オフグリッドは蓄電池で実現可能?その実態、システム例と費用に迫る

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

目次

オフグリッドは蓄電池で実現可能?その実態、システム例と費用に迫る

電力会社の送電網(グリッド)に頼らず、電力の自給率100%で生活する「オフグリッド」に関心を持つ方々は、

「一般家庭でもオフグリッドは実現可能なのか?」

「どの程度の蓄電池があればオフグリッドを実現できるのだろうか?」

「オフグリッド生活を実現するには、蓄電池を含めて費用はどのくらいかかるかな?」

といった、さまざまな疑問が浮かんでいることでしょう。

結論からいうと、一般家庭でも蓄電池を組み合わせながらオフグリッド(自給率100%)を目指すことは可能です。

しかしながら、通常と比べてかなりハイスペックな設備が必要となるため、以下のように初期費用もかなりの高額になってしまうのが実情です。

 

価格の面から言えば、671.4万円を即決できる方は少ないかと思います。とはいえ、数字だけを見てもあまりイメージが付かないですよね。

そこでこの記事では、以下のことを詳しく解説します。

この記事を読むとわかること

・オフグリッドとは何か、蓄電池を利用してどのように実現できるのか仕組み

・オフグリッドを実現するためのシステム例(蓄電池が無い場合・ある場合)と費用

・太陽光発電と蓄電池でオフグリッドを実現するメリット・デメリット

・完全オフグリッドは一般的な家庭では現実的ではない理由

・太陽光発電と蓄電池でオフグリッドを目指すべきか判断するポイント

 

「オフグリッドに魅力を感じている」「オフグリッドを実現したい!」という方はもちろん、「蓄電池があれば本当にオフグリッドなんて実現できるの?」と疑問を持っている方も、ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてみてください。

 

1.【基礎知識】オフグリッドと蓄電池の関係とは

「どうしたらオフグリッドを実現できるのか」「実現にかかる費用はいくらか」を解説していく前に、基礎知識として、オフグリッドと蓄電池の関係について解説していきます。

既にご存知という方は、この章を読み飛ばして「2. 蓄電池を用いてオフグリッドを実現する仕組み」から読んでいただいて問題ありません。

 

1-1. オフグリッドとは|電力自給率100%で生活すること

オフグリッドとは、冒頭でも述べた通り、電力会社の送電網(=グリッド)に頼らず、自分で作り出した電力で「電力自給率100%」の生活をすることをいいます。

狭義では「電線に繋がっていない状態」をオフグリッドということもあります。

ただし、電線を引かずに生活する「狭義のオフグリッド」は、万が一の事態に備えて長期的に電気を使わない生活を強いられるため、現実的には難しいでしょう。

実際には、電線は引き込んでおきつつ、できるだけ外部からの電力購入を避け、電力自給率100%の生活を追求する状態を目指すことになると考えられます。

 

1-2. オフグリッドの実現には蓄電池が欠かせない

オフグリッドを実現するためには、発電できない時間帯にも電力をまかなえるようにする必要があり、そのための蓄電池が欠かせません。

蓄電池とは、電力を蓄える機能を持った電池のことをいいます。

太陽光発電は、太陽光のエネルギーを電力に変換するシステムです。日中など太陽が出ているあいだにしか発電できません。

蓄電池がない場合、くもりや雨の日や夜間、早朝には発電できないため、電力を使うことができません。

一方、蓄電池があれば、日中に作り出した電力を貯めておくことができるため、発電できない夜間や曇り・雨の日にも電力を使うことができるようになります。

 

1-3. 太陽光発電+蓄電池を活用したオフグリッド事例が増えている

1-2で解説したような太陽光発電と蓄電池を活用したオフグリッド事例が昨今増えてきています。その理由には以下のようなものがあります。

・脱炭素(CO2削減)の実現に向けて、自然のエネルギーを活用した発電方法が注目されている

・地震や台風による停電が相次ぎ、電力を自給自足したいニーズが増えている

・電気代の高騰により、自家発電の経済メリットが高まっている

・蓄電池の性能アップ・普及とともに価格が下がってきており、オフグリッドの実現が現実的となってきた

実際、宿泊施設を中心に、オフグリッドを実現している事例が増えてきています。

ただし、一般家庭でオフグリッドを実現するにはまだ設備費用が高いなど、少々ハードルが高い状況となっています。

 

