太陽光発電の発電量は1kWあたり年間1000kWh|目安と理想の発電量プラン

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

目次

太陽光発電の発電量は1kWあたり年間1000kWh|目安と理想の発電量プラン

太陽光発電の発電量の目安は「1kWあたり年間1,000kWh」といわれています。

しかしながら、実際には、パネルの設置場所(エリア)や設置条件によって、発電量はかなり上下します。

この記事では、エリアによってどの程度発電量に差が表れるのか、設置条件(パネルの向きや傾斜角度)の影響など、発電量に関する情報を分かりやすく伝えていきます。

また、「実際、太陽光発電ではどのくらいの発電量を目指せばよいの?」という点も深堀していきます。

以下のような発電量の決め方ステップも用意しました。

記事の後半では、太陽光パネルを設置した場合の発電量や費用対効果の詳細なシミュレーションも用意しています。

ぜひ最後までお読みいただき、「太陽光発電では実際どのくらい発電できるのか」「システム容量を決めるために必要な発電量を知りたい」という点を深く理解し、その上であなたの理想の発電量プランを描いてみてください。

【前提】kWとkWhの違い

太陽光発電でよく使われる「kW(キロワット)」と「kWh(キロワットアワー)」という用語は、似ているけれども異なる単位です。

kWは電力の単位で、太陽光パネルなど設備の性能を表わす単位で、その設備で可能となる瞬間的な発電能力を指しています。

一方、kWhは1時間あたりの発電量を表す単位です。

実際の発電量は天候などの各種条件によって左右されます。たとえば、天候条件が晴天で発電能力に影響を与えない場合、10kWの性能を持つ太陽光パネルで発電を行うと、1時間の発電量は10kWhと表すことができます。

1. 太陽光発電の1kWあたりの発電量は【年間1,000kWh】が目安

太陽光発電の1kWあたりの発電量は、一般的に、年間1,000kWh程度といわれています。

これは、太陽光発電協会(JPEA)のよくある質問のページでも採用されている数字で、設置容量1kWあたりのシステム年間発電量を約1,000kWhとした計算例が掲載されています。

ただし、環境省が各地の日射量から算出した年間予想発電量を見ると、これよりも多い、年間1,100kWh~1,300kWh程度がボリュームゾーンになっています。

【環境省が公開している「県庁所在地別」の年間予想発電量(抜粋)】

観測地点(県庁所在地)

年間予想発電量(1kWあたりのkWh)

秋田

(予想発電量が最も少ない地点)

1,095kWh

東京

1,134kWh

札幌

1,150kWh

那覇

1,304kWh

甲府・高知・宮崎

(予想発電量が最も多い地点)

1,339kWh

そのため、太陽光発電の1kWあたり発電量は、年間で1,000kWhが手堅い数字、実際には地域によっては1,100kWh~1,300kWhというイメージで考えておくと良いでしょう。

太陽光発電による発電量を見積もってコストなどをシミュレーションする場合には、「年間1,000kWh」で計算を進めると手堅いシミュレーション結果を得られますし、地域ごとの発電量(1,095kWh~1,339kWh)の値を用いれば実測値に近い結果を得られるでしょう。

2. 太陽光発電の発電量は設置エリアと設置条件によって前後する

1章でも示した通り、太陽光発電で得られる発電量は年間1,000kWhが定説となっており、いろいろなサイトでこの値が用いられています。

しかしながら、実際に得られる発電量をシミュレーションする場合には、以下の2つの要素によって発電量が大きく変わることがあります。

太陽光の発電量に大きく影響する2つの要素

1. パネルを設置するエリア(北海道なのか沖縄なのか東京なのかなど)

2. パネルを設置する方角と傾斜角度(南向きか北向きか、15度か40度かなど)

それぞれ詳しく解説していきます。

2-1. 太陽光パネルの設置エリアにより発電量に違いが生まれる

1章で解説した通り、太陽光発電システムを設置する場所がどこかによって、年間の発電量は変わってきます。

以下は、環境省が公開している資料から抜粋した、都道府県別の年間予想発電量の表です。各地の年平均日射量から予想した発電量が記載されています。

出典:環境省|令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務報告書

このデータを見ると、最も年間予想発電量が多いのは、甲府・高知・宮崎で1kWあたり1,339kWh、最も低いのは秋田で1kWあたり1,095kWhとなっています(いずれも県庁所在地で計測)。

