脱炭素や再エネ導入加速を阻む「見えづらい隠れた課題」と効果的な解決策

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

エネがえるキャラクター
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脱炭素や再エネ導入加速を阻む「見えづらい隠れた課題」と効果的な解決策

脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギー(再エネ)の普及拡大が急務となっています。しかし、その道のりには技術やコスト以外にも隠れた本質的課題が存在し、これらを解決しない限り普及のスピードは上がりません。

本記事では、業界の常識に埋もれ見過ごされがちな論点を掘り下げ、最新のデータや知見から再エネ普及加速のボトルネックを高解像度で分析します。そして、それらの課題に対する実効性の高い解決策について、システム思考・ラテラル思考を駆使して提案します。再エネビジネス従事者が日頃モヤモヤ感じている違和感を言語化し、「ありそうでなかった」地味ながら効果的なソリューションを提示することで、脱炭素への道筋を示します。


1. 再エネ普及の現状と隠れた課題の重要性

日本では2050年カーボンニュートラル実現に向け、太陽光発電や蓄電池、EV(電気自動車)など再エネ技術の導入が推進されています。実際、東京都では都の施策を84.7%の都民が「評価する」と回答し、脱炭素への期待は高まっています。しかしその一方で、「再エネを導入したい」という企業・家庭の意欲を阻む見えにくい課題が数多く存在するのも事実です。

例えば、多くの企業や自治体担当者は「経済的メリットが不透明」であることに不安を感じています。実際、地方自治体職員の82.4%が再エネ施策推進において「市民の理解が得られていない」と感じ、その要因として経済的負担や効果の不透明さを挙げました。再エネ設備の導入には初期投資が伴うため、「本当に元が取れるのか?」という疑念を払拭できない限り、大多数の人は動きません。

では、なぜそれらの不安や疑念が解消されにくいのでしょうか?

そこには金融・営業・顧客心理・制度・人材・教育といった多面的な課題が絡み合っています。本来、再エネ導入は長期的には電気代削減やレジリエンス向上など利益をもたらすはずですが、そのメリットを初期段階から具体的に示すことが難しかったり、示しても信頼してもらえなかったりする現実があります。

本稿では、それら「隠れた課題」を以下に分類して詳述します。

  • 投資採算性と金融評価の課題 – 事業計画の評価やデータ収集の難しさから金融機関が慎重になり、結果として融資や投資判断が進まない問題。

  • 営業プロセス上の負荷 – 提案に至るまでのシミュレーションや資料作成、人手不足により営業が疲弊し提案効率が落ちる問題。

  • 顧客の信頼性懸念 – 提示されたシミュレーション結果に対する信用不足から、導入に踏み切れない需要家が多い問題。

  • 新技術対応力の不足 – PVと蓄電池に加えEV・V2Hなど統合エネルギーシステム化で提案内容が複雑化し、販売現場の知識・スキルが追いつかない問題。

  • 補助金・政策活用の課題 – 各種補助金情報が煩雑で活用しきれず、本来得られる恩恵を逃している問題。

  • 人材不足とノウハウ断絶 – 特に技術職人材の不足や、高度な資格要件による採用難で現場力が低下する問題。

  • 可視化から行動への乖離 – CO2排出量の見える化ツール導入企業でも実際の削減行動に移せないケースが多い問題。

  • 市民理解・意識醸成 – 一般の生活者や社員に脱炭素の必要性を腹落ちさせ行動変容を促すための啓発・教育法が不足する問題。

これらは一見バラバラに見えますが、再エネ普及のエコシステム全体で見ると互いに影響しあう要素です。以下、順に掘り下げ、データを交えて解説します。

2. 投資採算性への不安と金融機関の評価課題

再エネ設備は導入コストが大きいため、投資回収の確実性が重要な鍵です。企業が自家消費型の太陽光・蓄電池を導入する際も、「何年で回収できるか?ROIはどれくらいか?」という点が経営判断の分かれ目になります。しかし、その採算性評価には不確実性が伴います。電力価格の将来予測や、発電量シミュレーションの信頼性など、前提条件の不確実さがどうしても残ります。

金融機関もまた、こうした不確実性に頭を悩ませています。太陽光・蓄電池プロジェクトへの融資審査に携わる銀行員の86.0%が「評価に課題を感じる」と回答しており、その具体的理由として「市場動向や将来予測が不確実」(59.3%)、「必要なデータ収集に時間がかかる」(54.7%)が上位に挙がりました。つまり、将来の電気料金や発電量の見通しが立ちにくく、審査に必要なデータ(設備の性能データや顧客の電力需要データ等)集めも手間が大きいことが、金融サイドのボトルネックになっています。

さらに金融担当者の44.2%が「リスク評価の定量化が難しい」とし、「社内で評価の基準が標準化されていない」(18.6%)という声もあります。これは、案件ごとに条件が異なる再エネ投資を評価するにあたり、社内に十分な専門知識や経験が蓄積されていない(45.3%が指摘)ことや、評価基準の整備が追いつかない現状を示唆しています。

審査プロセス自体にも工数がかかるとの指摘があります。金融機関調査では、融資審査で特に時間・労力がかかる作業として「事業計画・収支計画の妥当性評価」(28.8%)や「IRR・ROIの算出・分析」(21.2%)が挙げられています。要は、事業者から提出される収支シミュレーションの前提が妥当か検証し、自社基準で収益性を計算し直すのに大変時間を割いているのです。

