自家消費型太陽光発電システムの設計 実践編その② 成約に繋がる提案、シミュレーション手法

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

自家消費型太陽光発電システムの設計 実践編その②

こんにちは!共伸興建で経営企画を担当している市川と申します。

今回は「自家消費型太陽光発電システムの設計 実践編その②」ということで、

「大量に電気を使う中規模工場の設計」をテーマにお話をしていきます。

本記事は当該動画を文章化したものとなっております。

画面を投影した説明に興味のある方はぜひ動画も併せてご覧ください。

 

■自家消費型太陽光提案の秘訣となる「比較」(予算・投資回収期間・電気代削減効果・累計電気代削減額)とは?

本記事での特徴は「比較」です。

私たちはお施主様より特にご指示を頂く前から、

「A案」「B案」「C案」などと複数案の提案を心がけています。

この背景にあるのは、

経営者様によって設備投資を意思決定する上での、

「判断軸」が異なるためです。

太陽光発電システムには主に以下の判断軸が存在しますが、

決裁者様によってどの軸を重要視するかが異なって参ります。

施主の判断軸.png

————————–

<判断軸>

・予算(初期費用)

・回収期間

・年間削減額(電気/CO2)

・累計削減額(電気/CO2)

————————–

 

そのため、判断軸が「回収期間」の場合だと、**案ですが、

「年間削減額」だと、**案がお勧めです。

などとお伝えができるように、

予め比較できるよう複数案の提案を心掛けている。

ということとなって参ります。

これにより相見積もりなどの実施を行わずとも、

企業様が安心して検討・意思決定が出来て参ります。

自家消費型太陽光に投資する決裁者(経営者層)が抱く課題とは?

自家消費型太陽光発電システムは決裁者様からすると大変高額な商品です。

決裁者様はいくら電気代が安価になる効果があるとはいえ、

決裁者様は常に以下の疑問が浮かんでいる状態になります。

————————–

<決裁者様が抱く課題>

・そもそも自家消費型太陽光発電システムを導入するべきなのか?

・導入するとしたら本当にそのメーカーでいいのか?

・この設計(PV容量/PCS容量)が妥当なのか?

・この業者を選んで大丈夫なのか?

————————–

 

このような決裁者様の導入課題に対しても、

しっかりご説明をする必要があるため、

比較表によって網羅的に設計方針がご提示できていることを、

決裁者様にご認識を頂く必要が出てくることとなります。

なお、比較表だけで解決できる課題と、

別途資料やご説明が必要な課題も御座います。

例えば「そもそも太陽光発電システムを導入するべきなのか」

については、比較表を案ごとにお伝えするのではなくビフォーアフターが適切。

つまり載せなかった場合のコスト削減的な観点などでの

「デメリット」をお伝えしていく必要が出て参ります。

この記事をお読みいただければ、

比較表で解決できる課題について、

お施主様にしっかりご説明ができるようになります。

これにより、お施主様が目的(判断軸)に沿った導入が出来ますので、

よりお施主様にとってプラスの提案ができる、

優良なEPC事業者への一歩にも繋がるかと思います。

まだご提案内容に自信がない企業様はぜひ最後までご覧下さい。

また、以下の通り仮想案件を設け、

その案件をもとに「エネがえるBiz」にて実際に設計を行うことで、

分かりやすくお伝えできればと思います。

自家消費型太陽光案件の概要(前提条件 PV容量170.3kW+PCS容量131kW)

今回使用するシミュレーションツールは「エネがえるBiz」です。

仮想案件の概要としては以下の通りです。

自家消費01.png

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<案件概要>

■稼働状況

・電気代:70万円/月

・非稼働日状況:土日休み(年休120日)

・非稼働日率:約30%

■建物状況

・屋根面積:1,000㎡

・有効屋根面積:800㎡

■全面設置時の設計

・システム容量:170.3kW

・PCS容量:131kW(過積載率130%)

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こちらを「エネがえるBiz」に入力していくことで、

発電量と太陽光発電ロス率などが出てきます。

実際の営業現場では上記の質問をお施主様よりヒアリングを行います。

これにより概算での算出が可能となります。

余談ですが、通常商社さまやメーカーさまへ、

太陽光発電システムの概算シミュレーション依頼を行うと、

非常に長い期間の待ち時間が発生します。

しかしながらお施主様は決裁者などの立場であればあるほど、

スピード感のある提案を求められます。

※普段からそのような提案スピードで慣れているため。

そのような環境下の中、「エネがえるBiz」を活用して、

概算でスピード感溢れる提案ができることは、

他社様と比べた競争優位に繋がることが期待できます。

エネがえるBizでのシミュレーション(屋根全面設置)

今回使用するシミュレーションツールは「エネがえるbiz」です。

前述の情報をもとに「エネがえるbiz」へ入力していきます。

自家消費提案2.png

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<エネがえるBizへの入力データ>

・システム容量:170kw

・PCS容量:124.95kw(50kw*2台、20kw*1台、4.95kw*1台)

・太陽光発電余剰率:44.1%

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上記が「屋根全面設置」をした場合の設計になります。

それでは、この設計はお施主様にとって適切なのでしょうか?

