ターコイズ水素 × カーボンネガティブ × 透明性トークン化 —— 三位一体モデルが日本のエネルギー安全保障とGX投資を引き上げる

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

自治体 脱炭素 エネルギー 太陽光 蓄電池
自治体 脱炭素 エネルギー 太陽光 蓄電池

ターコイズ水素 × カーボンネガティブ × 透明性トークン化 —— 三位一体モデルが日本のエネルギー安全保障とGX投資を引き上げる

▶ 10秒要約:

メタン熱分解(ターコイズ水素)にバイオマス-BECCSを組み合わせたカーボンネガティブ設計と、ブロックチェーンによるリアルタイム LCA トークン化を統合すれば、①化石燃料依存リスクを削減しながら ②排出をネットマイナスに転換し ③民間 GX 投資を金融商品の形で呼び込める。日本が抱える「燃料輸入 97%」「脱炭素 2050 年カーボンニュートラル」という二律背反を、ひとつの事業体系で同時解消できる。

用語解説
ターコイズ水素: 天然ガスなどを高温で分解して水素を製造する方法。CO2ではなく固体炭素が副産物として生成される。
BECCS: Bio-Energy with Carbon Capture and Storage(バイオマスエネルギー+炭素回収貯留)の略。植物由来の燃料を燃やし、発生したCO2を地中に貯留する技術。
カーボンネガティブ: CO2の排出量よりも吸収・除去量が多い状態。実質的にCO2を減らす。
LCA: Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)の略。製品の原材料調達から廃棄までの全工程での環境影響を評価する手法。
GX投資: Green Transformation(グリーン・トランスフォーメーション)投資。脱炭素社会への移行を目指す投資活動。


1. はじめに —— “色ラベル”を超えるアップデート

グレー/ブルー/グリーンという従来の水素の色分けは、製造時の CO₂ 排出にのみ着目した「一次元ラベル」に過ぎない。世界のフロントランナーはすでに、

  • 熱分解による固体炭素副産物の価値化(ターコイズ)
  • 負排出(バイオマス + CCS)によるネットマイナス化
  • エネルギー由来証書をブロックチェーンで即時トークン化して取引

という「三位一体モデル」へ進化しつつある。

水素の色分け解説
グレー水素: 天然ガスや石炭から製造。CO2が大量に発生する従来型の水素製造法。
ブルー水素: グレー水素と同じ製造法だが、発生したCO2を回収・貯留(CCS)する。
グリーン水素: 再生可能エネルギーを使った水の電気分解で製造。CO2排出がほぼゼロ。
ターコイズ水素: 天然ガスを熱分解して製造。CO2ではなく固体炭素が副産物として生成。

「三位一体モデル」とは:従来の単一技術による水素生産から、複数技術の組み合わせによる統合システムへの進化を指し、①炭素資源化、②CO2ネガティブ化、③デジタル証明の3要素を組み合わせた次世代型の水素エネルギーシステム。


2. 論点① —— ターコイズ水素:メタン熱分解の経済学

2-1 仕組み

メタン(CH₄)を 1,000 °C 前後で無酸素熱分解し、H₂ と固体炭素(C)へ分離。反応熱はプラズマ・電熱・ソーラー熱集中などで供給できるため、再エネ過多電力の”カスケード利用”が可能。

解説:メタン熱分解とは
メタンを酸素なしで高温分解すると、水素と固体炭素に分かれます。化学式で表すと:CH₄ → C + 2H₂
従来の水素製造法(天然ガスの水蒸気改質)では:CH₄ + 2H₂O → 4H₂ + CO₂
メタン熱分解では二酸化炭素ではなく固体炭素が生成されるため、大気中へのCO₂排出がありません。

“カスケード利用”とは: 余った再生可能エネルギーの電力を段階的に活用すること。例えば、太陽光発電の余剰電力でターコイズ水素製造の熱源を供給するなど。

ターコイズ水素製造では、メタンを高温で分解するプロセスが使用され、近年の技術革新によってコスト効率が改善され、水素需要の高まりとともに注目を集めています。同時に副生成物としてカーボンブラックなどの炭素を得られることも特徴です。

2-2 コスト動向

北米パイロットでは LCOH* が 1.2–2.0 USD/kg(天然ガス 3 USD/MMBtu 前提)。固体炭素を黒鉛・建材フィラーとして 50–100 USD/t で売却できれば、H₂ は 0.9 USD/kg まで低下する試算もある。

