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【2025年最新】太陽光発電に使える日射量データベース完全ガイド〜NEDO METPV代替から無料/商用まで徹底解説
10秒で読める要約
太陽光発電システムの設計・運用には正確な日射量データが不可欠。本記事ではNEDO METPV-20の代替となる日本・アジア・世界各国の日射量データベースを網羅的に解説。GHI(全天日射量)、DNI(直達日射量)、GTI(傾斜面日射量)を提供する無料/商用データソース17種類の特徴、空間・時間分解能、提供形態、ライセンス条件を詳細比較し、用途別の選定ポイントも紹介。発電量予測からO&M最適化まで役立つ最新情報を完全網羅。
はじめに:太陽光発電に必要な日射量データとは
太陽光発電システムの予測・評価には、正確な日射量データが不可欠です。日射量は主に全天日射量(GHI)、直達日射量(DNI)、**傾斜面日射量(GTI)**の3種類に分類され、それぞれ異なる用途に活用されます。
日本国内では長らくNEDOの「MONSOLA-20/METPV-20」データベースが標準として使われてきましたが、これは2010~2018年の推計値をまとめた静的データであり、リアルタイムや長期時系列の更新には対応していません。
本記事では、日本を中心に東南アジア・米国・中国・欧米などの地域を対象に、太陽光発電推計に利用可能な日射量データベースやサービスを網羅的に整理します。特にMETPV-20の代替となりうる高品質で幅広い用途に対応可能なソースをピックアップし、提供元組織、提供形式、空間・時間分解能、対応する日射量種類、更新頻度・期間、利用料金・商用可否、特徴・制約、公式リンクといった観点でまとめていきます。
日射量データベース・サービス一覧表
以下に代表的なデータベース/サービスを表で要約しました。なお、表内のリンクは公式サイトへの参照であり、データ取得には別途利用登録やAPIキー取得が必要な場合があります。
データセット/サービス名 | 運営組織・企業 | 提供形態 | 分解能 (空間・時間) | 対応日射量 (GHI/DNI/GTI) | 更新頻度・期間 | 価格・商用利用 | 主な特徴・備考 | 公式リンク |
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NEDO MONSOLA-20 | NEDO(日本気象協会) | Web閲覧システム | 1km メッシュ・月次平均 | GHI | 年1回更新 (2010–2018年推計) | 無料 (要利用許諾) | 日本全国1km格子の月平均推定(2010–2018年)。実時間不可。 | 公式 |
NEDO METPV-20 | NEDO(日本気象協会) | Web閲覧システム | 点データ(835地点)・時刻別 | GHI | 更新済 (統計期間2010–2018年) | 無料 (要利用許諾) | 日本国内835地点の代表年毎時推定値データ。多照年・寡照年含む。 | 公式 |
JWA SOLASAT 9-Now | JWA (日本気象協会民間部門) | API/FTP (ENeAPI) | 約0.5km・2.5分 | GHI | リアルタイム (2.5分間隔)、歴史データあり | 有料 (要問合せ) | 気象衛星ひまわり8/9画像+AIモデルで高頻度推定。日本上空限定、0.5kmメッシュ。 | JWA |
NASA POWER | NASA (GSFC) | Web API, Webツール, AWS等 | 0.5° (≈50km)・日次/時間次 | GHI, DNI, DHI | 日々更新 (1981年~現在) | 無料 (オープン) | 世界規模の日射・気象データ。日次/時間次・月次あり。1981年以降の時系列を提供。 | POWER |
NREL NSRDB | NREL (米国 DOE) | Web API, ダウンロード | 2–4km・5–30分 | GHI, DNI, DHI | GOES: 1998~、Himawari: 2011~, NRTデータ一部有 | 無料 (オープン) | 衛星ベースの時系列データ(全天・直達・散乱)。GOES2衛星(米国)およびHimawari-8/9(アジア)利用。 | NSRDB |
