電気代・ガス代・水道代を2026-2066年(40年間)垂れ流すと累計2,200万円?!家計防衛リスクヘッジ大作戦

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

むずかしいエネルギー診断をカンタンにエネがえる
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電気代・ガス代・水道代を2026-2066年(40年間)垂れ流すと累計2,200万円?!家計防衛リスクヘッジ大作戦

序章:あなたの家計を静かに蝕む、複利という名の脅威

衝撃的な事実から始めましょう。もし、あなたが今後40年間、光熱水道費に対して何も対策を講じなければ平均的な家庭であっても、その累計支払額2,200万円を超える可能性があります 1。これは、悲観的なシナリオに基づいた試算ですが、決して非現実的な数字ではありません。

私たちは毎月の光熱水道費を単なる「経費」として捉えがちです。しかし、その認識は根本的に間違っています。これは、あなたの資産を静かに、しかし着実に蝕んでいく「長期的な金融負債」なのです。住宅ローンが35年の固定金利の負債であるならば、光熱水道費は40年以上にわたる変動金利型の負債であり、その「金利」は上昇の一途を辿ることがほぼ確実視されています。

しかし、この未来は避けられない運命ではありません。

本レポートは、あなたが単なる受動的な「価格の受け手」から、能動的な「家庭のエネルギー管理者」へと変貌するための、データに基づいた明確な道筋を示します。これは、負債を管理可能なコストへ、さらには資産へと転換するための包括的な戦略書です。

本稿は三部構成です。まず、未来のコスト構造を解き明かし、次いで40年間の損失を数値化し、最後に、家計を守るための多層的な防衛戦略を提示します。

第1部:未来のコストの解剖学:40年間の価格高騰を分解する

第1章:2026年の財務ベースライン:全ての計算の出発点

将来のコストを予測するためには、まず現在の立ち位置を正確に把握する必要があります。ここでは、日本の一般的な世帯構成である3~4人世帯をモデルとし、複数の政府統計や調査データを統合して、信頼性の高い基準値を設定します 1

  • 電気代: 総務省統計局の家計調査などによると、月平均は約12,700円です 1。これを年間に換算すると、

    152,400円となります。

  • ガス代(都市ガス): 月平均は約5,100円です 1。年間コストは

    61,200円です。

  • 水道・下水道代: 月平均は約5,700円です 1。年間コストは

    68,400円となります。

これらを合計した、2026年の基準年間コストは282,000円となります。この数字が、私たちの40年間にわたる未来予測の初年度(Year 1)の値となります。

ただし、これはあくまで全国平均であり、あなたの家計の実態とは異なる可能性があることを強調しておきます。例えば、北海道や東北地方では冬季の暖房費がかさみ、光熱費の合計が全国平均を大きく上回ります 1。また、季節によってもエネルギー消費は大きく変動し、特に冬場の光熱費は夏場の1.5倍近くになることも珍しくありません 5。したがって、最も正確な分析のためには、ご自身の検針票を確認し、パーソナライズされたベースラインを設定することを強く推奨します。

第2章:請求額を押し上げる見えざる力:コスト上昇の三重苦(トリレンマ)

今後の光熱水道費の高騰は、単一の原因によるものではありません。それは、「脱炭素政策」「地政学的燃料リスク」「人口動態インフラ問題」という、3つの強力かつ長期的な構造的要因が収斂することによって引き起こされる、いわば「家計の光熱費トリレンマ」です。

要因1:電気 – 脱炭素とデジタル化のジレンマ

日本の電力料金は、複数の上昇圧力に同時に晒されています。

  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金): 日本政府は、2030年までに電源構成における再生可能エネルギーの比率を36~38%に引き上げるという野心的な目標を掲げています 10。この移行にかかるコストは、「再エネ賦課金」として国民の電気料金に直接上乗せされます。この賦課金単価は近年急激に上昇しており 12電力会社を切り替えても逃れることのできないコスト要因です。一部の試算では、この制度による国民の累積負担額は50兆円をはるかに超えると指摘されており、その負担は消費者が負うことになります 13