設置する場所によって日射量が異なるため、発電量にも大きな差が生まれます。

例えば、同じ設置容量4kWの太陽光パネルを導入した場合でも、甲府なら年間5,356kWhの発電量を見込めますが、秋田なら年間4,380kWhとなります。

その差は976kWhで、実に1kWの容量差に近い差が生まれることが分かります。

太陽光発電システムを設置した場合のシミュレーションを行う場合には、設置するエリアを加味して計算することが大切です。

2-2. 太陽光パネルの設置条件(向き・傾斜角度)により発電量に違いが生まれる

太陽光発電で得られる発電量は年間1,000kWhが基本となりますが、実は、太陽光パネルの設置条件(向き・傾斜角度)が違えば、発電量はかなり変わってきます

太陽光発電協会(JPEA)のよくある質問に書かれている年間1,000kWhという発電量は、ソーラーパネルを「方角:真南」「傾斜角度:30度」で設置した場合に試算された数字です。

つまり、ソーラーパネルの性能を最大限発揮できる条件下で試算されているのです。

方角が北向きだったり、傾斜角度が60度だったりした場合には、年間1,000kWhよりも発電量が少なくなります。

一般的に、太陽光パネルの向きは「南向き」、傾斜角度は「30度」がベストといわれています。(ただし、傾斜角度はエリアによって差異が発生します。)

以下の左側の画像を見ると分かる通り、設置する向きは「真南」がベストです。

 

出典:産総研|太陽光発電技術>実環境における発電量

右側の画像を見ると、設置する都市別のベストな傾斜角度が分かります。おおむね30度が最も日射量が多くなる角度ですが、沖縄では10度~20度の方が日射量を多く集められます。

ソーラーパネルの向きが北向きだったり、傾斜角度が浅すぎたり深すぎたりする場合には発電量が少なくなることを覚えておくと良いでしょう。

3. 太陽光発電1kWあたりの【月間】発電量は75~120kWh程度

太陽光発電で目指すべき発電量を決めるための準備として、ここまで説明した「年間1,000kWh」を「月間にするとどのくらいか」を確認していきます。

1kWあたりの年間発電量1,000kWhを12で割ると、月間発電量はだいたい83kWhと計算できます。

ただし実際には、月によって日照時間が異なるため、発電量にはバラツキが出ます

参考までに、以下は、太陽光シミュレーションツール「エネがえる」で4kWhの太陽光パネルを設置した場合のシミュレーション例(設置場所:東京)です。

 

グラフを見ていただくと分かると思いますが、全体の傾向として、春~夏にかけての方が発電量は多く、秋~冬は発電量が下がる傾向にあります。

これを加味すると、1kWhあたりの月間の発電量は75~120kWh程度と考えておくと良いでしょう。

なお、これを30日で割ることで1日あたりの発電量も出すことができます。

季節によって差がでますが、だいたい2.5kWh~4kWh程度が目安となります。

ここまでくれば、理想の発電量を決める準備は完了です。

4. 太陽光発電による「理想の発電量」についての考え方

ここからは、具体的に「太陽光発電を設置する場合に何キロワットの発電量があればよいの?」について解説していきます。

もちろん、予算や屋根に載せられるパネルの枚数など制約がありますが、ここでは「理想の発電量」について考えていきましょう。

理想の発電量の考え方

1. 売電より自家消費を優先するのが基本的な考え方

2. 基本的には電気使用量と同量程度の発電量を目指す

 

4-1. 売電より自家消費を優先するのが基本的な考え方

具体的には、実際に家庭で使う電気使用量を比較して、同等の発電量をまかなえるパネル容量を選ぶのがスタンダードな考え方です。

売電単価が低くなった現在では、売電するために発電するのではなく、「自分の家庭で使うこと」を目的に発電するという考え方がおすすめです。

なぜならば、現在、売電価格が下がっているため、電力を売って収入を得るよりも、自分の家庭で使って電気代を削減した方がメリットが大きいからです。

売電価格

(発電して買い取ってもらう)

