電気代予測 2025~2028年のシナリオ別分析と世帯モデル別コスト試算

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

再エネ 太陽光 蓄電池 環境学習,教育
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目次

電気代予測 2025~2028年のシナリオ別分析と世帯モデル別コスト試算

はじめに:電気代高騰の現状と予測の重要性

近年、日本の家庭の電気代は上昇傾向が顕著になっており、家計への負担が増大しています。特に2022~2023年にかけて燃料価格の高騰や円安の影響で大手電力の料金値上げが相次ぎ、標準的な家庭の電気料金は過去最高水準に達しました。例えば東京電力では2023年6月に規制料金メニューの大幅改定(約10年ぶりの実質値上げ)が行われ、従量電灯Bの電力量料金単価が約20~30%引き上げられています。その結果、1kWhあたりの平均単価は2023~2024年で25円台から30円近くまで上昇し、月々の電気代負担は2020年頃と比べても大幅に増えています。こうした電気代高騰は家計だけでなく企業の経営にも影響を及ぼし、社会全体で大きな課題となっています。

では、2025年7月から2028年6月までの今後3年間、電気代はどのように推移するのでしょうか。本記事では、最新のエネルギー情勢や政策動向を踏まえ、複数の将来シナリオ別に短期的な電気料金上昇率を予測します。また、一人暮らしからファミリー世帯、高齢世帯まで5つの代表的な世帯モデルを想定し、それぞれの年間・月間の電気代がどの程度になるかをシナリオ別に試算します。さらに電気代上昇の背景要因を高解像度で解析し、電気代高騰に備えるためのポイントや、新たな価値提案につながる視点も提示します。

電気代の行方を左右する燃料費調整再生可能エネルギー賦課金容量市場など制度面の前提も織り込み、ガス併用世帯とオール電化世帯の違いにも着目します。短期とはいえ不確実性が高まるエネルギー環境下で、私たち消費者・事業者がどのような戦略を取るべきか、本記事の洞察がヒントになれば幸いです。

電気料金の仕組みと現在の料金内訳

まず、家庭の電気料金の基本的な構造を押さえておきましょう。電気代は一般に**「基本料金」+「電力量料金(従量料金)」+「燃料費調整額」+「再生可能エネルギー発電促進賦課金」+「消費税」**の合計で算出されます。順に概要を説明します。

  • 基本料金:契約アンペア数に応じて毎月定額で支払う料金です。例えば東京電力従量電灯Bでは10A契約で約295円、30Aなら約886円(税込)というように設定されています。一般家庭では30A~60A程度で契約しているケースが多く、基本料金は電気代全体の中で数百~数千円程度の割合を占めます。2023年の大手電力値上げでは多くの社が基本料金は据え置きとし、従量料金のみ改定しました。

  • 電力量料金(従量料金):使用した電力量(kWh)に応じて課金される部分です。多くの電力会社で段階制の料金単価が採用されており、使用量が増えるほど1kWhあたり単価が高くなります。例えば東京電力の従量電灯B(改定後)は**最初の120kWhまでは30.00円/kWh、120~300kWhは36.60円/kWh、300kWh超過分は40.69円/kWh(税込)**と設定されています。したがってエアコンやIH調理器などで電力使用量が多い月ほど割高な料金単価が適用され、電気代が跳ね上がる仕組みです。

  • 燃料費調整額:発電用の燃料価格(LNG、石炭、石油)の変動を電気料金に反映させるための制度です。燃料価格が上がると従量料金に上乗せ、下がると減額されます(※ただし規制料金の場合は上限あり・下限なし)。調整単価は毎月見直され、各社の電気料金明細では「燃料費調整額」として表示されています。昨今の燃料高騰期にはこの燃料費調整額が**正の値(上乗せ)**となり、電気代を押し上げる主要因となりました。例えば2022年度後半には燃料費調整の上限に達したため、政府が補助金を出して上乗せ分を一部相殺する「激変緩和措置」も実施されたほどです。現在(2025年)は補助が終了し、燃料費調整額は原則すべて電気料金に転嫁されています。

  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金):再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT/FIP)に基づき、電力会社が再エネ電力を買い取る費用を国民全体で負担するための追加徴収額です。賦課金単価は毎年度見直され、導入初年度の2012年は0.22円/kWhでしたが、2024年度には3.49円/kWh、そして2025年度には過去最高の3.98円/kWhに達しています。つまり標準家庭(月260kWh)の場合、毎月約1,034円を賦課金だけで負担している計算です。再エネ賦課金は再エネ普及を支える重要な制度ですが、電気代上昇の一因にもなっており**「安い電源だが追加コストにもなる」**という再エネの二面性を示す典型例です。

  • 容量市場拠出金:2024年から本格導入された容量市場(将来の発電容量を確保するための市場)の費用負担分です。小売電気事業者は容量市場の結果に応じて一定額を支払う義務が生じ、それが電気利用者の料金に**「制度負担金」として転嫁されています。地域や事業者によりますが、負担額は1kWhあたり数円程度になる見込みで、多くの新電力が2024年4月以降の料金に反映し始めています。容量市場自体は将来的な供給力確保による価格安定効果**も期待されていますが、短期的には電気料金の新たな上昇要因となります。

以上が電気料金の主な内訳です。このほか消費税(10%)も含めて考えると、電気料金=基本料金+電力量料金(燃料費調整込)+再エネ賦課金+消費税という構成になります。実際の請求書ではこれらが合算されますが、電気代の上昇要因を正しく理解するには各構成要素の動きを把握することが重要です。