用語解説
LCOH: Levelised Cost of Hydrogen(水素の均等化コスト)。水素1kgを製造するのに必要な総コスト。
USD/MMBtu: 米ドル/百万英熱量単位。天然ガスの価格単位。
黒鉛: 炭素の結晶構造の一種で、電池材料や潤滑剤として価値が高い。
建材フィラー: コンクリートや樹脂などに混ぜて強度や機能性を向上させる充填材。

三菱重工業は米国統括拠点を通じて、メタンからプラズマ熱分解方式で水素と固体炭素を取り出す革新的技術を持つモノリス社に出資しました。天然ガスの直接熱分解により、水素製造過程でCO2を排出しない、いわゆる”ターコイズ水素”およびカーボンブラックなど利用価値の高い固体炭素を製造できます。

2-3 日本実装の鍵

  • 都市ガス LNG インフラの転用 → 既存輸入スキームを活かして初期 CAPEX を抑制
  • 副産炭素の国内用途:EV バッテリー負極材や建設 3D プリンタ用フィラーで内需化
  • メタン由来 CH₄ 漏洩(Scope 3)の MRV* とインセンティブを整備

用語解説
CAPEX: Capital Expenditure(設備投資)。工場や設備の建設など、初期投資コスト。
負極材: リチウムイオン電池などのマイナス極の材料。炭素が主に使われる。
Scope 3: 企業活動の間接的な排出量。原材料調達や輸送、製品使用時の排出も含む。
MRV: Measurement, Reporting & Verification(測定・報告・検証)。環境対策の効果を正確に評価する仕組み。

ターコイズ水素製造装置では、多くの炭素が副生されるため、炭素の新しい用途の開拓が必要です。研究では、ターコイズ水素製造により副生される炭素の水浄化性能を調査し、気環境と水環境に優しいエネルギー利用技術の確立を目指しています。


3. 論点② —— カーボンネガティブ水素:BECCS-H₂ の逆転発想

3-1 ロジック

バイオマス(林地残材・稲わら・海藻など)のガス化 or 発酵で H₂/CO 複合ガスを生成し、CO₂ を周辺油ガス田へ圧入固定。光合成起源の炭素を地下へ封じ込めるため、ネット排出はマイナスになる。

解説:カーボンネガティブの仕組み

  1. 植物(バイオマス)は成長過程で大気中のCO₂を吸収している
  2. このバイオマスをエネルギー源として利用すると、吸収したCO₂が再放出される(カーボンニュートラル)
  3. しかし、放出されたCO₂を回収・地中貯留すれば、大気中のCO₂は実質的に減少(カーボンネガティブ)

バイオマスガス化と発酵の違い
ガス化: 高温(800℃以上)で酸素を制限してバイオマスを分解し、一酸化炭素と水素を主成分とする合成ガスを生成
発酵: 微生物の働きで常温〜中温でバイオマスを分解し、メタンや水素を生成

CCS(CO2回収・貯留)とバイオマスエネルギーを結び付けた「ベックス」(BECCS)は、バイオマス燃焼時のCO2を回収・運搬し、地中に貯留すれば、大気中のCO2は純減となります。BECCSが実用化されれば、パリ協定のCO2排出実質ゼロという長期削減目標達成に貢献することが期待されています。

3-2 日本のバイオポテンシャル

IEA Bioenergy によれば、日本の未利用バイオマス潜在量は年間 1.7 EJ 相当。仮に 30% を BECCS-H₂ に回した場合、50 万 t-H₂ / 年・負排出 6 MtCO₂/年 を実現できる。

用語解説
EJ: エクサジュール(10の18乗ジュール)。非常に大きなエネルギー単位。
未利用バイオマス: 林地残材、農業残渣、食品廃棄物など、現在利用されていない生物由来の資源。
t-H₂: 水素トン。水素の重量単位。
MtCO₂: 百万トンの二酸化炭素。CO₂排出量の大規模な単位。

BioEnergy with Carbon Capture and Storageの略で、CCS(CO2回収・貯留)とバイオマスエネルギーを結び付けた技術を指す造語です。2022年には「国産バイオマスからのCO2ネガティブ水素製造に係るBECCS一貫実証モデルに関する調査」がNEDO事業として採択されました。

3-3 ターコイズと組み合わせるメリット

  • 熱統合:ターコイズ高温排熱をバイオガス化乾燥工程に供与 → エネルギー効率向上
  • CO₂ バッファ:ターコイズが正味プラス排出でも BECCS 側で相殺し、全体をネットゼロ〜ネガティブに
  • 統合パイプライン:H₂/CO₂ 両方を輸送する”ツイン管”の CAPEX を共用

