30分デマンドデータの解析・活用ガイド:自家消費、電力コスト削減から将来の需給調整市場まで

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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目次

30分デマンドデータの解析・活用ガイド:自家消費、電力コスト削減から将来の需給調整市場まで

【10秒で読める要約】

この記事では、電力需要家の「30分デマンドデータ」を徹底的に解析・活用する方法を詳述しています。30分デマンド値の基本概念から各電力会社のCSVフォーマット変換方法kWとkWhの変換計算エネがえるBizを活用した太陽光・蓄電池容量の最適化、さらには将来的な需給調整市場への展望まで網羅。電力管理者、再エネ事業者、エネルギー関連コンサルタントにとって実用的な知識とテクニックを提供します。

1. 30分デマンドデータ(30分デマンド値)とは何か

30分デマンドデータとは、30分間の平均電力使用量を示したデータです。電力量計(スマートメーター)が毎時00分~30分、30分~60分の各区間で消費した電力量を測定し、その平均使用電力 (kW) を算出した値が記録されます。1時間あたり2つの値が得られるため、1日あたり48コマのデマンド値が存在します。たとえば「12:00~12:30に平均15kW、12:30~13:00に平均20kWを使用した」場合、その時間帯のデマンド値はそれぞれ15kW・20kWとなります。単位はkWであり、一瞬の最大値ではなく30分間の平均値である点が重要です。

用途と意味合い

30分デマンドデータは需要家の電力使用パターンを細かく把握する基盤となります。いつ電力使用量が多く、いつ少ないかを可視化でき、省エネ施策や設備導入効果のシミュレーションに不可欠です。特に自家消費型太陽光発電の検討時には、年間の需要パターンを把握するため直近1年分の30分値が必要になります。

電気料金・基本料金との関係

最大デマンド値(30分値の年間最大)は需要家の契約電力を決定する要因であり、高圧契約では契約電力に基づいて基本料金が算定されます。例えば高圧受電500kW未満の契約では、過去12ヶ月の最大30分デマンド値がそのまま契約電力(kW)となり、これに基本料金単価(円/kW)を掛けて毎月の基本料金が決まります。したがってデマンド値を下げる(ピーク電力を抑える)ことが基本料金削減に直結します。

一方、使用電力量料金(従量料金)はkWhに対する課金ですが、最大需要電力(kW)はデマンド料金あるいは基本料金としてコストに影響します。電力会社の請求書には「最大需要電力○○kW」と記載され、これが契約電力として扱われます。この仕組み上、例えば一度でも非常に高いデマンド値を記録すると、その後1年間は高い基本料金が適用され続けるケースもあります。電力使用量(kWh)が同じでも最大デマンド値が大きければ料金が上がるため、需要家ではデマンド監視装置を導入してピーク抑制を図ることが一般的です。

データの取得方法

自社の30分デマンドデータは、契約している送配電事業者(旧一般電力会社)に請求することで入手できます。多くの電力会社では、高圧需要家からの依頼に応じて直近1年分の30分値を提供しており、以下のような方法があります。

  1. 電話で請求: 北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、中国電力 などでは、担当窓口に電話を入れて「高圧受電設備の30分デマンド値1年分が欲しい」旨を伝えると対応してもらえます。契約者本人からの依頼が必要で、事業所名やお客様番号などを確認されます。※委任状で代理依頼できる場合もあるようです。

  2. 郵送で請求: 一部の電力会社では郵送手続きが定められています。例として九州電力では、所定の開示請求用紙に記入し本人確認書類を添付して郵送する方法となっており、手数料が必要です。

  3. WEBサービスからダウンロード: 近年ではWeb上の会員サービスでデータを提供する会社も増えています。例えば中部電力の「ビジエネ」、関西電力の「エネルギー使用量お知らせサービス」や北陸電力の「見エールサービス」、四国電力の「よんでんコンシェルジュ」、沖縄電力の「使用実績照会サービス」等では、登録ユーザーが過去の30分ごとの使用実績CSVを自分でダウンロード可能です。こうしたサービスでは前日までのデータが見られ、CSV形式で日時ごとの電力量(kWh)と最大需要電力が取得できるケースが一般的です。

電力会社ごとに提供形態やフォーマットが異なるため、データ取得時には各社の案内に従いましょう。特に九州電力は手続き・手数料が必要、東京電力など一部はBルートサービスや会員サイト(くらしTEPCO等)で低圧データのみWeb提供など違いがあります。また取得にはスマートメーター設置が前提であり、未設置の場合はまず交換が必要です。

CSVフォーマットの違い

各電力会社から提供されるCSVデータは形式がまちまちです。典型的なフォーマット例として、1行に1日分の48コマ(30分値)を並べた横持ち形式や、逆に日時ごとに1行ずつ並ぶ縦持ち形式があります。例えば東京電力では日付と時間別使用量を縦一覧にしたCSVを提供する傾向があり、一方で関西電力や北陸電力のWebサービスでは1日ごとに48コマが横並びのCSVがダウンロードできます(年や月単位のシートの場合もあり)。大手電力10社(北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄)のフォーマットを比較すると、おおむね以下の特徴があります:

