地産地消まちづくりのヒントとアイデアあふれる本、音楽、映画は?

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

地産地消
地産地消

目次

地産地消まちづくりのヒントとアイデアあふれる本、音楽、映画は?

地産地消まちづくりを成功に導くためのインスピレーション源は?地域の食や農、エネルギー、文化を通じて持続可能な未来を創造するヒントが詰まった本10冊、音楽10選、映画10作品をご紹介します。

【10秒でわかる要約】

地産地消まちづくりは、単に「地元で生産されたものを地元で消費する」経済活動を超え、地域の文化的・社会的価値の循環と創造を促す力を持っています。気候変動食料安全保障地域経済の衰退などの課題解決に向け、本記事では実践的なインスピレーションを与える30の作品(本10冊、音楽10選、映画10作品)を紹介。さらに経済効果の評価方法、実践手法、未来展望まで網羅的に解説します。

はじめに:地域の循環と創造を紡ぐ地産地消まちづくり

地産地消という言葉が広まって久しいですが、その本質は単に「地元で生産されたものを地元で消費する」という経済活動を超え、地域の文化的・社会的価値の循環と創造を促す力を持っています。今、私たちが直面する気候変動食料安全保障地域経済の衰退コミュニティの断絶といった課題に対して、地産地消を核としたまちづくりは具体的な解決策となる可能性を秘めています。

本記事では、地産地消まちづくりに関するインスピレーション溢れる本10冊、音楽10選、映画10作品を厳選し、それぞれが私たちに与えてくれる示唆と実践のヒントを詳細に解説します。これらの作品は、地域の食や農、エネルギー、文化を通じて、持続可能な未来を創造するためのヒントに満ちています。

地域循環型の新しい価値観を模索する自治体職員、まちづくりの実践者、環境活動家、そして地域の未来に関心を持つすべての方々に、この記事が新たな発想と行動のきっかけとなれば幸いです。

1. 地産地消まちづくりの基本概念と多面的効果

地産地消の本質とまちづくりへの展開

地産地消とは、文字通り「地域で生産されたものを地域で消費する」という経済活動モデルですが、その本質は「地域内経済循環」と「関係性の再構築」にあります。農産物加工品だけでなく、エネルギー人材情報文化など、地域の多様な資源を循環させることで、地域の自立性持続可能性を高めていくアプローチです。

特に食を媒介とした地産地消は、以下のような特徴を持ちます:

  • 距離的近接性:生産地と消費地の物理的な距離が近い
  • 関係的近接性:生産者と消費者の社会的関係が近い
  • 時間的近接性:収穫から消費までの時間が短い
  • 情報の対称性:生産方法や品質に関する情報共有が容易

これらの特徴が相互に作用することで、経済的・社会的・環境的な価値が生み出されます。

地産地消がもたらす多面的効果

地産地消まちづくりの効果は、大きく以下の3つの側面から考えることができます。

経済的効果

  • 地域内経済循環の促進:地域の資金が外部に流出せず、域内で循環することによる経済効果
  • 流通コストの削減:輸送距離の短縮によるコスト削減
  • 地域の雇用創出:地域内での生産・加工・販売の拡大による雇用機会の増加
  • 生産者の収益性向上:流通経費の節減による生産者の手取り増加

経済波及効果の算出には、産業連関表を用いた分析が有効です。例えば、地域材利用の自給率向上による経済波及効果の研究では、木材部門の自給率が高いシナリオほど生産誘発額が大きくなることが示されています。

環境的効果

  • 輸送距離短縮によるCO2削減:いわゆる「フードマイレージ」の削減
  • 環境保全型農業の促進:消費者との顔の見える関係による環境配慮型生産の拡大
  • 資源循環の促進:廃棄物の地域内処理・リサイクルの促進

フードマイレージ(食料の輸送距離と量を掛け合わせた指標)の削減は、地球温暖化対策としても注目されています。日本の食生活が環境に与える影響を理解する上で重要な概念です。

社会・文化的効果

  • 地域アイデンティティの強化:食文化や伝統的な生産方法の継承による地域の誇りの醸成
  • コミュニティの再構築:生産者と消費者の交流による地域コミュニティの活性化
  • 食育と健康増進:旬の食材や伝統食の価値再認識による食生活の改善
  • 安心・安全の確保:生産過程の可視化による食の安全確保

