「市場連動型プランってどんなもの?」
「結局のところ通常の電気料金プランよりも良いの?悪いの?」
電気料金プランを比較検討する際、「市場連動型プラン」という言葉を目にして、このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
市場連動型プランとは、電気料金の単価が市場の価格変動によって決まるプランのことです。
「市場連動型プランは良いものか・悪いものか」という疑問に対する本記事の結論を先に申し上げると、
「簡単におすすめできるものではないが、絶対に避けるべきものでもない」
です。
簡単におすすめできない理由 | 絶対に避けるべきものではない理由 |
・価格変動による急激な値上がりのリスクがある ・電力業界や経済の動向をチェックするなど、消費者側にリテラシーの高さが求められる | ・契約のタイミング・電気の使い方次第では通常のプランよりも電気代が安くなるケースもある |
市場連動型プランは電気代が高くなる可能性と安くなる可能性の両方を持っており、一部の電力会社が「市場連動型プランは電気代が安くなる!」とおすすめする一方で、一部のメディアでは「市場連動型プランは危険!」とも言われるのはこのためです。
現時点ではまだまだ使う人を選ぶ発展途中の料金プランであるため、記事を読んで不安を感じた場合は、誰でも低リスクで利用できる環境が整うまで様子を見た方が無難だと言えるでしょう。
本記事では、「市場連動型プランがよくわからない」という方に向けて、知っておくべき基礎知識を完全解説します。
最後まで読めば、市場連動型プランの良い面も悪い面もしっかりと理解でき、あなたが今後市場連動型プランを利用するかどうかの方針を固められることでしょう。
目次
市場連動型プランとは
まずは、市場連動型プランとはどのようなものなのか
- 市場の価格変動によって料金単価が決まるプランのこと
- 市場連動型プランを扱っている電力会社
の2つの視点からお話ししていきます。
市場連動型プランがあなたの生活に必要か・どう活かせるかを考える前に、前提となる大まかな基礎知識を固めておきましょう。
市場の価格変動によって単価が決まるプランのこと
冒頭でも申し上げた通り、市場連動型プランとは、市場の価格変動によって単価が決まるプランのことです。
従来の電気料金プランでは単価が固定であるのに対し、市場連動型プランでは需要と供給のバランスに応じて30分ごとに単価が変わります。
具体的にどういうことか、市場連動型プランの仕組みを通常のプランと比較しながら見てみましょう。
まずは、こちらが市場連動型プランの電気料金の仕組みです。
【市場連動型プランの電気料金の仕組み】
※1 電力量料金:電力の使用量に応じてかかる料金のこと
※2 再エネ賦課金:利用者が負担しなければならない再エネ用の資金。再エネ普及のために国が定めたもの
市場連動型プランでは、「日本卸電力取引所(JEPX)」から仕入れた電力を使用しており、JEPXの取引価格は
「1月3日8時の単価は5.5円」
「1月3日8時30分の単価は6.2円」
といったように、需要と供給の状況によって30分ごとに変動します。
続いて、通常プランの電気料金の仕組みを見てみましょう。
【通常プランの電気料金の仕組み】(「従量電灯型B・C」など)
通常プランの電力量料金は、
- 120kWhまでは10円
- 120~300kWhは20円
- 300kWh超えは30円
といったように使用した量に応じて単価が定められているのが基本で、市場連動型プランのように時間帯によって料金が変わることはありません。
市場連動型プランの単価が変動するのは、電力を取引市場「一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)」から仕入れていることが深く関係しています。
JEPXでは、1日を30分単位に区切った48コマで電力の取り引きをしており、市場価格は
- 気象条件
- 電力の需給
- 燃料の価格
などに応じて30分ごとに変動します。
- 需要が高い・供給が少ない時間帯→単価は高くなる
- 需要が低い・供給が多い時間帯→単価は安くなる
といった、株式市場のような価格変動が起こるのはこのためです。
