国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の開催地とアジェンダは?

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

COP30に向けた気候資金目標の段階的拡大
COP30に向けた気候資金目標の段階的拡大

目次

国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の開催地とアジェンダは?

アマゾンから発信される気候変動対策の新時代

2025年11月ブラジル・アマゾン地域のベレンで開催されるCOP30は、気候変動対策の歴史において極めて重要な転換点となる可能性を秘めている12。パリ協定採択から10年、そして1.5℃目標達成の最後の機会とも言われる今回の会議では、従来の1,000億ドルから1兆3,000億ドルへと13倍に拡大する気候資金目標23、各国の温室効果ガス削減目標(NDC)提出の大幅な遅れ6、そして日本発の革新技術の国際競争力2226など、複数の重大な議題が同時進行で討議される。

特に注目すべきは、気候変動対策が単なる環境問題からグローバル経済の根幹を変革する投資機会へと性質を変えている点である1517世界の脱炭素技術への投資は2021年の0.8兆ドルから2026-2030年平均で年間4.2兆ドルまで拡大すると予測されており1517、この巨大市場において日本企業がどのようなポジションを確立できるかが国家競争力を左右する。

COP30の基本情報:アマゾン開催が持つ象徴的意義

開催概要と歴史的背景

COP302025年11月10日から21日にかけて、ブラジル北部パラ州の州都ベレンで開催される15。ブラジルでの開催は初めてであり、特にアマゾン地域での開催は、世界最大の熱帯雨林を抱える国が気候変動対策の最前線に立つという強烈なメッセージを発している58

ベレンは人口150万人を擁するアマゾン川河口近くの大都市で、周辺には多くの日系人コミュニティも存在する58。この地で196カ国の代表が集まることは、森林保護と経済発展の両立という地球規模の課題に対する具体的な解決策を模索する象徴的な場となる。

ブラジル議長国の4大イニシアチブ

ルーラ大統領が発表した4つの主要イニシアチブは、COP30の議論の方向性を決定づける重要な要素である2

  1. 多様なステークホルダーとの気候変動評価: 若者、宗教指導者、先住民、科学者との協働

  2. 食糧システム変革ガイドライン: FAOとの協力によるNDCへの組み込み

  3. 科学的評価の再検証: ユネスコとの協力による気候変動科学の再評価

  4. レインフォレスト・フォーエバー基金: 森林保護を目的とした途上国向け基金の創設

これらのイニシアチブは、従来の政府間交渉に加えて、市民社会や産業界を巻き込んだ包括的なアプローチを志向している点で画期的である2

最大の焦点:気候資金1兆3,000億ドル目標の衝撃

気候資金目標の劇的な拡大

COP30に向けた最も注目すべき議題は、気候資金目標の大幅な拡大である。従来の年間1,000億ドルから、COP29で合意された3,000億ドル、そしてBRICS諸国が提案する1兆3,000億ドルまで、段階的に目標額が引き上げられている237

COP30に向けた気候資金目標の段階的拡大:従来の1,000億ドルからBRICS提案の1兆3,000億ドルまで
COP30に向けた気候資金目標の段階的拡大:従来の1,000億ドルからBRICS提案の1兆3,000億ドルまで

この1兆3,000億ドルという数字は、単なる希望的観測ではなく、科学的根拠に基づいた必要額である。IPCC報告書によれば、1.5℃目標達成のためには2030年までに43%、2035年までに60%のGHG削減が必要とされており9、これを実現するための技術導入と制度変革には巨額の投資が不可欠である13

気候資金の内訳と計算モデル

BRICS提案の1兆3,000億ドル/年の想定内訳は以下の通りである:

気候資金配分モデル:

text
必要資金 = 緩和投資 + 適応投資 + 損失補償

緩和投資 = 8,060億ドル/年(約62%)
適応投資 = 2,990億ドル/年(約23%)
損失補償 = 1,950億ドル/年(約15%)

緩和投資の内訳をさらに詳細に分析すると:

  • 再生可能エネルギー導入: 3,500億ドル/年

  • エネルギー効率化: 2,000億ドル/年

  • 産業プロセス転換: 1,500億ドル/年

  • 運輸部門電動化: 1,060億ドル/年

この巨額の資金需要は、民間投資の活性化革新的な金融メカニズムの開発を不可欠としている27

NDC提出遅れ問題:パリ協定の根幹に関わる危機

深刻な提出状況

COP30に向けた最も深刻な問題の一つが、各国のNDC(Nationally Determined Contributions:国別削減目標)提出の大幅な遅れである6。当初の提出期限である2025年2月10日時点で、196締約国のうちわずか1割程度の国しか提出していない状況が続いている26

