目次
蓄電池の仕組みをわかりやすく解説。蓄電池の種類別に仕組みと特徴がわかる
蓄電池を導入する企業や家庭は増えていますが、蓄電池の仕組みまで理解している人は少ないかもしれません。この記事では、蓄電池の仕組みをわかりやすく解説します。蓄電池の種類別の仕組みや特徴、蓄電池のメリットとデメリットについて解説するので、蓄電池の導入を検討する際の参考にしてください。
そもそも蓄電池とは何か
蓄電池は、充電して繰り返し使用できる電池です。蓄電池の種類は、産業用蓄電池と家庭用蓄電池に分類されます。単三電池や単二電池のように一度使い切ると使用できない乾電池は一次電池と呼び、蓄電池は二次電池と呼ばれます。
太陽光発電設備により発電した電気を貯めこみ、消費することで、電気代の節約が可能です。EVカーやスマートフォンなどに使用されています。
蓄電池の原理とは
蓄電池の仕組みは複雑ではありません。繰り返し使用できる蓄電池の仕組みを、わかりやすく解説します。
1.蓄電池の仕組み
蓄電池の内部にあるのは、電解液と2つの電極です。2つの電極には正極と負極があり、それぞれ違う金属が使用されています。正極は電解液に溶けにくく、負極は電解液に溶けやすくなっています。蓄電池は、電子が正極と負極を行き来することで、電気の蓄電と使用を繰り返せる仕組みです。蓄電池の種類によって、電極に使用する金属や電解液も異なります。
2.蓄電池の充電と放電の仕組み
蓄電池の放電は、負極の金属が電解液に溶け出し、負極から正極に電子が流れる現象です。放電する際に、正極から負極へ電流が流れて、電気の使用が可能になります。
蓄電池に電気を充電する場合は、放電とは逆方向へ電気を流します。蓄電池が電気を繰り返し使用できるのは、正極の金属が電解液に溶けて、正極から負極へ電子が移動し、放電前の状態に戻るためです。
種類別にみる蓄電池の仕組みとは
現在主流となっている蓄電池は、リチウムイオン電池と鉛蓄電池、ニッケル水素電池とNAS電池です。以下でそれぞれ解説します。
1.リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、小型蓄電池の1つです。リチウムイオン電池の特徴と仕組みについて解説します。
リチウムイオン電池とは
リチウムイオン電池は、小型でも効率的な放電を可能とした大容量の蓄電池です。家庭用蓄電池として利用されることが多いリチウムイオン電池は、寿命が長い点も大きな特徴です。大容量かつ寿命が長い点を活かし、ハイブリッド車や電気自動車、携帯電話やノートパソコンなどに活用されています。小型だけでなく、中型や大型のリチウムイオン電池もあります。
リチウムイオン電池の仕組み
リチウムイオン電池は、負極の金属から発生した電子が正極に流れ、電力を生み出す仕組みです。負極にはリチウムイオンやグラファイト、正極にニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウムが多く採用されています。リチウムイオン電池の電解液に使われているのは、炭酸エチレンといった有機電解液です。有機電解液であれば、水溶液の場合に起きる液漏れがありません。
2.鉛蓄電池
鉛蓄電池は、長い歴史を誇り改良され続けてきた蓄電池です。鉛蓄電池について詳しく解説します。
鉛蓄電池とは
鉛蓄電池は、ガストン・ブランテが1859年に生み出した蓄電池のなかで最も長い歴史がある蓄電池です。非常用電源や非常照明、自動車や電動車椅子などで使用されています。鉛蓄電池に必要な鉛は原価が安く、電力単価は他の蓄電池と比べて安価です。使用し続けると、蓄電池の充電機能が低下し、電池寿命が短くなるデメリットがあります。
鉛蓄電池の仕組み
鉛蓄電池は、負極の鉛から電子が発生し、電子が正極に流れ込み電気が生まれる仕組みです。負極には鉛、正極には二酸化鉛が使われ、電解液は希硫酸です。鉛蓄電池を使用し続けると、硫酸鉛の結晶が負極の鉛に付着する現象が起き、鉛蓄電池の充電速度や充電容量を減少させる場合があります。
3.ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、リサイクルが可能な環境に優しい蓄電池です。ニッケル水素電池の概要と仕組みを解説します。
ニッケル水素電池とは
ニッケル水素電池の特徴は、乾電池との互換性です。乾電池で動く機器であれば、多くの場合でニッケル水素電池が活用できます。エレベーターやドライブレコーダーなどに使用されている蓄電池です。環境に悪影響を及ぼすカドミウムを使用しておらず、リサイクルも可能なため、環境に優しい蓄電池とされています。
ニッケル水素電池の仕組み
ニッケル水素電池は、負極から水素イオンを生み出し、正極に流れた水素イオンがオキシ水素化ニッケルと結合し、ニッケル水酸化物Ⅱが発生した際に、電気を生み出します。2つの電極に使用される金属は、負極が水素吸蔵合金、正極が水酸化ニッケルです。電解液には、水酸化カリウムのアルカリ水溶液が使用されます。