電気代を左右する要因:国際エネルギー市場から政策まで

今後数年間の電気代を予測するにあたり、押さえておくべき構造要因があります。電気料金の行方は単純な需給だけでなく、燃料市場や政策、技術動向など複数のファクターに左右されます。ここでは特に重要なポイントを解説します。

1. 国際燃料価格と為替動向(地政学リスク)

燃料価格は電気料金に直結する最大の要因です。日本の発電用燃料の大半は輸入に依存しており、LNG(液化天然ガス)や石炭、石油の国際価格次第で発電コストが大きく変動します。近年ではロシアのウクライナ侵攻や産油国の政策によってエネルギー価格が急騰し、電気料金もそれに引きずられました。特にLNG価格は2022年に史上最高値圏となり、調達コスト増が各社の燃料費調整額に反映されました。

また為替レートも重要です。日本円がドルに対して安くなれば(円安)、同じ燃料価格でも輸入コストは割高になります。逆に円高になれば燃料調達費を幾分抑えられます。例えば2022年は1ドル=140~150円台の円安が進行し、燃料費負担を増幅させました。今後の数年間、仮に円安基調が続いたり、地政学的リスク(中東情勢や周辺国の紛争拡大など)が高まれば、燃料価格高騰→電気代上昇の圧力が継続しかねません。一方、エネルギー市場の安定や国際協調により燃料価格が落ち着けば、電気料金の上昇にもブレーキがかかるでしょう。

2. 発電電源構成:再生可能エネルギーの拡大と原子力稼働

電源ミックス(発電源の構成比)も中長期的な電気料金の水準を決定づける大きな要素です。特に鍵となるのは再生可能エネルギー原子力発電の動向です。

  • 再生可能エネルギーの普及:政府は2030年に再生可能エネルギー比率36~38%(現在は約20%前後)を目標に掲げています。今後太陽光発電や風力発電の大規模導入が進めば、発電コストの低減要因になります。実際、欧州では太陽光の大量導入で日中の電力卸価格がゼロ円近くになる現象も見られます。しかし日本の場合、前述のように再エネ普及にはFIT由来の賦課金コストが伴うため、普及ペースと制度設計次第で電気代への影響はプラスにもマイナスにも働く点に注意が必要です。短期的には賦課金負担が重くても、長期的には燃料費不要の再エネ比率を高めることが電気代安定化につながる可能性があります(後述の楽観シナリオ参照)。

  • 原子力発電の再稼働:原発は一度稼働すれば燃料費が安く、大量の電力を安定供給できるベースロード電源です。東日本大震災以降、日本の原発は長らく停止状態が続きましたが、安全審査に合格した炉から順次再稼働が進んでいます。政府方針では2030年に原子力比率20~22%を目標に掲げ、運転期間延長や新型炉の開発も模索されています。原発が計画通り再稼働すれば火力燃料費の圧縮につながり、電気料金の上昇抑制要因となります。逆に原発ゼロに戻れば高価な火力発電への依存度が高まり、料金上昇圧力が増します。ある試算によると2030年に原発比率0%の場合と15%以上維持した場合で、家庭の月額電気代に約3,000円の差が生じるとの結果もあります。これは原発政策が電気料金に直結することを端的に示す数字です。したがって今後数年で何基の原発が動くか(あるいは停止するか)は、燃料価格と並んで電気代を左右する重要因です。

3. 脱炭素政策とカーボンプライシングの影響

気候変動対策の文脈で、**カーボンプライシング(炭素に価格づけをする仕組み)**の導入も議論が進んでいます。日本政府は2028~2030年頃までに本格的なカーボンプライシング制度(炭素税や排出量取引市場)を導入する方針を示しており、既に試行的な排出量取引も開始されています。仮に2030年前後にCO2排出に対し1トン当たり数千円の炭素税が課されると、石炭火力由来の電力コストや都市ガス料金が上乗せされる可能性があります。短期の2025~2028年では直接的な影響は限定的かもしれませんが、政策決定のタイミング次第では発電燃料や産業への炭素コスト負担が電気料金にも転嫁され始めるかもしれません。

また脱炭素政策全般として、電化推進(EVシフトやヒートポンプ普及)、省エネ基準強化、補助金制度なども間接的に電気代に影響します。例えば自動車のEV化が進めば電力需要が増え、発電設備増強や電力市場の需給ひっ迫を招く恐れがあります。一方で住宅の断熱性能向上や省エネ家電の普及が進めば需要は抑制され、電気代上昇の圧力を和らげます。脱炭素への移行期には一時的に負担増となる側面もありますが、長期的にはエネルギーコスト削減につながる施策でもあります。短期予測を立てる際も、これら政策動向がもたらす需要構造の変化を注視する必要があります。

4. 電力需給バランスとシステム要因(データセンター需要・容量市場)

電気代は需給バランス、すなわち電力需要の増減と供給余力にも影響されます。特に今後注目すべきは、デジタル経済の拡大に伴う電力需要の新たな増加要因です。近年、クラウドサービスや生成AIの普及に伴い、それらを支える大規模データセンターの建設が国内外で相次いでいます。データセンターは大量の電力を消費するため、日本全体の需要に占める割合が飛躍的に高まる見通しです。日本総研の試算では、国内電力需要(現状約9,000億kWh)のうち将来データセンター由来が+1,000~2,000億kWh(全体の10~20%増)になる可能性があるとされています。これは関西電力や中部電力管内の需要規模にも匹敵し、もし供給力増強が追いつかなければ需給逼迫と価格高騰の要因となり得ます。2025~2028年の短期では一部稼働が始まる段階かもしれませんが、この動きは中長期の電力市場に大きな影響を及ぼすでしょう。