1ヶ月ごとに単価が変動する「一部市場連動型プラン」もある 市場連動型プランの中には「一部市場連動型プラン」というものも存在します。 「一部市場連動型プラン」とは市場価格の平均値を毎月の単価に反映させて「調達調整費」として徴収するプランで、通常の市場連動プランでは30分ごとに単価が変動するのに対して、こちらは1ヶ月ごとに単価が変動します。 本記事で解説しているのは通常の市場連動型プランですが、「市場連動型プラン」と謳っている電力会社の中には一部市場連動型プランの料金体系を採用しているものもあるので、この2種類の違いは把握しておきましょう。 |
市場連動型プランを扱っている電力会社
市場連動型プランを扱っている電力会社には、次のようなものがあります。
市場連動型プランを扱っている電力会社(一例) | |
---|---|
通常の市場連動型プラン | 一部市場連動型プラン |
アストでんき | ENEOSでんき |
サニックスでんき | 楽天でんき |
リミックスでんき | シン・エナジー |
Looopでんき | ハルエネでんき |
ハチドリ電力 | しろくま電力 |
ソフトバンクでんき | エフエネでんき |
上の表を見てもわかる通り、東京電力をはじめとする大手電力会社は市場連動型プランを扱っておらず、取り扱いのある電力会社は2016年以降に業界へ新規参入した「新電力」が中心です。
「大手電力会社」と「新電力」とは? 【大手電力会社とは】 東京電力・関西電力・中部電力・東北電力・九州電力・中国電力・四国電力・北海道電力・北陸電力・沖縄電力の10社のこと。自社の発電所を保有している。 【新電力とは】 新規参入の小売り電気事業者。 2016年からスタートした新制度「電力自由化」によって個人が自由に電力会社を選択できるようになり、家庭向けの電気を販売する新電力会社が急増した。 2023年現在も、国内では数多くの新電力会社が設立している。 |
市場連動型プランは、すべての電力会社が提供しているプランではありません。
もしあなたが電気料金のプランを市場連動型に切り替える場合は、自動的に新電力への切り替えになるということを認識しておきましょう。
市場連動型プランを契約するメリット
ここからは、市場連動型プランを契約するメリットについてご紹介します。
通常の電気料金プランから切り替えた際、具体的にどのような良いことがあるのか、詳しく見ていきましょう。
電気料金を安くできる可能性がある
市場連動型プランの最大のメリットは、「電気料金を安くできる可能性がある」という点です。
なぜ市場連動型プランを契約すると電気料金を安くできる可能性があるのか、その理由は主に次の2つです。
- 2023年以降の市場価格が落ち着いている
- 「単価が安い時間帯を狙って使う」という節約術が有効
それぞれどういうことか、説明していきます。
2023年以降の市場価格が落ち着いている
2023年以降、電気の市場価格は落ち着いており、2021~2022年よりも平均的な単価は安くなっています。
これに対し、従来の電気料金プランを提供する大手電力会社の多くは、2023年6月から電気料金の値上げを行っています。
2023年時点での両者の単価を比較してみると、市場価格の方が安く、従来の料金プランよりも市場連動型プランの方が電力量料金が安くなりやすい傾向にあることがわかります。
市場連動型プラン※1の単価 | 従来の料金プラン※2の単価 |
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10.13~13.56円/kWh 【内訳】 | 30~40.69円/kWh 【内訳】 |
※1:JEPX「スポット市場価格」にて公開されている月平均単価を参照
※2:東京電力「従量電灯B」の料金単価を参照
「大手電力会社の電気料金は上昇傾向・市場価格は下落傾向」という現状をふまえると、市場連動型プランの契約で電気料金が安くなる可能性は十分にあると言えるでしょう。
「単価が安い時間帯を狙って使う」という節約術が使える
30分おきに電気の単価が変動する市場連動型プランでは、「単価が安い時間帯を狙って使う」という節約術が使えるため、やりくりの仕方によっては電気料金を安く抑えられる可能性があります。
「単価が安い時間帯」とは、つまりは「電気の需要(市場価値)が低い時間帯」のことであり、具体的には
- 平日の深夜~日中
- 土日祝日の早朝~午前中
を中心に電気を使用できれば、同じ使用量でも1日の電気料金がぐっと抑えられます。
これは、電気の単価が1日を通して同じである通常の料金プランではできない、市場連動型プランならではの節約術だと言えるでしょう。
