目次
- 1 GX時代のエネルギー新価値創造:エネがえるAPI×3D都市モデルが拓くスマートシティ8選
- 2 10秒で読める要約
- 3 はじめに
- 4 1. 自治体主導の自家消費型ソーラー+蓄電池地域導入戦略
- 5 2. 太陽光パネル義務化政策支援:建築物評価と最適提案モデル
- 6 3. EV・V2H+太陽光+蓄電池による家庭GXシナリオ
- 7 4. 地域冷暖房+再エネマネジメントによる街区エネルギー最適化
- 8 5. 補助金×電気料金API×シミュレーターによる中小企業エネルギー支援
- 9 6. 災害レジリエンス向上のための気象連動型蓄電池制御
- 10 7. スマートシティ実証フィールドにおける3D都市モデル活用とAPI統合
- 11 8. Unreal EngineによるGX学習&住民合意形成のXRアプローチ
- 12 おわりに:新たなエネルギー価値創造への道筋
- 13 参考文献・出典
GX時代のエネルギー新価値創造:エネがえるAPI×3D都市モデルが拓くスマートシティ8選
10秒で読める要約
エネがえるAPIと3D都市モデル(PLATEAU)を組み合わせることで、太陽光発電や蓄電池、EV等の導入効果を可視化し、地域脱炭素化から災害対策まで幅広いスマートシティ実装が可能になる。本記事では自治体主導の太陽光導入戦略、義務化対応支援、家庭向けEV活用、街区エネルギー最適化など8つの革新的ユースケースを紹介する。
参考:エネがえるAPIで実現する業界別新規事業10選:最小の努力で最大のインパクトを生み出す脱炭素戦略
参考:「自治体スマエネ補助金データAPIサービス」を提供開始 ~約2,000件に及ぶ補助金情報活用のDXを推進し、開発工数削減とシステム連携を強化~ | 国際航業株式会社
参考:3D都市モデル PLATEAU | 商品・サービス | 国際航業株式会社
はじめに
2050年カーボンニュートラル実現に向け、グリーントランスフォーメーション(GX)を加速する鍵となるのが再生可能エネルギーの地域導入とスマートシティ化です。しかし実際には、「導入メリットの可視化や経済効果の試算が難しく伝わりづらい」ことや、膨大な電気料金プラン・補助金情報の探索と提示に手間がかかることがボトルネックとなっています。こうした課題を解決するソリューションとして注目されているのがエネがえるAPIです。
エネがえるAPIとは:国際航業株式会社が提供するB2B向けのエネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」を、外部システムから利用可能にしたREST APIサービスです。住宅用から産業用まで幅広く対応し、太陽光発電・蓄電池の経済効果シミュレーションに加え、EV・V2H(Vehicle to Home)や充電器の導入効果、最新の電気料金プラン情報や自治体補助金情報まで網羅しています。エネがえるAPIを使えば、自社Webサイトやアプリに電気料金プラン診断、太陽光・蓄電池のシミュレーターを短期間・低コストで組み込むことができ、専門知識がなくても高度なエネルギーシミュレーションを実現できます。
さらに近年のアップデートで、エネがえるAPIはリアルタイムデータ連携や最適制御にも対応しました。蓄電池の最適スケジュール作成機能や気象データ連動制御API(気象警報や需要予測、日射量予測の提供)など、実運用に踏み込んだ高度機能も利用可能です。これにより政策立案者や自治体職員、エネルギー事業者からスタートアップまで、創エネ・蓄エネ・省エネ施策を具体化する強力なツールとなっています。
本記事では、エネがえるAPIと3D都市モデル(Project PLATEAU)やSolarPotentialデータ、ゲームエンジン(Unity/Unreal Engine)などの最新テクノロジーを組み合わせ、GX(グリーントランスフォーメーション)や再エネ導入、地域脱炭素、スマートシティ構築に向けてどのような新しい価値創造が可能かを、8つのハイパーリアルなユースケースを通じて考察します。各ユースケースでは、エネがえるAPIの高度な活用知見を織り交ぜ、読者が「自分たちでも実装してみたい」「ぜひ相談したい」と感じられるような具体的なシナリオを描いています。
それでは、新たなエネルギー活用の未来像を順に見ていきましょう。
1. 自治体主導の自家消費型ソーラー+蓄電池地域導入戦略
地域全体で再エネを推進するアプローチ
地域全体で創エネ・蓄エネを推進し、電力の地産地消とレジリエンス向上を図る自治体主導のプロジェクトです。自治体が地域内の住宅や公共施設、事業所に自家消費型の太陽光発電+蓄電池をまとめて導入する戦略を策定・実施します。
3D都市モデルを活用したソーラーポテンシャル調査
具体的には、まず市区町村がProject PLATEAUの3D都市モデルと環境データを活用して地域内建物の太陽光発電ポテンシャルを調査します。3D都市モデル上で各建物の屋根・壁面の日射量をシミュレーションすることで、建物ごとの年間発電可能量を推計します。例えば、横浜市では国交省と連携し、3D都市モデルと気象データを組み合わせて都市部建物壁面の発電ポテンシャルを推計する実証が行われています。このように地域全域のソーラーポテンシャルを見える化することで、どの地区・建物にどれだけ太陽光を設置すれば効果的かを科学的に把握できます。
エネがえるAPIによる経済性シミュレーション
次に、そのポテンシャル情報をもとにエネがえるAPIで経済性シミュレーションを行います。例えば、市内の平均的な戸建住宅モデルについて、5kWの太陽光パネルと5kWhの蓄電池を導入した場合の経済効果を算出します。エネがえるAPIなら、住宅用の太陽光・蓄電池導入による電気代削減額や投資回収年数を、電力会社ごとの料金プランや燃料調整費まで考慮して正確に試算可能です。また産業用需要家向けにも同様に、工場やビルでの自家消費型PV+蓄電池の効果をシミュレーションできます。これらの試算結果を集約し、市全体で年間〇MWhの再エネ電力創出・〇トンのCO2削減が見込める、といった地域スケールの効果予測をレポートします。
住民向け説明会と一括導入プログラム
自治体はこのデータに基づき、市民向け説明会や事業者向け提案を行います。例えば、「○○市エネルギー地産地消プロジェクト」として、希望する住宅オーナーに一括で太陽光+蓄電池を導入するプログラムを企画します。エネがえるAPIで得た経済メリットの見える化は、市民の不安や疑問を解消する強力な後押しになります。「あなたのご家庭では、5kWの太陽光で年間約¥120,000の電気代削減が見込まれます。蓄電池併用でエネルギー自給率が向上し、停電時も安心です」といった具体的数字を示せるため、住民の導入意欲を高めることができます。
太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは?