また第2章で触れた容量市場の創設は、ピーク需要時の供給力確保策ですが、少なくとも初期段階では消費者の電気料金に追加コストをもたらします。容量市場導入による1kWh数円程度のコスト増は、新電力各社が料金値上げに踏み切る一因となりました。ただ、中長期的には容量市場のおかげで予備力が増え、大停電リスクやスポット価格急騰を防ぐことでkWh単価の安定化につながるという指摘もあります。したがって容量市場の効果は短期と長期で異なり得ます。少なくとも2025~2028年の期間については、容量市場拠出金が電気代に加算される上昇圧力となる点に留意が必要です。

以上のように、国際燃料市況、発電ミックス(再エネ・原発)、政策(炭素価格化)、需要動向(データセンター等)といった複合的な要因が電気料金を押し上げたり押し下げたりする可能性があります。次章では、これら要因の不確実性を踏まえいくつかのシナリオを設定し、2025~2028年の電気料金の推移を予測してみましょう。

シナリオ別:今後3年間の電気料金上昇率予測

電気料金の将来は一つに決め打ちするのが難しく、複数のシナリオを比較検討することが有用です。ここでは突発高騰・悲観・標準・楽観の4つのケースを想定し、それぞれ2025年から2028年にかけての電気代の上昇率(年あたりの値上がり幅)と背景要因を分析します。

① 突発高騰シナリオ(エネルギーショックケース)

「ブラックスワン型」のケースともいえるのがこの突発高騰シナリオです。想定としては、地政学リスクの顕在化などにより燃料価格が急騰し、短期間で電気代が跳ね上がる事態です。具体的には、例えば2026年前後に中東や東欧で大規模紛争や資源輸出制限が発生し、原油やLNG価格が再び史上例のない高値を付ける――といったシナリオです。

この場合、日本の電気料金も1年で二桁%の大幅アップとなる可能性があります。例えば2026年単年で電気代が20%前後急騰し、その後も高止まりする展開です。月々の電気代で見ると、現在1万円の家庭は一気に1万2千円超に達する計算です。過去を振り返っても、オイルショック時や2011年震災後の原発停止時には短期間で20~30%もの値上げが行われた例があります。突発高騰シナリオではそれが再来するイメージです。

背景要因としては、燃料高騰に加え為替の急激な円安(例えば1ドル=160円超)や、発電所トラブルによる供給制約など複合的ショックが重なることを想定しています。政府も緊急策として新たな補助金や節電要請を出すかもしれませんが、エネルギー安全保障上の問題はすぐには解決せず、少なくとも数ヶ月~1年程度は高値が続くでしょう。エネがえるの調査によれば、極端なケースでは「2030年に電気料金が1.8倍になる」との試算も過去になされており、本シナリオはそれに匹敵する厳しい道筋といえます。

② 悲観シナリオ(年4~5%上昇の高インフレケース)

こちらは急激ではないものの持続的に高いインフレ率で電気代が上がり続けるケースです。毎年の上昇率を4~5%程度と見込み、3年間で累計13~16%前後の値上がりになります。例えば2025年夏に1kWhあたり30円だったものが、2028年には35円前後まで上昇するイメージです(※3年で約5割増となる2030年時点で約45円/kWhに達する計算で、の悲観シナリオに近い値です)。

背景要因としては、世界的な燃料高が沈静化せず慢性的な高価格状態が続くことが挙げられます。ウクライナ情勢が長期化・泥沼化し、原油・LNG価格が2020年代後半も高止まり、あるいはじわじわ上昇し続ける展開です。さらに国内要因では脱炭素移行の遅れで火力発電への依存脱却が進まず、原発も思うように再稼働できない状況を想定します。再エネ導入も計画未達に終わり、賦課金コストだけが先行して重荷になる恐れがあります。

このシナリオでは、例えば標準的な4人家庭の月額電気代(現在約1.5万円)が3年後には1.7~1.8万円に増加し、家計負担は確実に重くなります。2025年比で電気代1.5倍近くにもなれば、エアコンの使用を控える家庭が出るなど生活への影響も無視できません。悲観シナリオは決して確実に訪れる未来ではありませんが、**「最悪の場合これくらい上がり得る」**という上限シナリオとして念頭に置いておくべきでしょう。

③ 標準シナリオ(年2~3%上昇のベースラインケース)

こちらは**「おおむね現在の延長線上」と考えられるケースです。年率2~3%程度の緩やかな電気代上昇が続く想定で、3年間で累計6~10%**ほどの値上がりとなります。具体的には、1kWh単価30円が2028年には32~33円程度になるイメージです。で示されたベースラインシナリオに近く、2020年代後半には上昇が頭打ちになる前提ですが、短期的にはなお年数%の上昇傾向が残るケースです。

標準シナリオの背景には、まず国際燃料価格が徐々に安定し大きな外的ショックがないことがあります。燃料費調整額も現在の高水準からこれ以上は大きく上振れせず、むしろ2026年以降は若干落ち着くか横ばいになる想定です。一方で再エネや原発の導入は政府計画通りに進むとし、供給コストの上昇圧力は徐々に緩和されます。賦課金単価も2026年度以降は横ばい~微増程度に収まることを期待します。

このケースでは、例えば月1万5千円の電気代が3年後に約1万6千円前後になる計算です。じりじり上がるものの家計に急激なインパクトを与えるほどではなく、多くの家庭は省エネ対策などで十分対応可能な範囲かもしれません。実質賃金の上昇や他の物価上昇と同程度であれば、社会的にも受容しやすいでしょう。エネがえるの分析では「2025年をピークにその後は横ばい~微減に転じる」との見通しがベースラインとして示されており、本シナリオも2025年前後で上昇が鈍化し始める点が特徴です。言い換えれば、「今が高値圏だがこれ以上は大きく上がらないだろう」という控えめな前提のケースです。

