おひさまエコキュートと昼間沸かしの解説 – オール電化自家消費シミュレーションって?

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

 

おひさまエコキュートと昼間沸かしの解説 – オール電化自家消費シミュレーションって?

太陽光発電を設置したのに、天気の良い日に電気が捨てられているらしい

こんな話を聞いたことはありませんか?再生可能エネルギーの主力として期待される太陽光発電。その普及が進む一方で、「出力抑制」という深刻な問題が顕在化しています。せっかくクリーンなエネルギーを生み出しても、電力網が受け止めきれずに無駄になってしまうのです。

一方で、私たちの家庭では電気代の高騰が止まりません。エネルギーを有効活用したいのに、どこか歯がゆい思いを抱えている方も多いのではないでしょうか。

実は、この大きな矛盾を解決する鍵が、私たちの暮らしの中に隠されています。それは「エコキュートは深夜に沸かすもの」という“常識”を疑うことから始まります。

この記事では、太陽光発電の余剰電力を最大限に活用し、家計と地球に貢献する次世代のエネルギーマネジメント、「おひさまエコキュート」と「エコキュートの昼間沸かし」について、業界の裏側や構造的な課題にも踏み込みながら、徹底的に解説します。

さらに、この複雑なエネルギーシフトを成功に導くための強力な武器として、国際航業株式会社が提供するエネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」が、いかにして私たちの意思決定をサポートしてくれるのか、その具体的な機能と可能性を解き明かしていきます。

参考:エコキュートの昼間沸き上げやおひさまエコキュートの提案はシミュレーションできるか?対応しているか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

この記事を読み終える頃には、あなたは、

  • なぜ今、エコキュートを「昼間に沸かす」べきなのか、その本質的な理由を理解できる。

  • 太陽光発電のポテンシャルを120%引き出す、具体的な方法論がわかる。

  • 複雑な電気料金プランや設備の組み合わせから、最適な選択を導き出す「羅針盤」の存在を知る。

  • 日本の脱炭素化に向けた、家庭でできる最も効果的なアクションが見える。

そんな未来への解像度が高まっているはずです。さあ、日本のエネルギーの未来を左右する「昼間需要シフト」の最前線へ、一緒に旅を始めましょう。

参考:おひさまエコキュート対応やエコキュート昼間沸かしの試算はできますか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

第1章:なぜ今、「昼間沸かし」なのか?日本のエネルギー事情と家庭に迫る“静かなる危機”

エコキュートの昼間沸かし」を理解するためには、まず、日本の電力システムが直面している大きな課題を知る必要があります。

キーワードは「太陽光発電の普及」と、その裏で深刻化する「出力抑制」です。

1-1. 嬉しい悲鳴?太陽光発電の普及がもたらした新たな課題「出力抑制」

日本の再生可能エネルギー導入は、2012年に始まったFIT(固定価格買取制度)によって大きく加速しました。特に太陽光発電は、住宅の屋根から広大な土地を活用したメガソーラーまで、急速に普及が進みました。

しかし、この急拡大が、電力の安定供給を担う電力系統に新たな課題を突きつけています。それが「出力抑制」です。

出力抑制とは、電力の需要と供給のバランスを保つために、電力会社が発電事業者(太陽光発電所など)に対して、一時的に発電を停止するよう指示を出すことです。

なぜ、そんな「もったいない」ことが起きるのでしょうか?