Q.一般的なライフスタイルの人は、市場連動型プランを契約しても節約にならない? 「平日は夕方~夜に、休日は1日を通して電気を使う」といった一般的なライフスタイルの方の場合は、「単価の安い時間帯を狙って電気を使う」という節約術は使えません。 しかし、そういった方であっても太陽光パネルや蓄電池などを用いて電力の消費時間を分散させる「ピークシフト」を行えば、市場連動型プランによって電気料金を抑えることが可能です。 上の図のように、蓄電池に溜めておいた電力を単価が高い時間帯に消費すれば、電気料金を抑えられます。 「市場連動型プランは昼夜逆転生活の人や在宅仕事の人にしかメリットがないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではないということを覚えておきましょう。 |
これまでの説明で、市場連動型プラン最大のメリット「電気料金を安くできる可能性がある」が、おわかりいただけたのではないでしょうか。
電力会社が倒産して契約解除になるリスクが少ない
市場連動型プランを契約するメリット、2つ目は「電力会社が倒産して契約解除になるリスクが少ない」です。
Q.電力会社が倒産して契約解除?そんなことがあるの? 大手電力会社よりも資金面に余裕のない新電力は倒産リスクが高く、実際に2021年4月時点で事業登録をしていた706社のうち、2023年3月時点では195社が契約停止・撤退・倒産しています。 新電力が倒産する主な原因は、電気の仕入れ価格が高騰することによる資金不足です。 市場や大手電力会社から電気を調達することで成り立っている新電力は、調達コストを上回る電気料金を消費者から回収できないと、キャッシュフローが回らなくなり倒産に追い込まれてしまいます。 |
通常の料金プランの場合、電力の仕入れ価格が高騰してもすぐに値上げできず、赤字が発生しやすいという弱点があります。
これに対し、市場連動型プランは仕入れ価格に合わせて電気料金を変動させられるため、電力会社側に赤字が発生しない仕組みになっています。
「仕入れ価格が高騰した分電気代も上がるため倒産の心配がない」
という市場連動型プランの仕組みは、一見電力会社側のメリットのように思えるかもしれませんが、
「新電力に契約→倒産→新しい新電力に切り替える、といった手間を繰り返す心配がない」
という点においては消費者側のメリットとも言えます。
電気代削減のために時間と労力をかけて選んだ電力会社でも、契約してすぐに倒産してしまっては元も子もありません。
倒産・契約解除の心配をせず、安定してひとつの電力会社が使い続けられるのは、市場連動型プランのメリットだと言えるでしょう。
市場連動型プランを契約するデメリット
続いて、市場連動型プランを契約するデメリットについてお話しします。
前章のメリットと併せて確認し、あなたの生活にとって総合的に良い面と悪い面のどちらの要素が大きいか考えながら読み進めていきましょう。
市場価格が急に高騰するリスクがある
市場連動型プランを契約する最大のデメリットとも言えるのが、「市場価格が急に高騰するリスクがある」という点です。
物価や株価などと同様に、電力にも需給バランスの崩壊などによる急激な価格高騰というものがあります。
電力の市場価格が急に高騰した場合、その価格変動がダイレクトに電気料金へと反映されるため、消費者は高額な電気料金を払わなければなりません。
実際に過去に発生した、市場価格高騰の事例を見てみましょう。
事例①新電力間の「買い争い」による価格高騰 | |
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・2020年12月から2021年1月にかけて、JEPXの電力市場価格が長期間高騰し続けるという事態が発生 ・ピーク時の単価は154.6円/kWhと、通常時の10倍以上となる過去最高の価格を記録した ・寒波の影響で電力の需要が大幅に増加し、それに伴って新電力の間で買い争いが発生したことが価格高騰の原因だと考えられている |
事例②日本全国で原因不明の価格高騰 | |
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・2021年10月8日、16時30分~17時のコマにてJEPXの電力市場価格が局所的に高騰するという事態が発生 ・単価は50.0円/kWhと、同日の15時点と比較すると4倍以上の価格を記録した ・価格高騰の原因は明らかになっていないが、大手電力会社の定期点検のタイミングが重なり、一時的な供給不足に陥った可能性があると考えられている |