スケールメリットと効率的施工
さらに、この地域導入戦略では自治体が主導することで、スケールメリットを活かしたコスト削減や効率的施工も可能になります。多数の住宅をパッケージで導入すれば機器調達費や工事費の低減が期待でき、補助金申請も取りまとめて代行できます。エネがえるAPIには全国約2,000件の自治体補助金情報を参照できる機能もあり、地域住民が利用可能な補助金を漏れなく活用することができます。
このように、データドリブンな計画策定と大規模導入によって、自治体は地域全体の再エネ導入を力強く推進できます。結果として、平常時は電力の地産地消による経済循環が生まれ、非常時には各家庭の蓄電池が分散型エネルギーバックアップとなって地域のレジリエンス(災害対応力)が向上します。自治体職員にとっても、エネがえるAPI+3D都市モデルというツールセットは、エネルギー施策を立案・実行するうえで心強い味方となるでしょう。「数字に裏付けられた説得力」と「わかりやすいビジュアル」で、政策立案から住民合意形成までを一貫支援できるのです。
2. 太陽光パネル義務化政策支援:建築物評価と最適提案モデル
太陽光発電設置義務化の背景と課題
近年、東京都を皮切りに新築建築物への太陽光発電パネル設置義務化の動きが広がっています。東京都では2025年4月より、大手ハウスメーカーが手掛ける延床2,000㎡未満の新築住宅等に太陽光パネル設置を義務付ける制度が始まりました。都市部での住宅太陽光普及が目的ですが、建物ごとに条件が異なり、一律に同じ容量を載せれば良いわけではありません。屋根の形状・方角・周辺の影などにより発電量は左右され、過剰な設備はコスト増につながります。そこで一棟ごとに最適なパネル配置・容量を見極める評価モデルが求められます。
参考:太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは?
ステップ1:建物ポテンシャル評価
Project PLATEAUの3D都市モデルデータとSolarPotential解析ツールを用いて、新築予定建物や既存建物の日射ポテンシャル評価を行います。具体的には、建物の屋根や壁面について、年間どの程度の日射が得られるかをシミュレーションします。PLATEAUには建物形状データに「太陽光発電ポテンシャル」が組み込まれている場合があり、これを使うと「どこにパネルを設置すればどれくらいのエネルギーを賄えるか」が見積もれるようになります。例えば、建物の南向き屋根(傾斜○度、面積○㎡)では年間△kWh、東西壁面では△kWhの発電が可能、といった具合です。
また、Unityなどゲームエンジンを活用し詳細な影シミュレーションも行います。エネがえるチームの取り組みでは、Unity上に仮想の太陽を設定し時刻ごとに建物の影を計算することで、壁面の直射・反射日射を精密に評価する技術が開発されています。LOD2精度の3Dモデルを用いれば、周辺高層建築の影響による発電量低下も織り込めます。こうして得られた日射分布データから、**その建物の「ソーラースコア」**を算出します(例:100点中80点なら太陽光適性高、など)。
ステップ2:エネがえるAPIによる最適プランニング
次に、エネがえるAPIを使って経済性シミュレーションと最適容量の探索を行います。例えばある住宅に対し、パネル容量を1kW刻み、蓄電池も有無で組み合わせを変えてシミュレーションし、最も投資対効果の高いプランを選定します。エネがえるAPIは時間帯別の電力需要や日射量、電気料金体系を考慮して年間の電気代削減額や余剰売電収入を算出できます。そのため、義務化対応に必要な最小容量を満たしつつ、「余剰を多く載せすぎても元が取れない」場合には適度に抑える、といった最適解探しが容易になります。
またエネがえるBPOを使えばそれらの業務のアウトソーシングや代行も可能です。
例えば、東京エリアの一般家庭で4kW・6kW・8kWのパネルを比較した場合をシミュレーションすると、6kWまでは設置量増加に比例して電気代削減効果も高まるが、8kWにすると余剰売電が増えるものの売電単価低下や初期費用の回収に時間がかかりメリットが頭打ち、といった結果が得られたとします。この場合、義務容量が4kWなら推奨プランは6kW程度に留め、蓄電池は導入せずV2H対応のみ行う、といった提案が考えられます。あるいは共働き世帯なら日中余剰が多く出るので蓄電池追加で夜間利用を増やす、といったライフスタイルに応じたカスタマイズも可能です。
ステップ3:提案書の自動生成とフィードバック
エネがえるの強みの一つは、試算結果をもとに需要家向け提案書を自動生成できる点です。シミュレーション結果(年間発電量〇kWh、自己消費率〇%、電気代△万円削減、CO2削減▲kg等)を図表入りのレポートとしてまとめ、建築主や住宅購入者に提示します。これにより、義務対応のための追加コストがどのように回収できるのか、平易な形で伝えることができます。「太陽光パネル設置によって電力自給率が○○%に向上し、エネルギーの自給自足が実現します。電力コストも長期的に安定し、将来の電気料金上昇リスクを低減できます」といった具体的メリットが示されれば、建物所有者も前向きに受け入れやすくなるでしょう。
また、提案内容に対するフィードバックデータを蓄積することで、モデル自体の精度向上も図れます。例えば「実際の発電量が予測を上回った/下回った」といった事後データを収集し、次回以降のシミュレーションに反映するPDCAサイクルを回します。エネがえるAPIは実測消費データとの連携やAI解析にも対応可能なので、こうした予測モデルの高度化にも活用できます。
以上の流れにより、行政は太陽光義務化を円滑に進めることができます。義務の対象者(住宅メーカー等)にとっても、建物ごとに緻密なシミュレーション結果と最適プランを提供してもらえることで、過度な負担感なく施策に応じることができるでしょう。これは単なる規制遵守に留まらず、建築物のエネルギー性能向上と長期的な価値アップにもつながります。加えて地域全体では太陽光発電容量の増加によるCO2削減効果が得られ、自治体の脱炭素目標達成に大きく寄与します。
参考:自治体の脱炭素施策を加速! エネがえるで始める経済効果シミュレーションの活用法 | エネがえる総合ブログ – コラム | 商品・サービス | 国際航業株式会社
参考:太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは?
