市場連動型電気料金プラン対応の太陽光・蓄電池・EV・V2H経済効果シミュレーターとは?(構想)

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

エネがえる アイデア
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市場連動型電気料金プラン対応の太陽光・蓄電池・EV・V2H経済効果シミュレーターとは?(構想)

理想のシミュレーションUXとシミュレーション結果レポート設計

注意)本記事は、現在エネがえるで構想中の、市場連動型料金プラン対応の太陽光・蓄電池・EV・V2H経済効果シミュレーターの構想をまとめた記事です。本記事の内容はまだ未実装ですが、2026年にはリリースされるイメージで現在構想を進めています。

以下のAPI等をベースに、住宅用、産業用、EV用と多様な用途で利用可能なプロダクトを構想中です。

当面、各種設計・開発を進めるフェーズでまだプロダクトはできていませんが、もし本構想にご興味ある電力会社、再エネ関連事業者、官公庁・自治体の方はお気軽にご相談ください。

参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 ~大手新電力、EV充電器メーカー、産業用太陽光・蓄電池メーカー、商社が続々導入~ | 国際航業株式会社 

※注 以下の記事の構想は現時点での構想です。実際のプロダクト設計・開発フェーズでは仕様が変更になることがございますので予めご了承ください。

はじめに:エネルギー選択の新パラダイム

電力自由化の進展に伴い、日本でも卸電力市場価格に連動して電気料金が変動する市場連動型電気料金プランが注目を集めています。この革新的プランは従来の固定単価制とは異なり、電気代が30分ごとの市場価格に応じて上下するため、利用者に新たな節約機会とリスクをもたらします。

2023年のJEPXスポット市場価格は30分毎の最安値0.01円/kWhから最高値52.94円/kWhまで振れた記録があり、その変動幅は従来プランでは考えられないスケールです。一方で現在この市場連動型プランを選択している需要家は全契約の約0.78%(約69万件)に留まっており、価格変動リスクとメリットを“見える化”するシミュレーションツールの整備が、その普及拡大の鍵を握っています。

参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 ~大手新電力、EV充電器メーカー、産業用太陽光・蓄電池メーカー、商社が続々導入~ | 国際航業株式会社 

本記事では、市場連動型プラン対応の太陽光・蓄電池・EV・V2H経済効果シミュレーターの理想像を考察します。特に、30分値×365日分の詳細データを扱う高度な計算APIと、今後開発予定の「エネがえるASP」「エネがえるBiz」「エネがえるEV/V2H」各サービスのシミュレーションロジック統合を前提に、ユーザーエクスペリエンス(UX)の設計、入力項目仕様、出力レポート仕様、及びシミュレーション結果の提示方法(確率分布や感度分析による表現)について構想を述べます。

また、業界で暗黙の常識となっているものの心の奥底で感じるモヤモヤ(例えば「動的価格のリスクをどう伝えるか」など)にも切り込み、課題と解決策を議論します。

第一章:市場連動型プランの本質と従来プランとの違い

固定単価プランとのリスク・リターン構造の違い

一般的な従量電灯などの固定単価プランでは、電気料金単価があらかじめ決まっており、利用者にとって料金の予測可能性が高い安心感があります。例えば東京電力の従量電灯Bでは使用量に応じ3段階の固定単価(第1段階29.80円/kWh、第3段階40.49円/kWhなど)が設定されています。

これに対し市場連動型プランでは、電力市場価格の変動リスクと電気代節約のチャンスが利用者側にシフトします。言い換えれば、固定プランが「安定(リスクゼロ)だが節約余地も限定的」なのに対し、市場連動プランは「不確実性はあるが行動次第で大きな節約を得られる」契約と言えます。実際、猛暑日には需要増・市場価格高騰が重なり高負担となるリスクがある一方、天候や需要が安定した日には低価格の恩恵を直接受けられます。そのためリスク許容度が高く、需要に応じて柔軟に対応できる利用者ほど市場連動プランの利点を享受できます。

