中小規模の太陽光販売施工店向けPPA・リース・サブスクと自己所有のハイブリッド粗利最大化戦略

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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中小規模の太陽光販売施工店向けPPA・リース・サブスクと自己所有のハイブリッド粗利最大化戦略

太陽光発電や蓄電池への需要が高まる中(※販売担当者の約8割問い合わせ増を実感)、中小規模の販売施工店・工務店にとって**「いかに少ない労力で高い粗利益を確保するか」は死活的なテーマです。

近年、新たな販売スキームとしてPPAモデル(第三者所有による電力販売契約)やリース、サブスクリプション(初期費用0円の月額サービス)が登場し、従来の自己所有モデル(お客様が設備を購入、補助金活用の有無を含む)と並んで選択肢が広がっています。

では、販売施工店サイドは、どの販売スキームをどう組み合わせれば、最小の努力で粗利を最大化できるのでしょうか?

本記事では、年商10~100億円規模の太陽光販売施工事業者を例に、各スキームのメリット・デメリットや収益モデルを徹底比較し、業界の常識に囚われない戦略を提言します。さらに日本の再エネ普及を阻む根本課題にも踏み込み、世界最高水準の知見を交えて解決策を探ります。

中小販売施工店が直面する課題:需要増加と提案業務の重圧

電気代高騰や脱炭素ニーズを背景に、住宅・企業問わず太陽光発電や蓄電池への関心は急速に高まっています。その一方で、「太陽光・蓄電池システムは安くない投資だからこそ、顧客は慎重に費用対効果を見極めたい」という現実があります。販売施工店の営業担当者は「経済効果を明確に示し、顧客の不安を解消すること」が求められますが、これには以下のような課題があります。

  • 人材・ノウハウ不足: 調査では販売施工店の約90%が「技術人材の不足」に悩み、約80%が「提案書作成の負担で顧客対応が遅れる」と回答しています。電気代削減シミュレーションや設計提案には専門知識が必要ですが、人材不足や社内ノウハウの分断が深刻化しているのです。

  • 経済効果試算への苦手意識: 太陽光・蓄電池導入後の経済効果計算に約7割の営業担当者が苦手意識を持ち、根拠や信頼性をもって算出できていると自信を持つ人は4割弱にとどまります。また、もし15秒で様々な経済効果がわかるシミュレーター」があれば使ってみたい7割以上が答えました。これは裏を返せば、現状の試算業務が煩雑で時間がかかりすぎていることを示しています。

  • 提案スピードと精度の両立: 電力料金高騰で顧客の関心が高まる今、「初期段階から具体的な数値を迅速に示す」ことが商機を逃さないカギです。実際、産業用太陽光の導入検討企業の約7割が「初回提案時に具体的数値を提示してほしい」と望んでいます。しかし人手で詳細試算を行えば時間がかかり、スピードと精度のバランスに苦慮するケースが多いでしょう。

  • 顧客の不信感: 提案を受けた顧客側にも課題があります。産業用自家消費型太陽光を導入しなかった企業経営者の約7割は「提示された経済効果シミュレーションの信憑性を疑った経験がある」といいます。また、提案時にシミュレーションを見せても「効果を十分に想像できなかった」という声が4割以上ありました。つまり、せっかく試算を出しても「本当にその効果が出るのか?」と半信半疑のままでは契約に至らないのです。

こうした課題を踏まえれば、営業効率を上げつつ顧客の信頼を得るための工夫が不可欠です。そこで重要になるのが、販売スキーム(契約モデル)の選択と提案手法の改善です。

販売スキームの種類と違い:自己所有モデル vs PPA・リース・サブスク

まずは太陽光発電・蓄電池の主な販売スキームを整理しましょう。それぞれ顧客負担の方法や収支構造が異なり、提案のしやすさや利益形態にも影響します。

  • 自己所有モデル(買い切り): 顧客が設備を購入し、自社所有とする一般的な方法です。初期費用がかかりますが、設置後の発電電力は自家消費も売電もすべて顧客の利益になります。補助金がある場合は導入コストが下がり顧客メリット増