3. EV・V2H+太陽光+蓄電池による家庭GXシナリオ
家庭エネルギー自給の全体像
GXを身近に実感できるユースケースとして、家庭規模で電気自動車(EV)+V2H+太陽光発電+蓄電池を組み合わせたエネルギー自給シナリオを描いてみましょう。ここでは典型的な戸建住宅を例に、エネがえるAPIで最適なエネルギー運用をシミュレーションし、家計にも環境にも優しいスマートホームを実現するストーリーです。
シナリオ設定と運用戦略
郊外に住むAさん一家(4人家族)は、ガソリン車からEVへの乗り換えを機に、自宅のエネルギーをできる限り自給自足に近づけたいと考えました。屋根には5kWの太陽光パネルを設置済みで、今回新たにEVと連携できるV2H機器、および家庭用蓄電池(容量10kWh)を導入しました。昼間は太陽光で発電し、夜間や非常時にはEVの大容量バッテリー(例えば60kWh)も活用することで、「創・蓄・充」のフル活用によるエネルギーマネジメントを目指します。
エネがえるAPIでのシミュレーションでは、Aさん一家の日々の電力使用パターン(朝晩に消費ピーク、日中は在宅者少なめ等)と太陽光発電の予測発電量、およびEVの走行予定(平日は通勤で往復30km、夜間帰宅)などの情報を入力し、年間スケジュールシミュレーションを行います。APIは時間帯別に電力収支を計算し、グラフ化された結果から次のような運用戦略が浮かび上がりました。
- 日中:太陽光発電で家庭内消費をまかない、余剰電力はまず蓄電池に充電。それでも余ればEVにも充電(自宅駐車中の場合)し、さらに余った分のみグリッドに売電。
- 夕方~夜:太陽光が止まった後は、夕食時など家の需要が増えるタイミングで蓄電池から放電して賄う。不足分はEVからの給電(V2H)で補完。これにより高額な買電を極力ゼロに近づける。
- 深夜:電力料金が安価な深夜帯(または再生可能エネルギー比率の高い深夜電力)を利用し、必要に応じてEVを充電。ただし翌日の日照予報が良ければ深夜充電量は控えめにして、太陽光でまかなう計画とする。
- 非常時:台風など災害で停電した場合は、EVから家庭への給電を優先しつつ、冷蔵庫など重要負荷を一定時間以上稼働維持できるよう制御。60kWhのEVバッテリーは平均家庭数日分の電力に相当し、緊急電源として機能。
参考:住宅用太陽光発電+定置型蓄電池+EV+V2H導入の経済効果を5分で簡単診断 | 国際航業株式会社のプレスリリース
シミュレーション結果と想定効果
エネがえるAPIの計算によれば、上記のように運用することで年間の電力自給率は80%以上となり、電気料金の大幅削減とCO2排出削減が実現できる見込みです。特にV2Hを組み合わせた効果は大きく、年間電気代は導入前に比べ約○○万円削減、CO2排出も△△kg減少すると試算されました。また、電力系統から購入する電力量が激減するため、エネルギー価格高騰や将来の料金変動に対しても家計の安定性が高まります。
さらにエネがえるAPIの出力を分析すると、蓄電池とEVの充放電タイミングの最適化で余剰太陽光の有効利用率が飛躍的に高まることがわかりました。単に太陽光と蓄電池だけでは晴天日の余剰を全て吸収しきれない場合でも、EVが「もう一台の大型蓄電池」として機能することで無駄な売電を減らし、その電力を夜間に活用できています。いわゆる**トリブリッドシステム(太陽光+蓄電池+EV)**の効果であり、エネがえるAPIのシミュレーションでもエネルギー自給率向上と環境負荷低減が確認されています。
想定される実装効果:1年後の変化
Aさん宅ではこのシナリオ通りのエネルギー運用を開始し、1年後には以下の成果が得られました。
- 年間消費電力量のうち85%を自家発電で供給(残り15%のみ系統から購入)。エネルギー自給自足の暮らしを実感。
- 電気料金は前年の約30万円から8万円へと大幅減少(太陽光・V2H・蓄電池導入によるコスト削減効果)。
- EVは日常の交通手段であると同時に移動可能な蓄電池となり、災害時にも2日間以上の連続停電に耐えられるバックアップ電源を確保。
- CO2排出量は自家用車の電動化と相まって年間▲▲kg削減(森林△本分の吸収量に相当)、家庭のカーボンフットプリントを劇的に低減。
Aさん一家は「電力会社からほとんど電気を買わずに生活できるなんて思わなかった。エネルギーの自給自足を楽しんでいる」という実感を語っています。また近所でもこの成功が評判となり、同様のV2H付き太陽光システムを導入する家庭が増えてきました。地域全体でもピーク時の系統電力需要が下がり、分散エネによるレジリエントな住宅地モデルとして注目されています。
このように、エネがえるAPIを活用すれば家庭レベルでもGXの具体像をシミュレーションし実現できます。電力の地産地消やEV活用による新たなライフスタイルは、脱炭素だけでなく電気代高騰への対策としても有効であり、多くの家庭にとって現実的な選択肢となりつつあります。自治体やエネルギー事業者は、このような成功事例をモデルケースとして発信し、地域住民への普及啓発や支援策(補助金や税優遇)に繋げることができるでしょう。
4. 地域冷暖房+再エネマネジメントによる街区エネルギー最適化
街区単位でのエネルギー最適利用の概要
次は少し視点を変えて、都市の街区単位でエネルギーを最適利用するユースケースです。オフィスビルや商業施設が集積する街区において、「地域冷暖房(DHC:District Heating & Cooling)」と再生可能エネルギーを組み合わせ、電力と熱の統合的なマネジメントを行うシナリオを考えます。エネがえるAPIをコアに、電気と熱エネルギーの両面で最適制御を図り、街区全体の省エネ・脱炭素とコスト削減を実現します。
シナリオ背景と多様なエネルギー源の統合