時間帯別料金(TOU)プランとの動的性の違い

固定単価プランと動的プランの中間には時間帯別料金(TOU: Time-of-Use)プランがあります。TOUプランではあらかじめ1日の時間帯を幾つかの区分に分け(例:昼間・夜間など)、区分ごとに異なる単価を設定します。例えば関西電力の「はぴeタイムR」では昼間・夜間・リビングタイムの3区分で料金単価が決められています。このようにTOUはあらかじめ固定された時間帯単価によって価格変動に備える方式ですが、市場連動プランはリアルタイムに変動する市場価格そのものを反映するため、同じ時間帯でも日によって料金が大きく異なる点が決定的な違いです。したがって、市場連動型では利用者により高度な需要予測能力や柔軟な電力使用調整が要求されます。例えばTOUプランなら毎日夜間が安いと決まっているので蓄電池で夜間充電・昼放電する定型戦略が立てやすいですが、市場連動プランでは翌日の価格を見極めつつ充放電や消費を調整するリアルタイム対応力が鍵となります。

市場連動型プランの多様なタイプ

一口に市場連動型プランと言っても、その価格反映方式にはいくつかのバリエーションがあります。主な類型として(1)即時完全連動型(30分ごとの市場価格を翌日料金に即反映)、(2)平均平滑化型(直近数ヶ月の市場価格平均で料金を算定し急変を緩和)、(3)価格帯制限型(市場価格が一定範囲以上になった場合に上限価格や調整額を適用しスパイクリスクを抑制)などが挙げられます。プラン提供者(新電力各社)は自社顧客層のリスク許容度や調達戦略に応じ、これらの方式を組み合わせたメニューを設計しています。シミュレーター開発においても各プランタイプの計算法(例:平滑化期間や上限単価設定など)に対応できる柔軟性が求められます。

卸電力市場(JEPX)の仕組みと価格変動要因

市場連動型プランを理解する上では、その基盤となる日本卸電力取引所(JEPX)の価格決定メカニズムを押さえておく必要があります。JEPXでは1日24時間を30分刻みの48コマに分け、各コマで需要側・供給側の入札をマッチングするブラインド・シングルプライスオークション方式で取引価格(システムプライス)が決まります。価格には様々な要因が影響しますが、大きく供給要因(燃料価格の高騰、発電所トラブル、自然災害など)需要要因(季節・時間帯による需要変動)に二分類できます。特に再生可能エネルギーの出力変動は価格変動に直接影響を与えます。例えば晴天下では太陽光発電の大量発電により日中の市場価格は大幅下落し、一方で日没後の夕方ピーク時には供給減少と需要増加が重なり急激な価格上昇が発生する、というパターンが典型例です。実際に2023年の市場価格推移を振り返ると、晴天日の昼間帯には0円台の取引すら発生する一方、猛暑日夕方には50円超の高騰が起きています。こうした太陽光発電出力と市場価格の逆相関は、後述する蓄電池やV2Hによる価格裁定(安価時に充電・高価時に放電)の価値を高める要因となっています。

第二章:太陽光・蓄電池・EVを組み合わせたシミュレーション

太陽光発電 × 市場連動プランの意外な関係

太陽光発電(PV)を導入すれば電力の自家消費で電気代削減できる——従来の固定単価プランでは当然のこのメリットが、市場連動プランでは必ずしもストレートに享受できない点に注意が必要です。前章で述べた通り日中は太陽光の発電量増大で市場価格自体が下がりやすいため、PVによる削減効果(=発電分の調達回避価値)が想像より小さくなるケースがあります。極端な場合、正午前後の市場価格がほぼ0円となれば、その時間帯に太陽光で自家発電しても「高い電気代を節約できた」実感は得られません。業界では「太陽光でお得」と長らく言われてきましたが、市場連動の世界では太陽光の価値は市場価格に左右されるという新たな視点が重要です。この点に多くの事業者が気付き始めており、単に年間発電量×従来単価で算出した効果を提示するこれまでの提案手法に対し、「市場価格連動下での真の経済効果を評価してほしい」というニーズが高まりつつあります。

