いま注目の家庭用蓄電池を網羅解説|費用対効果をシミュレーション

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

目次

いま注目の家庭用蓄電池を網羅解説|費用対効果をシミュレーション

「家庭用蓄電池って一体何?」

「家庭用蓄電池って最近よく聞くけど、元は取れるの?」

最近、ソーラーパネルを設置と同時に、家庭用蓄電池を導入する家庭が増えています。ニュースなどで紹介されることも多いので、家庭用蓄電池について、気になっている方も多いのではないでしょうか?

家庭用蓄電池とは、電力をためておき、必要なときに使うことのできる、家庭用のバッテリーです。節電や防災にも使えるということで、だんだんと注目を集めるようになっています。

家庭用蓄電池について知りたいという方のほとんどは、蓄電池が気になっているけれど、導入にかかるコストがネックとなっているのではないでしょうか。

確かに、家庭用蓄電池は、決して安い買い物ではありません。工事費込みで、約100~300万円ほどするのが一般的です。

それでも、使い方によっては、導入コストを回収できます

例えば、以下のようなケースです。

家庭用蓄電池の導入コストを回収できる可能性のあるケース

・太陽光発電と蓄電池を併用する

・太陽光発電と蓄電池を同じタイミングで導入する

・補助金額の多いエリアに住んでいる

 

とはいえ、実際には、蓄電池の導入コストを回収するのは難しいもの。「元が取れたら、ラッキー」くらいの気持ちで考えておきましょう。

もし元が取れないとしても、家庭用蓄電池を導入するメリットは、コストだけではありません。例えば、以下のような部分に、価値を見出せる場合もあります。

 

家庭用蓄電池を導入するコスト以外のメリット

・災害などによる停電時に、非常用電源として使える

・卒FIT後、太陽光発電由来の電力を効率よく使える

・環境保全に貢献できる

 

このように、家庭用蓄電池の価値やコスパは、蓄電池の活用方法やお住まいの地域、導入する方の考え方といった諸条件によって、大きく異なります

だからこそ、導入前には、以下のような知識を付けておくことが重要です。

この記事を読んだら分かること

・家庭用蓄電池の主な活用方法

・家庭用蓄電池の導入にかかるコスト

・家庭用蓄電池を導入するメリット・デメリット

・家庭に合った蓄電池の選び方

 

家庭用蓄電池の導入を検討するのに、最も効果的な方法は、ご家庭の状況を反映したシミュレーションを行うことです。

そこでこの記事では、太陽光・蓄電池シミュレーション「エネがえる」を実際に使い、ユーザーごとのシミュレーション結果を4パターン公開しています。

 

 

ご自宅のシミュレーションを試してみたい場合には、「エネがえる」を導入している蓄電池のメーカーや電力会社、住宅メーカー、全国の中小工務店にお問い合わせください。

リアルなシミュレーション結果は、蓄電池を導入するか否かを判断する、決定打となるでしょう。

 

1.家庭用蓄電池って?賢い使い方は?3つの活用方法をご提案!

 

家庭用蓄電池は、電力をためておき、必要なときに使うことのできる、家庭用のバッテリーです。

主な活用方法として、以下に挙げる3つの方法が挙げられます。

 

基本的には、太陽光発電と併用する場合と、蓄電池単体で使う場合の、2パターンに分かれます。

また、どちらの使い方であっても、非常用電源として活用することが可能です。

もし家庭用蓄電池がどんなものなのか気になっているのなら、まずは活用方法を確認して、ご自身のライフスタイルに合っているかを考えてみましょう。

ここからは3つの活用方法について、1つずつ解説していきます。

 

1-1.【家庭用蓄電池の活用法その1】太陽光発電と併用する

1つ目は、蓄電池と太陽光発電と併用する場合です。

蓄電池の導入を検討している方のほとんどが、この使い方を想定しているのではないでしょうか。

蓄電池を太陽光発電と併用する場合、日中、太陽の出ている間は太陽光で発電した電力を使い、余りを蓄電池に充電、夜間の使用電力に充てるという活用方法が一般的です。

このような使い方をした場合を、「エネがえる」を使ってシミュレーションすると、1日の電気利用の流れは、以下のグラフのようになります。

 

 

5~17時の時間帯の、オレンジ色のグラフ部分は、太陽光による電力を、自家消費していることを示しています。

その上に山のような形で表れている黄緑色の部分は、太陽光発電の蓄電量です。その右側の黄色い部分は、蓄電池に入りきらなかった太陽光の発電量を電力会社に売電しています。

17~23時の夜間は、日中蓄電池にためた電力を自家消費し、0~6時までは、電力会社から購入した電力を使っています。

一方、蓄電池なしで太陽光発電を行う場合、太陽光による電力を自家消費できるのは、日中、太陽光で発電している間に限られます。

よって、以下のように、昼間に余った太陽光による電力は、全て電力会社に売電することになります。

 

 

ここで気になるのは、太陽光発電の自家消費と売電、どちらがお得かということではないでしょうか。

結論からいうと、太陽光発電を導入したタイミングが、2019年~2023年現在の場合には、売電よりも自家消費の方が節約できます

なぜなら、電力会社の売電価格は年々下がり続けており、それと反比例する形で、電気料金は上昇しているからです。その結果、2019年度には、FIT売電価格を電気料金の方が上回りました

 

出典:資源エネルギー庁「住宅用太陽光発電に係る2019年以降の FIT買取期間終了を契機とした対応について

結論として、以下のようなケースでは、蓄電池と太陽光発電の併用が、最も経済効果が高いといえます。

・2019年以降に太陽光発電を導入している場合

・現在導入の検討をしている場合

 

