JIS C 8907に基づく発電電力量推定と設置形態の定義・係数整理

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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JIS C 8907に基づく発電電力量推定と設置形態の定義・係数整理

要約

JIS C 8907:2005「太陽光発電システムの発電電力量推定方法」では、システムの年間発電電力量を以下の式で推定する。

Ei,d,t=PiαsIi,d,tKi,d,tE_{i,d,t} = \frac{P_i}{\alpha_s} \, I_{i,d,t} \, K_{i,d,t}

ここで

PiP_i

:標準太陽電池アレイ出力(kW)

αs=1.0\alpha_s=1.0

kW/m²:基準状態日射強度

Ii,d,tI_{i,d,t}

:時刻

tt

、日付

dd

における傾斜面日射量(W/m²)

Ki,d,t=K×Ki,d,ttempK_{i,d,t}=K’×K_{i,d,t}^{\rm temp}

×その他補正係数の積

4つの設置形態ごとに「温度補正係数」で用いる設置方式係数

f1,f2f_1,f_2

を以下のように定め、モジュール温度推定に反映する。

設置形態 JIS 用語 種別

f1f_1

f2f_2

架台設置形 裏面開放形 屋根と空隙を設けて間接設置 46 0.41
屋根置き形 屋根置き形 屋根勾配に準じて間接設置 50 0.38
建材一体形 屋根材一体形 屋根材として一体化 57 0.33
屋根一体形 屋根材形 モジュール材料が屋根材兼用 57 0.33
  • 建材一体形と屋根一体形はJIS上「その他」扱いで同じ係数を使う。

  • 温度補正係数は

    Ki,d,ttemp=1+αPmax(θi,d,t25) K^{\rm temp}_{i,d,t} = 1 + \alpha_{P\max} \bigl(\theta_{i,d,t} – 25\bigr)

    αPmax\alpha_{P\max}

    は-0.0041 (℃⁻¹:結晶系)または-0.0020 (結晶系以外)。

  • モジュール温度

    θi,d,t\theta_{i,d,t}

    θi,d,t=θd,tamb+f1f2Ii,d,t×102 \theta_{i,d,t} = \theta^{\rm amb}_{d,t} + \frac{f_1}{f_2}\, I_{i,d,t}\times10^{-2}

    ただし風速は実務的に1.5 m/sを用い、日射量と外気温度は拡張アメダスデータを適用する。

これにより、各設置形態の熱的環境を正確に反映した高精度推定が可能となる。

1. 設置形態の定義

  1. 架台設置形
    屋根と太陽電池モジュールの間に空隙を設け、架台を介して間接的に設置する方式。

  2. 屋根置き形
    屋根勾配に平行に空隙を設け、架台で屋根面に直接準じて設置する方式。

  3. 建材一体形
    屋根材や壁材として、太陽電池モジュールを接着剤・ボルト等で一体化し、分離可能な構造とした方式。

  4. 屋根一体形
    建材一体形のうち、モジュール自体の材料が屋根建材を兼ね、分離不可能な方式。

2. 発電量推定の基本式

年間システム発電電力量

EyE_{\rm y}

は、月別推定量を合算して得る。
月別推定量

EPmEP_m

の計算ステップ:

  1. PAS(標準太陽電池アレイ出力)算定

  2. 月積算傾斜面日射量

    HAmH_{Am}

    確定

  3. 基本設計係数

    KK’

    (日射量年変動・経時変化などの無次元効率)算出

  4. 温度補正係数

    KtempK^{\rm temp}

    算出

  5. モジュール方位・傾斜・日射量・損失補正係数を乗じて

    EPmEP_m

    を算定

Ep式(Ep=月別発電電力量)

EPm=K×PASαs×HAm×Kavgtemp EP_m = K’ \times \frac{P_{\rm AS}}{\alpha_s} \times H_{Am} \times K^{\rm temp}_{\rm avg}

3. 総合設計係数
KK’

 

構成

K=Kshad×Kage×Kload×Karr_circuit×Kinv K’ = K_{\rm shad} \times K_{\rm age} \times K_{\rm load} \times K_{\rm arr\_circuit} \times K_{\rm inv}

  • 日陰補正係数

    Kshad=1.0K_{\rm shad}=1.0

  • 経時変化補正係数

    Kage=0.96K_{\rm age}=0.96

    (結晶系)

  • アレイ負荷整合係数

    Kload=0.94K_{\rm load}=0.94

  • アレイ回路補正係数

    Karr_circuit=0.97K_{\rm arr\_circuit}=0.97

  • インバータ回路補正係数

    Kinv=ηinv,rated×0.97K_{\rm inv}= \eta_{\rm inv,rated}\times0.97

4. 温度補正係数の高解像度推定

  • モジュール温度 に日射量・外気温度・設置方式・風速を組み込み計算

  • 時刻別モジュール温度から温度補正係数を算出し、日射量加重平均して月別・年別に適用

  • 風速は「実務的かつ過大評価を避ける」観点で1.5 m/sを標準設定、発電量試算で約4%の増加を確認(A3地域)

5. 日本の再エネ普及加速に向けた本質的ポイント

  1. 設置形態ごとのモジュール熱環境を適切に評価し、過大・過小を防ぐ

  2. 時刻別高精度推定で自家消費シミュレーションが可能となり、蓄電・V2H運用の最適化に寄与

  3. JIS規格外技術(化合物系・有機系)への規格対応強化が急務

  4. 1時間分解能評価を標準化し、住宅BEMSや産業用自家消費設計へ展開

上記を踏まえ、「エネがえる」等のシミュレーションツールはJIS C 8907の各係数・手順を忠実に実装し、設置形態ごとの独自係数を活用することで、構造的かつ高解像度な発電量推定を実現しています。

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