もっとも、市場連動プラン下でも太陽光のメリットを最大化する方法があります。その鍵となるのが次項の蓄電池やV2Hとの組み合わせです。太陽光発電の余剰電力を蓄電して価格が高騰する時間帯に放電することで、単独では低価値だった昼間の発電を価値あるものに変換できます。シミュレーションでは、年間の市場価格データを用いて「PV発電→蓄電→高価格帯放電」という制御を行った場合の経済効果を正確に見積もることが求められます。具体的には、30分ごとの余剰発電量を計算し、各コマの市場価格を掛け合わせることで蓄電池併用時の電力価値向上を算出します。この制御最適化により、太陽光単独では見えなかった投資回収効果が鮮明に浮かび上がるのです。

蓄電池・V2Hで広がる需要家側のアクティブ調整力

市場連動型プランにおいて真価を発揮するテクノロジーが蓄電池(Battery Energy Storage)とEVのV2H(Vehicle-to-Home:EVから家への電力供給)です。これらは需要家側が電力使用タイミングを制御する強力な手段となり、高騰する時間帯の購買電力量を減らし、安価な時間帯に充電して備えることで電気代の平準化と削減を実現します。シミュレーターでは蓄電池の容量・出力やV2Hの車載電池容量・双方向出力能力を考慮し、次のような分析が可能です:

  • ピークシフト効果の定量化: 過去1年の価格データを基に、蓄電池がある場合と無い場合の電力購入コストを比較します。例えば「蓄電池により年間○○円のピーク時調達コストを回避」といった形で効果を算出できます。

  • 充放電戦略のシミュレーション: 毎日、価格が最も低い時間帯に充電し、価格が高騰した時間帯に放電すると仮定した場合の最大節約額を計算します。これにより理論上の最大メリット(ベストケース)を提示できます。併せて「現実的な制約下での運用シナリオ」(例えば夜間に満充電できない日や、連日放電すると容量不足になるケースなど)も考慮し、複数シナリオの結果を提示すると信頼性が高まります。

  • V2Hの非常時・経済効果両面評価: EVを非常用電源としてだけでなく平常時の電気代削減にも活用する動きが進んでいます。シミュレーションでは、平日の夜間にEVを充電し帰宅後の夕方ピークに家庭へ放電する、といったV2H運用による電力コスト削減額を試算可能です。その上で非常時には何時間バックアップできるか、といった付加価値も示し、経済効果+レジリエンス強化の両面から蓄電投資の妥当性を可視化します。

蓄電池やV2Hの導入効果を正確に伝えるには、30分単位の充放電シミュレーションが不可欠です。年間17,520コマ分(30分×24時間×365日)の充放電スケジュール最適化問題を高速に解く必要がありますが、エネがえるAPIでは独自技術や独自のロジックにより現実的な計算時間でこれを実現する予定です。このような高精度かつ高速なシミュレーション基盤により、需要家ごとの最適バッテリー容量提案や、投資採算性のシナリオ分析(楽観・悲観ケースなど)が可能となります。他社には真似できない精緻な最適化アルゴリズムが独自優位性の源泉となっています。