答えはNOだと考えています。

上記の「太陽光発電余剰率」とは、設置したパネルで発電できる量のうち、

「どの程度余ってしまうか(余分に発電してしまっているのか)」を表す指標です。

当該指標は現在売電が原則NGな自家消費型太陽光発電システムにおいて、

非常に重要となる指標です。

余剰率44%.png

当該指標についてこちらの企業様では、

「太陽光発電余剰率:44.1%」と出ており、

およそ4割も無駄(余分)に発電してしまっている状況になっています。

これは明らかに載せすぎです。

初期費用が増加するにも関わらず、

電気を捨てていることから経済メリット(電気代削減額)は改善しません。

それでは、なぜ「載せすぎ」と判断できるのか。

つまり「基準」についてですが、

それは当該企業様の稼働状況(休日などの非稼働日状況)を見ることで、

おおよその基準を作ることが可能です。

今回の企業様の稼働状況を改めて記載しましょう。

————————–

■稼働状況

・電気代:70万円/月

・非稼働日状況:土日休み(年休120日)

・非稼働日率:約30%

————————–

 

上記の通り、非稼働日日数は年休120日であることから、

約30%となります。

太陽光発電システムは蓄電池がない限り、

発電した電気は使い切れなかった場合無駄になります。

そのため休日に電気を使わないような工場などの施設の場合ですと、

「休日の割合(非稼働日率)=太陽光発電システムの余剰率」

となるケースが少なくありません。

今回のケースではそれが約30%となります。

この30%を超えた「太陽光発電システム余剰率」は、

平日の稼働日などであっても余計に電気を発電し過ぎているということになり、

結果として「無駄に電気を発電し過ぎている」の判断に繋がって参ります。

それではどうすれば良いでしょうか?

次項にて対策(別の設計)をお話していきましょう。

自家消費型太陽光提案における余剰率(太陽光発電による余剰電力率)の考え方(前提知識)

それでは「適切な余剰率」を検討していきましょう。

検討に際して、前提知識を以下の通り記載します。

前述の通り適切な「太陽光発電システム余剰率」は、

「休日の割合(非稼働日率)=太陽光発電システムの余剰率」

となるケースが少なくありません。

理由は前述と同様で「載せすぎると無駄」である点はもちろん、

載せる量が少なすぎると「割高」になる点もあげられます。

自家消費型太陽光発電システムは、

住宅用の太陽光発電システムと異なり、

「キュービクル(変電設備)」の改造費用が必要です。

これはパネルの多寡に関わらず存在する費用(部材・作業)です。

仮に当該費用が300万円かかるとした場合、

パネルを1枚しか設置しなくても300万円は固定でかかってしまうことになります。

つまりパネル1枚当たり追加で300万円かかってしまうという形になります。

一方でパネルを10,000枚設置する場合だと、

パネル1枚当たり追加で1万円かかるだけで済みます。

なんとその差は300倍。

これは極端な例ですが、パネル設置枚数が少ないほど、

割高になってしまうことはご理解いただけたかと思います。

このような状況下から、

「少なすぎず、多すぎず」が最適であることとなります。

自家消費型太陽光提案における適切な余剰率(太陽光発電による余剰電力率)の設計方法

それでは「適切な余剰率」を検討していきましょう。

前述の通り、

「休日の割合(非稼働日率)=太陽光発電システムの余剰率」

で考えるべく、当該企業様の非稼働日率を再度参照します。

————————–

■稼働状況

・電気代:70万円/月

・非稼働日状況:土日休み(年休120日)

・非稼働日率:約30%

————————–

非稼働日率は約30%となるため、

太陽光発電システム発電余剰率が30%程度となるまでPVの容量を減らしていきましょう。

やり方は「エネがえるBiz」上でPV容量を変更し、

シミュレーションボタンを押下するだけの簡単作業です。

さて、弊社側で実際に30%程度となったシステム設計は以下の通りでした。

————————–

<エネがえるBizへの入力データ>

・システム容量:130kW

・PCS容量:104.95kW(50kW*2台、4.95kW*1台)

・太陽光発電余剰率:34.8%

————————–

 

上記の設計であれば太陽光発電システムの余剰率が34.8%と、

実際の非稼働日率と近しい数値になりましたので、

適正だろうと判断をします。

 

