系統用蓄電池事業とは?2026年の収益源・投資回収・接続ルール改定を一次データで解説

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら )

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

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「系統用蓄電池事業とは?収益・投資回収・成功条件【2026年版】」のアイキャッチ。産業用・PPAの流れ(電力系統→制度・資料→工場・事業所→判断)を示す図解とエネがえる公式キャラクター
「系統用蓄電池事業とは?収益・投資回収・成功条件【2026年版】」のアイキャッチ。産業用・PPAの流れ(電力系統→制度・資料→工場・事業所→判断)を示す図解とエネがえる公式キャラクター

結論(2026年10月時点):系統用蓄電池は、つながっている量(約84万kW)に対して、接続検討中の計画が約1億9,100万kWと約228倍あります。足りないのは計画ではなく、系統の空き、土地、資金の確かさです。

収益面では、JEPXスポット価格の値差だけで取れる額は、4時間蓄電でも理論上限で年1.3〜1.8万円/kWでした(直近12か月、エネがえる集計)。システム価格5.4万円/kWh・補助1/3の計算例では、値差だけでは15年で回収できず、容量・調整力の収入を重ねられるかで結果が逆転します。

2026年10月から、契約申込みに土地の使用権原が必要になりました。2〜10MW案件を検討するなら、まず「土地」「系統」「収益の組み合わせ」の3点を同じ表で確かめてください。

この記事は、系統用蓄電池(蓄電所)事業を検討しているEPC・販売施工店・電力小売・PPA事業者・自治体の担当者に向けて、2026年10月時点の一次情報で書き直したものです。以前の版は2025年時点の情報が中心でした。今回、資源エネルギー庁の審議会資料、電力広域的運営推進機関(OCCTO)のオークション結果、SIIの公募要領を開いて確認し、JEPXのスポット価格をエネがえるで集計したエリア別の裁定収益データと、簡易収支シミュレーターを加えました。

数字はすべて出典を示しています。試算は条件を書いた計算例で、収益の予測ではありません。

系統用蓄電池事業とは:3つの稼ぎ方と、誰が担うか

系統用蓄電池は、送配電網に直接つなぐ蓄電池です。太陽光発電所に併設する蓄電池や、工場・店舗の構内に置く蓄電池とは、つなぐ場所と稼ぎ方が違います。

蓄電池の置き場所と主な収益源
区分 つなぐ場所 主な収益源 主な担い手
系統用(蓄電所) 送配電網に直接 卸電力市場の値差、需給調整市場、容量市場・長期脱炭素電源オークション 発電事業者、EPC、商社、小売電気事業者、投資家
再エネ併設 太陽光・風力発電所の構内 出力制御時の電気をためて売る、FIPのプレミアム確保 発電事業者
需要家設置 工場・店舗・住宅の構内 電気料金(基本料金・従量料金)の削減、自家消費率の向上、停電対策 需要家、PPA事業者、販売施工店

系統用の収益は、ほぼすべてが市場から来ます。電気料金の削減のように「払っていたお金が減る」収益ではないため、市場価格と制度の変化がそのまま事業性に響きます。ここが需要家設置型との一番大きな違いです。

市場の現在地:計画は1億9,100万kW、つながったのは84万kW

接続検討は1億9,114万kW、連系済みは84万kW。差は約228倍高圧以上の系統用蓄電池、2026年3月末時点(万kW)接続検討の受付中19,114万kW契約申込みの受付中3,527万kW連系済み84万kW
出典:資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」(次世代電力系統ワーキンググループ、2026年8月6日、資料2)。一般送配電事業者の集計をもとに資源エネルギー庁が作成。接続検討のすべてが系統接続に至るわけではありません。

資源エネルギー庁が2026年8月6日の審議会に出した資料によると、高圧以上の系統用蓄電池は2026年3月末時点で、接続検討の受付中が約1億9,114万kW、契約申込みの受付中が約3,527万kW、連系済みが約84万kWです。件数で見ても、接続検討の申込みは2022年度の600件程度から2025年度は2.5万件程度に、契約申込みは40件程度から3,900件程度に増えました。

連系済みは接続検討の0.4%にすぎません。この差は、申し込んだ案件の多くが「とりあえず枠を押さえる」段階にあることを示しています。国が2026年に入って接続ルールを次々に厳しくしているのは、この状態を解消するためです。

