目次
グリーン水素発電の経済性シミュレーション設計 ~高解像度なROI評価モデルの構想~
はじめに: 水素発電と意思決定の課題
脱炭素社会の実現に向け、水素(特に再生可能エネルギー由来のグリーン水素)を燃料とする発電が注目されています。水素は利用時にCO2を排出せず、貯蔵・輸送も可能な次世代エネルギーキャリアですが、現状では経済性(高コスト)が大きな課題です。自治体、発電事業者、投資家、政策担当者といったステークホルダーが水素発電プロジェクトの導入を検討する際、投資判断に必要な指標を網羅しつつ、最小の労力でシミュレーションを行えるツールが求められています。
本稿では、日本国内における水素発電導入を題材に、経済効果や投資対効果を高解像度で評価できるシミュレーションロジックを設計します(あくまでも机上の構想です)。具体的には、グリーン水素を用いた発電プロジェクトについて、平準化水素コスト(LCOH: Levelized Cost of Hydrogen)や内部収益率(IRR)、CO2削減効果などリアルな意思決定に欠かせない指標を算出する方法を示し、そのために必要なパラメータとデータを整理します。さらに、ユーザー(自治体職員や投資担当者など)が最小限の入力で最大限のインサイトを得られるようなシミュレーター像を構想します。
本シミュレーションモデルの目的は、複雑な水素バリューチェーンと技術選択肢を適切に簡略化しつつ、政策目標や市場動向に照らした経済性評価を可能にすることです。日本政府は2030年に水素導入量300万トン/年、供給コスト30円/Nm3(約334円/kg)程度を目標に掲げており、官民で15兆円規模の投資計画も発表されています。しかし現状ではグリーン水素は従来燃料より高価で、仮に製造コストが1kgあたり2ドル(≒260円)に下がっても、多くの分野でCO2削減費用は1トンあたり500~1,250ドル(6.5万~16万円)に達するとの試算もあります。こうしたギャップを埋め、確度の高い投資意思決定を支援するため、本稿のシミュレーション設計が指針となれば幸いです。
当社では現状、系統用蓄電池、産業用自家消費型太陽光・蓄電池(今後、オフサイトPPAシミュレータも対応)、家庭用太陽光・オール電化・蓄電池、家庭用EV・V2H(今後、産業用EV・充電器にも対応)などの再エネ設備の経済効果シミュレーターを展開しています。
当面、グリーン水素などのシミュレーターの開発予定はありませんが、本記事のような机上検討を通じて、潜在ニーズの有無や各関係者からのお問い合わせにより将来的に開発する可能性もありますので、お気軽にご相談ください。
想定ユースケースとフォーカスする発電形態
水素を用いた発電には様々な形態・用途があります。本稿では特に日本国内で今後導入の主流となり得るケースを重視して設計します。代表的なユースケースとその特徴を整理すると:
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オンサイト自家消費型: 工場やオフィスなどが再生エネ電力で水素を製造・貯蔵し、自家発電設備(燃料電池やエンジン)で消費する形態。電力系統に頼らずCO2フリー電力を賄える利点があります。バックアップ電源用途(非常用発電機の水素化)もこの範疇です。
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系統連系型: 発電事業者等が大規模な水素発電設備を設置し、電力系統に電力を供給する形態です。既存の天然ガス火力発電への水素混焼や専焼(水素ガスタービン導入)も含まれます。政府方針でも「ガス火力への混焼率向上や専焼化」が重視されており、電力分野での水素利用が水素需要創出の柱と位置付けられています。
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P2G(Power-to-Gas): 再エネ電力で水素を製造しガス配管網に注入したり、合成メタン等のガス燃料を製造する形態。発電そのものではありませんが、製造した燃料を火力発電等で利用することで間接的に電力化します。都市ガスへの水素混入や合成メタン化によるインフラ活用は長期目標として掲げられています。
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バックアップ電源: 病院・データセンター等の非常用電源に水素燃料電池やエンジンを用いるケース。通常時は水素を貯蔵し非常時に発電するため、稼働率は低いものの高信頼性が要求されます。燃料電池車両の非常用電源活用なども含まれます。
以上の中で、本シミュレーターでは「系統連系型」を主な想定対象とします。理由は、日本のエネルギー政策で特に電力分野における水素・アンモニア利用が大量導入の中心に据えられているためです。電力会社は石炭火力へのアンモニア20%混焼試験や、天然ガス火力への水素混焼・専焼技術の開発を進めています。例えばJERAの試算では石炭発電への20%アンモニア混焼は発電コスト約20円/kWhと算定され、追加設備や燃料コストにより従来より高コストになる見込みです。それでも大規模発電所での水素利用は、投入する水素量が桁違いに大きく、水素需要全体の「最大シェア」を占め得る用途です。実際、日本政府は当面、発電用途への補助に重点を置き、水素・アンモニア発電を先行導入することでサプライチェーンの育成とコスト低減を図る方針です。
もちろんオンサイト自家消費型も企業の脱炭素ニーズ次第で広がる可能性があり、本モデルでも対応可能な設計とします。ただし限られた導入規模や各案件ごとの条件差が大きいため、まずは全国的に共通性の高い系統向け大規模水素発電を軸に考え、その上で他ユースケースへの展開性に言及します。
経済評価の主要指標と意思決定への意義
シミュレーションで算出すべき主要KPI(重要業績指標)を定めます。現実の投資判断や政策評価で重視されるポイントを網羅し、ユーザーが多角的にプロジェクト価値を評価できるようにすることが重要です。以下に主要指標を挙げ、その意義を説明します。