電気料金

(電力会社から購入)

FIT期間中:16円/1kWh(※1)

卒FIT後:7円~11円程度/1kWh(※2)

35円/1kWhが目安(※3)

さらに今後上昇傾向

※1:2023年度に太陽光発電を導入してFIT制度を利用する場合の価格です。
※2:7円~11円程度というのは現在の市場買取価格なので、実際には、卒FIT後(10年後)になってみないと分かりません。
※3:経済産業省 資源エネルギー庁|2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?いくらになるの?を参考にした価格です。実際の電気料金は電力会社やプラン、電気使用量によって異なります。

発電量を増やしてたくさん売電しても旨味がないため、家庭で使い切れる電力のみ発電するのが最もオトクです。

4-2. 基本的には電気使用量と同量程度の発電量を目指す

もう少し具体的に説明していきましょう。基本的には、家庭ごとの電気使用量と同量程度の発電量を目指すのが一般的です。

例えば、電気使用量の月平均が500kWの家庭ならば、月500kW程度の発電量を見込める5kW~6kWの太陽光パネルを検討する、といった具合です。

ただし、「日中と夜間だとどちらが多く電気を使うのか」「蓄電池もセットで導入するのか」などケースによっても目指すべき発電量は変わってきます。

目指すべき発電量を詳しく知りたい場合には、「エネがえる」のような太陽光発電シミュレーションツールを使って、詳細にシミュレーションしてみることをおすすめします。

電気使用量と同等の発電量を太陽光発電システムで得たといっても、電力を全てまかなえるわけではないという点に注意が必要です。

なぜならば、太陽光で発電できるのは「晴れた日の日中だけ」だからです。雨の日や夜間、早朝には発電ができません。曇りの日は発電量が低くなります。

晴れた日の日中は発電しながら、その発電した電気を使うことができますが、夜間や悪天候時は発電ができないため、電力会社から電気を買うことになります。

なお、蓄電池があれば日中に使いきれなかった電気を貯めておくことができ、夜間や悪天候時に(または停電時にも)発電した電気を使えます。

詳しくは「太陽光発電の蓄電池は必要?メリット・費用・回収期間などから判断」の記事もぜひご覧ください。

 

5.【3ステップ】理想の発電量は電力消費量と比較して決めよう

ここからは、「じゃあ我が家ではどのくらいの発電量を目指せば良いの?」という部分について解説していきます。

目指すべき発電量が分かれば、その発電量を得るための太陽光パネルのワット数(システム容量)を決めることができます。

理想の発電量を決めるステップは以下です。

 

上記の考え方を念頭に置いたうえで、早速、STEP1から見ていきましょう。

 

6.【STEP1】パネル容量別の月間発電量を確認する

STEP1では、太陽光発電のシステム容量別に、月間発電量を確認するステップです。

3章で、太陽光発電1kWあたりの発電量は、月間75~120kWh程度、1日で2.5kWh~4kWh程度になることを解説しました。

ここからは、一般家庭でのニーズが大きい設置容量別に、どのぐらい月や1日に発電できるかを解説していきます。

一般的に、住宅用の太陽光発電システムで導入されることが多いサイズは、設置容量3kW~6kWです。

ここから1日または月間どのくらい発電できるかを計算すると、以下の表のようになります。

【設置容量別の1日・月間の発電量の目安】

設置容量

1日の発電量

月間の発電量

家族の人数の目安

3kW

7.5kWh~12kWh

225kWh~360kWh

1人~3人家族

4kW

10kWh~16kWh

300kWh~480kWh

2人~4人家族

5kW

12.5kWh~20kWh

375kWh~600kWh

3人~6人家族

6kW

15kWh~24kWh

450kWh~720kWh

5人以上

 

表には家族の人数の目安も記載しましたが、これはあくまで目安となります。

次の章から、自宅に太陽光発電システムを設置する場合に「どのくらいの発電量を目指せばよいのか」の考え方を示します。

 

