目次
- 1 【2026保存版】GX/エネ基計/温対計画/政府実行計画 網羅的リサーチレポート
- 2 序論:2025年の政策転換と2026年「GX実行元年」に向けた全貌
- 3 第1章 第7次エネルギー基本計画:2040年を見据えたエネルギー安全保障の再定義
- 4 第2章 GX2040ビジョン:産業立地と投資戦略の一体化
- 5 第3章 GX-ETS(排出量取引制度)第2フェーズ:2026年義務化の詳細
- 6 第4章 地球温暖化対策計画と新たなNDC(削減目標)
- 7 第5章 【2026保存版】主要数値・指標・諸元・係数・パラメータ網羅的データベース
- 8 第6章 一次情報リンク集+読み方の極意
- 9 第7章 結論と戦略的インサイト:企業はいかに対応すべきか
【2026保存版】GX/エネ基計/温対計画/政府実行計画 網羅的リサーチレポート
序論:2025年の政策転換と2026年「GX実行元年」に向けた全貌
2025年12月現在、日本のエネルギー・気候変動政策は、かつてない規模の構造転換の渦中にある。本年は、国のエネルギー政策の根幹をなす「第7次エネルギー基本計画」、産業構造の転換を描く「GX2040ビジョン」、そして国際公約である「地球温暖化対策計画」の改定という、いわゆる「環境・エネルギー3文書」が2月に閣議決定された歴史的な年となった
本レポートは、2025年12月12日時点における最新の政策動向、確定した数値目標、および2026年度以降の実務に不可欠なパラメータを網羅的に整理したものである。
特に、膨大な政府資料(一次情報)の中から、企業の実務担当者や経営企画部門、専門メディアのリサーチャーが直ちに参照すべき「真に重要な情報」を抽出し、それらが意味するコンテキスト(文脈)とインサイト(示唆)を詳細に解説する。
レポートの構成は、まず第7次エネルギー基本計画とGX2040ビジョンの詳細な読み解きから始まり、次いで2026年から本格稼働するGX-ETSの制度設計、そして実務に直結する排出係数や予算配分などのデータベースへと展開する。読者は本稿を通じ、複雑に絡み合う政策の全体像を把握するとともに、自社の戦略策定に必要な具体的根拠を得ることができるだろう。
第1章 第7次エネルギー基本計画:2040年を見据えたエネルギー安全保障の再定義
2025年2月18日に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」は、従来の3年ごとの改定サイクルにおける単なるアップデートではない。ロシアによるウクライナ侵略以降の地政学的リスクの高まり、生成AIの普及による電力需要の爆発的増加、そしてG7諸国との協調という複合的な圧力を受け、日本のエネルギー政策の「背骨」を組み替える内容となっている
1.1 「S+3E」の深化と「強靭性」の追加
日本のエネルギー政策の大原則である「S+3E(Safety + Energy Security, Economic Efficiency, Environment)」は、今回も維持されたが、その内実は大きく変容した。
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安全性(Safety): 東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓と反省が大前提であることは変わらないが、今回は「安全神話への陥落」を戒めつつも、安全性が確認された原子力発電所を「最大限活用する」という表現に踏み込んだ点が最大の特徴である
。1 -
安定供給(Energy Security): 従来の「資源確保」に加え、「強靭性(Resilience)」の概念が強く打ち出された。これは、有事におけるサプライチェーンの途絶リスクや、サイバー攻撃に対するインフラ防衛を含意しており、国産エネルギー(再エネ・原子力)の価値を安全保障の観点から再評価するロジックとなっている
。7 -
経済効率性(Economic Efficiency): 脱炭素化に伴う国民負担の抑制が強調されているが、同時に「GXへの投資」を将来の成長源泉と捉える視点が加わった。「コスト」から「投資」への意味づけの変化である
。8 -
環境適合(Environment): 2050年カーボンニュートラルに加え、2040年時点での温室効果ガス大幅削減(73%削減目標)との整合性が求められるようになった
。2
1.2 2040年度エネルギー需給見通しの全貌
第7次計画の最大の焦点は、従来の2030年目標の先にある「2040年度の見通し」を初めて具体化した点にある。政府は2040年の総発電電力量が、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、2023年度実績(約1.0兆kWh)から1.1兆〜1.2兆kWhへと約1〜2割増加すると予測した
表1:2040年度 電源構成(エネルギーミックス)見通し詳細比較
| 電源種別 | 2023年度実績 (速報値) | 2030年度目標 (第6次計画) | 2040年度見通し (第7次計画) | 増減トレンド・備考 |
| 総発電電力量 | 9,854億 kWh | – | 1.1兆 〜 1.2兆 kWh |
AI/データセンター需要による増加を織り込み |
| 再生可能エネルギー | 22.9% | 36〜38% | 40% 〜 50%程度 |
主力電源化。上限50%は野心的な挑戦値 |
| 太陽光 | 9.8% | 14〜16% | 23% 〜 29%程度 |