→ 解決の方向性: これらの課題に対しては、高精度かつ迅速なシミュレーションツール専門サービスの活用が鍵となります。調査によれば金融機関担当者の73.0%がこうした業務を外部専門機関に委託することは有益と感じており、その際に重視する点は「専門知識の高さ」と「対応の速さ」が56.2%で並びました。つまり、「自社にはない将来予測モデルやデータベースを持ち、素早く分析レポートを提供してくれる専門家」に任せたいというニーズです。実際、高度な予測分析とクラウドサービスを提供するソリューションが生まれつつあります。国際航業は2024年、日本リビング保証と提携して業界初の「経済効果シミュレーション保証」サービスを開始しました(後述)。このように、第三者機関によるシミュレーション精度担保損失補填の枠組みを導入することは、金融側・導入側双方に安心感を提供しうる画期的な解決策です。

さらに、データ収集に関してはAPI経由で最新情報を自動取得する仕組みが解決策となります。例えば、電力需要データや過去の気象・発電実績データを手作業で集める代わりに、クラウド上のデータプラットフォームから取得・更新できれば評価の迅速化・標準化に寄与します。実際に再エネ経済効果シミュレーションAPIを公開し、他社システムと連携できるようにした例もあります(後述の「エネがえるAPI」参照)。

要するに、「データとモデルの信頼性確保」「分析のスピードアップ」こそが投資不安を和らげ、金融支援を引き出し、導入判断を後押しするカギです。次章では、そのデータ分析を担う営業現場の課題に目を向けます。

3. 営業現場の見えない負担とDXの必要性

再エネ導入を検討する企業や家庭に対し、具体的な提案を行うのはメーカーや販売施工店の営業担当者たちです。彼らは日々顧客に出向き、現地調査を行い、要望をヒアリングし、シミュレーションを回して見積書や提案書を作成しています。この提案前工程に実は多大な手間と時間がかかっており、それが見えない負担となって営業効率を下げているという指摘があります。

ある調査によれば、太陽光・蓄電池システムの販売・提案業務に携わる担当者の88.2%が「何らかの課題を感じている」と答えました。特に「時間・労力がかかる業務」として挙げられたのが、第1位「顧客ヒアリングや現地調査」(41.8%)、第2位「顧客の電力需要データ入手」(37.3%)でした。これらは提案の前段階ですが、非常に泥臭い作業です。顧客の現在の電気使用量や契約を把握するために電力会社から過去データを取り寄せたり、現地で屋根の形状や配電盤を確認したりと、営業が足を運んで情報収集する負荷が大きいことが浮き彫りになりました。

さらに、提案内容をまとめる設計・シミュレーション段階でも課題があります。同調査では、66.7%もの担当者が「太陽光や蓄電池容量の最適な組み合わせ方法がわからない」と答え、33.3%「設計後の提案書作成が負担」と感じていました。経験の浅い営業だと、システム容量の最適化(例:何kWの太陽光パネルと何kWhの蓄電池を組み合わせればいいか)に悩み、何度も計算をやり直すことになります。また、ようやく数字を出しても、それを分かりやすい資料にまとめ直す作業が待っています。こうした属人的なノウハウ頼みの作業が多いことで、提案準備に時間がかかりすぎ、結果として初回提案までに顧客を待たせてしまっているケースが少なくありません。

実際、太陽光発電の導入を検討する企業の約7割は「検討初期から具体的な数値を提示してほしい」と望んでいます。しかし現状では、詳細見積もりを出すまでに時間を要するため、営業は概算のメリットだけ伝えて後日詳細提案…という流れになりがちです。このタイムラグは機会損失に直結します。なぜなら、61.3%の企業は「営業初期段階でも詳細な経済効果見積もりを重視する」としつつ、一方で34.2%「迅速な概算提示で社内検討を早く始めたい」という声もあるからです。要するに、提案スピードと精度のバランスが導入意欲を左右することが明らかになっています。

では、この見えない負担をどう軽減するか?キーワードは「DX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化」です。具体的には:

  • クラウド型シミュレーションツールの活用:従来はExcelで何時間もかけて計算していたものを、クラウドサービス上で自動計算することで大幅な時短が可能です。例えば国際航業の提供する産業用PVシミュレーション「エネがえるBiz」は、ROIや投資回収期間の計算を数日→わずか10分で完了させ、即座にレポート出力までしてくれます。この新機能により、「迅速かつ信頼性の高い投資対効果提案書の作成」という販売店の課題を解決し、営業生産性を飛躍的に向上させています。現に、導入しなかった企業の過半数が「投資回収できるか不安」だったという調査結果を踏まえ、この10分診断レポート機能はボトルネック解消の切り札となっています。

  • 複数シナリオの即時比較:高速シミュレーションが可能になると、一つのケースだけでなく条件を変えた複数パターンを短時間で試せるため、顧客にとって最適なプランを提案しやすくなります。実際、大手再エネ専業商社のエクソル社は自社シミュレーションシステムに国際航業のAPIを組み込み、計算時間を従来の2〜3時間/件からわずか5〜10分に短縮しました。これによりシミュレーション精度が向上しただけでなく、一度の商談で複数パターンを検討できるようになり、顧客提案力が飛躍的に高まったといいます。ヒアリングから設計比較までが即日で回せれば、初期段階から具体数値を提示することも十分可能です。