電力会社 (管内)提供方法の例CSV形式の特徴(例)
北海道電力電話依頼で郵送/メール提供日付+48コマ横並び (推定)
東北電力電話依頼で提供日付+48コマ横並び (推定)
東京電力電話依頼 or くらしTEPCO (低圧)縦持ち(日時と値の一覧)形式が多い
中部電力Bizene会員サイト日付+48コマ横並び (CSV/Excel)
北陸電力見エールサービス (Web)日付+48コマ横並び (Excelダウンロード)
関西電力お知らせサービス (Web)日付+48コマ横並び (CSV)
中国電力電話依頼で提供 (会員サービス有無不明)日付+48コマ横並び (推定)
四国電力よんでんコンシェルジュ (Web)日付+48コマ横並び (CSV)
九州電力書面申請(郵送・有料)紙またはCSV(縦持ち形式の可能性)
沖縄電力使用実績照会Webサービス日付+48コマ横並び (CSV)

※上記は一般的な傾向です。実際のフォーマットは各社の提供するサンプルやヘッダー行の有無など細部が異なります。例えば年・月・日を含めた列構成、ヘッダー行に日本語(例:「0時~0時30分」)か時刻表示(例:「0:00」)かなどの違いがあります。エネがえるBizでは主要10社のフォーマット差異を吸収するため、独自のテンプレートCSVを用意しています。

スマートメーターBルート連携

30分デマンドデータは基本的に翌日以降にまとめて取得しますが、リアルタイムで取得する方法としてBルートサービスがあります。Bルートとはスマートメーターと需要家側機器(HEMSなど)をつなぐ通信経路で、契約者が申し込むことで自宅や事業所のメーターから30分ごとの使用量データや瞬時電流値をその場で受信できます。例えば東京電力パワーグリッドのBルートサービスに申し込むと、数週間後に認証ID・パスワードが発行され、それを対応機器(Wi-SUN通信対応のUSBドングルやゲートウェイ等)に設定することでメーターと無線接続されます。こうして取得したデータはHEMSアプリ上で見える化されたり、自社でログをとって分析できます。

Bルート経由なら30分値をほぼリアルタイム(30分に一度)で把握できるため、デマンド監視やピーク制御に活用可能です。低圧契約ではBルートが主ですが、高圧契約の場合は計測器から直接監視装置へ出力があるケースもあります。またBルートを使えば現在使用中の電流値も取得できるため、**需要超過の予兆を捉えて機器制御(需要家側で負荷遮断や蓄電池放電)**するといったエネルギーマネジメントも可能になります。各電力会社ごとにBルート申し込み窓口があり、ID発行手続きはWebフォームや郵送で行えます。データ活用の高度化には、このようなリアルタイム連携も視野に入れるとよいでしょう。

Excelや可視化での解析

取得した30分デマンドCSVはExcelで開いてピボットやグラフ化して解析できます。例えば各日の負荷カーブをヒートマップにすると、季節や曜日ごとの傾向が一目瞭然です。横軸は時間(48コマ)、縦軸は日付(365日分)で、色の濃淡が使用量(kWh)の多寡を表します。赤い帯が濃い時間帯がその需要家のピーク使用時間帯であり、縦のパターンから平日・休日の差や季節変動も読み取れます。例えば夏季の日中にピークが集中している、週末は昼間需要が低下している等、ヒートマップから直感的に把握できます。

Excelでは条件付き書式で類似のヒートマップを作成可能で、日付を縦軸、時間帯を横軸にデマンド値を配置して色分けすれば簡易な可視化ができます。こうした解析により、「無駄な待機電力が深夜に発生していないか」「ピークシフトできそうな負荷はどれか」など省エネ検討のヒントが得られます。

2. デマンドデータ(kW)を電力使用量(kWh)に変換する方法

**デマンドデータ(kW)とは前述の通り30分区間の平均出力値です。一方、電気料金計算やエネルギー消費量の議論ではkWh(キロワット時)**の単位が用いられます。kWからkWhへの変換は非常にシンプルで、電力 (kW) × 時間 (h) = 電力量 (kWh) という関係式に基づきます。以下に具体的な計算方法と例を示します。

基本の計算式

30分デマンド値 (kW) を電力量 (kWh) に換算するには、時間0.5時間を乗じればOKです。
電力消費量 (kWh) = 30分デマンド値 (kW) × 0.5時間

例えば30分デマンド値が500kWなら、その30分間に使用した電力量は500 × 0.5 = 250kWhとなります。同様に、平均10kWだった区間なら5kWh、平均4kWなら2kWhです。これは「30分間に500kWのペースで電力を使い続けたら、その半時間で250kWh消費する」ことを意味します。

なぜ0.5を掛けるのか

kW(キロワット)は「電力の大きさ(仕事率)」を表し、kWh(キロワット時)は「消費した電力量(仕事量)」を表します。30分=0.5時間は1時間の半分なので、平均出力に0.5を掛ければその間に使ったエネルギー量が求まります。これは積分計算のイメージですが、30分値はすでに平均化されているため単純に掛け算で良いわけです。