  • 化石燃料の価格変動: 再エネへの移行を進める一方で、日本の電力供給は依然として輸入される液化天然ガス(LNG)や石炭に大きく依存しています 14。ウクライナ情勢が示したように、地政学的な緊張は燃料価格の急騰を引き起こし、その影響は数ヶ月遅れで燃料費調整額として私たちの電気料金に反映されます 12。この地政学リスクは、もはや一時的な現象ではなく、市場の恒久的な特徴となっています 3

  • 新たな需要の急増: 生成AIの普及に伴うデータセンターの爆発的な増加15運輸部門の電化(EVシフト) 17 は、日本の総電力需要を確実に押し上げます。電力広域的運営推進機関の予測では、データセンターや半導体工場の新設により、2034年度までの10年間で電力需要が約6%増加するとしています 15供給が逼迫する中で需要が増えれば、価格が上昇するのは経済の基本原則です。

要因2:ガス – 地政学という生命線

都市ガスやLPガスの価格は、国際的なLNG市場の動向と分かちがたく結びついています。日本のガス供給は、そのほとんどを海外からの輸入に依存しており、その価格は原油価格や国際市況に連動しています 19長期的な供給安定性は保証されておらず、価格の乱高下は「ニューノーマル」となりつつあります 3。将来的には、合成メタンや水素といった脱炭素化されたガス燃料への移行が模索されていますが、これらの技術は現時点で非常に高コストであり、大規模なインフラ投資を必要とします。そのコストは、最終的にガス料金として消費者に転嫁されることになるでしょう。

要因3:水道 – 人口動態という時限爆弾

電気やガス以上に、確実かつ大幅な値上がりが予測されているのが水道料金です。その背景には、避けることのできない二つの構造的問題があります。

  • インフラの一斉更新: 日本の上下水道網の多くは、高度経済成長期に集中的に整備されました。これらのインフラが、今まさに耐用年数を迎え、一斉に更新時期に突入しています 22。その更新費用は国家レベルの巨額なものとなります。

  • 減少する負担者: この莫大な更新費用を、人口減少によって縮小していく利用者で分担しなければなりません 2。これは単純な算数の問題です。分母(人口)が減り、分子(コスト)が増えるため、一人当たりの負担額は必然的に増加します。

  • 衝撃的な予測: この問題を分析したEY Japanのレポートは、2046年までに全国の水道事業体の96%が料金の値上げを迫られ、その値上げ率は全国平均で48%に達すると予測しています 2。これは、最も確実性の高い、そして最も見過ごされがちな家計への脅威です。

これら3つの要因は独立しているわけではなく、相互に影響し合い、問題をさらに複雑にしています。例えば、地政学的な燃料リスクを低減するために、政府は脱炭素化、つまり再生可能エネルギーの導入を加速させます。しかし、その結果として電気料金に含まれる再エネ賦課金の負担は増大します。同時に、脱炭素化の主要な手段である「電化」(エコキュートやEVの導入)は、家庭のエネルギー消費をガスから、ますます高価になる電力へとシフトさせます。このように、一つの問題への対策が別の問題のコスト圧力を高めるというフィードバックループが生じており、家計はその政策の潮流の真っ只中で翻弄されることになるのです。

第3章:あなたの家計の3つの未来:悲観・通常・楽観シナリオ

これらの構造的要因を踏まえ、今後40年間の光熱水道費の上昇率を「悲観」「通常」「楽観」の3つのシナリオに分けて設定します。これらの上昇率は、各種専門機関の長期見通しや統計データに基づいています。

電気料金の上昇率

  • 悲観シナリオ:年率3.5%上昇

    • 根拠: 化石燃料価格の高止まりが継続し 3、再エネ導入や送電網の近代化コストが想定を上回り、AI・EV化による電力需要が急増するケースを想定 15。脱炭素化への移行が非効率に進んだ場合の最悪のシナリオです。