7.【STEP2】家庭ごとの電気使用量を確認する

STEP2では、家庭ごとに「実際に現在どのくらいの電気を使っているか」を確認していきます。

7-1. 方法1:検針票を確認できる場合

実際にいまどのくらい電気を使用しているか確認する場合、電力会社の検針票を確認する方法が確実です。

例えば、東京電力エナジーパートナーを利用している方なら、「くらしTEPCO」というWebサービスにログインすると、Web検針票を見ることができます。

 

出典:くらしTEPCO

上記の例だと、月ごとにバラツキがありますが、300kWh~700kWhの電力量を使っていることが分かります。

 

7-2. 方法2:検針票を確認できない場合は統計データを参考に見積もる

検針票を確認できない場合には、総務省の世帯人数別の電気代を参考にする方法もあります。

ここでは、総務省統計局が行っている家計調査の2022年のデータから「世帯人数別の電気代」をピックアップして、そこから電気使用量を計算してみましょう。

【世帯人数別の月間電気使用量の目安】

世帯人数

月間平均電気代

想定される電気使用量(月)

1人暮らし

6,808円

153kWh/月

2人

11,307円

264kWh/月

3人

13,157円

309kWh/月

4人

13,948円

327kWh/月

5人

15,474円

362kWh/月

6人以上

17,869円

417kWh/月

※1人暮らしのデータの出典:e-stat|家計調査 / 家計収支編 単身世帯 詳細結果表(2022年)
※2人以上のデータの出典:e-Stat|家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表(2022年)

なお、上記はあくまで世帯人数ごとの家計調査の平均です。オール電化の住宅や、常に家族やペットが在宅しているご家庭、空調をいつも付けているご家庭などは、多めに見積もっておくと安心です。

※想定される月間電気使用量は、太陽光発電シミュレーションツール「エネがえる」を使って計算しました。

東京電力エナジーパートナーの従量電灯B(50A)という料金プランを想定して計算しているため、別の電力会社や料金プランを使っている場合には、電気使用量に差が生まれることがあります。

 

8.【STEP3】電気使用量をまかなえる容量を選ぶ

STEP1とSTEP2で材料が揃った状態にあるので、早速、家庭ごとの電気使用量をまかなえる容量を選んでいきましょう。

STEP1で紹介した設置容量別の発電量の目安と、家庭ごとの電気使用量を比較すると、導入すべき設置容量が見えてきます。

【設置容量別の1日・月間の発電量の目安】

設置容量

1日の発電量

月間の発電量

家族の人数の目安

3kW

7.5kWh~12kWh

225kWh~360kWh

1人~3人家族

4kW

10kWh~16kWh

300kWh~480kWh

2人~4人家族

5kW

12.5kWh~20kWh

375kWh~600kWh

3人~6人家族

6kW

15kWh~24kWh

450kWh~720kWh

5人以上

 

例えば、電気使用量が月平均300kWの家庭ならば、設置容量は3kWで良いかな?と考えることができます。

一方、電気使用量が月平均500kWなら、5kWの太陽光発電システムを検討すると良いでしょう。

上記のステップで目指すべき発電量を確認できますが、実際には「エネがえる」のようなシミュレーションツールを使用して、さらに具体的な発電量の試算をすることをおすすめします。

 