上記に当てはまる場合には、売電よりも自家消費の方が節約できることから、FIT期間中であっても、蓄電池の導入が早ければ早いほど、節約できます

ただし、2018年までに太陽光発電を導入している場合、FIT価格は電気代よりも高いので、売電した方が経済的です。この場合には、FIT期間終了後に、蓄電池の導入を検討しましょう。

 

1-2.【家庭用蓄電池の活用法その2】蓄電池単体を夜間電力プランで使う

2つ目は、蓄電池を導入して、単体で使う場合です。

 

蓄電池単体で使う場合、深夜にためた電気を、日中使うという方法で活用できます。この際、電力会社の深夜電力プランを活用すると、電気代の節約につながります。

以下のグラフは、蓄電池単体で使った場合の、1日の電気利用の流れについて、一例を示したものです。

 

23~1時の深夜帯、水色で示しているグラフは、蓄電池への充電中だということを示しています。

日中7~20時の黄緑色のグラフは、充電した蓄電池の電力を使っている時間です。青い部分は、通常通り、電力会社の電気を使っています。

しかし、最近では電気代高騰もあり、蓄電池単体で使っても、節約できる電気代が少なくなっています。

例えば、以下に挙げる東京電力の深夜プラン「夜トク8」を使った場合、通常のプランと比較すると、日中の電気料金から深夜の電気料金を差し引いた10.96円/kWhが節約できます。

 

出典:東京電力エナジーパートナー株式会社「夜トクプラン(夜間・深夜の電気使用量が多い方向け)

10kWhの容量の蓄電池を使っている場合、1日当たりに節約できる電気代は、109.6円です。

月当たり3,288円、年間では39,450円、寿命が20年だとして、78万9,000円の節約になります。

しかし、10kWhの蓄電池の導入コストは200万円ほど。蓄電池の導入コストを考えると、元を取るのに50年以上かかるため、寿命を加味すると、不可能だと言わざるを得ません。

例外は、120万円以上の補助金が見込める場合だけです。

 

1-3.【家庭用蓄電池の活用法その3】非常用電源として活用する

3つ目は、蓄電池を非常用電源として活用する方法です。

導入するのが蓄電池単体であっても、太陽光発電と併用でも、同じように非常用電源として使えます。

家庭用蓄電池の導入を検討している方の中には、「非常用電源としての活用」という目的、つまり非常時への備えに重きを置いている方もいるのではないでしょうか。

そのような場合には、導入コストやコストの回収について、そこまで深く考える必要はありません。

なかでも以下のような場合には、非常時の安心な備えとなるでしょう。

・人工呼吸器など、医療的ケアの必要な家族がいる

・小さな子どもや高齢者、妊娠中の家族がいて、体温調整にエアコンが必須

・食べ盛りの子どもがいるので、冷蔵庫や冷凍庫が使えないと困る

 

蓄電池単体の場合、6kWhあれば、1日分の最低限の電力をまかなえます。太陽光発電を併用していて、停電時にも発電が可能であれば、夜間の電力も、蓄電池でまかない続けられます。

蓄電池の容量について、くわしくは「6-2-3.【非常用電源として活用する場合】停電中に想定される電力使用量に合わせる」をご確認ください。

 

2.家庭用蓄電池の導入にかかるコストの目安

 

次に、家庭用蓄電池の導入に必要となる、コストの目安を紹介します。

結論からいうと、家庭用蓄電池の価格の目安は、以下の通りです。

家庭用蓄電池の価格…約100~300万円(工事費の約20~30万円を含む)

価格に幅があるのは、蓄電池の容量によって、価格が大きく変わってくるからです。

容量と価格の相関性は、メーカーによっても異なりますが、一般的な相場は、1kWh当たり20万円前後ほどだといわれています。

以下は、蓄電池の容量別に、価格帯の相場をまとめた表です。

 

蓄電池の容量

価格帯の相場

5~7kWh

100~140万円

8~10kWh

160~200万円

11~15kWh

220~300万円

 

なお、内閣府「家計調査 家計収支編 総世帯 詳細結果表 年次 2022年」を参考に、1日当たりの平均的な消費電力量を算出したところ、以下のような結果が出ました。

 

世帯の人員数

1日当たりの消費電力量

1人

5.3kw

2人

8.8kw

3人

10.4kw

4人

11.1kw

5人

12.3kw

参考:内閣府「家計調査 家計収支編 総世帯 詳細結果表 <用途分類>1世帯当たり1か月間の収入と支出 4 世帯人員・世帯主の年齢階級別 総世帯・勤労者世帯 年次 2022年

世帯の人員分の使用電力をまかなうための蓄電池を選ぶなら、以下の容量が目安となります。

 

世帯の人員数

蓄電池の容量(価格帯の相場)

1人

5~7kWh(100~140万円)

2~3人

8~10kWh(160~200万円)

4~5人

11~15kWh(220~300万円)

 

ただし、季節やエリア、電力使用量によって、どの程度まかなえるかは異なります。条件によっては、使用電力をまかないきれない場合もあるので、あくまでも目安としてください。

 

3.家庭用蓄電池の平均的なコスパを「エネがえる」でシミュレーション!

