住宅用太陽光・蓄電池の最適価格を探る。買い手と売り手双方がWin-Winとなる価格戦略とは?

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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住宅用太陽光・蓄電池の最適価格を探る。買い手と売り手双方がWin-Winとなる価格戦略とは?

現状の住宅用太陽光発電・蓄電池市場と価格設定の課題

住宅用の太陽光発電システムや蓄電池への注目は、近年ますます高まっています。その背景には、電気代高騰カーボンニュートラルへの社会的関心の高まり、さらに東京都の新築住宅太陽光パネル義務化などの政策動向があります。

実際に、2024年から2025年にかけて住宅用太陽光発電の導入費用は下げ止まりからやや上昇傾向にあり、平均設置費用は約1kWあたり29.5万円と報告されています。標準的な住宅で必要とされる3~5kWのシステムでは、おおよそ90万~150万円前後の初期費用がかかる計算です。蓄電池も加えると合計150~300万円程度になるケースが一般的で、決して小さな投資ではありません。

このような高額な導入費用に対し、「果たして元が取れるのか?」という不安は購入検討者に共通するテーマです。国際航業株式会社(KKC)の調査では、太陽光や蓄電池の導入を見送った需要家の過半数以上「投資回収できるかどうか」を懸念事項に挙げており、ROI(投資対効果)や回収期間の不明瞭さが再エネ設備導入のボトルネックになっていると指摘されています。別の調査でも、住宅向け太陽光・蓄電池の営業を受けた消費者の57.0%が投資回収への懸念を抱いているとの結果があり、買い手側の心理的不安は大きな課題です。

一方で、売り手(販売施工業者)の視点から見ると、現行の販売モデルにはそれぞれ異なる悩みがあります。大きく分けて以下のような販売形態が存在し、それぞれ価格設定上のメリット・デメリットがある状況です。

  • 共同購入(グループ入札)モデル: 複数の消費者がまとまって業者に見積もりを取る方式で、スケールメリットにより購入価格が抑えられるのが特徴です。例えば自治体や地域コミュニティが主導する共同購入事業では、市場平均よりも安い単価で導入できるケースが各地で報告されています。買い手にとって費用負担が軽減される一方、売り手側は利幅が小さくなりがちです。利益率確保が難しいため積極的に参加しない業者もおり、このモデルだけでは市場全体の普及促進に限界があります。

  • 第三者所有モデル(PPA・リース・サブスクリプション): いわゆる「初期費用0円ソーラー」やPPAモデルでは、設備投資は第三者(事業者)が行い、消費者は電気代やサービス料として月々支払う仕組みです。買い手は初期の金銭的負担がゼロで太陽光発電を始められるという大きなメリットがあります。しかしその代わり、契約期間中は発電した電力を一定料金で買い取る、あるいはリース料を払い続ける必要があり、長期的な総支払額では自己所有より割高になる場合もあります。また、販売店(地場の施工業者)は、このモデルでは設備の所有権を持たないため紹介手数料や工事代程度しか収益が得られないケースが多く、ビジネスとしての旨味が小さいという声もあります。すなわち、PPAモデルは消費者リスクを低減する一方で、インストーラーにとっては単発売り切りの利益が得られず収益構造が薄利になりがちなのです。

  • 直接販売・施工モデル(自己所有): 消費者が太陽光パネルや蓄電池システムを自費で購入し、自宅に設置するオーソドックスな形態です。訪問販売やハウスメーカー経由、家電量販店経由など様々なチャネルがあります。このモデルでは、売り手は機器代金と工事費をまとめて請求でき、収益の裁量が最も大きい反面、価格設定はピンキリです。市場には1kWあたり20万円台前半~30万円以上まで幅広い見積もりが存在し、買い手から見ると適正価格が見えにくい状況があります。とりわけ訪問販売などでは相場より高い価格提示となるケースも散見され、消費者が売り手の粗利(マージン)を見極めづらいのをいいことに高値契約になってしまうリスクがあります。結果として購入者の投資回収期間が不必要に長引き、導入ハードルが上がるという問題を招きやすいのです。

以上のように、「買い手に有利なモデルほど売り手の利益が薄く、売り手主体のモデルほど買い手に割高感が生じがち」という構造的なジレンマが、住宅用太陽光・蓄電池市場には存在しています。この価格設定のミスマッチこそが、市場の持続的な成長を阻む根源的課題と言えるでしょう。

では、どうすれば買い手・売り手双方にとって納得感のある「最適価格」を実現できるのでしょうか? そのヒントを探るために、まずは買い手と売り手それぞれの視点から課題を深掘りしてみます。

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買い手の視点:消費者は投資回収期間とROIをどう判断するか?