  • 提案作業の一部外部化(BPO)の活用:どうしても社内リソースが足りない場合、専門チームに一部業務をアウトソースするのも有効です。実際、調査では営業担当者の80%以上「経済効果シミュレーションや補助金申請のような専門的かつ工数のかかる業務は大きな負担」であり、そうした業務のBPO活用ニーズが高まっていると指摘されています。国際航業が2025年に開始した「エネがえるBPO/BPaaS」は、1件1万円~で経済効果シミュレーションから設計図作成、補助金申請書類作成まで代行してくれるサービスで、業界最高水準の柔軟性と即応性を謳っています。こうした外部サービスをスポットで利用すれば、繁忙期や社内にノウハウがない場合でも提案速度を落とさずに済みます。

以上のように、デジタル技術とアウトソーシングを駆使して“高速・高精度の提案”を実現することが、営業現場の見えない負担を軽減し再エネ普及を加速させるポイントです。にもあるように、「専門性が高く工数のかかる業務の負担を減らし、現場の負荷を軽減して知識を補完できるサービスの活用」が普及の鍵だと言えます。営業が効率よく質の高い提案を出せれば、顧客の検討開始も早まり成約率も上がるでしょう。

しかし、どんなに迅速な提案ができても、肝心のシミュレーション結果を顧客に信じてもらえなければ契約には至りません。次章では、まさにその「信頼性」の問題に踏み込みます。

4. 顧客の不信感とシミュレーション結果の信頼性

営業担当者が丹念に作成した経済効果シミュレーションも、「机上の空論ではないか?」と顧客に疑われてしまっては元も子もありません。実は、多くの営業現場でシミュレーション結果の信憑性に対する顧客の不信感に直面しています。

住宅向け・産業向けを問わず、営業担当者の8割超「お客様からシミュレーション結果の信頼性を疑われ、契約を逃したり成約に時間がかかった経験がある」と明かしています。例えば産業用PVの営業では83.1%がそのような経験を報告しています。また、実際に導入を見送った企業側に尋ねると、67.0%が提示されたシミュレーション結果の信頼性を「疑ったことがある」と回答しました。つまり約7割「シミュレーション通りの効果が出るのか半信半疑だった」というのです。

この不信感が与える影響は甚大です。先の導入見送り企業の調査では、「シミュレーション結果に信頼がおけない」ために導入を躊躇したケースが多々ありましたが、もしその結果が保証されるとしたら57.0%が「その販売業者から購入したい」と前向きに捉え直し60.0%が「社内稟議や投資決裁も通りやすくなるだろう」と答えています。さらに「結果が保証されるなら保険料を自社で負担しても構わない」という企業も3割以上ありました。これは、再エネ導入において信頼性担保がどれほど重要視されているかを物語っています。

一般消費者の目線でも同様です。住宅用太陽光・蓄電池の営業担当者の83.9%が「お客様から経済効果シミュレーションの信ぴょう性を疑われた経験がある」と答えています(こちらは住宅分野Vol.21調査による)。逆に言えば、ユーザーが「この試算は信用できる」と納得できれば導入への心理的ハードルは大きく下がるはずです。

→ 解決の方向性: この信頼性の問題に対する究極のソリューションが、前章でも触れた「シミュレーション結果の保証」です。国際航業と日本リビング保証が提供を開始した保証スキームでは、シミュレーションに基づいて太陽光を導入した後、もし発電量など性能が大きく下振れしてシミュレーション通りの経済効果が得られなかった場合に、その損失を一定額まで補填するというものです。具体的には、年間発電量が保証値を下回った場合に最大1,000万円(住宅・低圧)~3,000万円(産業用・高圧)を10年間補償する内容。保証の対象事由も「機器の瑕疵や施工不備による性能未達」とされており、まさに顧客が懸念する「思ったほど発電しない・電気代が減らない」をカバーする仕組みです。

この保証スキームの導入によって期待される効果は絶大です。先述のように、多くの企業・家庭が「元が取れるか」の不安さえ解消すれば導入に踏み切る意向を示しています。保証はその不安を直接取り除くものです。事実、自治体職員の調査でも80.4%が「経済効果シミュレーション結果を保証する制度があれば、再エネ普及はスムーズに進む」と期待を寄せました。東京都民向けの調査でも、「太陽光・蓄電池のシミュレーション結果保証の提供」に対する期待の声が挙がっており、販売現場の営業担当者からは84.2%が「保証が付けば成約率が上がる」と見込んでいます。

保証以外にも信頼性を高めるアプローチとして、第三者認証や可視化手法の工夫があります。例えばシミュレーションのロジックや使用データについて透明性を持たせ、第三者機関の検証済みであることを示す、あるいは「見える化」ツールでシミュレーションと実績を継続比較できるようにするなどです。後者は導入後の話になりますが、事前の不安解消に「もしシミュレーションとズレがあったらこう対応する」という道筋を示しておくことも信頼醸成につながります。

加えて、営業担当者自身の説明力向上も欠かせません。調査では住宅営業の89.4%が「お客様は災害時の停電対策に家庭用蓄電池が重要と感じている」と答えながらも、「経済効果の試算結果をどう伝えれば納得いただけるか」に苦労しています。そこで、前章のような迅速なシミュレーション→複数プラン提示という手法は有効です。初回提案時に「ベストシナリオだけでなく、発電量が〇%下振れした場合でも○年で回収できます」等、悲観シナリオも含めたプランニングを示せれば、顧客は「最悪これくらいか」と腹落ちしやすくなります。最近ではAIチャットを活用してシミュレーション結果を解説する試みも注目されており、調査では約8割が「ChatGPTのようなAIにシミュレーション説明をさせることに興味がある」と答えました。分かりにくい専門用語を噛み砕いて説明するAIアシスタントは、顧客の理解と信頼を得る一助となるでしょう。