④ 楽観シナリオ(年0~1%上昇もしくは横ばい・微減ケース)

最後は最も明るい見通しに基づくシナリオです。電気代の年上昇率が0%台~せいぜい1%未満に抑えられ、場合によっては物価上昇率次第で実質横ばい、さらには微減する可能性もあるケースです。2025年から3年後の2028年にかけて電気料金はほぼ現状維持か微増程度となり、1kWh単価30円が30~31円程度で収まるイメージです。場合によっては2030年頃を境に安価な電源への置き換えが進み、2030年代にはさらに低下に向かうという理想的な未来像も含みます。

楽観シナリオが実現するための条件としては、まず再生可能エネルギーの飛躍的な拡大と技術革新があります。太陽光や風力のコストが大幅に低下し、大量導入によって燃料費のかかる火力発電を置き換えていく展開です。また、大容量の蓄電池や水素など新たなエネルギー貯蔵・変換技術が実用化し、不安定な再エネ電源を安定化できれば、発電コスト全体を押し下げられます。加えて原発の一定稼働(少なくとも現在稼働中の炉が止まらず維持され、新たに数基再稼働)により、燃料費ゼロの電源比率が高まることも寄与します。

需要側でも、省エネやデマンドレスポンスの高度化でピーク需要を抑え込み、データセンター等の新規需要増も効率的設備でカバーできれば、需給逼迫による市場価格高騰を防げます。さらに為替も安定または円高基調になり、国際エネルギー市場も協調に向かう――そうした複合的な好条件が重なれば、電気代はこれ以上上がらずむしろ2020年代初頭の水準に回帰するシナリオも描けます。エネがえるのシナリオ分析では、楽観ケースで2035年に家庭用単価が約20円/kWhまで低下(2025年比▲30%以上)との試算も示されており、実現すれば非常に大きな恩恵をもたらすでしょう。

もっとも、これほど楽観的に進むには相当大胆な政策と投資が前提となります。短期の3年間で見れば、せいぜい上昇が止まるかごく微小な伸びに留まる程度と考えるのが現実的かもしれません。しかし少なくとも電気料金が今後下がる可能性もゼロではないことを示す意味で、楽観シナリオにも目を向けておく価値があります。

以上4つのシナリオをまとめると、突発高騰=短期急騰型、大幅値上げ、悲観=持続的な高インフレ、標準=穏やかな増加、楽観=横ばい~減少という対照的な見通しになります。現実にはこの中間を行くケースも十分あり得ますが、少なくとも**燃料価格(国際市況)電源構成(再エネ・原発比率)**が今後の電気代を決定づける重要因である点は全シナリオ共通の示唆です。

では、これらシナリオによって具体的に各家庭の電気代はどの程度変わるのでしょうか。次の章では、代表的な世帯モデルごとに電力消費量の特徴を踏まえ、2025年と2028年の電気代を試算比較します。

世帯モデル別:電気代シミュレーションと影響分析

電気の使い方は世帯ごとに様々です。ここでは典型的な5つの世帯モデルを設定し、それぞれの月間電力使用量に基づいて電気代を試算します。またガス併用かオール電化かによる違いも考慮し、各シナリオでの影響度合いを比較します。モデルは以下の通りです。

  • ① 単身世帯(マンション・ガス併用) …一人暮らしのケース。日中は不在がちで夜間に家電を使うことが多い。ガスコンロ・ガス給湯器利用。月の電力使用量は約150kWh前後が目安です。※家計調査などによれば1人世帯の平均消費電力量は1,500~2,000kWh/年程度と報告されています。

  • ② 共働き夫婦世帯(マンション・ガス併用) …大人2人のケース。日中は共に外出し夜間中心の消費。マンション暮らしで比較的省エネ傾向。ガス併用(調理・給湯)。月の電力使用量は約250kWh程度と想定します。季節によってエアコン使用量が増減しますが、断熱性の高い集合住宅ゆえ比較的電力消費は抑えられます。

  • ③ 標準的な4人家族(戸建・ガス併用) …夫婦+子ども2人想定の一般家庭。戸建住宅で在宅時間も長め。調理・給湯は都市ガス使用。電力使用量は全国平均で**年間5,000~5,500kWh(≒月平均416~458kWh)**とのデータがあります。月によって変動し、真夏や真冬は500kWh超、春秋は300kWh台と季節差が大きいパターンです。

  • ④ オール電化4人家族(戸建) …上記4人家族が給湯・調理も電気で賄うケース。IHクッキングヒーターやエコキュート(電気給湯器)を使用し、ガス代は発生しません。電力使用量はガス併用世帯の約1.3倍に増加し、全国平均で年間6,600kWh(≒月550kWh)程度とされています。特に冬場と夏場の使用量が大きく、1月や8月には月500~600kWh台に達することもあります。電気代は高額になりますが、多くの場合電化住宅向けの割安プラン(時間帯別料金など)を契約しているため、標準プランに比べ割高感を抑えているケースが多いです※本記事では簡便のため標準的な料金単価で計算します。

  • ⑤ 高齢夫婦世帯(戸建・ガス併用) …リタイア後の夫婦2人暮らし。日中も在宅時間が長く、照明や暖房をつけている時間帯が多い傾向です。反面、共働き世帯に比べ家電製品も少なく生活パターンも一定しているため、電力使用量は月300kWh前後と想定します。戸建住宅かつ高齢住宅で断熱性能が低い場合、冬季は暖房用にガスや石油ストーブを使うこともありますが、ここでは一般的なエアコン暖房とガス給湯の併用を想定します。