ペロブスカイト太陽電池の社会実装が前提 |
| 風力 | 1.1% | 5% | 4% 〜 8%程度 | 浮体式洋上風力のコスト低減と導入拡大が鍵 |
| 水力 | 7.6% | 11% | 8% 〜 10%程度 | 既存ダムの運用高度化・嵩上げ |
| 地熱 | 0.3% | 1% | 1% 〜 2%程度 | 国立公園規制緩和による開発促進 |
| バイオマス | 4.1% | 5% | 5% 〜 6%程度 | 燃料調達の持続可能性厳格化 |
| 原子力 | 8.5% | 20〜22% | 20%程度 (最大2割) |
再稼働・運転延長・リプレースの総動員 |
| 火力 (LNG/石炭/石油) | 68.6% | 41% | 30% 〜 40%程度 |
脱炭素電源の調整力として残存。内訳非公開 |
| LNG | 32.9% | 20% | (内訳非公開) |
20%程度と推定されるが明記なし |
| 石炭 | 28.3% | 19% | (内訳非公開) |
「脱石炭」明記せず。NGO等は19%程度残存と試算 |
| 石油等 | 7.4% | 2% | (内訳非公開) | – |
| 水素・アンモニア | 0% | 1% | 1% 〜 数% | コスト課題により導入は限定的との見方 |
| エネルギー自給率 | 15.2% | 30%程度 | 30% 〜 40%程度 |
再エネ・原子力の拡大による向上 |
1.3 議論の深層:数値の裏側にある意図とリスク
この2040年見通しには、政府の苦渋の決断と戦略的意図、そして未解決のリスクが混在している。
1. 原子力「最大限活用」の真意とハードル
第6次計画にあった「可能な限り原発依存度を低減する」という文言の削除は、政策の劇的な転換を象徴している 6。2040年に電力需要が増加する中で比率20%を維持するためには、既存炉の再稼働(30基以上)と60年超運転だけでは不足し、廃炉決定済みサイトでの「次世代革新炉への建て替え(リプレース)」が物理的に不可欠となる 1。
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インサイト: 政府は、生成AIや半導体工場などの産業競争力維持に必要な「安価で安定したベースロード電源」として、再エネ(変動電源)のバックアップコストを考慮した結果、原子力への回帰を選択した。しかし、建設コストの高騰(海外事例では数兆円規模)や、最終処分場選定の停滞といった課題は解決しておらず、計画倒れになるリスク(未達リスク)を市場は警戒する必要がある。
2. 火力発電の「ブラックボックス化」
2040年時点でも火力が3〜4割残る見通しだが、その内訳(LNG対石炭)が明示されなかったことは、国際的な批判を避けるための「曖昧戦略」と解釈できる 6。
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インサイト: G7等で求められる「石炭火力フェードアウト」に対し、日本は「アンモニア混焼」や「CCUS(CO2回収・貯留)」を組み合わせることで石炭火力を延命させる道を残した。しかし、これらの脱炭素技術が2040年までに商用ベースで確立・普及するかは不透明であり、結果として「排出削減対策の講じられていない石炭火力」が残存する懸念がある。これは日本企業のサプライチェーン全体の排出係数(Scope 3)が高止まりする要因となり、国際競争力におけるアキレス腱となり得る。
3. 再エネ「4〜5割」の野心と現実
再エネ比率の上限50%は、COP28での「再エネ3倍化」目標を意識したものであるが、その達成には「ペロブスカイト太陽電池」や「浮体式洋上風力」といった、現時点ではコスト競争力を持たない革新技術の大量導入が前提となっている 1。
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インサイト: 既存の適地(屋根、山林)が限界を迎える中、技術革新に依存した目標設定となっている。これは裏を返せば、技術開発への投資が失敗すれば目標は画餅に帰すことを意味する。政府はGX経済移行債を活用してこれらの技術開発を支援するが、企業の予見可能性という点では依然として不確実性が高い。
第2章 GX2040ビジョン:産業立地と投資戦略の一体化
「GX2040ビジョン」は、エネルギー基本計画で示された電源構成を、いかにして具体的な「経済価値」と「産業競争力」に転換するかを描いた実行計画である。エネルギー政策と産業政策がかつてない密度で融合している点が特徴である
2.1 GX産業立地戦略:電源のある場所へ産業を動かす
これまでの「需要地(都市部)へ電気を運ぶ」という発想から、「電気のある場所(再エネ・原発立地地域)へ産業(データセンター等)を運ぶ」という逆転の発想への転換が示された
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北海道・九州への集積: 洋上風力の適地である北海道や、再エネ・原発が稼働する九州へ、電力多消費型のデータセンターや半導体工場を誘導する支援策が強化される。
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系統整備負担の軽減: 電源立地地域に工場を建設することで、高コストな長距離送電網の増強負担を回避し、系統混雑の影響を受けにくい事業環境を提供する狙いがある。
2.2 150兆円の官民投資とGX経済移行債