まとめると、「データの裏付け」と「万一の保証」、そして「丁寧で分かりやすい説明」の三位一体でシミュレーションの信頼性問題は克服できます。これにより、顧客の心理的ハードルが下がり、「試してみよう」という前向きなマインドに転じることが期待できます。

5. EV・蓄電池の複雑化と提案スキルギャップ

近年、再エネ普及の文脈でEV(電気自動車)やV2H(Vehicle to Home)の活用がクローズアップされています。EVは単なる移動手段に留まらず、蓄電池として家庭や企業のエネルギーインフラに組み込むことが可能です。太陽光で発電した電気をEVに蓄え、夜間に家へ供給する、といったことが現実味を帯びています。このようにエネルギーシステムが複雑化・統合化する中、販売・提案現場にも新たな知識とスキルが求められています。

しかし実態は、販売現場のスキルギャップが大きな課題となっています。EV充放電システム(V2H)や充電器を扱い始めた事業者に調査したところ、92.5%が「提案業務に課題を実感している」と回答しました。特に「設計・シミュレーション業務で何に時間がかかるか」という問いでは、41.1%が「経済メリット・投資回収試算の作成」に最も工数がかかると挙げています。つまり、太陽光+蓄電池+EVを組み合わせた場合の経済効果を計算すること自体が難しく手間だと感じているのです。

また、「自社に不足している知識・スキルは何か」との問いには、63.1%が「V2Hの仕組みや利点に関する知識」と回答しトップとなりました。次いで「EVの技術的理解」(39.6%)、「電力料金プランや電力系統の理解」(36.9%)、「経済効果試算・投資回収計算のスキル」(34.2%)が続いています。要するに、EV・V2H特有の専門知識から、それを経済性に落とし込むスキルまで軒並み不足しているのが現状です。

このスキル不足は、提案現場に深刻な負担感をもたらしています。EV関連商材の提案担当者の80.6%が「社内の知識・ノウハウ不足が課題」と感じており、知見が追いつかない中で提案しなければならないプレッシャーがあります。さらに、そのような担当者の80.6%は業務の外部委託(BPO)に興味があると回答しており、「専門家に任せたい」という本音もうかがえます。

→ 解決の方向性: まず必要なのは、体系的な研修とツール導入によるスキル底上げです。メーカーや専門機関が提供するEV・V2H研修を受講したり、社内勉強会を開催して知識共有を図ることは急務でしょう。また同時に、提案支援ツールの充実が効果的です。例えば、国際航業はEVやV2Hを含めたシミュレーションができる「エネがえるEV・V2H」という専用クラウドSaaSを提供開始しました(無料トライアルも実施)。これは住宅用太陽光+蓄電池+EV+V2Hの導入効果を5分で診断できるツールとのことで、複雑な計算を自動化し営業担当者を支援します。こうしたツールを使えば、たとえ担当者が深い専門知識を持たなくとも、顧客に「EVを入れると電気代がこれだけ下がり、ガソリン代削減と合わせて〇円おトクです」といった試算をすぐ示すことが可能になります。

また、他社との協業やAPI活用も有効です。パナソニック社は家庭向けEV充電サービスの開発にあたり、電気料金プラン最適化という課題を解決するため国際航業の「エネがえるAPI」を導入しました。これにより、全国の最新電気料金データベースを自社で抱えずに済み、時間帯別の最適充電スケジュール提案を実現しています。結果、ユーザーは安い夜間電力を活用した充電設定ができ、賢く電気代を節約できるサービスとなりました。このように、自社にない機能はAPIで取り入れるという手法は、DX時代の賢いやり方です。実際、同APIを活用すれば電力会社各社の料金メニューを自動追跡できますから、EVだけでなく蓄電池のピークシフト提案などにも応用可能でしょう。

そして、社内スキルが追いつくまでの過渡期的な解決策として、再度BPOサービスの活用が挙げられます。前述の「エネがえるBPO/BPaaS」では、EV・V2Hを含む提案業務も一括代行可能で、専門家チームが最短即日でシミュレーション結果や提案資料を納品してくれます。調査でも80%以上の担当者が「負担業務の外部委託に興味あり」と答えていたように、無理せずプロに任せるのも合理的です。特に、新商材導入直後で社内ナレッジが少ない段階では、外部支援を仰ぎつつ担当者が実務を通じて習得していくことで徐々に内製化していく、という戦略が良いでしょう。

まとめると、「教育」と「ツール」と「外部支援」の三本柱でEV・V2H時代の提案スキルギャップを埋めていくことが肝要です。そうすれば、カーボンニュートラル社会に不可欠なモビリティとエネルギーの融合を、現場が自信を持って提案できるようになります。実際、EV普及と再エネ自家消費は相乗効果があり、EV検討者の95.5%が「太陽光で充電できれば電気代削減に魅力を感じる」と答えています。この大きなポテンシャルを活かすためにも、提案側のアップデートが急務なのです。

6. 政策支援・補助金情報の活用ハードル

再エネ導入を促進する上で、国や自治体からの補助金・助成金制度は強力な後押しとなります。実際、販売施工事業者の87.0%が「2024年に規模拡大した補助金をぜひ活用したい」と意欲を示しています。また、東京都民に「今後自治体に求めること」を尋ねたところ、第1位は「補助金の増額」(52.3%)でした。このように、補助金施策への期待は非常に高いと言えます。

