目次
JIS C 8907に基づく発電電力量推定と設置形態の定義・係数整理
要約
JIS C 8907:2005「太陽光発電システムの発電電力量推定方法」では、システムの年間発電電力量を以下の式で推定する。
ここで
・
・
・
:時刻
、日付
・
×その他補正係数の積
4つの設置形態ごとに「温度補正係数」で用いる設置方式係数
を以下のように定め、モジュール温度推定に反映する。
設置形態 | JIS 用語 | 種別 |
|
|
---|---|---|---|---|
架台設置形 | 裏面開放形 | 屋根と空隙を設けて間接設置 | 46 | 0.41 |
屋根置き形 | 屋根置き形 | 屋根勾配に準じて間接設置 | 50 | 0.38 |
建材一体形 | 屋根材一体形 | 屋根材として一体化 | 57 | 0.33 |
屋根一体形 | 屋根材形 | モジュール材料が屋根材兼用 | 57 | 0.33 |
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建材一体形と屋根一体形はJIS上「その他」扱いで同じ係数を使う。
-
温度補正係数は
は-0.0041 (℃⁻¹:結晶系)または-0.0020 (結晶系以外)。
-
モジュール温度
は
ただし風速は実務的に1.5 m/sを用い、日射量と外気温度は拡張アメダスデータを適用する。
これにより、各設置形態の熱的環境を正確に反映した高精度推定が可能となる。
1. 設置形態の定義
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架台設置形
屋根と太陽電池モジュールの間に空隙を設け、架台を介して間接的に設置する方式。 -
屋根置き形
屋根勾配に平行に空隙を設け、架台で屋根面に直接準じて設置する方式。 -
建材一体形
屋根材や壁材として、太陽電池モジュールを接着剤・ボルト等で一体化し、分離可能な構造とした方式。 -
屋根一体形
建材一体形のうち、モジュール自体の材料が屋根建材を兼ね、分離不可能な方式。
2. 発電量推定の基本式
年間システム発電電力量
月別推定量
の計算ステップ:
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PAS(標準太陽電池アレイ出力)算定
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月積算傾斜面日射量
確定
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基本設計係数
(日射量年変動・経時変化などの無次元効率)算出
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温度補正係数
算出
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モジュール方位・傾斜・日射量・損失補正係数を乗じて
を算定
Ep式(Ep=月別発電電力量)
3. 総合設計係数
構成
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日陰補正係数
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経時変化補正係数
(結晶系)
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アレイ負荷整合係数
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アレイ回路補正係数
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インバータ回路補正係数
4. 温度補正係数の高解像度推定
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モジュール温度 に日射量・外気温度・設置方式・風速を組み込み計算
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時刻別モジュール温度から温度補正係数を算出し、日射量加重平均して月別・年別に適用
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風速は「実務的かつ過大評価を避ける」観点で1.5 m/sを標準設定、発電量試算で約4%の増加を確認(A3地域)
5. 日本の再エネ普及加速に向けた本質的ポイント
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設置形態ごとのモジュール熱環境を適切に評価し、過大・過小を防ぐ
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時刻別高精度推定で自家消費シミュレーションが可能となり、蓄電・V2H運用の最適化に寄与
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JIS規格外技術(化合物系・有機系)への規格対応強化が急務
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1時間分解能評価を標準化し、住宅BEMSや産業用自家消費設計へ展開
上記を踏まえ、「エネがえる」等のシミュレーションツールはJIS C 8907の各係数・手順を忠実に実装し、設置形態ごとの独自係数を活用することで、構造的かつ高解像度な発電量推定を実現しています。
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