電気は、常に需要(消費量)と供給(発電量)を一致させなければならない、という鉄則があります(同時同量の原則)。このバランスが崩れると、周波数が乱れ、最悪の場合、大規模な停電(ブラックアウト)を引き起こす可能性があります。

春や秋の晴れた日中など、過ごしやすい気候でエアコンなどの電力需要が少ないにもかかわらず、太陽光発電がフル稼働すると、電力の「供給」が「需要」を大幅に上回ってしまいます。この“電気が余る”状態を防ぐための最終手段が、出力抑制なのです。

資源エネルギー庁のデータによれば、九州電力エリアでは2022年度に80回もの出力抑制が実施され、その量は約4.3億kWhにも上ります。これは、一般家庭約14万世帯の年間電力消費量に相当する電力が、活用されずに捨てられている計算になります。この問題は、今後、全国のエリアでさらに深刻化していくと予測されています。

1-2. “アヒル”が示す未来の電力需要?「ダックカーブ」問題の本質

この電力の需給アンバランス問題を象徴するのが、「ダックカーブ」という現象です。

ダックカーブとは、1日の電力需要の推移をグラフにした際、太陽光発電が活発になる昼間帯の正味需要(電力需要から太陽光発電量を引いたもの)が大きく落ち込み、太陽が沈んで発電量がゼロになる夕方から夜にかけて需要が急増する様子が、座っているアヒルの姿に似ていることから名付けられました。

このグラフが示す問題点は2つあります。

  1. 昼間の供給過剰(アヒルの腹): 太陽光発電の大量導入により、昼間の電力需要が極端に低下し、出力抑制のリスクが高まります。

  2. 夕方の需要急増(アヒルの首): 太陽光がなくなる夕方に、家庭の照明や調理、テレビなどの需要が一気に立ち上がり、電力供給の急激な増加(ランプアップ)が必要になります。この急変動に対応するため、火力発電所などを待機させておく必要があり、コスト増加やCO2排出の要因となります。

このダックカーブ問題を解決しなければ、せっかく導入した再生可能エネルギーを有効活用できず、脱炭素社会の実現も遠のいてしまいます。

1-3. 解決策は「需要シフト」。賢く電気を使う時代へ

では、どうすればこの問題を解決できるのでしょうか?

答えは、発電側だけでなく、私たち需要家(電気を使う側)が、賢く電気の消費パターンを変えることにあります。これが「デマンドレスポンス(DR)」や「需要シフト」と呼ばれる考え方です。

つまり、電気が余っている昼間に、積極的に電気を使うように生活をシフトさせるのです。

これまで家庭では、電力会社の料金プランに合わせて「夜間に電気を使い、昼間は節約する」のが常識でした。しかし、これからは「太陽が輝く昼間に、積極的に電気を使う」という、全く新しい発想が求められています。

この「昼間需要シフト」の最も強力な担い手として、今、大きな注目を集めているのが、各家庭に設置されている「エコキュート」なのです。

参考:おひさまエコキュート対応やエコキュート昼間沸かしの試算はできますか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

第2章:「おひさまエコキュート」と「昼間沸かし」徹底解説 – 新時代の賢いお湯づくり

「エコキュートは、電気代の安い深夜にお湯を沸かす給湯器」

この常識を覆し、太陽光発電時代の新たな主役となるのが、「おひさまエコキュート」と、それによる「昼間沸かし」運転です。

2-1. そもそもエコキュートとは?

まずはおさらいです。エコキュートは、ヒートポンプ技術を利用してお湯を沸かす家庭用給湯器です。空気中の熱(ヒート)を集めて、その熱でお湯を沸かす(キュート)ことから名付けられました。電気ヒーターだけでお湯を沸かすのに比べ、約1/3のエネルギー消費で済む、非常に効率の高い省エネ機器です。

従来のエコキュートは、電力会社の「深夜電力が安い」料金プランを活用するため、タイマー設定で夜間(主に23時〜翌7時頃)に1日分のお湯をまとめて沸き上げ、貯湯タンクに貯めておくのが基本的な使い方でした。

2-2. 新常識「おひさまエコキュート」と「昼間沸かし」

おひさまエコキュート」は、この常識を根底から覆します。これは、特定の商品名というよりも、太陽光発電の余剰電力を活用して、昼間に沸き上げを行う機能を備えたエコキュートの総称です。