2. 蓄電池を用いてオフグリッドを実現する仕組み

ここからは、太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせてオフグリッドを実現する仕組みについて簡単に説明していきます。

仕組みがわかれば、実現のイメージに近づくことができるため、早速見ていきましょう。

2-1. 一般的な太陽光発電(蓄電池が無い場合)の流れ

まず先に、蓄電池が無い場合の一般的な太陽光発電システムの仕組みについて解説します。

蓄電池がない場合、電気を貯めておくことはできないため、発電した電気はその場で自家消費するか、使いきれなかった分を売電するかの二択となります。

以下の図の数字の流れを追うと、イメージしやすくなるはずです。

 

ただし、夜間や早朝、天気が悪い日には発電できないため、その際に必要な分は系統(電力会社)から電気を買うことになります。

以下の24時間の流れを模したグラフを見ると、夜間や早朝は系統が増えていることがわかりますね。

 

この 一般的な太陽光発電の例を踏まえて、次は蓄電池を組み合わせた場合を見てみましょう。

2-2. 太陽光発電+蓄電池の場合の電気利用の流れ

次に、太陽光発電システム+蓄電池を導入した場合の流れを解説します。

蓄電池がある場合は、発電した電力を蓄電池に貯めておくことができます。貯めておいた電気は、夜間や早朝などに放電して使うことができます。

以下の図の数字の流れを追うと、先ほどと異なり、蓄えた電気がさまざまなところに流れているのがわかるでしょう。

 

蓄電池がない場合には余った電力は売電するしか選択肢がありませんでしたが、蓄電池があれば貯めておいて後で使うことができるため、自家消費率を上げることができます。

上記の例では自家消費率(自給率)が56.18%と表示されていますが、これを「100%」にしたのが「オフグリッド」という状態です。

以下の24時間の流れを模したグラフで、青色の部分(系統すなわち電力会社から電力を購入している部分)をゼロにして、オレンジ色(太陽光からの自家消費)と緑色(蓄電からの自家消費)のみにすることができた状態が、「オフグリッド」を達成した状態となります。

 

3. 太陽光発電+蓄電池でオフグリッドを実現するシステム例

ここからは具体的に、太陽光発電システムと蓄電池を使ってオフグリッドを実現するシステムの例を紹介していきましょう。

なお、前提として、太陽光発電と蓄電池の組み合わせでオフグリッドを実現するには、かなり大掛かりな設備が必要になることをまずお伝えしておきます。

ここでは、イーロン・マスクがCEOを務める「テスラ」の家庭用蓄電池を使って、33日間のオフグリッド生活を実現させた事例を参考にしました。

参考:EVsmartBlog|テスラパワーウォール3台と太陽光発電を組み合わせて33日間のオフグリッド生活をしてみた

参考:サステナブルスイッチ|オフグリッドとは?太陽光発電+蓄電池で生活を実現[事例]

 

1カ月余りにわたり電力会社から電気を購入せずにオフグリッド生活を実現させたシステム構成は、以下の通りです。

 

【33日間のオフグリッドを実現したシステム構成】

太陽光発電システム

360ワットXシリーズパネル×36枚

(システム容量の合計:12.96kW)

家庭用蓄電池

テスラパワーウォール(蓄電容量13.5kWh)×3台

=合計40.5kWh

 

このシステム構成が、一般的な家庭に設置するシステムと比べて、一体どのくらい大規模なシステムかも確認しておきましょう。

一般的な家庭用太陽光発電システムの例

日本で普及している家庭用太陽光発電システムの容量は3kW〜5kW程度で、多くても10kW未満のシステムが一般的です。

オフグリッドを実現した上記システムではシステム容量が12.96kWなので、一般的なシステムよりかなり大規模であることがわかるでしょう。

また、家庭用蓄電池の容量は5kWh〜8kWhが一般的で、8kWh以上の蓄電池は大容量モデルといわれる大きさです。

オフグリッドを実現した上記システムでは、なんと40.5kWhです。通常の蓄電池と比べるとかなり大掛かりなシステムとなります。

 