EV充電スケジュール最適化のインパクト

次にEV自動車そのものの観点で、市場連動プランとの相性を見てみましょう。EVは従来ガソリン車の燃料代を電気代に置き換える存在ですが、電気代が動的に変わることで運用コストも変動します。そのため充電する時間帯の最適化が経済性に大きく影響します。例えば深夜電力が安いTOUプランでは深夜充電が常識でしたが、市場連動プランでは必ずしも「深夜=最安」とは限りません。風力発電が多い未明が安い日もあれば、需要低迷の日中に安値が出る場合もあります。シミュレーションでは、過去の価格データや予測に基づきEVの1日あたり充電コスト分布を算出し、「最適な充電タイミングでは月々○○円、ワーストタイミングでは△△円」など、運用次第でこれほど差が出るという事実を提示します。併せて、ユーザーが自分で安い時間帯を探さなくても済むように、自動充電スケジューリング機能との連携も視野に入れます。

実際、パナソニックが提供予定の「おうちEV充電サービス」でも、ユーザーに最適な電気料金プランの提案と安価な時間帯への充電制御を組み合わせた仕組みが採用されています。このサービス開発にあたっては全国の最新電力料金データを網羅し、電気代がお得な時間帯を見極めるAPIが不可欠であったと報告されています。エネがえるAPIはまさにその役割を果たし、電力プランシミュレーション機能と料金データ自動更新機能で充電最適化を実現しました。加えて、将来的な太陽光連携やEVディーラーでの提案ツール展開まで見据えてエネがえるAPIが選定された経緯があり、単なる計算エンジンに留まらない拡張性の高さも評価されています。

このように、太陽光・蓄電池・EV・V2Hを組み合わせた市場連動プラン対応シミュレーションは、需要家のエネルギーマネジメントをトータルで最適化する鍵となります。他社の追随を許さない包括的プラットフォームとして、エネがえるは低圧から高圧まであらゆるユーザーのケースをカバーしつつ、詳細な制御ロジックまで反映した経済効果試算を提供できる点で独自の地位を築いています。実際に、国内700社以上のエネルギー関連企業がエネがえるを採用し業界標準となっていることがその証左と言えるでしょう。

第三章:ユーザー入力と出力レポートの設計(案)

最小入力で正確なシミュレーションを可能にする工夫

高度なシミュレーションであっても、ユーザー入力が煩雑では現場では使われません。本シミュレーターでは、必要最小限の情報から30分値×365日の消費パターンを推定できる仕組みを整えています。例えば需要家が用意する入力は、「過去○ヶ月の電気使用量(または電気代)」「契約容量(kW/kVA)」程度で構いません。ユーザーが業種や建物規模を選択すれば、システムはそのプロファイルに適したロードカーブテンプレートを自動適用し、約30秒で年間17,520コマ分の需要データを仮想生成します。実際、エネがえるAPIを導入した企業では「業種と延床面積を入力するだけで高精度な需要データが即時に得られ、提案初期段階のスピードが飛躍的に向上した」と報告されています。また、既にスマートメーター30分値データ(Bルート等)が取得可能な需要家であれば、それをCSVインポートすることで実測に基づくシミュレーションも可能です。スマートメーター実データの活用により、従来は平均モデルに頼っていた計算が各ユーザー固有の使用パターンに合わせた精密計算へと進化します。

さらに将来的には、機械学習を用いた需要予測アルゴリズムにより入力データを一層簡略化していく展望があります。気象条件・曜日・過去使用実績・世帯構成等のデータから個別需要を高精度予測するアンサンブル学習モデルを構築し、ユーザーが細かな使用状況を入力しなくても自動で「あなたの30分毎需要予測」を生成できるようになります。入力ハードルを下げつつ精度を上げるこの取り組みは、真に誰でも使えるシミュレーターを実現する上で重要なポイントです。

出力レポートに盛り込むべき指標とフォーマット(案)

ユーザーが最も関心を寄せる出力結果は、分かりやすくかつ網羅的に提示します。エネがえるでは診断レポートをExcel形式で自動生成する機能が提供されていますが、本シミュレーターでもWeb画面上のインタラクティブ表示と、営業提案書向けのExcelレポート出力の双方に対応します。レポートには以下の主要指標を含めます。