 

 

1-1.【家庭用蓄電池の活用法その1】太陽光発電と併用する」で解説した通り、最も経済効果のある蓄電池の活用法は、以下2つのポイントを押さえることです。

・太陽光発電と併用する

・なるべく早い段階で併用を実現する

そこでここでは、太陽光発電システムと蓄電池を同時に導入した場合の、コストパフォーマンスのシミュレーションを行います。

シミュレーションの対象とするのは、以下のAさん一家です。

Aさん一家プロフィール

・東京都在住

・4人家族

・使用電力:平均400kWh/月

・検討している蓄電池の容量:約10kWh

 

「エネがえる」のシミュレーションによると、今後電気料金が年間2%ずつ上がったと仮定した場合、Aさん一家では、太陽光発電と蓄電池の併用により20年間で434万円以上の節約が可能となります。

 

 

現状通り、太陽光発電システムも、蓄電池もないままでは、20年で約491万円の光熱費を支払うことになりますが、太陽光発電システムと蓄電池を導入すると、20年間で約57万円に抑えられます。

 

 

1ヵ月当たりのシミュレーションで見てみると、月々16,860円だった光熱費が、4,667円に下がります。

 

 

さらに残った電力を売った収入が、FIT期間中は月に4,285円、FIT期間終了後も2,276円入ります。

 

 

また、Aさん一家の場合、太陽光発電システムと蓄電池の導入コストは、350万円程度です。

20年ローンで年率が2%の場合、支払額の合計は約425万円なので、電気料金の上昇率や蓄電池の寿命次第では、導入コストが回収できる計算となります。

 

 

家庭用蓄電池を導入すると補助金がもらえる場合もある!

 

3.家庭用蓄電池の平均的なコスパを「エネがえる」でシミュレーション!」で、蓄電池のコスパをシミュレーションした結果、蓄電池の導入コストを回収するのは簡単ではないと分かりました。

この結果を見て「元が取れないなら…」と導入への意欲が下がってしまった方もいるのではないでしょうか。でも、まだあきらめるのは早いかもしれません。

なぜなら、家庭用蓄電池を購入すると、補助金がもらえる場合があるからです。

家庭用蓄電池購入の補助金は、国と地方自治体の主に2種類あり、多くの場合、併用が可能です。

例えば東京都内に住んでいて、導入コストが200万円の、10kWhの容量を持つ蓄電池を購入する場合、国と東京都の両方から補助金を受けたとすると、自己負担額は以下のように算出できます。

【国からの補助金】2023年度: 1kWh当たり3.2万円

 ⇒10kWh×3.2=32万円

参考:一般社団法人 環境共創イニシアチブ「公募情報(系統用蓄電池等導入支援事業)

※2023年度における国からの補助金の公募は、5月をもって終了しています。

【東京都からの補助金】蓄電池容量1kWh当たり15万円

 ⇒最大120万円

参考:東京都地球温暖化防止活動推進センター「令和5年度 家庭における蓄電池導入促進事業 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」

 補助金計:32+120=152万円 

 導入コスト200-補助金152=自己負担額 48万円

このように、補助金によって自己負担額が減ると、導入コストをカバーして、「元が取れる」どころか、利益が生まれる状態になる可能性もあります。

なお、これらの補助金とは別に、所定の条件を満たせば、以下の事業に伴う補助金がもらえる場合もあります。

・戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH) 化等支援事業

参考:一般社団法人 環境共創イニシアチブ【環境省戸建ZEH】令和5年度 環境省によるZEH補助金)

※2023年度における国からの補助金の公募は、5月をもって終了しています。

・こどもエコすまい支援事業

参考:国土交通省「こどもエコすまい支援事業

このように、家庭用蓄電池の設置で受け取れる補助金は、複数種類あります。

もし、蓄電池や太陽光発電の導入に、コスト面でためらっているのであれば、まずお住まいの自治体の補助金がいくらもらえるのかを調べてから、決断するのがおすすめです。

 

4.家庭用蓄電池を導入するメリットとデメリット

 

 

次に、家庭用蓄電池を導入するメリットとデメリットについて解説します。

家庭用蓄電池を導入すると、以下のようなメリットとデメリットがあります。

 

家庭用蓄電池を導入するデメリット

高額な初期費用がかかる

設置スペースが必要

 

ここからは、家庭用蓄電池を導入するメリットとデメリットについて、それぞれ説明していきます。

 

4-1.家庭用蓄電池を導入するメリット

家庭用蓄電池の導入には、以下3つのメリットがあります。

 

ここからは3つのメリットについて、1つずつ解説します。

 

4-1-1.災害時の停電に備えられる

家庭用蓄電池を導入すると、災害時の停電に備えられます。

日本は外国と比べて自然災害が起こりやすく、災害大国と呼ばれています。地震や大雨、台風、それらに伴う洪水や土砂災害、高潮災害…日ごろから災害への備えが欠かせません。

私たちは日ごろ、電化製品を活用して、便利な生活をしています。停電が起きて、電化製品が使えなくなり、さらに停電期間が数日間に及んだ場合、生活に大きな支障をきたしてしまいます。

実際、日本各地で、さまざまな災害による停電被害が発生しています。

例えば、2018年9月の北海道胆振東部地震では、日本で初めて、エリア全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生。最大295万戸が停電し、復旧までに1~2日を要しました。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか

2019年9月の台風15号では、千葉県内全域において、停電被害が1週間ほどに及びました。この事態をきっかけに、蓄電池を導入した家庭が増加したといいます。

ほかにも台風による被害で、全国各地で、以下のように大規模な停電被害が複数発生しています。

 

出典:経済産業省「大規模災害時における停電対策について

特に、高齢者や小さなお子さんのいる家庭では、災害時の停電に大きな危機感を持っている方もいるのではないでしょうか。冷蔵庫やエアコンといった電化製品の電力維持は、命や健康にも関わります。

そんなときに役立つのが、家庭用蓄電池です。蓄電池を設置しておけば、日常的に電力をためておいて、非常時に備えられます。

大容量で全ての電化製品に使える製品や、停電が発生したら自動で蓄電池の電力が放電される「自動運転モード」に切り替わる製品もあります。

災害時の非常用電源として使う蓄電池を導入する場合、選び方に注意が必要です。

6-1-2.非常時の仕様【特定負荷型/全負荷型】」や「6-2-3.【非常用電源として活用する場合】停電中に想定される電力使用量に合わせる」を参考に、どんな仕様や機能のある蓄電池を選ぶか、検討してくださいね。