この遅れの背景には、米国のパリ協定離脱通告6、EUの政治的混乱6、そして中国やインドなどの主要排出国の対応遅れ6がある。特に、世界の温室効果ガス排出量の8割を占める主要国の足並みが揃わない状況は、パリ協定の実効性そのものを脅かす重大な事態である6

日本のNDC:1.5℃目標との乖離

日本は2025年2月18日にNDCを提出し、2035年度に2013年度比で60%減、2040年度には73%減とする方針を決定した6。しかし、この目標は1.5℃目標達成に必要な削減ペースを下回っている11

日本のNDC目標は1.5℃目標に対して6%不足:政府案60%削減 vs 必要値66%削減
日本のNDC目標は1.5℃目標に対して6%不足:政府案60%削減 vs 必要値66%削減

NDC達成度計算式:

text
達成度(%) = (実際削減量 / 目標削減量) × 100

日本の例(2035年目標):
基準年排出量(2013年)= 14.08億t-CO2
目標削減量 = 14.08 × 0.60 = 8.45億t-CO2
目標年排出量 = 14.08 - 8.45 = 5.63億t-CO2

1.5℃目標必要削減量 = 14.08 × 0.66 = 9.29億t-CO2
不足分 = 9.29 - 8.45 = 0.84億t-CO2(6%相当)

この6%の不足分を埋めるためには、追加的な技術革新と政策強化が急務である11。特に、住宅・産業部門での省エネルギー対策強化と再生可能エネルギーの大幅な導入拡大が不可欠となる。

注目技術分野とビジネスチャンス:日本の競争優位性

世界的投資拡大の潮流

気候変動対策技術への投資は世界的に急拡大している。IEAの試算によれば、パリ協定目標達成には2040年までに世界全体で587,950-713,290億ドル(約6,470-7,860兆円)の投資が必要とされる15

脱炭素投資の必要規模:世界2019-2040年で6,470兆円、日本GX10年計画で20兆円
脱炭素投資の必要規模:世界2019-2040年で6,470兆円、日本GX10年計画で20兆円

この巨大市場において、日本は独自の技術的優位性を持つ分野が複数存在する。特に以下の5つの技術分野では、世界市場でのリーダーシップを発揮する可能性が高い。

ペロブスカイト太陽電池:日本発技術の国際競争

ペロブスカイト太陽電池は桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授の研究に基づく日本発の革新技術である2226。この技術の最大の特徴は、従来のシリコン太陽電池と比較して軽量・柔軟・低コストという3つの優位性を同時に実現している点である22

技術仕様比較:

  • 重量: シリコン型の1/10以下

  • 製造温度: 常温加工可能(シリコン型は1,000℃以上)

  • 変換効率: 18%超(シリコン型に匹敵)

  • 製造コスト: シリコン型の1/2以下

しかし、中国の追い上げは激しく、2022年時点でペロブスカイト太陽電池に関する論文数は中国が10,526本に対し日本は1,802本と大きく水をあけられている26。この状況を受けて、経済産業省主導で官民協議会が発足し、積水化学工業、パナソニック、東芝など主要メーカーと100を超える自治体が参加する体制が構築された26

洋上風力発電:浮体式技術による差別化

日本の洋上風力発電技術は、特に浮体式洋上風力において世界最先端の技術力を有している2327。水深50-100m程度の比較的浅水深海域を対象とした低コスト次世代浮体式洋上風力発電システムの開発が進んでおり27、台風・落雷対応、低風速域向けブレードなど、日本・アジア市場特有の気象条件に最適化された技術開発が行われている23

浮体式洋上風力の技術要素:

  1. 風車仕様の最適化と高品質大量生産技術

  2. 浮体搭載風車の最適設計

  3. 次世代風車要素技術開発

  4. 低風速域向けブレード技術

  5. ハイブリッド係留システム

グリッドスケールバッテリー:電力網安定化の切り札

グリッドスケールバッテリーは電力網と連携して機能する大容量バッテリーシステムで、数メガワットから数百メガワットの電力を蓄えることができる24。再生可能エネルギーの間欠性を補完し、電力系統全体の安定化を図る重要技術である。

注目すべき企業として、重力を利用したエネルギー貯蔵技術を開発するEnergy Vault、液体金属バッテリーのAmbri、鉄フロー電池のESS Inc.などがあり24、従来のリチウムイオンバッテリーを超える革新的なアプローチが模索されている。

CCUS技術:日本の先進的取り組み

CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)技術において、日本は世界でも先進的な取り組みを展開している25。JOGMECが選定した7つの先進的CCS事業では、2030年までにCO2の年間貯留量約1,300万トンの確保を目指している25