ある新興ビジネス地区では、大規模再開発に合わせて地域冷暖房プラントが導入されました。このプラントはエリア内の複数ビルに冷水や温水を配管供給し、各ビル個別でなく集中して空調需要を賄います。加えて、街区内のビル屋上には太陽光パネルが合計2MW分設置され、大型の蓄電池システムも配備されました。電力についてはコージェネレーション(ガスコジェネ)もあり、排熱をDHCに有効活用しています。まさに電気+熱の面的利用を追求したスマートエネルギーネットワークです。この街区を運営するエネルギーセンターは、需要と供給のバランスを最適化してCO2排出を削減しつつ、経済性も確保することがミッションです。
マルチエネルギー管理の課題
エネルギーセンターは、時間帯によって変動するビル群の電力需要と冷暖房需要を予測し、以下を調整する必要があります。
- コージェネによる発電量と排熱量のコントロール
- 太陽光発電の出力変動への対応(晴天時は余剰、曇天時は不足)
- 蓄電池の充放電スケジュール(ピークシフトや非常用)
- DHCプラントの高効率稼働(タンクへの蓄熱・放熱タイミング調整 等)
- 系統電力の購入・売電計画(電力市場価格も考慮)
これらは複雑に絡み合うマルチエネルギー管理問題であり、エネがえるAPIや周辺技術の出番となります。
エネがえるAPIによるシミュレーション最適化(要個別開発)
まずエネがえるAPIに街区全体のエネルギー設備と需要データを入力し、年間を通じたエネルギー収支モデルを構築します。産業用(高圧)向けのエネがえるBiz APIを使えば、365日×1時間単位で需要と発電をシミュレートできます。例えば、夏季の平日ピーク時には電力需要10MW・冷房需要8MW相当、太陽光発電2MW寄与、コージェネ5MW発電(うち廃熱4MWを冷房に利用)…といったバランスを1時間ごとに計算し、最適な設備稼働計画を探ります。
この最適化では複数の目的を調整します。CO2削減のためには可能な限り再エネ・未利用エネルギーを活用したい一方で、経済性を考えれば電力は安価な時間帯に購入し高騰時は抑える必要があります。また、需要家(テナント)へのエネルギー供給品質も確保しなければなりません。エネがえるAPIから得られる細かな経済効果指標(燃料費、電気代、売電収入等)をもとに、例えば以下の戦略を導きます。
- 晴れの日中は太陽光発電をフル活用し、ビル電力の50%以上を自給。余剰電力は蓄電池に充電し、夜間や需要ピーク時に放出して使用。
- コージェネは電力需要が高く系統電力が割高な時間帯に稼働し、発電電力でビル需要を補いながら、発生する熱をDHCの冷温水供給に再利用。これによりエネルギーの総合効率を向上。
- DHCプラントでは夜間の安価電力で冷熱を蓄えておき、日中ピークに放出する蓄熱運用を実施。これにより昼間の電力ピークカットを達成し契約電力を低減。
- 電力市場の動向も踏まえ、余剰が出る場合は逆に市場に売電して収益化(特に真夏の午後など価格高騰時)。
エネがえるAPIは単独では熱需要のシミュレーションはカバー範囲外ですが、ここでオープンソースのエネルギーモデリングツール(例えばEnergyPlusやModelica系ツール)と連携します。ビルの空調負荷やDHCネットワークの動態を別途シミュレートし、その結果をエネがえるAPIの電力需給モデルにフィードバックする形です。つまり、熱と電気のデジタルツインを統合運用するイメージです。近年のスマートシティ実証では、こうしたマルチエネルギーの面的利用で大きな省エネ効果が報告されています。地域冷暖房はスケールメリットを活かして高効率設備を導入でき、再生可能エネルギーや未利用エネルギーも受け入れることで街区全体の脱炭素化に大きく貢献します。
想定される運用効果:データ駆動の成果
シミュレーションに基づく運用を1年間行った結果、この街区では以下の実績が得られました。
- CO2排出量40%削減(基準年比):太陽光やコージェネ排熱利用により大幅な低炭素化。
- ピーク電力30%カット:蓄電池・蓄熱の活用でピークシフトを達成し、電力契約コスト削減。
- 年間エネルギーコスト20%削減:高負荷時の系統購入を減らし、余剰時の売電収入も得ることでトータルコストを削減。
- ビルテナントへの冷暖房供給は安定化し、温度ムラや供給不足もなく快適性を維持。
また、本システムはデマンドレスポンスにも対応しており、電力需給ひっ迫時には自律的に需要を抑制して地域の安定供給に寄与します。街区規模で見れば、大規模ビル間で融通しあうことでエネルギー利用の効率化と信頼性向上が両立できています。日本熱供給事業協会によれば、地域冷暖房は個別ビルでは活用しづらい未利用エネルギー(例:下水熱、工場排熱等)を地域全体に供給することで大幅な省エネを実現することも可能です。本街区でも、近隣工場の余熱を取り入れる検討が進んでおり、将来的な更なる脱炭素化が見込まれます。
このユースケースは、都市部の再開発やスマートシティでエネルギーを面的(エリア全体)に最適化する好例です。電力と熱を一体でマネジメントする発想は、ゼロエネルギービル(ZEB)やゼロエネルギー街区の実現に向けた重要なステップです。エネがえるAPIは電力側のシミュレーションエンジンとして、熱側システムとのインターフェースを取ることで、街区エネルギー管理(AEMS: Area Energy Management System)の中核を担えるでしょう。エネルギー事業者や都市デベロッパーにとって、データを駆使した街区エネルギー最適化は他都市との差別化要素にもなり、環境先進都市としてのブランディング強化にもつながります。
5. 補助金×電気料金API×シミュレーターによる中小企業エネルギー支援
中小企業向けGX支援の必要性
中小企業にとってもGXや省エネは重要な課題ですが、専門人材や情報不足から対応が遅れがちです。そこで、エネがえるAPIを活用して**「補助金情報+電気料金API+経済効果シミュレーター」**を一体化した支援ツールを構築し、中小企業の再エネ・省エネ投資を後押しするユースケースです。