音楽イベントや地域内での交流は、こうした社会・文化的効果を高める重要な要素となります。

2. インスピレーション溢れる本10選

地産地消まちづくりに関する知識と実践のヒントが詰まった本を10冊厳選しました。それぞれの本が持つ独自の視点と学びを解説します。

1.『地産地消と学校給食 有機農業と食育のまちづくり』安井孝著

愛媛県今治市における30年にわたる地産地消・有機農業政策の全容を紹介した一冊です。学校給食から始まり、地域全体に広がった有機農業を基盤とするまちづくりの軌跡を詳細に描いています。

本書の核心は、「学校給食を変えることが地域を変える」という哲学です。子どもたちに安全でおいしい食を提供したいという一点の思いから、農家、行政、学校、そして市民を巻き込んだ大きな運動へと発展していく様子が描かれています。

実践者である著者自身の手による記録であるため、政策立案から実施に至るプロセス、直面した課題とその克服方法など、具体的かつ実践的な内容となっています。地産地消や有機農業を政策に位置づけたい自治体職員、学校給食の改善に取り組みたい栄養士、食育に関心のある教育関係者に特におすすめの一冊です。

2.『食のまちづくり 小浜発!おいしい地域力』佐藤由美著

福井県小浜市における「食のまちづくり」の実践を詳細に記録した本です。幼児から高齢者までを対象とした生涯食育、地場産学校給食など、行政主導で始まった活動が市民に広く浸透し、伝統野菜や伝承料理の掘り起こし、環境保全、六次産業化へと発展していく様子が描かれています。

特筆すべきは「生涯食育」という概念です。食育を子どもだけでなく、すべての世代に広げる取り組みは、地域全体の食文化継承と健康増進に寄与しています。また、地域の食文化を支える調味料や水など、食を取り巻く環境にも着目した広い視野を持った内容となっています。

本書は食文化を軸としたまちづくりの可能性を示すとともに、地域住民の参加と協働によるボトムアップ型のまちづくりの重要性を教えてくれます。

3.『成功する「地域ブランド」戦略』

地域ブランドの基礎からマーケティング戦略まで網羅的に解説した実用書です。地産地消と密接に関連する地域ブランド構築のための具体的手法を、理論と事例の両面から学ぶことができます。

本書のユニークな点は、ブランディングとマーケティングの基礎知識を地域資源に適用する方法を体系的に示していることです。単に特産品を売るだけでなく、地域の価値全体を高めるための戦略的アプローチを学ぶことができます。

地域資源を活かした商品開発や販売促進に取り組む事業者、行政担当者、まちづくり団体のリーダーにとって、実践的なガイドブックとなる一冊です。

4.『ゼロ・ウェイスト・ホーム―ごみを出さないシンプルな暮らし』ベア・ジョンゾン著

家から出るゴミをゼロにする「ゼロ・ウェイスト」の実践方法を紹介した本です。単にゴミを減らすだけでなく、モノを減らすことで時間とお金を増やし、本当に望む暮らしを実現する方法を提案しています。

地産地消との関連では、購買行動の見直しを通じて、地域で生産される必要なものだけを適量購入する生活スタイルへの転換を促している点が重要です。特に、キッチンや食生活に関する提案は、食の地産地消を実践する上で参考になります。

環境負荷の少ないシンプルな暮らしに興味がある方、消費者としての自分の行動を見直したい方におすすめです。

5.『プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命』シャンタル・プラモンドン、ジェイ・シンハ著

プラスチックを使わない生活への転換を提案する実践書です。プラスチックの種類や危険性の解説から、代替品の紹介まで幅広く取り上げています。

地産地消まちづくりとの関連では、プラスチック包装に頼らない地域内流通の可能性や、地域資源を活用した代替品の開発などのヒントが得られます。環境負荷の少ない地域循環型の消費スタイルを考える上で重要な視点を提供しています。

地域内で完結する持続可能な消費システムの構築に関心のある方、環境問題に取り組むコミュニティ活動のリーダーに参考となる一冊です。

6.『フード・マイレージ 新版 あなたの食が地球を変える』中田哲也著

食料の輸送距離と量を掛け合わせた「フード・マイレージ」の概念を通じて、食と環境の関係を解き明かす一冊です。日本の食生活が抱える問題や、食が環境に与える影響について詳しく解説しています。

