APIエコノミーとAIエージェントエコノミーの融合が切り開く2025年〜2035年の再エネ革命

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

エネがえるキャラクター
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APIエコノミーとAIエージェントエコノミーの融合が切り開く2025年〜2035年の再エネ革命

APIエコノミーとAIエージェントエコノミーの台頭

近年、「APIエコノミー」と「AIエージェントエコノミー」という二つの潮流がビジネス界で大きな注目を集めています。APIエコノミーとは、自社の機能やデータをAPI(Application Programming Interface)として公開し、他社サービスと連携することで新たな価値を創出する経済圏のことです。その市場規模は既に驚異的な大きさに達しており、IBMは2016年時点で2018年に世界のAPIエコノミー市場規模が2.2兆ドル(約233兆円)を超えると予測していました。一方、AIエージェントエコノミーとは、「自律的に動作し目的を達成するAI」がもたらす新たな経済圏を指します。生成AI(大規模言語モデル)の発展によって、この概念が実用段階に入りつつあり、まさに次世代のビジネス革命と位置づけられています。AIチャットボットのような受動的システムとは異なり、AIエージェントは環境を観察・計画・行動(Observe-Plan-Act)のサイクルで自律的に動き、人間の“賢い部下”のように仕事をこなしてくれる点が特長です。

こうしたAIエージェントは、マーケティング、カスタマーサービス、研究開発など様々な分野で導入が始まっており、既に業務プロセス自動化の範囲を広げています。例えばある銀行では、AIエージェントによって顧客対応コストを1/10に削減したという事例もあります。AIがただ回答するだけでなく、手続きの実行まで代行することで劇的な効率化を実現しているのです。このように、APIを介してサービス同士が繋がる世界と、自律的にタスクを遂行するAIエージェントの世界が融合し始めています。その融合がビジネスと社会にもたらすインパクトは計り知れません。

2025年〜2035年の市場規模予測と技術トレンド

それでは、今後10年間(2025年〜2035年)でこの二つのエコノミーはどのように成長し、技術トレンドと市場規模はどう推移するのでしょうか。まずAIエージェント市場の成長予測に目を向けると、2030年まで年平均45%という驚異的なペースで成長し、同年には約520億ドル規模に達するとの分析があります。これは2024年時点で50億ドル規模とされる市場が、わずか6年で10倍以上に膨れ上がる計算です。日本国内でもAIエージェント関連市場は急拡大が見込まれており、2024年時点約1,800億円から2030年には4,000億円超との予測もあります(約2倍以上の成長)。背景には、生成AI技術の進化とAPI連携の容易さがあります。クラウド上で提供される高度なAIモデルに、各種サービスのAPIを組み合わせることで、企業ごとのニーズに合った“スマート自動化”が可能になっているのです。

一方のAPIエコノミーも引き続き拡大を続けるでしょう。前述の通り2018年時点で2.2兆ドル規模に達していたとの試算もあるAPIエコノミーですが、その後もあらゆる業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、企業は競って自社APIを公開しています。例えば金融では、オープンAPI戦略が銀行法の改正なども相まって普及し、フィンテックとの連携が当たり前になりました。製造や物流、小売に至るまで、APIによるサービス連携が新サービス創出の基盤となっています。そのため、市場規模を正確に測るのは難しいものの、「APIなしにはビジネスが成り立たない」という状況が一般化しつつあります。IBMの予測を引き合いに出すまでもなく、APIエコノミーの経済圏は既に数百兆円規模であり、2030年代にはさらに拡大していることは想像に難くありません。

技術トレンドの側面では、以下のような動きが顕著になるでしょう:

  • マルチエージェント協調と自動化の高度化: 単一のAIエージェントではなく、複数のエージェントが専門タスクを分担し連携する仕組みが発展すると予想されます(例:一つのエージェントがユーザーからヒアリングし、別のエージェントがAPI経由でデータ取得・計算し、さらに別のエージェントが結果をまとめ提案)。APIをハブにして、AI同士が対話・協調する「エージェント群」による高度な自動化が進むでしょう。