今後10年間で150兆円超の官民投資を引き出すための呼び水として、政府は20兆円規模の「GX経済移行債」を発行する。2025年度予算におけるその配分は、政府がどの技術分野に「賭けている」かを如実に示している
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予算配分の特徴 (2025年度):
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経済産業省: 全体の7割以上を掌握。産業競争力強化の色彩が濃い。
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重点分野: 化石燃料の脱炭素化(水素・アンモニア、CCS)が38%と最大。次いで省エネ(半導体、断熱住宅)が32%。
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再エネ: 予算比率は約4%と相対的に低い。これは、再エネ(特に太陽光)は既に商用段階にあり、FIT/FIP制度による自立普及を促すフェーズにあるとの判断、および新規技術(浮体式洋上風力等)への研究開発投資へシフトしているためである。
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第3章 GX-ETS(排出量取引制度)第2フェーズ:2026年義務化の詳細
2026年度から開始されるGX-ETS第2フェーズ(本格稼働・義務化)は、日本企業にとって最大の経営課題となる。2025年5月のGX推進法改正により、その骨格が確定した
3.1 制度対象と義務の範囲
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対象事業者: 直接排出量(Scope 1)が前年度までの3カ年平均で 10万t-CO2以上 の法人(単体ベース)。
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鉄鋼、化学、電力、セメント、製紙、自動車など約300〜400社が対象となる見込み。
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日本全体のGHG排出量の約60%をカバーする
。20
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義務内容: 毎年度、排出実績と等量の「排出枠」または「適格カーボンクレジット」を政府に償却(提出)する義務が生じる。未達の場合には、罰則や企業名公表等のペナルティが検討されている。
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グループ認定制度: 原則は法人単体だが、親会社が子会社を含めて一体的に管理する場合の認定制度が設けられ、グループ全体での柔軟な運用が可能となる
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3.2 排出枠の割当方式:グランドファザリングとベンチマーク
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第2フェーズ(2026〜2032年度): 発電部門を除き、当面は「無償割当」が基本となる。
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グランドファザリング方式: 過去の排出実績に基づき排出枠を割り当てる。多くの業種で採用。
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ベンチマーク方式: 業界トップランナーの効率(原単位)を基準に割り当てる。鉄鋼やセメントなど、製品が均質で効率比較が可能な業種で先行導入される
。20
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オークション(有償割当): 発電部門については2033年度から段階的に有償オークションが導入される予定だが、第2フェーズ期間中は事実上の猶予期間となる
。23
3.3 カーボンクレジット利用上限「10%」の衝撃
GX-ETSにおける最大の論点であった「カーボンクレジット(J-クレジット等のオフセット)」の利用について、使用上限を 「排出量の10%(一部5%案あり)」 に制限する方針が固まった
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インサイト: この「10%キャップ」は企業戦略を根本から変える。
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金での解決不可: 「排出量を減らせない分はクレジットを買えばいい」という安易なオフセット戦略は通用しなくなる。排出量の少なくとも90%は、自社の事業プロセスにおける実質的な削減(省エネ、燃料転換、再エネ電気の調達)で達成しなければならない。
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限界削減費用の意識: 自社削減コストがクレジット価格より高くても、10%を超える部分は自社で減らすしかなく、設備投資(CAPEX)の意思決定において、より高い炭素価格を想定する必要が出てくる。