参考:「自治体スマエネ補助金データAPIサービス」を提供開始 ~約2,000件に及ぶ補助金情報活用のDXを推進し、開発工数削減とシステム連携を強化~ | 国際航業株式会社
課題の整理と具体例
例えば地方のある製造業の中小企業B社(従業員50名)。電気炉や空調に年間数十万kWhの電力を使用しており、電気代高騰に頭を悩ませています。太陽光パネルの設置や高効率設備への更新を検討したいものの、「補助金制度が色々あると聞くが自社に使えるものが分からない」「複雑な電力契約プランの見直しも手が付けられない」「投資して元が取れるのか計算できない」といった状況で踏み出せずにいました。
ワンストップ支援ツールの構築
エネがえるAPIを組み込んだウェブシミュレーターを開発し、B社のような中小企業が自社のデータを入力するだけで最適な省エネ施策プランと経済効果見通しが得られるようにします。ポイントは以下の3点です。
1. 全国の補助金データベースとの連携
エネがえるAPIには「全国自治体スマエネ補助金参照API」があり、約2,000件の補助金情報を月次更新で提供しています。これを活用し、ユーザが所在地や事業種別を入力すると利用可能な補助金メニューを自動検索・表示します。国・県・市町村それぞれの補助金(例:太陽光設備補助○○円/kW、蓄電池補助上限△△円等)が一覧化され、条件に合致するものがひと目で分かります。
2. 電気料金プランAPIとの連携
エネがえるAPIの電気料金プラン参照機能により、最新の電力料金単価・メニューを取得します。100社・3,000プランに及ぶデータベースから、ユーザが契約中の電力会社・契約種別に対応する料金体系を自動適用できます。これにより「現在の年間電気代」を正確に算出するとともに、別プランへ切り替えた場合のコスト比較も容易になります。例えば、従量電灯Xから時間帯別料金メニューYに変えた場合や、新電力Z社に乗り換えた場合の料金差を瞬時に試算できます。中小企業にとって電力契約を見直すチャンスであり、シミュレーター上で最安プランの検討ができるのは大きなメリットです。
3. 経済効果シミュレーション
上記補助金適用後の初期コストと料金プラン変更後の電気代を踏まえ、太陽光や蓄電池、省エネ設備導入の経済効果をシミュレーションします。エネがえるAPI(住宅用・産業用両対応)で、例えば「50kWの太陽光+20kWh蓄電池導入」ケースを試算すれば、年間電気代△△万円削減、補助金適用後の自己負担□年で回収といった結果が得られます。さらに需要パターンや設備容量を変えて複数シナリオを比較し、最適案を提示します。B社の場合、昼間の使用量が多いので50kWの太陽光はほぼ自家消費でき、蓄電池はピークカットと夜間需要対応に有効、と分かれば導入効果はかなり高そうだ、と判断できます。
シミュレーター出力と経営判断への想定される効果
B社が自社データ(年間電力使用量、負荷パターン、契約情報 等)を入力し、「太陽光+省エネ診断」を実行したところ、以下の結果レポートが生成されました。
- 現行の電気料金プラン(地域電力・従量制)では年間電気代が約800万円。新電力の時間帯別プランに変更すると約720万円に圧縮可能であることが判明(約10%の電気代削減)。
- 太陽光50kW導入時の年間発電量は△△MWhで、そのうち90%を工場内で消費可能(残り余剰10%は売電)。これにより電力購入量が▲▲MWh減少し、年間電気代はさらに約300万円削減見込み。売電収入も約10万円発生。
- 国の「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」と県の「再エネ導入補助」、計2件が利用可能で、太陽光設備費の1/3(約500万円)と蓄電池費の1/2(約200万円)が補助対象となることが表示。
- 上記補助金を活用し太陽光50kW+蓄電池20kWh導入(総工費1,500万円→補助後自己負担800万円)した場合、電気代削減分で約3年で初期投資回収できる試算。
- CO2排出削減量は年間▲▲トン(約30%削減)、これはSDGsレポート等でアピール可能な数値であることも注記。
この結果を見たB社は、一気に導入へ気持ちが傾きました。特に補助金を併用すれば回収期間が3年程度と非常に短いことが背中を押しました。「自社でもこんなに早く元が取れるなら、もっと早く検討すればよかった」と社長は語り、早速信頼できる施工業者に相談を始めました。シミュレーターには施工業者や商社と連携した相談窓口機能もあり、ボタン一つで見積り依頼や問い合わせが可能です。B社はそのままシームレスに次のステップへ進みました。
効果と波及:中小企業GXの加速
このようなワンストップの支援ツールにより、多くの中小企業が自律的にエネルギー投資の判断を下せるようになります。かつては専門コンサル無しには難しかった経済性評価が、エネがえるAPIにより「かんたんに見える化」されるからです。結果として、再エネ・省エネ設備の市場導入が進み、地域全体の脱炭素化にも貢献します。また、エネルギーサービス事業者にとっても、このツールは有望顧客の発掘につながります。興味を示したユーザに対し適切なタイミングでアプローチでき、提案の迅速化(初期段階から具体的数値提案)によって商談成約率アップも期待できます。
行政・支援機関の視点では、本シミュレーターは中小企業支援策として非常に有効です。補助金の存在自体は周知しても、活用が進まなければ意味がありません。ツール上で補助金の効果を体感してもらうことで、「使わない手はない」という気持ちにさせることができます。これは補助金予算の消化率向上にも寄与し、政策目標である中小企業のエネルギー効率向上を実現する好循環となります。
6. 災害レジリエンス向上のための気象連動型蓄電池制御
災害リスクとエネルギーレジリエンスの重要性