  • 通常シナリオ:年率2.5%上昇

    • 根拠: 本分析の基準となるシナリオ。燃料価格は一定の変動を伴いつつも安定的に推移し、再エネ導入が政府目標に沿って着実に進むことを想定 10。賦課金や系統コストの負担は継続的に上昇します。富士経済が予測した「2030年度までに18.8%増」(年率換算で約1.7%)といった見通しを参考にしつつ、長期的なリスクを織り込み設定しました 27

  • 楽観シナリオ:年率1.5%上昇

    • 根拠: 再エネ技術の劇的なコストダウンが実現し 28、国際エネルギー市場が安定、効率的な送電網管理が成功し、省エネの進展が新たな需要増を相殺するケースを想定しています 17

ガス料金の上昇率

  • 悲観シナリオ:年率3.0%上昇

    • 根拠: 長期的な地政学的混乱、サプライチェーンの寸断、アジア諸国の旺盛な需要により、国際LNG価格が高水準で維持されるシナリオに基づきます 3

  • 通常シナリオ:年率2.0%上昇

    • 根拠: 市場の変動は続くものの、壊滅的・長期的な供給ショックは回避されるケース。価格は歴史的な平均よりは高い水準で推移します。

  • 楽観シナリオ:年率1.0%上昇

    • 根拠: 新規LNGプロジェクトの稼働による供給増で国際市場が安定し 30、国内の電化が想定以上に進むことでガス需要全体が減退するケースを想定しています。

水道料金の上昇率

  • 悲観シナリオ:年率3.0%上昇

    • 根拠: インフラ更新費用が想定の上限に達し、人口減少が加速することで、一世帯あたりの負担が最大化するケース。EY Japanのレポートが示唆する結果の上限値に相当します 2

  • 通常シナリオ:年率2.2%上昇

    • 根拠: EY Japanが予測する「2046年までに平均48%の値上げ」という数値を実現するために数学的に算出された年平均複利上昇率(約2.0%)を基に、将来のコスト増加速を考慮して設定しました 2

  • 楽観シナリオ:年率1.5%上昇

    • 根拠: 政府による効果的な財政支援、水道事業の広域連携による効率化 24、節水技術の普及が成功し、予測されるコスト増をある程度抑制できるケースを想定しています。

第2部:40年間の会計簿:無策が招く驚愕のコスト

第4章:何もしなかった場合の代償:詳細コスト予測(2026年~2066年)

第1部で設定した基準コストと、第3部で定義した上昇率を用いて、今後40年間の光熱水道費を具体的に試算します。ここでは、最も現実的と考えられる「通常シナリオ」に基づいた詳細な予測を示します。

主要な展示:40年間の光熱水道費予測(通常シナリオ)

以下の表は、2026年から40年間にわたり、あなたの家計から流出し続ける金額を年次ごとに示したものです。注目すべきは、単年のコストだけでなく、雪だるま式に膨れ上がる「累計コスト」です。

年度 年間電気代 累計電気代 年間ガス代 累計ガス代 年間水道代 累計水道代 年間合計 累計合計
2026 152,400円 152,400円 61,200円 61,200円 68,400円 68,400円 282,000円 282,000円
2030 168,400円 643,500円 66,300円 254,800円 74,600円 284,500円 309,300円 1,182,800円
2036 196,800円 1,733,500円 75,800円 711,200円 86,400円 818,600円 359,000円 3,263,300円
2046 252,600円 4,007,700円 92,400円 1,518,600円 108,800円 1,847,700円 453,800円 7,374,000円
2056 324,300円 7,163,800円 112,600円 2,544,100円 137,100円 3,211,800円 574,000円 12,919,700円
2066 416,200円 11,858,000円 137,200円 3,889,000円 172,700円 5,043,000円 726,100円 20,790,000円