 

比較してみるとその差は歴然です。一般的なシステムよりも4〜5倍も大きい規模のシステムを用意する必要があることが分かるでしょう。

 

4. 太陽光発電+蓄電池を用いてオフグリッドを実現する場合の費用

 

今度は、前章のようなシステムを実現するための費用について解説していきます。

具体的に、以下のようなシステム構成を実現するためにかかる費用を試算していきましょう。

【33日間のオフグリッドを実現したシステム構成】

太陽光発電システム

360ワットXシリーズパネル×36枚

(システム容量の合計:12.96kW)

家庭用蓄電池

テスラパワーウォール(蓄電容量13.5kWh)×3台

=合計40.5kWh

 

4-1. 約13kWの太陽光発電システムの導入費用は231.4万円

13kWの太陽光発電システムを設置する費用は、工事費含めて231.4万円と見積もることができます。

経済産業省の調達価格等算定委員会が取りまとめた資料によると、2023年の太陽光発電設置費用(10kW以上50kW未満)は、1kWあたり17.8万円が目安とされています。

※参考:調達価格等算定委員会|令和4年度以降の調達価格等に関する意見(PDF資料)

※この設置費用には、工事費も含まれます。

つまり、13kWの太陽光発電システムを設置するための費用は、17.8万円×13kW=231.4万円となります。

※なお、太陽光発電システム容量が10kWを超えた場合、売電価格が16円から11円(1kWhあたり)に下がります。ただし、FIT期間(売電価格が保証される期間)が10年から20年に伸びます。

詳しくは「FIT制度の2023年最新情報|太陽光発電を始めたい方向けに解説」の記事をご参照ください。

 

4-2. 蓄電池の導入費用は440万円(テスラパワーウォール3台)

テスラパワーウォール(蓄電容量13.5kWh)×3台の購入費用は、本体価格390万円+工事費用50万円=440万円と見積もることができます。

テスラ社のパワーウォールは大容量ながら価格が抑えられており、本体価格は130万円程度となっています。これを3台設置する場合、130万円×3台=390万円となります。

本体価格の他に、設置工事費用が50万円程度かかります。

※なお、テスラ社のパワーウォールは、蓄電池の補助金の対象外となるので注意してください。

 

4-3. オフグリッドを実現する太陽光発電+蓄電池システムは671.4万円

4-1と4-2を足すと、オフグリッドを実現するシステムの費用を出すことができます。

合計すると、231.4万円+440万円=671.4万円となります。

約700万円と、かなり高額な費用がかかってはしまいますが、上記のような設備を用意できれば、オフグリッド生活を実現できることが分かります。

オフグリッドを実現するための約700万円は果たして高いのか?

オフグリッドに700万円がかかると聞くと「高い!」と考える方も多いかもしれません。しかしながら、同じ電力量を電力会社から購入することを考えると、決して高いとは言い切れない金額です。

なぜならば、上記の13kWの太陽光発電システムを設置した場合に得られる年間15,600KWhの電力(※1)を、電力会社から買う場合には54.6万円かかる(※2)からです。

電力会社に支払う金額は、10年で540万円、15年で819万円となります。

オフグリッドを実現するとこの電気代が0円になることを考えれば、13年程度で元が取れる計算になります。

さらに売電収入を含めれば、もう少し早く元を取ることができるでしょう。また、補助金を使える場合には、設置費用も700万円より安くでき、もう少し早く元を取ることができます。

ただし、実際には、1家族が年間に消費する電力量は4,000kWh〜6,000kWh程度(※3)です。15,600kWhも使わないのが実情となりますが、オフグリッドを目指すには多めに電力を備えておく必要があるため、実際よりも多い発電量が求められます。