日本は台風や地震など自然災害が多く、エネルギーインフラの強靭化が重要です。ここでは気象情報と連動して蓄電池を制御し、災害時の電力バックアップ性能を最大化するユースケースを紹介します。エネがえるAPIの高度機能と気象オープンデータを活用し、「明日の台風に備えて蓄電池満充電」「停電リスクに応じて系統依存度を下げる」といった自動制御を行います。
シナリオ背景:沿岸部自治体の防災拠点整備
沿岸部のC町では、毎年の台風シーズンに長時間停電のリスクがあります。過去にも大型台風の直撃で町内の一部地域が数日間停電し、太陽光を設置していた家庭でも蓄電池が空になって困窮した例がありました。教訓から、町は地域防災計画にエネルギーのレジリエンス向上策を盛り込みました。具体的には、町内の公共施設(避難所となる学校体育館など)や防災拠点に大型蓄電池を導入し、平時はエネルギーコスト削減に活用しつつ、有事には非常電源として機能させる体制を整えました。さらに気象庁のリアルタイム気象警報や予報データと連動して、蓄電池の充放電を自動調整する仕組みを構築しました。
エネがえるAPIによる気象連動制御の実装
エネがえるAPIの「AI Sense API」は、気象警報や需要予測のデータを組み合わせた最適制御スケジュール作成に対応しています。この機能を用いて、例えば気象庁が発表する台風接近情報をトリガーとし、次のような制御ロジックを実現します。
- 事前充電:台風上陸が予想される24時間前になったら、防災施設の蓄電池を強制的に満充電まで充電開始。通常は経済効率を優先して夜間電力で充電している場合でも、天候に関わらず即時充電に切り替え、停電に備える。
- 稼働モード切替:暴風警報・大雨特別警報など深刻度の高い警報が発令されたら、施設のエネルギーシステムを「防災モード」に移行。具体的には蓄電池からの放電を停止し(エネルギー温存)、太陽光発電がある場合は可能な限り蓄電池へ充電させる。グリッド停電する前にバッテリー残量を100%に近づけておく。
- 停電検知時:実際に系統停電が発生したら、即座にアイランド運転に切り替え、蓄電池から重要負荷へ電力供給を開始。負荷優先順位リストに基づき、照明・通信設備・冷蔵庫等の必要機器へ電力を配分。天候が悪化し太陽光発電できない時間帯でも、事前充電した蓄電池で数時間~十数時間は維持。EVがあればV2Hで追加供給。
この一連の制御シナリオはエネがえるAPI上でシミュレーション検証も行っています。例えば「3日連続停電」「太陽光稼働率ゼロ(悪天)」という最悪ケースを想定し、それでも避難所施設の最低限の電力需要(照明・スマホ充電・ラジオ等通信)を賄えるか試算します。蓄電池容量◯kWhなら何時間もつか、EVから供給を受ければ何人分のスマホを充電できるか、といった具体的な数字が出ます。シミュレーションの結果、C町では各避難所に20kWhの蓄電池+非常用発電機を設置し、近隣のEV保有者ボランティアとマッチングする計画(停電時に避難所へEVを持ち込み電力提供)まで盛り込みました。これは「災害時にはEVが電源になる」ことを住民啓発する良い機会ともなっています。
想定される成果:防災×エネルギーの連携効果
翌年、実際に大型台風がC町を襲いましたが、新システムは功を奏しました。停電前日に自動で蓄電池満充電、重要施設は停電発生後も連続36時間電力供給を維持できました。避難所では照明とスマホ充電サービスが確保され、地域住民の安心感は大きく向上しました。「停電がいつ来ても備えは万全」との町の評判が広がり、防災力向上につながっています。気象庁の警報発表と連携してバッファを確保するこの仕組みは、他の自治体からも注目され、広域停電リスクのある地域へのモデルケースとなりました。
さらに平常時においても、エネがえるAPIによる需要予測×蓄電池最適制御は経済効果を発揮しています。例えば夏季は夕方の需要ピーク前に蓄電池充電→ピーク時に放電してデマンドを抑制、といった工夫で公共施設の電気料金を削減しています。台風でない通常の気象予報(明日は猛暑→エアコン需要増、など)もAIが需要予測に活かし、平時の運用効率を高めています。
このユースケースは、エネルギーDXと防災DXの融合とも言えます。「エネルギーを賢く使うこと」がそのまま「命を守ること」に直結する好例であり、行政関係者にも響きやすいテーマです。今後、気候変動で災害激甚化が懸念される中、全国の自治体や事業者がエネルギーのレジリエンス強化に取り組むでしょう。その際、エネがえるAPIのような柔軟なプラットフォームがあれば、気象データ連携からIoT機器制御までワンストップで構築でき、大きな助けとなります。実装力を持つスタートアップ企業にとっても、防災×エネルギーのソリューション開発は新たなビジネスチャンスであり、社会貢献度の高いフィールドと言えます。
7. スマートシティ実証フィールドにおける3D都市モデル活用とAPI統合
デジタルツインによるエネルギー可視化と最適化
全国各地で進むスマートシティ実証の場面でも、エネがえるAPIと3D都市モデルの融合が新たな価値を生み出しています。このユースケースでは、とあるスマートシティの実証地区を舞台に、デジタルツイン空間上でエネルギーデータを可視化・分析し、API統合によってリアルタイムな都市エネルギーマネジメントを試みるシナリオです。
背景:PLATEAUデータ活用の新展開
D市の新興地区では、国土交通省Project-PLATEAUの支援により高精度な3D都市モデルが整備され、オープンデータとして公開されています。建物の形状や用途、道路や公園の配置などが詳細に3Dで再現されており、さらに環境・エネルギー関連データも付加されています。例えば各建物の屋根面積や日射ポテンシャル、既設太陽光パネルの有無などが属性情報として含まれています。この地区はスマートシティの実証フィールドに指定されており、自治体・大学・企業のコンソーシアムがデジタルツインを活用した様々な実験を行っています。