熱統合の価値
ターコイズ水素製造は1000℃以上の高温で行われ、この排熱は通常は廃棄されます。この熱をバイオマスの乾燥や前処理に利用することで、システム全体のエネルギー効率が大幅に向上します。これは、産業プロセスの「カスケード熱利用」と呼ばれる重要な省エネ技術です。

CO₂バッファの意味
ターコイズ水素製造は理論上はCO₂を出さないはずですが、実際の製造工程(加熱エネルギーなど)を含めると若干のCO₂排出があります。BECCS側の「負排出」でこれを相殺することで、システム全体をカーボンネガティブにできます。

バイオマスを燃焼または発酵させることでCO2が排出されますが、そこに含まれる炭素は光合成で大気中から吸収したCO2なので、バイオマスをエネルギー利用してもCO2は増加しません(カーボン・ニュートラル)。さらにCCSを組み合わせれば、CO2排出量は差し引き正味で負になり、「ネガティブ・エミッション」を達成できます。


4. 論点③ —— 透明性トークン化:リアルタイム LCA 取引

4-1 スキーム

製造者はスマートメーター・質量バランスセンサーから kg-H₂ 単位 の CO₂ 排出係数を生成し、ブロックチェーン上にエネルギー由来証書 (EAC) として鋳造。需要家は H₂ 購入と同時にトークンを受領し、自社 Scope 1, 2、さらには Scope 3 まで 自動会計 できる。

用語解説
トークン化: 現実世界の資産や権利をデジタル上のトークン(証票)として表現すること。
スマートメーター: 電力使用量や特性をリアルタイムで計測・通信できる次世代型メーター。
質量バランスセンサー: 物質の流れや量をリアルタイムで計測するセンサー。
CO₂排出係数: 製品1単位あたりのCO₂排出量を示す数値。
エネルギー由来証書(EAC): Energy Attribute Certificate。特定のエネルギーが環境に配慮した方法で生産されたことを証明する電子証書。
Scope 1,2,3: 企業の温室効果ガス排出量の区分。Scope 1は直接排出、Scope 2は電力など購入エネルギーからの間接排出、Scope 3はその他すべての間接排出(サプライチェーン全体を含む)。

ブロックチェーン技術の主な特徴として「透明性」があります。ブロックチェーン内の情報は、すべての参加者が参照できますが、変更はできません。このため、リスクや不正行為が減り、信用が生み出されます。また「トレーサビリティ」の面では、ブロックチェーンデータは不変であるため、複雑なサプライチェーン全体で商品や原産地を追跡するのに最適です。

4-2 欧州動向とベストプラクティス

DENA(独エネルギー庁)の “H₂-Global” では、GoO 付与の即時決済をテスト稼働。イタリア ENI はサルデーニャ製グリーン H₂ を NFT で販売し、プレミアム 7% を確保。

解説
DENA: Deutsche Energie-Agentur(ドイツエネルギー機関)。ドイツのエネ


5. なぜ”三位一体”が日本のエネ安保を変えるのか

5-1 輸入依存度と財政リスク

2023年度、化石燃料輸入額は 29.3 兆円。円安 150 JPY/USD を前提に試算すると、2050 年までの累積純支払は 600 兆円超。ターコイズ+BECCS-H₂ の国内潜在量 1.2 Mt-H₂/年 をフル活用すれば、原油換算 1.1 Gℓ の輸入代替効果:年間 1.8 兆円の経常収支改善を見込める。

将来、環境対策をしながら今以上のエネルギーをどうやって確保するかという問題は日本にとって想像以上に深刻です。特に電力は厳しく、電力構成の7割を占める化石燃料を大幅に減らしつつ、再生可能エネルギーや原子力等のCO2排出が限りなくゼロの発電へのシフトを推進しなければなりません。

5-2 系統レジリエンス

洋上風力がスーパー過剰になる北東北・北海道系統では、変動再エネ→グリーン H₂→ターコイズ補助熱というマルチルートで余剰電力を吸収できる。塩穴貯蔵 (Salt-Cavern) と組み合わせれば、1 週〜1 月スケールのバックアップが完成する。

カーボンニュートラル社会実現のため、CO2フリー水素が注目されています。その中でも「ターコイズ水素」は、化石燃料である天然ガスなどの炭化水素を原料に用い、水素製造においてCO2を排出することなく、固体の炭素を生成するという特徴があります。

5-3 地政学ハッジ

ロシア・中東依存を減らしつつ、中国が支配的なグリーン H₂ 電解槽サプライチェーンも”ダイバーシティ化”できる。国内に残る LNG インフラを転用すれば、地域経済と雇用も維持。