    【ポイント】販売施工店にとっては設備・工事代金を一括で回収できるためキャッシュフロー良好粗利は機器販売益+工事利益となります。補助金対応では申請手続きなど付帯業務がありますが、受注率向上効果は大きいです(補助金活用で「受注率が高まる」と感じる販売店は89.1%、そのうち約35%は受注率1.3~1.4倍アップと回答)。

  • PPAモデル(第三者所有型・電力販売契約): Power Purchase Agreementの略。顧客ではなく第三者(PPA事業者)が設備投資し、顧客施設に太陽光を設置。顧客は電気代の形で太陽光発電の電力を購入する契約です。初期費用0円で導入でき、設備の保守も事業者側が担うのが一般的です。契約期間後は設備を無償譲渡されるケースもあります。PPAでは余剰売電収入はすべて事業者のものとなるケースが多いです。つまり顧客は設備の所有権を持たず、あくまで電力を買う立場です。

    【ポイント】販売施工店が自社でPPA事業者となる場合、長期にわたり電力売上という形で収益を得られますが、設備投資資金や管理負担が大きくなります。一方、PPA事業者と提携して顧客にPPAプランを紹介する形なら、自社は初期施工収入(設置工事代金)や紹介手数料を得られます。顧客にとって初期負担ゼロのため提案受注のハードルは低く、特に資金力の乏しい法人や個人にも導入しやすいモデルです。(※ただし、リスクをPPA事業者側が負担し長期で投資回収をするため、10~15年の長期でPPA契約を締結するケースも多く、施設や屋根の耐久性や老朽化、世帯主の年齢などで与信が通らずPPA契約が断られるケースも多いです。)

  • リースモデル: リース会社等が設備を購入し、顧客はその設備を借りて使う契約です。初期費用は同じく0円で、契約期間中は毎月定額のリース料を支払います。特徴は顧客が発電した電力を自由に使える点です。自家消費分に追加料金はかからず、さらに余剰電力が出れば売電収入は顧客のものになります。契約終了後は設備が譲渡されることが多く、最終的に顧客所有になります。

    【ポイント】販売施工店はリース会社経由で代金を受け取る形となり、実質的には通常の売り切りと同様の収益を確保できます(リース会社への斡旋マージンを調整した価格設定にもよりますが、基本的に機器・工事代は回収できます)。顧客にとっては初期負担ゼロ+発電メリット享受という利点があるため、資金不足の住宅や中小企業にも提案しやすいです。

  • サブスクリプション(太陽光サブスク)モデル: 広義にはリースと似ていますが、より柔軟な月額サービス契約と捉えるとよいでしょう。例えば初期費用無料でパネルを設置し、毎月定額料金を払って太陽光設備を利用するプランです。期間中のメンテナンスや保険が付帯し、契約満了時に無償譲渡または延長可能、といった内容が一般的です。いわゆる「0円ソーラー」と呼ばれるサービスがこれに該当し、近年いくつかの新興企業が住宅向けに展開しています。

    【ポイント】販売施工店自身がサブスク事業を行うにはPPA同様ハードルが高いですが、外部のサブスクサービスに販売店として加盟し、自社顧客に紹介するモデルがあります。この場合、施工店は設置工事代金の収入と、契約成立に対するコミッションを得られます。顧客が途中解約した際のリスク対応などはサービス提供会社側が負うため、施工店にとっては比較的リスク少なく台数を伸ばす手段となります。

以上のように、自己所有か第三者所有か、支払い方法が一括か月額かでスキームは大きく異なります。簡潔に比較すれば:

  • 初期負担: 自己所有(補助金なし)は高額、補助金ありならやや軽減。リース・PPA・サブスクはいずれも0円スタート。

  • ランニング費用: 自己所有はローン金利やメンテ費用程度。リース・サブスクは毎月定額、PPAは使った分の電気代として変動費。

  • 発電メリットの帰属: 自己所有・リース・サブスクでは顧客が発電恩恵を享受(売電収入や電気代削減)できます。PPAでは顧客は電気代節約のみ(売電益は事業者取り分)。

  • 設備所有権: 自己所有は顧客、リース・PPA・サブスクはいずれも契約期間中は事業者所有で、満了時に顧客譲渡が一般的。

収益モデルと粗利への影響:どのスキームが儲かるのか?