 

4-1-2.FIT終了後に太陽光発電の電力を自家消費して節電できる

家庭用蓄電池を導入すると、FIT期間が終了して売電価格が安くなっても、自家消費でき、太陽光発電由来の電力を効率よく使えます。

太陽光発電は、認定を受けた時点から10年間、固定価格(FIT価格)で売電できます。FIT価格は認定を受けたタイミングで異なり、ここ10年は、以下のように推移しています。

 

認定年度

FIT価格

2013年

31~38円

2014年

30~37円

2015年

27~35円

2016年

25~33円

2017年

25~30円

2018年

25 ~28円

2019年

24~26円

2020年

21円

2021年

19円

2022年

17円

2023年

16円

参考:資源エネルギー庁「過去の買取価格・期間等|FIT・FIP制度

これに対し、FIT期間終了後の売電価格は、1kWhに付き、低いと7円、高くても10円ほどです。

すでに「1-1.【家庭用蓄電池の活用法その1】太陽光発電と併用する」でも述べている通り、2019年度以前に太陽光発電を導入している場合、自家消費よりも売電した方が経済的です。

しかし、FIT期間後には、売電をやめ、自家消費する方が、発電した電力を効率よく使えます。

以下のグラフは、FIT期間中の電力の使い方を「エネがえる」でシミュレーションしたものです。

 

日中、6~18時に太陽光で発電した電力を、自家消費と売電に充てていると分かります。

 

 

例えば2013年に太陽光発電を導入した場合、買取単価は38円で、FIT期間中には、2万円近い売電収入がありました。

これに対して、FIT期間後に売電を続けた場合、買取価格は7円となり、売電収入は3,000円弱に減ります。

 

そこで、売電をやめて、蓄電池を使って電力を自家消費すると、以下のような電力の使い方ができます。

 

 

これまで、太陽光発電ができていない時間帯の電力は全て電力会社から購入していました。

しかし、蓄電池を導入すれば、昼の発電量を、自家消費するだけでなく、蓄電池に蓄電できます。そうすると、夜間の電力分も自家消費できるようになり、その分の電気料金が発生しません。

このように、家庭用蓄電池を導入すると、太陽光発電の自家消費量が増え、太陽光発電由来の電力を、効率よく使えるようになります。

 

4-1-3.環境保全に貢献できる

家庭用蓄電池は、どんな使い方をしたとしても、環境保全への貢献ができます。

家庭用蓄電池の使い方は、「1.家庭用蓄電池って?賢い使い方は?3つの活用方法をご提案!」で述べた通り、主に以下の2パターンがあります。

 

太陽光発電と併用する

蓄電池単体で使う

 

蓄電池を太陽光発電と併用すると、太陽光による再生可能エネルギーを有効活用できます。太陽光発電は、化石燃料が不要で、ほかの発電方法よりもCO2排出量が少ない、環境に優しいエネルギーです。

 

また、蓄電池単体で使う場合には、「1-2.【家庭用蓄電池の活用法その2】蓄電池単体を夜間電力プランで使う」でも述べたように、深夜にためた電気を、日中使うという方法で活用できます。

 

 

一般的に、電気の使用量が少ない夜間電力を活用することは、電力のピークシフトにつながります。

ピークシフトとは、多くの電力が消費されるピークの時間帯の電気の使用量を減らし、電力需要の少ない時間にずらす取り組みです。最近ではディマンド・リスポンス(DR)とも呼ばれています。

 

出典:資源エネルギー庁「ディマンド・リスポンス(DR)について

蓄電池を使ってピークシフトに取り組むと、電力供給の全体の負荷を減らせるので、環境保全に貢献できます。環境への意識が高い方にとっては、大きなメリットとなるでしょう。

 

4-2.家庭用蓄電池を導入するデメリット

家庭用蓄電池の導入には、以下2つのデメリットがあります。

家庭用蓄電池を導入するデメリット

高額な初期費用がかかる

設置スペースが必要

 

ここからは2つのデメリットについて、1つずつ解説します。

 

4-2-1.高額な初期費用がかかる

家庭用蓄電池を導入する一番のデメリットは、初期費用が高額だという点です。

すでに「2.家庭用蓄電池の導入にかかるコストの目安」でも紹介した通り、家庭用蓄電池の価格は、工事費込みで、ざっくり100~300万円ほどで、誰もが簡単に出せる金額とはいえません。

 

世帯の人員数

蓄電池の容量(価格帯の相場)

1人

5~7kWh(100~140万円)

2~3人

8~10kWh(160~200万円)

4~5人

11~15kWh(220~300万円)

 

コストの相場を知り、断念してしまう人が多いのも、無理はないでしょう。

3.家庭用蓄電池の平均的なコスパを「エネがえる」でシミュレーション!」を見ても、蓄電池の導入コストを回収するのは簡単ではないと分かります。

しかし、お住いの自治体によっては、高額な補助金がもらえる場合もあります。例えば東京都では、上限120万円の補助金制度があります。

初期費用が理由であきらめかけているのなら、まずは補助金について調べてみてはいかがでしょうか。

 

4-2-2.設置スペースが必要

家庭用蓄電池は、ある程度の大きさがあるため、設置スペースを確保する必要があります。

家庭用蓄電池の大きさは、容量やメーカーによって異なりますが、大体は以下のようなサイズ感です。

幅:50~80cm

奥行き:30~40cm

高さ:60cm~1m

 

エアコンの室外機を、縦に2つ積み重ねたくらいのサイズ感というと、イメージしやすいかもしれません。

設置スペースには、以下のような環境の場所が向いています。設置環境が悪いと、蓄電池の故障や劣化につながるリスクが上がるので、注意が必要です。

家庭用蓄電池の設置に適した環境

・直射日光が当たらない(北側が望ましい)

・風通しがいい

・豪雪地帯は軒下か、かさ上げが必要

・塩害地域は設置不可

 

また、重さも100~200kgと重量があるため、設置場所によっては、コンクリートで基礎工事をする必要があります。最低限、工事と搬入ができるだけのスペースを、確保しなければなりません。

 

5.【ユーザー別】シミュレーション結果を3つ公開!