突然訪れる価格高騰に対して、消費者個人が情報収集をして原因の特定や予測をするのには限界があり、十分なリスクヘッジができません。
このように、市場連動型プランには
- 2023年9月時点では市場価格が落ち着いており、電気代が安くなる可能性がある
- 過去に市場価格が急激に高騰した事例もあり、予測できないタイミングで電気代が高くなる可能性もある
といった表裏一体のメリットとデメリットが存在し、一概に良いとも悪いとも言えないのが現状です。
電気使用量・ライフスタイルによってはかえって料金が高くなる可能性もある
電気使用量・ライフスタイルによってはかえって料金が高くなる可能性もあるというのも、市場連動型プランのデメリットのひとつです。
市場連動型プランのメリットとして「『単価が安い時間帯を狙って使う』という節約術が使える」を挙げましたが、
- 単価が安い時間帯に電気を利用できない
- 太陽光パネル・蓄電池を導入できずピークシフトも行えない
など、節約のしようがないケースもあります。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
市場連動型プランで電気料金が高くなる一例 |
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・母・乳幼児の次女は自宅で過ごす時間が長く、平日も休日も1日中電気を使う 電気代が高い時間帯にも電気をたくさん使用する・ピークシフトも行えないため、市場連動型プランを契約した場合、電気代が高額になってしまう可能性が高い |
上のようなケースであれば、市場連動型プランではなく電気をたくさん使うファミリー向けの固定料金プランを契約した方が、月々の電気代が安くなる可能性が高いでしょう。
市場連動型プランが向いているかを判断する基準
この章では、市場連動型プランが向いているかを判断する基準について
- 【ライフスタイル】市場価格が安い時間帯を中心に電気を使用するか
- 【性格】市場価格・電力会社の動向に関する情報を自分で収集できるか
- 【電気代削減に対する意識】ピークカットやピークシフトを実践する意欲があるか
の順にお話しします。
あなたのライフスタイル・性格・電気代削減に対する意識と照らし合わせて、市場連動型プランを契約するかどうかの判断材料にしましょう。
【ライフスタイル】市場価格が安い時間帯を中心に電気を使用するか
まずは、「市場価格が安い時間帯を中心に電気を使用するか」というライフスタイルによる判断基準について解説します。
時間によって電気料金が変動する市場連動型プランでは、「いつ」電気を使うかが非常に重要です。
単価が安い時間帯に電気を使い、高い時間帯に使わないライフスタイルの人が市場連動型プランに向いていると言えるでしょう。
具体的には、以下の基準で向き不向きを判断します。
市場連動型プランに向いている | 市場連動型プランに向いていない |
・平日の深夜~日中 をメインに電気を使用する | ・平日の夕方~夜 をメインに電気を使用する |
年間通して冷暖房はあまり使わない | 夏場に冷房・冬場に暖房を多用する |
さらに具体的に掘り下げると、
- 夜勤の仕事に継いている人
- 夜型生活の自営業・自由業の人
- 寒暖差のない気候に住んでいる人
といった人は市場連動型プランの利用で電気料金が安くなる可能性が高いです。
【性格】市場価格・電力会社の動向に関する情報を自分で収集できるか
続いて、性格による判断基準「市場価格・電力会社の動向に関する情報を自分で収集できるか」です。
市場連動型プランは、家庭向けに実装されて間もない発展途中の電気料金プランであり、2023年時点においては「知識が全くない人でも安心して契約できるプラン」とは言えません。
将来的には自動で蓄電・節電するなど、価格変動に備えたサービスも増えてくると考えられていますが、現段階では
- 日々の電気の市場価格がどのように変動しているか・今後どう変動していくか
- 新電力がどのような事業展開を見せるか
といった情報を自分で収集する必要があります。
そのため、市場連動型プランの向き不向きを性格で判別すると、次のような分類になります。
市場連動型プランに向いている性格 | 市場連動型プランに向いていない性格 |