ところが、実際の現場では補助金情報の把握と手続きが大きな課題となっています。日本では国・都道府県・市区町村それぞれが多種多様な補助制度を展開しており、例えば太陽光・蓄電池関連の補助金は全国で約2,000件にも上ります。販売会社にとって、自社の客層や案件に合致する補助金を探し出し、申請要件を調べ、期限までに書類を整える作業は相当な負担です。調査でも「補助金情報のアップデートが大変」「申請業務に時間を取られる」という声が度々上がっています。

この問題に対し、国際航業は「自治体スマエネ補助金データAPIサービス」というユニークな解決策を打ち出しました。これは全国の創エネ・蓄エネ関連補助金データを網羅し、システム間でやり取りできるAPIとして提供するものです。企業がこのAPIを使えば、自社のシミュレーションツールや営業支援システムにリアルタイムで最新の補助金情報を組み込むことができます。例えば、お客様の所在地や条件を入力すると「利用可能な補助金リスト」と「受給後の正味の投資回収期間」が自動計算される、といった具合です。これにより、営業担当者は補助金込みの提案を簡単に作成でき、かつ漏れも防げます。

また、補助金検索ポータルを無料提供する施策も行われています。エネがえる契約企業向けに提供が始まった「自治体スマエネ補助金検索サービスでは、ウェブ上で地域やキーワードから該当補助金を誰でも検索可能です。営業だけでなくエンドユーザーも自ら調べられる環境が整うことで、「知らなかった」「申請し忘れた」といった機会損失を減らせるでしょう。

補助金活用にはもう一つハードルがあります。「申請手続きが煩雑」という点です。書類作成や必要書類の収集、提出後のフォローアップなど、慣れないと戸惑うことも多いものです。ここでも頼りになるのが専門家の支援です。前述のBPOサービス「エネがえるBPO/BPaaS」では、補助金申請代行もメニューに含まれており、必要に応じて1件から丸ごと任せることができます。特に補助金は募集期間が限られていたり先着順だったりしますから、迅速かつ確実な申請が求められます。プロに任せた方が結果的に確実に採択を勝ち取れるケースも多いでしょう。

政策支援策の活用度を上げるためには、「情報へのアクセス性向上」「申請業務の効率化」が不可欠です。そのためのDXツールやサービスが揃いつつある今、それらをフルに活用することが再エネ普及加速につながります。自治体側でも、補助金の存在を市民に周知し利用を促すことが課題です。前述の自治体職員調査で、「市民に経済的メリットの説明が十分伝わっていない」ことが普及の妨げとの声がありました。補助金を単に出すだけでなく、それを使えばこれだけ得をしますというシミュレーション結果をセットで示す工夫が重要でしょう。まさに「CO2排出量の可視化+経済効果の可視化」が鍵になると指摘されており、補助金や制度のメリットも経済効果シミュレーションに織り込んで見せることが有効です。

まとめれば、再エネ普及を下支えする政策資源を有効活用するにはデジタルと専門サービスをフル活用することが大切です。情報戦を制し、スピーディーに制度を取り込めるプレーヤーが市場で優位に立つと同時に、ユーザー側の負担軽減とメリット享受も最大化されるのです。

7. 人材不足と専門知識の継承

脱炭素ビジネスを進める上で、人材の確保と育成も避けて通れない課題です。特に太陽光発電や蓄電池の施工・メンテナンス等に関わる技術職人材の不足は深刻化しています。

全国の太陽光・蓄電池販売施工企業109社の人事担当者への調査では、90.7%が「技術職の人材確保に難しさを感じている」と回答しました。その理由として最も多かったのが「業務に必須の資格を持つ応募者が少ない」(63.6%)で、次いで「経験者が少ない」「若手が敬遠しがち」などが続きました(太陽光・電気工事は電気工事士資格等が必要です)。つまり、そもそも有資格者の母数が足りず人材プールが細い状態なのです。また、業界自体の高齢化や3K職場イメージで若手が入りにくいといった構造的問題もあります。

さらに現場では、人手不足ゆえに既存スタッフに負荷が集中しがちです。営業サイドから見ても、「案件が取れても工事をさばける技術者が足りない」というジレンマがあり、案件獲得に消極的になるケースすらあります。

ではこの人材難にどう対処するか。一朝一夕に人を増やすのは難しいですが、既存人員の生産性向上で凌ぐのが現実解です。ここで再び登場するのが経済効果シミュレーションツールです。調査では、技術職人材の確保に苦労する企業の85.3%「営業が簡単に使えるシミュレーションツールで試算できるようになれば、技術者のキャパシティ向上につながる」と期待を寄せています。どういうことかと言うと、本来技術者が設計していたような見積もり業務の一部を、ツールを使って営業側で完結できれば、技術者は本業の工事や高度な設計に専念できるというわけです。実際、シミュレーション結果の精度が上がり保証も付けば、技術者がダブルチェックしなくても営業提案を進められる場面が増えるでしょう。

また、属人的なノウハウの見える化も重要です。ベテラン技術者が経験則で行っていた判断を、ツールがルール化・自動化してくれれば、未経験の若手でも一定水準の提案・設計ができます。例えば前述のエクソル社の事例では、API導入により「業種と延床面積を入力すれば30秒以内に仮想デマンド(需要想定)を自動生成し、データがなくても即提案可能になった」と報告されています。これは本来、需要家の電力使用パターンを経験豊富な技術者が類推していた作業をシステム化したものです。こうしたAI・データ活用で技術者の勘所をシェアすれば、属人性を減らし組織全体の戦力アップにつながります。