販売施工店から見た場合、それぞれのスキームで収益の得方と粗利率が変わります。また、成約難易度や業務負担も異なるため、「楽に儲かる」度合いも変わってきます。以下では、年商規模別に想定されるビジネスモデルを踏まえつつ、各スキームの収益特性を比較します。

自己所有モデルの収益:即時利益型だが成約数に限界も

収益パターン: 機器販売利益+工事施工利益を即時に計上できます。粗利率は扱う機器や下請け構造によりますが、一般的な住宅向けで15~30%前後、産業用案件でも一桁台後半~20%程度が多いでしょう。例えばシステム価格200万円の住宅案件で粗利20%なら1件あたり40万円の粗利を得られます。年商10億円規模(住宅向け中心)であれば、平均単価250万円の案件を年間400件ほど施工するイメージで、粗利益は約2億円(20%計算)となります。

メリット: 何と言ってもキャッシュ回収が早いことです。資金繰りに余裕がない中小企業でも、工事完了と共に売上計上できるため回転率が良好です。また、顧客サポート義務はメーカー保証やメンテナンス契約を除けば限定的で、長期の責任を負わない点も気楽です。補助金を活用できれば顧客負担を下げて提案しやすくなり、成約率向上に繋がります(調査では「補助金活用で受注率が高くなる」と感じる販売店は9割近くにのぼりました)。

デメリット: 大きな課題は初期費用の高さによる成約難易度です。特に補助金なしで数百万円の投資となると、興味はあっても踏み切れない顧客も多く、「検討はするが契約に至らない」案件が発生しがちです。また一度売ってしまえばリピートまでは間が空く商品特性上、売上を継続拡大するには常に新規顧客を開拓する必要があります。営業コスト・人件費を考慮すると、粗利=即利益ではありますが労力当たりの効率は必ずしも高くありません。年商規模を伸ばすには人員増や販売エリア拡大など投資が必要で、労力も指数的に増えてしまう傾向があります。

規模別展開: 小規模事業者(年商10億円以下)ではこの即時回収モデルが主流でしょう。年商50億円規模でも、法人案件をいくつか手掛ける場合を除き大半は買い切り販売収益です。規模が大きくなるほど「販売件数の頭打ち」に直面しやすく、粗利率を維持しつつ件数を伸ばすことの難易度が上がります。そこで次に紹介する新たなスキームを組み合わせることが重要になります。

PPAモデルの収益:累積利益型だが初期負担&リスクあり

収益パターン(自社がPPA事業者の場合): 顧客への電力販売収入が柱です。例えば20年間のPPA契約で「○円/kWh」で電力供給する場合、投資回収と利益確保のために設定価格をシミュレーションします。粗利率という概念は薄れますが、投資利回り(IRR)やNPVで判断します。仮に初期費用1000万円の設備で年間発電収益(電力販売+売電)100万円、経費差引き80万円得られるとすると、単純計算で回収に12.5年その後は年間80万円が利益となります。期間全体では粗利960万円(80万円×12年)となり、一見売り切りより多く見えます。しかし20年という長期スパンで得るため、現在価値に割り引けば大きな利潤ではありません。むしろ設備故障リスクや契約途中解約リスクも含めると、利回りは低めに設定せざるを得ないのが現実です。PPA案件単体のIRRは5~10%台が一般的で、大胆な設定をしても太陽光の場合せいぜい15%程度でしょう。

収益パターン(他社PPA紹介の場合): 金融機関やリース会社、専業PPA事業者に案件を仲介する形です。この場合、販売施工店は初期の設置工事代金を一括で受け取れます。金額としては通常の販売時と同等か、機器が事業者支給なら工事費相当です。また、契約に応じた紹介手数料O&M(保守管理)委託費用を年単位で受け取る場合もあります。こちらは売り切りとストック収入のハイブリッドとも言え、初期にある程度利益を確保しつつ、少額でも継続収入が見込めます。

メリット: PPAモデル最大の利点は、顧客の初期負担ハードルをゼロにできることです。費用面で導入を諦めていた層にもアプローチでき、市場拡大につながります。特に法人向けでは「設備投資計画に入っていないが電気代削減したいというニーズにマッチし、提案が刺さりやすくなります。年商100億円規模の企業であれば、自社資金でいくつかの大型PPA案件を抱えることで、毎年安定した電力売上を積み上げられるという長期的メリットも得られます。また、仮に自社でPPA投資が難しくても、提携スキームを用意しておくことで「逃していた案件や顧客」を取り込める*効果があります。顧客から見れば「初期費用0で即エネルギーコスト削減」という魅力的な提案となるため、成約率が大幅に向上する可能性があります。