選定案件は発電、石油精製、鉄鋼、化学、紙・パルプ、セメントなど幅広い産業分野をカバーし、北海道から九州まで全国的な展開を予定している25。これにより、2050年時点で年間約1.2-2.4億トンのCO2貯留が可能となる計画である。

エネがえる:シミュレーション技術の競争優位性

日本独自の強みとして特筆すべきは、太陽光・蓄電池・EV・V2H経済効果シミュレーション技術である2829。国際航業が開発した「エネがえる」は、700社以上に導入され、年間10万件超のシミュレーション実績を誇る2829

COP30注目技術における日本のポジション:エネがえるは高い競争力、洋上風力は大市場
COP30注目技術における日本のポジション:エネがえるは高い競争力、洋上風力は大市場

エネがえるの技術的優位性は以下の点にある:

  • 30秒での自動提案書作成28

  • 100社以上3,000超の電気料金プラン対応29

  • 主要蓄電池製品98%網羅29

  • EV 20メーカー57車種対応33

特に、太陽光・蓄電池経済効果シミュレーター「エネがえる」は、営業担当者の成約率向上に大きく貢献しており、複合プランでの契約率が大幅にアップしている実績がある31

エネがえるチームの20回以上にわたる再エネ・脱炭素領域の需要家(買い手)や再エネ関連事業者(売り手)に関する意識調査・行動調査によって、「CO2排出量可視化だけでは事業者の収益力アップに繋がらず、経済効果の可視化が最重要となる」、「脱炭素、再エネ導入に関する不安解消やボトルネック解消においては、経済効果シミュレーションやその保証が最重要ファクターとなる」など数々の独自の洞察を発表している。

つまり、脱炭素・再エネ普及においては、ハードウェアや政策・補助金のみではボトルネックは解消できない。「より根源的な売り手や買い手にとっての価値、つまりお金に換算した可視化」「導入前シミュレーションに対する経済保証による行動促進」がキーとなる。ソフトウェアとデータビジュアライゼーションとファイナンスの組み合わせの価値をもっと日本は国として全面的に強みにしていくべきだろう。

参考:太陽光発電・蓄電システム 販売動向白書 2024 エネルギー | 脱炭素 

参考:[独自レポートVol.20]シミュレーション結果の保証で、 約7割が住宅用太陽光・蓄電池の導入を検討 〜65.4%が保証があると導入に関する家族の同意を「得やすくなる」と回答〜 | エネがえる総合ブログ – リサーチ | 商品・サービス | 国際航業株式会社 

気候変動対策の総合経済効果モデル

気候変動対策の経済効果を正確に評価するためには、包括的な数理モデルが必要である。基本的な計算式は以下の通りである:

総経済効果計算式:

text
総経済効果 = 緩和費用削減 + 適応費用削減 + 損害回避便益 - 対策投資費用

詳細:
緩和費用削減 = Σ(CO2削減量i × カーボンプライス × 年数)
適応費用削減 = Σ(災害損失削減額 + インフラ強化費用削減)
損害回避便益 = Σ(健康被害回避 + 生物多様性保全価値 + 農業損失回避)
対策投資費用 = 初期投資 + 運営維持費 × 年数

早稲田大学の研究によれば、生物多様性の損失や人間健康への被害といった非市場価値を考慮し、将来価値を高く見積もる場合、2℃目標の達成が経済的にも適切であることが明らかになっている13

カーボンプライシングの価格決定メカニズム

カーボンプライシングの価格は以下の要素で決定される:

炭素価格決定式:

text
炭素価格 = 社会的炭素費用 + 政策コスト + 取引コスト

社会的炭素費用 = Σ(将来被害額 / (1+割引率)^年数)
政策コスト = 制度運営費 + 監視・検証費用
取引コスト = 市場運営費 + 仲介手数料

現在の価格水準は地域によって大きく異なる:

  • 日本(地球温暖化対策税):289円/t-CO220

  • EU-ETS:約80-100ユーロ/t-CO2

  • カリフォルニア州:約30-40ドル/t-CO2

再生可能エネルギー投資収益率計算

再生可能エネルギー投資の経済性は**LCOE(Levelized Cost of Electricity:均等化発電原価)IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)**で評価される:

LCOE計算式:

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LCOE = (初期投資 + 運営費用現在価値) / 発電量現在価値

投資収益率(IRR) = NPV = 0 となる割引率
NPV = Σ[(年間収益 - 年間費用) / (1+r)^t] - 初期投資

太陽光発電の具体例:

  • 初期投資:20万円/kW

  • 年間発電量:1,200kWh/kW

  • 売電価格:16円/kWh

  • 年間収益:19,200円/kW

  • 想定IRR:6-8%

エネがえるシミュレーションの数理ロジック

エネがえるが提供する経済効果シミュレーションは、以下の数理モデルに基づいている:

基本経済効果式:

text
経済効果 = 電気代削減 + 売電収入 + 補助金 - ローン支払い

電気代削減 = (従来電気代 - 導入後電気代) × 年数
売電収入 = 余剰電力量 × 売電単価 × 年数
システム費用 = 機器代 + 工事費 + 諸費用
実質支払額 = システム費用 - 補助金 + 金利

蓄電池最適化モデル:

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蓄電池効果 = 夜間充電削減 + ピーク時放電効果 + 災害対応価値
最適容量 = 日中余剰電力量 × 利用率

V2H経済効果 = ガソリン代削減 + 電気代削減 + 売電収入増
ガソリン代削減 = 年間走行距離 × (ガソリン単価/燃費 - 電気単価/電費)

このような精密な計算により、エネがえる経済効果シミュレーション保証サービスでは、シミュレーション結果に対する保証も提供されている。

投資機会とリスク評価:戦略的視点

巨大市場の投資機会

COP30を契機として、数百兆円規模の投資機会が世界的に創出される。日本の投資家は既にアジア地域で最も進んだ気候変動対策を実施しており、合計1,846兆円の運用資産を持つ35の機関投資家のうち63%が2030-2035年ネットゼロ目標を設定している16

主要投資分野の市場規模予測:

  • ペロブスカイト太陽電池:5兆円市場

  • 洋上風力発電:15兆円市場

  • グリッドスケールバッテリー:8兆円市場

  • CCUS技術:12兆円市場

  • エネルギーシミュレーション:500億円市場

リスク要因と対策

一方で、以下のリスク要因にも注意が必要である:

技術リスク:

  • ペロブスカイト太陽電池:耐久性問題、鉛使用の環境懸念22

  • 洋上風力:設備利用率の不確実性23

  • CCUS:大規模展開の技術的困難25

政策リスク:

  • NDC目標の後退可能性6

  • 気候資金拠出の遅延2

  • 国際的な足並みの乱れ6

市場リスク:

  • 中国企業との価格競争激化26

  • 原材料価格の変動

  • 為替変動の影響

事業者向け戦略提言:COP30を活用した成長戦略

エネルギー事業者の戦略オプション

COP30の動向を踏まえた事業戦略として、以下のアプローチが有効である:

短期戦略(1-2年):

  1. シミュレーション能力の強化: エネがえるなどの高精度シミュレーションツール導入による営業力向上

  2. ペロブスカイト太陽電池の実証参加: 実用化前の技術検証への早期参入

  3. V2H市場への参入: EV普及と連動した新市場開拓

中期戦略(3-5年):

  1. 洋上風力への投資: 浮体式技術を活用した差別化

  2. カーボンクレジット事業: J-クレジット制度活用による収益多様化32

  3. グリッドスケールバッテリー事業: 電力系統安定化サービス

長期戦略(5-10年):

  1. CCUS事業への参画: 産業間連携による大規模プロジェクト

  2. 国際展開: アジア市場での技術優位性活用

  3. 総合エネルギーサービス: ワンストップソリューション提供

中小事業者の差別化戦略

中小規模の事業者にとっては、高付加価値サービスによる差別化が重要である:

  1. 専門特化: 特定技術分野での深い専門性確立

  2. 地域密着: 地域特性に応じたカスタマイズサービス

  3. パートナーシップ: 大手企業との戦略的提携

  4. デジタル活用: IoTやAIを活用した運営効率化

FAQ:よくある質問と実践的回答

Q1: COP30の合意内容は法的拘束力があるのか?

COP30での合意事項の法的拘束力は内容によって異なる。パリ協定自体は国際法上の拘束力を持つが、各国のNDCは「政治的コミットメント」の性格が強い1。ただし、気候資金に関する合意は国際的な信用に直結するため、事実上の拘束力を持つと考えられる2

Q2: 1兆3,000億ドルの気候資金は実現可能か?

技術的には実現可能だが、政治的合意形成が課題である。世界のGDPに占める割合は約1.3%で、各国の国防費合計(約2.4兆ドル)と比較すれば決して不可能な額ではない3。重要なのは民間資金の動員メカニズムの構築である7

Q3: 日本のNDC目標は見直される可能性があるか?

国内外からの圧力により見直しの可能性はある。特に、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が提案する2013年度比75%以上削減目標11が政治的影響力を持つ可能性がある。

Q4: ペロブスカイト太陽電池はいつ実用化されるか?