地産地消の環境的意義を数値で理解できる点が本書の特徴です。食料の長距離輸送によるCO2排出量を具体的に示すことで、地域で食べることの重要性を科学的に裏付けています。

地域内でのエネルギーの有効活用や脱炭素社会の構築に関心のある方にとって、この本は重要な指針となります。再生可能エネルギーと組み合わせたエネルギー地産地消の取り組みを検討する際にも、「エネがえる」のような太陽光・蓄電池経済効果シミュレーターが活用でき、地域内でのエネルギー自給率向上と経済循環の拡大を具体的に試算することができます。

7.『サステイナブルに暮らしたい ―地球とつながる自由な生き方―』服部雄一郎、服部麻子著

サステイナブルな暮らしを実践する著者夫婦の体験に基づいた生活提案本です。高知での家族4人の暮らしを通して、身近な石けんやふきんの選び方から、食や住まいのあり方まで、持続可能な生活のヒントが満載です。

本書の魅力は、理想と現実のバランスを取りながら、自分たちのペースで持続可能な暮らしを築いていく姿勢にあります。完璧を目指すのではなく、できることから始める現実的なアプローチは、地産地消まちづくりの実践者にとっても参考になります。

地域資源を活かした暮らしを目指す個人、環境に配慮したライフスタイルを模索する方に特におすすめです。

8.『暮らしのなかのSDGs ―今と未来をつなげるものさし―』アノニマ・スタジオ編

日常生活の中でSDGsの目標とつながる行動や選択について考える本です。「食べるために何を買う?」「何を着る?」といった身近な質問を通じて、持続可能な社会づくりへの参加方法を提案しています。

地産地消まちづくりとSDGsの関連性を理解する上で役立つ視点を提供しています。特に、地域内での消費行動がグローバルな持続可能性目標にどうつながるかを考えるきっかけになります。

SDGsを地域レベルで実践したい自治体職員、教育関係者、市民活動家にとって、具体的な行動指針となる一冊です。

9.『地域創生大全』

地域創生に関する総合的な知識と方法論を網羅した一冊です。地域の特性を活かした持続可能なまちづくりのアプローチを体系的に学ぶことができます。

本書の特徴は、地域創生をさまざまな角度から捉え、総合的な視点で解説している点です。経済、文化、環境など多面的なアプローチを通じて、地域の持続可能な発展のための方策を提示しています。

地域創生に携わる行政職員、まちづくりコンサルタント、地域活性化に取り組む事業者など、専門的な立場で地域の未来を考える方におすすめです。

10.『地域人 第56号 地域がつくるみんなの小学校』

学校という地域資源を活かしたまちづくりの事例を取り上げた一冊です。統廃合によって新設された小学校や廃校となった校舎の有効活用など、地域コミュニティや福祉を支える複合施設へと変わった事例が紹介されています。

学校給食を通じた地産地消だけでなく、学校自体を地域の核として再定義する視点は、まちづくりに新たな可能性をもたらします。教育と地域の関係性を見直す契機となる内容です。

学校と地域の連携に取り組む教育関係者、廃校活用を検討する自治体、地域コミュニティの再構築を目指す市民団体にとって、実践的なヒントが得られる一冊です。

3. 心を動かす音楽10選

地産地消まちづくりに関連する、あるいはインスピレーションを与えてくれる音楽作品を10選ご紹介します。音楽は地域のアイデンティティを表現し、人々の心を動かし、地域活性化の触媒となる力を持っています。

1. ご当地ソングの力:地域アイデンティティを歌に込めて

ご当地ソングは、タイトルや歌詞に地名や各地方の風習・文化・地形を取り入れ、地方色や郷愁を前面に打ち出した楽曲です。1965年頃から広まったこの音楽ジャンルは、地域の魅力を発信し、地域アイデンティティを強化する役割を果たしてきました。

例えば「津軽海峡・冬景色」(石川さゆり)は、津軽海峡・青森駅・竜飛崎といった地理的要素を歌詞に取り入れ、北国の情景を鮮やかに描き出しています。このような楽曲は単なる娯楽を超え、地域の文化的アイコンとなり、観光資源としても機能します。