  • ドメイン特化APIの充実: 各業界固有の課題を解決する専門APIが増加し、それらをAIが活用するケースが増えます。例えばエネルギー分野では後述するような再生可能エネルギー関連のAPI、ヘルスケアでは医療データAPI、スマートシティでは交通・環境データAPIなど、多種多様なドメインAPIが整備されていく見込みです。

  • リアルタイムデータ活用と標準化: 5G/6G通信やIoTの普及により、よりリアルタイム性の高いデータがAPIで提供されるようになります。電力需給や気象データなどの標準API化も進み、AIエージェントが即時に環境を観察・判断できる基盤が整備されるでしょう。規制面でも、データポータビリティやオープンデータに関する標準化が各国で議論され、APIの共通基盤化が推進される可能性があります。

要するに、2025年から2035年にかけては「API経済圏 × AIエージェント」のハイブリッドな成長が見込まれます。それはちょうど、インターネットがかつて通信とコンテンツの双方の発展で飛躍したのと似て、サービス同士の繋がり(API)と自律的な知能(AI)が掛け合わさることで指数関数的な価値創造が起きる段階です。この潮流を捉えることが、企業にとっても社会にとっても大きなチャンスとなるでしょう。

再エネ普及・脱炭素に立ちはだかる課題

では、こうしたテクノロジーの融合を「再生可能エネルギー(再エネ)普及」という文脈で考えてみましょう。日本は2050年カーボンニュートラル実現を目標に掲げ、国や自治体は再エネ導入促進のための補助金制度拡充や規制強化(例:東京都の新築住宅太陽光パネル義務化など)を進めています。しかし、現場レベルで再エネ普及を加速するには、根源的・本質的な課題の克服が欠かせません。主な課題を整理すると以下の通りです。

1. 経済性に対する不安・不信: 太陽光発電や蓄電池、EV導入の最大の動機は「光熱費削減」や「災害時のバックアップ電源確保」ですが、多くの導入検討者は本当に元が取れるのか不安を抱えています。これは家庭でも企業でも同様です。実際、産業用太陽光・蓄電池の営業現場では、顧客から経済効果シミュレーションの信憑性を疑われるケースが8割以上に上り、それが理由で商談失注や成約遅延を経験した営業担当者が大勢います。また住宅分野でも「シミュレーションの数字なんて机上の空論では?」という疑念を持つお客様は少なくありません。この信頼性のハードルが普及のブレーキになっているのです。

2. 提案側の負担と人材不足: 再エネ製品を販売・施工する事業者側にも大きな課題があります。顧客ごとに条件の異なる経済効果試算(シミュレーション)や設計提案には専門知識と手間が必要です。しかし業界全体で見ると、例えば太陽光・蓄電池販売施工店では約9割が技術系人材の確保に困難を感じているとの調査結果があります。さらに約8割が「提案書作成の負担で顧客対応が遅れがち」と回答しており、ノウハウを持った人材不足と業務過多が深刻化しています。ヒアリングから現地調査、電力使用データの収集、複数パターンのシミュレーション比較、補助金情報の確認…と、一連の提案プロセスは煩雑で、“見えない負担”が現場のボトルネックになっているのです。

3. 情報の分断とアクセスの難しさ: 再エネ導入には様々な情報が絡みます。例えば国や自治体の補助金は毎年内容が変わり種類も膨大ですが、その最新情報を収集・更新・管理するのは事業者にとって大きな負担でした。また電力会社各社の料金プラン(時間帯別単価や割引メニューなど)も多数存在し、最適なプラン選定には専門知識が要ります。一般消費者が自力でベストな組み合わせを見つけるのは困難で、販売側も全てを網羅するのは容易ではありません。このように必要なデータや知見がバラバラに存在し、それぞれアップデートも頻繁に起きるため、効率的な提案や意思決定の障壁になっていました。