現実的に考えると、例えば、3世帯・4世帯で集まって住む集合住宅に太陽光発電+蓄電池を設置して、オフグリッド生活を目指す、ようなケースが、実現可能な形になるのかもしれません。

※1:太陽光発電で得られる年間発電量は、一般的に、1200kWhと見積もることができます。

そのため、13kWの場合、年間15,600kWhの発電量を得られます。

詳しくは、「太陽光発電 発電量」の記事をご覧ください。

※2:電力会社から電気を購入する場合の価格は、1kWhあたり35円が目安です(2023年5月時点)。

この35円というのは、経済産業省 資源エネルギー庁|2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?いくらになるの?を参考にしています。

つまり、15,600KWhの電気を電力会社から購入する場合、35円×15,600kWh=54.6万円が年間かかる計算です。

※3:世帯あたりの年間電気消費量は、環境省の「家庭でのエネルギー消費量について」のページの「地方別世帯当たり年間電気消費量(固有単位)(令和2年度)」を参考にしました。

 

5. 太陽光発電+蓄電池でオフグリッドを実現する3つのメリット

ここからは改めて、太陽光発電システムと蓄電池を活用してオフグリッドを実現するメリットについてお伝えしていきます。

 

5-1. 電気代がかからない

オフグリッドを実現して電力自給率100%を達成できれば、電力会社に支払っている電気代を0円にすることができます。

年々高騰している電気代の上昇を気にすることのない生活を送ることができるでしょう。

※ただし実際には、オフグリッドを目指しても、悪天候が続いた場合など一時的に電力会社から電気を購入せざるを得ない場面がどうしても発生するでしょう。

 

5-2. 災害による停電が起きても電気を使える

オフグリッドを実現すれば、地震や台風などで停電が発生し、電力会社からの電力供給が止まっても、蓄電した電力を使用することができます。

停電が夜間に起きた場合は、日中に貯めておいた電気を使えます。夜間にその電気を使い切ってしまったとしても、日中になればまた発電して電気を貯めておけるので、万が一停電が長期化しても安心です。

震災による停電は、復旧までに3日程度かかることがあり、長いと8日以上も電気が使えない場合もあります。普段から蓄電池に電気を貯めておけば、非常時に不便な生活を強いられることなく、電気のある生活が可能となります。

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5-3. 脱炭素・CO2削減に貢献できる

オフグリッドを実現することで、脱炭素社会の実現やCO2削減に貢献できます。

経済産業省の資料によると、日本が排出するCO2の排出量の約4割が電力部門からの排出となっています。

火力発電などCO2を排出する発電方法を使わず、自然エネルギーである太陽光を使って発電することで、脱炭素社会やCO2削減に貢献することができます。

さらに、環境に配慮した自給自足のライフスタイルを実現できるのもメリットとなります。

6. 太陽光発電+蓄電池でオフグリッドを実現する3つのデメリット

 

メリットだけでなく、デメリットについてもしっかりと理解しておきましょう。

次に解説していきます。

 

6-1. 初期費用やメンテナンス費用がかなり高額になる

太陽光発電システムと蓄電池を活用してオフグリッドを実現する一番のデメリットは、実現に多額の費用がかかるという点です。

4章で解説した通り、一定レベルのオフグリッド生活を実現するには、約700万円の初期コストがかかります。

また、太陽光発電の寿命は30年、蓄電池の寿命は10年〜15年程度といわれています。

発電効率が下がったり稼働しなくなった場合には、メンテナンス費用や機器の入れ替え費用がかかります。

 

6-2. 電力供給が天候に左右されてしまう

太陽光発電では、晴れた日中には発電できますが、曇りの日や雨の日、夜間、早朝には発電ができません。

そのため、オフグリッド用に大容量の蓄電池を備えていたとしても、悪天候が長期間続いてしまうと蓄電池の電力量が減る一方となり、節電を余儀なくされる事態に陥ってしまいます。

オフグリッドで生活するために、夜間や悪天候時には極力電力を使わないようにするなど、窮屈な生活を強いられる可能性があります。

 