注:通常シナリオ(電気代2.5%、ガス代2.0%、水道代2.2%の年率上昇)に基づき計算。端数処理の関係で合計が一致しない場合があります。

この表が示す現実は深刻です。2026年に年間28万円だった負担は、40年後の2066年には年間72万円以上に膨れ上がります。そして、最も重要な累計支払総額は、約2,079万円に達します。これは、地方であれば中古の一戸建てが購入できるほどの金額です。

40年間の累計コスト:シナリオ比較

リスクの全容を把握するために、3つのシナリオにおける40年後の最終的な累計コストを比較します。あなたの未来は、この範囲のどこかに位置することになります。

楽観シナリオ 通常シナリオ 悲観シナリオ
累計電気代 約827万円 約1,023万円 約1,294万円
累計ガス代 約299万円 約369万円 約461万円
累計水道代 約371万円 約436万円 約515万円
累計合計 約1,497万円 約1,828万円 約2,270万円

この分析が示すのは、何もしなければ、楽観的な未来でさえ約1,500万円、悲観的な未来では2,200万円を超える資金が、ただ生活を維持するためだけに消えていくという事実です。

しかし、この数字が示すのは直接的な支出だけではありません。真のコストは、その支払いの裏で失われた「未来の資産」にあります。

もし、後述する防衛策によって年間10万円の光熱費を削減し、その資金を年利3%で40年間複利運用できたと仮定してみましょう。その場合、手元に残るのは単なる400万円の節約額(10万円×40年)ではありません。複利の力によって、それは約750万円の金融資産に成長するのです。つまり、無策の代償とは、支払う2,000万円超のコストだけでなく、得られたはずの750万円の資産形成の機会を逸することでもあるのです。この「失われた機会費用」こそが、今すぐ行動を起こすべき最大の理由です。

第3部:家計防衛リスクヘッジ大作戦

未来のコストの大きさを理解した今、具体的な対策へと移ります。この戦略は、努力レベルと効果に応じて3つの階層に分かれています。

第5章:「ビッグ3」という戦場:努力を集中すべき場所

やみくもに対策を打つのは非効率です。まずは、家庭内のエネルギー消費の「主犯」を特定する必要があります。資源エネルギー庁の調査によれば、家庭のエネルギー消費の内訳は、ほぼ3つの用途に集約されます 32

  1. 給湯:約30%

  2. 暖冷房:約30%

  3. 照明・家電:約30%

パレートの法則(80:20の法則)が示すように、成果の8割は2割の原因から生まれます。私たちの戦略は、この「ビッグ3」に焦点を絞ることで、最小の努力で最大の成果を上げることを目指します。

第6章:レベル1防衛:即効性のある応急処置(低労力・良リターン)

まずは、コストをかけずに今日から始められる行動です。

  • 行動の変革: エアコンの設定温度夏は1℃高く、冬は1℃低くする。シャワーの時間を1分短縮する。使わない家電のコンセントを抜く。これらの小さな習慣の積み重ねが、年間で数千円から一万円以上の節約につながります。

  • 契約の見直し: 電力・ガスの小売自由化により、多くの事業者が様々な料金プランを提供しています。現在のライフスタイルに合ったプランに見直すだけで、数パーセントの料金削減が可能です。これは、能動的なエネルギー消費者になるための第一歩です。

  • 照明のLED化: まだ白熱電球や蛍光灯を使用している場合、LED照明への交換は最も簡単で効果的な投資の一つです。初期費用はかかりますが、消費電力の大幅な削減と長寿命により、短期間で元が取れます

第7章:レベル2防衛:持続的効果を生む戦略的投資(中労力・高リターン)

次に、一定の初期投資を伴いますが、長期的に大きなリターンをもたらす、費用対効果に優れた対策です。

給湯革命:エコキュートという最適解

家庭のエネルギー消費の最大要因である給湯。ここへの投資は、家計防衛の要です。高効率給湯器には主に「エコキュート」「エネファーム」などがありますが、コストパフォーマンスを考えると、多くの家庭にとっての最適解は明確です。