以上のモデルについて、まず2025年時点の月額電気代を試算し、その後2028年に各シナリオでどう変化するかを見てみましょう。計算には大手電力会社の従量電灯プラン(前節の東京電力の料金単価)を用い、燃料費調整額・再エネ賦課金も含めた税込金額で算出します。

▶ 2025年時点の電気代(モデル世帯別)
大まかな試算では、単身世帯(150kWh/月)で5,000~6,000円程度、共働き夫婦(250kWh/月)で8,000~9,000円程度、4人家族(400kWh/月,ガス併用)で約15,000~17,000円程度、オール電化4人家族(550kWh/月)で約23,000~25,000円程度、高齢夫婦(300kWh/月)で10,000~12,000円程度となります(地域や契約により異なりますが、ここでは目安として算出)。例えばガス併用4人家族の場合、電力量料金は月約12,000円、基本料金約900円、燃料調整額・賦課金等が2,000~3,000円加算され、合計でおよそ1万5千円台後半となる計算です。オール電化家庭では電力量料金部分が飛躍的に増えるため2万円超のインパクトがあります。このように世帯規模とオール電化か否かで電気代の絶対額は大きく変わります。

では、これらの世帯で電気代が今後どう変わるか、2028年時点を各シナリオで試算します。

▶ 2028年の電気代試算(各モデル×シナリオ)
下表に、2025年との比較で2028年の月額電気代がどの程度になるかをまとめます(概算)。標準シナリオは年2.5%増、悲観は年4.5%増、楽観は年0.5%増で計算しています。突発高騰シナリオは一時急騰を想定するため別途後述します。

世帯モデル (月間使用量) 2025年電気代 → 2028年楽観シナリオ 2025年電気代 → 2028年標準シナリオ 2025年電気代 → 2028年悲観シナリオ
① 単身(150kWh) 5,500円 → 5,600円程度(+100円) 5,500円 → 5,900円程度(+400円) 5,500円 → 6,400円程度(+900円)
② 共働き夫婦(250kWh) 8,500円 → 8,700円程度(+200円) 8,500円 → 9,300円程度(+800円) 8,500円 → 10,000円程度(+1,500円)
③ 4人家族・ガス併用(400kWh) 16,000円 → 16,400円程度(+400円) 16,000円 → 17,600円程度(+1,600円) 16,000円 → 18,800円程度(+2,800円)
④ 4人家族・オール電化(550kWh) 24,000円 → 24,600円程度(+600円) 24,000円 → 26,500円程度(+2,500円) 24,000円 → 28,800円程度(+4,800円)
⑤ 高齢夫婦(300kWh) 11,000円 → 11,200円程度(+200円) 11,000円 → 12,100円程度(+1,100円) 11,000円 → 12,900円程度(+1,900円)

(※各値は税込の概算。使用量や契約条件によって実際の金額は上下します)

この試算から分かるように、標準シナリオ(年2~3%増)では約3年間で家計の電気代負担は1割弱増える見込みです。たとえば4人家族(ガス併用)のケースで月1,600円程度の増加、オール電化世帯では月2,500円以上の増加となり、電気代の占める家計比率がじわじわ高まります。一方、楽観シナリオ(上昇率ごく僅少)では増加幅は数百円程度に留まり、現在とほぼ変わらない負担感で推移することが期待されます。逆に悲観シナリオ(年4~5%増)では3年間で15%前後の値上がりとなり、オール電化家庭では月額約5,000円もの負担増、ガス併用の標準家庭でも**+2,000~3,000円の負担増となります。特にオール電化家庭は電力使用量そのものが多いため、上昇率が同じでも絶対額の増加が大きい**点に注意が必要です。これは将来の電気代が上振れするほど、オール電化か否かで家計に差が出ることを示唆しています。

なお、突発高騰シナリオに関しては、例えば2026年に電気代が20%急騰した後2028年にやや落ち着く、といった推移になると考えられます。この場合、2026年のピーク時には上記悲観ケースをさらに上回る水準(表の値×1.2倍程度)まで一時的に跳ね上がり、その後2028年には悲観ケース程度まで緩和される、というイメージです。つまり短期的には家計に**“電気代ショック”が走り、一時的に月数千円規模の急増を経験した後、高止まりしたまま横ばいになる恐れがあります。突発高騰シナリオ下では、一年でも早く太陽光や蓄電池を導入して電力自給率を高める**などの対策が家計防衛に有効となるでしょう(後述)。

以上の分析から、ガス併用世帯よりオール電化世帯の方が電気代上昇リスクに晒されやすいことが確認できます。一方でオール電化世帯はガス代が掛からない分、総合的なエネルギーコストでは一長一短です。仮に悲観シナリオで電気代が大きく上昇しガス代も上がった場合、ガス併用家庭は電気代+ガス代の両方が増えるのに対し、オール電化家庭は電気代のみ増える代わり額面が大きいという違いがあります。例えば標準家庭のケースで、悲観シナリオ時に電気代+ガス代の合計を比較すると、おおむねガス併用家庭(電気1.8万円+ガス5千円=2.3万円)とオール電化家庭(電気2.88万円)で大差ない水準になると考えられます。むしろ再エネシフトが進む将来を見据えると、オール電化+自家発電(太陽光等)の組み合わせは電気代高騰への耐性を高める有力な手段と言えるでしょう。