デメリット: 一方でPPA自社運用は事業リスクとの戦いです。初期投資の回収に長時間を要し、資金繰り悪化のリスクがあります。複数案件を回せばメンテナンス対応やトラブル対応など運用コスト・手間も馬鹿になりません。また電力単価の将来変動(市場連動型契約であれば尚更)や、契約期間中の顧客倒産・設備撤去といった不確実要素も抱えるため、慎重なリスク管理が必要です。中小規模(年商10~30億円)の施工店が自力でPPA事業に踏み込むのは資本的にハードルが高く、現実的には他社との協業が不可欠でしょう。紹介モデルの場合は収益面でどうしても一件あたりの粗利が小さくなります。自社販売なら100万円得られた利益が、紹介だと工事20万円+手数料数万円…といった具合に減るケースもあります。そのため大量の案件をこなさないと総利益は伸びづらい点に注意が必要です。

規模別展開: 年商が大きい企業ほどPPAへの参入メリットは高まります。例えば年商100億円クラス財務体力がある会社なら、自社発電所を複数保有して発電事業者になる道も選択できます。一方で年商10億円前後の小規模店では無理に自己資金PPAを行うより、金融機関・ファンドとの連携でリスクを移転し、自社は確実な工事収益を得る戦略の方が安全です。この場合でも、PPAスキームを「扱える」という看板は営業上強みとなります。提案の引き出しが増えることで競合差別化にもなり、トータルの成約件数増加による利益増が期待できます。

リース・サブスクモデルの収益:手堅い即利益+安定収入

収益パターン(リース): リース会社が絡む場合、販売施工店は機器一式をリース会社に販売する形で売上計上します。したがって基本的には自己所有モデルと近い粗利を確保できます。違いがあるとすれば、リース会社への紹介フィー等で若干値引きが発生する程度でしょう。むしろ分割払いを嫌う個人顧客にはリースを勧め、即時の現金回収顧客満足(支払い平準化)の両立が図れます。サブスクリプションサービス会社と提携する場合も似ており、工事費用をサービス会社から受け取り、プラスで契約件数に応じたコミッションが入るケースが一般的です。

収益パターン(自社サブスク): 例えば自社で太陽光リース会社を立ち上げ、顧客から月額料金を集金するモデルです。これはPPAの電力販売と違い「設備の貸付収入」となります。月額料金設定次第ですが、顧客の電気代節約額以下の料金に抑えるのが通常なので、大きな利益を乗せにくい面もあります。ただし契約数が増えれば毎月ストック収入が積み上がり、長期的な収益基盤ができあがります。自社サブスクはPPA自社運用と同等以上にハードルが高いため、大手企業や新電力・メーカー系が中心で、中小施工店ではあまり現実的ではありません。

メリット: リース紹介やサブスク提携の場合、自己資金負担なく売上計上できるのが大きな魅力です。販売施工店から見れば実質「売り切りと同じ感覚」で案件を取れるうえ、顧客には初期0円メリットを提供できます。先述の通り受注率向上は確実で、補助金なしでも**「初期ゼロなら導入したい」層を取り込めるのです。また自社で資本投下しない分、在庫リスクや回収リスクも低いです。顧客が途中解約してもリース会社が残債を請求する立場なので、施工店の損失にはなりません(契約不履行時に設備撤去作業が発生する程度)。サブスク提供会社との提携では、将来的にその会社から案件紹介を受けられる可能性もあります。例えば全国展開のサブスク企業が地域の施工パートナーとして加盟店に案件発注する仕組みもあり、自社集客だけでなく外部から仕事を安定確保できるメリットも見逃せません。