 

ここでは、ユーザーとニーズ別に「エネがえる」でシミュレーションを行い、その結果を公開します。

今回シミュレーションを行うのは、以下の3世帯です。

 

ご自身の状況や電気の使い方、ニーズを考慮して、シミュレーション結果を参考にしてくださいね。

それではさっそく、それぞれのシミュレーション結果を見ていきましょう。

 

5-1.【災害対策に活用したい】0歳児子育て中の3人家族

 

Bさん一家プロフィール

・広島県在住

・3人家族(子どもは生後半年)

・妻は育休中

・蓄電池を災害対策に役立てたい

・使用電力:平均350kWh/月

・電気料金:平均1万4,000円/月

・検討している蓄電池の容量:約12kWh

参考:中国電力「従来の電気料金メニュー一覧

 

広島県在住のBさん一家は、3人家族。妻は育休中で、生後半年の子どもを家で見ています。

現在、注文住宅のプラン設計中で、ハウスメーカーから勧められたことがきっかけで、太陽光発電や蓄電池に興味を持つように。特に災害対策となる蓄電池については、導入に前向きです。

家族が増える可能性も考慮して、少し大きめでゆとりのある容量の、蓄電池を想定しています。

「エネがえる」のシミュレーションによると、今後電気料金が年間2%ずつ上がったと仮定した場合、Bさん一家では、20年間で403万円ほどの節約が可能となります。

 

現状通り、太陽光発電システムも、蓄電池もないままでは、20年で約408万円の光熱費を支払うことになりますが、太陽光発電システムと蓄電池を導入すると、20年間で約5万円弱しか支払わずに済みます。

 

 

1ヵ月当たりのシミュレーションで見てみると、月々1万4000円ほどだった光熱費が、2600円弱にまで下がります。

 

 

さらに残った電力を売った収入が、FIT期間中は月に4,067円、FIT期間終了後も1,817円入ります。

 

 

また、Bさん一家の場合、太陽光発電システムと蓄電池の導入コストは、400万円程度です。20年ローンで年率が2%の場合、支払額の合計は約485万円となるので、導入コストの回収は難しいでしょう。

 

 

導入コストも加味すると、FIT期間中と終了後で、実質、以下の金額を負担することになります。

 

 

Bさん一家の場合、50万円ほど自己負担の必要があります。

以下2点が、導入するかどうか判断するポイントとなるでしょう。

・非常用電源としての価値に、どの程度重きを置くのか

・自治体などの補助金の有無と金額

 

5-2.【電気代節約を目指す】卒FIT予定の2世帯6人家族

 

Cさん一家プロフィール

・福岡県在住

・6人家族(2世帯住宅)

・平日昼間は不在

・太陽光発電 来年卒FIT予定

・使用電力:平均600kWh/月

・電気料金:平均1万8,000円/月

・検討している蓄電池の容量:約14kWh~

参考:九州電力「従量電灯B

 

福岡県在住のCさん一家は、2世帯住宅の6人家族。全員フルタイムで働いており、昼間は不在です。

9年前に家を新築した際、オール電化を導入。来年卒FIT予定なので、電気代節約と防災を兼ねて、蓄電池の導入を検討しています。

家族が多く、子どももいるので、大きめでゆとりのある容量の蓄電池を想定しています。

Cさん一家の場合、卒FIT後の選択肢が、以下の2通りあります。

 

そこで、2パターンのシミュレーションを用意しました。

 

5-2-1.卒FITしても電力会社に売電を続ける

「エネがえる」のシミュレーションによると、今後電気料金が年間2%ずつ上がったと仮定した場合、Cさん一家では、既設の太陽発電による効果も含め、卒FIT後の20年間で320万円ほどの節約が可能です。

 

1ヵ月当たりのシミュレーションで見てみると、月々1万8000円ほどだった光熱費は、蓄電池の導入と、電気料金プランの変更によって、1万6000円弱に下がります。

 

 

しかしFIT期間中には38円だった電力の買取価格が、FIT期間終了後には7円となり、自家消費を優先するため、月の売電収入は、これまで約2万円だったのが、3000円近くまで落ち込みます。

 

 

結果として、これまでよりも1万5000円ほど、損をする計算になります。

売電を続ける場合、蓄電池の効果はあまり得られません。

 

5-2-2.卒FIT後は電力を自家消費する

「エネがえる」のシミュレーションによると、今後電気料金が年間2%ずつ上がったと仮定した場合、Cさん一家では、卒FIT後の20年間で、既設の太陽発電による効果も含め、442万円ほど節約できます。

 

1ヵ月当たりのシミュレーションで見てみると、月々1万8000円ほどだった光熱費は、蓄電池の導入と、電気料金プランの変更によって、1万円にまで下がります。

 

 

また、FIT期間中には38円だった電力の買取価格が、FIT期間終了後には7円となるため、月の売電収入は下がりますが、蓄電池の導入によって、自家消費量がこれまでの約2倍になります。

 

 