◆ エネがえるSimでのシミュレーション活用: なお、ここでの試算はあくまで概算ですが、実際のご家庭ごとの詳細なシミュレーションにはエネルギー診断ツール「エネがえる」を活用できます。エネがえるのクラウドシミュレーターでは、将来の電気代上昇率も自由に設定してシミュレーションできるため、上記シナリオを想定した場合に太陽光発電や蓄電池の導入でどれほど電気代を削減できるか、といった経済効果を15秒程度で診断できます。こうしたツールも活用しつつ、自宅のエネルギーコストを定量的に把握・対策検討することが重要になってきます。

次章では、電気代高騰に対して各家庭・企業が取り得る具体的な対策や、今後の展望について考察します。

電気代高騰時代への備え:対策と新たな視点

電気代の上昇が見込まれる中、私たちができる備えや対策にはどのようなものがあるでしょうか。ここでは家計・企業それぞれの視点から、エネルギーコスト増に対応するポイントを整理します。

家庭における省エネと自給エネルギー活用

まず家庭レベルで最も基本となるのは省エネルギーの徹底です。すぐに実行できる節電策としては、「高効率LED照明への交換」「エアコンの適切温度設定」「待機電力のカット」などが挙げられます。特にエアコンは電力消費が大きいので、断熱シートの活用やサーキュレーター併用で冷暖房効率を上げるといった工夫が有効です。また契約アンペアの見直し(使わない回路を減らして20A契約に変更する等)で基本料金を下げることも一部世帯では検討に値します。

次にエネルギー自給の活用です。太陽光発電設備を設置できる住宅であれば、電気代高騰への最強の対策となります。昼間の電力を自家消費することで高い電気料金の購入を減らせ、余剰電力は売電収入にもなります。電気料金が毎年数%上がる前提では、太陽光発電の投資回収期間は大幅に短縮されます。蓄電池を組み合わせれば夜間にも太陽光の電気を使え、さらなる削減効果と非常用電源の安心が得られます。実際、エネがえるのシミュレーション結果によれば、長期的には電気料金上昇によるメリット(削減額増)が設備劣化によるデメリットを上回ることが示されており、電気代が上がれば上がるほど太陽光・蓄電池導入の経済メリットが増大する傾向があります。

例えば前述の悲観シナリオ(年4~5%上昇)の場合、10年後には電気代単価が1.5倍近くになります。その分、自家発電設備で節約できる金額も当初見込みより大きくなり、投資対効果が高まります。現時点で採算が合わないと判断したケースでも、電気代の前提条件を見直すとプラスに転じる可能性があります。電気代高騰リスクに備える意味でも、再エネ設備導入は検討価値が大いにあるでしょう。

電力プランの最適化とオール電化の是非

自由化後の日本の電力市場では、様々な料金プランや新電力事業者のメニューが存在します。電気代削減のためには契約プランの見直しも定期的に行いましょう。特にオール電化住宅の方は夜間割引プラン(例:「電化上手」「ナイトタイムプラン」等)を適用することで、深夜電力を安く使える利点があります。エコキュートによる夜間湯沸かしや蓄電池の安価電力充電などを活用し、昼間の高単価時間帯の購入電力量を減らす工夫ができます。逆に日中不在がちで夜間の使用が少ない共働き世帯なら、昼も夜も単価が一定のシンプルなプランや、再エネ比率の高いプランを選ぶのも一つです。契約アンペアも含め、自分のライフスタイルに最適なプランに切り替えることで数%~一割程度のコスト削減が期待できます。

オール電化にするか否かについては、判断が悩ましいところです。電気代が高騰するとオール電化住宅の光熱費はダイレクトに上がるためリスクにも見えますが、その一方で都市ガスやLPガスの料金も今後上がらない保証はありません。実際、都市ガス料金も燃料であるLNG価格や為替に影響され、悲観シナリオでは2030年に現在比+40%以上(1.6倍)になる可能性が指摘されています。オール電化はそうしたガス料金のリスクを回避しエネルギー源を電気に一本化することで、太陽光や蓄電池など対策を集中的に施せるメリットもあります。またIHクッキングヒーターは火を使わず安全で、高効率給湯器(エコキュート)はランニングコストがガス給湯より安いケースもあります。デメリットとしては停電時に調理・給湯が止まる点がありますが、それも蓄電池や発電機の備えでカバー可能です。総合すると、電気代の将来見通しが悲観的であっても、再エネや蓄電との親和性を考慮すればオール電化は十分選択肢になり得るでしょう。実際、**エネがえるのデータ分析でも「オール電化のインパクトは大きい」**と指摘されており、電化設備と料金プランの最適な組み合わせができれば家計にプラスとなるケースも多々あります。

企業・産業界での対応策

家庭以上に電力コストの影響が大きいのが企業や産業分野です。特に製造業やデータセンター運営等は電気代高騰が利益を直撃します。企業が取り得る対策としては、省エネ投資の加速(高効率モーター・ボイラー導入、工場断熱強化等)、自家発電・PPAの活用(工場屋根の大型PV、コージェネレーション設備導入、第三者所有モデルのPPA契約締結)などが挙げられます。また電力使用量の多い企業は電力先物市場やコモディティ市場でのヘッジ取引によって将来の価格変動リスクを抑える手法も考えられます。日本ではまだ電力デリバティブの流動性が十分でないものの、今後ニーズが高まれば企業向けのヘッジ手段も拡充されるでしょう。

需要抑制の取り組みとして、デマンドレスポンス(DR)への参加も注目です。ピーク時間帯に工場の負荷を一時的に落とす代わりにインセンティブを得る仕組みで、電力ひっ迫時には自家発電設備を稼働することで電力会社に協力する事業者も増えています。こうした需要側調整市場は容量市場と並んで今後発展が期待され、参加企業は電力コスト削減と収入機会の両面でメリットがあります。