4. 心理的ハードルと啓発不足: 再エネ=高価というイメージや、「蓄電池は元が取れない」など過去の常識が、未だに一部で根強く残っています。たとえ電気代高騰で太陽光や蓄電池に興味を持っても、「本当にメリットあるの?」と半信半疑で踏み切れない層も多いのです。また、自治体による住民啓発や企業の脱炭素研修なども十分とは言えず、正しい知識が浸透しきっていない部分があります。例えば東京都民への調査では、都の進めるカーボンニュートラル施策を84.7%が評価するとしつつも、今後に求める支援策として「助成金の増額」がトップに挙がるなど、住民側は経済的な後押しを強く望んでいます。結局のところ、「再エネ=環境に良いこと」は分かっていても、「自分にとって得かどうか」が見えないと行動に移しにくいという現実があります。

以上の課題を一言でまとめるなら、「再エネ導入のメリットを、誰もが速く・正確に実感できる仕組みが不足していた」ということになるでしょう。裏を返せば、ここにテクノロジー活用の大きなチャンスがあります。APIエコノミーとAIエージェントエコノミーの融合は、まさにこの問題を解決しうる強力な手段なのです。

参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 ~大手新電力、EV充電器メーカー、産業用太陽光・蓄電池メーカー、商社が続々導入~ | 国際航業株式会社 

APIとAIの融合がもたらすソリューション

上記の課題を乗り越えるために、APIAIエージェントを組み合わせたソリューションが各所で生まれ始めています。キーワードは「見える化の高速化」「自動化と省力化」「信頼性の担保」です。具体的な事例や技術を交えながら解説していきます。

圧倒的スピードで効果を“見える化” – シミュレーションAPIの威力

提案業務の肝となる経済効果シミュレーションにおいて、API活用は劇的な高速化と高精度化を実現しています。その代表例が国際航業株式会社の提供するクラウド型シミュレーションサービスエネがえる」とそのAPIです。従来、営業担当者がExcelベースで太陽光発電システムのシミュレーションを行う場合、データ準備や計算に1件あたり2〜3時間もかかっていました。しかし、エネがえるのシミュレーションAPIを自社システムに統合した株式会社エクソルでは、この計算がわずか5〜10分程度で完了するようになり、作業効率が劇的に向上しました。数時間かかっていた顧客提案資料作成が、たった数分で済むインパクトは計り知れません。

さらにこのAPI連携により、電力料金プラン情報の自動更新も実現しています。これまで各電力会社の新料金プランが出る度に手作業でシミュレーションシートを書き換えていた手間やヒューマンエラーが解消され、常に最新かつ正確な電力単価データに基づく提案が可能となりました。まさに高精度シミュレーションの民主化と言えるでしょう。またエネがえるAPIには、実際の電力需要データ(デマンドデータ)がなくても業種と延床面積から30秒で需要プロファイルを自動生成する機能もあり、これによって初期段階から迅速な提案が可能になったとも報告されています。お客様が検討を始めた初期の頃から具体的な効果数値を提示できるため、「まずは概算を知りたい」というニーズに即答でき、商談のスピードアップに直結しています。

AIエージェント×APIで“仮想エナジーコンサルタント”が登場

シミュレーションAPIが裏で高速計算を支える一方、そのユーザーインターフェース役としてAIエージェントを活用する動きも見え始めています。特に注目すべきは、大規模言語モデル(LLM)を用いた**対話型AI(チャットボット)がこの領域に参入しつつある点です。国際航業の調査によれば、自宅への太陽光発電+蓄電池導入を検討中の一般ユーザーの約8割が「ChatGPTのような対話AIでシミュレーションできれば活用したい」と回答しています。高額な買い物であるだけに、ユーザーは気軽に何度でも質問できるAI相談役を求めているのです。