エリア別の系統用蓄電池 接続検討・契約申込み(2026年3月末、万kW)
エリア 接続検討 契約申込み 契約申込み÷接続検討
北海道 842 229 27%
東北 7,544 577 8%
東京 3,611 673 19%
中部 1,736 441 25%
北陸 525 85 16%
関西 1,094 292 27%
中国 2,121 530 25%
四国 293 42 14%
九州 1,348 658 49%
合計(沖縄は0) 19,114 3,527 18%

出典:資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」(2026年8月6日)。グラフの読み取り値で、小数点以下は四捨五入されています。

東北は接続検討が7,544万kWと全国の約4割を占めますが、契約申込みまで進んだのは8%です。九州は契約申込みの割合が49%と高く、案件が具体化している比率が違います。同じ「系統用蓄電池が多いエリア」でも、競争の中身は異なります。

2026年の接続ルール改定:10月から土地の使用権原が必要に

資源エネルギー庁の資料では、すでに導入済みの対策として次の5つが整理されています。

系統アクセス手続きで導入済みの対策(資源エネルギー庁資料より)
段階 対策 開始 対象
接続検討 接続を希望する土地に関する情報をまとめた書類の提出を要件化 2026年1月〜 発電等設備全体
接続検討 工事費などが事業者の要望に合わないと分かった時点で、早めに検討結果を回答 2026年4月〜 発電等設備全体
接続検討 1事業者あたりの接続検討申込数に上限を設定 2026年8月〜 系統用蓄電池のみ
契約申込み 保証金の引上げ、工事費の分割払いで初回の最低支払額を設定 2026年4月〜 系統用蓄電池のみ
契約申込み 接続を希望する土地の使用権原の提出を要件化 2026年10月〜 発電等設備全体

同じ資料では、さらに接続検討料の見直し、土地の確保に関する追加対策、契約申込み済み案件の実態把握なども論点に挙がっています。低圧の系統用蓄電池についても、需給調整市場への参入を目的とした接続ニーズが増えているという指摘があり、扱いが議論されています。

実務での意味ははっきりしています。土地の使用権原(所有権や賃借権など)がない案件は、契約申込みに進めません。地権者との合意が取れていない「接続検討だけ出してある案件」の価値は下がり、逆に、土地と系統の両方を押さえた案件の価値が上がります。案件を買う側は、土地の権原書類と接続検討の回答書を最初に確認してください。

系統連系の申請手順そのものは、系統連系申請とは?太陽光・蓄電池の手順・期間・必要書類で詳しく解説しています。

収益源は4つ。2026年はどれも条件が変わった

系統用蓄電池の主な収益源と2026年の変化
収益源 しくみ 2026年の主な変化 注意点
卸電力市場(JEPX)の値差 安い時間に充電し、高い時間に放電する 直近12か月はFY2025より値差が拡大(本記事の集計) 年ごとの変動が大きい。託送・手数料・劣化で手取りは減る
需給調整市場 周波数を保つための調整力(ΔkW)を提供して対価を得る 2026年3月14日から複合商品などが前日取引に移行。上限価格の引下げ案(15円→10円) 単価が下がる方向。応札の量と価格の競争が強まる
容量市場・長期脱炭素電源オークション 将来の供給力(kW)を提供する対価を受け取る 2025年度応札の結果を2026年5月に公表。蓄電池の落札率は46% 長期脱炭素電源オークションは他市場収益の約9割を還付
相対契約(オフテイク等) 小売電気事業者などに運用権を貸し、固定に近い対価を得る 個別契約のため公表データは限られる 契約期間、運用制約、中途解約の条件を確認

4つは独立していません。同じ1kWを同じ時間に二つの市場へ出すことはできず、長期脱炭素電源オークションで落札すれば他市場の収益は大半を還付します。事業計画で一番多い間違いは、各市場の収益を別々に見積もって足し算することです。

独自データ:エリア別、JEPX値差で取れる収益の理論上限

卸電力市場の値差でどれだけ稼げるかを、JEPXのスポット価格(30分ごと、2024年4月〜2026年9月)からエリア別に計算しました。毎日、最も安い時間帯に充電し、最も高い時間帯に放電したと仮定した理論上の上限です。