現代では、駅の発車メロディにご当地ソングが採用されるケースも増加し、地域の音楽文化の継承と発信に貢献しています。地域の魅力を再発見し、表現する手段としてのご当地ソングは、地産地消まちづくりの文化的側面を強化するツールとなり得ます。

2. 「Feat. Nature」プロジェクト:自然音と音楽の融合

イギリスの慈善団体EarthPercentが立ち上げた「Feat. Nature」は、自然の音を音楽に取り入れるプロジェクトです。エリー・ゴールディングやブライアン・イーノなどのアーティストが参加し、自然環境の保全活動に貢献しています。

例えば、エリー・ゴールディングの「Brightest Blue – Nature Remix」は、コロンビアの鬱蒼とした熱帯雨林の音を取り入れ、自然と音楽の融合を実現しています。Louis VIの「Orange Skies」は、ボルネオの熱帯雨林の音を使い、森林火災による環境破壊に焦点をあてた作品です。

このプロジェクトは、地域の自然環境を音として記録し、芸術表現に昇華させる新たな可能性を示しています。地域の自然音をアーカイブし、音楽作品として発信することで、環境保全意識の向上と地域の魅力発信を両立する取り組みとして、地産地消まちづくりにも応用できるでしょう。

3. コミュニティ音楽:人を結ぶ音の力

コミュニティ音楽」とは、人を音楽で繋ぎ、コミュニティを強くする音楽プログラムです。参加者が声を出したり楽器を演奏したりする中で、リーダーがそれらの音を「音楽」にブラッシュアップしていきます。

言葉を超えたコミュニケーションを通じて、孤立・孤独の問題解決や地域コミュニティの結束強化に貢献するこのアプローチは、イギリスでは地域住民、ケアホーム入所者、病院の入院患者など様々な場で実践されています。

地産地消まちづくりの文脈では、音楽を通じた人々の交流と協働が、地域の一体感を醸成し、共通の目標に向かって協力する素地を作ります。地域のオリジナル曲の共同制作や演奏会の開催など、コミュニティ音楽の手法を取り入れたイベントは、地域活性化の新たな切り口となるでしょう。

4. 音楽による地域活性化:多面的効果を生み出す

音楽は地域活性化の強力なツールとして、経済的・社会的・文化的な側面から地域に活力を与えます。音楽イベントは観光客誘致や消費活性化を促し、地域経済に貢献するとともに、住民同士の交流や世代間の対話を促進します。

具体的な形態としては、音楽フェス、ストリートライブ、音楽教室、音楽を活用したまちづくりなどが挙げられます。例えば、空き家を改修して音楽スタジオやライブハウスにする取り組みは、遊休資産の活用と文化創造を同時に実現する好例です。

地産地消まちづくりにおいても、地元の音楽家による演奏会やワークショップを、マルシェやファーマーズマーケットと組み合わせるなど、音楽と食・農を融合させたイベントの可能性が広がります。

5. 福島ウインドアンサンブル「農村組曲」:地域の風景を音に描く

福島ウインドアンサンブルによる「農村組曲」は、日本の農村風景と四季の移ろいを音楽で表現した作品です。田植え、稲刈り、冬の厳しさと春の訪れなど、農耕文化に根ざした地域の暮らしを音の風景画として描き出しています。

この作品は、地域の生活文化と密接に結びついた音楽表現の可能性を示しています。農業や食文化を音楽で表現し、共有することで、地域の魅力を再発見し、次世代に伝える役割を果たします。

地産地消まちづくりにおいても、地域の農業や食文化を題材にした音楽作品の制作・演奏を通じて、地域の個性と魅力を発信する取り組みは有効でしょう。

6. 坂本龍一「async」:環境音と音楽の境界を超えて

坂本龍一の「async」は、自然環境音と電子音楽を融合させた実験的な作品です。森の音、水の流れ、雨音などの環境音を取り入れ、人間と自然の関係性について問いかける音世界を創り出しています。

環境問題や持続可能性に深い関心を持っていた坂本龍一の作品は、音楽を通じて環境意識を高める可能性を示しています。地域の自然環境を音として記録し、作品化することは、地域の環境保全と魅力発信の両面で意義があります。

地産地消まちづくりの文脈では、地域の自然音や生活音を録音・アーカイブし、地域の音響マップを作成するといった取り組みは、新たな地域資源の発掘と活用につながるでしょう。