例えば、将来的には次のような“仮想エナジーコンサルタント”が実現するでしょう。ユーザーがスマホやPC上のAIアシスタントに「うちに太陽光入れたらどれくらい電気代が浮く?」と尋ねると、AIが対話で現在の電気代や屋根の広さ、家族構成などをヒアリングします。集めた情報を元に、裏ではエネがえるのようなシミュレーションAPIにリクエストを飛ばし、AIが結果を解析。僅か数十秒で「10年で〇〇万円おトクになり、初期投資は〇年で回収できます。補助金〇〇円も利用可能です。」といったオーダーメイドの提案**を返してくれるのです。もちろん専門的な質問にも答えられるよう、過去のQ&Aデータや技術情報にもアクセスしつつ、ユーザーに合わせた分かりやすい言葉で解説してくれるでしょう。

このようにAIエージェントとシミュレーションAPIが連携することで、これまで営業担当者やコールセンター要員がマンパワーを割いていたコンサル業務を大幅に自動化できます。24時間365日対応のバーチャル顧問として、多くの潜在顧客の疑問や不安を即座に解消できれば、再エネ導入の心理的ハードルは格段に下がるはずです。さらにAIは複数のAPIを組み合わせられるため、例えば天気予報APIと連携して「来週は晴れが続くので発電量が多く見込めます」などリアルタイムなアドバイスをしたり、スマート家電の制御APIと連携して「余剰電力でEVを自動充電します」といった家庭エネルギー最適化まで提案できるかもしれません。まさにAIエージェントがエネルギーマネジメントを肩代わりする未来が目前に来ているのです。

エネがえるAPIのエコシステム戦略 – パートナー企業で広がる活用事例

再エネ普及を後押しするAPIとして象徴的な「エネがえるAPI」ですが、その価値は自社サービス内に留まらずエコシステム全体での活用によって倍増しています。他社との積極的な連携により、エンドユーザーへシームレスな体験提供が実現している事例を見てみましょう。

まず、前述のエクソル以外にも、大手新電力会社や商社、太陽光メーカーなどが続々とエネがえるAPIを導入しています。例えば太陽光パネルメーカーのネクストエナジー・アンド・リソース社では、従来複数の社内ツールで行っていたシミュレーションが統一され、結果のばらつき解消と月5,000件超の大規模利用に耐える仕組みを実現したとの報告があります(※2025年6月 国際航業プレスリリースより)。また住宅設備大手のパナソニック株式会社も、家庭向け新サービス「おうちEV充電サービス」にエネがえるAPIを組み込みました。このサービスは、EVユーザーが自宅で効率的に充電し電気代を節約できるよう支援するものですが、その肝となる電力料金プラン最適化充電スケジュール最適化にエネがえるのデータが活かされています。

具体的には、全国の電力会社の時間帯別料金プラン情報をエネがえるAPI経由で取得し、ユーザーの契約プランに応じて「電気代がお得になる時間帯」に自動でEV充電をシフトさせる仕組みです。パナソニック側で全ての料金データを網羅・更新するのは膨大なコストと手間がかかるため、高精度な料金データを提供する外部APIの活用が不可欠だったといいます。この導入により、同社は自前では用意しづらい機能を短期間でサービス化でき、ユーザーは意識せずとも自動で充電を安い深夜電力に振り向けられるようになりました。まさにAPIエコノミーのWin-Winな好例と言えるでしょう。

さらにユニークな取り組みとして、自治体や他業種とのコラボレーションも進んでいます。国際航業は2023年、カーナビ大手のパイオニアやデータ分析企業と協業し、自治体向けに「地域のCO2排出量可視化&再エネ導入効果試算ソリューション」を共同開発しました(2023年11月発表)。ここではパイオニアの持つ自動車走行データや電力消費データと、エネがえるのシミュレーションを組み合わせることで、特定地域内でEV導入や再エネ導入がCO2削減にどれほど貢献するかを“見える化”しています。自治体が街ぐるみでGX(グリーントランスフォーメーション)を進めるには、自分たちのまちの排出実態や施策効果を具体的に把握することが不可欠です。こうしたデータドリブンな政策支援にも、APIで柔軟に機能提供できるエネがえるは適していると言えるでしょう。