4時間蓄電の裁定上限は北海道・東北が年約1.8万円/kW、東京は約1.3万円/kW2025年10月〜2026年9月のJEPXスポット価格で計算した理論上限(円/kW/年)。完全予見・1日1サイクル・往復効率85%05,00010,00015,00020,000北海道1.79万東北1.77万東京1.30万中部1.37万北陸1.31万関西1.32万中国1.40万四国1.49万九州1.59万2時間蓄電4時間蓄電
出典:日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場取引結果をエネがえるが集計(2026年10月10日取得)。託送料金・手数料・劣化・充放電の順序制約・予測誤差は含みません。実際に取れる収益はこの値より小さくなります。
JEPXスポット価格による裁定収益の理論上限(円/kW/年)
エリア 4時間
FY2024
4時間
FY2025
4時間
直近12か月
2時間
直近12か月
平均値差(円/kWh)
4時間・直近12か月
北海道 11,633 13,949 17,949 10,391 13.51
東北 11,515 12,063 17,748 10,092 13.41
東京 8,945 8,186 12,981 7,959 10.96
中部 12,096 10,151 13,708 8,009 11.18
北陸 12,417 10,725 13,107 7,699 10.49
関西 12,298 10,933 13,232 7,759 10.53
中国 12,518 10,860 14,034 8,099 10.89
四国 12,257 11,455 14,858 8,654 11.00
九州 14,829 12,418 15,884 8,856 11.92

計算条件:30分コマのスポット価格を日ごとに並べ、安い順に蓄電時間分を充電、高い順に同じ時間分を放電。1日1サイクル、往復効率85%。直近12か月は2025年10月1日〜2026年9月30日。完全に価格を予見できた場合の値で、託送料金・取引手数料・劣化・充放電の順序の制約・予測誤差は含みません。

データセットをCSVでダウンロード(エリア×期間×蓄電時間、出典・計算条件の列つき)

このデータから読み取れることは3つあります。

1つ目は、4時間蓄電でも年2万円/kWに届かないことです。1kWあたり4kWhの設備に5.4万円/kWhかけると、1kWあたり21.6万円です。理論上限の1.8万円を毎年取れたとしても、単純回収で12年かかります。実際に取れるのはその一部です。

2つ目は、年による差が大きいことです。北海道の4時間は、FY2024が11,633円、直近12か月が17,949円で、約1.5倍違います。1年分の価格で20年の事業を評価すると、結論が逆になりかねません。

3つ目は、2時間と4時間の差は2倍にならないことです。東北の直近12か月は2時間10,092円、4時間17,748円で、1.76倍でした。放電を長くするほど、追加の1時間は値差の小さい時間帯になるためです。kWh単価が下がっても、長時間化の効果は逓減します。

三菱総合研究所が2024年8月の検討会に出した分析も、同じ方向を示しています。値差だけで運用する場合、過去5年の実績が繰り返すベースシナリオでは建設費5万円/kWh以下で一定の収益が見込める水準で、6万円/kWhのIRRは0.4%、8万円/kWhでは-2.6%でした。

アービトラージ運用の20年間の収益性(IRR):建設費と値差シナリオ別
建設費 ダウンサイド
(値差4.45円/kWh)
ベース
(10.61円/kWh)
アップサイド
(17.54円/kWh)
8万円/kWh -9.3% -2.6% 1.6%
6万円/kWh -6.2% 0.4% 5.1%
5万円/kWh -4.2% 2.4% 7.5%
4万円/kWh -1.9% 5.1% 10.9%
3万円/kWh 1.2% 8.9% 16.0%

出典:三菱総合研究所「系統用・再エネ併設蓄電システムのコスト面・収益面での課題整理」(2024年度第3回定置用蓄電システム普及拡大検討会、2024年8月29日、資料3)。ダウンサイドは2019年度、アップサイドは2022年度のJEPX実績を参照。

需給調整市場:前日取引化と上限価格の引下げで、単価は下がる方向

需給調整市場は、系統用蓄電池の収益の柱と見られてきました。2026年は、この市場の前提が大きく変わった年です。

2026年3月14日から、複合商品などが前日に取引されるようになりました。資源エネルギー庁が7月14日の審議会に示した資料では、前日取引化の後も応札量が募集量に届かない状況や、上限価格付近で約定する状況が続いたとして、一次・二次①・複合商品の上限価格を15円から10円(円/ΔkW・30分)へ引き下げ、9月1日の実需給分から適用する案が示されました。最新の上限価格は、電力需給調整力取引所(EPRX)の公表情報で確認してください。