住宅用太陽光発電や蓄電池の購入を検討する消費者にとって、最も気になるのは「この投資は何年で元が取れるか」というポイントです。投資回収期間(単純回収年数)は、初期費用を電気代削減額や売電収入で相殺できるまでの年数として算出されます。またROI(Return on Investment、投資収益率)やIRR(内部収益率)といった指標で、他の投資商品と比較する方もいます。一般的に、日本の住宅用太陽光発電では10年前後での回収を一つの目安と考えるケースが多いと言われます。これはかつてのFIT(固定価格買取制度)の買取期間10年と関係しており、「10年で設備費用を回収できれば合格」という感覚が広まっているためです。

実際のところ、太陽光発電の経済性電気料金の削減効果売電収入によって左右されます。例えばあるシミュレーション記事によれば、関東エリアで3kWの太陽光パネルを設置した場合、自家消費で年間約6.6万円の電気代削減、さらに余剰売電で年間約6.6万円の収入が得られる可能性があるとされています。

合計年間13万円ほどの経済効果が見込める計算になり、初期費用約86万円(3kW, 新築の場合)約6~7年で回収できる可能性が高いと試算されています。もちろん地域や日照条件、電力単価によって変動しますが、電気代・燃料代が高騰傾向にある昨今では、従来より短い期間で投資回収できるケースも増えてきました。

蓄電池については、経済効果の評価がやや複雑です。蓄電池単体では高額な割に電気代削減効果が限定的なため「元が取れない」と言われがちですが、それでも太陽光とセットで電気代が下がるからという理由で購入に踏み切る消費者が4割以上いることが調査で分かっています。実際、国際航業の調査(Vol.16)では蓄電池購入者の85.6%が満足しているとの結果も出ており、経済性以外の付加価値(停電対策の安心感や環境意識の充足など)も購入動機になっているようです。

それでもやはり、大多数の消費者にとって経済的メリットの裏付けは重要です。前述のとおり、過半数が投資回収への不安を感じているうえ、提示されたシミュレーション結果の信憑性を「疑ったことがある」人も75.4%にのぼるというデータがあります。シミュレーション結果が楽観的すぎるのではないか、本当にその通りの削減効果が出るのか――こうした疑念が晴れない限り、消費者は慎重にならざるを得ません。

ここで鍵となるのがシミュレーションの精度と説明力です。「数字で具体的に示してほしい」というニーズは強く、産業用の調査ですが約7割の導入検討企業が初期段階から具体的な数値提示を求めているという結果もあります。住宅分野でも同様に、「大体◯年で元が取れそうです」ではなく「〇〇円の初期費用に対し年間△△円の効果、補助金適用で回収期間○年」といった具体的かつ根拠ある説明が求められます。買い手の心理としては、その数字が信頼でき、かつ自分にとって許容できる範囲であれば購買意欲が一気に高まりますし、逆に数字があやふやだったり回収期間が長すぎれば購入を躊躇するでしょう。

つまり、買い手側の最適価格レンジは「想定される電気代削減効果等から計算して十分に短い回収期間になる価格」と言い換えられます。経験則では、補助金なども含め10年を切る回収期間であれば前向きに検討する家庭が多く15年以上かかるようだと二の足を踏む傾向にあります。売り手側としては、このラインを一つの目安にしながら提案価格を検討することが求められるのです。