このように、エネがえるAPIは単なる一本のサービスAPIに留まらず、異業種・異分野を繋ぐハブ的存在としての地位を確立しつつあります。再エネ関連のあらゆる計算ニーズ(電気代試算、発電量予測、CO2削減量算定、最適プラン提案 etc.)に応えるプラットフォームとなることで、将来的には「再エネ版のGoogleマップ」のように多くのサービスに不可欠なインフラになっていく可能性も秘めています。

信頼性への挑戦 – シミュレーション結果保証とアナリティクス

技術が高度化する一方で、ユーザーの信頼をどう築くかも重要です。前述のとおり、多くの顧客がシミュレーション結果の信憑性に不安を抱いていますが、これを打破するソリューションとして登場したのが**「シミュレーション結果の保証サービス」です。国際航業は日本リビング保証株式会社と提携し、太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーション結果について、予測した通りの効果が得られなかった場合に一定の補償を行う業界初のサービスを2024年に開始しました(いわば再エネ版の性能保証保険です)。営業担当者の調査では84.2%が「シミュレーション結果に保証が付けば成約率が高まる」と期待しており、このような取り組みは顧客の背中を押す大きな追い風となるでしょう。実際、保証オプションがあれば販売側が安心して提案できるだけでなく、顧客も「効果が約束されているなら」と導入に前向きになる傾向が見られます。

またアナリティクス(予測分析)とAIの力を借りて、精度向上とリスク低減にも努めています。シミュレーションは前提条件次第で結果が変わりますが、ビッグデータ解析により過去の気象データや消費パターンからブレ幅を示すことで、「最悪でもこれくらい、良ければこれくらい」という期待値レンジの提示など、より納得感のある説明も可能になってきました。将来的には、AIが各案件のリスクプロファイルを分析し「このケースは補助金適用漏れの可能性あり」「こちらのプランなら10年後も得になる確率90%」といったアドバイスを自動生成してくれるかもしれません。こうした根拠ある提案を積み上げることで、再エネ提案に対するユーザーの信頼は着実に高まっていくでしょう。

新たなビジネスモデルとサービスアイデア

APIエコノミーとAIエージェントエコノミーの融合によって生まれる新サービスは、再エネ業界にとどまらず広範にわたります。最後に、考えられる収益モデルやビジネスモデル、新サービスのアイデアをいくつか紹介します。

  • エネルギーコンサルティングのサブスクリプション化: AIエージェントを用いたエネルギー管理サービスを月額課金で提供するモデルです。家庭向けには「AIエナジーアドバイザー」として電気代節約や脱炭素のアドバイスを行い、企業向けには工場やビルのエネルギー最適化を自動提案・実行する「バーチャルエネルギーマネージャー」として機能します。ユーザーは専門知識がなくとも常に最適な設定が維持され、提供側はAPI利用料と付加サービスで収益化する形です。

  • APIマーケットプレイスと収益シェア: ドメイン特化型APIが増える中、それらを統合提供するマーケットプレイスが成立する可能性があります。エネがえるAPIのようにトラフィック無制限で月額固定課金というモデルもあれば、1リクエストごと従量課金のAPIも混在するでしょう。プラットフォーム運営者は手数料収入、APIプロバイダはスケールメリットを得て、利用企業はワンストップで必要な機能を取得できるWin-Winのエコシステムです。特にエネルギー分野では、気象データAPI、需要予測API、炭素クレジット価格API等を組み合わせ、包括的な「エネルギーAPIバンドル」を提供するビジネスも考えられます。