買い物や旅行などは下調べをしっかりするタイプ | 買い物や旅行などは下調べやシミュレーションをせず、なんとなくの感覚で決めるタイプ |
他の電力会社への乗り換えを常に視野に入れながら、「その時最もお得な電力会社」を利用したい | 電力会社の乗り換えは面倒なので、できるだけ長く同じ料金プランを契約したい |
好奇心が強く、ニュースサイトなどで最新の情報を収集するのが好き | 何事に対しても好奇心が弱い |
市場連動型プランは、電力会社任せで契約してしまうと危険な、消費者本人のリテラシーが求められるプランです。
定期的に市場価格・電力会社の動向に関する情報を収集し、いざというときはすぐに他の電力会社へ乗り換える柔軟性がある人が向いていると言えるでしょう。
【電気代削減に対する意識】ピークカットやピークシフトを実践する意欲があるか
最後は、「節電やピークシフトを実践する意欲があるか」という電気代削減に対する意識の高さを基準に、市場連動型プランの向き不向きを判断します。
市場連動型プランでは、
- 市場価格の高い時間帯になるべく電力を使わない(ピークカット)
- 市場価格の安い時間帯に電力を分散させる(ピークシフト)
といった方法をどれだけ生活の中で実践できるかで、電気料金が大きく変わってきます。
以下のリストを参考に、あなたが「電気代削減のためならどこまでできるか」をチェックしてみましょう。
電気代削減に対する意識の高さチェックリスト |
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・自宅に蓄電池・太陽光パネルを導入する |
「そこまではできない」と感じるものがひとつでもあれば、市場連動型プランは向いていないかもしれません。
市場連動型プランへの切り替えで電気代は本当に安くなる?比較シミュレーション
市場連動型プランの契約で電気料金が安くなる可能性があると聞いて、真っ先に気になるのは
「実際に自分が契約した場合、いくら安くなるの?」
という点ではないでしょうか。
従来の料金プランから市場連動型プランへの切り替えで電気料金がいくら安くなるのか、シミュレーターを使って検証してみましょう。
都内の戸建てに住む4人家族・Aさん一家の場合 | |
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世帯人数 | 4人 |
居住地 | 東京都(戸建て) |
ライフスタイル | 午前6~9時 |
電気使用量(月平均) | 450kWh |
現在契約中のプラン | 大手電力会社 「従量電灯B(40A)」 |
Aさん一家の情報を、電気料金の比較検討や太陽光パネル設置シミュレーションに使われるツール「エネがえる」に入力し、現在のおおよその電気料金を算出します。
「エネがえる」とは? 料金プランの変更や太陽光パネルの設置で将来電気料金がどのくらい安くなるかをシミュレーションできるツール。 住んでいる地域や生活スタイルなど利用者の情報を細かく設定できるため、「結局いくらお得になるの?」が高い精度でシミュレーションできます。 |
「エネがえる」によるシミュレーション結果は、以下の通りです。
Aさん一家の現在の電気料金(目安) | |
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年間合計 | 22万262円 |
月間平均 | 1万8,355円 |
年間およそ22万円・月間1万8,355円の電気料金が、市場連動型プランへの切り替えでいくら安くなるのでしょうか。
市場連動型プランを提供する新電力B社・C社のシミュレーターに、Aさん一家の情報を入力してみたところ、次のような結果が出ました。
市場連動型プランに切り替えた場合の | ||
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新電力B社 | 年間合計 | 21万986円 |
月平均 | 1万7,582円 | |
新電力C社 | 年間合計 | 21万4,340円 |
月平均 | 1万7,862円 |
切り替え前の電気料金と比較すると、削減額は年間で1万円程度・月間でわずか1,000円未満でした。
このシミュレーション結果を見て、
「思ったほど安くならない…」
と感じた方は多いのではないでしょうか。