NREL Solar Resource API | NREL | Web API | 0.1° (≈10km)・月次 | GHI, DNI, 傾斜面 (緯度角) | 過去代表値 (1998–2009年12年平均) | 無料 (オープン) | 1998–2009年の12年間平均値。月別/年別でGHI・DNI・緯度傾斜面日射を返す。位置指定API。 | NREL API |
PVGIS (EC-JRC) | 欧州委員会 JRC | Web UI, API | 地域により異なる (例: EU 1km/グローバル 30km)・日次/時間次 | GHI, DNI, GTI | 代表気象年 (TMY)、静的 (近年気象ベース) | 無料 (オープン) | 世界中の任意地点でPV性能と日射量を計算するツール。TMYやシミュレーション機能もあり。 | PVGIS |
Copernicus CAMS (Sunflux) | ECMWF/CAMS | ファイル (NetCDF) | 0.1°・15分 | GHI, DNI, DHI | 15分・月次 (2005–2023年分, 年1更新) | 無料 (オープン) | MSG/Himawari衛星を用い、大気・雲・エアロゾル情報から算出した欧州・アジア・アフリカなどのGHI/DNI/DHI時系列。気象政策向け。 | ADS |
ERA5/ERA5-Land | ECMWF (Copernicus) | データ配布 (API) | ~30km (ERA5), ~9km (ERA5-Land)・時間次 | GHI (下向き短波) | 時系列 (1950年~現在、数か月遅延) | 無料 (オープン) | 気象再解析データ。地表下向き短波放射(全天日射)を提供。直接日射は含まれないため要計算。長期トレンド分析に。 | C3S |
Global Solar Atlas | World Bank/ESMAP (Solargis) | Webマップ, GISデータ | ~250m (GHI)・月次 (TMY) | GHI, DNI, DIF | 代表気象年 (1998–2017年相当) | 無料 (CC BY) | Solargisデータベースを用いたインタラクティブ地図。250mメッシュでGHI/DNI/DIFの世界地図や国別マップをダウンロード可。PVポテンシャル指標も提供。 | GSA |
Solcast | Solcast (豪州) | Web API (REST) | ~90m・5–60分 | GHI, DNI, DHI, GTI | 過去7日~14日先 (5–15分更新) | 無料試用あり (商用/課金) | 地球全域を90m格子でカバー。ライブ・予測・歴史データを提供(予測14日、遅延7日までの履歴)。高頻度更新。高精度モデル。 | Solcast |
Solcast Historical (HTS) | Solcast | Web API (REST) | ~90m・5分(内部) | GHI, DNI, DHI, GTI | 履歴: 2007年~7日前 | 有料 (要契約) | 高分解能(90m)の過去時系列とTMYデータサービス。7分間隔までの履歴と長期平均が取得可。気象衛星を用いた高精度モデル。 | Solcast |
OpenWeatherMap SR API | OpenWeatherMap | Web API (REST) | 点位置・1時間 | GHI, DNI, DHI | 現況/予報/履歴 (1979年~) | 無料プラン有・商用可 (要登録) | 世界中どこでも現在・予報(16日先)・履歴(日時データ1979年以降)の太陽放射を提供。気象指数付き。商用利用可(要契約)。 | OWM |
SolarAnywhere | Clean Power Research (米国) | Web API, SDK | 高解像度 (選択可)・時間次 | GHI, DNI, DHI, GTI | 年間/典型年/リアルタイム (履歴有) | 有料 (ライセンス) | 衛星およびグラウンド観測を組み合わせた高品質日射量データ。グローバルカバレッジでGHI,DNI,DHIに加えPOAなど多数パラメータを含む。無制限APIアクセス付き。 | SolarAnywhere |