売り手の視点:適正な粗利と成約率のバランス

次に、販売施工業者(売り手)の視点から「最適価格」を考えてみましょう。売り手にとって理想的なのは、自社の利益(粗利)が確保できる十分な価格でありながら成約率が高く案件を獲得できる価格でもあることです。しかし現実には、利益率と成約率はトレードオフの関係にあります。価格を高く設定すれば1件あたりの利益は増えますが契約獲得は難しくなり、価格を下げれば利益は減るが件数は取りやすくなる――この板挟みで頭を悩ませている経営者は多いでしょう。

住宅用太陽光の場合、売り手の原価には機器代(金額の大半を占めるパネルやパワコン等)と工事施工コスト、人件費営業経費などが含まれます。大手メーカー品を使うか廉価な海外製を使うかでも原価は変わりますし、下請け施工に出すか自社職人で賄うかでもコスト構造は違います。概算ではありますが、1kWあたり20万円台後半の販売価格の場合、仕入れ・工事等原価はその7~8割程度とも言われ、粗利率は20~30%前後が一つの目安になるようです(※実際の値は各社の経営努力や仕入れ交渉力、販売チャネルによって上下します)。

売り手が利益を追求するあまり価格を吊り上げすぎると、先述のように買い手のROIが悪化して成約率が下がるというリスクがあります。例えば本来25万円/kW程度で提案できる案件を強気に40万円/kWで提示すれば、利益率は高くとも多くの顧客は敬遠するでしょう。また最近ではインターネットで相見積もりを取る消費者も増えており法外な高値では契約が取りにくくなっています。

一方で、採算ギリギリの安値(極端な場合は赤字覚悟の価格)で契約を取りに行けば、成約は取れるかもしれませんが事業として長続きしません。売り手にとって持続可能な「適正粗利」がきちんと載った価格で、なおかつ顧客に選んでもらえる範囲内――この両立こそが肝心です。

売り手側のもう一つの課題は、提案業務の負担とリソース確保です。価格戦略とは直接関係ないように見えますが、密接に絡んできます。というのも、低価格路線で数を追う戦略を取るならより多くの見込み客に迅速に提案を回す必要があり、そのためには営業効率を上げなければなりません。

一方、高単価でじっくり一件ずつ落としていく営業スタイルであれば、一件あたりにかける時間が長くなります。実際、太陽光・蓄電池販売業者の約88.2%が提案業務に何らかの課題を感じており、特に「ヒアリングや現地調査」に労力がかかりすぎるといった声が上がっています。限られた人員で多くの案件を裁くには、提案書作成やシミュレーション計算にかける時間を短縮し、省力化する工夫が不可欠です。

この点、昨今は売り手を支援するクラウドサービスやツールも登場しています。例えば国際航業の「エネがえる」は、太陽光・蓄電池の経済効果を簡単に算出できるSaaSで、誰でも専門知識なしに需要家向け提案書を自動作成できるのが売りです。700社以上の販売施工店や大手メーカーが導入していると言われ、業界トップクラスのシェアを誇ります。

こうしたツールを使えば、従来は数日かかっていたROI・回収期間の試算がわずか10分で完了し、提案資料をスピーディーに提示できます。事実、調査でも営業目標を達成した担当者の48.2%が経済効果シミュレーションツールを活用しており、未達成者より21.3ポイントも多かったとの結果が出ています。これは裏を返せば、精度の高いシミュレーションを武器にした提案が成約率向上に直結していることを示唆しています。

売り手に必要なのは、「適正な粗利額 × 高い成約率」を両立するポイントを見極めることです。それは同時に「顧客にとって納得できる投資効果 × 自社にとって十分な利益」を両立する価格帯でもあります。

では具体的に、そのポイントをどう見出すか? 次の章では、価格設定の最適化を図るためのシミュレーションモデルについて考えてみます。

最適価格シミュレーションモデルの考案:Win-Winの価格帯を算出する

買い手・売り手双方の視点とデータを踏まえ、双方にとって最適な価格帯を見いだすシミュレーションモデルを構築してみましょう。イメージとしては、以下の要素を織り込んだ計算フローです。

