電気自動車の電気代は月々3~6千円が目安!ガソリン車と徹底比較

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

電気自動車の電気代は月々3~6千円が目安!ガソリン車と徹底比較
電気自動車の電気代は月々3~6千円が目安!ガソリン車と徹底比較

「ガソリン代が高騰しているし、国から補助金が出る電気自動車への乗り換えを検討している」
「電気自動車では、電気代はどのくらいかかるの?」

「環境に配慮した車」として世界中で電気自動車の開発が進められ、日本のメーカーも次々と電気自動車を発表している今、このような疑問・関心を持つ方は多いのではないでしょうか。

結論から言うと、電気自動車にかかる電気代は充電方法によって異なり、具体的な目安は次の通りです。

自宅に充電設備を設置する「自宅充電」の場合

自宅に充電設備を設置する「自宅充電」の場合

充電1回分の電気代の目安※1

600~3,000円程度

1ヶ月分の電気代の目安※2

3,000~6,000円程度

※1:空の状態から満充電されるまで
※2:年間9,000~15,000km走行した場合の計算

充電スタンドを利用する「外充電」の場合

充電スタンドを利用する「外充電」の場合

充電1回分の電気代の目安

無料~4,000円程度

1ヶ月分の電気代の目安※

3,000~1万3,000円程度

※年間9,000~15,000km走行した場合の計算・充電に必要な「充電カード」の会費込み

電気自動車の電気代はガソリン車のガソリン代よりも安く、ガソリン車から電気自動車に乗り換えることで年間数万円のコスト削減に繋がるケースもあります。

ただし、電気自動車は車両本体の価格が高いことから数年で乗り換えてしまうとかえってコストがかさむ可能性もあるので、長期的なシミュレーションをしてから購入するかどうかを決めるのがおすすめです。

本記事では、電気自動車の電気代が気になっている方に向けて

  • 【充電方法別】電気自動車にかかる電気代の目安
  • 電気自動車の具体的な電気代を計算する方法
  • 電気自動車とガソリン車はどちらがお得?徹底比較

といった情報を解説します。

ガソリン代も電気代も高騰している今、あなたにとって最もお得な選択肢を選べるよう、ぜひ最後までご覧ください。

電気自動車の電気代の記事でわかること

【充電方法別】電気自動車にかかる電気代の目安

【充電方法別】電気自動車にかかる電気代の目安

まずは、電気自動車にかかる電気代の目安を

  • 自宅充電の場合
  • 外充電の場合

の順に解説します。

充電方法別の目安をざっくりと把握しておくことで、自分のライフスタイルに置き換えてシミュレーションする際にもイメージがしやすいので、しっかりとチェックしておきましょう。

自宅充電の場合

自宅充電(自宅に専用設備を導入して充電を行う)の場合、電気自動車にかかる電気代の目安は以下の通りです。

電気自動車にかかる電気代の目安【自宅充電の場合】

充電1回あたり

600~3,000円程度

1ヶ月あたり

3,000~6,000円程度

電気料金が決まる仕組みや内訳を、それぞれ詳しく見ていきましょう。

充電1回あたりの電気代は600~3,000円程度

自宅で充電を行う場合、充電1回あたりの電気代の目安は600~3,000円程度です。

全国家庭電気製品公正取引協議会が発表した全国の電気料金の目安単価は「1kWhあたり31円(税込)」であり、この単価にバッテリー容量をかけ合わせることで充電1回あたりの電気代が算出できます。

充電1回あたりの電気代の計算式

バッテリー容量(kWh)×31(円)

kWh(キロワットアワー)とは?

1kWの電力を1時間使用した場合の電力量のこと。

電気自動車におけるバッテリーの「kWh」は、ガソリン車における燃料タンクの「L(リッター)」と同じで、数値が高いほどより長い距離をよりパワフルに走れる。

電気自動車のバッテリー容量は車種によって大きく異なり、それに伴って電気代も変わります。

電気自動車の代表的な車種と電気代の目安を表した、以下の一覧表を見てみましょう。

車種

バッテリー容量(kWh)

充電1回あたりの
電気代の目安(円)

日産 サクラ

20

620

日産 リーフe+

60

1,860

三菱 eKクロス EV

20

620

マツダ MX-30EV

35.5

1,100

ホンダ Honda e

35.5

1,100

レクサス UX300e

72.8

2,256

メルセデス・ベンツ EQA

66.5

2,061

BMW iX

76.6

2,374

テスラ Model S

100(推定)

3,100

「日産サクラ」「三菱 eKクロス EV」のような軽自動車の場合は600円程度、「BMW iX」「テスラ Model S」のような速く・長く走れるモデルは2,000~3,000円で充電できる、と覚えておくと良いでしょう。

