目次
2026年日本国内再生可能エネルギー調達・市場制度の包括的解析レポート

1. イントロダクション:2026年、日本の電力市場が直面する「三重の衝撃」
2026年1月8日現在、日本のエネルギー市場は、かつてない規模の構造的変革の只中にある。2016年の電力小売全面自由化から10年という節目を迎えた今、市場は「容量市場(Capacity Market)の実質的負担の激化」、「FIP(Feed-in Premium)制度の強制適用範囲の拡大」、そして「GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)改定に伴う環境価値評価の厳格化」という、相互に連動する3つの巨大な圧力に晒されている。これらは単なる制度変更の域を超え、企業の脱炭素戦略と財務健全性を根底から揺るがす「三重の衝撃(Triple Shock)」として顕在化している。
本レポートでは、2026年度(2026年4月〜2027年3月)に向けた電力市場の制度設計、最新のPPA(Power Purchase Agreement)スキームの実例、および国際的な環境価値基準の動向について、専門的見地から網羅的に解析する。特に、プレスリリース等で公表された最新の企業動向や、資源エネルギー庁・環境省・JEPX(日本卸電力取引所)の公開データを基に、机上の空論ではない実務的なインサイトを提供する。
1.1 2026年の市場環境を規定するマクロ要因
2026年の電力調達環境を理解する上で、最も重要なマクロ要因は「コスト構造の不可逆的な変化」と「価値基準の質的転換」である。
第一に、コスト構造の変化である。2024年度より開始された容量拠出金の支払いは、2026年度において劇的な上昇を見せている。2022年度に実施された容量市場オークションの結果が2026年度の実需給に適用されるため、燃料価格高騰や供給力不足への懸念が反映された約定価格が、そのまま小売電気事業者および需要家の負担となって跳ね返ってきているのである。これに加え、託送料金制度の改革(レベニューキャップ制度)や発電側課金の導入により、グリッド利用コストは複雑化かつ上昇傾向にある。
第二に、価値基準の質的転換である。これまでの再エネ調達は、「年間で何kWhの再エネを調達したか」という「総量(Volume)」の議論が中心であった。しかし、2026年現在、GHGプロトコルのScope 2ガイダンス改定議論や、GoogleやMicrosoftといったグローバルテック企業が主導する「24/7 CFE(24時間365日カーボンフリーエネルギー)」の潮流により、議論の主戦場は「いつ、どこで発電された再エネか」という「質(Quality)」と「時間的整合性(Temporal Correlation)」へとシフトしている。
本稿では、これらの要因が複雑に絡み合う2026年の電力市場において、企業がいかにして経済合理性と環境価値を両立させるべきか、具体的なスキーム(PPA、自己託送、証書)の解析を通じて詳述する。
2. 容量市場の衝撃と経済的影響:7,552円/kWの重圧
2026年度の電力調達において、財務担当者が最も警戒すべきリスクファクターは、間違いなく「容量拠出金(Capacity Contribution)」の急騰である。容量市場は、将来の供給力(kW価値)を確保するために発電事業者に支払われる対価を、小売電気事業者や一般送配電事業者、そして最終的には需要家が負担する仕組みである。
2.1 2026年度容量拠出金単価の異次元的上昇
2026年度(2026年4月〜2027年3月)の実需給に適用される容量拠出金単価は、2022年度に行われたメインオークションの結果に基づき決定された。その全国平均約定価格は7,552円/kW(税抜)に達し、これは制度開始初年度である2024年度(1,496円/kW)の約5倍、2025年度(3,538円/kW)と比較しても倍増という衝撃的な水準である
この価格高騰の背景には、オークション実施当時の世界的なLNG(液化天然ガス)価格の高騰、地政学的リスクの高まり、そして国内における老朽火力発電所の休廃止に伴う供給予備力の低下に対する懸念が色濃く反映されている。市場メカニズムとして、必要供給力(Target Capacity)を確保するために、限界的な電源の維持コストが価格決定要因(Marginal Clearing Price)となった結果、全体的な約定価格が押し上げられたのである。
地域間連系線制約による市場分断とエリアプライス格差
さらに2026年度の特徴として、地域間連系線の制約による市場分断が発生し、一部エリアで価格がさらに高騰している点が挙げられる。具体的には、北海道エリアおよび九州エリアにおいて、約定価格が全国平均を上回る8,749円/kW(税抜)で決着している
| エリア | 2026年度 容量市場約定価格 (円/kW) | 2025年度比 |
| 北海道・九州 | 8,749 | 大幅増 |
| 東北 | 5,833 | 増 |
| 東京 | 5,834 | 増 |
| 中部・北陸・関西・中国・四国 | 5,832 | 増 |
この地域差は、北海道や九州に拠点を置く企業にとって、他地域よりもさらに重いコスト負担を意味する。特に北海道は冬季の暖房需要によるピーク負荷が高く、容量拠出金の算定基礎となるピーク需要(H3需要)への寄与度が大きくなりがちであるため、二重の負担増となるリスクがある。
2.2 小売電気事業者および需要家への転嫁メカニズム