  1. 基本入力データの設定: まず、システム容量(kW)、機器構成、設置条件、電力料金プラン、補助金額などを入力します。これにより年間発電量や電気代削減額、売電収入などのシミュレーションが可能になります。たとえば5kWの太陽光+8kWh蓄電池システムで、年間発電量◯◯kWh、自家消費率◯◯%、電気代単価○○円/kWh、などといった前提条件を固めます。

  2. 原価と希望利益率の設定: 次に、売り手側の視点で原価コスト(機器代・工事費用の合計)を把握します。仮に原価を100万円としましょう。また、事業として最低限確保したい粗利額または粗利率を決めます(例えば粗利20万円=20%が目標など)。

  3. 価格レンジの試算: ここからが本番です。シミュレーションツール上で販売価格をあるレンジで変動させてみます(例:システム一式で120万円から160万円まで、あるいはkW単価にして20万~27万/kW程度の範囲)。それぞれの価格に対し、以下の指標を算出します。

    • 買い手側指標: 投資回収期間(年)、年間純利益(電気代削減+売電-ローン返済等)ROI(年間メリット÷初期費用)など。

    • 売り手側指標: 粗利益額(価格-原価)、粗利益率(粗利額÷価格)。

    • 市場反応指標: 想定成約率(%)。価格が上がるほど成約率は下がり、下げれば成約率は上がるはずですが、その関係性を何らかのデータや経験に基づきモデル化します。例えば過去の商談データやアンケート結果から、「回収期間○年以下なら成約率△%、○年超えると成約率が極端に落ちる」等の曲線を設定します。

  4. Win-Win条件の判定: 上記の計算結果を一覧にすると、価格ごとの買い手メリットと売り手メリットのバランスが見えてきます。買い手側は回収期間が短いほど嬉しく、売り手側は粗利が大きいほど嬉しいわけですが、成約率が極端に低ければ机上の利益は絵に描いた餅です。したがって、成約率も考慮した実質的な期待値を評価します。例えば「期待粗利=粗利益額 × 成約率」という指標を考えると、ある価格帯で期待粗利が最大化するポイントが見つかるかもしれません。また買い手にとっても、その価格帯ならROIが一定以上で納得感がある、という条件を付与します。両者の条件を満たす共通部分こそがWin-Win価格帯です。

  5. 最適価格レンジと成約率シミュレーション: 上記により導かれた価格帯について、改めて「○○万~○○万円で提案すれば、回収◯年・ROI◯%が見込まれ、成約率は△%程度になる」といったシミュレーション結果を提示します。売り手はそのレンジ内で価格設定すればよく、値引きやオプション追加などで微調整も可能です。このように幅を持った最適価格帯として示すことで、現実の商談でも柔軟に対応できるようにします。

具体例で考えてみましょう。仮にシステム原価が120万円、補助金後の最低適用価格を120万円(粗利ゼロ)~最大提案価格160万円(粗利40万円)と設定したとします。シミュレーションの結果、130万円(粗利10万円)のプランでは回収期間8年・想定成約率80%150万円(粗利30万円)では回収期間12年・想定成約率50%といった値が得られたとします(※数字は仮定)。このとき期待粗利は、130万円案で「10万円×0.8=8万円」、150万円案で「30万円×0.5=15万円」と算出され、後者の方が高くなります。一方で150万円案は顧客にとって回収12年となり、心理的にはやや長期です。最適解の一つは、中間の140万円程度(粗利20万円)で、回収10年・成約率65%程度を見込むプランかもしれません。この場合期待粗利は「20万円×0.65=13万円」とまずまずで、買い手側も10年という区切りなら許容しやすいラインです。

もちろん、成約率の算定は業態や営業力によって変わりますし、一概に単純化できません。しかし、重要なのは価格設定を感覚や勘だけでなくデータに基づいて行うことです。経験豊富な営業担当者ほど、「この条件なら大体○割はクロージングできる」という肌感覚を持っています。そこにシミュレーションによる客観的な裏付けを加えれば鬼に金棒です。営業会議でも根拠ある価格戦略を議論できますし、何よりお客様に対して「この価格であれば○年で元が取れると試算しています」と胸を張って説明できます。