ターコイズ水素製造の技術開発は海外でも加速しており、米国、豪州などでは大型プラントによる実証が行われています。しかし、生成炭素の利用についての関心はあまり高くありません。「生成炭素の利用で、日本は優位性を発揮できる。世界的な競争力はある」との見方もあります。


6. GX 投資を爆速にするファイナンス・メカニズム

6-1 トークン化 × プロジェクトボンド

H₂-EAC トークンを裏付資産にした 担保付ステーブルボンド を組成し、年 3–5% クーポンで ESG 資金を呼び込む。CO₂ ネガティブ値が高いほどデフォルトリスクが下がる “カーボン担保モデル” で格付けを獲得。

ブロックチェーンのテクノロジーは、仮想通貨以外のビジネスにも活用されています。世界全体でブロックチェーンの市場規模は急成長しており、2026年には674億米ドル(約7兆6,600億円)まで伸びると予測されています。日本では、デジタル庁が「ブロックチェーン技術を基盤とするNFTの利用等のWeb3.0の推進」を政策に盛り込んでいます。

6-2 規制誘導

  • GXリーグ算定基準で、H₂-トークンの Scope 3 計上を公式認定 → 需要家側の価値を明確化
  • 改正炭素税 (仮) で、ネガティブ排出係数を 税額控除 へ接続
  • 日銀の 気候オペ(グリーンローン適格担保)対象に組み込み→銀行融資コスト 30 bps 低減

サステナビリティ情報を含む完全なトレーサビリティ情報を製品に表示できるトレーサビリティ・システムは、資源の再利用、温暖化対策も含めたCO2削減が求められる時代において重要性を増しています。特にEV市場関連企業は今後新しいルールへの対応が必要となります。

6-3 投資規模ポテンシャル

2030 年までにターコイズ 1 GW、BECCS-H₂ 0.5 GW 設置すると CAPEX 1.8 兆円。再エネ電解(グリーン H₂) のみの場合と比較して、総投資効率(CO₂ 排出削減 t / USD)は 1.4 倍改善。

環境負荷の低い「ターコイズ水素」は、化石燃料である天然ガスの主成分である「メタン」の直接熱分解により、二酸化炭素を排出せずに生成される水素です。製造工程で固体の炭素を副生する点と、再生可能エネルギー由来の電力を使う点も特徴で、欧州などで研究が進んでいます。

7. エネルギー転換への実装ロードマップ

フェーズ実装内容期間
① データ統合H₂ LCA API、CO₂貯留実績 API、EAC ブロックチェーン API を統合し、シミュレーションエンジンを3エネルギーキャリア対応へ拡張T0–T+6 か月
② 金融連携トークン担保付きリース・PPA 構造を組込ファイナンス API として提供T+6 〜 T+12 か月
③ マーケット需要家ポータルで LCA リアルタイム表示、カーボンクレジット自動償却 UI を実装T+12 〜 T+18 か月

実装ロードマップの意義
技術的に可能なことでも、実際のビジネスに組み込むには段階的な実装が不可欠です。特にAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の連携は、異なるシステム間でデータをスムーズに連携させる鍵となります。これにより、水素生産から金融取引、最終利用までの一貫したデジタルトレースが実現します。

用語解説
API: Application Programming Interface。異なるシステムを接続するための技術仕様。
LCA API: ライフサイクルアセスメントのデータを提供するインターフェース。
PPA: Power Purchase Agreement(電力購入契約)。長期間の電力供給契約。
カーボンクレジット自動償却: 排出権を自動的に使用済みとして処理する仕組み。
UI: User Interface(ユーザーインターフェース)。利用者の操作画面。

トレーサビリティ(追跡可能性)とは、ある商品が生産されてから消費者の手元に至るまで、その商品が「いつ、どんな状態にあったか」が把握可能な状態のことを指します。特に自動車や電子部品、食品、医薬品など、消費財の製造業で注目されており、ブロックチェーン技術の登場により、サプライチェーン全体の透明性確保が可能になってきています。


8. ケーススタディ —— 苫小牧・瀬戸内・鹿児島湾

苫小牧クラスター:LNG 輸入基地+CCS 実証井戸が既設。ターコイズ熱分解で副産黒鉛をバッテリー工場へ供給し、北海道洋上風力の余剰を吸収。

苫小牧の優位性
苫小牧は日本で唯一、既にCCS(二酸化炭素回収・貯留)の実証実験が行われている地域です。周辺には製紙工場や石油化学工場といった産業集積があり、CO2の大規模排出源が集中。さらに北海道では大規模洋上風力発電所の計画が進行中で、「再エネ電力」「ターコイズ水素」「CCS」の三位一体モデルを実現する好条件が揃っています。