デメリット: リース・サブスク提携モデルの弱点は、単体案件ごとの利益がマージン調整の影響でやや圧縮されることです。また顧客との関係も、自社で完結する買い切りより一歩距離があるため、クロスセル機会(蓄電池や追加工事の提案など)が減る恐れがあります。サブスクサービスでは契約条件やメンテナンス体制もサービス提供側に依存するため、何かトラブルがあった際の顧客対応が間接的になりがちです。自社ブランドで囲い込みたい戦略には馴染まないかもしれません。しかし多くの場合、それらデメリットは増加する受注件数で補って余りあるでしょう。特に年商10~30億円規模で営業エリアが限定的な施工店にとって、地場マーケットを掘り起こす切り札になります。顧客の紹介紹介で広がる住宅営業では「〇〇電機さんなら初期費用ゼロプランもやってるらしい」と評判になれば追い風となり得ます。

規模別展開: 比較的小規模な企業ほどリース・サブスク提携の導入メリットは大きいでしょう。逆に年商100億円級ともなると、自社で独自ローンプランを用意したり、金融機関とオリジナルの分割払い商品を立ち上げる例も出てきます。その規模ではブランド力もあり顧客からの信用も得やすいため、敢えて他社サービスに頼らず自社ローンやエネルギーサービス会社を作るケースもあるのです。もっとも、そうした独自展開には専門ノウハウが欠かせず、リスクも伴う挑戦になります。多くの中堅規模事業者にとって、信頼できる外部サービスを活用する方がトータルでの労力対効果は高いでしょう。

最小努力で粗利最大化するポートフォリオ戦略

ここまで各スキームの特徴を見てきましたが、結論として「これ一本に絞ればOK」な万能策は存在しません。 むしろ自社の規模や強みに応じてスキームを組み合わせ、ポートフォリオを最適化することが重要です。以下に、年商規模別に考えた最適戦略の一例を提案します。

年商10億円前後の小規模施工店の場合

推奨ポートフォリオ: 自己所有モデル(補助金活用) + リース/サブスク提携(+規模に余裕が出ればPPA紹介も)

理由: まずは即金型の自己所有販売キャッシュを稼ぐのが基本です。地元自治体や国の補助金情報をフル活用し、補助金ありプランで顧客負担を下げて契約率アップを図りましょう。実際、2024年度に補助金活用営業を行いたい販売店は87.0%にも上り、また「補助金を使うと受注率が上がった」と感じている営業担当者は89.1%います。補助金は面倒と敬遠せず、積極的に提案に織り込むのが得策です。その際、国際航業が提供開始したような自治体スマエネ補助金検索サービス」等を使えば最新の補助金情報も簡単に入手できます。これは全国約2,000件の補助金データベースで、調査では約89.8%の販売店担当者が「ぜひ導入したい」と回答しています。こうしたツールを使いこなし、「お客様の地域なら〇〇補助金が使えて○万円お得になります」と即答できれば信頼度もアップし商談がスムーズになるでしょう。

次に、リースやサブスクの提携プランを自社メニューに加えましょう。営業トークとして「現金購入以外にも月々払いのプランがあります」と付け加えるだけで、懐事情で諦めかけたお客様を引き止められます。自社の粗利は多少下がっても成約数の増加でカバーできますし、何より市場占有率を高めることが将来的な紹介・口コミを呼び込みます。小規模店は大手に比べ広告宣伝費も限られるため、成約件数を増やして地域での評判を得ること自体が最大のマーケティングです。「太陽光なら◯◯電機さん、初期ゼロもやってるよ」と地域に浸透すれば、次々と相談が舞い込みます。その意味で、利益率にこだわりすぎず「薄利多売+補助金+リース提案」で母数を増やす戦略は有効です。

PPAに関しては無理に自社保有する必要はありませんが、問い合わせがあれば逃さない体制を整えましょう。例えば地元銀行や信販会社と提携し、太陽光PPAスキームを紹介できるようにしておけば、「初期投資ゼロで電気代削減したい」という中小企業ニーズに応えられます。施工店自身は工事代を確実に回収しつつ、顧客は電気代メリットを得るWin-Winです。実際、太陽光販売企業の調査でも「顧客に具体的な経済メリットを示すこと」が導入意欲を高めるカギとされており、PPAやリースといったプランも経済メリット提示の一環として提案段階から比較検討させると良いでしょう。重要なのは、小規模だからといって高度なスキーム提案を尻込みしないことです。外部リソースを積極的に頼ることで、自社だけでは難しい提案も実現可能です。