加えて、このモデルには将来的な拡張性もあります。例えば機械学習を用いて実際の過去商談データから価格と成約率の関係を学習させれば、より精緻な予測モデルが構築できるでしょう。電力価格の将来変動シナリオを織り込んだモンテカルロシミュレーションでROIのレンジを示すことも可能です。さらには、顧客ごとの属性(例えば環境意識が高い人は回収年数に多少関係なく導入する傾向がある等)を加味してセグメント別の最適価格を提示するなど、応用の幅は広がります。

重要なのは、この「最適価格シミュレーション」自体を提案プロセスに組み込むことです。言い換えれば、価格交渉も含めた提案全体をデータドリブンに最適化するという発想です。これにより、売り手は必要以上の値引きで利益を削ることなく、買い手は適正価格で高い納得感を得られる──まさにWin-Winの関係が生まれます。

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データ活用とツールによる提案力強化

上述のようなシミュレーションモデルを実現・運用するには、信頼できるデータとそれを素早く処理できるツールが不可欠です。幸いなことに、昨今は再エネ分野のDXが進み、様々なデータサービスやAPIが利用可能になっています。

例えば国際航業の「エネがえる」シリーズでは、最新の全国約3,000プランの電力料金プランデータ全国約2,000件の補助金データを網羅したデータベースを提供しています。これらはAPI経由で取得可能で、シミュレーションにも反映できます。つまり「地域ごとの電気代単価」や「自治体補助金額」まで織り込んだ精密な経済効果試算エネがえるAPIを用いればシステム化でできるのです。補助金情報は毎年変わりますが、最新データを活用すれば「○○市の補助金△△万円適用後の自己負担額は○○円です」といった具体的提案が可能になり、提案の説得力が増します。実際、補助金情報の効率的な収集・活用は営業現場の負担でしたが、こうしたサービスにより提案効率化と成約率向上が支援されています。

また、EPC事業者や大手販売会社向けにはシミュレーションエンジンを自社システムに組み込むためのAPI提供も進んでいます。大手太陽光メーカーのネクストエナジー社(API活用事例)や商社のエクソル社(API活用事例)など有力企業が続々とエネがえるAPIを採用して独自シミュレーターを開発している例もあります。業界全体でデータ連携による提案高度化が進んでいる証と言えるでしょう。

売り手側にとって嬉しい副次効果として、提案業務の工数削減があります。前述の国際航業調査(Vol.26)では、営業未達成者の30.8%が「提案書を作成しない(できていない)」と回答したのに対し、達成者ではその割合が7.3%に留まっています。裏を返せば、提案書すら出せず機会損失している営業マンが少なくない状況があります。これは人手不足やノウハウ不足によるものですが、クラウドツールを活用すれば1件あたりの提案書作成時間を大幅短縮でき、提案書未提出といった機会損失を防げます。さらに国際航業ではBPOサービス(提案業務の代行)まで提供しており、経済効果試算・設計・補助金申請などを1件から丸ごとアウトソーシング可能にしています。こうしたサービスを使えば、営業担当者が不得手な経済シミュレーションも専門家任せにでき、社内のスキルギャップを埋めつつ効率的に案件獲得が可能になります。

要するに、データとツールをフル活用することで「適正価格で迅速かつ説得力ある提案」が実現できます。成約率向上に寄与するのはもちろん、顧客満足度の高い契約につながるため紹介やリピートにも好影響を及ぼします。売り手にとっては利益と信用、双方を得られる理想的な営業スタイルと言えるでしょう。

信頼性への対策:シミュレーション結果の保証というアプローチ

いくらシミュレーション精度を高めデータを駆使しても、最終的に顧客がそれを信じてくれるかという壁が残ります。先に触れたように、多くの消費者がシミュレーション結果に半信半疑である現状を踏まえると、「その数字、万一外れたらどうするの?」という不安にどう応えるかが課題です。