7. 民謡・伝統芸能:地域の記憶を歌い継ぐ

日本各地に伝わる民謡や伝統芸能は、その土地の風土、生業、歴史、文化を歌や踊りに託して伝える貴重な文化資源です。例えば、秋田の「ナニャドヤラ」は米作りの豊作を祝う唄、沖縄の「エイサー」は先祖供養の踊りであるなど、それぞれの地域の特徴を反映しています。

これらの伝統音楽は、地域のアイデンティティを形成する重要な要素であり、継承と革新を通じて地域文化の持続可能性を高める役割を果たします。

地産地消まちづくりにおいても、地域の伝統音楽や芸能を再評価し、現代的なコンテキストで活用することで、文化的な基盤を強化し、地域の個性を際立たせることができるでしょう。

8. 音楽ボランティア:地域をつなぐ音の架け橋

音楽ボランティアによる地域活動は、地域コミュニティの強化と地域経済の活性化に大きく貢献します。地域での音楽イベントは、住民同士の結びつきを強め、地域に新たな活力をもたらす機会となります。

また、音楽ボランティアによる地元アーティストへの支援は、彼らにとって露出の機会を提供し、地域の文化発信の一助となります。さらに、イベント参加者による地元店舗での消費活動は、地域経済の活性化にも寄与します。

地産地消まちづくりの視点では、マルシェやファーマーズマーケットでの音楽演奏や、収穫祭での音楽イベントなど、食と農と音楽を結びつけた取り組みが、地域の魅力を高める効果的なアプローチとなるでしょう。

9. ジョン・ケージ「4分33秒」:沈黙と環境音の価値

ジョン・ケージの「4分33秒」は、演奏者が楽器を前にして一音も出さずに4分33秒を過ごす実験的な作品です。このシンプルな「無音の作品」は、実は私たちの周囲に常に存在する環境音に注意を向けさせる役割を果たします。

この作品が示唆するのは、私たちが普段聞き流している地域固有の「音風景」の価値です。地域の日常的な音-市場の声、鳥のさえずり、風の音、川のせせらぎ-に意識的に耳を傾けることで、地域の個性と魅力を再発見できます。

地産地消まちづくりにおいても、地域固有の音風景を資源として認識し、保全・活用する視点は、地域の本質的な魅力を発信する上で重要です。

10. 音楽祭:地域の伝統芸能や文化を融合させる場

地域の伝統芸能や文化を音楽と融合させた音楽祭は、地域の魅力を発信し、住民の誇りを高める効果があります。各地で開催される音楽祭は、地域内外の人々が交流する場となり、地域経済にも大きな波及効果をもたらします。

例えば、地域の食文化と音楽を融合させたフェスティバルは、地産地消の理念を体験的に伝える絶好の機会となります。地元の食材を使った料理と地元のミュージシャンによる演奏を組み合わせることで、五感を通じた地域体験を提供できます。

地産地消まちづくりの文脈では、収穫祭や食の祭典に音楽要素を積極的に取り入れることで、より多くの人々を惹きつけ、地域の魅力を多面的に発信することができるでしょう。

4. 視野を広げる映画10選

地産地消まちづくりに関する洞察やインスピレーションを提供する映画作品を10本厳選しました。これらの映画は、食、農業、地域再生、持続可能性などのテーマを通じて、私たちに新たな視点と可能性を提示してくれます。

1.『食べることは生きること 〜アリス・ウォータースのおいしい革命〜』

アメリカで初めて地域の農家と食べ手を直接つなぐフランス料理店「シェ・パニース」を開いたアリス・ウォータースの活動を追ったドキュメンタリー映画です。

1971年にカリフォルニア州バークレーで開店した「シェ・パニース」は、旬を活かした料理と気取らない温かさで人気を博し、後に「地産地消」「ファーマーズ・マーケット」「ファーム・トゥ・テーブル」というコンセプトとして世界中に広まりました。

半世紀をかけて世界中の料理人と教育者に影響を与え、「オーガニックの母」「おいしい革命家」と呼ばれるようになったアリスが、日本各地を訪れ、学校給食を味わい、生産者や料理人と交流する様子を通じて、「おいしい革命」の本質と可能性を探求します。