年商50億円前後の中堅施工店の場合

推奨ポートフォリオ: 自己所有モデル(住宅~低圧中心) + PPA紹介(高圧案件) + リース/サブスク(住宅補完) + BPO/アウトソーシング活用

理由: 中堅規模になると、住宅から低圧企業、場合によっては高圧需要家まで幅広い顧客層を相手にします。それぞれに最適なスキームを当てはめていく発想が必要です。まず、住宅や小規模事業者向けには基本の自己所有モデルを主軸に据えます。特に2025年以降は新築住宅への太陽光義務化(東京都など)も始まり、住宅分野での買い切り需要は底堅いでしょう。一方で、電力使用量が多い工場・ビルなど高圧需要家にはPPAモデルを前面に出す営業が有効です。「設備費0円・電気代即削減」であれば財務ハードルが下がり、役員決裁も通りやすくなります。実際、産業用太陽光の未導入企業の半数以上が「信頼できるシミュレーション結果があれば、負担額次第で導入したかった」と述べています。PPAならその負担額=0にできるわけですから、導入意欲を後押ししやすいのです。

中堅規模になると自社で複数案件を捌く体制が整っている一方、案件数の増加で業務負荷も飛躍的に高まります。営業担当者からは「ヒアリングや現地調査、提案書作成にかかる手間が大きい」と悲鳴が上がりがちです。ここで鍵となるのが業務効率化ツールBPO(業務プロセス外部委託)の活用です。例えばクラウド型の経済効果シミュレーションツール「エネがえるを導入すれば、専門知識がなくても誰でも精度の高い試算書を自動作成できます。実際、同ツールは大手電力会社や有名メーカー含め全国700社以上に導入されており、営業現場で威力を発揮しています。さらに近年では「提案業務まるごと代行」するサービスも登場しています。国際航業とエコリンクス社が提携した「エネがえるBPO」では、基本設計やレイアウト図作成、経済効果シミュレーション報告書、補助金申請書類まで専門チームが代行し、1件あたり1万円~で請け負うとのこと。中堅クラスでも全国展開企業に比べれば人員リソースは限られますから、繁忙期だけ外注するなど柔軟に活用してみましょう。アンケートでも「業務負荷の外部委託に興味がある」と回答した販売店が多く(EV提案では80.6%)、アウトソーシングはもはや恥ではなく賢い経営判断と言えます。

以上をまとめると、中堅施工店は「自前+外部サービス」のハイブリッド経営で粗利最大化を図ります。自前で稼ぐ部分(販売利益)は引き続き重要ですが、外部リソースを使って営業効率を上げたり市場を拡大することで、結果的に少ない労力で売上・粗利を底上げできるのです。提案段階から補助金シミュレーション・PPAメリット試算・電気料金プラン比較などあらゆるシナリオを瞬時に示せれば、顧客も安心して意思決定できます。その積み重ねが成約率アップ→売上増→粗利増に直結します。

年商100億円規模の大手施工店の場合

推奨ポートフォリオ: 全方位戦略(自社PPA事業+大量販売+新サービス展開) + 保証スキーム導入 + DXの徹底

理由: ここまで来ると業界でもトップクラス。すでに上記すべてのスキームを取り入れている可能性が高いですが、さらに収益最大化と差別化を狙う段階です。具体的には、自社でのPPA/発電事業への本格参入が視野に入ります。例えばエネルギーファンドを組成して顧客企業の屋根にどんどん自社所有の太陽光を載せる、あるいは遊休地にメガソーラーを開発して電力販売収入を得るといった動きです。蓄電池やEVの普及も進めば、VPP(仮想発電所)事業など付加価値サービスにも乗り出せるでしょう。大手企業ほど金融機関や投資家との連携もしやすく、スキーム自体を自社グループ内に構築してしまう強みがあります。