  • 投資対効果(ROI)と投資回収期間: 初期費用に対し年間どれだけの正味メリット(電気代削減+収入)が得られるか、何年で元が取れるかを算出します。需要家が再エネ導入をためらう最大の理由は「投資回収できるか不安」であるとの調査結果もあり、ROIと回収期間の明示は必須です。エネがえるBizではこのROI計算にかかる時間を従来数日→わずか10分に短縮する機能が実装され、大手メーカーやEPCの営業効率向上に寄与しています。

  • 長期キャッシュフロー計算(ライフサイクル収支): 導入後20年間程度の年間収支シミュレーションを行い、累積キャッシュフローがプラス転換するタイミング(=回収時期)や内部収益率(IRR)を示します。年ごとの電気代削減額、売電収入、メンテナンスコスト、補助金などをプロットした年次収支グラフを掲載し、ユーザーが将来像をイメージしやすくします。また、劣化による発電量低下や電気代上昇率などの前提条件も明記し、試算に用いた前提が透明になるよう配慮します。

  • LCOE(Levelized Cost of Energy): 太陽光発電システムの発電原価を表す指標で、総費用を生涯発電量で割った発電コスト(円/kWh)を算出します。これは発電源としての経済性を評価する指標であり、シミュレーターでは導入プランのLCOEを計算し、現在の電力調達コスト(従来電気料金単価や市場価格平均)と比較することで「◯年目以降は調達コストより安く発電できる」といった訴求が可能です。

  • 電力削減率・自家消費率・自給率: 導入によって年間購入電力量・電気代が何%削減できるか(削減率)、太陽光発電した電力量のうち何%を自家で消費できたか(自家消費率)、需要電力量のうち何%を自己資源で賄えたか(自給率)といった指標を算出します。例えば「電気代を年間▲30%、CO2排出量を▲25%削減」「太陽光発電のうち80%を自家消費し、全体電力需要の60%をまかなった」等、一目で効果が伝わる数字です。CO2削減量は電力会社の排出係数を用いてトンCO2換算で表示し、環境貢献度も定量化します。

  • 確率分布・リスク指標: 市場価格の変動により結果がブレる範囲を示すため、年間電気料金や節約額の確率分布を可視化します。初心者向けには「10回中7回は○万円以上おトクになる」といった頻度表現で直感的に伝え、次にヒストグラムや箱ひげ図で分布形状を示し、最後に上級者向けに95%信頼区間やVaR(予想最大損失)といった統計指標も提供する、といった三層構造で情報開示します。重要なのは、ユーザーのリテラシーに応じて段階的に詳細情報を掘り下げられるUIにすることです。これにより、「最悪の場合ばかり強調すると不安を煽るが、リスクを隠すのも不誠実」というジレンマを解決し、ユーザーが自分のペースと関心度合いでリスク情報を理解できるようになります。また、パラメータ変更時には料金グラフがスムーズにアニメーション更新され、リスクレベル変化時には色彩の変化で直感的に認識できるといったマイクロインタラクションも取り入れます。さらに、不確実性の伝え方にも注意を払い、「最悪の場合◻◻円負担増」ではなく「念のため想定しておきたいケースでは◻◻円増加」といった穏やかな表現に置き換えることで心理的負担を軽減します。

  • 感度分析結果: 前提条件の変化に対する結果の感度もレポートします。例えば「電力市場価格が10%上昇した場合のコスト増加分」「太陽光発電量が想定より5%少なかった場合の収支影響」「蓄電池容量を半分にした場合の節約額減少」など、主要パラメータを変化させたシナリオ比較を表やグラフで示します。これにより、一つの試算結果だけでなく将来の不確実性を織り込んだレンジで効果を伝えられ、需要家は自分のリスク許容度に照らして導入判断をしやすくなります。