この点で近年注目されているのが、経済効果シミュレーション結果の「保証」サービスです。2024年には国際航業と日本リビング保証株式会社が業務提携し、日本初の「経済効果シミュレーション保証」を開始したとのニュースがありました。これは、エネがえるで算出したシミュレーション結果に基づき太陽光・蓄電池を導入した場合に、実際の年間発電量がシミュレーション上の想定を下回った際、その差による損失相当額を保証するものです。具体的には、対象機器(太陽光パネルや蓄電池)の故障や性能不良等で期待発電量に届かなかった場合に年間発電量保証を行い、住宅用の場合最大1,000万円まで補填する内容となっています。期間も原則10年間と長期にわたり、太陽光発電の主要期間をカバーしています。

この保証サービスの狙いは明確で、「シミュレーション通りの経済効果をコミット(約束)する」ことにより顧客の不安を取り除くことです。保証付きであれば、消費者は提示されたROIや回収期間の数字をより信頼できるようになります。実際、調査によれば67.3%もの人が「シミュレーション結果が保証されるなら、その保証を提供する業者に発注したい」と回答しています。また65.4%が「保証があれば家族の同意を得やすくなる」と感じるとされ、高額な買い物ゆえに家族内合意が必要なケースでも後押し材料となることが分かります。営業担当者側から見ても、84.2%の産業用営業が「結果保証があれば成約率が高まる」と期待するなど、保証の効果はお墨付きです。

保証を提供するには当然コスト(保険料)が発生しますが、調査では4人に1人(26.4%)が保証のための保険料を払うことに抵抗はないと回答しています。保証の内容次第では費用負担も十分容認されるということでしょう。実際の国際航業のサービスでは、販売施工店向けの有償オプションとして日本リビング保証社への取次紹介という形で展開しており、導入事業者はそれを自社の商品メニューに加えることができます。シミュレーション+保証をセットで提案できれば、「数字にコミットしてくれるなら安心だ」ということで契約率アップに繋がるのは間違いありません。

実際、直近の2025年6月時点ですでに複数社の中小販売施工店が、エネがえるASP+保証オプションをセット導入し、続々と成約率アップ、成約数アップの成功事例を生み出している最中です。まだサービス開始直後ながら毎月成果が積み上がっており、今後数年で「シミュレーション+保証」を取り入れる販売店と、いまだExcelなどで保証なしでシミュレーションする販売店の差は否応なしに拡大していってしまうでしょう。

このような保証スキームの登場は画期的であり、業界の信頼性向上につながる取り組みです。ただし保証でカバーされるのは主に機器性能や設計上の想定との差異であり、電気代単価の将来変動やライフスタイル変化による自家消費率低下などは範囲外の場合もあります。とはいえ、少なくとも「太陽が思ったほど照らなかった」「機械がカタログ通り動かなかった」といったリスクを心配しなくて済むだけでも、顧客心理は大きく好転します。保証付きシミュレーションは、言わば売り手が自らの試算の正確さに責任を持つ宣言でもあり、それだけに提案の説得力が段違いです。

売り手にとっても、保証を付けることで多少高めの価格提示でも顧客が受け入れやすくなるというメリットがあります。保証には費用が伴いますが、それを価格に上乗せしても納得感が維持できれば収益性を損なわずに成約率だけ上げられる計算です。まさにエネがえるの経済効果シミュレーション保証が適正価格レンジの上限を引き上げる武器になり得るわけです。

総じて、「最適価格シミュレーション」+「結果保証」+「高速・高精度の提案ツール」という組み合わせは、住宅用太陽光・蓄電池ビジネスのゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています。買い手は安心して投資でき、売り手は適正な利益を確保しつつ受注を伸ばせるという理想的な循環が生まれるでしょう。

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まとめ:データと信頼に裏打ちされた最適価格で市場の持続的成長を

住宅用太陽光発電・蓄電池市場が今後も持続的に拡大し高成長を遂げていくためには、「高すぎず安すぎず」、買い手と売り手が共に納得できる最適な価格帯で取引されることが重要です。価格が最適化されれば、買い手は適切な投資判断のもと導入を決断しやすくなり、売り手も健全な利益を上げてビジネスを継続できます。その結果として導入件数が増え、市場全体が活性化し、ひいては再生可能エネルギーの普及拡大と脱炭素社会の実現に繋がっていきます。