しかし忘れてならないのは、いかに大手でも顧客があっての商売ということです。顧客が不安に思えば契約には至りません。そこで差別化の決め手として投入したいのが経済効果シミュレーション結果の「保証」です。2024年には国際航業と日本リビング保証が協業し、国内初の「経済効果シミュレーション保証」サービスが登場しました。これはシミュレーション通りの発電量の一部が得られなかった場合に損失を補填する保険のような仕組みで、「効果をコミットする営業を可能にします。調査でも、産業用営業担当者の84.2%が「シミュレーション結果に保証が付けば成約率が高まる」と期待を寄せています(※Vol.19調査)。また前述のように顧客側も「保証があれば購入したい」と約6割が回答しています。大手販売店であれば、この保証付き提案を標準装備することで他社にない安心感を売りにでき、多少価格が高めでも選ばれる強みとなるでしょう。保証制度導入には条件がありますが、「エネがえる」で精密な試算を行い、そのデータを元に保証引受を行うという形で提供されています。自社単独では真似できないサービスも、エコシステムに参加する形で活用すれば武器になります。

さらに大規模事業者はデジタルトランスフォーメーション(DX)による徹底的な効率化・省力化が利益率向上のカギです。営業支援システムの内製化や、API連携による自動見積もりシステム構築など、投資すべきところには積極投資しましょう。例えばエネがえるのAPIを導入すれば、自社のWebサイト上でお客様自身が経済効果をシミュレーションできる仕掛けも作れます。実際に大手新電力やメーカーがこのAPIを続々導入しており、自社サービスに組み込んでいます。顧客がWebで試算→興味喚起→営業担当に問い合わせ→詳細提案→契約、という流れができれば、営業マンが一軒一軒飛び込み訪問する時代とは比べ物にならない効率で案件を生み出せます。DX投資は一見コストに映りますが、人件費高騰や人材不足を補う施策として長期的には粗利改善に寄与するでしょう。

以上、年商規模別に戦略を述べましたが、共通して言えるのは「顧客と自社、双方にメリットが大きい提案を追求する」ことです。販売施工店が楽に儲かるだけで顧客が損をするようなスキームは持続しません。逆に、顧客にとってメリットが明確で納得できる提案は、必ずや契約という形で自社の利益にも跳ね返ってきます。昨今の再エネ業界トレンドや各種調査結果が示すのは、経済メリットの「見える化」と「リスク低減」が普及のカギだということです。販売側はその点を踏まえ、「スピーディーに見える化し、必要なら保証で裏付け負担の選択肢も柔軟に」という三拍子揃った提案力を身につけるべきでしょう。

まとめ:キーとなる施策と今後の展望

最後に、本記事で取り上げたポイントを整理し、事実確認した内容をサマリーとしてまとめます。

  • 需要増に対応する営業力強化: 電気料金高騰などで顧客ニーズは高まっており、住宅営業担当者の約8割が「問い合わせや商談が増加している」と感じています。一方で提案業務の負担も増しており、販売店の約88%が営業業務に課題を抱えています(シミュレーション作成や現調など)。⇒ 解決策: DXツール導入(例:誰でも15秒で経済効果試算できる「エネがえる」など)により、約7割の営業担当者が感じる試算業務の苦手意識を軽減。実際、営業目標を達成した担当者は48.2%がエネがえるのようなシミュレーションツールを活用しており、未達成者より21.3ポイント高い活用率でした。

  • 販売スキームの多様化: 自己資金で購入する従来型に加え、PPAリース・サブスクといった初期0円モデルを用意することで、幅広い顧客層をカバー可能。リースとPPAの違いは、前者は顧客が発電メリット(売電収入等)を得られるのに対し、後者は電力料金として支払うだけで売電益は事業者側になる点など。⇒ 実績: 初期費用0円プランの提案は受注率向上に直結。補助金活用時と同様、導入ハードルを下げる工夫が成約数増加につながる(補助金活用で「受注率が高まった」販売店は89.1%)。

  • アウトソーシングの活用: 人手不足解消と提案スピード向上のため、提案書作成や設計業務のBPOサービスを活用。調査では**「負担業務の外部委託に興味あり」が販売店の多数派で、EV/V2H提案では92.5%が何らかの課題を実感し、80.6%が外注に関心を示しています。⇒ 例: 経済効果試算・補助金申請代行の「エネがえるBPO」は1件1万円~最短即日納品と高い即応性を持ち、提案業務の負荷軽減と商談機会の増加を両立します。