プロジェクト概要:3D都市モデル+エネルギー統合管理
コンソーシアムのエネルギーチームは、3D都市モデル上にエネルギーの需給情報を重ね合わせ、都市スケールで最適なエネルギー活用を検討するプロジェクトを開始しました。具体的な目標は、「街区レベルでの再エネ導入最大化」と「エネルギーの見える化による住民参加促進」です。以下のような取り組みを行いました。
データ統合基盤の構築
PLATEAUの3Dモデルデータをベースに、電力消費量データ(スマートメーターやビル管理システムから取得)、分散電源データ(太陽光・蓄電池の発電量・残量)などをリアルタイム集約するプラットフォームを構築。エネがえるAPIとも双方向連携し、シミュレーション結果をこの基盤に取り込む。
可視化ダッシュボード
Unity上で3D都市モデルをレンダリングし、Webブラウザで操作できるダッシュボードを作成。地図上で建物をクリックするとその建物のエネルギー情報(年間発電ポテンシャル、現在の消費電力、CO2排出 等)が表示され、街全体を見渡すと再エネ導入状況が色分け表示される(緑=自給率高い建物、赤=エネルギー多消費建物 など)。
シミュレーションシナリオ
エネがえるAPIを使っていくつかの将来シナリオを試算。「もし地区内すべてのマンション屋上に太陽光パネルを設置したら?」「EV普及率50%でV2G(Vehicle to Grid)に参加したら?」など仮定を置き、その効果を3D空間上で可視化。例えば全屋根ソーラー化シナリオでは、建物モデルが発電量に応じた色に変化し、街全体で年間○GWhの創エネ・△tのCO2削減と表示される。
想定される効果:市民参加とフィードバック:エネルギーの民主化
このダッシュボードは一般にも公開され、地区住民が自由に閲覧・操作できるようになりました。住民は自分の住むマンションを選んで「ここに太陽光を付けたらどうなる?」と発電シミュレーションし、経済効果(電気代何割減など)を確認できます。裏ではエネがえるAPIが動的に計算を行い、結果を返しています。ある住民はそれを見てマンション管理組合に再エネ導入を提案しました。「このシミュレーションでは、私たちのマンションに200kWの太陽光を入れると共用部電力を全て賄えて尚余る。余剰はテナントに供給できるので、管理費が下がる可能性がありますよ」と具体的な数字を示せたため、組合の議論が前向きに進みました。
また、地区内でエネルギーに関するワークショップが開催され、可視化ツールが活用されました。大型スクリーンに3Dモデルを映し出し、「みんなでゼロカーボン街区をデザインしよう」という参加型イベントです。参加者は付箋やタブレットを使って意見を出し合い、3Dモデル上に配置。エネがえるAPIで試算したデータ(例:○○ビルに風力導入→CO2〇%減)もリアルタイム反映し、ゲーム感覚でEBPM(エビデンスに基づく政策立案)の疑似体験を行いました。これにより専門知識がない市民でも、複雑なエネルギー施策を直感的に理解し、自分事として考えるきっかけになりました。
想定される成果:オープンイノベーションの拡がり
この実証を通じて、以下の成果が得られました。
- 街区内の再エネ導入可能量が具体的に把握でき、行政は次期都市計画に「地区内再エネポテンシャルの50%活用」目標を盛り込む根拠が得られた(PLATEAUデータ+シミュレーション結果に基づく)。
- 市民アンケートでは「エネルギー問題に関心が高まった」「自分たちで街を良くできると感じた」といった声が多く、住民参加型エネルギー施策の有効性が示された。
- オープンなデータ基盤とAPI連携により、新たなサービス案も創出。スタートアップ企業がこのデータを使い、需給マッチングプラットフォーム(余剰太陽光を地元企業へP2P電力取引)や、観光客向けCO2見える化アプリ(訪れたスポットの再エネ率を表示)などを提案している。
このユースケースが示すように、3D都市モデル×エネがえるAPI×オープンイノベーションはスマートシティにおける新たな価値創造の土台となります。都市スケールのデジタルツインにエネルギーシミュレーションを融合すれば、従来は机上で難解だった議論も視覚的・定量的に行えます。行政・企業・市民が同じプラットフォーム上でデータを共有し、未来の街を協働で描けるのは非常にパワフルです。「エネルギーの見える化」が「街づくりの民主化」につながる可能性を秘めており、今後多くの都市で参考にされるでしょう。
8. Unreal EngineによるGX学習&住民合意形成のXRアプローチ
XR技術による直感的なエネルギー体験
最後に、Unreal Engineを活用した超高精細なXR(クロスリアリティ)体験によって、GXに関する学習と住民合意形成を支援するユースケースです。再エネ設備の景観問題や、大規模開発への住民理解不足といった課題に対し、VR/ARを駆使して直感的なコミュニケーションを実現します。
背景:再エネ導入と合意形成の課題
E市では郊外に大規模ソーラーファーム建設計画が持ち上がり、周辺住民から景観や環境への懸念が示されていました。再エネ導入は市の方針でもあり是非進めたいところですが、住民合意なくしては円滑に進みません。従来の説明会ではパネルや資料による説明に留まり、「完成すればこれくらいの発電が期待でき、CO2がこれだけ減ります」という数字を並べても実感が湧きづらい状況でした。そこで市は最新のXR技術を導入し、住民参加型の合意形成プロセスに踏み切りました。
Unreal EngineによるVRシミュレーション
まず、建設予定地とその周辺環境をUnreal Engine上でフォトリアルに再現しました。ドローン空撮やレーザースキャンデータ、PLATEAUの3Dモデルを組み合わせて地形・植生・建物をモデリングし、建設予定のソーラーパネル群も3Dオブジェクトとして配置しました。出来上がったVR空間は現地をそのまま切り取ったかのような精密さで、天候や時間帯の変化もリアルタイムに描画できます。さらにエネがえるAPIから取得した発電シミュレーション結果(年間発電量や季節変動)をもとに、パネルの発電アニメーションや