ガソリン車の給油1回あたりの料金と比べると断然安い「自宅充電」

600~3,000円という電気代の目安を見て、「これって高いの? 安いの?」と思った方は、ガソリン車の給油1回あたりの料金を見てみましょう。

・軽自動車(タンク容量30L)の場合
ガソリン代が180円/Lの時期に給油すると、1回あたりの料金は
180×30=5,400円

・普通車(タンク容量50L)の場合
ガソリン代が180円/Lの時期に給油すると、1回あたりの料金は
180×50=9,000円

電気自動車の自宅充電1回あたりにかかる電気代は、ガソリン車の給油1回あたりの料金と比べると格段に安いことがわかります。

1ヶ月の電気代は1,000~6,000円程度

自宅で充電を行う場合、1ヶ月の電気代の目安は3,000~6,000円程度です。

電気自動車の1ヶ月の電気代は

  • 走行距離
  • 電費

によって異なり、「3,000~6,000円程度」という目安は、日本の平均的な自動車の走行距離である「年間9,000~15,000km」を元に算出しています。

電費とは?

電気自動車が1kwhの電力で何キロ走れるかを表した数値のことで、ガソリン車における「燃費」と同じ意味合いを持つ。

電費は車種によって異なるが、平均的な数値はおよそ6~7km/kwh。

※電気自動車の電費について詳しく知りたい場合は、計算方法や電費を良くする方法について解説した以下の記事をご覧ください。
>>電気自動車の燃費とは?平均や計算方法から燃費を抑える方法も

以下の表は、平均的な電気自動車の走行距離と電費を元に、1ヶ月の電気代の目安をライフスタイル別に算出したものです。

ライフスタイル別・1ヶ月の電気代の目安

ライフスタイル

走行距離の目安(km)

電気代(円)

近場の買い物でたまに使う程度

月平均250km
(年間3,000km)

1,302

平日の通勤

休日の中距離移動でたまに使う

月平均750km
(年間9,000km)

3,875

月に何度も長距離ドライブを楽しむ

月平均1,250km
(年間15,000km)

6,448

こちらの料金はあくまで目安ですが、ご自分のライフスタイルと照らし合わせて、おおよその電気代を把握できたのではないでしょうか。

外充電の場合

電気自動車用の充電スタンドを利用する「外充電」の場合、電気代の目安は以下の通りです。

電気自動車にかかる電気代の目安【外の場合】

充電1回あたり

無料~4,000円程度

1ヶ月あたり

3,000~1万3,000円程度

料金が決まる仕組みや内訳を、それぞれ詳しく見ていきましょう。

充電1回あたりの電気代は無料~4,000円程度

外充電を行う場合、充電1回あたりの電気代の目安は無料~4,000円程度です。

日本では、全国各地に合計2万箇所ほどの充電スタンドが設置されており(2023年時点)、充電料金はスタンドごとに異なります。

充電料金の大きな決め手となるのが、充電器のタイプです。

電気自動車の充電器のタイプ

種別

普通充電

急速充電

特徴

3~6kWの出力で充電する方法
利用料金は安く無料で利用できるケースも多いが、時間がかかる

20~90kWの出力で充電する方法
利用料金は高いが普通充電よりも大幅に時間の短縮ができる

料金目安

充電1分につき
無料~3円程度

充電1分につき
5~50円程度

「普通充電」は料金が安いのが魅力ですが、無料で充電できるスタンドは限られているうえに、車種によっては10時間以上の充電時間が必要です。

そのため、日常的に自宅充電ができない方の場合は、1時間前後で充電が完了する「急速充電」の利用がメインになることを想定しておくと良いでしょう。

以下は、外充電における1回あたりの電気代の目安を車種別にまとめたものです。

車種

バッテリー容量
(kWh)

充電1回あたりの
電気代の目安(円)※1

普通充電※2

急速充電※3

日産 サクラ

20

400

720

日産 リーフe+

60

1,200

2,160

三菱 eKクロス EV

20

400

720

マツダ MX-30EV

35.5

710

1,278

ホンダ Honda e

35.5

710

1,278

レクサス UX300e

72.8

1,456

2,621

メルセデス・ベンツ EQA

66.5

1,330

2,394

BMW iX

76.6

1,532

2,758

テスラ Model S

100(推定)

2,000

3,600

※1:普通充電は2円/分急速充電は30円/分で計算
※2:出力6kWの充電スタンドを利用した場合
※3:出力50kWの充電スタンドを利用した場合

自宅充電とあまり料金が変わらないように見えますが、充電スタンドの利用には別途月会費等が発生するケースが多いため、総合的には自宅充電の方が電気代を抑えやすいと言えるでしょう。