結論として、卒FIT後には、安い買取単価で売電を続けるよりも、蓄電池を使って自家消費する方が経済的だと分かります。

とはいえ、蓄電池の導入コストは高額です。Cさん一家の場合、蓄電池の導入コストは、300万円程度なので、20年ローンで年率が2%の場合、支払額の合計は約364万円となります。

 

 

導入コストを加味すると、実質、月々1万円ほどの金額を負担することになります。

 

Cさん一家では、既設の太陽光発電による節約効果を除く、純粋な蓄電池導入による削減額は、約166万円です。

 

 

よって、自家消費によって光熱費を削減しても、蓄電池を導入すると、200万円ほど自己負担しなければなりません

Cさん一家の場合、以下2点が、蓄電池を導入するかどうかの判断基準となるでしょう。

・非常用電源としての価値にどの程度重きを置くのか

・自治体などの補助金の有無と金額

 

5-3.【再生可能エネルギーに興味がある】リモートワーク中心の20代共働き夫婦

 

Dさん一家プロフィール

・埼玉県在住

・2人家族

・共働き、在宅でのリモートワークがメイン

・再生可能エネルギーに興味がある

・使用電力:平均300kwh/月

・電気料金:平均1万2000円/月

・検討している蓄電池の容量:約8kwh(目安300万円)

参考:東京電力エナジーパートナー株式会社「従量電灯B・C|電気料金プラン

 

埼玉県在住のDさん一家は、共働きの2人暮らし。平日日中は、2人とも在宅で仕事をすることがほとんどで、一般的な2人世帯よりも電気料金が高めです。

新築戸建てへの住み替えを予定していて、もともと2人とも再エネに興味があるので、太陽光発電と蓄電池の同時導入を検討しています。

「エネがえる」のシミュレーションによると、今後電気料金が年間2%ずつ上がったと仮定した場合、Dさん一家では、20年間で409万円ほどの節約が可能となります。

 

 

現状通り、太陽光発電システムも、蓄電池もないままでは、20年で約356万円の光熱費を支払うことになりますが、太陽光発電システムと蓄電池を導入すると、20年間で支払いはゼロ、それどころか約53万円プラスになります。

 

 

なぜ光熱費がプラスになるのかというと、電力自給率が99.5%で、ほとんど電力会社から電気を購入していないからです。

 

1ヵ月当たりのシミュレーションで見てみると、月々1万2000円ほどだった光熱費が、1000円以下にまで下がります。

 

 

さらに残った電力を売った収入が、FIT期間中は月に4,387円、FIT期間終了後も2,230円入ります。

 

 

また、Dさん一家の場合、太陽光発電システムと蓄電池の導入コストは、300万円程度です。20年ローンで年率が2%の場合、支払額の合計は約364万円なので、導入コストが15年ほどで回収できる計算です。

 

 

ちなみに、導入にかかる費用の毎月の支払額から、浮いた電気代を引くと、FIT期間中は488円の黒字、FIT期間終了後でも、負担額は1,569円で済みます。

 

 

6.各家庭に最適な家庭用蓄電池を選ぶための3つのポイント

 

 

ここまで、家庭用蓄電池を導入したシミュレーションを、3例紹介してきました。

どのような印象や感想を抱きましたか?

「やっぱりちょっとウチには合わないかも…?」と感じた方もいれば、「買ってもいいかも」「もっと家庭用蓄電池について知りたい!」と、購入に前向きになった方もいるのではないでしょうか。

そこで最後に、蓄電池の購入に前向きな方向けに、家庭用蓄電池を選ぶ際のポイントを紹介します。

今回紹介するのは、以下に挙げる3つのポイントです。

 

蓄電池を選ぶ際、どういう点を考慮すべきかが分かっていれば、エネルギー効率が良く、経済的な蓄電池を選べます。ぜひ参考にしてくださいね。

ここからは3つのポイントについて、1つずつ解説していきます。

 

6-1.蓄電池の仕様

蓄電池を選ぶ際には、蓄電池の仕様について、知っておく必要があります。蓄電池に求めるニーズや使い方によって、選ぶべき蓄電池が変わってくるからです。

蓄電池の仕様には、主に以下の2種類があります。

ここからは、それぞれの仕様の内容について、くわしく解説していきます。

 

6-1-1.パワーコンディショナーのタイプ【単機能型/ハイブリッド型】

1つ目は、パワーコンディショナーのタイプです。

▼パワーコンディショナーとは

直流の電気を交流に変換する機械。蓄電池の場合、電力をためる際と使う際に、パワーコンディショナーによる電気の変換が必要となる。

 

家庭用蓄電池のコンディショナーには、単機能型とハイブリッド型の2タイプがあります。

結論からいうと、太陽光発電を新設し、蓄電池と併用予定の方には、ハイブリッド型がおすすめです。なぜなら、ハイブリッド型の方がメリットが多いからです。

 

ハイブリッド型のパワーコンディショナーには、以下のようなメリットがあります。

ハイブリッド型パワーコンディショナーのメリット

・設置スペースが1台分で済む

・一度の変換で済むため、電力ロスが少ない

・出力が高いため、停電中も十分たくさんの家電が使える

・停電時の充電と放電が同時にできる

・1台で太陽光と蓄電池のシステム管理がまとめてできる

 

一方、すでに太陽光発電を設置している方で、既設のパワーコンディショナーを使い続けたい方は、単機能型を選ぶという選択肢もあります。

 

 

しかし、上の図からも分かる通り、単機能型の場合、太陽光発電と併用するには、太陽光発電用と蓄電池用、それぞれに1台ずつのパワーコンディショナーが必要です。

一方、ハイブリッド型であれば、1台で、単機能型2台分の役割を果たし、停電中も便利に使えます。

よって、よほどの理由がない限りは、既設のパワーコンディショナーは撤去して、1台2役のハイブリッド型パワーコンディショナーを選ぶのがおすすめです。

 