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グリーンウォッシュ防止: 国際的な批判(SBTi等)に耐えうる制度設計とするため、安価なクレジットによる見せかけの削減を封じる意図がある。
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第4章 地球温暖化対策計画と新たなNDC(削減目標)
2025年2月改定の「地球温暖化対策計画」では、パリ協定に基づく新たな国別削減目標(NDC)が設定された。これにより、2050年ネットゼロに向けた通過点がより明確になった
4.1 新たな削減目標(KPI)
| 指標 | 基準年 (2013年度) | 2030年度目標 | 2035年度目標 (新NDC) | 2040年度目標 | 2050年度 |
| GHG削減率 | 基準 | ▲46% (挑戦50%) | ▲60% | ▲73% | Net Zero |
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解説: 2035年60%削減、2040年73%削減という数値は、2050年ゼロに向けた「直線的な経路(Linear Trajectory)」上に位置する。これは、削減努力を後回しにせず、現在から着実に加速させることを国際社会に約束したものである
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4.2 地方公共団体と政府の実行計画
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地方公共団体: 「区域施策編」の策定において、地域の再エネ導入目標やCO2削減目標の設定が、従来の努力義務から実質的な必須事項へと強化された。都道府県が小規模市町村の計画策定を支援する枠組みも整備され、脱炭素の現場が地方へと広がる
。30 -
政府実行計画: 政府自身が巨大な消費者として市場を牽引する。2030年度までに政府全体の排出量を50%削減する目標を掲げ、調達電力の再エネ比率を高めるほか、新築庁舎のZEB化、公用車の電動化を加速させる。これにより、政府入札に参加する企業に対し、脱炭素対応が事実上の参入条件となる
。31
第5章 【2026保存版】主要数値・指標・諸元・係数・パラメータ網羅的データベース
ここでは、2025年12月時点で判明している、実務およびレポート作成に不可欠な数値を一覧化する。これらの数値は、企業の環境報告書作成や投資判断の基礎データとなる。
5.1 2025年度報告用 電気事業者別排出係数(主要電力会社)
温対法に基づく報告において、2025年度(令和7年度)に使用する係数(令和6年度実績ベースの目安・速報値を含む)。
※正式な確定値は環境省・経産省の公表を待つ必要があるが、各社ESGデータおよびトレンドからの推計値を記載 32。
| 電力会社 | 調整後排出係数 (kg-CO2/kWh) | 基礎排出係数 (kg-CO2/kWh) | 傾向と要因 |
| 東京電力EP | 0.421 (目安) | 0.457 | 再エネ比率の微増により、0.45近辺から緩やかに改善傾向。 |
| 関西電力 | 0.419 (目安) | – | 原発(高浜・大飯・美浜)の高稼働率により、全国平均より低位安定。 |
| 全国平均 | 0.421 (速報値) | – | 電事連加盟社の平均。2030年目標(0.25)には依然乖離。 |
| 2030年目標値 | 0.250 | – | エネルギーミックス(再エネ36-38%、原発20%)達成時の理論値。 |
| 2040年目標値 | 0.173 (推計) | – | 政府調達基準等のベースとなる将来のクリーンなグリッド係数。 |
5.2 エネルギー・経済関連マクロ指標(2040年想定)
第7次エネルギー基本計画のシナリオ分析で用いられた前提条件および結果数値
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最終エネルギー消費量: 2.6億 〜 2.7億 kL(原油換算)
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一次エネルギー供給量: 4.2億 〜 4.4億 kL
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再エネ発電コスト(2040年想定):
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事業用太陽光: 7 〜 12 円/kWh (技術革新が進んだ場合) 〜 18円/kWh
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陸上風力: 11 〜 23 円/kWh
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洋上風力: 12 〜 26 円/kWh (固定式・浮体式含む)
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カーボンプライシング(GX-ETS)想定価格:
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明示的な価格目標はないが、成長志向型カーボンプライシング構想では、2028年度以降の化石燃料賦課金導入により、段階的に炭素価格が上昇する設計となっている。市場では、2030年に向けて 5,000円〜10,000円/t-CO2 程度への上昇を見込む声が多い。