自宅充電よりは電気代が割高な「外充電」
それでもガソリン車の給油1回あたりの料金と比べると安い

自宅充電よりも電気代がかかりやすい外充電ですが、ガソリン車の給油料金と比べるとどうなるか、比較してみましょう。

充電1回あたりの電気代目安:720~3,600円
給油1回あたりのガソリン代目安:5,400~9,000円

外充電の場合は別途月会費が発生するケースもあるため、自宅充電の方がよりお得ではありますが、それでもガソリン車の給油料金と比べると電気自動車の充電料金は安いと言えるでしょう。

※タンク容量が30~50Lの場合

1ヶ月の電気代は3,000~1万3,000円程度

外充電を行う場合、1ヶ月あたりの電気代の目安は3,000~1万3,000円程度です。

外充電を1ヶ月利用した際にかかる電気代は

  • 走行距離
  • 電費
  • 充電カードの種類

によって異なり、「3,000~1万3,000円程度」という金額は、日本の平均的な自動車の走行距離である「年間9,000~1万5,000km」を元に算出しています。

充電カードとは?

充電スタンドを利用する際に、ユーザー認証や支払い手続きを行うためのカード。

・入会金(無料のものもあり)
・月会費(月数千円程度・無料のものもあり)
・充電料(「1分(10分)あたり◯円」で表記される)

がかかるのが一般的で、具体的な金額はカードの発行元やプランによって異なる。

※充電カードを発行しなくても充電スタンドを利用することはできるが、割高な「ビジター料金」を払わなければならないため、外充電を行う電気自動車ユーザーは所有するのが一般的。

一ヶ月にかかるお金として、充電料金以外にも「充電カードの会費」が毎月必要というのが、自宅充電と大きく異なる点です。

以下の表は、平均的な電気自動車の走行距離・電費・充電カード料金を元に、1ヶ月の電気代の目安をライフスタイル別に算出したものです。

ライフスタイル別・1ヶ月の電気代の目安

ライフスタイル

走行距離の目安(km)

電気代(円)※

近場の買い物でたまに使う程度

月平均250km
(年間3,000km)

普通充電:3,333
急速充電:6,500

平日の通勤

休日の中距離移動でたまに使う

月平均750km
(年間9,000km)

普通充電:5,000
急速充電:9,500

月に何度も長距離ドライブを楽しむ

月平均1,250km
(年間15,000km)

普通充電:6,666
急速充電:1万2,500

※以下の条件で充電スタンドを利用したケースを想定しています。

  • 充電カードの月会費:2,500円(普通)・5,000円(急速)
  • 普通充電料金:2.0円/分(出力6kW)
  • 急速充電料金:30円/分(出力50kW)

完全無料で外充電はできないの?

日本には無料で電気自動車の充電ができるスポットがありますが、月々の充電料金を完全に無料にするのは、「物理的に不可能ではないが、現実的には非常に難しい」というのが結論です。

充電カードを発行せず、無料のスタンドでのみ充電をしようと思うと

・家や外出先の周辺に無料の充電スタンドがある
・外出先で充電完了を待つ精神的・時間的ゆとりがある(満充電でなくても数時間の充電時間が必要)

といった条件が揃っていなければなりません。

以上のことから、完全無料で外充電を行うのは、現実的ではないと言えるでしょう。

電気自動車の具体的な電気代を計算する方法

電気自動車の具体的な電気代を計算する方法

続いては、「電気自動車の具体的な電気代を計算する方法」を

  • 自宅充電の場合
  • 外充電の場合

の順にご紹介します。

本章で紹介する計算式に購入を検討している車の性能などを当てはめれば、年間の電気代が簡単にシミュレーションできるようになります。

実在する車種や充電カードのプランを数式に当てはめた具体例も併せて紹介しているので、ぜひご参考にしてください。

自宅充電の場合

電気自動車を自宅充電する場合、年間の具体的な電気代を計算する方法は、以下の通りです。

自宅充電の具体的な電気代を計算する方法(年間)

年間走行距離(km)÷電費(km/kWh)×31(円)

1年間に走行する距離を電費で割ると、「その距離を走るのに必要な総電力(kWh)」が求められます。

「その距離を走るのに必要な総電力」に電気料金の単価目安である31円をかければ、年間の電気代が算出できます。

実際に電気自動車に1年間乗って生活した場合、電気代はいくらになるのでしょうか。

実在する車種の性能を参考にした、次の例を見てみましょう。

平日は車通勤、休日は家族でドライブをする会社員・Aさんの場合

平日は車通勤、休日は家族でドライブをする会社員・Aさんの場合

・年間走行距離:1万km
・車種:日産リーフe+(Gグレード)※1
・平均電費:7km/kWh
・夜間~明け方まで自宅に設置した充電器で充電を行うため、年間を通してほぼ自宅充電