その最大の特長は、AI(人工知能)を活用した賢い制御にあります。

  • 天気予報連動機能: インターネット経由で翌日の天気予報を取得。晴れ予報で太陽光発電による余剰電力が見込める日は、夜間の沸き上げを控えめにし、昼間の発電に合わせて自動で沸き上げを行います。

  • 自家消費最適化: 太陽光の発電量と家庭の電力使用量をモニタリングし、「余剰電力が発生したタイミング」を狙って、かしこく沸き上げを開始します。これにより、電力会社から電気を買う量を最小限に抑え、自家消費率を劇的に向上させます。

もちろん、専用の「おひさまエコキュート」でなくても、最近の多くのエコキュートには、手動や自動で昼間に沸き上げをシフトさせる機能が搭載されています。これにより、家庭のライフスタイルや太陽光発電の状況に合わせて、柔軟な運用が可能になっているのです。

2-3. 「昼間沸かし」がもたらす3つの絶大なメリット

エコキュートを昼間に沸かすことには、家庭にとっても、社会にとっても大きなメリットがあります。

  1. 経済的メリット:電気代を根本から削減

    最大のメリットは、何と言っても電気代の削減です。FITによる売電価格が年々下落し、一方で電力会社から購入する電気代は高騰を続けています。もはや、太陽光で発電した電気は「売るより自家消費する方が断然お得」な時代です。

    昼間に余った電気をエコキュートの沸き上げに使うことで、これまで捨てていた(あるいは安く売っていた)電気を有効活用し、電力会社から買う電気を大幅に減らすことができます。さらに、電力会社もこの「昼間シフト」を後押しするため、昼間の電気料金が割安になる新しい料金プラン(例:東京電力エナジーパートナーの「くらし上手」など)を提供し始めており、これらを組み合わせることで、さらなる経済効果が期待できます。

  2. 環境的メリット:CO2削減と再エネ普及への貢献

    太陽光というクリーンなエネルギーを自家消費することは、CO2排出量の削減に直結します。家庭レベルでの脱炭素アクションとして非常に効果的です。

    さらに、多くの家庭が昼間にエコキュートを稼働させれば、地域全体の昼間の電力需要が高まり、前述した「出力抑制」の回避に貢献できます。つまり、家庭での「昼間沸かし」が、社会全体の再生可能エネルギーの有効活用を支えることになるのです。

  3. レジリエンス向上:災害時にも“お湯”という安心を

    エコキュートの貯湯タンクは、災害時に非常用の生活用水として活用できるという大きなメリットがあります。昼間に沸き上げておくことで、万が一、午後に地震や台風などで停電・断水が発生した場合でも、温かいお湯が確保されている可能性が高まります。これは、特に小さなお子様や高齢者のいるご家庭にとって、大きな安心材料となるでしょう。

参考:おひさまエコキュート対応やエコキュート昼間沸かしの試算はできますか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

第3章:【業界の不都合な真実】なぜ最適な提案がされにくいのか?普及を阻む3つの“壁”

これほど多くのメリットがある「昼間沸かし」ですが、なぜもっと爆発的に普及しないのでしょうか?そこには、太陽光・住宅設備業界が長年抱えてきた、根深く、そして構造的な課題が存在します。普段、業界の人が当たり前のように感じてしまい、見過ごされがちな「もやもや」の正体をえぐり出してみましょう。

3-1. 慣習・常識の壁:「エコキュートは深夜」という“思考停止”

最も根深いのが、販売・施工店の営業担当者に染みついた「エコキュート=深夜電力で沸かすもの」という固定観念です。長年、それが最も経済的で合理的な方法でした。成功体験が強いほど、新しいコンセプトへの転換は難しくなります。

顧客に新しい価値を提案するには、まず自らがその価値を深く理解し、旧来の知識をアップデートする必要があります。しかし、日々の業務に追われる中で、複雑化するエネルギー事情や新しい料金プラン、新製品の機能を学び続けるのは容易ではありません。結果として、提案しやすい従来通りの「深夜沸かし」プランに落ち着いてしまいがちなのです。

3-2. 知識・スキルの壁:複雑すぎる“最適解”の方程式

太陽光発電、蓄電池、エコキュート、そしてEV(電気自動車)。これらを組み合わせ、さらに数十社・数百種類に及ぶ電力会社の料金プランの中から、ある特定の家庭にとっての「最適解」を導き出す。これは、もはや人間が手計算や経験則だけで太刀打ちできるレベルを超えています

  • どのメーカーの太陽光パネルを何kW載せるのか?