この後、これを経済メリットなど重要な指標に置き換えて、

評価をしていくような格好になります。

 

ここで、本記事の冒頭にお伝えした、

「判断軸」の話が出てきます。

以下の通り再掲します。

 

—(再掲)—

 

太陽光発電システムには主に以下の判断軸が存在しますが、

決裁者様によってどの軸を重要視するかが異なって参ります。

 

————————–

<判断軸>

・予算(初期費用)

・回収期間

・年間削減額(電気/CO2)

・累計削減額(電気/CO2)

————————–

 

—(再掲 終了)—

 

この思想を基にして、

以下の通り比較表を作成しました。

方針

システム容量(kW)

発電
ロス率

回収
期間(年)

導入額★

節電額/年

導入kW単価

節電額/25ヵ年

投資対効果
の累計額

全面設置

170

44.20%

8.1

¥28,900,000

¥3,547,764

¥170,000

¥88,694,100

¥85,146,336

一部設置(多)

130

34.80%

7.4

¥23,400,000

¥3,170,024

¥180,000

¥79,250,600

¥76,080,576

一部設置(少)

50

18.60%

8.4

¥12,750,000

¥1,522,180

¥255,000

¥38,054,500

¥36,532,320

 

※参考までに、弊社が考える適切量よりもさらに少なくした(PV容量:50kw)案も併記しています。

各重要指標に対して、

優秀なセルについては黄色の背景に塗っています。

内容についてはいかがでしょうか。

結論、一部設置(多)の、システム容量130kwが優秀なように見えませんか?

もちろん企業様によって予算が存在している場合は、

もっとも安価な「一部設置(少)」に判断が傾く場合もありますし、

単純な削減額の規模を追い求める会社様だと、

「全面設置」をご選択される場合もあります。

ただしそれはあくまで、

経営者様の判断軸の差によるものなので、

どれが正解かなどはありません。

大事なのは、EPC事業者が責任をもって、

決裁者様が判断できるような情報を比較表として持っていくことであると考えています。

発電ロス落とし穴.png

自家消費型太陽光発電システムの設計 実践編その② まとめ

以上、今回は「自家消費型太陽光発電システムの設計 実践編その②」で、

「大量に電気を使う中規模工場の設計」についてお話をさせて頂きました。

内容についてはいかがでしたでしょうか。

比較表を用いることでお施主様に安心して頂ける確率は各段にあがります。

一方でお施主様側は複数案を検討できることを認識していないケースがほとんどです。

そのため、ぜひEPC事業者側からお伝えすることをお勧めします。

本記事でご紹介した「エネがえるBiz」については、2023年7月時点では「30日間の無料トライアル制度」も御座います。

操作項目も少なく、設計の人間ではなく営業の人間が触り、知識のない方でもすぐに営業シーンで活用できることから弊社ではすごく重宝しています。

太陽光発電システムの提案方法に困っていらっしゃる企業様ほど、是非一度お試し頂きたいサービスですのでどうぞご検討ください。

それではご覧いただき誠にありがとうございました。

動画でも本内容ご紹介しておりますので併せてご覧くださいませ。

共伸興建 市川

この記事の執筆者プロフィール – 自家消費型太陽光の販売施工エキスパート

執筆者

市川

経歴

EC運営からキャリア開始。その後、上場企業建築会社の事業企画(b2b、b2c)に従事。現在は、愛知県のEPC事業者 共伸興建で自家消費型太陽光発電システムの法人営業、代理店開拓、経営戦略、採用など事業全般に対して立ち上げから携わる。並行して、オウンドメディアのYouTubeチャンネルや太陽光関連セミナーの企画立案~講演も担当。

■所属企業

社名

株式会社 共伸興建(きょうしんこうけん)

創業

昭和55年10月

取締役社長

藍原 誠

事業内容

・太陽光発電システム設計・施工

・太陽光発電システム販売

所在地

・本社:愛知県稲沢市一色下方町62番地

・営業所:愛知県名古屋市中村区名駅1丁目1-1

免許・許可番号

・愛知県知事許可 第41828号

・電気工事業届出番号 第901010号

保持資格

・第一種電気工事士

・第二種電気工事士

・消防設備士(甲種4類・乙種7類)

・車両系建設機械(整地・運搬・積み込み用及び堀削用)運転技能講習

・労働安全衛生法による安全衛生教育

・高所作業車運転技能特例講習

・小型移動式クレーン運転技能特例講習

・玉掛け技能講習

・・・etc

Webサイト

https://www.kyoshin-kk.co.jp/

YouTubeチャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCFt2Qxvm0xBbPn-dENl-E9Q

著者情報

国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

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