6-3. 大容量の設備を設置するスペースが必要となる

完全オフグリッドを実現するような大容量のシステムを設置するとすると、それなりの場所の確保も必要となります。

例えば、「3. 太陽光発電+蓄電池でオフグリッドを実現するシステム例」で解説した例では、以下のシステム構成が必要となります。

 

【33日間のオフグリッドを実現したシステム構成】

太陽光発電システム

360ワットXシリーズパネル×36枚

(システム容量の合計:12.96kW)

家庭用蓄電池

テスラパワーウォール(蓄電容量13.5kWh)×3台

=合計40.5kWh

 

オフグリッドを実現するためには、約13kWの太陽光パネルを設置できる屋根の広さと、蓄電池を3台置くためのスペースが必要となります。

約13kWを実現するために、200Wのパネルなら65枚、360Wのパネルなら36枚、400Wのパネルなら32.5枚が必要となります。

例えば360Wのパネルを36枚設置する場合、太陽光パネルの1枚の大きさは約1.5m×1m程度が多いため、54m×36mの屋根が必要となります。

南向き以外だと発電効率が下がってしまうため、できるだけ南向きの屋根だけに設置が望ましいことを考えると、片流れ屋根にするなどの工夫が必要になります。

また、蓄電池はスリム化が進んでいるとはいえ、3台設置するにはそれなりのスペースが必要となります

 

7. 完全オフグリッドは一般的な家庭では現実的ではない

 

ここからは、完全オフグリッド(電線を引き込まない・電力会社と契約をしない)は、一般的な家庭では現実的には難しいということを解説していきます。

完全オフグリッドが一般的な家庭では現実的ではない理由は以下3つです。

完全オフグリッドが一般的な家庭では現実的ではない理由

1. 蓄電池でまかなえなくなった場合に停電してしまうから

2. 電気に頼らないライフスタイルを好む人でない限り続けられないから

3. 悪天候が続いた場合の電力を担保するには莫大な費用がかかるから

 

7-1. 蓄電池でまかなえなくなった場合に停電してしまうから

完全オフグリッド(電線を引き込まない・電力会社と契約をしない)を選択してしまうと、蓄電池に備えた電力が底を尽きると停電になってしまいます。

悪天候が続いて長時間にわたり停電が続いた場合、冷蔵庫・冷凍庫の食材が傷んでしまったり、エアコンが使えなくなったり、あらゆる電化製品を使うことができなくなります。

もちろん照明器具も使えないため、夜間には通常の生活を送ることすら難しくなってしまいます。

オフグリッドを目指す場合にも、万が一の場合には電力会社から電力を買える選択肢を残しておくことが大切です。

 

7-2. 電気に頼らないライフスタイルを好む人でない限り続けられないから

「完全オフグリッドを実現するため停電も厭わない」という方であっても、実際に停電してしまうことを考えると、普段から電気に頼らないライフスタイルをよほど好む人でない限り続けることができないでしょう。

例えば、「冷蔵庫は使わない」「電子レンジも使わない」のように電気に頼らないシンプルライフを好む方ならば、停電も厭わない生活ができるかもしれません。

しかしながら、普段から家電製品を便利に使っている現代人には、電力残量を気にしながらの生活はどこかで負担になってしまう可能性が高いといえます。

 

7-3. 悪天候が続いた場合の電力を担保するには莫大な費用がかかるから

悪天候が続いて発電できない日が続いても電力をまかなえるようにするには、日頃から大量の電力を発電きる太陽光発電システムと、大量の電力を蓄えられる蓄電池が必要となります。

例えば、通常ならば一般家庭に設置する太陽光発電システムの容量は、3kW〜5kW程度が一般的です。しかし、悪天候に備えるために発電量を増やすには、通常の3〜4倍程度の容量の太陽光発電システムを用意する必要があるでしょう。

また、蓄電池の容量も通常ならば5kWh〜8kWhが一般的ですが、長期間の悪天候に備えようと思うと、30kWhや40kWhなど、かなり大容量の設備が必要となります。つまり、通常より5倍〜8倍程度の規模の蓄電池が必要です。

