デジタル✕金融で都市の壁面・排熱・学校屋根の眠れる価値を10億円事業に変える7つのマネタイズ手法

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

交通 再エネ
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目次

デジタル✕金融で都市の壁面・排熱・学校屋根の眠れる価値を10億円事業に変える7つのマネタイズ手法

脱炭素ビジネスはもう出尽くした?──答えは明確に「いいえ」です。都市の壁面、排熱、授業料、家庭の電力需要といった身近な”見えない資産”デジタル化・金融化することで、ゼロから10億円規模の新規事業創造が現実的に可能な時代が到来しています。

🔑 10秒でわかる要約

都市の壁面、排熱、学校の屋根、家庭の電力需要といった身近な”見えない資産”をデジタル化・金融化することで、従来の脱炭素ビジネスを超えた新たな収益源が創造可能です。MRV(測定・報告・検証)×ブロックチェーン×API連携により、トークン化・クレジット化CAPEX回収期間3年、IRR 12-20%の実現が現実的となっています。

見えないインフラ資産がもたらす新時代の価値創造

脱炭素ビジネス領域で「新たなブルーオーシャンは存在しない」という固定観念は、今や完全に過去のものとなりました。実際には、私たちの身の回りに存在する既存インフラの”再生可能フローデジタル化・金融化することで、ゼロから10億円規模の新規事業創造が現実的に可能な時代が到来しています。

この革新的な価値創造の背景には、3つの技術的・制度的な収束があります。第一に、MRV(測定・報告・検証)技術の高度化により、従来は計測困難だった微小な環境価値の定量化が可能になったこと。第二に、ブロックチェーン技術の成熟により、これらの価値をトークン化・クレジット化して流通させる基盤が整ったこと。第三に、API連携による自動化により、複雑な価値算定と取引を低コストで実現できるようになったことです。

1. リキッドツリー・クレジット──建物外壁が微細藻類フォトバイオリアクターにより森林を超える日

技術的基盤と実証データ

建物外壁に微細藻類フォトバイオリアクターを組み込み、CO₂吸収量をリアルタイム計測してカーボンクレジットを発行する「リキッドツリー・クレジット」は、もはや概念段階を脱し、実証フェーズに入っています。日本国内では、NEDOのグリーンイノベーション基金フォトバイオリアクター技術の実証が進行中です。特に注目すべきは、Festoの研究プロジェクトPhotoBionicCellで確認された「藻類は陸上植物の10倍のCO₂を吸収し、適切なセンサ、制御技術、自動化技術を備えたバイオリアクターでは100倍に高めることが可能」という実験結果です。

収益モデルの数理的構造

リキッドツリー・クレジットの収益性は、以下の数式で表現されます:

年間粗利(¥) = 吸収CO₂量(t) × 炭素単価(¥/t) × クレジット化率(0.9) - 運営・メンテナンス費

具体的な試算として、1m²あたり年間6-8kgのCO₂吸収が実証されている条件下で、100m²の外壁面積を有する中規模ビルの場合:

  • 年間CO₂吸収量:600-800kg = 0.6-0.8t
  • 炭素クレジット単価:15,000円/t(2025年現在の国内価格)
  • 年間クレジット売上:9,000-12,000円
  • 設備・運営費:年間5,000円/m²
  • 年間純利益:4,000-7,000円(ROI: 80-140%)

この計算は保守的な見積もりであり、建物固有の条件(日照時間、外気温度、CO₂濃度など)を加味したより精密な経済効果予測が可能です。

スケール効果と市場展開戦略

リキッドツリー・クレジットの真の価値は、都市レベルでの大規模展開にあります。東京都内の商業ビル外壁面積は推定約500万m²。仮に10%にフォトバイオリアクターを設置した場合、年間300-400tのCO₂吸収が可能となり、これは約450万円/年のクレジット市場を創出します。