  • シミュレーション結果の保証: 顧客の不安を取り除き契約率を上げるため、経済効果シミュレーションの保証制度を導入。住宅・産業問わず、「シミュレーション結果の信憑性」が購入判断のボトルネックになっており、産業需要家の約7割が過去に試算結果を疑った経験があるというデータも。⇒ 動向: 2024年、国内初のシミュレーション保証サービスが提供開始され、シミュレーション通り発電量が出なかった場合に損失補填が可能となった。調査ではこの保証があれば「導入したい」需要家が約6割に上ること、営業側でも84.2%が成約率向上を期待していることから、今後業界標準的な提案オプションになる可能性があります。

  • 規模別の最適戦略: 小規模事業者ほど補助金+リース提案で量を取りに行き、キャッシュ重視の経営を。中規模ではPPA紹介などで市場拡大を図りつつ、IT活用やBPOで効率追求。大規模では自社PPA事業化保証サービスで差別化し、API連携などDXで営業生産性を飛躍的に向上させる。【実証】経済産業省も再エネ普及拡大へ各種制度拡充を図っており、2024年度は前年度比+8,000億円規模の再エネ関連補助予算要求がなされています。こうした追い風を捉えつつ、自社の強みを最大限発揮できるスキームの組み合わせを選ぶことが肝要です。

日本の再生可能エネルギー普及を加速する上で、「初期費用の壁」「効果への不信」「人材不足」という三大課題が浮かび上がりました。しかし本稿で述べたように、それらへの解決策はすでに現れ始めています。テクノロジーとファイナンスの力を賢く借りながら、中小の販売施工店でも世界最高水準の提案を行える時代です。最後に強調したいのは、顧客視点の価値提供を忘れないことです。脱炭素社会の実現には、売り手である私たちが提供するソリューションがお客様にとって「本当に得かどうか」が何より重要です。その本質を見失わず、最小の努力で最大の効果を生む戦略を実践していきましょう。

【ファクトチェック・参考情報サマリー】

  • 太陽光・蓄電池への問い合わせ増加について:「住宅用太陽光・蓄電池を販売する営業担当者の約8割が問い合わせ数や商談数の増加を感じている」(独自レポートVol.27)。

  • 営業担当者の試算業務負担について:*「太陽光・蓄電池導入後の経済効果試算に苦手意識がある」営業が約67.6%、「15秒で効果がわかるシミュレーターを導入したい」*営業が75%以上(独自レポートVol.5)。

  • 補助金活用の効果について:*「2024年に補助金を活用した営業を行いたい」販売施工店は87.0%、「補助金活用で受注率が高いと感じる」担当者は89.1%(独自レポートVol.13)。補助金情報取得ニーズも高く、「Webで補助金を簡単検索できるツールを導入したい」*が89.8%。

  • リース vs PPAの顧客メリット比較:リースは毎月定額料で利用、発電した電力は無料で使え売電収入も得られる。PPAは月額料金不要だが自家消費分にも料金支払いが必要で売電収入は得られない

  • 人材不足とBPOについて:「再エネ販売会社の約9割が技術人材不足に悩み、約8割が提案書作成の負担で顧客対応が遅れると回答」(エネがえるBPO発表より、独自レポートVol.24調査)。EV/V2H提案でも92.5%が課題を感じ、80.6%が外部委託に興味あり(独自レポートVol.29)。

  • シミュレーションツール活用の効果:「営業目標を達成した担当者の48.2%が経済効果シミュレーションツールを活用、未達成者より21.3ポイント多い」(独自レポートVol.26)。ツール導入企業は大手含め全国700社以上。

  • 顧客のシミュレーション不信と保証ニーズ:「導入未決定の企業の約7割が提示シミュレーションの信憑性を疑った経験あり」、しかし*「信頼できるシミュレーションがあれば(負担次第で)導入したかった」が半数超(独自レポートVol.9)。また「シミュレーション結果に保証が付けばその販売店から購入したい」と考える需要家が約6割(Vol.18)。営業側でも「保証があれば成約率が上がる」*と84.2%が期待(Vol.19)。こうした背景から経済効果シミュレーション保証サービスが開始されている。

以上、引用情報を基に記載内容の正確性を確認済みです。各種データは国際航業「エネがえる」ブログの独自調査結果および関連プレスリリースに基づいています。今後も制度改正や市場動向によって最適解は進化していくと考えられますが、常に顧客メリットと自社効率の双方を追求する姿勢があれば、どんな変化にも柔軟に対応できるでしょう。

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
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