上記の条件を計算式に当てはめると…

10,000(km)÷7(km/kWh)×31(円)=44,285
年間の電気代は4万4,285円

※1:ガソリン車のコンパクトカーよりもやや大きめの車種

上記の霊よりも年間走行距離が少ない場合や、もう少し電費の良い車種を検討している場合は、さらに電気代が安くなる可能性があります。

外充電の場合

外充電の場合、年間の具体的な電気代は、以下の方法で計算できます。

外充電の具体的な電気代を計算する方法(年間)

STEP1.年間の総充電時間を求める
年間走行距離(km)÷電費(kWh)÷充電器の出力(kW)=年間の総充電時間(h)

STEP2.年間の総充電時間に充電料金をかけ、充電カードの会費を足す
年間の総充電時間(h)×充電料金(円/h)+年会費(円)=年間の電気代

充電スタンドの料金システムは時間制であるため、まずは1年分の「充電をするのに何時間かかるか」(年間の総充電時間)を求める必要があります。

年間走行距離を電費で割って1年間の充電に必要な電力量を算出したら、それを充電器の出力(電力の強さ・スタンドによって異なる)で割り、年間の総充電時間を求めましょう。

年間の総充電時間に1時間あたりの充電料金をかけ合わせ、最後に充電カードの会費を足せば、1年間に必要な電気代の合計額が算出できます。

自宅充電よりも少し計算が複雑になるので、以下の例でしっかりと確認しておきましょう。

都内マンションに一人暮らし、運転は買い物での利用がメインの自営業・Bさんの場合

都内マンションに一人暮らし、運転は買い物での利用がメインの自営業・Bさんの場合

・年間走行距離:5,000km
・車種:三菱 eKクロス EV※1
・平均電費:9km/kWh
・自宅マンションに電気自動車用の充電設備がないため、近隣の充電スタンドを利用
(充電器の出力:50kW)
・入会している充電カード:e-Mobility Power「急速充電プラン」
(充電料金:16.5円/分・月会費:3,800円)

上記の条件を計算式に当てはめると…

5,000(km)÷9(km/kWh)÷50(kW)=50.5(h)
年間の総充電時間は50.5時間

50.5(h)×990(円/h)※2+45,600(円)※3=95,595
年間の電気代は9万5,595円

※1:バッテリー容量20kWhの軽自動車モデル
※2:16.5円×60分=990円(1時間あたりの充電料金)
※3:3,800×12=4万5,600円(充電カードの年会費)

このように、走行距離や電費・充電カードの料金を把握できれば、実際に電気自動車に乗った際のおおよその電気代が計算できます。

電気自動車とガソリン車はどちらがお得?徹底比較

電気自動車とガソリン車はどちらがお得?徹底比較

ここからは、電気自動車とガソリン車ではどちらがお得か、次の4つの視点から徹底比較していきます。

  • 走行コストが低いのは電気自動車
  • 長く乗るほど電気自動車がお得
  • 価格高騰のリスクがあるのはどちらも同じ
  • 電気代以外のコストやデメリットも考慮すべき

先に結論を申し上げておくと、乗り方や購入する車種によってはガソリン車の方がコストがかからないケースもあり、いかなる場合も「電気自動車がお得」というわけではありません。

あなたにとって電気自動車とガソリン車のどちらがよりお得なのか、考えながら読み進めていきましょう。

走行コストが低いのは電気自動車

まず前提として、走行コストが低いのは電気自動車の方です。

理由はシンプルで、2023年9月時点においては、ガソリン代よりも電気代の方が安いと言えるからです。

ガソリン車の標準的な「燃費」と電気自動車の標準的な「電費」を用いて、走行コストを比較してみましょう。

電気自動車の走行コスト

電気自動車の走行コスト

電気自動車の標準的な電費:6km/kWh(1kWの電気で6km走る)
1km走るのに必要な電気の量:0.17kWh
電気代(目安):31円/kWh

電気自動車が1km走るのに必要な電気代は5.27円

ガソリン車の走行コスト

ガソリン車の走行コスト

標準的な燃費:15km/L(1Lのガソリンで15km走る)
1km走るのに必要なガソリンの量:0.07L
ガソリン代(目安):180円/L

ガソリン車が1km走るのに必要なガソリン代は12.6円
(単純計算で電気自動車の2倍以上のコストがかかる)