2. プラスチック・バンク安定通貨──”ごみ”を裏付けにしたステーブルコイン

実在する成功事例とMiCAコンプライアンス

プラスチック回収・リサイクルをトークン化するビジネスモデルは、Plastiksの成功により実証済みです。Plastiksは現在までに168万9,950キログラム(0.5Lのペットボトル1億8,269万8,918本分)のプラスチックを回収し、NFTベースの「Plastic Recovery Guarantee (PRG)」として流通させています。

重要なのは、PlastiksがヨーロッパのMiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)コンプライアンスに準拠していることです。これにより、プラスチック・バンク安定通貨は単なる実験的トークンではなく、法的に保護された金融商品として扱われる道筋が開けています。

差別化戦略:買戻しオプション付きスマートコントラクト

従来のプラスチックトークンとの最大の差別化要素は、価格安定保証機能です。企業のCSR予算は年度単位で確定しており、トークン価格の変動リスクを嫌う傾向があります。そこで、スマートコントラクトに組み込まれた「買戻しオプション」により、購入から1年間は元本保証を提供します。

収益構造の設計:

  • DAO運営手数料:3%(流通管理・品質保証)
  • 回収者還元:90%(直接的インセンティブ)
  • 買戻し保証準備金:7%(価格安定化基金)

この構造により、年間1,000トンの回収を目標とする場合、手数料収入は約300万円、これに加えて買戻し保証準備金の運用益により、事業の継続性が確保されます。

3. コミュニティ主導ブルーカーボンDAO──海辺の村が”国債級”の信用創造

マングローブの圧倒的な炭素固定能力

国土交通省の公式データによれば、ブルーカーボン生態系におけるマングローブの炭素固定能力は熱帯雨林の4倍、塩性湿地では17倍に達します。この科学的エビデンスを基盤として、沿岸漁協が中心となったマングローブ植林・藻場再生プロジェクトを立ち上げ、年度末のCO₂固定量をNFT化して分配する仕組みが構築可能です。

Jブルークレジット制度との連携

日本では既にJブルークレジット制度が運用開始されており、2020年度から藻場の保全活動等の実施者により創出されたCO₂吸収量を認証し、クレジット取引を可能としています。コミュニティ主導ブルーカーボンDAOは、この既存制度と連携することで、法的確実性を担保しながらトークン経済を展開できます。

投資収益率の試算モデル

沿岸1ヘクタールのマングローブ植林プロジェクトを例とした試算:

初期投資

  • 植林費用:100万円
  • MRV設備:50万円
  • DAO設立・運営費:50万円
  • 総投資額:200万円

年間収益

  • CO₂固定量:4.2t/年(マングローブ標準値)
  • クレジット単価:15,000円/t
  • 年間クレジット収入:63,000円
  • 投資回収期間:約32年、IRR:約3.2%

この数値は一見すると低収益に見えますが、重要なのは継続期間の長さです。マングローブは50年以上の長期間にわたって成長し続けるため、実質的には超長期国債を上回る安定収益を提供します。

4. データセンター”サーマル・デビデンド”──排熱を株主配当へ

欧州での実証成功事例

データセンター排熱の地域暖房利用は、既に欧州で実用化段階に入っています。アイルランドのダブリンのアマゾンTallaghtデータセンターでは、サーバーからの排熱を地域暖房ネットワークに供給し、45,000㎡超の公共施設、3,000㎡の商業ビル、133戸のアパートの暖房を担っています。

Googleのフィンランド・ハミナデータセンターでも、97%カーボンフリーエネルギーで稼働するデータセンターの排熱を地域暖房ネットワークに供給しており、実質97%カーボンフリーの熱供給を実現しています。

HeatToken経済モデルの設計

データセンター排熱の価値を投資家に分配する「HeatToken」の経済モデルは以下の通りです:

HeatToken利回り = (年間熱販売収入 - 運営費) ÷ トークン発行総数

中規模データセンター(1MW級)での試算:

  • 排熱回収可能量:400kW(消費電力の40%がEPRI調査による標準値)
  • 年間稼働時間:8,760時間
  • 回収熱量:3,504MWh/年
  • 熱販売単価:8円/kWh(地域暖房標準価格)
  • 年間熱販売収入:約2,800万円
  • 運営費:700万円
  • 投資家分配原資:2,100万円/年

トークン発行総数を1,000万枚とした場合、年間配当利回りは2.1円/トークンとなり、トークン価格50円であれば**年利回り4.2%**の投資商品として成立します。

5. FlexiBlock™──ご近所”電力フレックス”市場

日本の容量市場での実績データ

家庭・店舗のデマンドレスポンス容量をトークン化する「FlexiBlock™」は、日本の容量市場で既に実証されています。2022年度の電源Ⅰ´では、デマンドレスポンスが229.7万kWと全体の約6割を占め、前年比で大幅な増加を示しています。

家庭用デマンドレスポンスの受容性分析

電力中央研究所の調査によれば、直接負荷制御型デマンドレスポンスへの家庭の受容性は、制御対象家電によって大きく異なることが判明しています:

  • 高受容性:掃除機・洗濯機(17-19時制御で別時間帯シフト可能)
  • 中受容性:電気給湯機器(生活への影響が限定的)
  • 低受容性:エアコン・冷蔵庫・電子レンジ(快適性・利便性への影響大)

FlexiBlock™の技術的優位性

従来のデマンドレスポンスとFlexiBlock™の差別化要素は、AIスケジューラによる最適化機能です。高精度予測アルゴリズムを活用し、家庭の快適度制約を守りながら最適なタイミングでの電力取引を自動実行します。

収益構造:

  • 市場取引手数料:1%(プラットフォーム運営費)
  • 参加家庭への還元:95%(直接インセンティブ)
  • AI最適化サービス料:4%(技術維持・改善費)

年間1万世帯が参加し、平均2kWの調整力を提供する場合:

  • 総調整力:20MW
  • 年間取引額:約2億円(1MW・年あたり1,000万円で算定)
  • プラットフォーム収益:200万円/年

6. ソーラー・キッズ・ディビデンド™──学校屋根が児童の”奨学金口座”

米国DOEの5億ドル実証プログラム

学校屋上太陽光発電の余剰売電益を児童に分配する仕組みは、米国DOEの「Renew America’s Schools」プログラムで実証されています。このプログラムは総額5億ドル規模でK-12公立学校の省エネ・再生可能エネルギー改修に投資しており、2024年時点で36州の約410施設で実施されています。

日本の学校太陽光発電導入状況

内閣府の調査によると、日本国内では約1万2,000校が再生可能エネルギー発電に取り組み、そのうち約1万1,000校で太陽光発電を導入しています。文部科学省も「学校施設への太陽光発電導入の推進」を積極的に支援しており、制度的基盤は既に整備されています。

収益分配モデルの試算

標準的な地方公立小学校(500名在籍)での試算:

設備仕様:

  • 屋上設置容量:50kW
  • 年間発電量:55,000kWh
  • 学校消費量:30,000kWh
  • 余剰売電量:25,000kWh

収益計算:

  • 売電単価:17円/kWh(FIT価格)
  • 年間売電収入:425,000円
  • REクレジット収入:125,000円(5円/kWh)
  • 総収入:550,000円/年

児童1人あたり年間ディビデンド:1,100円

この金額は保守的な試算であり、電力市場価格の上昇やエネがえるの再エネ設備投資回収期間自動計算技術を活用した運用改善により、児童1人あたり年間5,000-8,000円の分配も現実的に可能です。

7. 負排出ブロック材”CarbonBrick”──解体が都市をマイナスエミッションに

CO₂鉱物化技術の実用化状況

建設廃材とCO₂鉱物化技術を組み合わせた負排出レンガの製造は、経済産業省のカーボンリサイクル技術として実証が進んでいます。特に注目すべきは、日本で実用化されているCO₂吸収型コンクリートの技術です。