本記事では、買い手側のROI志向と売り手側の利益志向を両立させる方策として、データ駆動型の価格シミュレーションモデル提案手法の高度化について考察しました。

具体的には、国際航業の調査データやツールを例に、信頼性の高いシミュレーションに基づく提案がいかに成約率を左右するかを見てきました。精度の高い経済効果シミュレーションと、その結果にコミットする保証というアプローチは、業界の慣習に一石を投じ、顧客のモヤモヤした不信感を払拭する切り口でした。事実、多くの消費者や営業担当者がそれを望んでおり、既に一定の効果を上げ始めています。

重要なのは、このような世界最高水準の知見や技術を活かしつつも、現場で「使える」形に落とし込むことです。難しい理論や数式も、ツールの裏側に隠れてユーザーにはシンプルな画面操作で結果が出るようにする――エネがえるをはじめとするクラウドサービスはその好例でしょう。

誰でもわずか数分で投資対効果を見える化できる仕組みは、中小工務店から大手メーカーまで幅広く活用され、営業現場の当たり前になりつつあります。これにより、業界全体の提案レベル底上げと顧客体験の向上が進んでいる点は見逃せません。

最後になりますが、日本の再エネ市場拡大には価格の透明性と適正化という本質的課題の解決が不可欠です。

本稿で取り上げた最適価格モデルは、まだエネがえるには未実装ですが、その課題に対する一つの解答です。データとテクノロジーを駆使して価格設定の妥当性を示し、さらに保証という形で責任を持つ――これを突き詰めていけば、「なんか高い気がする」「本当に元取れるの?」といったユーザーの迷いや不安は減り、納得ずくの契約が増えていくでしょう。そして買い手良し・売り手良し・社会良しの三方良しを実現する価格メカニズムが定着すれば、太陽光・蓄電池市場は真に持続可能な形で飛躍していくはずです。

 

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ファクトチェック済み要点サマリー

  • 住宅用太陽光発電の平均設置費用: 2024~2025年時点で新築住宅の場合1kWあたり約28.6~29.5万円が平均。5kWシステムなら約125万~150万円程度が相場。蓄電池(6~10kWh)とのセット導入では総額150万~250万円程度になる。

  • 消費者の投資回収懸念: 国際航業の調査で、導入を見送った需要家の半数超が「投資回収できるか不安だった」と回答。別調査でも回答者の57.0%が回収期間を懸念しており、経済性への不安が普及のボトルネックになっている。

  • シミュレーション提示と信用度: 太陽光・蓄電池の導入検討者の75.4%が、提示された経済効果シミュレーションの信憑性を疑った経験がある。信頼できる数字を示すことの重要性が非常に高い。

  • 迅速・精密な提案の効果: 営業実績比較調査では、目標達成者の48.2%がシミュレーションツールを活用しており、未達成者より21.3ポイント多かった。精度の高いシミュレーションが営業成果に直結していることがデータで示された。

  • 「エネがえる」による効率化: クラウド型シミュレーター導入により、従来数日かかっていたROI・回収年数計算がわずか10分で完了するようになった。提案書作成の時間短縮と信頼性向上に寄与し、営業効率と成約率アップを実現。

  • シミュレーション結果の保証サービス: 2024年に国内初の経済効果シミュレーション保証が開始。【保証内容】エネがえる試算に基づき導入した太陽光・蓄電池で発電量が想定を下回った場合、最大10年間(住宅は最長20年)不足分を補償。住宅用は上限1,000万円まで補填。これにより消費者の安心感が向上し、67.3%が「保証してくれるならその業者に発注したい」と回答。

  • 価格最適化の必要性: 共同購入やPPAなど既存モデルは片方に有利だともう片方に不利が生じやすい。買い手と売り手のWin-Winにはデータに基づく価格設定が不可欠。適正な粗利を確保しつつ、買い手にとってROIの良い価格帯を見極めるシミュレーションが鍵となる。

以上、引用データは信頼できる出典等に基づいており、本記事の分析・提案は最新の調査結果と業界事例を踏まえたものです。今後もデータに裏付けされた公平な価格設定が進むことで、日本の再エネ市場の健全な発展が期待されます。

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