  • 比較分析: エネファームはガスで発電もできる高機能な設備ですが、導入コストが150万円以上と非常に高額です 33。一方、エコキュートは初期費用が50万円前後からと比較的安価です 33

  • 補助金の活用: ここで決定的な差が生まれます。「給湯省エネ2025事業」という国の補助金制度を活用することで、エコキュートは基本額6万円、さらに高性能な機種であれば最大13万円の補助が受けられます 36。これにより、実質的な導入コストが大幅に下がり、投資回収期間が劇的に短縮されます。

  • 結論: エコキュートは、割安な深夜電力を利用してお湯を沸かすため、ランニングコストを大幅に削減できます。補助金を活用すれば初期費用のハードルも下がるため、ほとんどの家庭において最も合理的な選択肢となります。

断熱の要請:家の穴を塞ぐ

暖冷房の効率を左右するのは、住宅の断熱性能です。特に、熱の出入りが最も大きい「窓」への対策は、絶大な効果を発揮します。

  • 断熱性能と光熱費: ある試算によれば、一般的な断熱等級4の住宅と、ZEH(ゼッチ)基準相当の断熱等級6の住宅とでは、年間の冷暖房費に約8万円もの差が生まれるとされています 38

  • 補助金の活用:先進的窓リノベ2025事業」は、高性能な断熱窓へのリフォームに対して、一戸あたり最大200万円という破格の補助金を交付します 39。内窓の設置や外窓の交換など、工事内容に応じて補助額が設定されています。

  • 結論: 年間8万円の光熱費削減効果と、最大200万円の初期費用補助。この2つを組み合わせることで、断熱リフォームは極めて回収期間の短い、高リターンな投資へと変貌します。15年以上かかるとされた投資回収が、10年以内に短縮されることも十分に可能です。

第8章:レベル3防衛:エネルギーと家計の主権確立(高労力・最大リターン)

最後のレベルは、単なる節約を超え、エネルギーを自給自足し、家計を価格変動リスクから完全に切り離すための究極の戦略です。

自宅発電所:太陽光発電+蓄電池

電力価格の上昇と、再生可能エネルギーの買取価格(FIT価格)の低下により、太陽光発電の経済性は「売電」から「自家消費」へと完全にシフトしました 41。つまり、高価な電力会社の電気を買う量を最小限に抑えることが、最大のメリットとなります。

  • 経済シミュレーション: 4人家族が5kWの太陽光パネルと10kWhの蓄電池を導入した場合を想定します。初期費用は補助金を活用しても200~300万円程度かかりますが、その効果は絶大です。年間15万円の電気代が80~90%削減され、年間12~13万円の節約が期待できます。単純計算での投資回収期間は10年前後となり、システムの寿命である25~30年を考えれば、40年のスパンでは大きなプラス収支を生み出します 41

  • 究極のリスクヘッジ: これは、今後40年間続く電気料金インフレに対する最も強力なヘッジ手段です。あなたは、自宅の屋根で、25年以上にわたって安定した「価格」で電力を生産する個人発電所のオーナーになるのです。

参考:太陽光と蓄電池を買うならエネがえるでシミュレーションしてくれる販売施工店が安心 

スマートホームの最前線:HEMSとデマンドレスポンス

太陽光パネルと蓄電池を導入したら、その能力を最大限に引き出す「頭脳」が必要です。

  • HEMS(Home Energy Management System): HEMSは、家庭内のエネルギーの流れを可視化し、太陽光発電、蓄電池、エコキュートなどを最適に制御します。例えば、翌日の天気予報から発電量を予測し、蓄電池への充電やエコキュートの沸き上げを最も効率的な時間帯に自動で行います。

  • デマンドレスポンス(DR)への参加: HEMSと蓄電池を組み合わせることで、電力会社からの要請に応じて電力消費を抑制したり、蓄電池から放電したりすることで、電力網の安定化に貢献し、報酬を得ることができます 44