人材不足へのもう一つの解は、アウトソーシングと提携です。どうしても社内リソースが足りない部分は、思い切って外部に任せる割り切りも必要でしょう。前述のBPOサービスのように設計そのものを依頼することもできますし、あるいは協力会社や提携先とのネットワークを構築して相互に人材を融通し合うのも手です。国際航業は2023年、エコリンクス社と提携して「エネがえるBPO/BPaaS」を発表しましたが、このように異業種・他企業の強みを取り入れることで自社単独では提供できない付加価値サービス(補助金申請代行や教育研修代行など)を実現しています。

最後に、人材確保には「働きがい・魅力の向上」も忘れてはなりません。再エネ業界は社会貢献性が高く若者にもアピールできる分野ですが、現場の泥臭さや不確実性が敬遠される面もあります。ここまで述べてきたデジタル化や保証制度の導入は、実は働く側の安心感やスマートさにも寄与します。最新のクラウドツールを使いこなし、お客様に理路整然とデータで提案し、成果については保証も付いている——そんな環境であれば、若手も「かっこいい業界だ」「将来性がある」と感じるでしょう。加えて、国際航業が開発したボードゲームdeカーボンニュートラルのような研修ツールで楽しみながら脱炭素を学べる場を設けるなど、社内の脱炭素人材育成にも工夫が必要です。実際このボードゲームは1セット90分・4〜6人でできる設計で、自治体や企業内研修で気軽に使えるユニークなツールとして開発されました。社員研修に取り入れればモチベーションアップと知識定着に効果を発揮するでしょう。

人材は「量」と「質」の両面で強化する必要があります。そのために、デジタル技術で質的補強を図り、外部リソースも動員して量的不足を補い、さらには仕事の魅力度を上げていく——そうした総合的な取り組みが、人材難という隠れた課題を乗り越えるカギとなります。

8. データの見える化から行動へのギャップ

再エネや脱炭素の取り組みでは、「まず現状を見える化すること」が出発点とされています。多くの企業がCO2排出量管理ツールを導入し、自社の排出量を可視化し始めています。しかし、単に見える化しただけでは行動変容につながらないという現実も明らかになってきました。

国際航業の調査によれば、CO2排出量可視化ツールを導入した企業のうち実際に排出削減に取り組んでいるのはわずか35.5%に留まることが分かりました。つまり3社に2社は、データを見ただけで止まっているのです。また、66.7%もの企業が「可視化しても直接的な利益やコスト削減につながっていないと感じていました。せっかくCO2見える化ツールを導入しても、「で、それが我が社の利益にどう貢献するの?」という疑問に答えられなければ、経営層の関心も薄れ、本格的な削減投資には踏み切れません。

このギャップの原因は明確です。CO2削減=コスト増というイメージが依然根強いのです。ある調査では、削減に踏み出せない理由のトップに排出削減は費用がかかるだけで利益にならないと思うから」(27.3%)が挙げられました。要するに、環境のためにお金をかけてもリターンが無い・見えにくい、と認識されているわけです。

では、どうすればこの状況を打破できるのでしょうか?鍵は「環境KPIと経済KPIの統合」です。CO2排出量の削減量だけでなく、それによって電気代が何円節約できたか、あるいはカーボンプライシング導入時にどれだけ費用回避できるかといった経済効果も同時に可視化するのです。

実際、先述のCO2可視化調査で86.0%の企業が「CO2排出量の可視化だけでなく、電気代削減額や太陽光導入による投資対効果シミュレーションも自動で行えるツールがあれば使いたい」と回答しています。これは、まさに環境と経済を一体で示してほしいというニーズです。例えば、「昨年度に比べCO2を○t削減=電気代△万円削減=ROI○%改善」という具合にデータを出せれば、経営層も納得しやすくなります。

国際航業が提供する「エネがえる」シリーズはまさにその発想で、CO2排出削減効果と経済効果を同時にレポートする機能を持ちます。太陽光や省エネ施策によるCO2削減量、その電気代削減額、初期投資に対する回収年数、といった項目が一つの報告書にまとまれば、企業もSDGs報告と財務報告をリンクさせて社内外に説明しやすくなります。

また、行動に移すインセンティブ設計も重要です。CO2可視化で終わらず、目標設定と達成ご褒美の仕組みを導入する企業も出てきています。例えば省エネによるコスト削減分の一部を社内還元するとか、削減達成チームを表彰するといった施策です。これは組織文化の話になりますが、データがあるだけでは人は動かず、データを使って人を動かす仕掛けがあって初めて意味を持ちます。

政府・自治体レベルでも、見える化→行動を促す仕組み作りが始まっています。東京都は大規模事業者に排出量レポート義務化と削減計画提出を求めていますし、国も温対法やGXリーグ構想で企業の排出削減を促しています。将来的に炭素に価格が付く(カーボンプライシング)時代が来れば、CO2削減=コスト削減が明確になりますので、企業の行動も変わるでしょう。それまでの移行期においては、社内プレッシャーの醸成(規制・目標)と社外インセンティブ(補助金・表彰)を組み合わせ、さらに経済メリットの見える化で背中を押すことが大事です。

要は、「環境のため」にとどまらず「自社のため」にもなる施策だと腹落ちさせることが、データを行動につなげる秘訣です。そのためのデータ加工・提示の工夫、制度設計の工夫を今こそ進めるべきでしょう。

9. 市民理解と脱炭素マインド醸成の新手法

最後に触れる課題は、一般市民や従業員の脱炭素に対する理解・関与です。再エネ設備の普及には、政策や企業努力だけでなく、個人一人ひとりの理解と行動が不可欠です。例えば家庭に太陽光パネルを付けるかどうか、EVに乗り換えるかどうかは個人の意思決定ですし、企業内でも従業員の省エネ意識や協力が結果を左右します。