容量拠出金の原資は、小売電気事業者が広域的運営推進機関(OCCTO)へ支払う拠出金によって賄われる。小売電気事業者は、このコストを最終需要家への電気料金に転嫁せざるを得ないが、その方法は各社の約款や契約条件により異なる。
転嫁方式の類型とコストインパクト試算
一般的に、容量拠出金の転嫁には「基本料金への上乗せ」と「電力量料金(kWh)への上乗せ」の2つのアプローチが存在する。2026年度の単価水準に基づき、そのインパクトを試算する。
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基本料金への上乗せ方式:
契約電力(kW)または実量制契約における最大需要電力(デマンド値)に対して課金される。
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試算: 転嫁単価が仮に2,000円/kW・月程度(年間負担額を月割り等で調整)に設定された場合、契約電力500kWの工場では、月額で約100万円のコスト増となる可能性がある
。1 -
影響: 稼働率(負荷率)が低い工場や、特定の時間帯だけ高負荷となる施設にとって、基本料金の大幅な増額は実質的な電気料金単価(円/kWh)の跳ね上がりを招く。
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電力量料金(従量料金)への上乗せ方式:
容量拠出金の総額を使用電力量(kWh)で除して回収する。
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試算: 1kWhあたり約2円〜4円程度の上乗せが見込まれる
。1 -
影響: データセンターや24時間稼働の工場など、電力使用量が膨大な需要家にとって、数円単位の単価上昇は年間数千万円から数億円規模のコストインパクトとなる。
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2.3 企業が取るべき対抗策:ピークマネジメントの重要性
このコスト構造の変化は、企業のエネルギー戦略における「ピークマネジメント(Peak Management)」の優先順位を劇的に引き上げる。小売電気事業者が負担する容量拠出金は、各エリアのピーク需要発生時(H1需要:年間の最大需要発生時の1時間値など)における各社の需要シェアに基づいて算定されるケースが多い。
したがって、需要家側でデマンドレスポンス(DR)や蓄電池を活用し、系統全体のピーク時間帯における受電電力を抑制(ピークカット)することができれば、小売電気事業者の負担を軽減し、ひいては自社の容量拠出金転嫁額を抑制交渉する余地が生まれる。2026年は、単なる「省エネ」ではなく、「いつ電気を使わないか」という戦略的負荷調整が、財務的防衛策として不可欠となる。
3. 制度的枠組みの再編:FIP制度拡大とインバランス市場の高度化
2026年度は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた制度改革が実行フェーズに移る年でもある。FIP制度の適用範囲拡大と、インバランス料金制度の見直しは、発電事業者およびPPA需要家の双方に新たなリスクと機会をもたらす。
3.1 FIP制度の強制適用範囲拡大と「50kWの壁」
FIP(Feed-in Premium)制度は、再エネ発電事業者が卸電力市場等で電気を販売した際に、基準価格(FIP価格)と市場価格(参照価格)の差額をプレミアムとして交付する仕組みである。2022年度の導入以降、大規模案件を中心に適用されてきたが、2026年度よりその対象が劇的に拡大される。
2026年度の制度変更点
これまでの制度では、FIP制度のみが認められる(FITが選択できない)対象は「250kW以上」の発電設備であった。しかし、2026年度からはこの閾値が「50kW以上」へと引き下げられる方向性が示されている
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影響: これまで高圧連系(50kW以上2MW未満)の太陽光発電所開発において主流であったFIT(固定価格買取制度)が事実上選択できなくなり、中規模案件であっても市場連動型のFIP制度への移行が義務付けられる。
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事業環境の変化: 50kW規模の発電事業者にとって、市場価格の変動リスク管理や、計画値同時同量(バランシング)の責務を負うことは大きなハードルとなる。これにより、アグリゲーター(特定卸供給事業者)への業務委託や、バランシンググループ(BG)への加入が必須となり、再エネアグリゲーションビジネスの市場規模が拡大する。
初期投資支援スキーム(屋根設置優遇)
一方で、導入ポテンシャルの高い屋根設置型太陽光については、2025年度下半期より「初期投資支援スキーム」が導入されている。これは、調達期間の前半(例えば最初の4〜5年間)の買取価格を高く設定し、後半(6〜20年目)を低く設定することで、初期投資回収を早める仕組みである
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2025-2026年の動向: 住宅用(10kW未満)や事業用屋根設置において、このスキームを活用したオンサイトPPAモデルが、金利上昇局面における資金調達コストの低減策として注目されている。