  • BPO/BPaaSモデルの拡張: 前述した提案業務代行のBPO/BPaaSサービスは、まさに業界の痛点を突いたモデルです。単発従量課金(1件1万円〜)・Web発注・最短即日納品という柔軟かつ即応性の高い形で、再エネ導入プロジェクトの部分または全部をアウトソースできます。今後このモデルをさらに発展させ、金融機関向けに融資審査用のレポート作成代行や、自治体向けに地域エネルギー計画策定支援など、ターゲット別のサービス展開も見込まれます。蓄積したデータとノウハウを基にコンサルティング要素を盛り込めば、高付加価値なBPaaS(Business Process as a Service)として継続収益を上げることも可能でしょう。

  • データ駆動型の新サービス: 再エネ普及に関連して発生するデータ(発電量、消費量、取引価格など)は今後爆発的に増えます。これらを活用した新サービスも期待されます。例えばエネルギーデータ信用スコアのような仕組みです。企業や家庭のエネルギー効率やCO2削減努力をスコアリングし、金融機関が融資条件に反映させたり、保険商品に組み込むといった応用です。API経由でデータ提供・評価が行われ、AIがリスク分析して価格設定する…というように、エネルギーと金融が融合したサービスはSDGs時代ならではのビジネスチャンスです。

  • 規制対応・標準化コンサル: 脱炭素関連の規制や報告義務(例:TCFD開示やカーボンフットプリント表示など)が強化されていく中、企業は対応に追われています。ここにもAPI×AIの出番があります。様々な規制情報を集約したコンプライアンスAPIとAIアシスタントを組み合わせ、各企業が自社データを入力すれば必要な届出書類や対策リストを自動生成してくれるサービスなどが考えられます。業界標準のない分野では、事実上のデファクト標準となるツールを早期に提供できれば大きな優位性となるでしょう。エネがえるの補助金APIは先んじて全国約2,000件の補助金情報を提供し始めましたが、このようにニッチでもニーズの高いデータを標準化・API化するビジネスは今後増えていくはずです。

規制・標準化の動向と展望

最後に、APIとAIの融合領域に関する規制や標準化の動向にも触れておきます。日本においては、エネルギー分野でのデジタル活用を促進すべく官民での取り組みが進んでいます。経済産業省は再エネのアグリゲーション実証事業において、発電量・需要量の高度な予測手法とクラウドシステムの開発を支援しました(国際航業も2021年に参画)。この流れは、電力システム改革×デジタルの文脈で、将来的に需給データや取引データの標準API化につながる可能性があります。既に欧州などでは電力消費データをAPIで取得できる「グリーンボタン」構想や、スマートメーター標準インタフェースの議論が進んでおり、日本も追随するでしょう。

AIエージェントに関しては、その自律性ゆえの課題(暴走リスクや意思決定の透明性など)に対する規制が議論されています。しかし一方で、適切なガバナンスの下で社会実装を加速させる方向性も示されています。国レベルでのガイドライン策定や、業界団体によるAIエージェントの倫理規程づくりが行われ、「人間とAIの協調原則」のような標準が策定される可能性があります。これらは直接的に再エネには関係ないように見えますが、エネルギー管理をAIに任せる際の責任の所在や、データ連携のセキュリティ標準など、実は重要な基盤となります。

ポジティブな側面では、政府主導の補助金データ標準化や、地域ごとの再エネポテンシャルデータ公開などが推進されれば、前述のAPIサービスがさらに利便性を増すでしょう。標準化が進めば、異なるシステム間でデータがシームレスに行き交い、AIエージェントもより正確な判断が可能になります。2030年代に向けては、「エネルギー×デジタル」のグローバル基盤作りに日本が積極的に関与し、国内で磨いたエコシステム(例えばエネがえるAPI+AIのようなモデル)を海外展開していくことも期待されます。アジア新興国など、日本の再エネノウハウとDX技術を必要とする地域は多く、政策的なバックアップ次第で巨大な市場ポテンシャルが開けるでしょう。