  • 蓄電池は必要か?容量は?

  • おひさまエコキュートは本当に得か?

  • 今の電力プランのままでいいのか?昼間安いプランに変えるべきか?

  • それらを組み合わせた場合の投資回収期間は何年か?

これらの問いに、正確かつ迅速に答えるのは至難の業です。国際航業が実施した調査「独自レポートVol.8」では、産業用太陽光の営業担当者の40.7%が「細かなシミュレーション比較ができない」ことを課題に挙げています。これは住宅用においても同様の傾向が見られ、提案の質が営業担当者のスキルに大きく依存してしまっているのが実情です。

3-3. コミュニケーションの壁:「本当に得なの?」顧客の不安を拭えない

たとえ営業担当者が複雑な計算を乗り越え、最適だと信じるプランを提示できたとしても、最後の壁が立ちはだかります。それは、顧客の「それって本当?」という疑念です。

「シミュレーションの数字は良いことばかり言うけど、実際はそんなにうまくいくはずがない」

「10年後、20年後の電気代なんて誰にもわからないじゃないか」

こうした不信感は、高額な設備投資を検討する顧客にとって当然の心理です。国際航業の別の調査「独自レポートVol.21」によると、実に83.9%もの営業担当者が、顧客から「経済効果シミュレーション結果の信憑性」を疑われた経験があると回答しています。

この「信憑性の壁」を乗り越え、顧客に納得して導入してもらうための客観的で説得力のあるコミュニケーションツールが、これまで圧倒的に不足していました。結果として、多くの商談が「検討します…」という言葉で終わり、再エネ普及の大きな機会損失につながっていたのです。

参考:おひさまエコキュート対応やエコキュート昼間沸かしの試算はできますか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

第4章:DXが壁を打ち破る!「エネがえる」が可能にする需要シフト革命

前章で述べた「慣習」「知識」「コミュニケーション」という3つの巨大な壁。これらを打ち破り、日本の再エネ普及を加速させる強力なソリューションが、デジタル技術の活用、すなわちDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

その中核を担うのが、国際航業が開発・提供するクラウド型エネルギー診断SaaS「エネがえる」です。ここでは、「エネがえる」が、いかにして「おひさまエコキュート」や「昼間沸かし」の提案を革新するのか、その具体的な機能に迫ります。

4-1. 複雑な方程式を“5分”で解く魔法のツール

「エネがえる」の真髄は、その圧倒的なシミュレーション能力にあります。これまで専門家でも多大な時間を要した複雑な経済効果の試算を、誰でも、カンタンに、わずか数分で行うことを可能にしました。

特に、今回のテーマである「昼間沸かし」の提案において、「エネがえる」は絶大な威力を発揮します。FAQページ「おひさまエコキュート対応やエコキュート昼間沸かしの試算はできますか?」にもあるように、その提案機能は極めて高度です。

  • おひさまエコキュート/昼間沸かしの専用ロジック: 太陽光の余剰電力(自家消費できずに余る電力)を計算し、その電力をエコキュートの沸き上げに優先的に回した場合の電気代削減効果を正確にシミュレーションします。

  • 昼間シフトに最適な料金プランの自動提案: 全国100社3,000プラン以上もの膨大な電気料金プランデータベースと連携。現状のプランで昼間沸かしをした場合と、昼間が安いプランに乗り換えて昼間沸かしをした場合など、複数のシナリオを瞬時に比較・提示できます。