Solargis (SolarGIS) | Solargis (スロバキア) | データ提供 (有償) | 250m・1分 | GHI, DNI, DHI, GTI | 過去30年 (更新済) | 有料 (商用) | 250m高解像度データベース(30年分)。実時間更新可能で様々な気象パラメータ付。検証実績豊富で全世界カバー(99%人口地域)。精度重視の商用サービス。 | Solargis |
HelioClim | Mines ParisTech (SoDa) | Web/ソフト (PVsyst等) | 数km・15分 | GHI, DNI (散乱込み) | 1980年代~ (衛星画像解析) | 一部無料 (PVsyst内) | Meteosat画像を元にした欧洲・アフリカ中心の日射歴史データベース。PVsystで利用可能。高経年データだが細節調整が必要。 | HelioClim |
Open-Meteo 衛星放射API | Open-Meteo | Web API | 約0.05° (約5km)・1時間 | GHI, DNI, DHI | 2022年~現在 | 無料(非商用)/有料(商用) | 複数の静止気象衛星データを統合。ひまわり8/9からは10分間隔データも取得可能。非商用は1日1万API呼び出しまで無料。 | Open-Meteo |
注1: 価格・商用利用の「無料」はオープンデータを意味し、商用利用可。
注2: 多くのデータはAPIキーや利用登録が必要。商用提供はライセンス契約が前提となる。
各項目の特徴・備考には主な用途や制約を示しました(例:静的データかリアルタイム可か、カバレッジ地域、解像度の違いなど)。以下に、上表中の主要データソースについて詳しく説明します。
グローバル・公的データベース/サービス
NASA POWER (NASA, USA)
NASAが提供する再生可能エネルギー向けデータサービスです。全球0.5°格子(約50km)で気象・日射パラメータを観測・再解析しており、1981年1月以降(逐次更新)の時間分解能・日分解能データが取得可能です。GHI・DNI・DHIなどの基本的な日射量はもちろん、衛星放射・気温・風速なども含みます。
APIおよびデータ・アクセス・ビューア(DAV)を通じて簡単に利用でき、ほとんどの国で無料で商用利用も可能です。解像度はやや粗いですが、長期気候傾向把握や過去データ参照に適しています。
NREL NSRDB (米国エネルギー省 NREL)
National Solar Radiation Databaseは、米国NRELが衛星・地上観測を用いて構築した太陽放射データベースです。GHI・DNI・DHIを含む高空間解像度データ(GOES衛星:~4km、Himawari衛星:2kmなど)を30分または10分刻みで提供します。
GOES(米州向け)は1998年以降、Himawari(アジア太平洋向け)は2011年以降のデータがあり、APIで大規模データを取得できます。オープンデータで無償提供されており、研究・商用問わず利用可能です。世界の主要地域を網羅しており、太陽光発電シミュレーションや地理情報システムとの連携に用いられます。
またNRELはAPI v1で1998–2009年の12年平均(月別・年平均)のデータも提供しています。これは0.1°(約10km)の静的データでGHI・DNI・地理傾斜面(緯度傾斜日射)を返す簡易ツールとして使えます。
PVGIS (EC-JRC, 欧州委員会)
欧州委員会のPVGISは、世界中の任意地点についてPVシステム性能と日射量を計算できるオンラインツールです。WebインターフェースやREST APIで、指定座標の時間別・日別・月別のGHI、DNI、GTI(地上軸日射量)を取得できます。
データベースは欧州衛星・気象データ等を統合したもので、代表的気象年(TMY)データやPV出力シミュレーション機能があります。利用は無料・商用可で、EU域外も含むグローバル対応が特徴です。PVGIS-5.3(2024年更新)では最新の気象アーカイブに基づく計算が可能で、約1990–2020年相当の長期平均を反映します。
Copernicus CAMS (欧州コペルニクス大気モニタリングサービス)
MSG/Himawari衛星画像と大気・オゾン・水蒸気・エアロゾル情報から高頻度(15分)にGHI/DNI/DHIを再計算したデータセットを提供します。地中海・アフリカ・アジア・南米東部など広域の0.1°格子に対応し、2005年以降の時系列が網羅されます。