6-1-2.非常時の仕様【特定負荷型/全負荷型】

2つ目は、非常時の蓄電池の仕様です。

蓄電池には、以下の図に示すように、特定負荷型と全負荷型という、2つの仕様があります。

導入コストを抑えたい方や、停電時には最低限の電化製品が使えればいいという方には、特定負荷型が向いています。

一方、導入コストが高く付いても利便性を優先したい方、家族に高齢者や小さいお子さんのいるご家庭、オール電化住宅にお住まいの場合には、全負荷型がおすすめです。

 

 

特定負荷型の蓄電池は、停電時に一部エリアの電化製品のみ使用できます。ブレーカーでいうと、1、2回路に限られ、供給できる電力も100Vまでなので、使える電化製品も限られます。

一方、全負荷型の蓄電池は、停電時に全てのエリアの電化製品が使用できます。供給できる電力も200Vと大きいので、ほとんどの電化製品が使用できます。

特定負荷型と全負荷型、それぞれのメリットは以下の通りです。

特定負荷型の蓄電池のメリット

・導入コストが安い

・電力を使いすぎる心配がいらない

・軽量でコンパクトな製品が多い

 

全負荷型の蓄電池のメリット

・ほとんど全ての電化製品が使える

・停電時もいつもと変わらない生活ができる

 

6-2.蓄電池の容量

家庭用蓄電池を選ぶとき、どのくらいの容量の製品にするかも、重要なポイントとなります。

家庭用蓄電池の容量は、製品によって異なりますが、5~15kWhが一般的です。

容量の選び方は、蓄電池の活用法によって、以下の3つのケースに分けられます。

 

ここからは、3つのケースそれぞれについて、くわしく解説します。

 

6-2-1.【日常的に使う場合】電力使用量に合わせる

初めて蓄電池や太陽光発電を導入する場合で、非常用よりも、日常的な活用を重視する場合には、1日当たりの使用電力量に合わせて選びましょう。

1日当たりの使用電力量は、以下の表が目安になります。ただし、季節や気温、電気の使い方によって異なる場合があるので、実際に選ぶ際には、毎月の検針表を参考にしましょう。

 

世帯の人員数

1日当たりの消費電力量

1人

5.3kw

2人

8.8kw

3人

10.4kw

4人

11.1kw

5人

12.3kw

参考:内閣府「家計調査 家計収支編 総世帯 詳細結果表 <用途分類>1世帯当たり1か月間の収入と支出 4 世帯人員・世帯主の年齢階級別 総世帯・勤労者世帯 年次 2022年

 

1日当たりの消費電力量のうち、どのくらいを蓄電池でまかないたいかを考えて、容量を決めます。

さらに、ご家庭でどの時間帯にどのくらいの電力を消費しているかを把握すると効果的です。

例えば、以下のグラフのように夜間にためた電気を昼間に使いたいなら、昼間の使用量を確認します。

 

そうではなく、昼間に蓄電池にためた電気を、夜間に使いたいのならば、夜間の使用量を確認します。

 

 

そうすれば、蓄電池の電力をどの時間帯に、どのくらい使うかに合わせて、適切な容量が決められます

 

6-2-2.【太陽光発電システムと併用する場合】太陽光による発電量に合わせる

太陽光発電システムと併用する場合には、太陽光による発電量に合った蓄電池を選びましょう。

 

太陽光パネルの容量に合った容量の蓄電池を使うことで、蓄電池の機能を最大限に発揮させられます。

家庭用の太陽光パネルの容量(出力値)は、一般的に4~10kwほどです。

太陽光発電の発電量は、1kW当たり、1日平均で3.0kWh程度なので、パネルの容量に応じた発電量は、以下のように求められます。

 

太陽光パネルの容量(出力値)

1日当たりの発電量

4kW

12kWh

6kW

18kWh

8kW

24kWh

10kW

30kWh

 

太陽が出ている時間は、電力の自家消費が可能です。一般的に、1日当たりの発電量のうち、自家消費するのは30%ほどといわれているので、30%分を差し引きます。

 

1日当たりの発電量

自家消費する30%を引いた残りの発電量

12kWh

8.4kWh

18kWh

12.6kWh

24kWh

16.8kWh

30kWh

21kWh

 

結果、太陽光パネルの容量に合う蓄電池の容量は、以下の表にある値が目安になります。

 

太陽光パネルの容量(出力値)

蓄電池の容量(目安)

4kW

8.4kWh

6kW

12.6kWh

8kW

16.8kWh

10kW

21kWh

 

既設の太陽光発電システムがある場合や、太陽光発電と蓄電池を同時に導入する場合には、参考にしてはいかがでしょうか。

 

6-2-3.【非常用電源として活用する場合】停電中に想定される電力使用量に合わせる

非常用電源としての活用をメインとするなら、停電中の電力使用量に合わせた容量の蓄電池を選びましょう。

結論からいうと、条件に応じて、以下の容量がおすすめできます。

蓄電池単体で使う場合 ⇒  「1日当たり6kWh×必要だと考える日数分」の容量

・太陽光発電と併用する場合 ⇒ 太陽光による発電量に合わせた容量

※「6-2-2.【太陽光発電システムと併用する場合】太陽光による発電量に合わせる」をご参照ください。

「1日当たりに必要な容量:6kWh」は、家庭における電化製品の、消費電力量から算出しました。

以下の円グラフは、家庭における電化製品の、消費電力量の内訳をまとめたものです。

 