まとめ:エージェント×APIが加速するグリーン革命

2025年から2035年にかけて訪れるであろうAPIエコノミーとAIエージェントエコノミーの融合は、再生可能エネルギー普及という社会課題の解決において強力な原動力となります。高速で正確なシミュレーションAPIが経済性の“見える化”を瞬時に行い、賢いAIエージェントが誰にでも分かりやすく最適解を提案してくれる世界——そこでは、これまで「なんとなく不安」で導入を躊躇していた個人や企業も、一歩踏み出しやすくなるでしょう。事業者側も、人手不足やノウハウ不足をテクノロジーで補完しつつ、顧客対応に余裕を持って取り組めるようになります。実際に、日本発のエネがえるAPIは多くの企業に採用され、その効果を証明しています。シミュレーション時間が数十分の一に短縮され、料金データ管理の負担も軽減、さらには補助金情報や申請業務までAPIとアウトソーシングで包括支援する体制が整いつつあります。これは日本の再エネ業界にとどまらず、世界のグリーントランスフォーメーションに通じるモデルケースと言えるでしょう。

重要なのは、この変化を単なるテクノロジーの話に留めず、人々の行動変容とビジネス価値創出につなげることです。APIとAIを組み合わせた仕組みを実装するだけでなく、それを使って「何を成し遂げるか」が問われます。幸いにも、脱炭素という大義の下では多くのステークホルダーが協働しやすい土壌があります。企業、行政、消費者、それぞれがメリットを享受できる形でデジタル技術を活用し、エコ×エコ(Ecology × Economy)の好循環を生み出すことができれば、2030年代の未来は決して暗いものではありません。

最後に、本記事で述べた内容は最新のデータや事例に基づいています。以下に主要なファクトチェック結果と情報源をまとめます。テクノロジーと市場動向は日進月歩で変わりますが、根底にある「課題をイノベーションで解決する」という精神は普遍です。APIとAIの融合が、日本そして世界のグリーン革命を力強く後押ししてくれることを期待してやみません。


ファクトチェックと参考情報まとめ(出典)

  • APIエコノミー市場規模: 2016年のIBM予測によれば、APIエコノミーは2018年に世界で2.2兆ドル(約233兆円)超の規模に達するとされた。この数字はAPI連携が生む経済効果の大きさを示す一例です。

  • AIエージェント市場規模: BCGの分析では、2030年に約520億ドル規模(2024年比で10倍以上)に成長すると予測されています。年平均成長率45%という急拡大が見込まれています。

  • 再エネ営業現場の課題: 産業用太陽光・蓄電池営業担当者への調査で、8割超が顧客にシミュレーション精度を疑われた経験ありと回答しました。これが商談停滞の一因となっています。

  • ChatGPT活用意向: 太陽光・蓄電池導入検討者の約80%が**「ChatGPTでシミュレーションできれば使いたい」**と回答し、AIによる提案支援への期待の高さが示されています。

  • エネがえるAPI導入効果(高速化): 太陽光大手エクソル社では、自社システムにエネがえるAPIを導入し、シミュレーション時間が従来2〜3時間から5〜10分に短縮されました。提案業務の効率が飛躍的に向上した事例です。

  • エネがえるAPI導入効果(料金データ活用): パナソニック社の家庭向けEV充電サービスでは、エネがえるAPIにより全国の料金プランデータ管理負担を削減し、安価な時間帯での充電最適化を実現しています。

  • 補助金APIサービス: 2025年提供開始の「自治体スマエネ補助金データAPI」は約2,000件の補助金情報を網羅し、企業のシステムに容易に統合できるようにしました。情報収集・更新の手間を大幅に削減します。

  • エネがえるBPO/BPaaS: 国際航業とエコリンクス社が提携し、提案〜設計〜申請を1件1万円〜で代行、最短即日納品する業務代行サービスを開始。人材不足・負荷軽減に対するソリューションです。

以上の情報は、本記事執筆時点(2025年6月)で入手可能な信頼性の高いデータおよび発表に基づいています。今後も技術と市場動向の変化に応じてアップデートを行い、常に最新の知見に基づいた情報提供に努めて参ります。

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