逆に言えば、元の30分デマンド値は「その区間の消費電力量を0.5で割ったもの(2倍したもの)」とも解釈できます。電力量(kWh)の方がエネルギーそのものを示す直感的な指標なので、蓄電池容量や年間使用量の計算ではkWhへ変換して扱います。

計算例で確認

ある工場のデマンドデータ(一部)が次のようになっていたとします。

時刻区間デマンド値 (kW)消費エネルギー (kWh)
10:00~10:30200 kW200 × 0.5 = 100 kWh
10:30~11:00150 kW150 × 0.5 = 75 kWh
11:00~11:3050 kW50 × 0.5 = 25 kWh
11:30~12:000 kW0 × 0.5 = 0 kWh

この例では、10:00~11:00の1時間で175 kWh(100+75)、11:00~12:00で25 kWhを消費したことになります。もしデマンド値だけ見て「200kWと150kWだからこの1時間で350kWh使った?」と誤解すると2倍の差が生じますので注意しましょう。必ず時間換算を入れるのがポイントです。特にエネがえるBizなどシミュレーションにデータを入れる際、単位間違いをすると結果も倍違ってしまいます(後述するように、エネがえるではkWh単位でCSVを用意する必要があります)。

その他の単位変換

電力業界では他にも以下のような単位変換知識があります。

  • 1kW = 1000W(ワット)です。例えば0.5kWは500W。
  • 1kWh = 3600 kJ(キロジュール)に相当します。エネルギーの単位換算で、1Jは1Wの電力を1秒使ったエネルギーです。
  • kWhと冷房・暖房能力: エアコンの冷房能力「○○kcal/h」をkWに換算するには、1kcal/h ≒ 0.001163kWです。
  • 電力量料金の計算: 電気料金の従量部分は「使用量(kWh) × 単価(円/kWh)」で計算します。例えば5000kWh使って単価¥15なら¥75,000です。
  • 需要率: 「最大需要電力(kW) ÷ 契約容量または負荷設備容量」で設備利用率を示す指標ですが、これもデマンド値から算出します。

実務上はデマンド値→電力量以外の換算はあまり登場しませんが、エネルギー管理士試験などでは単位換算の理解が問われます。kWとkWhの違いは混同しやすいポイントなので社内勉強会等でも周知しましょう。

3. デマンドデータの加工・CSV活用Tips

デマンドデータの加工にはいくつかの定石テクニックがあります。異なるフォーマットの変換、欠損値の補完、データの縦持ち・横持ち変換、自動処理の工夫など、効率よく扱うためのポイントを整理します。さらに最近では**生成AI(ChatGPT等)**を使ったデータ変換の自動化も注目されています。以下に現場で役立つTipsを紹介します。

異なるCSVフォーマットの変換

前章で述べたように、電力会社ごとにCSVのレイアウトが異なります。自社で解析や他のシステムにインポートする際は、フォーマット統一が必要です。例えば、「列方向に年・月・日・0時~23時の24値が並ぶCSV」を「年・月・日ごとに48値(30分値)が並ぶCSV」に変換する、といったケースがあります。

Excelで対応する場合、VLOOKUPやINDEX関数を用いて日時キーで値を抜き出し再配置すると便利です。具体的には、縦長リスト形式のデータをピボットテーブルで日付行×時刻列のマトリクスに変換したり、逆に横持ちデータをUNpivot(行列入替)するマクロを組むこともできます。データ量が多い場合はPythonPandasライブラリ等スクリプト変換すると高速です。いずれにせよ共通のテンプレートを用意し、データをコピペして自動整形する仕組みを作っておくと毎回の作業が楽になります。

生成AIを活用した自動変換

近年発展したChatGPTなどの生成AIは、テキストとして表形式データを食わせれば別のフォーマットに整形して出力させることも可能です。例えば、ある電力会社のデータが「日時,使用量(kWh)」の縦並びCSVで提供された場合、その一部をChatGPTに与えて「このフォーマットを年,月,日,0:00,…23:30列の横持ちCSVに変換してください」とプロンプトすれば、かなりの精度で変換結果を生成してくれます。

生成AIは文脈理解が得意なため「ヘッダ行はこのように」「欠損時は0を入れる」といったルールを文章で伝えるだけで処理してくれる点が魅力です。ただし長い入力には分割が必要、完全な自動化にはAPI利用など高度な設定が要る、出力内容は必ず検証する、といった注意も必要です。機密データをそのまま外部AIに入力するのはリスクがあるため、値を丸める・匿名化するなど配慮しましょう。

とはいえ、ラフなデータ変換であればAIの活用は有望で、「PDFの検針票を読み取ってCSV化」「貼り付けた表を指定フォーマットCSVに変換」といった作業を飛躍的に効率化できる可能性があります。

データ欠損への対処

1年分のデマンドデータを扱う際、時に欠損値が存在することがあります(計器障害や通信不良で一部期間データが抜け落ちる等)。こうした欠損があるとシミュレーションに支障が出るため、補完が必要です。