瀬戸内バイオマスハブ:竹・未利用木質バイオマスを流動床ガス化(Sumitomo 共同 FT 燃料案件)。CCS 注入先は西部ガス日向沖候補。

瀬戸内の可能性
瀬戸内地域は、竹林の拡大による放置竹林問題を抱える一方、製鉄所や化学工場といった大規模産業が集積しています。竹や未利用間伐材をバイオマス資源として活用し、産業用水素として供給することで、地域環境問題の解決と脱炭素の両立が期待できます。また、九州沖には天然ガス田跡地があり、CO2貯留の候補地となります。

鹿児島湾マルチトークン港湾:LOHC 船舶燃料&バイオ燃料”Bioship”実証と統合。船舶 AIS データと H₂-トークンをスマートコントラクト決済。

鹿児島湾構想の革新性
鹿児島湾は深い湾と豊富な地熱・バイオマス資源を持ち、国際物流の拠点としての可能性があります。さらに、次世代船舶燃料(LOHC:有機ハイドライド)の実証実験と組み合わせることで、「海上輸送の脱炭素化」という大きな課題に取り組む拠点となり得ます。船舶の位置情報(AIS)とブロックチェーン決済を組み合わせた自動決済システムは、国際的にも先進的な取り組みです。

用語解説
LOHC: Liquid Organic Hydrogen# 【完全版】ターコイズ × カーボンネガティブ × 透明性トークン化 —— 三位一体モデルが日本のエネルギー安全保障とGX投資を爆速で引き上げる理由


9. まとめ —— “三位一体”でしか得られない 5 つのアドバンテージ

  1. 経済性:黒鉛・カーボンクレジット・EAC トークンの三重収益により LCOH をグリーン H₂ 単独比で最大 40% 低減
  2. 排出ネットマイナス:ターコイズの正排出を BECCS-H₂ で相殺し、企業が「超過削減クレジット」を生成
  3. レジリエンス:輸入依存リスクを削減し、変動再エネ・地政学ストレスに強い H₂ キャリア網を構築
  4. 金融呼び水:透明性トークン化により「脱炭素 KPI 可視化 → 低リスク評価 → 低調達コスト」の好循環
  5. 産業波及:副産炭素→電池材、H₂→鉄鋼・化学、トークン→FinTech と、複数産業を束ねる地域クラスター形成

ターコイズ水素は、メタン熱分解と呼ばれる方法で天然ガスのメタンを水素と固体炭素(カーボンブラック)に分解して生成されます。副産物のカーボンブラックは自動車のタイヤやコーティング剤、バッテリーなど、産業用途で幅広く活用されています。この製造方法では、生成過程で生じたカーボンブラックを産業利用でき、二酸化炭素を排出せずに水素を生成することができます。

日本が掲げる 2030 年 6 兆円/年の GX 投資目標は、従来のグリーン H₂ だけでは到達が難しい。ターコイズ+カーボンネガティブ+透明性トークン化の三位一体モデルこそが、燃料安全保障・カーボンネガティブ・金融イノベーションを同時達成する「ショートカット」である。

ブロックチェーン技術を活用したシステムは、サプライチェーンの透明性を高め、商品の移動にあわせてサプライチェーンマッピングやデータ収集、仕入先の追跡を行うことで、非効率性や持続不可能・非倫理的な課題に対応できるようになります。これは特に食品・ファッション業界だけでなく、エネルギー分野でも大きな前進となり得ます。


参考資料

  • IEA «Global Hydrogen Review 2024» (分析編)
  • Mizuho FG «The Potential of Turquoise Hydrogen» (2023)
  • Sojitz & Hycamite Pilot Release (2025-02-25)
  • IEA Bioenergy «Implementation of Bioenergy in Japan 2024»
  • DENA «H₂-Global Program Update 2024»
  • EU Court of Auditors SR-2024-11 «Renewable Hydrogen Industrial Policy»
  • Nikkei «Offshore Wind-Hydrogen Plant 550 t/y» (2024)
  • IEA GH2 «Accelerating Truly Low-Carbon Hydrogen in Japan» (2025-04)
  • NYK «Bioship Gasification Technology» Press (2024-05-14)
  • Sumitomo Corp «Woody Biomass FT Fuel JDA» (2024-02-08)
  • Reuters «Kawasaki Heavy Hydrogen Chain Revision» (2024-12-11)

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