しかし「脱炭素」と言っても、多くの人にとってはどこか自分ごと化しにくいテーマでした。そこで求められるのが、創意工夫に富んだ啓発・教育手法です。従来のようなお堅いセミナーやパンフレットではなく、もっと楽しみながら学べるアプローチが効果を発揮します。

その一例が、前述した「ボードゲームdeカーボンニュートラル」です。国際航業が開発したこの研修ボードゲームは、ゲームを通じて楽しみながら脱炭素の施策を学べるようデザインされています。4~6人の小グループで90分程度プレイする中で、再エネ導入や省エネ施策を疑似体験し、その結果CO2排出や経済にどんな影響が出るか競い合う仕組みになっているとのことです。既存の類似ゲームより短時間・少人数で実施できる点も工夫されており、「脱炭素人材」のすそ野を広げるユニークなツールといえます。実際、自治体職員研修や企業のSDGs研修として導入が始まっており、ゲームで盛り上がりつつ自然と知識が身に付いたとの好評を得ています。

また、市民向けにはイベントやワークショップで体験型の学びを提供する動きもあります。例えばある自治体では「環境ゲーム祭」と称して子供から大人まで環境ボードゲームを遊ぶ場を設けたところ、大変な賑わいを見せました。国際航業のボードゲームも出展され、参加者がカードを手に真剣に考える姿が見られたそうです。遊びながら学ぶというアプローチは、情報過多で注意を引くのが難しい現代において極めて有効です。

企業内でも、ゲームやコンペ形式で楽しみながら脱炭素を推進する工夫ができます。例えば「社内カーボンニュートラル達成ゲーム」と銘打って、部署対抗でCO2削減量を競うとか、エネルギー管理担当を主役にしたロールプレイ研修を行うなどです。そうした擬似体験を通じて、単なる知識としてではなく感情を伴った理解が生まれます。それが行動変容の原動力になるのです。

さらに、昨今注目すべきは生成AIやデジタルツイン技術を使った擬似体験です。例えば、家庭のエネルギー収支をデジタルツインで再現し、「もし太陽光パネルを付けたら電気代とCO2がこれだけ変わります」「EVにしたらガソリン代とCO2がこれだけ…」とVR空間で可視化する、といった取り組みも今後可能になるでしょう。そうなれば市民一人ひとりが自宅でシミュレーションを試せるようになり、脱炭素が自分ごととしてリアルに感じられるはずです。

自治体の施策広報でも、ポジティブなメッセージ発信が大事です。「太陽光義務化で負担が…」ではなく「太陽光設置で電気代これだけおトク!」といった伝え方をすることで、市民の心象は大きく変わります。実際、東京都の新築義務化についても、8割近くの都民が「経済効果シミュレーションを利用したい」と答えており、不安よりメリットを知りたいというのが本音です。そのニーズに応える情報提供が求められます。

総じて、市民や従業員の「腹落ち」と「主体的な参加」を引き出すには、双方向で楽しく学べる場作りが不可欠です。脱炭素は決して我慢や強制だけの世界ではなく、新しい技術やライフスタイルを楽しむ機会でもあると伝えることが大切でしょう。幸いなことに、EVしかりスマートホームしかり、ワクワクするようなテクノロジーが揃っています。それらをポジティブな物語として語り、市民一人ひとりを巻き込んでいく――このソフト面の取り組みが、ハード・データの側面と相まって脱炭素社会への大きな推進力となるのです。

10. 再エネ普及加速に向けた総合戦略と今後の展望

以上、脱炭素と再エネ普及における隠れた課題とその解決策を、多角的に見てきました。それらを踏まえ、最後に総合的な戦略の方向性をまとめます。

(1)データ駆動・迅速性: 再エネ普及には、迅速で信頼性の高いデータ提示が不可欠です。投資回収や経済効果の不透明さは普及のブレーキとなるため、クラウドシミュレーションやAI予測を活用してスピーディに見える化し、なおかつ保証や第三者検証で信頼担保することが重要です。

(2)現場DXと専門サービス: 営業・設計現場の負荷を減らすには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進アウトソーシングの活用が鍵になります。高機能なシミュレーションツールやAPI連携で作業を自動化・高速化し、不足リソースは外部の専門チームで補完するというハイブリッド戦略が有効です。

(3)知識・スキル共有: 技術や制度が高度化する中、組織内の知識格差を埋める仕組みが必要です。研修や勉強会で人を育てると同時に、ツールが知識をアシストする形を整えます。属人知をシステム化し、誰でも扱えるようにして人材不足を補います。

(4)インセンティブ設計: 補助金など公的支援はフル活用しつつ、それだけに頼らず市場原理や経済メリットで動く仕組みを構築します。カーボンプライシングや電力市場の工夫で「脱炭素した方が儲かる」状況を作り出し、さらに社内外で目標設定・評価制度を整えて行動変容を促すことが大切です。

(5)意識改革と参加促進: ソフト面では、楽しく学べる・参加できる脱炭素施策を展開します。ゲームやイベント、双方向コミュニケーションを通じて、市民・従業員が「やらされ感」でなく自発的に取り組みたくなる環境を作ります。これは脱炭素を文化として根付かせるためにも極めて重要です。

これらを統合すると、端的には「デジタル×人間」の力を最大化することが再エネ普及を加速させると言えるでしょう。デジタル技術は膨大な情報処理や予測・自動化に威力を発揮し、人間は創意工夫や合意形成、行動喚起に強みがあります。その両輪をフルに回すことで、現在顕在化している課題も潜在的な課題も乗り越えていけるはずです。