簡便な補完法としては、前後の同曜日データから平均する、直前の値をそのままコピーする、過去または翌年の同日時データで埋める等が挙げられます。エネがえるBizでは欠損があるとエラーになるため、インポート前に必ず埋めておきます。大きな欠損(数日以上)の場合、同季節・同時間帯の平均負荷で穴埋めすると自然です。また「0」が正当な値なのか欠測なのか判別が難しい場合もありますが、日合計値の不整合などで判断可能です。欠損を放置すると計算結果が乱れるため、早めに検知して処置しましょう。

データの縦横変換

分析目的によってはデータの形状を変える必要があります。例えばエネがえる用に横持ちCSVを準備したが、社内の別システムでは縦持ち時系列で読み込ませるケースなどです。

Excel上では、横持ち→縦持ち変換にOFFSET関数のコピーPower Queryの転置機能が使えます。具体例: =OFFSET(Sheet1!$A$2, INT(ROW(A1)/48), MOD(ROW(A1),48), 1, 1) のような式を工夫すれば、一列に展開も可能です。プログラムなら単純なネストループで対応できます。

エネがえるBiz指定のCSVではヘッダー行の列数(24列か48列)で30分値か60分値かを判定しているため、インポート用に整形する際は列数ミスに注意してください。特にExcelで開いた際に列がずれたりしないよう、テンプレートのフォーマット(年,月,日,…の順)を崩さずに使います。

エネがえるの変換機能と自動化

エネがえるBiz自体は入力された30分値データを内部で60分値に集約して計算を行っています。例えば48コマのデータを取り込むと、自動的に各2コマずつ合計して24コマの1時間値系列に変換し、シミュレーション処理を実行します(表示上は元の細かいデータも保持)。したがって利用者側でわざわざ30分値から1時間値に平均し直す必要はありません。

注意点は、エネがえる指定CSVに入れる数値はkWh単位であることです。元データが30分平均kWのままだと2倍ずれますので、第2章の式で必ず0.5倍してから入力します。エネがえるBizには便利なことに、テンプレートCSV(sampledata.csv)も提供されており、ここに手元のデマンドデータを貼り付けていくだけで形式を合わせられます。

さらにExcelマクロやスクリプトで複数データを一括変換・結合することも可能でしょう。例えばチェーン店複数店舗の30分値を順次読み込み、店舗ごとにCSVを自動生成するバッチ処理を組めば、各店舗向けPVシミュレーション資料を効率よく作れます。最近のRPAツールを使えばExcel操作の自動化も難しくありません。**「脱Excelで自動化」**がキーワードとなる昨今、エネがえるBiz+データ処理スクリプト+AI補助を組み合わせ、人的負荷を減らす取り組みも進んでいます。

エネがえるCSVファイルのインポート仕様

usepowers.csvおよびusepowers30.csvはエネがえるBizのサンプルフォーマットです。usepowers30.csvは「年,月,日,0:00,…23:30」の列を持つ365行の30分値データで、単位はkWhになっています。usepowers.csvは同じデータを1時間値24コマにまとめたもので、列見出しが「年,月,日,0時,…23時」と日本語表記になっています。

エネがえるでは1行目は見出し行としてスキップされます。したがって自由にメモを書いても良いですが、列数だけは変えないようにしましょう。同封のsampledata.xlsxにはこれらの使用例が記載されており、データ貼り付け時の注意点(数値はkWh単位で、年始から365日分並べること等)が示されています。このようなテンプレートを活用すれば、異なる電力会社のフォーマットからでもコピー&ペースト+単位換算で素早くインポート用CSVを準備できます。デマンドデータは365日分と長いため、一見ハードルが高いですが、仕組みを作ってしまえば毎年の更新もスムーズです。

 

4. エネがえるBizの活用方法

30分デマンド値から自家消費シミュレーション

エネがえるBiz最大の特長は、365日分の30分(または60分)デマンドデータをCSVインポートするだけで、自家消費導入効果を自動診断できる点です。利用手順はシンプルで、新規施設登録時にサンプルCSVをダウンロードし、自社の電力データ(kWh単位)を貼り付け、アップロードするだけです。するとクラウド上でデータが読み込まれ、負荷曲線と太陽光発電・蓄電池モデルを重ね合わせたシミュレーションが実行されます。

出力されるレポートには、導入した場合の年間自家消費量(kWh)や自家消費率(%)余剰電力量余剰率電力購入量の削減額などが含まれ、グラフ付きでわかりやすくまとめられます。例えば「年間◯◯kWhを太陽光で賄い、うち△△kWh(XX%)は自家消費、残りは売電(または未利用)」といった指標が自動計算されます。この診断は非常に高速で、約10分でグラフ付きExcelレポートが自動作成できるとされています。煩雑なシミュレーション作業がクラウドにより大幅に短縮され、新人スタッフでも最短10分で提案書が作成可能という触れ込みです。

自動変換機能

前述のように、エネがえるBizは30分値CSVを取り込むと内部で1時間値に集約して処理します。また、業種別テンプレートとの併用も可能です。もし入力データが30分値ではなく1時間値(24コマ)でも、そのまま受け付けて正しく計算します。エネがえる側でフォーマットを自動判別し、時間分解能の違いを吸収してくれるため、ユーザーは自前で変換する必要がありません。