三次②の平均約定価格は3.78円まで上がった後、6〜7月は2.10円に下がった需給調整市場・三次調整力②の平均約定価格(円/ΔkW・30分)。各28日間012340.98円前日取引化前2/14〜3/132.90円期間①3/14〜4/103.78円期間②4/11〜5/83.54円期間③5/9〜6/52.10円期間④6/6〜7/3
出典:資源エネルギー庁「需給調整市場について」(電力安定供給ワーキンググループ、2026年7月14日、資料6)。電力需給調整力取引所の提供資料をもとにした速報値。2026年3月14日から複合商品などが前日取引に移行しています。

三次調整力②の平均約定価格は、前日取引化前の0.98円から一時3.78円まで上がり、6〜7月は2.10円に下がりました。応札量が増え、募集量の削減も進んだためと資料は説明しています。

事業計画への示唆は、調整力の単価を高止まりで置かないことです。上限価格は引き下げる方向で、蓄電池の参入が増えるほど競争も強まります。調整力の収入は、低い単価のシナリオでも事業が成り立つかを確かめるために使い、「これがあれば儲かる」という前提にしないほうが安全です。

長期脱炭素電源オークション:20年の固定収入、ただし蓄電池は狭き門

長期脱炭素電源オークションは、落札すると原則20年間、落札価格の容量収入を受け取れる制度です。代わりに、卸市場などで得た収益の約9割を還付します。収入が安定する反面、市場で大きく稼ぐ余地は小さくなります。

OCCTOが2026年5月13日に公表した2025年度応札分の結果では、脱炭素電源の約定総容量は426.1万kW(募集量500万kW)でした。発電方式別の応札容量と落札率は、蓄電池が125.1万kWで落札率46%、揚水が45.3万kWで55%です。「リチウムイオン蓄電池・揚水(新設を除く)」の区分の約定容量は81.9万kWでした。

蓄電池には、日本を除くセルの製造国・地域ごとに、1か国・地域あたりの落札容量を総落札容量の30%未満に抑える制限もあります。機器の調達先が、落札できるかどうかに直結する制度です。

応札した蓄電池の半分以上は落札できていません。長期脱炭素電源オークションを前提にした計画では、落札できなかった場合に市場収益だけで続けられるかを、あらかじめ別のシナリオとして用意してください。

導入コスト:系統用の平均は5.4万円/kWh、海外製は2〜4万円/kWhも

経済産業省の定置用蓄電システム普及拡大検討会が2025年3月にまとめた結果では、補助事業で採用された系統用蓄電システムの価格は平均5.4万円/kWhでした。三菱総合研究所が令和3年度補正〜令和5年度の補助事業データで推計した内訳は、設備費が平均5.5万円/kWh、工事費が平均1.3万円/kWhで、容量が大きいほど単価は下がる傾向があります。

同じ検討会の資料では、補助金を使わず海外製の蓄電システムを採用する案件で2〜4万円/kWhの水準も見られ、国内メーカーと海外メーカーの価格差が開いていると報告されています。

見積を比べるときは、kWh単価の数字だけで判断しないでください。次の4点で前提がそろっていないと、比較になりません。

  • kWhは定格容量か、実際に使える容量か
  • 受変電設備・連系工事・土地造成・系統側の工事負担金が含まれるか
  • PCS・EMS・空調・消火設備・遠隔監視の範囲
  • 保証の年数と、容量保持率(何年後に何%)の条件

家庭用・産業用を含めた蓄電池の価格相場は、蓄電池の価格相場2026|家庭用・産業用・系統用のkWh単価と見積の比べ方で整理しています。

補助金:SIIの系統用蓄電池等導入支援事業(令和7年度の条件)

国の支援は、SIIが執行する「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業」が中心です。令和7年度の公募要領(2025年8月)では、補助率と上限は次のとおりでした。