  • 沸き上げ時間帯の柔軟な設定: 「太陽光の発電時間帯(例:9時~15時)に系統からの買電も使いながら沸かす」「余剰電力“だけ”で沸かす」といった、顧客の希望に応じた細かい条件設定が可能。これにより、よりパーソナライズされた納得感の高い提案が実現します。

これにより、これまで営業担当者の頭を悩ませてきた「知識・スキルの壁」は、テクノロジーによって解消されます。経験の浅い新人でも、ベテランと同じ、あるいはそれ以上に精度の高い提案書を、顧客の目の前でスピーディーに作成できるのです。

4-2. “見える化”が顧客の不安を納得に変える

エネがえる」のもう一つの強みは、その優れた「見える化」の能力です。算出した結果を、専門知識のない顧客でも直感的に理解できるグラフや表を多用した診断レポートとして出力します。

  • 導入前後の電気代の変化

  • 太陽光の発電、自家消費、売電、買電の内訳

  • 設備導入の初期費用と、何年で元が取れるか(投資回収期間)

  • CO2削減効果

これらの情報が一目瞭然になることで、営業担当者と顧客の間の「コミュニケーションの壁」は一気に低くなります。感覚的な「お得ですよ」ではなく、客観的なデータに基づいた「これだけお得になります」という対話が可能になるのです。

事実、国際航業の調査「独自レポートVol.27」では、太陽光導入を検討する企業の約7割が「初期段階から具体的な数値」を求めていることがわかっており、迅速で精度の高いシミュレーションが導入意欲を高めるカギであることが示されています。

さらに、国際航業は日本リビング保証と提携し、シミュレーション結果を保証する「経済効果シミュレーション保証」という画期的なサービスも開始。これにより、「本当にシミュレーション通りになるの?」という顧客の最後の不安さえも払拭し、絶対的な信頼感を醸成しようとしています。

4-3. API連携で広がる「エネがえる経済圏」

「エネがえる」のビジョンは、単なる一アプリケーションに留まりません。その頭脳であるシミュレーションエンジンを、API(Application Programming Interface)として外部の企業やサービスに提供することで、業界全体のDXを推進しています。

  • エクソルの事例: 太陽光パネルメーカーのエクソルは、自社のシミュレーションシステムに「エネがえるAPI」を導入。これにより、提案作成時間を大幅に短縮し、より精度の高い自家消費提案を実現しました。

  • パナソニックの事例: パナソニックは、EV充電サービス「おうちEV充電サービス」において、「エネがえるAPI」の電気料金プランシミュレーション機能を活用。ユーザーに最適な充電タイミングや料金プランを提案するサービスの根幹を支えています。

このように、太陽光メーカー、電力会社、住宅メーカー、EV関連企業などが「エネがえる」のエンジンを自社サービスに組み込むことで、それぞれの顧客接点において、標準化された高精度なシミュレーションを提供できるようになります。これは、業界全体が「昼間需要シフト」という同じ方向を向いて、顧客に最適な価値を提供していくための、強力なエコシステム(経済圏)の形成と言えるでしょう。

参考:おひさまエコキュート対応やエコキュート昼間沸かしの試算はできますか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

第5章:【未来展望】需要シフトが加速する社会と私たちの暮らし

「おひさまエコキュート」と「エネがえる」が可能にする昼間需要シフトは、単に一家庭の電気代が安くなるという話に留まりません。それは、日本のエネルギーシステム全体を変革し、私たちの暮らしをより豊かで持続可能なものへと導く、大きな可能性を秘めています。

5-1. 家庭が“発電所”になる「VPP(仮想発電所)」の時代

一つひとつの家庭に導入された太陽光発電、蓄電池、おひさまエコキュート、そしてEV。これらをICT技術で統合的に制御し、あたかも一つの大きな発電所のように機能させる。これがVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)のコンセプトです。