平準化水素コスト(LCOH: Levelized Cost of Hydrogen)
LCOHはプロジェクトライフ全体を通じて、水素1単位(例えば1kgまたは1Nm3)を生産するために必要なコストを均等化した値です。電力業界のLCOE(均等化発電原価)の水素版とも言える指標で、「本プロジェクトで生産される水素を、損益分岐点となる価格で売るとしたらいくらか」を示します。LCOHを求めることで、従来燃料や他国の水素とコスト競争力を比較したり、政策目標(例: 2030年30円/Nm3)とのギャップを把握できます。
LCOHの定義は「プロジェクトの正味現在価値(NPV)をゼロにする単位水素あたり収入額」と表現できます。数式で書けば次のようになります。
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LCOH = (期間中のコストの現在価値合計) ÷ (期間中の水素生産量の現在価値合計)
この計算には初期投資(CAPEX)、運用費(OPEX)、電力など原材料費、水素生産量、割引率などが関与します。実際には「各年のコスト支出と水素生産量を所定の割引率rで現在価値に換算し、総コストPVを総生産量PVで割る」ことで一定のLCOH値を得ます。LCOHを一定値と仮定すれば、∑(コストt/(1+r)t) = LCOH × ∑(生産量t/(1+r)t)という関係になり、ここからLCOHを解きます。
LCOHは$/kgや円/Nm3といった単位で表され、例えば「LCOH = 2 $/kg」という結果は「本プロジェクトの水素は2ドル/kgで販売できればNPVゼロになる」ことを意味します。日本政府目標の30円/Nm3は約334円/kgに相当し、現在欧州の再エネ水素コスト8$/kg(約1100円/kg)などと比較すると野心的な値です。実際、ある研究では2030年時点でも日本の国内太陽光由来グリーン水素のLCOHは約50円/Nm3(≒560円/kg)と試算され、供給目標との差は大きいと報告されています。
本モデルでLCOHを算出することにより、ユーザーは水素製造コストの妥当性や必要な売価を直感的に把握できます。特に政策担当者や事業者は、LCOHが化石燃料由来の水素(グレー水素)や他のクリーン燃料と比較してどの程度かを見ることで、補助金や炭素価格の必要水準を議論できます。また投資家は、LCOHから収益性の裏付けを得たり、コスト構造上のボトルネック(電力費か設備費か等)を把握できます。
内部収益率(IRR)とNPV・回収期間
IRR(Internal Rate of Return)は投資プロジェクトの収益性を評価する代表的指標で、「NPVをゼロにする割引率」と定義されます。プロジェクトのキャッシュフロー(初期投資のマイナスと年間の収支プラス)を考慮し、それが何%の利回りに相当するかを示すものです。IRRは投資家にとって直感的で、他案件やハードルレート(要求収益率)との比較に使われます。例えば日本政策投資銀行やJOGMECなどの基準では、脱炭素系の水素事業でも「IRR6%以上」が一つの目安とされます。一方、民間の要求水準はリスクに応じて高くなり得ます。Lazard社の分析では、水素プロジェクト投資にレバレッジ後税引き12%のIRRを確保する前提で必要収入を算定しています。このようにIRR目標はケースバイケースですが、本シミュレーターではユーザーが目標IRRを入力でき、その達成可否を見る機能を持たせます。
IRR算出にはキャッシュフローの詳細な積み上げが必要です。典型的には以下のようなフローを考慮します。
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初期投資(Year0): 電解槽や発電設備、配管設備などのCAPEX。負のキャッシュフロー。
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運転期間の年間CF(Year1~N): 主に年間収入(電力販売収入 or 代替燃料コスト削減分)と年間費用(電力購入費、水素輸送費、人件費O&Mなど)の差引。減価償却は考慮しますがIRR計算上は現金支出ではないためNPVには直接入れません。
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追加投資・解体費: 長期プロジェクトでは電解槽スタックの更新など大規模更新投資(例: 5~8年毎)や、寿命末の設備解体費・残存価値も織り込みます。
こうしたキャッシュフローからIRRは数値的に求めます(NPV=0となる割引率を二分法等で解く)。さらにNPV(所与の割引率での現在価値合計)や単純投資回収期間も補助指標として算出可能です。たとえば政策側はNPVがプラスになるために必要な補助額を試算したり、企業は回収期間(○年で初期投資が回収できるか)を重視したりします。
本シミュレーションでは、IRR/NPV計算機能により投資採算性を評価できます。特に次のような問いに答えるのに役立ちます:
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投資家視点: 想定水素価格や電力販売価格で何%のIRRが得られるか?目標を下回るなら、どの要素改善(コスト低減や売価上乗せ)が必要か。
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政策視点: 補助金(例えばContracts for Difference型の差額補填)を入れるとIRRがどこまで上がるか?カーボンプライシング導入でNPVは改善するか。
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事業者視点: プロジェクト寿命内で初期投資を回収できるか?追加スタック交換に耐えうる現金収支か?