両者の走行コストを比較すると、計算上では「電気代はガソリン車の半額未満のコストで走れる」ということがわかります。

電気自動車を外充電する場合は、充電カードの会費等がかかるため、上記の計算よりも走行コストが高くなる可能性もあります。

しかし、それでも自宅充電の2倍以上のコストはかからないため、外充電の電気自動車においてもガソリン車よりは安く走れると言えるでしょう。

長く乗るほど電気自動車がお得

続いて注目したいのが、「長く乗るほど電気自動車の方がお得」というポイントです。

走行コストが低いのは電気自動車」では、走行1kmあたりの電気代とガソリン代を比較しましたが、電気自動車とガソリン車に継続的に乗り続けた場合、どのくらいの料金差が生じるのでしょうか。

まずは年間の走行コストを比較してみましょう。

電気自動車の年間走行コストの目安

電費6km/kWhの電気自動車で年間1万km走った場合
10,000÷6×31=51,667
→年間の電気代はおよそ5万円程度

ガソリン車の年間走行コストの目安

燃費15km/Lのガソリン車で年間1万km走った場合
10,000÷15×180=119,999
→年間のガソリン代はおよそ12万円程度

年間の走行コストを比較すると、電気自動車の方がガソリン車よりもおよそ7万円安いことがわかります。

もし10年間同じ車に乗り続けた場合、

  • 電気代の合計額:51万円
  • ガソリン代の合計額:119万円

となり、10年間の走行コストの差は単純計算でおよそ68万円にも広がります。

電気自動車とガソリン車に10年乗った走行コストの差

10年という長い期間では

  • 車両の燃費(電費)が変化する
  • 外充電を利用する

といったイレギュラーな事態が発生することも想定されるため、実際にはここまで価格差が広がらないケースもありますが、「長く乗るほど電気自動車がお得」というのが感覚的におわかりいただけたのではないでしょうか。

頻繁に車を買い替えるなら、ガソリン車の方がお得なケースも

電気自動車は車両本体の価格がガソリン車よりも高いため、同じ車両に長期間乗らず頻繁に買い替えてしまうと、かえって損になる可能性があります。

電気自動車に搭載されているリチウムイオン電池が高価であることから将来的な値下げも難しく、国や自治体からの補助金を受け取っても本体価格はガソリン車の方が安いというのが現状です。

コスト削減のために電気自動車への乗り換えを検討しているのであれば、バッテリーの保証期間である8年間は同じ車種に乗り続けるのがベターです。

価格高騰のリスクがあるのはどちらも同じ

ガソリン車と電気自動車のコストを比較する際、「価格高騰のリスクがあるのはどちらも同じ」という視点を持っておくことは非常に重要です。

一体どういうことか、ガソリン代・電気代の現状と照らし合わせながら解説します。

日本では2020年5月からガソリン代が高騰し続けており、2023年9月時点では「181.2円/L」と、過去5年間で最高価格となりました。

ガソリン代の推移

一方で、家庭向けの電気代は2022年12月にピークを迎えた後、2023年に入ってからは下降傾向にあります。

電気代の推移

  • ガソリン代の値上げ
  • 電気代の値下げ

といった状況から、生活コストを下げるためにガソリン車から電気自動車への乗り換えを検討する人が増えています。

あなたがディーラーやその他販売店に出向いて、「電気自動車への乗り換えを考えている」と相談すれば、販売員からは「電気代が下がっている今がチャンス」と営業されるかもしれません。

しかしここで忘れてはいけないのが、ガソリン代は値上がり・電気代は値下がりしているという状況はあくまで一時的なものであり、将来的にはどうなるかわからないという点です。

実際に、2021年2月~2022年12月まで、電気代は値上がりし続けており、2023年以降の値下げが一時的なものである可能性は十分にあります。

今後10年間電気自動車に乗るとして、その10年の間で「電気自動車の方が走行コストが安い」という状況が続く保証はないことを、心に留めておきましょう。

【豆知識】価格高騰しても「節約」ができるのが電気の強み!

価格高騰のリスクがあるのは電気もガソリンも同じですが、電気自動車における電気代は、「価格高騰しても節約できる」という強みがあります。

・自宅に太陽光パネルを設置して、自家発電した電気で自動車を充電する
・無料の充電スポットを活用する

ガソリン車にはこのような節約術が存在しないため、電気自動車ならではの強みだと言えるでしょう。

電気代以外のコストやデメリットも考慮すべき

電気自動車とガソリン車のどちらがお得かを比較する際、電気代以外のコストやデメリットも考慮すべきです。

本章では「電気自動車の方がガソリン車よりも安く走る」と繰り返しお伝えしてきましたが、自動車の購入・維持にかかるコストは、電気代・ガソリン代だけではありません。

以下は、電気自動車・ガソリン車それぞれにかかるコストの一例をまとめた表です。

自動車にかかるコストの一例

項目

電気自動車

ガソリン車

車両本体の購入費

ガソリン車よりも高い

200~1,300万円程度
500~800万円程度の車種が人気

※国と自治体から補助金が出るが、地域差がある

電気自動車よりも安い

安軽自動車:140万円程度
普通車:200~300万円程度の車種が人気

維持費

基本的にかからない

(バッテリー交換は高額だが、保証期間内は無償で修理・交換できる)