出典:全国地球温暖化防止活動推進センター「家庭における消費電力量の内訳

消費電力が最も多いのはエアコンで14.7%、次は冷蔵庫で14.3%、照明が13.5%、テレビが9.4%と、上位4位の電化製品が、全体の約半分を占めています。

非常時であれば、夏季と冬季のエアコンと冷蔵庫、照明、あとは情報収集用にテレビさえ使えれば、十分だと考えられます。

そこで、1世帯当たりの電気のエネルギー消費量に当たる4,175kWh/年から、これらの家電の1日当たりの消費電力を割り出しました。

 

参考:環境省「令和3年度家庭部門のCO2排出実態統計調査 結果の概要(確報値)

計算の結果、1日の停電であれば、蓄電池の容量が6kWhあれば、最低限の電力は十分使える計算になります。蓄電池単体で導入する場合は、6kWh以上の蓄電池で、何日分の電力を備えたいかを考えましょう

さらに太陽光発電を併用していて、停電中も発電できている場合には、日中は自家消費が可能となるうえ、夜間は蓄電池にためた電力を使い続けられます。

太陽光発電を併用する場合には、「6-2-2.【太陽光発電システムと併用する場合】太陽光による発電量に合わせる」も参考にして、蓄電池の容量を検討しましょう。

 

6-3.蓄電池の寿命

蓄電池を選ぶ際には、寿命がどのくらいなのかもチェックしましょう。

家庭用蓄電池の寿命の目安は、一般的に、15~20年ほどだといわれています。

これは、現在の主流であるリチウムイオン電池の充電と放電のサイクル数が、5000~1万回ほどで、そこから算出される寿命です。

一言で「寿命」といっても、その期間に達したら、蓄電池がすぐに使えなくなるわけではありません。

 

 

使用回数が増えるのに従って、徐々に充電効率や性能が落ち、容量が減っていきます。「寿命」というよりも、「劣化」といった方が、正確かもしれません。

具体的には、導入後10~15年たつと、蓄電池の容量が50~70%ほどに減るというイメージです。

ただし、メーカーや製品によって、寿命は異なります。メーカーの多くが製品のおおよその寿命に合わせて、容量の保証期間を設定しているので、購入前には必ずチェックしましょう。

また、使用電力より少し余裕のある容量の蓄電池を購入することで、過充電や過放電を防ぎ、寿命を延ばせます。

 

7.お近くの販売施工店や工務店でエネがえるを使ったシミュレーションをお願いしましょう

 

 

この記事では、家庭用蓄電池の解説をするにあたって、「エネがえる」のシミュレーションを活用してきました。エネがえるは、太陽光や蓄電池の費用対効果を詳細にシミュレーションできるサービスです。

家庭用蓄電池のコストパフォーマンスを確認するには、シミュレーションが欠かせません。

なぜなら、細かい条件や組み合わせの違いによって、どの程度の費用対効果が得られるのかが、大きく変わってくるからです。

例えば、以下のような条件が少し違うだけで、費用対効果に大きな差が出ます。

・家族の人数や構成

・日常的な電気の使い方

・ライフスタイルや働き方

・契約している電力会社やプラン

・自治体の補助金額

 

だからこそ、蓄電池の導入をするには、細かいシミュレーションが不可欠なのです。

もし、蓄電池や太陽光発電野導入を考えているのなら、まずはエネがえるを使ってシミュレーションをしてみましょう。

ご自宅のシミュレーションを試してみたい場合には、エネがえるを導入している、蓄電池のメーカーや電力会社、住宅メーカー、お近くの中小工務店などにお問い合わせください。

リアルなシミュレーション結果は、蓄電池を導入するか否かを判断する、決定打となるでしょう。

 

8.まとめ

家庭用蓄電池は、電力をためておき、必要なときに使うことのできる、家庭用のバッテリーです。

主な活用方法として、以下に挙げる3つの方法が挙げられます。

蓄電池単体で使う

太陽光発電と併用する

非常用電源として活用する

 

家庭用蓄電池の導入コストは、工事費込みで約100~300万円です。

また、家庭用蓄電池を、より効果的に使うための条件は、以下2つです。

 

・太陽光発電と併用する

・なるべく早い段階で併用を実現する

 

Aさん一家で太陽光発電システムと蓄電池を同時に導入すると、20年間で434万円以上、節約できます。

Aさん一家プロフィール

・東京都在住

・4人家族

・使用電力:平均400kWh/月

・検討している蓄電池の容量:約10kWh

 

また、Aさん一家の場合、太陽光発電システムと蓄電池の導入コストは約425万円なので、電気料金の上昇率や蓄電池の寿命次第では、導入コストが回収できる計算となります。

 

 

あなたの家庭に蓄電池を導入した場合、どのくらいの費用対効果が得られるでしょうか。

家庭用蓄電池が気になっているのなら、ぜひ「エネがえる」のシミュレーションをお試しください。

 

執筆者・相談先(太陽光・蓄電池シミュレーションエキスパート)

国際航業株式会社 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

執筆者:樋口 悟

執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。

太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションの国内唯一のエキスパートとして、大手電力・ガス会社、有名太陽光・蓄電池メーカー、全国販売施工店・工務店など約700社以上と、最近ではエネルギー政策立案サイド(国・官公庁・地方自治体)で太陽光・蓄電池推進政策をしている方々へもエネがえるを活用した太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションやアドバイスを提供している。

執筆者のSNS:
・Twitter:@satoruhiguchi
・LinkedInプロフィール:https://www.linkedin.com/in/satoruhiguchi/
・Sansan名刺交換:https://ap.sansan.com/v/vc/bu56hqnjvw5upna463tcfvkxka/

 

著者情報

国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

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