これは裏を返せば「もっと細かい15分値で入れたい」といった場合には対応していないということですが、30分または60分で十分実用上問題ないでしょう。さらに、太陽光パネルの発電入力についてはパワコン変換前のパネル発電量データを入れる仕様になっています。パワコンの変換効率や出力制限はシミュレーション設定時に別途パラメータ入力して反映させる設計です。そのため、もし手元のPV発電データがすでにパワコン出力ベースの値であれば、効率100%・出力十分大きめに設定することで差異を無くす対処も案内されています。このようにエネがえるBizはデータ変換や前処理の手間を極力減らす工夫がなされています。

業種別ロードカーブテンプレート

需要家によって負荷パターン(ロードカーブ)は異なりますが、エネがえるBizには業種別の標準ロードカーブがあらかじめ用意されています。これは、「デマンドデータが手元に無い場合でも業種と規模から概算シミュレーションができる」機能です。例えば工場、学校、病院、オフィスビルなど典型的な負荷パターンを持つ業種について、1日の24時間の負荷比率モデルが登録されています。

ユーザーは年間の総使用電力量や契約電力など最低限の情報を入力し、該当業種テンプレートと営業日/非営業日カレンダーを選ぶだけで、仮想的な365日負荷データを生成できます。これにより「まだ詳細データがない初期提案段階でも、ざっくり効果を示したい」ときに役立ちます。実際、月次の電気使用量(検針データ)12ヶ月分と業種を入れるだけで、自動的に日割り・時間配分してシミュレーションするロジックが備わっています。

もちろん精度は実データ利用に劣りますが、「太陽光を入れれば●割電気代削減」のようなスクリーニングには十分です。エネがえるBizは実データ活用とテンプレート活用の両面で、急増する自家消費提案の初期工数を削減することを目指しています。

BPOサービス(エネがえるBPO)の活用

エネがえるBizを提供する国際航業株式会社は、ソフト提供だけでなくBPO (Business Process Outsourcing) サービスも展開しています。エネがえるBPOでは、太陽光・蓄電池に関する様々な業務を専門チームにアウトソースできます。具体的なサービス内容は:

  1. 自家消費シミュレーション代行: エネがえるBizを使ったシミュレーション作業自体を依頼可能。需要家のデマンドデータや条件を渡せば、最適システム規模の検討や経済効果試算を代行してくれます。提案書の作成まで任せることもでき、単発の従量課金なので小規模案件だけ外注するといった柔軟な使い方ができます。

  2. 設備設計代行・設計支援: 太陽光発電システムや蓄電池の詳細設計をプロに任せられます。エネがえるのシミュレーション結果を踏まえて機器選定や配置図作成、接続設計など専門的な部分もカバー。大手メーカー出身のパートナー技術者が対応するため、信頼性の高い設計書が得られます。

  3. 補助金申請代行・各種手続き: 国や自治体の補助金申請書類の作成、さらには経産省の系統連系申請、エネルギー利用計画書作成など、導入前後の事務手続きを代行します。補助金情報も2000件以上のデータベースがあり、地域ごとの最新制度に精通しています。

  4. 教育研修代行: 自社スタッフ向けの太陽光・蓄電池研修の実施も請け負います。エネがえるの操作トレーニングから、太陽光・蓄電池の基礎知識、応用事例紹介までカリキュラムは多彩です。専門チームによる座学・実習で、人材育成をサポートしてくれます。

  5. その他サービス: 上記以外にもO&M(運用保守)計画策定支援や、需要家向けエネルギーコンサルティング、省エネ法対応書類作成など幅広いメニューがあります。要は再エネ関連業務をワンストップアウトソースできる体制が整っており、既に官公庁や大手企業も多数利用しています。

エネがえるBizユーザーにとってBPOは繁忙期の駆け込み寺のような存在です。例えば公募提案の締切が迫る中、詳細設計まで手が回らない場合にBPOをスポット利用すれば、案件獲得チャンスを逃さずに済むでしょう。また新規事業参入で自前にノウハウが無い企業も、BPOで支援を受けつつノウハウ移転することでスモールスタートが図れます。料金は案件ごとの従量課金ですが、社内で人件費と時間を費やすよりコストメリットが大きいケースも多々あります。エネがえるBiz+BPOを適切に使い分けることで、提案スピードと受注率の向上が期待できます。

ロードカーブ合成と複数拠点分析

エネがえるBizの応用編として、複数のデマンドデータを合成して分析する手法があります。例えば工場とオフィスビルが別契約で電力を受けているが、両者をまとめて1つの太陽光設備でカバーするシナリオを検討したい場合、それぞれの30分値を足し合わせた合成ロードカーブを作成します。

エネがえるには直接複数CSVを読み込む機能はありませんが、ユーザー側で事前に合成データを作れば1つの需要家として診断できます。需要パターンの合成は、VPP(バーチャルパワープラント)的に複数施設を束ねる検討にも有用です。例えばA工場とB工場の需要を合成し、その合計負荷に対して最適な太陽光・蓄電池容量を割り出す、といった分析も可能です。

エネがえるBPOに依頼すれば、こうした複雑なシナリオのシミュレーションも対応してくれるでしょう。さらに発展的には、需要データと発電データをマージして系統全体で見ることも考えられます(ただしエネがえるBizは需要家側システムなので発電側のみの合成には別途工夫要)。