以上をダッシュボード形式で提示することで、ユーザーは一目で「このプロジェクトは採算に乗る/乗らない」を判断できるようになります。
CO2削減効果・環境指標
水素発電の根本的な目的はCO2排出削減にあります。したがってCO2削減効果を定量化し、必要なら削減コスト(1トンCO2当たり費用)も評価します。指標の例:
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年間CO2削減量(t-CO2/年): 水素発電によって従来の化石燃料発電をどれだけ置き換えたかをCO2換算。例えば、水素1kgを燃料電池で発電(約33.3 kWh発生, 発電効率50%想定)した場合、同量の電力を天然ガス火力(排出原単位0.5 kg-CO2/kWh程度)で発電した場合に比べ約16.7 kWh ×0.5 = 8.3 kg-CO2の排出を削減できます。このように代替された化石燃料分の排出が削減量になります。年間で見れば、年間発電量や水素使用量から単純計算できます。
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削減率(%): プロジェクト導入前後でのCO2排出の割合低減。一地域や一工場の排出量ベースで、水素発電導入によって何%減ったかを示します。
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CO2削減コスト(円/トンCO2): 投資や運用コストをCO2削減量で割ったもの。政策的には1トンCO2あたりの費用対効果を見ることが重要です。他の温暖化対策(省エネや他の再エネ導入)と比較して、水素が効率的かを判断できます。前述のように、仮に水素コスト2$/kgでも削減コスト500~1250$/tCO2との指摘があります。シミュレーションによりプロジェクト個別の削減コストを算出し、これが既存の炭素価格や将来想定される炭素税と見合うかを検証できます。
CO2評価において大事なのはベースラインの設定です。例えば「従来は天然ガス発電であったものを水素発電に置換える」ケースと、「再エネ電力が余剰のときだけ水素にして発電し、平常時は系統電力を使う」ケースでは、削減対象となる排出原単位が異なります。本モデルではシナリオ毎にベースラインを選択できるようにします(例: 置換前電源を「石炭」「LNG火力」「系統平均」などから指定)。
また、水素そのもののカーボンフットプリントも考慮が必要です。グリーン水素なら製造時CO2ゼロですが、ブルー水素(化石由来+CCS)やグリッド電力由来水素では製造過程に排出があります。日本では「低炭素水素」をCO2排出3.4kg-CO2/kg-H2以下と定義しています。シミュレーションでは入力として水素製造時のCO2排出強度も設定できるようにし、真にネットでのCO2削減量を計算します。例えば「再エネ電力100%なら製造CO2ゼロ」「電力の一部にグリッド電力を使うなら所定排出係数を適用」などです。
以上により、ユーザー(特に自治体やCSR重視の投資家)は環境インパクトを定量的に把握できます。場合によっては「CO2削減1トンあたり○万円の費用がかかるが、それでもこのプロジェクトを行うべきか?」といった政策判断の材料になります。環境価値を定量化することで、グリーンボンド発行やカーボンクレジット活用の検討も具体的になります。
その他の指標
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電力供給信頼度: 水素発電が導入されることで電力需給安定や非常時バックアップに寄与する度合い。定性的指標ですが、例えば非常用発電では稼働率や非常時連続運転時間などが指標になります。
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経済波及効果: 地域経済への投資額、雇用創出など。本シミュレーションの直接範囲外ですが、自治体向けには付随情報として提示も考えられます。
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エネルギー効率(ラウンドトリップ効率): 再エネ→水素→発電の往復効率。オンサイト自家消費型では、「太陽光電力を一旦水素にして使うと何%ロスするか」を示し、できるだけ直接利用した方が良い部分と蓄電池等他手段との比較に役立てます。
シミュレーションモデルのロジック設計
上記指標を計算するために、シミュレーションの計算ロジックと必要パラメータを具体化します。ここでは系統連系型(水素ガスタービン発電 or 大規模燃料電池発電)を軸としつつ、汎用的なモデルを組み立てます。
必要入力パラメータ一覧
まず、モデルに投入すべき主要パラメータを整理します。これらはユーザーが入力するか、デフォルト値(信頼できる公的データや業界標準値)を用意し、シミュレーションの前提となるものです。
1. プロジェクト規模・期間に関するもの:
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発電出力規模: 発電設備容量(kWまたはMW)。例: 水素ガスタービン100MW、燃料電池5MWなど。
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年間稼働率(容量利用率): 発電設備が年間どの程度稼働するか(%)。これは水素供給と需要に依存します。例えば、水素専焼の火力発電所として常時稼働なら80%超、再エネ余剰時のみ稼働なら数十%と低めになります。
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プロジェクト期間(寿命): 例: 20年。収支計算やNPV算定範囲となります。
2. 水素製造(電解)に関するもの:
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電解方式: アルカリ(AEC) or PEM or 固体酸化物(SOEC) 等。方式により効率やコストが異なります。