9. 太陽光発電の発電量をできるだけ高める(下げない)4つの方法

ここからは、太陽光発電の発電量をできるだけ高める方法(下げない方法)についても解説します。

9-1. 太陽光モジュールの方角・傾斜角度を調整する

太陽光発電の発電量をできるだけ高めるためには、太陽光モジュールを設置する方角・傾斜角度を調整することが大切です

「どちらの方角によって設置するか」「傾斜角度(屋根の勾配)は何度か」によって、太陽光発電の発電量には大きな差が出てきます。

1章で解説した「年間1,000kWh」という数字は、太陽光発電モジュールを「方角:真南」「傾斜角度:30度」に設置した条件のもと算出された数字です。

北向きに設置したり、角度を60度にしたりした場合には、「年間1,000kWh」より低い発電量しか得られません。

(1)方角は南向きがベスト

太陽は東から昇って南を経由して西へ沈んでいくため、できるだけ多く日射を集められる方角は「真南」となります。

そのため、発電量をできるだけ確保するには、太陽光発電モジュールを「真南」に向けて設置するのがベストです。

反対に、避けたいのは北向きです。北向きに設置した場合、最大でも、南向きと比べて60~70%程度の発電量しか

(2)その他の方角と傾斜角度の組み合わせは地域によって異なる

傾斜角度は、一般的には「30度」が最適です。

しかしながら、厳密にいえば、最も効率的に日射を集められる角度は、方角により異なり、さらに地域によっても異なります。

以下は、東京における斜面日射量と設置包囲・傾斜角の関係を表わしたグラフと、都市別の傾斜角と日射量の関係を示したグラフです。

 

出典:産総研|太陽光発電の発電量 > 実環境における発電量

例えば、真南に向けて設置する場合、設置場所が東京の場合には「傾斜角度:30度」が最も日射量を集められるため、発電量も多くなります。

しかし、設置場所が南に行けば行くほど最適な傾斜角度は30度よりも小さな値となり、沖縄(那覇)では「20度」がベストとなります。

また、真南以外に向けて設置する場合、方角によってベストな傾斜角度は変わります

例えば、設置場所が東京の場合、真東や真西・北寄りに向けて設置する場合には、ベストな傾斜角度は30度ではなく0度~20度です。

この、方角と傾斜角度のベストな組み合わせは、緯度によっても変わるため、設置場所ごとにシミュレーションが必要となります。

最も発電量が多くなる設置条件で太陽光発電モジュールを設置したいなら、太陽光発電の施工実績が豊富な詳しい工務店に依頼することをおすすめします。

9-2. 影ができない場所に設置する

太陽光発電の発電量を上げるためには、太陽光発電モジュールの上に影ができない場所を選ぶことも大切です。

方角や傾斜角度にこだわって効率的に発電できる設置場所を選んだとしても、周囲に高い樹木やビル、山林があって影を作ってしまうと、日射量が低下して発電量も下がってしまいます

小さな影でも発電量に影響を与えることがあるため、できるだけ電柱の影などの小さな影もかからないベストな場所を選ぶようにしましょう。

また、ソーラーパネル同士の影が重ならない配慮も必要です。

樹木や伸びた雑草など至近距離から覆われてできる日陰は、発電量に大きく影響します。日ごろから除草するなど対策しましょう。

 

9-3. 設置場所の気象に合わせたパネルを選ぶ

設置場所の気象に合わせたパネルを選ぶことも、発電量を上げる(下げない)ために重要な考え方です。

太陽光パネルはそれぞれ特徴を持っており、「塩害に強いパネル」「気温が高くてもモジュールが動作するパネル」など特定の環境に合ったものもあります。

例えば、海から近い沿岸地域に設置する場合には、塩害対策がされている太陽光パネルを選ぶのがおすすめです。

また、気温が高くなる地域に設置する場合には、モジュール動作温度範囲や公称動作セル温度(NOCT)を見て、高温に強い太陽光パネルを選びましょう。

 

9-4. 太陽光パネルの汚れを定期的に掃除する

太陽光パネルの表面が汚れていると、発電量が低下する原因となります。そのため、太陽光パネルを設置後、発電量の低下を感じたら洗浄することをおすすめします。

掃除の時期としては、春先に花粉や黄砂などの汚れが付きやすいため、梅雨明けの熱くなる前がおすすめです。

なお、洗浄中に太陽光パネルを傷つけてしまうことが無いよう、掃除は自分でおこなわず、専門の業者に依頼するのが良いでしょう。

 

10.【ケース別】発電量や投資回収年数のシミュレーション

ここからは、システム容量3kWと5kWの太陽光発電システムを設置した場合について、発電量や経済メリットについて見ていきましょう。

ここでは、太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションツール「エネがえる」を使って、詳細なシミュレーションをしていきます。

今回のシミュレーションで使った共通条件は以下です。

日射量観測地点:東京

現在の電気の契約情報:東京電力エナジーパートナー・従量電灯B(50A)