降雨・雲量変化による日射量変動を詳細に捉え、年度毎に更新されます(最新版は2023年まで)。NetCDF形式でダウンロード可能で、政策立案や研究用途で利用されています。
ERA5/ERA5-Land (ECMWF, コペルニクス気候サービス)
気象再解析であるERA5は、1950年~現在のグローバル気象データを提供し、地表面下向き短波放射(全天GHI相当)を含みます。解像度はERA5本体が約30km、Land版が約9kmで時間分解能1時間。データアクセスはCopernicus Climate Data Store経由です。
GHI自体はモデル算出値で、DNIは出力されませんが、長期気候分析やグローバル比較に利用されます。更新は数か月遅れですが最新版が得られ、商用利用や地球全体の大規模解析に適しています。
Global Solar Atlas (World Bank/ESMAP)
世界銀行がSolargisと開発した無料オンライン地図です。250m格子のGHI、DNI、散乱DIFなどの年平均マップを提供し、180以上の国・地域についてポスターサイズ図やGISデータがダウンロード可能です。
PVポテンシャル指標やTMYデータも含み、政策策定や初期計画に広く使われています。データはSolargisの高品質データベースによるもので、商用利用も許容されるオープンアクセスとなっています。
Open-Meteo 衛星放射API
無料のWeb APIで、複数の静止気象衛星(欧州MSG系, JAXAひまわり系など)のデータを統合した全球の日射量を提供します。空間分解能約0.05°(約5km)、時間分解能は1時間平均です。GHI(全天短波)を基にFraunhoferらの手法でDNI・DHIを計算しています。
例えばひまわり8/9由来データは10分間隔で取得可能で、2022年以降の履歴が利用できます。非商用は無料(1日1万API呼び出し以内)、商用は自己ホストや契約で対応。開発者向けにAPIドキュメントが整備されており、簡易な利用には便利です。
日本・アジア向けデータベース
NEDO MONSOLA-20 / METPV-20 (NEDO)
日本政府(NEDO)が委託開発した国内日射量データベースです。MONSOLA-20は全国1km格子の月平均日射量(2010–2018年の推計)を収録し、METPV-20は国内835地点における代表年の毎時日射量を提供します。METPV-20には「多照年・寡照年」のデータも含まれます。
これらはWeb閲覧システムから無料で参照できますが、静的な推計データであり、リアルタイム更新や長期時系列解析には向きません。品質は気象庁観測等を基に高められており、日本国内では信頼性の高い基準データとされています。
JWA SOLASAT 9-Now (Japan Weather Association)
日本気象協会(民間部門)が提供するリアルタイム・日射量推定サービスです。気象衛星ひまわり8/9の画像からAIモデリングで日射量を算出し、日本全域を0.5kmメッシュ、2.5分間隔で更新します。
APIまたはFTP経由で取得でき、過去データもオフラインで提供されます。METPV-20より遥かに高解像度・高頻度の情報を得られるため、O&M監視や発電予測、VPP運用支援などに用いられます。商用サービスであり、企業向け契約が必要ですが、日本国内の最新日射量を把握できる貴重なリソースです。
東アジア・東南アジア向け各種衛星データ
JWA以外にも、地域向けに衛星ベースの日射量推定サービスがあります。例えば中国気象局がFengyun衛星を利用したソーラーアトラス(公開情報少)、気象庁もひまわり画像の解析で放射データ(MSM4/Meso-Scale)を提供します。これらは一般公開が限定的なものが多いですが、研究論文等で利用報告があります。地方向けにはOpen-MeteoやSolcastのデータが代替利用可能です。
商用データベース・サービス
Solcast (豪州)
衛星雲解析と数値予報を融合したグローバルソーラーサービスです。90mメッシュ(極域除く)でリアルタイム監視データと最大14日先予測を提供します。5~60分刻みの気象パラメータに加え、GHI/DNI/DHI/GTIを含む日射量データを利用可能です。