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電解槽設備コスト(CAPEX): 円/kWまたは万円/Nm3/h 等で表します。例えば、現在欧米での電解槽はアルカリで約$2,000/kW、PEMで$2,450/kW、中国製アルカリは$750~1,300/kWと報告されています。日本でも輸入機器中心の場合、システム導入費用20~30万円/kW程度が目安となるでしょう。今後2030年にかけて大量生産により$1,000/kW(13万円/kW)以下も視野に入っています。
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電解効率(電力必要量): 1Nm3または1kgの水素を製造するのに必要な電力量 (kWh)。LHV(低位発熱量)効率で表すこともあります。一般にアルカリ/PEMは効率60~70%(電力量にして約4.5~5.5 kWh/Nm3)、SOECは余熱利用で効率80%以上も可能(~3.8 kWh/Nm3)ですが寿命課題があります。モデルでは例えば**5 kWh/Nm3(約56 kWh/kg)**を初期値とし、技術選択で変更します。
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電解装置寿命・スタック交換周期: 稼働時間または年数。前述のNEDO報告ではアルカリで6.8~9.1年、PEMで4.5~8.0年程度とされています。スタック交換費用はシステムコストの20~40%にも及ぶため、これを何年ごとに見込むかは重要です。モデルでは例えば「PEM=5年毎にスタック更新(その際費用=初期CAPEXの30%)」等を設定可能にします。
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電解装置OPEX: 年間運転維持費。人件費・水コスト・部品交換費等を含め、初期CAPEXの数%/年で表すことが多いです(例: 年間2~5%)。また栄養水や水処理コストも一応考慮しますが、水コスト自体は1Nm3の水素に必要な水は約0.8リットル程度で費用影響は小さいです。
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電力コスト: 水素製造に投入する電力の単価(円/kWh)。グリーン水素の場合は再エネ電力由来なので、例えば「太陽光の自家消費なら実質0円だが機会費用あり」「系統から調達なら○円/kWh」「PPA契約なら固定○円/kWh」等ケースにより異なります。日本の再エネ電力コストは地域・規模で差がありますが、参考までにFIT下限や入札では太陽光で8~12円/kWh、風力で10円前後と言われます。モデルでは電力価格シナリオを変数として感度分析できます。
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水素貯蔵設備容量: オプション。製造と需要のタイミング差を吸収するバッファーとして、水素タンク等の容量とコストを指定。例えばオンサイトでは夜間用に○時間分蓄える必要がある等。大規模系統用途ではパイプライン貯蔵や塩洞窟貯蔵などもありますが、日本では未整備のため、本モデルでは必要に応じ簡易にタンクコストを加算する程度とします。
3. 発電(エネルギー利用)に関するもの:
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発電方式: 燃料電池(PEFC, SOFC等) or ガスタービン or エンジン。燃料電池は小~中規模に適し高効率、ガスタービンは大規模プラント向けで既存インフラ活用可能、エンジンは中小規模の弾力的運用向きです。それぞれ効率・コストが異なります。
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発電設備コスト(CAPEX): 円/kW。燃料電池は現状高価ですが量産による低減が期待されています。経産省ロードマップによれば業務・産業用燃料電池システム費用は現状170~180万円/kW、2025年に50万円/kW(低圧向け)・30万円/kW(高圧大規模向け)を目標としています。50万円/kWで発電コスト約25円/kWhが実現し得る計算です。ガスタービンは水素対応改造費用にもよりますが、新設で数十万円/kW程度(天然ガス火力と同程度かやや高い)と推定されます。モデルでは発電方式選択肢ごとにデフォルト値を用意します(例: 燃料電池=100万円/kW、ガスタービン=20万円/kW など初期値設定し、将来値にも変更可)。
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発電効率: LHVベース%(水素1Nm3のもつ3kWh熱量から何kWhの電力を得られるか)。PEM燃料電池なら40~55%、SOFCなら55~65%(かつ排熱でコージェネ可能)、ガスタービンは単サイクル30~40%、コンバインドサイクルで50~60%近く狙えます。例えば燃料電池(PEFC)50%、ガスタービンCC55%を初期値とします。効率は直接必要水素量に響きます。
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発電設備寿命: 年。燃料電池は寿命やスタック劣化が課題で、目標値は耐久9万時間(約10年連続運転)などがあります。ガスタービンは長寿命ですが水素燃焼による部材劣化やNOx対策が未知数です。モデルでは燃料電池スタック交換(例えば5年毎)を組み込むか検討します。
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運用費(OPEX): 燃料電池は定期メンテ費等、ガスタービンも人員・メンテ費あります。ざっくり**年数%**で見積もります(例: 年間設備費の3%)。
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副産物利用: オプションですが、例えば水素燃料電池では発生する熱の利用価値、電解時に出る酸素の売却価値なども考慮可能です。酸素は市場価値低いですが、大規模では医療用や工業用に売却すると若干収入になる場合があります。モデルの高度化として、こうした副次効果も設定可能にしておくと汎用性が増します。
4. 経済条件に関するもの:
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割引率(WACC): プロジェクトの資本コスト。民間投資案件なら8~10%を想定したり、政策評価なら社会的割引率3-5%を使う場合もあります。本モデルではユーザー入力とします(デフォルト6%程度、あるいはIRR目標値と連動)。
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インセンティブ・炭素価格: 政策支援としての補助金額、炭素クレジット単価など。例えば「1kgの水素に対し▲○円の補助」や「CO2削減1tあたり◯円のクレジット収入」などを計上できるようにします。現行では日本政府が水素導入促進のCfD制度で化石燃料との差額を15年間補填予定です。モデル上は、水素販売価格を化石燃料価格に合わせ、その上で不足分を政府補填金として収入に加える等のシナリオを組みます。
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税制: 法人税や減価償却など。精緻にやり出すと複雑ですが、IRR計算で税引き後をやる場合は考慮します。Lazard分析では後税後レバレッジIRR12%を目標にしています。本モデルでは税前ベースとしつつ、必要に応じ税影響を見る程度にします。
以上のパラメータを入力シートで整理し、ユーザーは分かる範囲の情報だけ入力、他はデフォルト参照値で補完する形を想定します。例えば自治体担当者がシミュレーションする場合、「発電出力〇MW、水素価格目標〇円/Nm3、化石燃料代替=天然ガス、…」程度の入力で済むようにし、細かい技術パラメータは標準値が裏でセットされるイメージです。
LCOH計算ロジック
LCOHを計算する具体フローを示します。本モデルでは年ごとのコスト・生産量から厳密に算出しますが、概念を掴むため年平均値での近似式も示します。
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年間水素生産量の算出: 電解設備容量(kW) × 年間利用時間(h) ÷ 電解エネルギー必要量(kWh/Nm3) = Nm3/年。またはkg/年換算。例えば電解1MWを8760時間フル稼働・効率5 kWh/Nm3なら、1,000 kW * 8760h /5 = 1,752,000 Nm3/年(約157,000 kg/年)。
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年間コストの算出:
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年間資本償却相当額: 初期CAPEXを資本回収係数(CRF)で年換算。【計算式】CRF = r(1+r)N/((1+r)N-1)。例えば20年,6%ならCRF≈0.087。CAPEX総額×0.087=毎年の均等費用とみなせます。この簡易法でもLCOH近似できますが、本モデルではNPV式で正確計算します。
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年間OPEX合計: 電力費(年間水素量×電力/水素換算×電力単価)+人件費他固定OPEX。
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定期スタック交換コスト: 該当年に投入(NPVでは年割り当てできますが、正確には5年毎などでNPV計算)。
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LCOH算出: 年間総費用 ÷ 年間水素生産量 として一旦算出。上記で年平均化しているため概算値ですが、NPV法での正確計算結果とほぼ一致するはずです。
実際にはモデル内でNPV(総費用) = NPV(LCOH×生産量収入)の関係からLCOHを解くことになります。シミュレーションでは、例えばゴールシーク機能のように「あるLCOHでNPV=0になる」値を計算できます。ただ、本モデルではLCOHは結果指標として位置づけ、計算自体は内部でNPV積算して最終的に「LCOH=○○円/Nm3」と報告するようにします。
なお、LCOH分解も有益です。Lazardの分析でも、LCOHのセンシティビティをCAPEX(設備費)、電力コスト、利用率の変化で評価しています。本モデルでも結果画面で「LCOH内訳」として、1Nm3あたり:
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電力コスト○円(例: 60%占める)
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設備償却費○円(例: 30%)
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O&M費○円(例: 10%)
といった項目別ブレイクダウンを表示できます。これにより、ユーザーは「どの要素を下げれば水素コスト低減に効くか」を直感できます。例えば電力が半分に安くなればLCOHいくら、設備費がシナリオ通り下がればいくら、といった感度分析も視覚化します。南米など好条件地域では$2/kg切る一方、現在の日本や欧州では$6-8/kgという差も主に電力価格と設備費の違いです。そうした差異もモデル上で再現し、「日本でLCOH達成30円/Nm3には電力○円/kWh&設備費○万円/kWが必要」など定量目標を逆算できます。
投資採算性(IRR,NPV)計算ロジック
IRRやNPVを求めるには、年次キャッシュフロー表を作成します。モデルでは内部で年ごとに以下を計算します(年次または四半期ベースでも可能ですが年で十分でしょう)。
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Year0 (初期投資): キャッシュフロー = – (電解設備CAPEX + 発電設備CAPEX + 水素配管・タンク等インフラCAPEX)。補助金が初期投資に出る場合はここで相殺する。
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Year1~N (運転期):