ロードカーブ合成による分析は、需要の平滑化効果やデマンドレスポンスのポテンシャルを探る際にも役立ちます。異なる需要家同士でピークがずれる場合、合成すると相互にピークカットしあって設備容量を抑えられる、というケースもあるためです。エネがえるBizの計算ロジックと優れたUIを活用しつつ、発想次第で多彩なエネルギー戦略の検証が行えるでしょう。

 

5. 太陽光・パワコン・蓄電池の容量設計と最適化Tips

30分デマンドデータを活用すれば、太陽光発電パネルやパワーコンディショナ(パワコン:PCS)、蓄電池の容量最適設計に科学的根拠を与えることができます。ここでは、需要データに基づく設備容量決定の考え方や、エネがえるBizでそれを試行する際のポイントを解説します。また、太陽光・蓄電池導入後のデマンド削減効果についても触れます。

太陽光パネル容量の決め方

太陽光の容量(kW)は、大きければ発電量が増えますが自家消費率は低下し、余剰売電や出力抑制が増える傾向があります。一方、小さすぎるとピーク需要を賄いきれず削減効果が限定的です。最適容量を探すには、デマンドデータ上の昼間負荷と照らし合わせます。

例えば年間で最も日射条件が良い日の正午において、需要が100kWなら、太陽光を100kW程度まで増やしてもその瞬間は全量自家消費できます。しかし需要が低い休日昼などは余剰が出ます。一般に年間自家消費率が高くなる容量が経済的最適点になることが多く、エネがえるBizでは容量を変えてシミュレーション比較することで容易に検討できます。

実務上は「年間総発電量の◯%を自家消費できるか」「余剰売電しても投資回収に寄与するか」を基準に決めるケースがあります。例えば売電価格が低い昨今、自家消費率70%以上を目標に容量設定する、といった具合です。また将来的な需要増(設備増設やEV導入など)を見込んで、やや大きめにパネルを設計しておく判断もあります。この場合、初期は余剰が出ても後に無駄が減る計画です。

気候条件も考慮します。日射量の少ない冬場や曇天時にはいくら容量があっても発電しません。したがって「曇りの日でも一定の発電が期待できるよう大容量にする」戦略は、単独の太陽光ではなく蓄電池併用で初めて意味を持ちます(次述)。

パワコン容量と過積載

パワーコンディショナ(PCS、インバータ)の容量は、パネル容量と同程度または少し小さく設定されます。例えば過積載1.2倍とは、パネル100kWに対しPCS出力80kWとする設計です。過積載するとピーク発電時にPCS出力上限でカットされますが、朝夕など日射弱い時間帯の発電を底上げできます。

需要側から見ると、需要ピークが昼に集中するならPCS=需要ピーク程度で問題ありませんが、需要ピークが夕方なら昼の余剰を溜めて夕方に回す蓄電池が重要になります。パワコン容量は蓄電池の出力も合算して検討します。

エネがえるBizの設定画面では、パネル容量とパワコン容量比、それに伴う出力損失も織り込んで試算できるようになっています。実務Tipとして、**低圧連系(50kW未満)**ではパワコン容量50kWギリギリで設計することが多く、パネルは例えば60kW程度載せるケースが多々あります。この場合30分デマンドデータで見ると、晴天日の正午は余剰が出ますが、朝夕や薄曇り時はPCS容量いっぱい発電して需要をカバーできます。

高圧連系では契約電力や変圧器容量も踏まえ、PCSサイズ=契約電力~契約電力×数倍まで幅広く検討されます。デマンドデータで需要の山谷を把握し、典型日シナリオ(晴天ピーク日・雨天日・休日など)ごとに、太陽光+PCSの出力がどう需要を置き換えるか考えることが重要です。

蓄電池容量(kWhとkW)の決め方

蓄電池はエネルギー容量(kWh, 何時間分蓄えられるか)と出力(kW, 何kWで充放電できるか)の2軸でサイズを決めます。30分デマンドデータからは、典型的な余剰発電量夜間需要量が読み取れるため、それを基に蓄電池容量を検討します。

例えば日中太陽光余剰が最大で200kWh発生し、夜間に100kWhの追加需要があるなら、少なくとも200kWh程度の電池容量があれば余剰を全て貯めて夜に回せそうだ、と見積もれます。しかしコスト的に大容量電池は高額なので、妥協点を探す必要があります。

エネがえるBizでは蓄電池容量や出力を変えてシミュレーションできるので、経済性の高い組み合わせを見つけられます。「蓄電池無し」「100kWh 50kW出力の電池有り」など何パターンか試し、投資回収期間や電力削減額を比較すると良いでしょう。

一般に、デマンドピークカットが主目的なら出力(kW)重視、余剰有効活用や夜間シフトが主目的なら容量(kWh)重視で決めます。需要パターンによっては「日中ピークが高く夜間需要少ない」場合もあり、その際は蓄電池よりも太陽光で直接ピークを減らす方が効率的です。一方「昼はそうでもないが夕方にピーク」がある施設では太陽光だけでは契約電力を下げにくく、蓄電池で夕方ピークをカットする方が効果的です。