リアルタイム更新頻度は主要地域で5~15分おき。過去データは2007年以降7日前まで入手でき(別契約)、TMYデータも取得可能です。高解像度かつクラウドモデリング精度が高いですが、無料プランは制限があるため本格利用は有料ライセンスとなります。
OpenWeatherMap Solar Radiation API
オープンウェザーが提供するWeb APIです。無料プランで毎時更新の現況データ、16日先までの予報、1979年以降の履歴(1時間刻み)を取得できます。GHI・DNI・DHIが出力され、世界全土の任意地点に適用可能です。
商用利用もOKですが、無料枠には呼び出し回数制限があります。精度は一般気象モデル水準であり、緊急速報や組込み用途の初期検討向きとされています。
SolarAnywhere (米国)
Clean Power Research社が開発した商用APIです。衛星データや地上観測を統合した高精度ソーラーデータをグローバル提供します。GHI/DNI/DHIに加え、実際の設置面向けのPOA日射量、気温・風速・雲量など多様な気象パラメータが含まれます。
APIで時系列データやTMY、リアルタイム値が取得でき、無制限呼出しや電力モデル込みのサービスが特徴です。年平均・典型年データも提供され、厳密性を要する商用解析やアセット管理に使われます(要ライセンス)。
Solargis / SolarGIS (スロバキア)
Solargis社の商用データサービスです。250m空間分解能、1分時間分解能の高精度データベースで、全世界の約99%の人口地域をカバーします。過去30年のアーカイブを持ち、リアルタイム/予報/履歴を提供します。
検証済みの気象モデルに基づき、不足データは独自補完します。価格は高めですが、送電網規模のプロジェクトやO&M解析などで利用実績があります。Global Solar Atlasなど公共データの背後にもSolargis技術が使われています。
その他商用サービス
上記以外では、PVsystに組み込まれるHelioClim(SoDa)がヨーロッパ・アフリカ向けの衛星日射データベース(HelioClim-3)を提供します。また、気象予報会社(MeteoAriaなど)や独立系会社もソーラーAPIを展開しています。商用データは概して最新・高精度ですがコストが高く、ライセンス条件をよく確認する必要があります。
選定・活用の洞察と注意点
太陽光発電推計に適した日射量データを選ぶ際は、用途や地域、精度要件、ライセンス制約を総合考慮する必要があります。以下に主なポイントを挙げます。
用途別の使い分け
設計段階で広域評価や静的計画を行う場合は、長期平均や代表年(例:NEDO MONSOLA-20、PVGIS、Global Solar Atlas、Solargis TMYなど)を用います。一方、O&Mや電力市場予測にはリアルタイム・高頻度データ(JWA SOLASAT、Solcastリアルタイム、Open-Meteoなど)が不可欠です。
どの時間分解能が必要か(時刻別/日次/月次)、過去何年分の履歴が要るか、自己消費や連携に用いるかなど、シナリオに応じてデータソースを組み合わせるのが実用的です。
空間・時間分解能とカバレッジ
高解像度データ(100m以下)は局所的な変動(山陰、雲境界など)を捉えやすいですが、計算コスト・データ量が増大します。特に山間部では気象差が大きく、細分化したモデルが必要になります。平坦な地域や長期評価では粗いデータで十分な場合も多いです。
例えば日本ではMETPV-20(点データ)とJWA SOLASAT(0.5km)で比較すると、山間部でかなり差が出る可能性があります。海外ではメソ気象(ERA5)や地上観測ネット(米国NSRDB)を参考に、衛星データの補正を行うことが多いです。
精度とバリデーション
衛星推定やモデル再解析は一般に実測に比べ誤差を含みます。データ選定時には、公開されているバリデーション結果や用途事例を参照すべきです。例えば、NEDO METPV-20の精度検証やSolcastのDNVレポート、CAMSとHelioClimの比較研究などが存在します。
可能なら複数ソースを重ねて比較検証し、地域特性に合った修正・バイアス補正を行うことが望ましいでしょう。特に重要なプロジェクトでは、少なくとも1年間の実測値と計算値の比較を行い、地域特性による補正係数を決定するのが標準的なアプローチです。
ライセンスとコスト
