
この記事の結論
影の時刻と位置がセル、バイパス、ストリング、PCSへどう伝わるかで損失が変わります。
結論:日陰損失は「影の面積=発電損失率」ではありません。影の時刻と位置、セルの直列接続、バイパスダイオード、ストリング構成、MPPT、PCSの挙動で変わります。初回は月別・時刻別の簡易シナリオを使い、複雑な影、MLPE、複数面、保証案件は3D・電気回路モデルまたは実測で精査します。
目次
影の影響メカニズム
太陽光モジュールのセルは電気的に接続されています。一部だけが遮られても、影の面積に比例して滑らかに出力が下がるとは限りません。バイパスダイオードが動作する単位、同じストリングの他モジュール、MPPTの探索、影の移動で損失が変わります。

IEA PVPSの部分影レポートも、現実的な影とパワーエレクトロニクス自身の損失を含めて比較しなければ、ストリングインバータとMLPEの優劣を一般化できないと示しています。「オプティマイザなら必ず影に強い」と断定しません。
IEA PVPS「Performance of Partially Shaded PV Generators」(2024)
簡易試算と詳細解析の境界
| 案件 | 使う方法 | 出力 | まだ確定しないこと |
|---|---|---|---|
| 周囲障害が少ない初回提案 | 月別・時間帯別の影係数 | なし/基準/厳しいの発電シナリオ | 保証値、ストリング別損失 |
| 煙突、塔屋、樹木、隣棟が近い | 3D太陽位置・遮蔽解析 | 時刻別日射遮蔽 | 電気的不整合を無視しない |
| 複数ストリング、MLPE、複雑PCS | 回路・MPPTを含む詳細モデル | 電気出力損失 | カタログ一般論で代用しない |
| 既設設備の異常・保証 | 監視値、I-V、サーモ、現地調査 | 原因切分け | シミュレーションだけで故障認定しない |
簡易モデルの作り方
固定の年率1点ではなく、少なくとも月別または代表日の時間帯別に影響を置きます。入力の影係数は「日射が失われる割合」なのか「電気出力が失われる割合」なのかを明記します。
簡易発電量[m,t]
= 基準発電量[m,t] × (1 − 日陰損失率[m,t])
年間日陰ロス
= 1 − Σ簡易発電量[m,t] ÷ Σ基準発電量[m,t]
この式は日陰損失率へ電気的不整合まで織り込んだ簡易モデルです。影面積をそのまま損失率へ入れません。入力根拠、適用不可条件、モデル版を記録します。
影の調査で集めるデータ
- 緯度経度、屋根方位・傾斜、モジュール配置
- 障害物の位置、高さ、距離、季節変化、樹木成長
- モジュール型番、セル・バイパス構成
- ストリング配線、MPPT割当、PCS型番
- 既設ならストリング監視、発電、日射、気温、停止ログ
- 写真、ドローン、点群、図面の取得日
ツールの役割を混同しない
NRELのPVWattsは少数の入力から系統連系PVの発電量を概算するツールで、サイト固有条件には限界があり、より複雑なモデルにはSAM等があると注意しています。PVWattsの屋根ポリゴンは水平面積から容量を概算し、屋根傾斜・方位・日陰を自動的に精密再現するものではありません。ツール名より、どの影と電気回路をモデル化したかを確認します。
経済効果へ反映する
発電ロスkWhを一律単価で金額化しません。失われた電力が本来、直接自家消費、売電、蓄電池充電のどれになったかで価値が違います。30分需要と料金へ戻して計算します。
日陰による経済損失
= 「日陰なしの請求・売電CF」
− 「日陰ありの請求・売電CF」
日陰対策の費用も含め、配置変更、容量減、MLPE、伐採・剪定、別屋根、見送りを同じNPVで比較します。
影損失と他の変換・温度・蓄電池ロスを重複計上しない方法は、太陽光・蓄電池ロス台帳で確認できます。
二重控除を防ぐ
発電量シミュレーター側ですでに日陰を反映している場合、エネがえるや外部Excelで同じ係数をもう一度掛けません。ロス台帳に「反映済み/未反映/不明」「適用先」「根拠」「取得日」を記録します。
エネがえるでの使い分け
詳細影解析で得た月別・時間別発電量を、需要・料金・設備条件とつなぐ経済効果比較にエネがえるBizを使います。影解析そのものと経済効果試算を一つのブラックボックスにせず、発電量入力の作成者、方法、反映ロスを成果物へ残します。複雑案件の前提整理と複数結果比較は試算BPOで範囲を確認できます。
FAQ
影が屋根の10%なら発電損失も10%ですか?
限りません。時刻、セル・回路、バイパス、ストリング、MPPTで変わります。
無料ツールだけで確定できますか?
初期スクリーニングには使えます。複雑な影、保証、融資、最終配置では詳細モデルまたは実測で精査します。
MLPEなら影損失はゼロですか?
ゼロではありません。影で失う日射は戻らず、機器自身の損失・費用・故障点も含めて比較します。
最終結論:日陰は一つの固定率ではなく、障害物から電気回路へ伝わる時系列の現象です。簡易係数で済む案件と、3D・回路・実測が必要な案件を最初に分けることが、過大設計と過小評価を同時に防ぎます。



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