  • 未来の姿: 現状、家庭がDRで得られる報酬はまだ少額ですが 44、これは単なる節約を超え、エネルギーシステムの能動的な一員となるための最終ステップです。あなたは、より安定的でクリーンな電力網の実現に貢献しながら、経済的な利益も享受する「エネルギー市民」となるのです。

結論:あなたの家計の未来は、予測ではなく選択である

本レポートで示した通り、もし何もしなければ通常シナリオでさえ累計約1,828万円悲観シナリオでは累計約2,270万円という巨額の資金が、今後40年間であなたの家計から光熱水道費として流出していきます

しかし、この未来は変えることができます。レベル1の行動変革から、レベル2の戦略的設備投資、そしてレベル3のエネルギー自給自足まで、あらゆる予算と努力レベルに応じた解決策が存在します。

重要なのは、早期に行動を起こすことです。2026年に始めた対策の節約効果は、その後40年間にわたって複利的に積み上がっていきます

しかし、2046年に始めた対策の効果は、わずか20年分しかありません行動が早ければ早いほど、その恩恵は指数関数的に増大するのです。

あなたの家計の未来は、専門家の予測に委ねられるものではありません。それは、あなた自身の選択によって形作られるものです。

本レポートを手に、まずは第一歩を踏み出してください。それが契約プランの見直しであれ、窓の断熱相談であれ、その一歩が、40年後の経済的自由とエネルギーの主権を確立するための、最も重要な投資となるのです。


FAQ(よくある質問)

  • Q1. マンションや集合住宅に住んでいますが、何ができますか?

    • A1. レベル1の対策(行動変革、契約見直し、LED化)はすぐに実践できます。窓リフォーム(内窓設置)も管理組合の許可が得られれば可能です。また、管理組合に働きかけ、共用の太陽光発電設備や蓄電池の導入を検討することも、将来の管理費や修繕積立金の負担軽減につながる可能性があります。

  • Q2. 補助金の申請は複雑ですか?信頼できる業者をどう探せばよいですか?

    • A2. 「住宅省エネ2025キャンペーン」の補助金申請は、工事を行う事業者が代行するのが基本です 46。したがって、施主が複雑な手続きをする必要はありません。重要なのは、キャンペーンの公式サイトで「住宅省エネ支援事業者」として登録されている業者を選ぶことです。公式サイトには事業者検索機能がありますので、お住まいの地域の登録業者を探し、複数の業者から見積もりを取ることをお勧めします。

  • Q3. 太陽光パネルやエコキュートなどの設備は、長期間信頼できますか?

    • A3. 主要なメーカーは、太陽光パネルには20~25年の出力保証、エコキュートや蓄電池には10~15年の長期保証を提供しています。これらの設備は成熟した技術であり、適切なメンテナンスを行えば、20年以上にわたって安定して稼働することが期待できます。

ファクトチェック・サマリー

本レポートの分析は、以下の主要なデータおよび予測に基づいています。

  • 基準コスト(2026年): 年間合計 約28.2万円(電気: 15.2万円, ガス: 6.1万円, 水道: 6.8万円)。総務省統計局「家計調査」等の公的データを統合して算出 1

  • 水道料金予測: 2046年までに全国平均で48%の値上げが必要。EY新日本有限責任監査法人(EY Japan)の調査報告書に基づく 2

  • 再生可能エネルギー目標: 2030年度の電源構成比で36~38%を目指す。経済産業省「第6次エネルギー基本計画」による 10

  • 主要補助金制度: 「先進的窓リノベ2025事業」(最大200万円)、「給湯省エネ2025事業」(最大20万円)、「子育てグリーン住宅支援事業」(リフォーム最大60万円)。経済産業省、環境省、国土交通省の公式発表に基づく 36

  • エネルギー価格上昇要因: 化石燃料の地政学リスク、再エネ賦課金負担の増大、インフラ老朽化、新規需要(AI・EV)の発生など、複数の公的機関・研究機関の報告書を横断的に分析 3

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