商用利用の可否や価格は重要な制約条件です。国・自治体関連は多くがオープンデータ(無料)ですが、商用企業提供データは有料契約が前提となる場合が多いです。
実験的な試用や限界的な用途であればOpen-MeteoやNASA POWERのような無償APIを利用し、導入コストを抑える手もあります。一方、長期プロジェクトや大規模発電所には信頼性・精度を重視してSolargisやSolarAnywhereのような有償高性能サービスを検討する価値があります。利用前にデータ利用規約(出典必須か、二次配布可否など)を確認することも忘れてはなりません。
技術的な注意点
API経由のデータ取得時はレート制限やデータ形式に注意しましょう。連続取得にはバッチ処理が必要なことがあります。気象モデルデータ(ERA5/CAMS)やGriddedサービスは加工が必須で、データ量が大きいので計算資源も考慮する必要があります。
タイムゾーンの扱いや傾斜面への変換(時刻別GHI→GTI計算)にも注意が必要です。多くのデータベースはUTC基準で提供されていますが、発電計算では現地時間への変換が必要になります。また、パネル傾斜角度によって日射量が変化するため、GHIからGTIへの変換モデルも選択する必要があります。
地域特性を考慮した選択
日本国内の場合、山岳地形が多く局所的な気象変動が激しいため、可能な限り高解像度のデータが望ましいでしょう。JWA SOLASATのような国内特化サービスは、衛星画像から雲の動きを詳細に捉え、精度の高い推定を実現しています。
アジア圏では、ひまわり8/9の衛星データを活用したサービス(NREL NSRDB-Himawariや各種商用サービス)が信頼性が高いですが、乾季・雨季の明確な地域では季節変動も考慮する必要があります。
ベストプラクティス
最良の結果を得るには、複数ソースのクロスチェックが望ましいです。実測観測点があればモデル値との比較・補正に利用し、不足分を衛星/モデルで補完する戦略が有効です。また、計算ツール(PVシミュレータやデータ処理ライブラリ)との親和性も選択肢に入れるとよいでしょう。
最新の研究・データ更新情報にも注意し、可能であれば定期的にデータソースのリフレッシュを行うことで、より精度の高い推計につなげられるでしょう。
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まとめ:最適な日射量データの選び方
太陽光発電システムの設計・運用において日射量データは基盤となる重要情報です。本記事で解説したように、多様な日射量データベース・サービスが存在し、それぞれに強みと制約があります。
日本国内での活用を考えると、初期検討には「NEDO METPV-20」が今なお基準として有用ですが、リアルタイム性や経年変化を考慮するならば、以下のような組み合わせが有効でしょう:
- 設計・導入前評価: Global Solar Atlas → PVGIS TMY → 必要に応じて商用データ
- 運用・メンテナンス: JWA SOLASAT(国内)、Solcast/OpenWeatherMap(国内外)
- 長期トレンド分析: NASA POWER、ERA5(グローバル傾向)
特にMETPV-20の代替としては、国内では「JWA SOLASAT」が高精度かつリアルタイム性に優れ、グローバルでは「NREL NSRDB」や「Solcast」が高い互換性と拡張性を持ちます。コスト重視であれば「NASA POWER」や「Open-Meteo」も利用価値があります。
重要なのは、目的とリソースに応じて最適な組み合わせを選定・活用することです。単一データソースに依存するのではなく、複数の視点から検証し、精度と信頼性を高める姿勢が、太陽光発電の計画・運用最適化には欠かせません。
最後に、日射量データの活用は技術の進化とともに発展し続けています。衛星観測技術の向上や機械学習の導入により、より高精度かつリアルタイムな情報が利用可能になりつつあります。常に新しい情報を取り入れ、柔軟に最適なデータソースを選択していくことが、太陽光発電事業の成功につながるでしょう。
参考:太陽光発電・蓄電池の経済効果シミュレーション完全ガイド(JIS発電量計算式とNEDO METPV20日射量データベースの活用)
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