特に日本の夏場は夕方~夜にエアコンピークが来ることも多く、天候に左右される太陽光のみでは安定したデマンド削減が難しいため、蓄電池+デマンドコントロールシステムの併用が推奨されています。

エネがえるBizでの削減後デマンド確認

エネがえるBizの結果レポートでは、太陽光・蓄電池導入後の購入電力削減量最大需要電力の低減効果が提示されます。例えば基本料金が20%下がると○万円/年節約、といった指標です。これはシミュレーション上で削減後のロードカーブがどうなるか計算していることを意味します。

具体的には、元の30分デマンド値から太陽光自家消費分を差し引き、不足分は引き続き電力購入し、さらに蓄電池があれば余剰充電・放電を反映した新たな30分値系列を作っています。最大デマンド値はこの新しい系列の最大値となり、導入前と比較して何kW低減できたかが示されます。需要家にとってはここが重要で、契約電力を例えば「500kW→400kW」に減らせる試算なら基本料金大幅ダウンです。

ただし注意すべきは、天候や運用によっては想定通りデマンド削減できない可能性です。シミュレーション上は晴天前提で太陽光寄与を見積もりますが、現実には曇りや雨の日には太陽光出力が低下し、従来通りの電力購入が発生します。そのとき従来と同じピーク需要が出現すると、契約電力は下がりません。

これを防ぐには、蓄電池が保険になります。悪天候時でも蓄電池放電でピークを抑え、常にデマンド上限を一定値以下にコントロールできれば、契約電力そのものを引き下げ可能です。エネがえるBizの高度な使い方として、気象データを変えて曇天シナリオでのピークカットを検証することも考えられます。例えば真夏の曇り日でも太陽光+蓄電池で500kW→450kWに抑えられるか、といったケースです。結果次第では「基本料金は50kW分下げられる見込み」と評価できます。

容量最適化とは、このように様々な条件下で設備の働きをチェックし、設備容量とコスト・効果のバランスを探るプロセスです。現場では「あと○kWh電池を増やせば万一の曇天でもデマンド◯kW以下に収まる」など具体的な検討になります。それを裏付けるデータとして30分デマンド値は不可欠であり、需要と供給の細かな噛み合わせを考えるほど価値を発揮します。

その他のTips

  • 季節変動への対応: 太陽光発電は夏に多く冬に少ないため、冬季のデマンドピーク対策には蓄電池や需要側調整が重要です(例:ヒートポンプ蓄熱で電力需要を深夜シフトなど)。

  • 負荷削減との組み合わせ: 省エネで絶対需要量自体を減らせれば、必要な太陽光容量も小さくて済みます。30分データから稼働スケジュールを見直し、ピークカットに寄与する省エネ対策(需要応答照明制御等)を盛り込むと、設備容量の過剰投資を防げます。

  • 経済性評価: 設備容量の最適化には経済評価も絡みます。エネがえるBizのレポートには初期コストと年間削減額から投資回収年数が算出されます。容量を増やすと効果も増えるが費用も増えるため、そのトレードオフを見極めます。例えば蓄電池をもう1台追加すると回収期間が急伸するなら、その手前が適正規模となります。

  • 実運用の計画: シミュレーションでは最大限有効利用する前提ですが、実際には「蓄電池残量が不足してピーク時放電できなかった」といったことも起こりえます。そこで、**エネルギーマネジメントシステム(EMS)**を導入して、天気予報や負荷予測を踏まえた蓄電池充放電スケジュールを組むことが理想です。こうした運用最適化まで含めると、デマンドデータとAI予測技術の融合領域になります(将来展望にて後述)。

6. デマンドデータにまつわる雑学・トレンド・科学的背景と将来展望

最後に、30分デマンドデータの周辺知識や最新トレンド、将来的な活用可能性について触れておきます。電力の需要パターンはエネルギー業界の様々な分野と関係しており、ロードマネジメント(負荷管理)や系統安定化需給調整力の提供など、大きな可能性を秘めています。

日本と海外の違い(雑学)

実は30分間隔で需要計測するのは日本やイギリス・オーストラリアなど一部で、15分間隔を採用する国(例: 米国や欧州大陸の多く)もあります。これは歴史的に電力量計の仕様や系統周波数(50/60Hz)との関係で決まった経緯があります。

日本では旧電力会社時代から30分最大需要を契約電力算定に用いてきた文化があり、スマートメーターになった今も30分単位が標準です。ちなみにスマートメーター自体はもっと細かいデータ(瞬時電力値や1分値パルスなど)を持っていますが、実務利用するデマンド値は30分単位に集約されています。

需要率という指標がありますが、これは「設備容量に対する実使用ピーク割合」で、日本では30分値最大/契約容量で算出します。欧米のデマンドチャージ(需要料金)は15分値で見ることも多く、単位もkWよりkVA(無効電力を含む見かけ電力)を使う地域もあります。こうした違いはありますが、原理は同じく「一定期間の平均最大需要」に基づく料金体系となっています。