パナソニックが2029年までの製品化を目指しており26、積水化学工業は既に実装実験を開始している26。商用化は2025-2030年頃と予想される。

Q5: エネがえるのようなシミュレーションツールの投資対効果は?

J-クレジット制度では東京証券取引所での取引価格や入札結果が参考価格となる32。需要増加により価格上昇が期待され、プロジェクト事業者にとって追加収益源となる32

結論:COP30が切り開く新時代への道筋

COP30は単なる国際会議を超えて、グローバル経済の構造変革を加速する触媒としての役割を担っている。1兆3,000億ドルという巨額の気候資金目標、NDC強化圧力、そして革新技術の社会実装加速という3つの要素が相互作用することで、これまでにない規模の市場機会が創出される。

日本にとって特に重要なのは、ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力、そしてエネがえるに代表されるシミュレーション技術において世界をリードする競争優位性を有している点である。これらの技術分野では、適切な戦略実行によりグローバル市場でのリーダーシップ確立が可能である。

一方で、中国をはじめとする新興国の急速な追い上げ、NDC目標達成への道筋の不透明さ、そして国際協調体制の脆弱性など、多くの課題も存在する。これらの課題を克服し、COP30を日本経済の新たな成長機会として活用するためには、官民一体となった戦略的取り組みが不可欠である。

特に、エネルギー事業者にとっては、エネがえるのような高精度シミュレーションツールを活用した営業力強化、新技術への早期投資、そして国際市場への展開準備が、競争優位性確立の鍵となる。COP30から始まる新時代において、日本が世界の気候変動対策をリードし、同時に経済成長を実現するための基盤は既に整いつつある。

出典・参考文献

  1. ITTO – 2025年 国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)

  2. JETRO – COP30に向け「気候野心サミット」開催、NDCの提出期限延長

  3. JETRO – BRICS環境相会合でCOP30に向けた共同声明を採択

  4. Circular Economy Hub – 世界循環経済フォーラム2025、COP30に向けサーキュラーエコノミーの気候変動対策への貢献を強調

  5. シェノン – COP30、25年ブラジルで開催

  6. note – 停滞する排出削減目標 パリ協定の行方は

  7. JETRO – COP29閉幕、気候資金目標額引き上げ合意

  8. 日経新聞 – ブラジル、25年のCOP30開催地に 北部ベレンで

  9. 自然エネルギー財団 – 化石燃料からの脱却と自然エネルギー3倍化の実現を

  10. 内閣官房 – 我が国のグリーントランスフォーメーションの加速に向けて

  11. オルタナ – 日本のNDC案は1.5℃目標に整合せず、国内外から批判相次ぐ

  12. 外務省 – 日・ブラジル・グリーン・パートナーシップ・イニシアティブ

  13. 早稲田大学 – 気候変動の総費用

  14. Beyond Coal – 国連がNDC分析結果を発表—1.5℃目標達成には依然不十分

  15. 環境省 – 気候変動関連のファイナンスについて

  16. AIGCC – 日本の投資家はアジアの中で最も気候変動対策が進展

  17. GPIF – GPIFポートフォリオの気候変動リスク・機会分析

  18. 毎日新聞 – エネルギーの脱炭素化へ 経産省が1兆28億円計上

  19. エネレス – COPとは?概要や企業への影響をわかりやすく解説

  20. 毎日新聞 – カーボンプライシングで主導権争い?

  21. 地球環境戦略研究機関 – 日本政府の気候・エネルギー予算とGX投資の現状

  22. NTN – 新しい発電技術!ペロブスカイト太陽光発電のメリットと課題

  23. NMRI – 浮体式洋上風力発電の最近の政策動向について

  24. note – みんなが知らないグリッドスケールバッテリーシステムの世界

  25. 経済産業省 – 日本のCCS事業への本格始動

  26. 日経ビジネス – 軽くて曲がるペロブスカイト太陽電池 次世代再エネのカギに

  27. NEDO – 次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究

  28. キャプテラ – エネがえるとは?機能や料金、導入事例をご紹介

  29. Energy Vision – 太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションの決定版「エネがえる」

  30. Qiita – エネがえるEV・V2H APIを使用した経済効果シミュレーションの実装

  31. エネがえる – 太陽光・蓄電池販売の成約率を劇的に向上させる秘策

  32. 低炭素社会推進会議 – CO2削減に関する支援(J-クレジット制度)

  33. ITmedia – 国際航業、太陽光発電/蓄電池/EV/V2Hの経済効果を診断するSaaS

 

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