3.2 2026年度インバランス料金制度等の改革
電力需給の安定化と市場機能の強化を目的として、2026年4月からインバランス料金および需給調整市場の価格設定ルールが変更される。
インバランス料金(需給逼迫時)の上限引き上げ
2026年度より、需給逼迫時に適用されるインバランス料金(ペナルティ価格)の上限が、従来の200円/kWhから300円/kWhへと引き上げられることが決定した
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需要家・BGへの影響: 新電力や自己託送を行う企業にとって、需給逼迫時の予測外しは致命的な財務損失につながるリスクが高まる。これにより、精度の高いAI需給予測システムへの投資意欲が高まっている。
需給調整市場:入札上限価格の引き下げ(7.21円の衝撃)
調整力(ΔkW)を取引する需給調整市場においては、入札上限価格を7.21円/ΔkW・30分(=14.42円/ΔkW・h)に統一・引き下げる案が提示されている
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系統用蓄電池ビジネスへの影響: これまで上限価格付近(約19.51円)での応札を収益の柱としていた一部の調整力電源やDRリソースにとっては、収益性の低下を意味する。特に、新規参入が相次ぐ系統用蓄電池ビジネスにおいては、アービトラージ(裁定取引)だけでなく、需給調整市場での収益確保が事業計画の要となるため、この上限価格引き下げはROI(投資対効果)の再計算を迫るものである。事業者はより高度な充放電制御により、機会損失を最小化し、複数の市場(卸市場、需給調整市場、容量市場)を跨いだ最適運用(マルチユース)が求められる。
4. 最新再エネ調達スキームのケーススタディ:深化するPPAと自己託送
制度変更の荒波の中で、企業はどのように再エネを調達しているのか。PR TIMES等で公表された最新の実例を基に、2026年時点での主要スキームの進化を解析する。
4.1 【バーチャルPPA】JR東日本×Daigasエナジーの巨大スキーム
2026年のPPA市場における象徴的な事例として、**JR東日本とDaigasエナジー(大阪ガスグループ)によるバーチャルPPA(VPPA)**が挙げられる
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スキーム概要: 大阪ガス、エネウィル、SMFLみらいパートナーズが出資する「和歌山御坊バイオマス発電所」(和歌山県、50MW級)を、既存のFIT制度からFIP制度へと移行させる。そこで創出される「非FIT非化石証書(再エネ指定)」を、Daigasエナジーを通じてJR東日本が長期購入する。
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規模とインパクト: 調達量は年間約3.5億kWh(350GWh)に達し、単独需要家による環境価値調達としては国内最大級である。これによりJR東日本は年間約15万トンのCO2削減を見込む。
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戦略的分析:
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FITからFIPへの移行: 稼働済みのFIT電源をFIPへ移行させることで、国民負担(再エネ賦課金)の軽減に貢献しつつ、発電事業者はJR東日本という優良なオフテイカー(引取手)を確保することで、FIP移行後の市場リスクをヘッジできる。
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バーチャルの利点: 鉄道事業のように需要地点が広域に分散し、かつ負荷変動が激しい業態において、物理的な電力供給(フィジカルPPA)ですべてを賄うことは技術的・実務的に困難である。VPPAであれば、既存の電力契約(一般送配電事業者や新電力との契約)を維持したまま、環境価値のみを一括で調達できるため、極めて合理的な選択といえる。
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追加性(Additionality)の担保: 既存電源の活用ではあるが、FIP移行を契機とした契約であり、再エネの市場統合を促進するという意味で広義の追加性が認められるスキームである。
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4.2 【オフサイト・フィジカルPPA】三井不動産×北海道電力の地域密着モデル
オフサイト・フィジカルPPAにおいても、地域特性を活かした大規模な取り組みが進んでいる。三井不動産と北海道電力の事例はその典型である
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スキーム概要: 三井不動産グループが開発に関与する新規メガソーラーからの電力を、北海道電力の送配電網を通じて、三井不動産が所有する北海道内の施設へ供給する。
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戦略的分析: 北海道エリアは再エネポテンシャルが高い一方で、需要地(札幌圏等)への送電容量制約が課題となることが多い。地域の大手電力会社と組むことで、系統連系やバランシングの課題をクリアし、地産地消型の脱炭素モデルを構築している。