パネルの発電アニメーションや統計グラフを視覚化する仕組みも組み込みました。ユーザはVRゴーグルを装着すると、仮想空間内でソーラーファーム計画を五感に訴える形で体験できるのです。
住民ワークショップと体験型合意形成
市は地元住民を招いたVRワークショップを開催しました。そこでは以下のような体験・対話が行われました。
VR空間上で自宅の位置に立ち、ソーラーパネルがどのように見えるか確認。「自宅の2階窓からはパネルが少し見えるが、思ったほど景観を損ねないかも」といったリアルな感覚を得られた住民もいました。逆に「ここの角度からだと反射光が眩しいのでは?」といった新たな気づきも出てきて、その場でシミュレーション(日時を変えて日射反射を確認)し対応策を議論しました。
バーチャル空間内で発電所の稼働状況を見ると、季節や天気で出力が変わる様子が理解でき、「夏は地域の電力をほぼ賄えるが冬は足りない」ことが直感的に伝わりました。エネがえるAPI試算による「年間○世帯分の電力を供給」「CO2△t削減」というテロップもVR内に表示され、参加者はそのスケール感を掴みました。「この発電所だけで町の3割の家庭の電気をまかなえるんですね!」という驚きの声も上がりました。
さらに将来的な発展案として、VR内に蓄電池施設や風車を追加配置するモードも用意。参加者自身がコントローラーでオブジェクトを置いてみて、街の景観やエネルギーバランスがどう変わるか遊びながら試せました。これにより「蓄電池を併設すると夜も電気を供給できる」「風車は高さがあるが少数でも発電量が大きい」といった学びが得られ、「それなら少し景観が変わっても導入する価値があるね」と理解が深まりました。
想定される効果:直感的理解による合意形成の円滑化
ワークショップ後のアンケートでは、参加者の90%以上が「計画への理解が深まった」「不安が和らいだ」と回答しました。「百聞は一見に如かず。VRで見られて安心した」「自分たちでアイデアを出し、その場で確認できたのが良かった」との声が寄せられ、市はその結果を踏まえ計画を一部修正(パネル配置の最適化や景観緩衝帯の追加)しつつ、住民合意を得ることに成功しました。まさにXRが住民と行政の橋渡し役を果たしたのです。
このアプローチは、単なる説明ツールに留まらずGX学習プラットフォームとしても機能しました。参加者の中には「学校教育にも使えるのでは」との提案もあり、後日子供向けのエネルギー環境学習VR体験会も開催されました。ゲーム感覚で再エネシティを作るワークショップは子供達にも好評で、「将来は僕が風車を設置したい!」という頼もしい声も生まれています。
以上、8つのユースケースを通じて、エネがえるAPIと関連技術がもたらすGX・スマートシティの可能性を見てきました。政策立案から現場実装、住民巻き込みまで、データとテクノロジーを駆使すればエネルギーの未来を具体的に描き出し、前に進めることができることがお分かりいただけたでしょうか。
おわりに:新たなエネルギー価値創造への道筋
エネがえるAPIは、「むずかしいエネルギー診断をかんたんにカエル」というビジョンのもと生まれ、多様な現場で活用が広がっています。住宅用から産業用まで幅広く対応し、太陽光発電・蓄電池の経済効果シミュレーションに加え、EV・V2Hや充電器の導入効果、最新の電気料金プラン情報や自治体補助金情報まで網羅しています。
エネがえるAPIはRESTfulで使いやすく設計されており、開発工数を大幅に削減しつつ自社独自のサービスに組み込むことが可能です。実装にあたって不明点や高度なカスタマイズ要求があれば、提供元の国際航業に相談することで個別サポートも受けられます。700社以上の導入実績を持つ信頼性と、アップデートによる対応領域拡大で常に最新ニーズに応え続ける柔軟性は、皆様のGXプロジェクトの強力な後押しとなるでしょう。
ぜひこの記事をヒントに、現実のプロジェクトでエネがえるAPI+αの活用を検討してみてください。「エネルギーの見える化」と「まちづくりのデジタル化」が交差するところに、新しい価値創造のチャンスがあります。専門家だけでなく市民や企業も巻き込みながら、テクノロジーの力で持続可能な未来を一緒に実現していきましょう。もし具体的な実装のご相談やさらなる情報が必要な場合は、エネがえるAPI提供元までお気軽にお問い合わせください。皆様のチャレンジを支える準備は万全です。それでは、未来のスマートシティ・GXの現場でお会いしましょう!
参考文献・出典
- 再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート – 国際航業株式会社, 2025年3月18日
- 東京都の新しいソーラーパネル義務化 – PwC Japan, 2025年4月11日
- 地域熱供給(地域冷暖房)のメリット – 一般社団法人 日本熱供給事業協会, 2023年
- 壁面太陽光パネル設置の発電量の推計・シミュレーション – エネがえるFAQ, 2023年
- 電気自動車とV2H(Vehicle to Home)システムの導入効果と将来展望 – 国際航業「エネがえる」ブログ, 2024年
- 太陽光発電+V2Hでエネルギーの自給自足を楽しむ – TEPCOホームテック, 2020年
- 3D都市モデルを活用した壁面太陽光発電ポテンシャル推計 – 国土交通省, 2023年
- XR技術を活用した市民参加型まちづくり – 国土交通省PLATEAU, 2023年
- 日本発の3D都市モデル「PLATEAU」が導くメタバースな都市計画 – EMIRA, 2022年
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