さらに、中長期的には事業構造の転換も視野に入るかもしれません。電気代が恒常的に高止まりする場合、エネルギー多消費型産業は国内競争力が低下します。そのため生産プロセスの電化(例:製鉄の電炉化)や燃料転換(グリーン水素の活用)、海外拠点との生産配分見直し等、抜本的な対応が必要になる可能性もあります。政府の支援策(補助金や税制優遇)もうまく活用し、脱炭素とコスト対策を両立するイノベーションに取り組むことが、企業の持続的成長に不可欠でしょう。

新たな視点:エネルギーマネジメントとビジネスチャンス

電気代高騰の局面は、裏を返せば新たなビジネスチャンスの芽生える局面でもあります。例えば家庭向けにはエネルギーマネジメントサービスの需要が拡大するでしょう。HEMS(ホームエネルギー管理システム)やAIを用いた最適制御で、太陽光・蓄電池・EV充放電を自動的に最適化するサービスが普及すれば、ユーザーは意識せずとも電気代を削減できます。実際、エネがえるAI Senseのように気象予測と電気料金プランを連動させて蓄電池充放電を最適化する技術も登場しており、今後ますます高度なエネルギー制御ソリューションが開発されるでしょう。

また高騰するエネルギー費用をオフセットするため、カーボンクレジットやグリーン電力証書の活用も拡大が見込まれます。企業が再エネ調達や自己託送によって電力コストとCO2排出を同時に削減する動きも加速するでしょう。エネルギー分野のスタートアップや異業種からの参入も活発化し、需要家側からの創意工夫で市場を変えていくことが期待されます。

総じて、電気代高騰は痛みではありますが、エネルギーの使い方を見直す契機ともなります。単なるコストカットではなく、よりクリーンで効率的なエネルギー社会への移行を促すドライバーと捉え、ポジティブに対応策を講じていきたいところです。

よくある質問(FAQ)とその回答

Q1. この電気代上昇傾向は今後もずっと続くのでしょうか?
A. 上昇がこのままずっと続くとは限りません。実際には【シナリオ分析で見た通り】(↑「シナリオ別:…」参照)、電気代は将来のエネルギー情勢によって上振れも下振れもあり得ます。現在は燃料高や円安で高止まりしていますが、再エネ拡大や原発再稼働が進めば2020年代後半以降は安定化・低下に向かう可能性もあります。一方で地政学リスクが続けば2030年頃まで上昇が止まらない恐れもあります。要は燃料価格と電源構成次第です。今後3年で見ると、急騰後に落ち着く標準ケースや、緩やかに上がり続ける悲観ケースなど複数のシナリオが考えられ、どちらに転ぶかは不確実です。従って「ずっと続く」と決めつけるのではなく、複数の可能性に備える柔軟さが大事と言えます。

Q2. 電気代を上げている一番の原因は何ですか?
A. 現状では**「火力燃料費の高騰」と「再エネ賦課金の増加」が双璧です。燃料費調整額はロシア情勢以降大幅なプラスとなり電気代を押し上げていますし、再エネ賦課金も年度ごとに上がってきて現在は1kWhあたり約4円と無視できない水準です。これに加えて2024年以降は容量市場拠出金が新たに数円上乗せされつつあります。まとめると、火力発電依存による国際燃料価格影響が直接的要因で、その背景には原発停止・再エネ増加ペースなど電源構成の変化があります。一方、送配電ネットワークの託送料金や小売事業者のマージンといった部分は大きな変動要因ではありません。電気代の基本構造を見ると、やはり燃料費と政策コスト**が価格を左右しているのです。

Q3. オール電化にすると電気代が上がって損ですか?
A. 一概には言えません。オール電化は確かに電気使用量が増えるため電気代は高くなりますが、ガス代がゼロになるメリットがあります。またオール電化向けには夜間割安の料金プランがあり、上手に活用すれば光熱費合計でガス併用と大差ないケースも多いです。電気代上昇局面ではオール電化世帯の負担増が目立ちますが、その反面太陽光や蓄電池との相性が良く、将来的にエネルギーを100%再生可能エネルギーでまかなうライフスタイルへの転換がしやすいという利点もあります。実際、エネがえるのお客様でもオール電化+太陽光提案によって光熱費削減に成功している事例が多数あります。電気代だけで判断すれば短期的には割高になる可能性がありますが、ガス価格動向や再エネ活用による相殺効果も踏まえると決して一概に損とは言えません。むしろエネルギーの電化は脱炭素の大きな流れでもあり、長期的コストと環境メリットを勘案して検討されると良いでしょう。

Q4. 太陽光発電や蓄電池を導入すると本当に元が取れるのでしょうか?
A. 条件次第ですが、電気代が上昇するほど太陽光・蓄電池の投資回収は有利になります。例えば太陽光パネルの想定寿命(20年程度)で電気料金が年2~3%ずつ上昇すると仮定すると、設備による節約効果は年々大きくなり累積では初期投資を上回るリターンを得やすくなります。特に家庭用蓄電池は従来「高額で元が取れない」と言われてきましたが、最近は価格低下も進み補助金も整備されつつあります。電気代が高騰する局面では深夜電力の充放電でピークシフトする効果も高まり、シミュレーションでは15年程度の運用でしっかり経済メリットを出せるケースも増えてきています。したがって「元が取れるか」の答えは電気代の前提に強く依存し、将来的に電気代が上がると見込むなら太陽光・蓄電池への投資妙味は高いと言えます。もちろん各ご家庭の条件(日照条件、資金計画等)によりますので、具体的な試算は専門サービスで行うことをおすすめします。エネがえるなどのシミュレーターを使えば電気代上昇率を変えて損益分岐を確認できますので、ぜひ活用してみてください。