4.3 【自己託送】Nifco等の製造業における活用とリスク管理
自己託送は、自社(またはグループ会社)の発電設備から、送配電網を介して自社拠点へ送電するスキームであり、再エネ賦課金が免除される(現状)という強力な経済的メリットがある。
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実例: 工業用プラスチック部品メーカーの**ニフコ(Nifco)**や、RE100電力が支援する各企業において、自己託送の導入が進んでいる
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2026年の課題: 前述の通り、インバランス料金の上限引き上げや、自己託送指針における「密接な関係」の定義厳格化がリスク要因となっている。これに対し、RE100電力などのアグリゲーターは、自己託送支援サービスとして、発電予測・需要予測・インバランス精算代行を一括で提供するソリューションを展開している。特に、系統用蓄電池を自己託送スキームに組み込み、余剰電力を蓄電して夕方のピークタイムに放電することで、インバランスを抑制しつつ、容量拠出金対策(ピークカット)を同時に行う高度な運用が登場している。
5. 国際基準の進化と「質の競争」:GHGプロトコルと24/7 CFE
2026年、日本企業の脱炭素戦略を最も大きく左右するのは、国内制度以上に「国際ルールの変更」である。再エネの価値は、「量(kWh)」から「時間と場所(Time & Location)」へと急速に高度化している。
5.1 GHGプロトコル Scope 2 改定の最終局面
GHGプロトコル(GHG Protocol)は、企業の温室効果ガス排出量算定の事実上の世界標準である。2025年10月から開始されたScope 2ガイダンス改定案のパブリックコンサルテーションは、ステークホルダーからの膨大なフィードバックを受けて2026年1月31日まで延長されており、現在その議論は最終局面にある
主要な論点と日本企業への影響
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時間単位マッチング(Hourly Matching)の導入議論:
従来の「年間の総消費電力量」と「年間の再エネ発電量(証書)」を突き合わせる方式(Annual Matching)から、**「1時間単位(またはそれ以下)」**での需給一致を求める方向性が強く示唆されている。
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インパクト: これが導入された場合、太陽光発電の証書(昼間のみ発電)を、夜間の電力消費に充当することが認められなくなる可能性がある。夜間操業の工場やデータセンターにとって、太陽光偏重のPPAポートフォリオは「Scope 2ゼロ」達成の手段として不十分となるリスクがある。
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地域的整合性(Deliverability):
証書の産地と消費地が、物理的に送電可能な範囲内(同一の入札エリアや連系線制約を考慮した範囲)であることを求める要件。
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インパクト: 北海道で発電された再エネ証書を東京で使用する場合、地域間連系線の空き容量等が厳密に問われることになり、安価な地方の再エネ価値の移転に制約がかかる。
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フェーズ分けされた改定プロセス:
今回の改定作業は「フェーズ1(主要要件の改定)」と「フェーズ2(詳細論点)」に分かれており、フェーズ1の成果物は2026年第2四半期頃に確定、最終的な新基準の発行は2027年となる見込みである19。日本企業は、この「移行期間」において、将来の厳格化を見越した調達契約を結ぶ必要がある。
5.2 24/7 CFE(Carbon Free Energy)の社会実装
GHGプロトコルの改定を先取りし、24時間365日カーボンフリー電力を目指す「24/7 CFE」の取り組みが、日本国内でも具体的なサービスとして登場している。
国内主要プレイヤーの動向
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自然電力(Shizen Energy):
国連主導の「24/7 Carbon-Free Energy Compact」に加盟。自社の再エネ開発力とデジタル技術を融合し、蓄電池制御とシステム連携によるアワリーマッチング(Hourly Matching)の実証を進めている20。特に、発電予測と需要予測をリアルタイムで突き合わせ、不足分を蓄電池や他の再エネ電源で補完するシステムレベルの連携が鍵となっている。
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J-Power(電源開発):