生活スタイル:朝型

FIT期間中の買取単価:16円/kWh(10年)

FIT終了後の買取単価:8.5円/kWh(15年)

パネル設置:4kW、南向き、傾斜角は4寸(23度)

電気料金上昇率:年率2%を想定

※太陽光発電を設置するエリア、現在の電気代や料金プラン、生活スタイル、パネルを設置する向きや角度によってシミュレーション結果が異なります。

 

10-1. 電気代が月平均300kWhの家庭のシミュレーション

電気代が月平均300kWhの家庭の場合、同程度の発電量を得るために、3kWの設置容量を選んでシミュレーションを行いました。

パネル出力3kW、方位角は南、傾斜角は23度、日射量観測地点は東京としてシミュレーションをした結果、年間予測発電量3,719 kWh(月平均310kWh)となりました。

また、太陽光発電システムを導入したことで削減できた金額も計算してみました。

 

2023年に設置した場合、FIT期間(売電価格を保証してくれる期間)10年間は1kWhあたり16円で電気を買い取ってもらえます。そのため、1カ月あたりの売電収入は3,005円、そして発電した電力を使うことで削減できる電気代が4,678円となります。

つまり、FIT期間中(10年間)は1カ月の実質削減額合計が7,683円、1年で92,196円、10年で92.2万円となります。

ちなみに、2022年時点の太陽光発電システム設置費用の相場は、1kWあたり26.7円です。

参考:経済産業省 調達価格等算定委員会|令和5年度以降の調達価格等に関する意見

ここから、3kWのシステムの設置費用の相場は801,000円なので、801,000円÷92,196円=8.6年で設置費用を回収できる計算となります。

 

10-2. 電気代が月平均500kWhの家庭のシミュレーション

電気代が月平均500kWhの家庭の場合、同程度の発電量を得るために、5kWの設置容量を選んでシミュレーションを行いました。

パネル出力5kW、方位角は南、傾斜角は23度、日射量観測地点は東京としてシミュレーションをした結果、年間予測発電量6,198kWh(月平均516.5kWh)となりました。

 

また、太陽光発電システムを導入したことで削減できた金額も計算してみました。

 

 

2023年に設置した場合、FIT期間(売電価格を保証してくれる期間)10年間は1kWhあたり16円で電気を買い取ってもらえます。そのため、1カ月あたりの売電収入は5,009円、そして発電した電力を使うことで削減できる電気代が8,379円となります。

つまり、FIT期間中(10年間)は1カ月の実質削減額合計が13,388円、1年で約16万円、10年で約160万円となります。

ちなみに、2022年時点の太陽光発電システム設置費用の相場は、1kWあたり26.7円です。

参考:経済産業省 調達価格等算定委員会|令和5年度以降の調達価格等に関する意見

ここから、3kWのシステムの設置費用の相場は133.5万円なので、801,000円÷16万円=8.3年で設置費用を回収できる計算となります。

11. 太陽光発電の発電量・費用対効果を見積もりたいなら「エネがえる」導入工務店に相談しよう

 

10章では、2つのケースについてのシミュレーション例を紹介しました。

しかしながら、これはあくまでシミュレーション例に過ぎず、それぞれのご家庭ごとにシミュレーション結果は変わってきます。

例えば、太陽光パネルを設置する場所が「東京なのか北海道なのか沖縄なのか」、屋根の上に設置する場合に「南向きに設置できるのか」によっても、発電量は大きく変わってきます。

太陽光発電の導入コストを抑えながら、予算内で最も経済メリットを得られるように設置したいなら、それぞれの家庭の状況に合わせたシミュレーションが欠かせません

発電量や費用対効果を見ながら、太陽光発電の最適なシステムを検討したい方は、ぜひ「エネがえる」を導入している工務店やハウスメーカー、販売店にシミュレーションを相談してみてください。

12.【販売施工店向け】自家消費率を含めた太陽光発電の詳細なシミュレーションなら「エネがえる」

ここからは、工務店やハウスメーカーなどの代理店様向けに、太陽光発電や蓄電池の提案をスピーディーに行える「エネがえる」の紹介をさせていただきます。

太陽光発電のシミュレーションツールはたくさんありますが、精度が高いシミュレーションをするならば「エネがえる」が最適です。

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支払い期間やローン金利を入れれば、FIT期間とFIT終了後の負担額も自動計算でき、瞬時に提案可能です。