以上のような情報を盛り込んだレポートは、Excelではグラフ付き提案書形式に自動整形されます。Excel出力には計算の詳細を確認できる裏シートも含め、例えば年間PL計算シートや、先述の確率・感度分析データ、各種単価マスタなどを格納します。これにより提案を受けるお客様が「どのような計算根拠でこの数字が出ているか」を透明性高く確認できるようにします。特にB2B商談では、担当者がお客様社内の稟議を通す際にエビデンス提示が求められるため、根拠データが揃った計算シート一式を提供できることは大きな強みです。

最後に、システムは利用者ごとにリスク許容度を考慮した分析も可能です。例えばリスク回避的な利用者には市場連動プランの期待節約額からリスクペナルティを差し引いたリスク調整後効果を提示し、リスク許容的な利用者にはより攻めたシナリオのメリットを強調するといったカスタマイズです。に示されているように、期待節約額Eとコスト変動リスクσに基づくRAR = E[savings] - λ × σ(λはリスク回避係数)といった指標を用いれば、定量的にユーザー毎に最適なプラン選択を支援できます。高度な数式に見えますが、これを「あなたには固定+市場連動プラン併用がおすすめです」のような分かりやすい提案メッセージに落とし込むことで、裏では最高水準の分析をしつつ表面上はシンプルなUXを保つというアプローチも可能です。

おわりに:デファクトスタンダードとしてのエネがえると今後の展望

本稿では、市場連動型プラン対応の太陽光・蓄電池・EV・V2H経済効果シミュレーターの理想像を、UX設計から分析ロジックまで詳細に検討しました。「むずかしいエネルギー診断をかんたんにカエル」というビジョンのもと開発が進むエネがえるシリーズは、まさに本記事で描いた世界を実現しつつあります。

住宅用から産業用まで、電力契約区分や導入パターンを問わず一つのプラットフォームでシミュレーションできる独自性は他社には真似できず、既に国内エネルギー業界における事実上のデファクトスタンダードとなっています。官公庁や自治体、シャープ、パナソニック、トヨタ自動車、東京ガスをはじめ多数の大手企業がエネがえるを採用し、太陽光・蓄電池提案、電気料金比較シミュレーション、EV充電サービスに活用していることがその信頼性を裏付けています。

今後、市場連動型プランが普及するにつれ、本シミュレーターが果たす役割はますます大きくなるでしょう。単なる試算ツールに留まらず、蓄電池制御やデマンドレスポンスへのフィードバック、さらには金融商品(例:電気代変動保険やキャップ契約)の設計評価にも応用できるエネルギーフィンテック基盤へと発展する可能性もあります。

エネがえるでは、常に顧客共創型の開発スタイルを取っており、特に先進的な潜在ニーズを持つ大手エネルギー関連事業者との共創により、受託ではなく、当社がリスクを持って開発し、月額費用のみで提供するスタイルがプロダクト標準開発手法となっています。各種構想やアイデア、潜在んニーズを持つ大手エネルギー事業者や官公庁自治体の皆様は遠慮なくご相談ください。

エネがえるでは、こうした次世代のニーズも見据えて技術開発を継続しており、デジタルツイン技術で実環境を仮想再現して様々なプランをリスクなく試行する取り組みや、量子コンピューティングによる大規模最適化、ブロックチェーンによる計算証跡の保証といった最先端トピックにも机上の研究を進めています。常に世界最高水準の知見を取り入れながら、ユーザーにとってはあくまで「使いやすく、分かりやすい」ツールであり続けること——それが我々の目指すところです。

エネルギーの未来を切り開く鍵は、適切な情報にもとづく意思決定です。 本シミュレーターを通じて、再エネや新料金メニューに対する正しい理解と最適な選択が社会に広がることを願っています。市場連動型プラン対応APIの導入や、太陽光・蓄電池・EVの活用に少しでもご興味をお持ちの企業様は、ぜひエネがえるまでお気軽にご相談ください。私たちはβ版提供を含めたあらゆる協業の形態で皆様とお会いできることを楽しみにしております。

Sources:

  1. Htbエナジー, 「市場連動型料金プラン」紹介記事, 2023年 (電力自由化と市場連動プランの革新性について)

  2. エネチェンジ (ENECHANGE) 法人向けブログ, 「法人高圧向け市場連動型プランとは?」, 2024年3月更新 (2023年スポット市場価格: 最安0.01円・最高52.94円の言及)

  3. 経済産業省 資料 (2021年2月時点 市場連動型プラン需要家約69万件=0.78%)

  4. U-Power社サイト, 従量電灯Bの料金体系説明 (固定単価プランの典型構造)

  5. エネがえる技術ブログ, 市場連動型と固定型のリスク・リターン構造の違い (予測可能性とリスク・節約機会のトレードオフ)

  6. エネがえる技術ブログ, TOUプランと市場連動型の比較 (静的 vs 動的価格設定の違い)

  7. 経産省 資料, 市場連動型料金プランの三類型 (即時反映型・平滑化型・価格帯制限型の説明)

  8. 出光興産, JEPX価格決定プロセス解説 (30分×48コマのブラインドオークション方式)

  9. エネチェンジ 法人向けブログ, 市場価格変動要因 (燃料・需給要因、晴天時の下落と猛暑時の急騰)

  10. エネがえる技術ブログ, 2023年市場価格の変動幅 (再エネ出力変動と価格の相関例)

  11. 国際航業ニュースリリース, 「エクソル、自家消費シミュレーションにエネがえるAPI導入」, 2025年6月16日 (業種・延床から30秒で仮想デマンド生成)

  12. エネがえるBiz公式ブログ, 「5分で投資シミュレーション!」 (CSVインポートやテンプレート活用で素早い試算)

  13. エネがえる技術ブログ, スマートメーターデータ活用の可能性 (30分実データで個別最適化計算)

  14. エネがえる技術ブログ, 機械学習による需要予測 (アンサンブル学習で個別化予測)

  15. 国際航業プレスリリース, 需要家アンケート結果 (「投資回収できるか」が導入懸念トップ)

  16. 国際航業プレスリリース, 「ROI・回収期間自動計算機能 提供開始」, 2025年2月26日 (ROI計算が数日→10分に短縮)

  17. エネがえるBiz公式ブログ, レポート機能アップデート (PL収支・回収期間シート追加)

  18. エネがえるBiz公式ブログ (Excelレポートに「PL根拠(内部用)」シート追加)

  19. エネがえる技術ブログ, 確率分布の可視化デザイン原則 (三層構造で統計情報を開示)

  20. エネがえる技術ブログ, マイクロインタラクション&表現最適化 (グラフのスムーズ更新・色変化、リスク表現の言葉選び)

  21. エネがえる技術ブログ, 比較分析の核心数式 (Risk-Adjusted Returnによる最適プラン選択)

  22. エネがえるBiz公式ブログ, 著者情報 (国内700社以上導入・シェアNo.1のシミュレーター)

  23. PR TIMES (国際航業), パナソニック「おうちEV充電サービス」にエネがえるAPI導入 コメント (EV・太陽光との連携見込みや他社比較でエネがえるAPIが最適との判断)

  24. エネがえる技術ブログ, プラットフォーム戦略と新規事業 (シミュレーション保証サービスや電力保険・自動調達・エネルギー取引プラットフォームへの展開可能性)

  25. エネがえる技術ブログ, 量子コンピューティング & ブロックチェーン応用 (量子アニーリングによる最適化高速化、ブロックチェーンでシミュレーション結果の改ざん防止)

  26. エネがえる技術ブログ, デジタルツインによる仮想実証 (実環境を仮想空間で再現しプラン効果をリスクなく事前検証)

  27. エネがえるAPI記事 (当社APIが業界標準であり、市場連動型料金プラン対応APIは2025年秋提供予定。興味ある方はお気軽にご相談を、の呼びかけ)

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