この映画は、食を通じた持続可能なコミュニティ構築の先駆者の思想と実践を学べる貴重な作品であり、地産地消まちづくりに取り組む多くの人々に示唆を与えてくれます。

2.『北の食景』

札幌・北海道を舞台に、4人の料理人と四季が織りなす食の景色を描いたフードドキュメンタリーです。

北海道の春夏秋冬を背景に、それぞれ異なるアプローチで料理と向き合う4人の料理人-フレンチの高橋毅氏と吉田夏織氏、日本料理の酒井弘志氏、鮨の川崎純之亮氏-を1年間追いかけています。さらに、食材を生み出す生産者たちの姿も映し出し、料理家/生産者/市民の3者の物語が一皿の料理に交錯する様を描いています。

監督の松田優作氏は「季節の移ろいを五感で感じることができる食を通じて、自分の原風景を描きたい」という思いから、太陽の昇り沈みや空の色の変化、生命の営みと北の大地に流れる時間をフィルムに収めました。

この映画は、地域の風土と食文化の密接な関係性、そして料理人と生産者の協働がもたらす価値創造の過程を丁寧に描き出しており、食を軸とした地域の魅力発信のあり方を考える上で参考になる作品です。

3.『夢みる給食』

夢みる小学校」「いただきます」シリーズのオオタヴィン監督が、全国各地に広まっている「オーガニック給食」にスポットを当てたドキュメンタリー作品です。

学校給食の100%を地産有機米に切り替えることに成功した千葉県いすみ市や、地産食材やオーガニック食材を取り入れた給食を40年前から続ける東京都武蔵野市など、全国各地でオーガニック給食の最前線を取材しています。

子どもたちの成長期における食の重要性に着目し、農薬をできるだけ使わない食材で作られたオーガニック給食の意義と可能性を探求する本作は、持続可能な社会づくり、地域農業振興、そして子どもたちの未来のために奮闘する市民、公務員、農家の人々の姿を映し出しています。

学校給食を起点とした地産地消の取り組みが、地域全体の食と農の循環を変えていく可能性を示す本作は、教育と地域づくりの接点に関心のある方に特におすすめの映画です。

4.『いただきます みそをつくるこどもたち』

味噌づくりに挑戦する保育園児たちの姿を通じて、食育と地域の伝統文化継承の意義を描いたドキュメンタリーです。

神奈川県の「みくに幼稚園」では、子どもたちが大豆を育てることから始め、収穫、発酵、熟成までの全工程に関わりながら味噌づくりに取り組んでいます。この活動を通じて、食べ物の大切さ、生産の苦労と喜び、伝統食文化の価値を体験的に学んでいきます。

子どもたちの好奇心と真剣な眼差し、そして成長の瞬間を丁寧に捉えたこの作品は、食育の本質的な意義と可能性を考えさせてくれます。地産地消を次世代に繋ぐ教育のあり方を模索する教育関係者、保護者、地域活動家に多くの示唆を与える映画です。

5.『100年ごはん』

100年後も食べられるごはん」をテーマに、持続可能な食のあり方を探る記録映画です。

日本各地で伝統的な手法を守りながら食の生産に携わる人々-石臼で粉を挽く製粉所、江戸時代から続く醤油蔵、昔ながらの製法で作る豆腐店など-を訪ね、その哲学と実践を記録しています。また、それらの食材を使う料理人たちの思いも描かれています。

工業化、効率化、均質化が進む現代の食のあり方に一石を投じるこの作品は、時間をかけて作られる伝統食の価値と、それを支える技術や文化の継承の重要性を伝えています。地域の食文化を基盤とした持続可能なまちづくりを考える上で、本質的な問いを投げかける映画です。

6.『奇跡のリンゴ』

農薬や化学肥料を使わずにリンゴを栽培することに挑戦した木村秋則氏の実話に基づく劇映画です。

「不可能」と言われた無農薬リンゴ栽培に14年間取り組み続け、ついに成功を収めた木村氏の苦闘と triumph を描いた本作は、周囲の反対や度重なる失敗にも屈せず、自然と対話しながら農業の新たな道を切り開いた一人の農家の情熱と執念を感動的に描き出しています。