令和7年度 系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業の補助率(1申請あたり)
区分 条件 補助率 補助上限額
リチウムイオン・NAS・レドックスフロー・鉛など 最大受電電力1,000kW以上10,000kW未満 1/3以内 10億円
同上 最大受電電力10,000kW以上 1/2以内 40億円
電動車等の駆動用蓄電池のリユース 最大受電電力1,000kW以上 1/2以内 20億円
長期エネルギー貯蔵技術(LDES) 最大受電電力1,000kW以上 2/3以内 20億円

出典:SII「令和7年度 再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金 公募要領」(2025年8月)。公募期間は2025年8月29日〜10月24日でした。

同じ公募要領では、1社あたり(共同申請を含む)の申請は設備の種別ごとに2件まで、事業のためにSPCを設立して出資しても1件と数えると定めています。2〜10MW案件は「1,000kW以上10,000kW未満」の1/3に入るため、補助があっても事業費の3分の2は自己資金と借入で賄う前提で計画することになります。2026年度の公募状況は、SIIのウェブサイトで確認してください。

計算例:2MW・8MWhの系統用蓄電池(東北エリア)

ここまでの数字を使い、2〜10MW帯で多い規模の計算例を示します。すべて仮定を置いた計算で、特定の案件の収益を示すものではありません。

計算例の前提
規模 出力2,000kW、容量8,000kWh(4時間)
システム価格 5.4万円/kWh(検討会の平均)→ 4.32億円
補助 1/3(令和7年度の1,000kW以上10,000kW未満の区分)→ 1.44億円
裁定収益 東北・直近12か月・4時間の理論上限 17,748円/kW/年 × 取り込み率60%(仮定)
容量・調整力の収入 ケースBとCは0.95万円/kW/年(三菱総合研究所の2024年8月の分析で置かれた容量市場収入の想定値)
運転維持費 システム価格の1.5%/年(仮定)
その他 裁定収益は毎年2%低下(劣化などの仮定)、評価期間15年、税・借入・更新費・託送料金は含まない
計算例の結果(15年、税引前)
ケース 補助後の初期投資 1年目の手取り 15年の累計(投資控除後) 回収 IRR
A:値差のみ・補助1/3 2.88億円 1,482万円 -1.07億円 15年で回収せず -5.7%
B:値差+容量相当・補助1/3 2.88億円 3,382万円 +1.78億円 9年目 7.0%
C:値差+容量相当・補助なし 4.32億円 3,382万円 +0.34億円 14年目 1.0%

値差だけのケースAは、補助を受けても15年で回収できません。容量・調整力の収入を年0.95万円/kW重ねたケースBは、IRRが7.0%まで上がります。補助がないケースCは1.0%です。

この比較で分かるのは、系統用蓄電池の事業性は「どの市場の収入を、どれだけ確実に重ねられるか」と「補助の有無」でほぼ決まるということです。電池が安くなっただけでは足りません。収益の組み合わせを先に設計し、その組み合わせが実現しなかったときの下振れまで計算しておく必要があります。

無料:系統用蓄電池 簡易収支シミュレーター

エリア、規模、システム価格、補助率、取り込み率、容量・調整力の収入を変えて、回収年数とIRRを計算できます。最初は上の計算例のケースA(東北・2MW・4時間)が表示されます。「容量・調整力などの収入」に9500を入れるとケースBになります。

系統用蓄電池 簡易収支シミュレーター

入力した値はこのページの中だけで計算し、どこにも送信しません。計算例であり、収益の予測や保証ではありません。










裁定の理論上限は本記事の表(直近12か月)の値を使います。容量・調整力の収入は案件ごとに大きく変わるため、初期値は0円にしています。長期脱炭素電源オークションで落札した場合は、他市場収益の約9割を還付する仕組みがあるため、裁定収益と容量収入を単純に足すことはできません。