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第6章 一次情報リンク集+読み方の極意
数千ページに及ぶ政府資料の中から、必要な情報に最短で到達するためのナビゲーションガイド。
1. 第7次エネルギー基本計画
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概要版・要約:
資源エネルギー庁1 -
読み方: まず「2040年度の電源構成」の円グラフを確認し、再エネと原子力の比率の「幅」を把握する。次に、各電源ごとの記述(特に原子力の「リプレース」の文言)を確認する。
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本文・閣議決定文書:
経済産業省 ニュースリリース2 -
読み方: 第2章「2040年に向けた政策対応」が核心。ここに具体的な施策(FIT制度の行方、系統整備計画)が書かれている。
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需給見通し(詳細データ):
資源エネルギー庁 「2040年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)」10 -
読み方: P.18以降の「シナリオ別エネルギー需給」の表が最も重要。LNG、石炭の内訳や、各部門(産業・運輸・家庭)ごとの省エネ見込み量が数値で示されている。
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2. GX2040ビジョン
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本文・PDF:
内閣官房GX実行会議/経済産業省3 -
読み方: 「GX産業立地」の章に注目。データセンターの地方分散に関する補助金や規制緩和の方向性が記述されている。「分野別投資戦略」の図表は、自社事業が支援対象に含まれるかを確認するために必須。
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3. GX-ETS(排出量取引制度)関連
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GXリーグ基本構想・ガイドライン:
内閣官房GX実行推進室21 -
読み方: 「適格カーボンクレジット」の定義と「利用上限(10%)」の記述を探す。また、「グループ認定」の手続き要件も実務上重要。
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排出量取引小委員会資料:
経済産業省 審議会資料4 -
読み方: 制度の詳細設計(オークション導入時期、価格下限・上限の設定)に関する技術的な議論が記録されている。
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第7章 結論と戦略的インサイト:企業はいかに対応すべきか
2025年の政策改定ラッシュを経て、日本は「脱炭素」を単なる環境目標から、国家の生存戦略および産業競争力の源泉へと昇華させた。第7次エネルギー基本計画とGX2040ビジョンが示す未来図は、再エネと原子力を両輪とし、水素やCCSといった技術で補完しながら、AI時代の電力需要を賄うという「総力戦」の構図である。
企業への戦略的提言
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「2040年」からのバックキャスティング:
2030年目標の達成のみならず、2040年に「再エネ50%・原発20%・火力30%」となるエネルギー環境下で、自社がいかに競争力を維持するかを構想すべきである。特に、火力が3割残ることは、系統電力のCO2排出係数がゼロにはならないことを意味するため、自社での再エネ電源開発(コーポレートPPA)や、オンサイトPPAの重要性が増す。
参考:オフサイトPPA見積もりシミュレーションは可能か?複数需要施設・発電施設や市場連動型料金プランに対応(PPA事業者:小売電気事業者→需要家向け提案)
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GX-ETSへの早期適応と「削減の自給率」向上:
2026年からの義務化、特に「クレジット10%上限」は、外部依存の脱炭素戦略を許さない。自社の「削減の自給率(自社努力で減らせる割合)」を高めるための設備投資(省エネ、電化)を、炭素価格(将来的に1万円/t程度)を織り込んだROIで評価し、早期に実行する必要がある。
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政策リスクのモニタリング:
原子力の再稼働・リプレースや、浮体式洋上風力のコストダウンには不確実性が高い。政府計画の「未達リスク」を常にシナリオに組み込み、再エネ調達手段の多様化(太陽光だけでなく風力やバイオマスも視野に)や、調達先の分散を図るリスク管理が求められる。
2026年は、準備期間の終わりであり、競争の始まりである。本レポートの情報を羅針盤として、各企業がGXの大波を乗り越えることを期待する。



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