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収入:
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発電収入: 発電した電力を売電するなら「発電量(kWh)×売電単価」で計上。売電ではなく自家消費で燃料代節約の場合も同様に経済効果として扱います(例: ディーゼル代〇円節約を収入相当とみなす)。
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副産物収入: 酸素販売や熱利用による節約分があれば計上(通常小さいのでオプション扱い)。
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補助金/クレジット収入: 想定する政策支援(例えば発電量に応じた補助やCO2クレジット売却)があれば年ごとに計上します。CO2クレジットなら「削減量×単価」で収入。
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支出:
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電力購入費: 電解に使う電力の費用。「水素製造量×必要電力×電力単価」。自家再エネなら0円とするか、機会費用やFIT売電を放棄した損失をコストとみなすことも。
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運転維持費: OPEX定額(人件費、メンテ費、保険料等)。例えば燃料電池触媒交換費用を年償却で入れておく等。
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原料費: 水道料金など微々たるものも一応入れる。水素輸送にトラック燃料がいるならそれも。
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追加投資: スタック交換など大規模更新の年にはその費用をCAPEX扱いで計上します(CFが大きくマイナスになる年が出ます)。
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税金: 簡易には無視できますが、税引後IRRを見る場合は減価償却計上し法人税計算します。今回は説明簡潔のため省略。
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YearN (終了時):
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残存価値: 大型設備の残存簿価や解体スクラップ価値。これもNPV計算に加えますが、20年スパンなら通常小さいので0でよいでしょう。
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以上で各年の「現金収支(CF)」が得られます。このCF系列に対し、NPVを計算しIRRを求めます。IRRはNPVをゼロとする割引率、NPVは所与の割引率での現在価値合計です。ユーザーにはIRR〇%、NPV〇億円と結果を示します。
また、必要ならIRRターゲットからの水素価格逆算も可能です。例えば「IRRを8%にするには水素売価(もしくは売電価格)は何円必要か?」という問いです。これは上記CF表内の収入項目で調整すべき単価をGoal Seekで変化させ、IRR=8%達成する値を探す計算です。結果、「目標IRR達成にはLCOH○円/Nm3(=水素売価○円)が必要」といった具合に、逆算的な活用もできます。Lazard分析はまさに「12%IRRになる水素コスト」を計算しており、本モデルでも任意IRR目標に対する必要水素単価を出力できます。投資判断では「この事業は◯円以上で水素を販売できなければ経済に合わない」と明示することが重要です。
CO2削減量計算ロジック
CO2削減効果は比較的単純です。必要なのは:
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ベースライン排出係数 (kg-CO2/発電kWh or kg-CO2/Nm3燃料 etc.)を設定。
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水素由来排出係数 (できれば製造段階含む、kg-CO2/kg-H2)。
ベースラインは例えば:
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天然ガス火力: 約0.49 kg-CO2/kWh (LHVベース効率50%・ガスのCO2排出0.35 kg-CO2/kWhth想定)。
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石炭火力: 約0.8-0.9 kg-CO2/kWh。
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ディーゼル発電機: ~0.7 kg-CO2/kWh。
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系統平均: 0.5 kg-CO2/kWh(日本平均、再エネ比率により変化)。
水素側は:
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グリーン水素: ≒0(再エネ電力100%なら製造過程CO2ゼロとみなす)。
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ブルー水素: 炭素回収率や供給経路で0.1~数 kg-CO2/kg程度あるがモデルではユーザー設定。
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グレー水素: (今回は対象外、ほぼ化石同等なので削減無しになる)。
計算式:
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年間CO2削減量 = ベースライン排出係数 × 水素発電による年間発電量 – 水素由来排出係数 × 年間水素使用量
例えば、天然ガス火力→水素燃料電池への置換なら:
削減量 = 0.49(kg-CO2/kWh) × (年間発電量 kWh) – 0 × (水素使用量)。
完全再エネ製造の水素なら後半ゼロなので、単純に置換分だけ減ります。逆に水素製造に一部化石電力使用ならその分打ち消されます。
削減量は年間値と累計値(プロジェクト全期間合計)を表示します。さらに削減コスト=NPV(支出-収入)/削減トン数 も計算可能です。これは政策的に1トンCO2削減にいくらかかったかを示すもので、他政策との費用対効果比較に使えます。前述の例では、仮にLCOHが高く発電コスト換算50円/kWhかかる場合、太陽光等他の選択肢(例えば太陽光発電コスト10円/kWh)と比べCO2削減コストが非常に大きくなることが予想されます。そうした水素利用の意義を定量的に評価し、「それでも水素に投資すべきか」という判断材料を提供します。
全体最適化・感度分析
本シミュレーションの特徴として、簡易な入力で多面的な結果を得られるだけでなく、シナリオ分析や感度分析による「最小努力で最大成果」を実現したいと考えます。具体的には:
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自動感度分析: ユーザーが特に操作しなくとも、主要変数(電力単価、CAPEX、稼働率など)を±20%変化させた場合のLCOHやIRRの変動を計算しグラフ表示します。Lazardの報告にもあるように、電力コスト・CAPEX・利用率がLCOHに与える影響は大きく、これらをクモの巣チャートや棒グラフで示します。「電力価格が○円→△円に上昇するとIRRが▲%下がる」等、一目でわかるようにします。
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ケース比較: 複数ケースを並列計算し比較できます。例えばケースA: 現状コスト・国内生産 vs ケースB: 輸入水素利用など。ケースBでは水素価格(取り込み価格)を入力し電解CAPEX不要にする、といった設定で「どちらが安いか/CO2削減が大きいか」比較が可能です。にあるように、2030年時点でオーストラリア産水素の輸入コストは国内製造と同程度との試算もありますが、輸送コストによって逆転する可能性もあります。モデルを使えば、ユーザーは例えば「国内で再エネ由来水素を作るのと、海外から液化水素を輸入するのはどちらが得策か?」といった問いにも定量的に答えられます。
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最適化提案: 高度な機能になりますが、例えば「与えられた条件でLCOHを最小化する電解槽容量と再エネ容量の比」を探索することも考えられます。太陽光と電解槽の容量比を変えると、水素コストがある点で最小になる(過剰な電解容量は遊休を増やし、少なすぎると再エネ電力を余す)という分析があります。実際、ある研究では「太陽光に対し電解容量を65%に抑えるとLCOH最小」と報告されています。シミュレーションでは、ユーザーが再エネ発電量プロファイルを与えれば、電解容量の最適値を見つけ出すことも可能です。ただ本稿の範囲では、まずは固定値を入れての試算が主で、こうした設計最適化は将来的拡張機能として触れるに留めます。
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出力形式の工夫: ブログ記事的には直接関係しませんが、実装イメージとして、ユーザーがパラメータを入力するとダッシュボードに以下が表示されることを想定します。
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要約: LCOH、IRR、NPV、年間CO2削減量など主要結果を大きく表示。
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内訳グラフ: LCOHの内訳、キャッシュフロー推移、感度分析グラフ、など。
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解釈: 「目標値に対しここがボトルネック」「補助○円あればIRR10%超」等自動コメント生成も考えられます。
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以上のように、本シミュレーションモデルは高解像度な計算式に基づきつつ、ユーザーフレンドリーな結果提示を志向しています。モデル数式自体は目的関数形式でも表せます。例えば前出のNEDO事業でのモデルでは、目的関数をf_cost(x) = Σ_{i,t}(C_OM_{i} * x_{i,t}) + Σ_{j}(CAP_j/T_j) + OP_j * y_j
という形で表現しています。これは「各時刻の可変コスト(COM_i×運用量x)+各設備の年あたり資本費(CAP_j/T_j)+固定費(OP_j×稼働y)」の総和を最小化する、と読めます。本モデルでも基本は総費用を構成要素別に積み上げ、それを水素量や発電量で割る考えです。その際、制約条件として「需要を満たす」「設備容量内で動かす」などが入りますが、本稿では詳細な数理最適化までは踏み込まずともロジックの骨子は同様です。
データソースと信頼性の確保
最後に、シミュレーションに用いるデータの出典とアップデート方針について述べます。経済性評価は前提データ次第で結果が大きく変わるため、信頼性の高い最新データを参照することが重要です。想定する主なデータソースと使用優先順位:
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公的統計・政府目標: 経産省・NEDOのロードマップや委員会資料を活用します。例えば水素基本戦略のコスト目標、燃料電池コストロードマップ、NEDOの技術開発報告など。これらは信頼性が高く、また政策的に重要な値なのでデフォルト値に採用します。