ロードマネジメントとデマンドレスポンス

ロードマネジメントとは需要家側で負荷を制御し、ピークシフトやピークカットを図ることです。30分デマンドデータはその評価指標として不可欠で、エネルギーマネジメント(BEMS/FEMS)では過去のデータから目標デマンド値を設定し、リアルタイムで超過しそうになると自動制御を掛けます。例えば工場で空調負荷や蓄熱槽の運転を調整し、最大需要を所定値以下に収めることで基本料金を削減します。

最近ではこのロードマネジメントの延長線上に、デマンドレスポンス(DR)という概念があります。DRは需要家が電力消費を一時的に増減させることで、電力系統全体の需給バランス調整に協力する仕組みです。再生可能エネルギーの普及で供給変動が大きくなる中、供給側だけでなく需要側も調整力を提供することが期待されています。

具体的には、需給ひっ迫時に工場や商業ビルが事前契約に基づき負荷を落とし(ネガワット供給)、逆に余剰電力時にはヒートポンプ等を稼働させて消費を増やす、といった取り組みです。これらはアグリゲーターと呼ばれる仲介事業者によって束ねられ、数万~数十万kW規模の調整力として市場取引され始めています。

当然、基礎となるのは需要家それぞれのデマンドデータです。過去の30分値から「どの時間帯に何kW落とせるか」「通知から何分で応答できるか」といった需要家特性を分析し、調整力メニューが作られます。現在、日本でも需給調整市場が開設され、調整力商品としてDRが取引されつつあります。例えば東京エリアで2022年6月に需給ひっ迫注意報が出た際、DR要請によって推定33万kWの需要抑制が行われたとの報告もあります。

今後デマンドデータは単なる自社の省エネツールに留まらず、エネルギー市場の資源として活用される時代になっていくでしょう。

AIと需要予測

科学的背景として、電力需要の予測は古くから研究されていますが、近年は**AI(人工知能)**の力で精度が向上しています。過去の30分値データと気象データ、曜日情報などを機械学習モデルに学習させ、翌日の需要カーブを予測する技術が実用化しています。

需要家側でも、工場操業計画や天気予報をもとに次週のデマンドピークを予測し、早めに蓄電池充放電計画を立てるようなデマンド予知制御が可能です。またAIは需要だけでなく太陽光発電量の予測にも活用でき、両者を組み合わせて「翌日はピークが○時頃で太陽光出力不足だから電池を前日夜から満充電しておこう」といった判断支援ができます。

エネがえるBizでも将来的に、実デマンドデータを蓄積してAI解析し、より洗練された提案(例えば最適契約メニューの選定やEV充放電スケジュール案提示など)を行うことが考えられます。さらに国家レベルでは、スマートグリッドVPP(仮想発電所)の文脈で需要側データのリアルタイム収集・解析が進んでいます。総括すると、デマンドデータはビッグデータの一部となり、AIとIoT技術によりエネルギーの需給バランス最適化に寄与する方向です。

需給調整力と今後の電力市場

前述のDRやVPPの話と関連しますが、日本の電力市場では調整力(バランシング)の重

要性が増しています。2024年度からは容量市場需給調整市場が本格稼働し、需要家側リソース(デマンドレスポンスや蓄電池)がキロワット単位で価値を持つようになります。企業が自家消費型太陽光・蓄電池を入れる理由も、「電気代削減」だけでなく「非常時の自立」「環境貢献」に加え、「余力を市場で売る」というビジネス視点が出てきました。

例えば蓄電池を導入して、普段はピークシフトで基本料金を抑えつつ、緊急時には系統へ放電して報酬を得る、といったモデルです。デマンドデータはこうした高度なエネルギー取引の実績評価インセンティブ精算の基礎データにもなります。将来はブロックチェーン技術等で需要抑制量がトラッキングされ、需要家同士がピアツーピアで融通しあうような世界も構想されています。いずれにせよ、需要を細かく計測・制御する仕組みがカギとなり、そのコアが30分デマンドデータと言えるでしょう。

まとめと展望

30分デマンドデータは単なる過去の電力使用履歴ですが、適切に解析すればエネルギーマネジメントの宝の山です。省エネ・再エネの最適化から、電力契約の見直し、ひいてはエネルギー市場での新たな収益機会まで繋がっています。

自治体では公共施設群のデマンドデータを集約分析して、需要の谷間時間に新エネ導入を計画したり、地域内の需要調整力を算定してレジリエンス強化策に役立てたりする動きもあります。また需給一体となったスマートシティでは、住宅のHEMSデータやEVの充放電データまで含めてエリア全体の需給バランスをAI制御する実証も始まっています。これら最先端の取組にも、基本要素として各需要家の時系列デマンドデータが欠かせません。

発電側のデータ(太陽光や風力の出力予測など)と需要側データがリアルタイムでマッチングすることで、将来的には完全自律分散型のエネルギーインターネットが実現するとも言われます。そこでは、お互いの需要ピークを融通し合い、無駄なく再エネを活用する社会が目標です。その第一歩として、まず自社の30分デマンドデータをしっかり解析・理解することが重要です。**「電力の見える化」から始まり、「賢いエネルギー利用」へ。そして余力を「価値ある電力リソース」**として活用する未来へ——30分デマンドデータは、エネルギーの未来を切り拓くキー情報なのです。

出典・参考URL

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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