例えば、電力需要が逼迫した際には、各家庭の蓄電池から一斉に放電したり、エコキュートの稼働を一時的に停止したりすることで、地域全体の電力需給を安定させることができます。逆に、太陽光発電が過剰になった際には、一斉にエコキュートを稼働させたり、EVに充電したりすることで、余剰電力を吸収する巨大な「受け皿」となります。

国際航業も、経済産業省の「再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業」に参画するなど、この未来のエネルギーシステムの構築に深く関わっています。個々の家庭のエネルギーマネジメントが、社会全体の安定化に貢献し、その対価として報酬(インセンティブ)を得られる。そんな新しい関係性が生まれようとしています。

5-2. EV/V2Hがもたらす、さらなるエネルギー革命

今後の需要シフトを考える上で、絶対に欠かせないピースがEV(電気自動車)とV2H(Vehicle to Home)です。V2Hは、EVに搭載された大容量バッテリーを家庭用の蓄電池として活用するシステムです。

一般的な家庭用蓄電池の容量が5〜15kWh程度であるのに対し、EVのバッテリー容量は40〜100kWhと桁違いに大きいのが特徴です。

  • 昼間: 太陽光の余剰電力で、エコキュートだけでなくEVにも充電する。

  • 夕方〜夜間: EVから家庭に給電し、電力需要のピークを賄う。

これにより、家庭は電力会社から電気を買う必要がほとんどない「エネルギーの地産地消」、さらには「オフグリッド(電力網からの独立)」に近い生活を実現することも夢ではありません。

国際航業は、この成長市場を見据え、EVとV2Hの経済効果を専門に試算する「エネがえるEV・V2H」をいち早くリリース。移動手段としてのコスト(ガソリン代)削減と、家庭のエネルギーハブとしてのコスト(電気代)削減を統合的にシミュレーションし、EV導入の価値を最大化する提案を可能にしています。

5-3. データが導く、究極のパーソナライズと地域脱炭素

未来のエネルギーマネジメントは、さらに「データ駆動型」へと進化していきます。

例えば、パイオニアと国際航業が進める「地域のCO2排出量可視化&再エネ導入効果試算ソリューション」では、自動車の走行データ(いつ、どこを、どれだけ走ったか)と電力データを組み合わせます。これにより、「平日は通勤で毎日50km走るが、休日はほとんど家にいる」といった個人のライフスタイルに合わせ、EV充電の最適なタイミングや、太陽光・V2Hの導入効果を、極めて高い解像度でシミュレーションできるようになります。

また、自治体レベルでは、こうしたデータを活用することで、どの地域で重点的に再エネ導入やEV普及を促進すべきか、効果的な政策立案が可能になります。国際航業が提供する「自治体スマエネ補助金データAPIサービス」などを活用し、住民に最適な補助金情報と、導入後の具体的な経済メリットをセットで提示できれば、地域全体の脱炭素化は一気に加速するでしょう。

参考:おひさまエコキュート対応やエコキュート昼間沸かしの試算はできますか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

結論:未来は選ぶものではなく、創るもの。今、行動を起こすための第一歩

本記事では、太陽光発電の出力抑制という社会課題を起点に、その解決策としての「おひさまエコキュート」と「昼間沸かし」、そして、その複雑な意思決定を支援する「エネがえる」の役割と可能性について、多角的に掘り下げてきました。

ポイントを改めて整理しましょう。

  1. 課題: 太陽光発電の普及は、「出力抑制(捨てられる電気)」と「ダックカーブ」という新たな課題を生み出している。

  2. 解決策: 解決の鍵は、電気が余る昼間に需要を創出する「需要シフト」にある。その主役が、家庭の「エコキュート」と「EV」である。

  3. 新常識: 「エコキュートの昼間沸かし」は、太陽光の余剰電力を自家消費し、電気代削減とCO2削減を両立する、これからの時代のスタンダードである。

  4. 壁と武器: しかし、その普及は「慣習・知識・コミュニケーション」の壁に阻まれている。この壁を打ち破るのが、「エネがえる」のような高精度なシミュレーションツール(DX)である。