年間数万円かかる

オイル・ラジエーター液・ブレーキパッドなどの交換費

税金

自動車税
自動車重量税(減税あり)

※環境性能割は非課税

自動車税
自動車重量税
環境性能割

その他

充電設備の設置費用

上の表で特に注目すべきなのが、電気自動車の車両本体の購入費が、ガソリン車と比べて大幅に高いという点です。

国や自治体から補助金が出ることを知って「電気自動車に乗り換えようか」と考える人は多くいますが、選ぶ車種によってはガソリン車よりも数百万高くなるため、補助金を活用してもかなりのコストがかかってしまう可能性があります。

さらに、

  • アパートやマンションで暮らしているため自宅に充電設備を設置できない
  • 自分の生活圏内に充電スタンドがない

といった場合、電気自動車での生活がしづらいというデメリットもあります。

電気自動車とガソリン車のどちらがお得かを比較する際は、あらゆるコストやデメリットを考慮したうえで

  • どんな車種を選ぶか(重要)
  • 自宅に充電器が設置できるか
  • 近隣に無料充電所があるか
  • 補助金が受けられるか

など、総合的な要素をふまえて検討しましょう。

電気自動車の電気代を安く抑える6つのコツ

電気自動車の電気代を安く抑える6つのコツ

最後は、電気自動車の電気代を安く抑える6つのコツをご紹介します。

自宅充電の場合

自宅の電気料金プランを見直す

太陽光パネルを導入する

外充電の場合

自分に合ったプランの充電カードを選ぶ

無料・低料金の充電スポットを利用する

自宅・外充電共通

電費の良い車種を選ぶ

「エコドライブ」を意識する

長く乗れば乗るほどお得な電気自動車をさらにお得に乗るために、実践できそうなものはないかイメージしながらご覧ください。

自宅の電気料金プランを見直す(自宅充電の場合)

まずは、自宅の電気料金プランを見直しましょう。

自宅で電気自動車の充電をする場合、当然ながら月々の電気代は今までよりも上がります。

毎月の電気使用量やライフスタイルに合っていないプランを契約していると、電気代が非常に高くなり、ガソリン車よりも走行コストが上がってしまう恐れもあるので注意しましょう。

電気プランの見直しでどのくらい電気代が抑えられるのか、電気自動車による経済メリットをシミュレーションできるツール「エネがえる」を使って見てみましょう。

家族3人暮らし・夜に電気を多く使用するAさんの場合

・月平均電気使用量:450kW
・自宅充電設備:出力6kWの充電コンセント式
・車種:日産サクラ G
・年間走行距離:1万km
・利用中の電気料金プラン:大手電力会社Aの「従量電灯B(40A)」
・変更後の電気料金プラン:シン・エナジーの「プランC」

【「エネがえる」を使った料金プラン変更のシミュレーション結果】

「エネがえる」を使った料金プラン変更のシミュレーション結果

上のシミュレーション結果では、電気料金のプランを変更しただけで年間11万円の電気代が削減できました。

このように、電気自動車を購入する際は、まずは.自宅の電気料金プランを見直すことをおすすめします。

太陽光パネルを導入する(自宅充電の場合)

自宅に太陽光パネルを導入するのも、電気自動車の電気代を安く抑えるコツのひとつです。

こちらは、太陽光パネルで作った電気を電気自動車の充電に使うことで、充電にかかる電気代を削減するという方法です。

実際にどのくらいの電力が太陽光パネルで作れるのか、電気自動車の充電が自家発電でまかなえるのか、「エネがえる」を使ってシミュレーションしてみましょう。

屋根の一面に太陽光パネル設置したBさんの場合

・月平均電気使用量:450kWh
・自宅充電設備:出力6kWの充電コンセント式
・車種:トヨタ 2022 bZ4X 4WD
・年間走行距離:1万km
・太陽光パネルの出力値:6kW