最後に展望として、日本における脱炭素・再エネ普及は、ここ1~2年で大きな転換点を迎えています。国レベルのGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議や各地のゼロカーボン宣言など、トップダウンの動きがある一方、電気代高騰や災害による停電などを契機にボトムアップのエネルギー意識も高まっています。調査でも、大企業の87.6%がGXの重要性を認識しながらも40.9%は具体行動に移せていないという現状がありますが、逆に言えば半数は既に動き始めているとも取れます。地方自治体でも85.2%がGX重要としつつ37.1%が動けていない状況ですが、裏を返せば6割強は何らか着手しているわけです。今後、この「動けていない層」を如何に後押しするかが勝負になります。そのために本稿で述べたような課題解決策の実践が極めて重要になるでしょう。

結論: 脱炭素と再エネ普及の最大の壁は技術でもお金でもなく、「人々の不安と常識の壁」かもしれません。それを崩すのはデータの力であり、信頼の力であり、楽しさの力です。世界最高水準の知見とクリエイティビティを結集し、見えない課題を一つひとつ解決していくことで、日本の脱炭素は一気に加速できるはずです。“課題先進国”の日本だからこそ、生まれるイノベーションに期待しつつ、共に次のアクションを起こしていきましょう。


11. ファクトチェックと情報源サマリー

本記事で取り上げた統計データや事例は、すべて信頼できる調査結果や公式発表に基づいています。主要な出典を以下にまとめます。

  • 金融機関担当者の課題認識: 「太陽光・蓄電池システムの融資審査で86.0%が課題、具体は将来予測の不確実(59.3%)・データ収集に時間(54.7%)」。調査は国際航業「独自レポートVol.30」(2025/6/20発表)。

  • 営業現場の負担実態: 「販売提案に88.2%が課題、特にヒアリング/現調(41.8%)と需要データ取得(37.3%)が負担」、「設計で容量最適化方法不明66.7%、提案書作成が負担33.3%」。(独自レVol.28, 2025/5/26)

  • 初期提案に具体数値要求: 「導入検討企業の約7割が初期段階から具体的数値を要望」、「営業提案で詳細見積り重視61.3%だが迅速な概算希望34.2%も存在」。(独自レVol.27, 2025/4/18 およびその要約記事)

  • デジタル導入の効果: 「クラウド型『エネがえるBiz』でROI算出が数日→10分に短縮、信頼性高い提案書を迅速作成」。(国際航業ニュースリリース, 2025/2/26)

  • エクソル社のAPI活用事例: 「エネがえるAPI導入でシミュレーション時間が1件2–3時間→5–10分に短縮。複数パターン比較が容易に」。加えて電力プラン自動更新・仮想デマンド生成で提案効率劇的向上。(ニュース記事, 2025/6/16)

  • シミュレーション信頼性と保証: 「再エネ導入見送り企業の67.0%が提示シミュレーションの信憑性を疑った経験あり」。「結果保証があれば57.0%が購入意欲、60.0%が社内決裁容易になると回答」。(独自レVol.18, 2024/6/13)

  • シミュレーション結果保証の制度: 「国際航業×日本リビング保証により国内初の『経済効果シミュレーション保証』提供開始。太陽光・蓄電池の発電量差を最大10年間補填(住宅上限1,000万円/産業3,000万円)」。(ニュースリリース, 2024/4/30)

  • EV/V2H提案の課題: 「EV・V2H提案に92.5%が課題、社内スキル不足80.6%。不足知識はV2H仕組み63.1%, EV技術39.6%, 電力制度36.9%等」。(独自レVol.29, 2025/6/6)

  • PanasonicのAPI活用事例: 「おうちEV充電サービスにエネがえるAPI導入。最新電力料金データ管理負担を軽減し、安価時間帯での充電最適化を実現」。(ニュースリリース, 2025/6/9)

  • 人材確保の課題: 「太陽光・蓄電池販売施工109社の90.7%が技術職人材確保に難しさ。理由トップは『必須資格保有の応募者少ない』63.6%」。「提案書作成や試算に時間かかり顧客を待たせている企業80.7%」。(独自レVol.24, 2024/11/12)

  • 営業ツールで技術者負担軽減: 「85.3%が、営業が簡単に使える試算ツール導入で技術者のキャパ向上につながると期待」。(同上Vol.24)

  • CO2可視化と行動ギャップ: 「CO2可視化導入企業で削減行動したのは35.5%のみ」。「66.7%が『可視化が直接利益やコスト減につながっていない』と回答」。「86.0%が経済効果シミュレーションも自動でできるツールなら使いたい」と回答。(独自レVol.25, 2024/12/18)

  • 自治体・市民意識: 「地方自治体職員の82.4%が『市民の理解得られず』と実感。要因は経済的負担・効果不透明さ。【80.4%がシミュ結果保証制度あれば普及進む】と期待」。(独自レVol.22, 2024/9/5)「東京都民の84.7%が都のCN施策を評価。今後求める第1位は『補助金増額』52.3%。」。(独自レVol.23, 2024/10/2)

以上の出典はすべて国際航業株式会社の公式ブログ記事・ニュースリリースおよび関連ニュースサイトからのものです。記事内の各所にも【】付きで出典箇所を明示しています。内容は2025年6月時点までの最新情報を反映しており、信頼性の高いデータに基づいて分析・考察を行いました。読者の皆様におかれましても、ぜひこれら一次情報も参照いただき、脱炭素への理解をさらに深めていただければ幸いです。

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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