  5. 未来: 個々の家庭の賢いエネルギー選択が、VPPやデータ駆動型社会を実現し、日本全体の脱炭素化を加速させる。

参考:おひさまエコキュート対応やエコキュート昼間沸かしの試算はできますか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

私たちは今、エネルギーとの関わり方において、大きな転換点に立っています。もはや、国や電力会社が引いたレールの上を走るだけの時代ではありません。私たち一人ひとりが、テクノロジーを武器に、自らのエネルギーをマネジメントし、未来を創造していく時代です。

もし、あなたが一般のご家庭の方であれば、まずはご自宅の電気の使われ方に関心を持つことから始めてみてください。

電力会社の検針票を眺め、太陽が出ている時間の電気の使い方を意識してみる。そして、太陽光発電やエコキュートの導入を検討する際には、ぜひ販売店におひさまエコキュートや昼間沸かしのシミュレーションをお願いします。『エネがえる』でシミュレーションしてもらえますか?と尋ねてみてください。その一言が、あなたにとって最適な提案を引き出すきっかけになるはずです。

もし、あなたが業界関係者の方であれば、今こそ旧来の常識をアップデートする時です。複雑化する顧客のニーズに応え、信頼を勝ち取るためには、経験と勘だけに頼る営業スタイルには限界があります。「エネがえる」のようなDXツールを積極的に導入し、データに基づいた透明性の高い提案を行うこと。それが、企業の競争力を高め、ひいては日本の再エネ普及を加速させる原動力となります。

昼間の太陽の光は、地球から私たちへの、最も公平でクリーンな贈り物です。その恵みを、一滴たりとも無駄にしない。そんな賢くて、しなやかな社会を築くための挑戦は、すでに始まっています。

その第一歩を踏み出すのは、他の誰でもない、私たち自身です。


ファクトチェックサマリー

本記事は、信頼性と透明性を担保するため、以下の公開情報、調査レポート、プレスリリースに基づいて執筆されています。

  • 「おひさまエコキュート/昼間沸かし」のシミュレーション機能について: 国際航業株式会社「エネがえるFAQ」の記事1および記事2に基づき、システムの仕様を解説しました。

  • 販売事業者の課題について: 国際航業「独自レポートVol.8」で報告された、営業担当者の40.7%が「細かなシミュレーション比較ができない」という調査結果を引用しました。

  • シミュレーションの信頼性に関する課題について: 国際航業「独自レポートVol.21」で報告された、営業担当者の83.9%が顧客から経済効果の信憑性を疑われた経験がある、という調査結果を引用しました。

  • 顧客のニーズについて: 国際航業「独自レポートVol.27」で報告された、導入検討企業の約7割が初期段階から具体的な数値を求めている、という調査結果を引用しました。

  • 「エネがえる」のサービス展開とAPI連携事例について: 国際航業が発表したエクソル社(2025/6/16)、パナソニック社(2025/6/9)との連携に関するプレスリリース、および「エネがえるEV・V2H」(2023/6/1)や「経済効果シミュレーション保証」(2024/4/30)などの各種サービスリリース情報を参照しました。

  • VPP、地域脱炭素への取り組みについて: 経済産業省「再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業」への参画(2021/6/9)や、パイオニア社との協業(2023/11/16)、自治体向けAPIサービス(2025/3/4)に関するプレスリリースに基づいています。

  • 日本のエネルギー事情(出力抑制など)について: 資源エネルギー庁などが公開している統計情報や公知の事実を基に記述しています。

本記事の内容は、これらの一次情報源を構造的に整理・解析し、日本のエネルギーシフトにおける本質的な課題と、その解決策を提示する目的で再構成したものです。

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