選定されました。

3.5 月の境界データの補正

代表年データにおける月境界の不連続性を減少させるため、月境界の温度データは重み付き分配法を用いて調整されました。

4. MONSOLA-20の作成方法

MONSOLA-20の作成プロセスは以下の手順で行われました:

  1. データの収集
  2. 月平均日射量データの整備
  3. 日射量マップの作成

4.1 データの収集

MONSOLA-20は、アメダスデータとひまわり8号の衛星データの両方を使用しています。

4.2 月平均日射量データの整備

  1. 2010年〜2018年の各年について、全国835地点の毎時日射量データを作成しました。
  2. 各年の月平均日射量データを計算しました。
  3. 9年間の月平均日射量データの平均を計算しました。
  4. 2016年〜2018年のひまわり8号衛星データを用いて、1kmメッシュの日射量分布を作成しました。
  5. アメダス地点のポイントデータと1kmメッシュデータを統合し、高解像度かつ高精度のデータセットを作成しました。

4.3 日射量マップの作成

1kmメッシュのMONSOLA-20データを用いて、以下のマップが作成されました:

  • 全天日射量マップ(月別および年間)
  • 散乱日射量マップ
  • 最適傾斜角日射量マップ

これらのマップは、日本全国の日射条件を包括的に示しており、太陽エネルギーシステムの計画や評価など、様々な用途に活用できます。

5. 参考文献

  1. 日本太陽エネルギー学会, [改訂]新太陽エネルギー利用ハンドブック, 2015
  2. R.Perez and R.Seals, A new simplified version of Perez diffuse irradiance model for tilted surface, Solar Energy, 39-3(1987), 221-231.
  3. NEDO日射量データベース閲覧システムWEB版Ver 3.0 操作マニュアル, 2021年4月
  4. NEDO成果報告書 2015年度〜2019年度成果報告書(太陽光発電システムの高精度発電量評価技術の開発(日射量データベースの高度化に関する研究))

このガイドは、NEDOの日射量データベース、その最新の更新内容、および日本の高解像度で正確な日射量データを作成するために使用された方法論の包括的な概要を提供しています。ここに含まれる情報は、太陽エネルギーや気候研究の分野で働く研究者、エンジニア、政策立案者にとって貴重なものです。

 

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