4.NAS電池
NAS電池は、寿命の長さと容量の大きさが魅力の蓄電池です。NAS電池について、以下で解説します。
NAS電池とは
NAS電池は、日本で開発された蓄電池です。アメリカやドイツをはじめとした世界各国で使用されています。エネルギー密度の高さや寿命の長さ、小型でも容量が大きな点が特徴です。風力発電や太陽光発電にも用いられており、非常用電源や節電を目的として、企業でも導入されています。設置場所の制限が少ない点も、NAS電池の強みです。
NAS電池の仕組み
NAS電池は、ナトリウムと硫黄が化学反応を起こし、充電と放電が繰り返し行える仕組みです。負極にはナトリウム、正極には硫黄が使用されており、電解液にはファインセラミックスが使用されます。NAS電池は、危険物指定されているナトリウムと硫黄を使うため、取り扱いに注意が必要です。また、作業の際には、作業温度を300度に保たなければなりません。
蓄電池のメリットとは
蓄電池には、電気代の削減や非常用電源として使用できるなど多くのメリットがあります。以下でそれぞれ解説します。
1.電気代が削減できる
蓄電池のメリットは、貯めた電気を使用して、電気代を節約できる点です。日中に太陽光発電設備から得られた電気や、料金が安くなる深夜電力を使い、経済的な負担を減らせます。蓄電池と太陽光発電設備があれば、電気代高騰の影響も最小限にできるでしょう。
2.非常用電源になる
蓄電池は、天災や事故などによる非常時に、非常用電源として活用できます。停電が数日にわたって起きても、太陽光発電設備で発電した電気を貯めておけば、長時間の電力供給が可能です。
3.電気自動車に利用できる
蓄電池のなかには、電気自動車と連携できる蓄電池があります。太陽光発電設備でつくった電気を蓄電池に貯めて、電気自動車を充電できます。電気自動車に必要な電気の多くを、太陽光発電設備で発電した電気で賄うことも可能になりつつあります。
参考)EV V2H経済効果シミュレーションならエネがえるEV・V2H | EV・V2H
蓄電池のデメリットとは
蓄電池にはメリットだけでなく、設置スペースの制限や使用による劣化などのデメリットがあります。以下で詳しく解説します。
1.設置スペースがいる
蓄電池を導入する際には、屋外もしくは屋内のどちらかに設置スペースを用意しなければなりません。また、設置工事を行うための搬入経路や配線に必要な経路などの確保も必要です。
2.将来的には劣化する
蓄電池は、永続的に使用できるわけではなく、寿命があります。使用し続けると、電気容量は少しずつ減少します。蓄電池を導入する際は、必ず蓄電池の寿命の長さを確認してから、導入しましょう。
まとめ
蓄電池は、電解液と2つの電極によって構成されています。電極には、正極と負極があり、それぞれ異なる金属が用いられます。正極は電解液に溶けにくく、負極は電解液に溶けやすい性質です。蓄電池は、電子が正極と負極を移動することで、電気の放電と蓄電を繰り返せる仕組みになっています。
(参考記事)蓄電池購入者1,090人アンケート調査結果 – 太陽光 蓄電池 経済効果シミュレーションで約6割の顧客が販売店への信頼度アップ・約5割は蓄電池購入意欲アップ?
エネがえるASPという住宅用太陽光・蓄電池経済効果試算ツールは、業界TOPクラスの導入シェアを誇り、大手電力、太陽光・蓄電池メーカー・ランクTOPの販売施工店など約700社以上が導入しています。まずは無料で試してはいかがでしょうか。
著者プロフィール(太陽光・蓄電池シミュレーションエキスパート)
会社名:国際航業株式会社
部署名:公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG
執筆者名:樋口 悟
執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。
太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションの国内唯一のエキスパートとして、大手電力・ガス会社、有名太陽光・蓄電池メーカー、全国販売施工店・工務店など約700社以上と、最近ではエネルギー政策立案サイド(国・官公庁・地方自治体)で太陽光・蓄電池推進政策をしている方々へもエネがえるを活用した太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションやアドバイスを提供している。
執筆記事:https://energy-shift.com/news/author/71cbba7e-dbbc-4728-9349-9cdbed975c6e
執筆者のSNS:
Twitter:@satoruhiguchi
LinkedInプロフィール:https://www.linkedin.com/in/satoruhiguchi/
Sansan名刺交換:https://ap.sansan.com/v/vc/bu56hqnjvw5upna463tcfvkxka/