Q5. 電気代高騰に備えて他にどんなことをすればよいでしょう?
A. これまで述べた省エネ・創エネ以外では、情報収集と長期的視点が大切です。まず各種報道や政府発表をウォッチし、電気料金の改定情報や新しい支援策(補助金・ポイント還元など)を逃さないようにしましょう。実際、2023年には国が電気代補助を一時実施し、多くの家庭が恩恵を受けました。今後も極端な高騰時には何らかの緩和策が講じられる可能性があります。また電気代そのものだけでなく、断熱リフォーム高効率給湯器への更新など住まいの省エネ投資も長期的には有効です。初期費用はかかりますが光熱費削減と快適性向上の両方のメリットがあります。さらに、お住まいの自治体が実施する節電キャンペーンやポイント事業などもチェックしましょう。電力会社によっては節電協力でポイント付与や割引を受けられるサービスもあります。総じて、「短期的な我慢の節約」だけでなく中長期的に光熱費を減らす投資や行動を取り入れることが、電気代高騰時代を賢く乗り切るコツと言えます。

おわりに:電気代予測とこれからのエネルギー戦略

2025年から2028年にかけての電気代見通しを、複数のシナリオと多角的な視点から分析してきました。結論として、電気代の行方は不確実性が高いものの、上昇リスクに備えた行動は早めに起こすべきという点は共通しています。たとえ楽観シナリオで電気代が横ばいになったとしても、無駄なエネルギー浪費を減らし自給エネルギーを活用することは経済的にも環境的にもメリットがあります。悲観シナリオの場合でも、適切な投資と工夫によって影響を緩和し乗り越える術は十分に存在します。

エネルギー価格の高騰は日本のみならず世界共通の課題です。同時に、脱炭素社会への移行期にある現在、私たちはエネルギーとの向き合い方を変革する転機に立っています。電気代という身近な問題からスタートし、自宅のエネルギー収支を見直すことは、カーボンニュートラルやSDGsといった大きな目標にもつながるアクションです。また、そのプロセスで新たな技術やサービスが生まれ、経済の新陳代謝が促されるでしょう。本記事で提供した知見やシミュレーション結果が、読者の皆様の今後のエネルギー戦略立案に少しでも役立ち、新たな価値創出のヒントとなれば幸いです。

最後に、電気代の問題は家計・企業・行政の垣根を超えて協力が求められるテーマです。世界最高水準の専門家や政策立案者の知恵を結集しつつ、一人ひとりが創意工夫を凝らすことで、電気代高騰を乗り越えるのみならず持続可能なエネルギー社会への道を切り拓いていきましょう。


参考資料・出典一覧

  1. 資源エネルギー庁 「電気料金の改定について(2023年6月実施)」 (経済産業省)

  2. タイナビニュース 「
    2025年以降2025年以降
    電気代の値上げはいつから?今後はどのくらいまで上昇する?」 (2025年5月1日)

  3. エネがえるブログ 「2025~2035年 日本の光熱費料金予測:47都道府県別動向とシナリオ分析」 (2025年4月25日)

  4. エネがえるブログ 「太陽光発電と蓄電池システムの経済効果:シミュレーションと分析(電気代上昇率 vs 経年劣化率のインパクト比較)」 (2024年11月13日)

  5. エネがえるブログ 「
    2025年最新2025年最新
    家庭の電気・ガス使用量完全ガイド:住宅タイプ・世帯人数別の月別データと節約術」 (2025年4月25日)

  6. 新電力ネット 「4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景について」 (2023年)

  7. エネがえる (国際航業) 商品・サービス紹介ページ

  8. 資源エネルギー庁 「新たな託送料金制度(レベニューキャップ制度)について」 (参考資料)

  9. エネがえるブログ 「2024年度・2025年度 太陽光の売電価格 最新版」 (2022年10月13日)

  10. 環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査」および総務省「家計調査」 (家庭のエネルギー消費データ)

※上記リンクは本文中の青字箇所にも埋め込んであります。一部記事はエネがえるBLOG(国際航業株式会社)より引用しています。

ファクトチェックリスト

  • 再エネ賦課金単価(2025年度3.98円/kWh)出典:経産省発表/タイナビ記事(2024→2025年度単価の公式決定値)

  • 東京電力の料金改定後単価(従量電灯B:30/36.6/40.69円/kWh)出典:東京電力プレスリリース資料(2023年6月改定後の税込単価)

  • 標準家庭の年間電力使用量(約5,000~5,500kWh)出典:エネがえるBLOG(典型的な4人家族・戸建ガス併用の値)

  • オール電化家庭の電力使用量(ガス併用の約1.3倍)出典:エネがえるBLOG(4人世帯で戸建ガス5200kWh vs オール電化6600kWhの比較)

  • 悲観シナリオでの単価見通し(2030年約45円/kWhで1.6~1.7倍)出典:エネがえるBLOG(悲観ケースの具体像の記述)

  • 楽観シナリオでの単価見通し(2035年20円/kWh程度まで低下)出典:エネがえるBLOG(楽観ケースの記述)

  • 容量市場拠出金が電気料金に与える負担(数円/kWh)出典:新電力ネット記事(2024年開始時の解説)

  • 原発稼働率による電気代差(原発0% vs 15%で月3000円差)出典:エネがえるBLOG(2030年想定のモデル試算結果)

  • 太陽光+蓄電池の経済効果(電気代上昇メリットが劣化デメリットを上回る)出典:エネがえるBLOG(長期シミュレーション結果の要約)

  • エネがえるシミュレーターの特徴(電気代上昇率を自由設定可)出典:国際航業サービス紹介(製品説明の抜粋)

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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