この映画は、持続可能な農業の可能性と困難さ、そして「常識」を疑い続けることの重要性を教えてくれます。地域に根ざした独自の農業のあり方を模索する農家や、環境に配慮した生産・消費システムの構築に関心のある方に、勇気と希望を与える作品です。

7.『0円キッチン』

食品廃棄問題に焦点を当てたドキュメンタリー映画です。ドイツ人のフィルムメーカーが、スーパーマーケットやレストランから廃棄される食材だけで旅をする実験を通じて、現代社会の食品廃棄の実態と問題点を浮き彫りにしています。

見た目が悪い野菜、賞味期限が近い食品、余った料理など、本来は食べられるにもかかわらず大量に捨てられている食品の現実に目を向けさせるとともに、廃棄食品を活用する創造的な取り組みも紹介しています。

地産地消まちづくりの文脈では、地域内で生産された食材を無駄なく活用する仕組みづくりの重要性を再認識させる作品です。「食材の地産地消」と「廃棄物の地域内循環」を統合的に考える契機となる映画と言えるでしょう。

8.『よみがえりのレシピ』

東日本大震災で被災した福島県の小高地区を舞台に、地域の食文化再生に取り組む人々の姿を追ったドキュメンタリーです。

避難指示が解除された後も戻れない、戻らない住民が多い中、地域の伝統食「おだか千人粥」の復活を目指す女性たちの姿を通して、食文化が持つコミュニティ再生の可能性を探ります。

この映画は、災害や人口減少など困難な状況に直面する地域において、食文化が果たす役割と可能性を示唆しています。地産地消は単なる経済活動ではなく、地域のアイデンティティと誇りを再構築するプロセスでもあることを教えてくれる作品です。

9.『もったいないキッチン』

食品ロス削減をテーマにしたドキュメンタリー映画で、料理人たちが捨てられるはずだった食材を救い出し、素晴らしい料理に変身させる様子を描いています。

世界中の食品ロスの実態を明らかにしながら、サステイナブルな食のあり方を実践する人々を取材し、食品廃棄という社会問題に対する創造的な解決策を提示しています。

地産地消まちづくりの観点からは、地域内での食材の有効活用と循環の重要性を再認識させるとともに、「もったいない」という日本古来の価値観を現代に活かす可能性を示唆する映画です。

5. 地産地消まちづくりの経済効果と評価方法

地産地消まちづくりの取り組みが地域にもたらす経済効果を適切に評価することは、持続的な活動のためにも重要です。ここでは、その経済効果の算出方法と評価の視点について解説します。

経済波及効果の基本構造

地産地消まちづくりの経済効果は、以下の3段階で捉えることができます。

  1. 直接効果:地産地消の取り組みによって直接発生する消費や投資
  2. 第一次波及効果:直接効果によって誘発される生産活動
  3. 第二次波及効果:所得増加を通じて誘発される消費支出増

これらの効果を総合的に評価するための一般的な方法が産業連関分析です。

産業連関分析による経済効果測定

産業連関表を用いた分析では、自給率(地域内での生産割合)が経済波及効果の大きさを左右する重要な要素となります。例えば、地域材利用の経済波及効果を分析した研究では、素材部門および木材部門の自給率を変化させた6つのシナリオを設定し、比較を行っています。

この研究によれば、木材部門の自給率が高いシナリオほど生産誘発額と粗付加価値誘発額が大きくなることが示されています。具体的には、基本シナリオ(33,689千円)は比較シナリオB(30,737千円)の約1.10倍である一方、比較シナリオD(8,491千円)の約3.97倍になるとの結果が出ています。

このことから、製材・加工を地域内で完結させることで経済波及効果が大きく増大することがわかります。地産地消まちづくりにおいても、単に原材料の地域内生産だけでなく、加工・流通・販売までを地域内で行うことが重要であると言えます。

フードマイレージによる環境負荷評価

地産地消の環境面での効果を定量的に評価する指標として「フードマイレージ」があります。これは食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせたもので、食料の輸送に伴う環境負荷を数値化したものです。

計算式:フードマイレージ = 輸送量(トン)× 輸送距離(km)

例えば、10トンの野菜を500km輸送する場合のフードマイレージは: 10トン × 500km = 5,000トン・キロメートル

地産地消によってフードマイレージを削減することで、CO2排出量の削減に貢献できます。輸送距離の短縮は、単にCO2排出量だけでなく、食料の鮮度保持や輸送コストの削減にもつながります