1世帯当たりの1日の電気消費量は、地域によりますが、8.2kWから16kW程度です。30kWhの蓄電池で2〜3日分、40kWhの蓄電池でも2.5日〜5日分で電力がゼロになってしまいます。

※世帯あたりの年間電気消費量は、環境省の「家庭でのエネルギー消費量について」の「地方別世帯当たり年間電気消費量(固有単位)(令和2年度)」を参考にしました。

※1家族が年間に消費する電力量は4,000kWh〜6,000kWh程度なので、これを365日で割って1日の消費量の目安を算出しました。

 

8. 部分的なオフグリッドを太陽光発電+蓄電池で実現しよう

ここまで、太陽光発電+蓄電池でオフグリッドな生活を実現する方法について説明してきました。

完全なオフグリッド(電力自給率100%)を目指すには、通常よりもかなりオーバースペックな大規模な設備が必要となります。

大規模な設備を用意するにはかなりの初期費用がかかりますし、蓄電池を数台置く場所などスペースも必要となります。

さらに、完全に電力会社からの供給を絶ってしまうのは、いざ蓄電池の電力がゼロになった場合に停電を余儀なくされ、通常の暮らしが成り立たなくなってしまいます。

完全なオフグリッドを目指すのではなく、部分的なオフグリッドを目指すのがおすすめです。

現実的には、住宅の場合、太陽光発電と蓄電池で50%〜80%ぐらいの自給率を目指すのが良いでしょう。残りは電力会社から購入するイメージです。

例えば、83%程度のオフグリッドならば、一般的な太陽光発電+蓄電池の容量でも十分目指せる数値です。

例:5kWの太陽光発電システム+8.4kWhの蓄電池を設置した場合のシミュレーション例

 

このシミュレーションでは、83.29%の自給率を実現でき、15年間で累計272万円の削減額(売電収入+電気代削減)が可能です。

この場合の導入費(設置工事費込み)は279.7万円程度であり、補助金が使えるケースではさらに安く導入が可能です。

※導入費の内訳=太陽光発電システム設置費用129.5万円+蓄電池の価格130.2万円+蓄電池の設置費用20万円=279.7万円

※経済産業省の調達価格等算定委員会が取りまとめた資料によると、2023年の太陽光発電設置費用(10kW未満のシステム)は、2022年度と変わらず1kWあたり25.9万円が目安とされています。

調達価格等算定委員会|令和4年度以降の調達価格等に関する意見(PDF資料)

つまり、5kWの太陽光発電システムの設置費用は、5kW×25.9万円=129.5万円です。

※蓄電池の1kWhあたりの価格は、経済産業省が公表した令和4年度の目標価格を参考にしました。

経済産業省の「蓄電池産業の競争力強化に向けて」という資料の中で、令和4年度の目標価格は家庭用で15.5万円/kWhと記載されています。

つまり、8.4kWhの蓄電池の価格目安は、8.4kW×15.5万円130.2万円です。

 

※部分オフグリッドの詳細なシミュレーションを行いたい方は、ぜひシミュレーションツール「エネがえる」を導入している工務店や販売店にご相談ください。

 

9. 【補足】事業用の完全オフグリッドは既に実用化されている

住宅での完全オフグリッドは難しいことを解説しましたが、事業用途であれば既に完全オフグリッドで全ての電力を自給自足する仕組みが既に実用化されています。

電力やガスを引きこむのが難しい僻地では、こうしたオフグリッドの太陽光発電システム+蓄電池が活躍します。

例えば、ソーラーパネルやポータブルバッテリーを開発しているメーカーが2023年に開業したのは、完全オフグリッドで営業している宿泊施設です。

この施設では、電気はもちろん水も電波もない施設で、完全オフグリッド生活を体験できます。

参考:EcoFlowブログ|SDGs未来都市「長野県伊那市」に“再生可能エネルギーのみ”使用したオフグリッド型施設「EcoFlow House」がオープン!