さらに、今回の記事でも紹介した「発電量」が変動する要素も詳細に設定できるため、正確なシミュレーションが可能です。

例えば太陽光パネルの設置条件の設定では、パネルの方角や傾斜角はもちろん、メーカーごとに異なる基本設計係数(変換効率)や太陽電池の素材なども細かく設定できます。

 

そのため、「より正確に発電量を見積もりたい」というお客様のニーズにも答えることができます。

また、「自家消費率(自給率)」や、以下のような発電・自家消費・蓄電・売電の流れなども瞬時に資料をお出しできるため、お客様への提案がスムーズにおこなえます。

 

 

1日を通して、どの時間に発電し、どのくらいを自家消費し、どのくらいが蓄電池に貯められて、蓄電池からはどのくらい自家消費に回るかなども、以下のように図で分かりやすく説明できます。

 

弊社がおこなったアンケートの結果、エネがえるで出力した診断レポートをお客様に見せたところ、「71%のお客様が、販売会社への信頼度が上がる」と回答しています。

 

 

導入にいくらかかり、それによりどのくらいの経済効果が出るのか、毎月のローン負担額はいくらかになるかを、FIT中からFIT後まで15年という長期にわたり具体的にシミュレーションできるため、お客様からの信頼を勝ち取ることができます。

なお、エネがえるシリーズには他に、産業用のシミュレーションもできる「エネがえるBiz」や、EV・V2H経済メリットシミュレーションができる「エネがえるEV・V2H」もあります。

お客様への提案の確度を上げたい工務店・販売施工会社・メーカー・電力会社は、ぜひ「エネがえるASP」の導入をご検討ください。

 

まとめ

本記事では「太陽光発電における発電量」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

 

▼太陽光発電の1kWあたりの発電量は【年間1,000kWh】が目安

・太陽光発電協会(JPEA)も採用している数字で、一般的によく使われている

・ただし、環境省が算出した発電量は年間1,100kWh~1,300kWh程度がボリュームゾーン

・年間で1,000kWhが手堅い数字、実際には地域によっては1,100kWh~1,300kWhと捉えておくと良い

 

発電量は【設置エリア】と【設置条件】によって前後する

・最も年間予想発電量が多いのは甲府・高知・宮崎で1kWあたり1,339kWh

・最も低いのは秋田で1kWあたり1,095kWh

・太陽光パネルの向きは「南向き」、傾斜角度は「30度」がベスト

 

太陽光発電による理想の発電量についての考え方

・自宅で消費する電力を太陽光発電でまかなうのが基本

・基本的には電気使用量と同量程度の発電量を目指す

 

理想の発電量の決め方3ステップ

STEP1:パネル容量別の月間発電量を確認

STEP2:家庭ごとの電気使用量を確認

STEP3:電気使用量をまかなえる容量を選ぶ

 

太陽光発電の発電量をできるだけ高める(下げない)4つの方法

・太陽光モジュールの方角・傾斜角度を調整する

・影ができない場所に設置する

・設置場所の気象に合わせたパネルを選ぶ

・太陽光パネルの汚れを定期的に掃除する

太陽光発電の発電量は、実際のところ、設置場所(エリア)や設置条件(向き・傾斜角度など)によって変わります。

正確に発電量を見積もりたい場合には、「エネがえる」などの詳細シミュレーションができるツールを使うことをおすすめします。

 

執筆者・相談先(太陽光・蓄電池シミュレーションエキスパート)

国際航業株式会社 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG
執筆者:樋口 悟

執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。

太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションの国内唯一のエキスパートとして、大手電力・ガス会社、有名太陽光・蓄電池メーカー、全国販売施工店・工務店など約700社以上と、最近ではエネルギー政策立案サイド(国・官公庁・地方自治体)で太陽光・蓄電池推進政策をしている方々へもエネがえるを活用した太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションやアドバイスを提供している。

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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