電力会社が自社のWebサイトで提供しているシミュレーターには、最低限の入力項目しかない簡易的なものが多く、今回算出した電気料金はあくまで目安でしかありません。
「エネがえる」と電力会社の簡易シミュレーターの違い | |
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「エネがえる」の入力項目 | ・居住エリア →詳細な情報を入力して精度の高いシミュレーションが可能 |
簡易シミュレーターの入力項目(一例) | ・居住エリア →入力できる情報が限られており、簡易的なシミュレーションしかできない |
「エネがえる」は今後、市場連動型プランもシミュレーション対象に加える予定ではあるものの、2023年9月時点では通常の料金プランから市場連動型プランへの切り替えを精度高くシミュレーションできないというのが現状です。
電力会社から「安くなりますよ!」と市場連動型プランをプッシュされた場合は、
- 明確な根拠はあるか
- 精度高くシミュレーションを行ってくれているか
を担当者に確認するようにしましょう。
最終的な決め手は「手間やリスクを取ってでも電気代を安く抑えたいか」
ここまで記事を読んで、市場連動型プランを契約するかどうかが決められないという方は、「手間やリスクを取ってでも電気代を安く抑えたいか」を最終的な決め手にしましょう。
前述してきた通り、市場連動型プランに切り替えて電気料金を安く抑えるためには
- 市場価格・電力会社の動向に関する情報収集
- ピークカット
- ピークシフト
といった、自分の頭で考え・実践する力が必要です。
さらに言えば、そこまでやっても、市場価格が突然高騰するリスクはついてきます。
「情報収集の手間や価格高騰のリスクを背負ってでも、電気代削減に挑戦したい」
というのなら市場連動型プランへの切り替えを、
「多少電気料金が高くついたとしても、リスクが低い楽な手段を取りたい」
というのなら通常プランの継続をおすすめします。
ここまで読んで不安を感じるなら「今は様子見」がベター 電気料金のプランは、契約者の意思でいつでも自由に選択できるため、今すぐ決断せず「今は様子見」という保留のスタンスを取ることも可能です。 近い将来、蓄電・節電の技術が進歩して価格変動リスクを抑えるサービスが出てくる可能性は十分にあり、市場連動型プランを契約するのはそれからでも遅くはありません。 市場連動型プランに不信感や不安がある方は、「保留」という選択をしてはいかがでしょうか。 |
市場連動型プランを契約する電力会社を選ぶポイント
ここからは、市場連動型プランを契約すると決めた人に向けて、電力会社を選ぶ際のポイントを3つお伝えします。
- エリア・時間ごとの電気料金が簡単にチェックできるか
- ピークシフトの提案をしてくれるか
- 市場連動型プランのリスクについてきちんと説明してくれるか
これらのポイントを全て満たしていれば、信用できる電力会社である可能性が高いと言えます。
ひとつずつ、順番に詳しく見ていきましょう。
エリア・時間ごとの電気料金が簡単にチェックできるか
まずは、エリア・時間ごとの電気料金が簡単にチェックできるか、というポイントです。
30分ごとに電気の単価が変動する市場連動型プランでは、電気料金を少しでも安く抑えるために「どの時間帯に使用すれば電気料金が安く(高く)なるのか」を把握することがとても重要です。
基本的には
- 平日の深夜~日中
- 土日祝日の早朝~午前中
が電気料金が安くなる時間帯だと言われていますが、季節やエリアによっても市場価格は変わります。
そのため、
「自分が住んでいるエリアの、時間帯別の電気料金」
がいつでも簡単にチェックできる電力会社を選びましょう。
エリア・時間ごとの電気料金が簡単にチェックできる電力会社の例 |
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出典:looopでんき 市場連動型プランを提供する新電力・Looopでんきでは、モバイルアプリの「でんき予報」機能で、電気の高い時間・安い時間がいつでもすぐにチェックできます。 |
ピークシフトの提案をしてくれるか
続いて、「ピークシフトの提案をしてくれるか」というポイントです。
生活の都合上節電ができない・単価が高い時間帯に電気を使用せざるを得ないといった人の場合、電気料金を安く抑えるためには電力の消費時間を分散させる「ピークシフト」を積極的に行うことが重要です。
電力会社によっては、
- 太陽光パネル+蓄電池