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国際機関レポート: IEA(国際エネルギー機関)のGlobal Hydrogen Reviewや、IRENAの報告等から、世界のコスト動向や予測を引用します。例えばIEAは「2030年までに再エネ由来水素コストは最良条件で$1.6/kgも可能」としていましたが、最近それを上方修正し「大半のプロジェクトは$3-5/kg以上」と予測しています。こうした最新知見を取り入れ、モデルの前提も適宜アップデートします。
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学術論文・技術レポート: 国内外の研究から詳細なケース分析結果を参照します。例えば前述のCRIEPI等の研究、エネルギー経済研究所の報告、海外ジャーナルのTEA分析などです。特に将来予測においては研究ベースの数値が有用です。
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企業開示情報: プラントメーカー(三菱重工、川崎重工など)の発表や、プロジェクト事例のデータも参考にします。例えば川崎重工は液化水素運搬船などの試算を公表していますし、トヨタやデンソーは社内実証で得られたコストデータをNEDO講演で示しています。また燃料電池車(EFV)の技術資料から燃料電池の耐久性など逆算することも可能です。
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市場実績: 将来的には、水素の市場価格や入札結果など実データも蓄積されていくでしょう。欧州では既にクリーン水素の入札価格が公開され始めています。モデルはそうした実勢価格も取り込み、現実とのギャップを検証できると理想的です。
データの優先度は「最新かつ信頼できるもの」を最優先とし、必要に応じてレンジ(幅)で設定します。不確実性が高いパラメータ(例: 2030年の電解装置コスト)は単一点ではなくシナリオA/B/C(高・中・低コストケース)のように複数値を持たせ、モデル内で選択・比較できるようにします。
モデルのアップデートも重要です。エネルギー情勢は変化が激しく、例えば燃料価格や政策が変わればシミュレーション結果もすぐ陳腐化します。そこで年次でデータ更新を行い、新たな知見(例えば「中国メーカーが超低価格PEM電解槽を発売した」「政府補助単価が変わった」等)を反映していきます。ユーザーにはデータ参照元を明示(例えば出典付きレポート)し、透明性も確保します。
おわりに: 最小努力で最大成果を上げるために
グリーン水素発電の経済性シミュレーションについて、そのロジックと必要パラメータを詳細に設計してきました。本稿で提示したモデルは、一見複雑な要素が多いものの、適切なデフォルト設定と自動計算によってユーザーの手間を最小化しつつ、投資判断に十分な深度の洞察を提供することを目指しています。
ポイントを振り返ると:
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日本の水素導入目標(コスト30円/Nm3など)は非常にチャレンジングであり、現状の延長線上では達成が難しいことがシミュレーションから示唆されます。しかし、モデルで感度分析を行えばどの条件を変えれば目標達成に近づくかが定量的に示され、政策的インパクトの大きい論点(例えば再エネ電力コストの低減が肝要、など)を浮き彫りにできます。
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投資家や企業にとっては、IRRやNPV計算を通じて水素プロジェクトの収益性を他の投資案件と比較可能な形で評価できます。特に補助金やカーボンプライスを組み込むことで、「このプロジェクトを実現するには政府支援があと○円/kg必要」といった具体的な要求水準を議論できます。
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自治体や環境部門にとっては、CO2削減効果とそのコストを算出することで、水素導入の環境的妥当性を他施策と比べられます。仮に削減コストが非常に高い場合でも、エネルギー安全保障や産業政策上の意義を踏まえて判断する必要がありますが、本モデルは数字という客観的な軸を提供します。逆に、水素がもたらす付加価値(非常時電源強化や地元産業育成など)も補足定量化し、意思決定を多面的に支援できます。
「最小の努力で最大の成果」と言いましたが、裏を返せばモデル開発者側が徹底的に作り込み、ユーザーにはシンプルなUIで使ってもらうことになります。そのためには、ここで述べたような詳細ロジックをバックグラウンドで動かしつつ、入力項目の簡素化・結果のわかりやすい可視化が欠かせません。例えば、専門知識のない自治体職員でも「水素発電を導入したら電気代はどうなる?CO2はどれだけ減る?」といった疑問に5分で答えを出せる——そんなシミュレーターが理想です。
最後に、本稿のシミュレーション設計コンセプトは汎用性も意識しています。日本国内向けに焦点を当てましたが、パラメータを入れ替えれば他国(EUや中東など)のケース分析にも適用できますし、将来的には交通分野(水素モビリティ)や産業プロセス(水素還元製鉄等)の経済性評価にも応用し得ます。水素バリューチェーン全体を俯瞰しつつも個別プロジェクトのディテールまで掘り下げられる高解像度モデルは、これからの水素社会の実現に向けた羅針盤となるでしょう。
以上、高解像度シミュレーションの設計について述べました。水素は「将来のエネルギーの鍵」と期待される一方で、その実装には現実的な経済性検証が不可欠です。本モデルが、水素発電導入の是非や手法を検討する全ての方々にとって、有益なツールとなることを願っています。そして、技術革新やコスト低減の努力が実を結び、シミュレーション上だけでなく実際のプロジェクトにおいても最小の努力で最大の成果が得られる日が来ることを期待しましょう。
本件はあくまでも机上の構想段階です。ご関心、ご興味ある官公庁・自治体や企業の皆様からはお気軽にお問い合わせください。
参考文献・出典:
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