同Compactに加盟し、自身が保有する多様な電源ポートフォリオ(水力、風力、地熱、太陽光)を強みとする。出資先のScalar社が持つ分散型台帳技術(ブロックチェーン)を活用した「環境価値プラットフォーム」を開発し、時間単位での非化石価値証明の実証を行っている21。ベースロード電源である水力や地熱を持つJ-Powerは、24/7 CFEの供給において圧倒的な優位性を持つ。
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UPDATER(旧みんな電力):
「顔の見える電力」から「時間の見える電力」への進化を掲げ、2025年7月より、小売電気事業者向けに24/7 CFE対応のシステム外販を開始した22。2027年度までに20社への導入を目指しており、自社でシステム開発が困難な中小規模の新電力に対し、トラッキング機能を提供するプラットフォーマーとしての地位を確立しようとしている。
5.3 JEPX非化石価値取引市場の進化:トラッキングの高度化
日本卸電力取引所(JEPX)における非化石証書取引も、この国際潮流に合わせてインフラを刷新している。
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全量ブロックチェーン管理: 2025年3月より、非化石証書の管理システムがブロックチェーン基盤へと移行した
。これにより、改ざん防止だけでなく、発電から消費までのトレーサビリティをリアルタイムに近い速度で証明することが技術的に可能となった。24 -
トラッキング情報の付与率: 市場流通量の約65%にトラッキング情報(電源種別や発電所所在地)が付与されており、RE100が求める「運転開始15年以内」といった属性情報の確認も容易になっている。
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2025年度取引スケジュール: 年4回のオークション(2025年8月、11月、2026年2月、5月)が予定されており
、需要家は翌年6月末の有効期限を意識した計画的な調達が必要である。25
6. 結論と戦略的ロードマップ:2026年を生き抜くために
2026年1月8日時点の市場環境を総括すると、日本の再エネ調達は「導入期」を完全に脱し、「統合・最適化期」へと突入したと言える。容量市場によるコスト増、FIPによる市場統合、GHGプロトコルによる質の追求という3つの波は、企業のエネルギー戦略に高度な専門性を要求している。
6.1 企業が取るべき具体的アクション
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ポートフォリオの「時間分散」:
太陽光発電(PV)のみに依存したPPAは、将来的に環境価値としての訴求力を失うリスクがある。風力、バイオマス、小水力、あるいは蓄電池併設型PPAを組み合わせ、夜間や悪天候時の再エネ比率を高める「再エネ・ミックス」の構築が急務である。J-Powerや自然電力のような、多様な電源を持つパートナーとの提携が鍵となる。
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「守り」の投資:ピークマネジメント:
7,552円/kWという容量拠出金単価は、企業のP/Lを直撃する。オンサイト蓄電池やEMSを活用し、独自のピークカットを行うことは、もはや選択肢ではなく必須の財務防衛策である。これは自己託送におけるインバランス回避策ともシナジーを持つ。
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FIP/VPPAへの能動的関与:
FIP制度が標準となる中、発電事業者にすべての市場リスクを負わせる契約形態は、過大なリスクプレミアム(調達コスト増)を招く。JR東日本のように、需要家自身がVPPA等を通じて市場リスクの一部を分担、あるいは長期間のオフテイクを保証することで、スケールメリットを活かした安価な環境価値調達が可能となる。
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データドリブンな調達基盤の整備:
1時間単位、あるいは30分単位での電力消費データと再エネ充当データを管理・証明できるIT基盤を持たなければ、2027年以降のGHGプロトコル新基準に対応できない。ベンダー各社が提供するシステムを活用し、自社のエネルギーデータの可視化と証書マッチングの自動化を進めるべきである。
2026年は、日本のエネルギー市場において「選別」が始まる年である。コストと価値のメカニズムを深く理解し、能動的にリスクと機会をコントロールできる企業だけが、脱炭素社会における真の勝者となるであろう。
参考文献・データソース:
本レポートは、2026年1月8日時点までに公表された以下の情報を統合・解析して作成された。
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経済産業省・資源エネルギー庁: FIP制度詳細
、容量市場約定結果4 、インバランス料金制度1 、自己託送指針6 27 -
環境省・GHGプロトコル: Scope 2改定動向
16 -
JEPX: 非化石価値取引市場スケジュール
25 -
企業プレスリリース: JR東日本・Daigasエナジー
、自然電力10 、J-Power20 、UPDATER21 、三井不動産22 、ニフコ13 、RE100電力14 他15



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