- その他ピークシフト設定のある家電(パソコン・空調・照明など)
といったピークシフトを行える提案をしてくれるところもあるため、そのような電力会社を積極的に選ぶことをおすすめします。
ピークシフトの提案をしてくれるか電力会社の例 |
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出典:アストでんき 金融事業を手掛けるアストマックス社のエネルギー子会社である新電力「アストでんき」では、専用のスマートリモコンやモバイルアプリを導入すれば ・室内の温度調整 などの設定ができます。 市場価格に合わせた分析・最適化を行う機能も搭載されており、市場連動型プランで電気料金を抑えるのに重要な「節電・蓄電」をほぼ自動化できます。 |
市場連動型プランのリスクについてきちんと説明してくれるか
市場連動型プランを契約する電力会社を選ぶポイント、最後は「市場連動型プランのリスクについてきちんと説明してくれるか」です。
2023年に入ってから電気の市場価格が安定している今、電力会社にとっては市場連動型プランを売り出しやすい状況にあります。
新規顧客を掴むチャンスとも言えるこのタイミングで、あなたは次の2社のうち、どちらの営業スタイルが信用できる電力会社だと感じるでしょうか。
A社 | 「市場価格が値下がりしてる今のうちにどんどん契約を取らなければ!」 →市場連動型プランの契約で月々の電気代がお得になるということを前面に押し出して営業。デメリットについては触れない。 |
---|---|
B社 | 「今は市場価格が落ち着いているが、価格高騰のリスクがあるのは変わらないこともしっかり伝えなければ!」 →過去の価格高騰の事例など、市場連動型プランのリスクや自社のリスク軽減の取り組みを伝え、納得した上で契約してもらう営業。 |
おそらく、デメリットについてもしっかり説明してくれるB社の方が信用できると感じたのではないでしょうか。
反対にA社のような「とにかく今、新規契約が獲得できればいい」と考えるような電力会社を選んでしまうと、プランの急なルール変更やトラブル時に連絡が取れないなど、ずさんな対応をされる危険があります。
契約する電力会社を選ぶ時は、問い合わせフォームなどを介して、市場連動型プランの契約に不安を感じていることを伝えてみるのがおすすめです。
その際に、
- 市場連動型プランについて説明する際、メリットとデメリットを並行して話してくれる
- 過去の価格高騰事例について尋ねられても、ぼかさず真摯に答えてくれる
- ピークシフトの自動化など、新技術の開発・導入に積極的で、未来を見据えた運用をしている
といった手厚い対応をしてくれるのであれば、信用度の高い電力会社であると言えます。
市場連動型の電気代を抑える2つのコツ
最後は、市場連動型プランの電気代を抑える2つのコツを紹介します。
- 電気の使用は安い時間帯に増やす・高い時間帯は控える
- 太陽光パネル・蓄電池を導入する
電気料金の安定しない市場連動型プランを賢く利用するために、しっかり押さえておきましょう。
電気の使用は安い時間帯に増やす・高い時間帯は控える
まずは、電気代が安い時間帯に電気を使うようにするというコツです。
「『単価が安い時間帯を狙って使う』という節約術が使える」でもお伝えしたように、電気の単価が安い時間帯(=電気の需要が低い時間帯)を狙って使用することで、電気料金をある程度抑えられます。
電気代が安くなりやすい時間帯 | 電気代が高くなりやすい時間帯 |
・平日の深夜~日中 この時間帯になるべく電気を使う | ・平日の夕方~夜 この時間帯はなるべく電気の使用を避ける |
具体的には、日頃の電気の使い方を以下のようにシフトするのが効果的です。
- 平日夜・休日の午後以降は冷房の設定温度を上げる(暖房なら下げる)
- 休日の家事はなるべく午前中に終わらせる(タイマーをセットできるものはしておく)
- 休日の日中はなるべく照明を付けず、自然光だけにする
ただし、ライフスタイルによっては実践できない場合もあるので、くれぐれも日々の生活にストレスを感じない範囲でやることをおすすめします。
太陽光パネル・蓄電池を導入する
太陽光発電・蓄電池を併用するというのも、市場連動型の電気代を抑えるコツのひとつです。
生活の都合上「電気の使用は安い時間帯に増やす・高い時間帯は控える」が実践できない場合は、料金が高い時間帯に使った電力を安い時間帯に分散させる「ピークシフト」を行えば電気代が削減できます。