2〜10MW案件のGo/Kill判断チェックリスト

案件を前に進めるか止めるかを、次の順で確かめてください。上から順に、満たせない時点で止めるのが無駄の少ない進め方です。

系統用蓄電池案件のGo/Kill条件
順番 確認すること Goの目安 Killの目安
1. 土地 使用権原(所有権・賃借権など)の書類 契約申込みに出せる書類がある 地権者の合意がない、農地転用などの見通しが立たない
2. 系統 接続検討の回答(工事費負担金、工期、出力制御の条件) 工事費と連系時期が収支に収まる 工事費負担金や工期で収支が崩れる
3. 収益の組み合わせ 値差・調整力・容量・相対契約のどれを、どの比率で取るか 値差の下振れシナリオでも資金繰りが回る 調整力の単価が高い前提でしか成り立たない
4. 設備 kWh単価の前提、保証、セルの調達国 見積範囲がそろい、長期脱炭素電源オークションの調達制限も確認済み 保証条件が事業期間に足りない
5. 資金 補助の有無、借入条件、保証金 補助なしのシナリオでも出資者の基準を満たす 補助が前提で、不採択なら成り立たない
6. 運用 アグリゲーター・運用会社との契約、手数料、性能保証 運用の責任分担と手数料が契約で決まっている 運用方針が未定のまま収益を見積もっている

このチェックリストは、取引先や出資者に説明するときにもそのまま使えます。判断の材料と、まだ足りないデータが一目で分かるためです。

関連する試算とエネがえるでできること

系統用蓄電池の収支は、市場価格・制度・設備条件を組み合わせた個別の試算が必要です。エネがえるでは、系統用蓄電池の経済効果・収支シミュレーションや投資計画の策定支援についてご相談を受け付けています(系統用蓄電池の収支シミュレーションの相談について)。

工場や店舗の構内に置く需要家設置型の蓄電池なら、電気料金プランのデータベース(約100社・約3,000プラン、基本料金・従量料金・燃料費調整単価を月1回更新)を使って、電気料金の削減効果を試算できます。提供形態や事例はエネがえるの資料一覧と導入事例をご覧ください。

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よくある質問

系統用蓄電池とは何ですか?

発電所や需要家の構内ではなく、電力系統(送配電網)に直接つないで、電気をためたり出したりする蓄電池です。卸電力市場での売買、需給調整市場での調整力の提供、容量市場や長期脱炭素電源オークションでの供給力の提供などで収益を得ます。

系統用蓄電池はどれくらい増えていますか?

資源エネルギー庁の集計では、2026年3月末時点で連系済みは約84万kWです。一方、接続検討の受付中は約1億9,100万kW、契約申込みの受付中は約3,500万kWで、つながっている量の数十倍から数百倍の計画が順番を待っています。

系統用蓄電池の導入費用はいくらですか?

経済産業省の定置用蓄電システム普及拡大検討会の取りまとめ(2025年3月)では、補助事業で採用された系統用蓄電システムの価格は平均5.4万円/kWhです。補助金を使わず海外製を採用する案件では2〜4万円/kWhの水準も見られると報告されています。2MW・8MWhなら、5.4万円/kWhで約4.3億円になります。

卸電力市場の値差だけで投資回収できますか?

本記事の計算例では難しい結果です。JEPXの直近12か月の価格で計算した4時間蓄電の裁定収益は、理論上限でも年1.3〜1.8万円/kW程度です。取り込み率60%、システム価格5.4万円/kWh、補助1/3の条件では、15年で回収できませんでした。容量や調整力の収入を重ねられるかが分かれ目です。

2026年に系統接続のルールはどう変わりましたか?

資源エネルギー庁の資料では、接続検討時の土地情報の書類提出(2026年1月〜)、契約申込み時の保証金の引上げ(2026年4月〜)、系統用蓄電池の1事業者あたりの接続検討申込数の上限設定(2026年8月〜)、契約申込み時の土地の使用権原の提出(2026年10月〜)などが導入されています。土地を押さえないまま申し込む案件は進めにくくなりました。

系統用蓄電池の補助金はありますか?

SII(環境共創イニシアチブ)が「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業」を実施しています。令和7年度の公募要領では、最大受電電力1,000kW以上10,000kW未満のリチウムイオン等は補助率1/3以内・上限10億円、10,000kW以上は1/2以内・上限40億円でした。最新の公募状況はSIIのウェブサイトで確認してください。

出典

いずれも2026年10月10日に内容を確認しました。

執筆:樋口 悟(国際航業株式会社 エネがえる事業)/最終更新:2026年10月11日


記事の内容を、自社案件の数字で確認

住宅用、産業用自家消費、EV・V2Hの経済効果を、用途に合うデモで確認できます。

住宅用ASP / 産業用Biz / EV・V2H

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら)

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

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エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

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