その他、停電しても最大8時間診療が可能な診療所や、系統(電力会社)からの電力が無くても自立運転できる農業用ハウスなど、さまざまな用途でオフグリッドシステムが活用されています。

なお、完全オフグリッドの住宅の開発も進んでおり、「無印良品の家」を展開する株式会社MUJI HOUSEは、現在「インフラゼロでも暮らせる家」の実証実験を行っています。

参考:PR TIMES|無印良品が「インフラゼロでも暮らせる家」の実証実験を開始

 

10.【メーカー・販売店様向け】エネがえるBizならオフグリッド案件のシミュレーションも可能

 

ここからは、蓄電池メーカー様や販売店様向けに、自家消費型太陽光・蓄電池の自動提案ツール「エネがえるBiz」のご紹介をさせていただきます。

「エネがえる」は、太陽光や蓄電池を導入した場合の電気料金プランの比較や経済効果のシミュレーションができるツールです。

家庭用の「エネがえるASP」が有名ですが、実は、BtoB・産業向けの「エネがえるBiz」を使えば、オフグリッドの提案にも使うことが可能です。

想定の365日24時間の電力消費量にあわせて、「自家消費率が100%」になるレベルの太陽光発電設置容量(kW)や蓄電池容量(kWh)を試行錯誤しながらシミュレーションできます。

 

提案にはオフグリッドの基礎知識が必要になりますが、知識と「エネがえるBiz」さえあれば、オフグリッドの提案シミュレーションにも使うことができ、提案の幅が広がるはずです。

以下に、実際に「エネがえるBiz」をお使いいただいて成果を出した企業様の導入事例動画を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

お客様への提案の確度を上げたい蓄電池メーカーや販売店、施工会社などのご担当者は、ぜひまずはお問い合わせください。

 

まとめ

本記事では「オフグリッドと蓄電池の関係」などについて解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

 

▼オフグリッドと蓄電池の関係についての基礎知識

・オフグリッドとは、電力自給率100%で生活すること

・オフグリッドの実現には蓄電池が欠かせない

・太陽光発電+蓄電池を活用したオフグリッド事例が増えている

 

太陽光発電+蓄電池でオフグリッドを実現するシステム例としては、以下の例を紹介しました。

・太陽光発電システム(12.96kW)と蓄電池(40.5kWh)

・オフグリッドを実現する太陽光発電+蓄電池システムは671.4万円

 

太陽光発電+蓄電池でオフグリッドを実現するメリット

・電気代がかからない

・災害による停電が起きても電気を使える

・脱炭素・CO2削減に貢献できる

 

太陽光発電+蓄電池でオフグリッドを実現するデメリット

・初期費用やメンテナンス費用がかなり高額になる

・電力供給が天候に左右されてしまう

・大容量の設備を設置するスペースが必要となる

 

完全オフグリッドは、今のところは、一般的な家庭では現実的ではないといえます。家庭では「部分的なオフグリッド」を目指すのが理想的です。

もし家庭で部分的なオフグリッドを実現したい場合には、「エネがえる」を使った個別の詳細シミュレーションをおすすめします。

ぜひ近くの「エネがえる」導入店にご相談いただき、費用対効果を確かめた上で、太陽光パネルや蓄電池の設置を検討してみてください。

 

執筆者・相談先(太陽光・蓄電池シミュレーションエキスパート)

国際航業株式会社 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

執筆者:樋口 悟

執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。

太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションの国内唯一のエキスパートとして、大手電力・ガス会社、有名太陽光・蓄電池メーカー、全国販売施工店・工務店など約700社以上と、最近ではエネルギー政策立案サイド(国・官公庁・地方自治体)で太陽光・蓄電池推進政策をしている方々へもエネがえるを活用した太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションやアドバイスを提供している。

執筆記事

執筆者のSNS:
・Twitter:@satoruhiguchi
・LinkedInプロフィール:https://www.linkedin.com/in/satoruhiguchi/
・Sansan名刺交換:https://ap.sansan.com/v/vc/bu56hqnjvw5upna463tcfvkxka/

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