ピークシフトの手段として最も一般的なのが、太陽光パネルと蓄電池です。
太陽光パネルで電力を作り、蓄電池で電力を溜めることで、料金の高い時間帯に電力会社から供給される電力を使わずに済みます。
電力会社から電気を購入する量自体が抑えられるので、万が一市場価格が急激に高騰しても、電気料金の値上がりリスクを軽減することができます。
「電気代が高い時間帯にしか家にいられない」
「価格高騰のリスクを考えると市場連動型プランに踏み切るのが怖い」
といった方は、太陽光パネル・蓄電池の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
太陽光パネル・蓄電池の費用対効果をシミュレーションするなら「エネがえる」がおすすめ
ここまで記事を読んで
「価格高騰のリスクを考えると、市場連動型プランはまだ契約せず様子を見たい…それ以外の手段で電気代を抑えるにはどうしたらいい?」
「市場連動型プランを契約して、節電やピークシフト対策も万全にしたい思うが、太陽光発電の初期投資に不安がある…」
など、さまざまな意見を抱いたのではないでしょうか。
市場連動型プランを契約する・しないに関わらず、電気代を根本から抑えたいのであれば、太陽光パネル・蓄電池の費用対効果のシミュレーションを「エネがえる」で行ってみることをおすすめします。
エネがえるでは、次のような高精度なシミュレーションが可能です。
「エネがえる」でシミュレーションできること(一例) |
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1.料金プラン変更シミュレーション(※1) 居住エリアや季節・時間帯ごとの電力使用量を入力して、あなたのライフスタイルに最もお得な電力会社・電気料金プランを提案 |
2.太陽光パネル・蓄電池・V2H(※2)導入シミュレーション 屋根の面積・日照時間・時間帯ごとの電力使用量といった情報を入力し、各設備の導入で電気料金がいくら安くなるかはもちろん、家の中で電気がどのように循環させられるかをシミュレーションできる |
※1:市場連動型プランは現在シミュレーション対象外
※2:電気自動車と家をつなぐ充放電設備
電力会社から電気を「買う」ライフスタイルを続ける以上、電力会社の定めた料金や市場価格が高騰するリスクは避けられません。
電力を完全に自給自足するのは難しいですが、太陽光パネルや蓄電池の導入によって電気を「買う」生活から「作る」生活に少しずつシフトすることはできます。
太陽光パネルや蓄電池の導入にご興味のある方は、ぜひお近くのメーカーや販売店で「エネがえる」を使った太陽光パネルのシミュレーションをお試しください。
また、太陽光パネルの販売会社の方は、お客様への提案ツールとして「エネがえる」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
最後に、本記事の重要ポイントをおさらいします。
▼市場連動型プランとは
市場の価格変動によって単価が決まるプランのこと →従来の電気料金プランでは単価が固定であるのに対し、市場連動型プランでは需要と供給のバランスに応じて30分ごとに単価が変わる |
▼市場連動型プランを契約するメリット・デメリット
【メリット】 【デメリット】 →2023年時点では従来の料金プランよりも市場連動型プランの方が電力量料金が安くなりやすい傾向にあるが、過去に市場価格が急激に高騰した事例もある |
▼市場連動型プランが向いているかを判断する基準
・【ライフスタイル】市場価格が安い時間帯を中心に電気を使用するか →最終的な決め手は「手間やリスクを取ってでも電気代を安く抑えたいか」 →将来、蓄電・節電の技術が進歩して価格変動リスクを抑えるサービスが出てくるまで様子見をするのもおすすめ |
▼市場連動型プランを契約する電力会社を選ぶポイント
・エリア・時間ごとの電気料金が簡単にチェックできるか →ポイントを全て満たしていれば、信用できる電力会社である可能性が高いと言える |
▼市場連動型の電気代を抑えるコツ
・電気の使用は安い時間帯に増やす・高い時間帯は控える |
本記事の内容が、あなたが市場連動型プランについての理解を深めるきっかけとなれば幸いです。
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