【「エネがえる」を使った電気料金のシミュレーション結果】

「エネがえる」を使った電気料金のシミュレーション結果

以下は、太陽光パネルから作られた電気の使い方のイメージ図です。

太陽光パネルから作られた電気の使い方のイメージ図

電気自動車を充電するための電気代が実質無料になったうえに、余った電力を電力会社に売ることで「売電収入」を得、結果的に年間15万円近くの電気代が削減できました。

このように太陽光パネルの導入は、大きな電気代削減効果が期待できます。

まずはお近くのメーカーや販売店で「エネがえる」を使った
太陽光パネルのシミュレーションを依頼するのがおすすめ

「エネがえる」を使った太陽光パネルのシミュレーションを依頼するのがおすすめ

参照:エネがえる

太陽光パネルの導入で電気代がいくら削減できるのかは

・日照時間
・ライフスタイル
・パネルを設置できる屋根の面積

といった細かい条件によって大きく変わります。

「エネがえる」を使えば、上記のような細かい条件を指定して、精度の高いシミュレーションが行なえます。

まずはお近くのメーカーや販売店で「エネがえる」を使った太陽光パネルのシミュレーションを依頼してみましょう。

また、太陽光パネルの販売会社の方は、お客様への提案ツールとして「エネがえる」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

自分に合ったプランの充電カードを選ぶ(外充電の場合)

外充電の場合は、自分に合ったプランの充電カードを選ぶというのも、費用削減のコツです。

充電カードの料金は発行元の会社やプランによって異なりますが、料金の決め手となるのが「走行距離」です。

走行距離が長く充電スタンドを頻繁に使う場合は、多少月会費が高くても「〇〇分まで充電無料」といった特典がついている充電カードを利用するとお得でしょう。

反対に、走行距離が短くほぼ自宅充電でまかなえるという場合は、月会費の安い最もシンプルなプランを選ぶのがおすすめです。

車種を問わず利用できる充電カードもあるので、電気自動車を購入した際は、すぐにメーカーが発行する充電カードに入会せず、他社のプランとも比較してみましょう。

車種を問わず利用できる充電カード

e-Mobility Power:全国のあらゆる充電スタンドで利用できる、業界最大手のカード
日産 ZESP3:利用頻度に合わせて選べる4段階のプランが魅力
JTB おでかけカード:月会費無料

無料・低料金の充電スポットを利用する(外充電の場合)

無料・低料金の充電スポットを利用するというのも、外充電の電気代を安く抑えるコツです。

無料の充電スポットがある場所(一例)

・公共施設(役所、公園など)
・ショッピングセンター
・ディーラー
・コインパーキング

無料の充電スポットは全国的にも数が少なく、そのほとんどは「普通充電」であるため充電に時間がかかるという難点もありますが、「多少労力がかかっても、少しでも電気代を抑えたい!」という方は無料スポットを積極的に活用してみると良いでしょう。

電費の良い車種を選ぶ

電費の良い車種を選ぶのは、自宅充電・外充電を問わず、電気代を抑えるための重要なポイントです。

「電費」とは電気自動車が1kwhの電力で何km走れるかを表した数値のことで、数値が高いほど少ない電気量で長い距離を走ることができる、つまり電気代の削減になります。

電費は

  • 車種
  • 車のコンディション
  • 季節

などによって異なるため、できるだけ平均電費の良い(数値の高い)車種を選んで毎月の電気代を抑えましょう。

すでに購入する電気自動車の候補がある程度絞れている場合は、次の表を参考に、より電費の良い車種を選ぶことをおすすめします。

車種

平均電費(km/kWh)

日産 サクラ

7.1

日産 リーフe+

5.4

三菱 eKクロス EV

7.1

トヨタ bZ4X

7.1

SUBARU ソルテラ ET-HS

6.1

マツダ MX-30EV

4.34

ホンダ Honda e

6.8

レクサス UX300e

6.4

メルセデス・ベンツ EQA

5.7

BMW iX

4.5

テスラ Model S

5.0

「エコドライブ」を意識する 

電気自動車の電気代を安く抑える6つのコツ、「最後は『エコドライブ』を意識する」です。

「エコドライブ」とは?

環境庁が提唱する、「燃料消費量やCO2排出量を減らし、地球温暖化防止につなげる運転技術や心がけ」のこと

環境に優しい運転を心がけることで電気消費量を減らし、結果的に電気代を安く抑えられます。

電気代削減に繋がる「エコドライブ」には、次のようなものがあります。

  • エアコンの温度を下げ(上げ)すぎない
  • 急なアクセル・ブレーキは踏まない
  • 車に積む荷物の重量はできるだけ軽くする
  • できるだけ一定のスピードで走る
  • 無駄なアイドリングはやめる

エコドライブを意識した運転は、電気料金プランの見直しや太陽光パネルのように電気代を大幅に削減できる方法ではありませんが、こういった小さな行動を積み重ねることで長期的に電気代を削減できます。

最もコスト削減できる方法は「V2H・太陽光パネル・蓄電池を導入した自宅充電」

電気自動車の電気代を最も削減できる方法は

  • V2Hの導入
  • 太陽光パネルの導入
  • 蓄電池の導入

を導入した「完全自宅充電」です。

V2Hとは?