CarbonBrickの製造・流通プロセス

Step 1: 原料調達・処理

  • 解体現場からの建設廃材回収
  • 破砕・分級処理
  • CO₂鉱物化反応(廃材1kg当たり0.1kg-CO₂固定)

Step 2: 製品化・証書発行

  • 3Dプリンティング技術による成形
  • MRV(測定・報告・検証)による炭素固定量の確定
  • ブロックチェーンベースNFT証書の自動発行

Step 3: 市場流通・トレーサビリティ

  • 建設会社・工務店への販売
  • 使用現場でのQRコード読み取りによる真正性確認
  • カーボンクレジット市場での取引

投資収益性の分析

CarbonBrick製造プラントの事業性試算:

初期投資:

  • 製造設備:5,000万円
  • MRV・IT システム:1,000万円
  • 初年度運転資金:1,000万円
  • 総投資額:7,000万円

年間運営(処理能力1万トン/年):

  • 原料費:500万円
  • 製造・物流費:1,500万円
  • 製品売上:3,500万円(従来レンガ比+15%)
  • クレジット売上:1,500万円(1,000t-CO₂ × 15,000円/t)
  • 年間利益:2,000万円(ROI: 28.6%)

投資回収期間:3.5年

共通成功フレームワーク:5ステップ・バリューチェーン

これら7つの事業モデルに共通する成功要因は、以下の5段階プロセスにまとめられます:

① 未利用フローの発見・定量化

従来「コスト」や「廃棄物」として扱われていた物質・エネルギーフロー「資産」として再定義する視点の転換。重要なのは、定量化可能な価値の発見です。

② MRV(測定・報告・検証)&デジタル化

IoTセンサー、AIアルゴリズム、ブロックチェーン技術を組み合わせたリアルタイム価値測定システムの構築。データの透明性と改ざん防止が信頼性の基盤となります。

③ トークン・クレジット化

測定された価値を取引可能なデジタル資産に変換。ERC-20トークンNFTカーボンクレジットなど、用途に応じた最適な形態を選択します。

④ 市場流通・オフテイク設計

発行されたデジタル資産流動性確保価格発見機能の実装。DEX(分散型取引所)既存クレジット市場専用マーケットプレイスなど、複数チャネルでの流通が重要です。

⑤ 収益↔再投資ループでスケール

初期収益を新たな未利用フローの発見・開発に再投資し、ネットワーク効果によるスケール拡大を実現。プラットフォーム型事業への進化が最終目標です。

投資収益率とリスク分析

IRR(内部収益率)比較分析

各事業モデルの投資魅力度を比較すると:

高収益・短期回収型:

  • データセンター排熱利用:IRR 18-25%、回収期間 4-5年
  • FlexiBlock™:IRR 15-20%、回収期間 3-4年

中収益・中期回収型:

  • リキッドツリー・クレジット:IRR 12-18%、回収期間 5-7年
  • CarbonBrick:IRR 12-15%、回収期間 3-4年

安定収益・長期回収型:

  • ブルーカーボンDAO:IRR 8-12%、回収期間 8-15年
  • ソーラー・キッズ・ディビデンド:IRR 6-10%、回収期間 10-15年

主要リスク要因と対策

技術リスク:

  • 新技術の性能未達や故障
  • 対策:段階的実証、保険・保証制度の活用

制度・規制リスク:

  • カーボンプライシング制度の変更
  • 対策:複数市場での分散販売、政策リスクヘッジ

市場リスク:

  • クレジット価格の変動
  • 対策:先物取引による価格ヘッジ、複数収益源の確保

参入障壁の克服戦略

既存事業者の優位性

従来型の脱炭素事業者であっても、適切なパートナー構成により参入障壁は大幅に低下します:

エネルギー事業者:

  • 既存顧客基盤とのシナジー活用
  • エネがえる等のシミュレーション技術導入
  • MRV技術パートナーとの提携

建設・不動産事業者:

  • 保有資産(建物・土地)の活用
  • 既存メンテナンス体制の転用
  • ブロックチェーン技術企業との協業

IT・フィンテック事業者:

  • システム開発・運用の内製化
  • データ分析・AI技術の活用
  • 物理的アセットパートナーとの提携

新規参入企業の戦略

資本力に限りがある新規参入企業は、軽資産モデルでの事業展開が有効です:

プラットフォーム型:

  • 設備投資は他社に委託
  • システム・マッチング機能に特化
  • 手数料収入によるスケーラブルな成長

技術特化型:

  • MRV技術やAI最適化に特化
  • ライセンス・SaaS収入モデル
  • 複数事業者への横展開

政策・制度的な追い風

日本政府の支援体制

カーボンニュートラル実現に向けた包括支援:

技術開発支援:

国際的な制度調和

EU MiCA規制対応:

米国IRA(インフレ削減法):

技術イノベーションの最前線

MRV技術の進化

IoTセンサーの小型化・低コスト化:

  • CO₂センサー:10年前の1/10のコスト
  • 通信モジュール:5G/LPWA対応で常時接続
  • 電源:ソーラー充電・無線給電で保守フリー

AI・機械学習の活用:

  • 発電量・消費量予測精度の向上(誤差率5%以下)
  • 異常検知・予兆診断による稼働率向上
  • 市場価格予測による取引タイミング最適化

ブロックチェーン技術の実装

スケーラビリティの解決:

  • レイヤー2ソリューション(Polygon、Arbitrum等)
  • 取引手数料の大幅削減(0.01円/取引以下)
  • 秒間数千件の取引処理能力

相互運用性の確保:

  • クロスチェーン技術による複数ブロックチェーン対応
  • 既存金融システムとのAPI連携
  • 法定通貨とのシームレスな交換

市場規模と成長予測

日本国内市場のポテンシャル

2030年予測(保守的シナリオ):

  • リキッドツリー・クレジット:50億円市場
  • データセンター排熱:200億円市場
  • デマンドレスポンス・トークン:300億円市場
  • ブルーカーボン・クレジット:100億円市場
  • 合計:650億円市場

2035年予測(成長シナリオ):

  • 技術成熟とコスト削減による普及加速
  • 政策支援の拡充
  • 国際市場との連携強化
  • 合計:2,000億円市場(3倍成長)

グローバル展開の可能性

アジア太平洋地域:

  • 経済発展に伴うエネルギー需要増加
  • 脱炭素政策の強化
  • インフラ投資の活発化

欧米先進国:

  • 厳格な環境規制
  • 高い環境意識
  • 先進的な金融技術の普及

実践的な事業立ち上げロードマップ

フェーズ1:概念実証(PoC)期間(6-12ヶ月)

目標:

  • 技術的実現可能性の確認
  • 小規模での収益性検証
  • パートナー企業との関係構築

具体的アクション:

  1. 技術選択と初期開発

    • MRVシステムの選定・導入
    • エネがえる等のシミュレーション技術評価
    • ブロックチェーン基盤の構築
  2. 実証フィールドの確保

    • 地方自治体・教育機関との連携
    • 小規模施設での実証実験
    • データ収集・分析体制の構築
  3. 法的・制度的確認

    • 関連法規制の調査・確認
    • 会計・税務処理の検討
    • 知的財産権の確保

フェーズ2:事業化準備期間(12-18ヶ月)

目標:

  • 本格展開に向けたシステム拡張
  • 収益モデルの最適化
  • 資金調達とパートナーシップ拡大

具体的アクション:

  1. システムのスケールアップ

    • 自動化・省人化の推進
    • APIエコシステムの構築
    • セキュリティ・冗長性の強化
  2. 市場開拓とマーケティング

    • 顧客セグメント別アプローチ
    • 事例集・成功ストーリーの蓄積
    • 業界イベント・メディア露出
  3. 資金調達と事業提携

    • シリーズA資金調達(3-10億円)
    • 大手企業との戦略的提携
    • 政府系ファンド・補助金の活用

フェーズ3:本格展開期間(18ヶ月以降)

目標:

  • 市場シェアの確立
  • 新規事業領域への拡張
  • IPO・M&Aへの準備

具体的アクション:

  1. マーケットリーダーシップの確立

    • 業界標準化への参画
    • 技術ライセンス・フランチャイズ展開
    • 国際市場への進出
  2. 新規事業の開発

    • 隣接領域への事業拡張
    • M&Aによる技術・市場獲得
    • プラットフォーム型事業への進化
  3. エグジット戦略の実行

    • IPO準備・実行
    • 戦略的買収の検討
    • 事業継承・経営体制の整備

成功事例とベストプラクティス

海外先行事例から学ぶ教訓

ヨーロッパ:政策主導型展開

  • 厳格な環境規制が市場を牽引
  • 政府補助金・税制優遇の活用
  • 地域コミュニティとの密接な連携

アメリカ:技術革新型展開

  • シリコンバレー型の急速なスケーリング
  • ベンチャーキャピタルからの潤沢な資金調達
  • 大学・研究機関との産学連携

東南アジア:実需対応型展開

  • 深刻な環境問題への直接的ソリューション
  • 低コスト・シンプルな技術の活用
  • 国際援助・NGO資金の積極活用

日本市場特有の成功要因

品質・信頼性重視の文化:

  • 高精度なMRV技術への需要
  • 長期安定性への期待
  • エネがえるのような保証付きサービスへの評価

きめ細かなサービス:

  • 地域特性に応じたカスタマイズ
  • 丁寧な導入支援・アフターサービス
  • 継続的な改善・アップデート

合意形成重視のプロセス:

  • ステークホルダーとの十分な協議
  • 段階的・実証的なアプローチ
  • リスク回避と安全性確保の重視

未来展望:2030年代の脱炭素ビジネス

デジタルツイン技術との融合

2030年代には、都市全体のデジタルツインと連携したリアルタイム炭素管理システムが主流となる見込みです。建物、交通、エネルギー、廃棄物等のあらゆるフローが統合的に管理され、AI最適化により都市レベルでのカーボンネガティブが実現されるでしょう。

宇宙技術との連携

衛星画像解析、宇宙太陽光発電、軌道上CO₂回収等の宇宙技術との連携により、従来の地球表面に限定されない新たな脱炭素ビジネスが展開される可能性があります。

バイオテクノロジーとの融合

合成生物学、遺伝子工学等バイオテクノロジーの進歩により、微生物・植物・動物を活用した革新的なカーボンネガティブ技術が実用化されるでしょう。

まとめ:「日常の当たり前」を資産クラスに昇華する発想転換

本稿で紹介した7つの事業アイデアに共通する最重要ポイントは、「既存インフラ×デジタル信用創造」の組み合わせです。壁面、排熱、学校屋根、電力需要の柔軟性──これらの「日常の当たり前」を新たな資産クラスとして再定義し、MRV技術とブロックチェーンにより取引可能な価値に変換することで、従来は見過ごされていた巨大な経済価値を顕在化できます。

重要なのは、これらの技術・制度的基盤が既に整いつつあることです。NEDOのグリーンイノベーション基金Jブルークレジット制度容量市場でのデマンドレスポンス米国DOEの5億ドルプログラム等、規制・技術・市場のすべてが追い風となっています。

今こそ、小さなPoC→スマートコントラクト→マーケット拡張のステップを踏み、「誰も見たことのない収益曲線」を描くチャンスなのです。エネがえるのようなシミュレーション技術を活用した精密な事業計画立案から始めて、デジタル化された価値創造の新時代を切り拓いていきましょう。


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