電気自動車と家をつなぐ充放電設備のこと。

自宅で使っている電力を電気自動車に送る「充電器」の機能はもちろん、電気自動車に残っている電力を家庭で再利用できる「放電器」の役割も果たすため、節電効果が見込める。

蓄電池とは?

太陽光パネルなどで発電した電力を蓄えておける電池のこと。

日中溜めた電気を夜間に使えるため電気代が抑えられるほか、停電など非常時にも有効活用できる。

電気自動車の電気代を抑えるには、外充電よりも割安な自宅充電をできるだけ行うことが重要です。

旅行など長期で家を開ける時以外は完全自宅充電にして、そのうえで

  • 太陽光パネルで電力を「作る」
  • 蓄電池で電力を「貯める」
  • V2Hで電力を「循環させる」

といった仕組みを自宅にすることで、電力会社から購入する電気を最小限に抑えられます。

具体的にどのような設備を導入すればどのくらい電気代が削減できるのか、「エネがえる」でシミュレーションしてみましょう。

ガソリン車から電気自動車に買い替えた4人家族・Cさん一家でシミュレーション

月平均電気使用量

450kWh

契約している電気料金プラン

大手電力会社の従量電灯B(40A)

ライフスタイル

夜型
(日中は家におらず、夜間の電力消費が中心)

買い替え前に乗っていたガソリン車

燃費15km/Lのワゴン車

新たに購入した電気自動車(EV)

日産 リーフ e+ X(電費5.4km/kWh)

年間走行距離

1万km

V2Hの性能

充電効率:98%
入出力値:6kW

太陽光パネルの性能

出力値:6kW
変換効率:98%

蓄電池の性能

容量:14.9kWh
出力値:5.9kW

【「エネがえる」を使った電気料金のシミュレーション結果】

「エネがえる」を使った電気料金のシミュレーション結果

ガソリン車から電気自動車へと切り替え、さらにV2H・太陽光パネル・蓄電池を導入すると、およそ380万円ものコスト削減になるというシミュレーション結果が出ました。

1ヶ月あたりの内訳は、次の通りです。

1ヶ月のシミュレーション結果

家庭内で電気がどのように循環するか、具体的なイメージを見てみましょう。

家庭内で電気がどのように循環するかのイメージ

こちらのシミュレーション結果は年率2%で電気料金が上昇することを見越しての計算であり、たとえ今後毎年電気代が高騰したとしても、電気自動車への乗り換えがお得であることがわかります。

「電気自動車を購入して、徹底的にコストを削減したい!」

と考えている方は、V2hや太陽光パネル・蓄電池の導入も視野に入れて、販売店でシミュレーションしてみることをおすすめします。

まとめ

最後に、本記事の重要ポイントをおさらいします。

▼ 電気自動車にかかる電気代の目安

【自宅充電の場合】
充電1回あたり:600~3,000円程度
1ヶ月あたり:3,000~6,000円程度

【外充電の場合】
充電1回あたり:無料~4,000円程度
1ヶ月あたり:3,000~1万3,000円程度

▼電気自動車の具体的な電気代を計算する方法

【自宅充電の場合】
年間走行距離(km)÷電費(km/kWh)×31(円)

【外充電の場合】
年間の総充電時間(h)×充電料金(円/h)※+年会費(円)=年間の電気代

→走行距離や電費・充電カードの料金を把握できれば、実際に電気自動車に乗った際のおおよその電気代が計算できる

▼電気自動車とガソリン車はどちらがお得?徹底比較

・走行コストが低いのは電気自動車
・長く乗るほど電気自動車がお得
・価格高騰のリスクがあるのはどちらも同じ
・電気代以外のコストやデメリットも考慮すべき

→いかなる場合も「電気自動車がお得」というわけではない

▼電気自動車の電気代を安く抑えるコツ

【自宅充電の場合】
・自宅の電気料金プランを見直す
・太陽光パネルを導入する

【外充電の場合】
・自分に合ったプランの充電カードを選ぶ
・無料・低料金の充電スポットを利用する

【自宅・外充電共通】
・電費の良い車種を選ぶ
・「エコドライブ」を意識する 

→これらのコツを押さえれば、電気自動車への乗り換えによるコスト削減を実現できる

本記事の内容が、あなたが今後電気自動車を購入するかどうかの判断材料・生活コスト削減の手がかりになれば幸いです。

著者情報

国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

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たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
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