多面的価値評価のフレームワーク

地産地消まちづくりの価値は経済的側面だけでなく、社会的・文化的・環境的側面を含めた多面的な評価が必要です。以下のような評価フレームワークが考えられます。

経済的価値

  • 地域内経済循環率 = 地域内消費額 ÷ 地域内総生産額
  • 地域自給率 = 地域内生産額 ÷ 地域内消費額
  • 雇用創出効果 = 地産地消に関連して創出された雇用数

社会的価値

  • コミュニティ参加度 = 地産地消関連イベント参加者数 ÷ 地域人口
  • 健康改善効果 = 健康指標(BMI、血圧等)の改善度
  • 食育効果 = 食に関する知識・関心の向上度

環境的価値

  • CO2排出削減量 = 従来の流通システムとのCO2排出量の差
  • 生物多様性保全 = 地域固有種・在来種の栽培面積・種類数
  • 資源循環率 = 地域内でリサイクルされる廃棄物の割合

文化的価値

  • 伝統食文化継承度 = 伝統料理の認知度・実践度
  • 地域アイデンティティ強化 = 地域への愛着・誇りの指標
  • 観光資源としての価値 = 食関連観光客数・消費額

これらの指標を総合的に評価することで、地産地消まちづくりの多面的な価値を可視化し、持続的な取り組みのための根拠として活用することができます。

6. 地産地消まちづくりの実践手法とポイント

地産地消まちづくりを実践するための具体的な手法とポイントについて解説します。成功するためには、地域の特性を理解し、多様な主体の協働を促進することが重要です。

ステークホルダーの巻き込み戦略

地産地消まちづくりには、生産者、消費者、流通・小売業者、飲食店、教育機関、行政など多様な関係者の参加が不可欠です。これらのステークホルダーを効果的に巻き込むためのポイントは以下の通りです。

  1. 共通ビジョンの構築:地域の将来像を関係者全員で共有し、各自の役割を明確にする
  2. 小さな成功体験の蓄積:実現可能な小規模プロジェクトから始め、成功体験を積み重ねる
  3. メリットの見える化:各関係者にとっての具体的なメリットを明確に示す
  4. プラットフォームの構築:対話と協働のための常設の場を設ける

例えば、今治市では学校給食を地産地消・有機農業の拠点として位置づけ、学校、農家、行政の協働体制を構築することで、30年にわたる持続的な取り組みを実現しています。

地域資源の発掘とブランディング

地産地消まちづくりの基盤となる地域資源の発掘とブランディングは、以下のステップで進めることが効果的です。

  1. 資源調査:地域の自然、歴史、文化、産業などの調査と棚卸し
  2. 価値の再発見:見過ごされてきた資源の新たな価値を発見する
  3. ストーリーの構築:資源の背景にある歴史や人々の思いを物語化する
  4. ブランド化:統一したコンセプトとビジュアルで地域資源の価値を表現する
  5. 情報発信:多様なメディアを活用した継続的な情報発信

福井県小浜市では「御食国」としての歴史を活かし、「食のまちづくり」というブランドのもと、伝統野菜や伝承料理の掘り起こしを行い、地域の食文化を再評価する取り組みを行っています。

流通・販売システムの構築

地産地消を実現するためには、生産者と消費者をつなぐ効果的な流通・販売システムが必要です。以下のような多様なチャネルの組み合わせが有効です。

  • 直売所・ファーマーズマーケット:生産者が直接消費者に販売する場の設置
  • 地域内流通システム:地域内の小売店、飲食店、学校給食等への供給体制
  • オンラインプラットフォーム:ECサイトやSNSを活用した直接販売・情報発信
  • 定期宅配システム:契約型農業(CSA)や会員制宅配システムの導入

例えば、岩崎恒一さんが始めた朝市は、集落の農家をまとめて学校給食用の野菜を出荷し、さらに週2回の直売を行うという、複数のチャネルを組み合わせたアプローチで成功しています。

教育・啓発プログラムの開発

地産地消まちづくりの持続性を確保するためには、次世代の担い手育成と住民の意識啓発が不可欠です。以下のようなプログラム開発が有効です。

  • 学校給食と連動した食育:給食の食材を教材とした体験的学習
  • 体験型プログラム:農業体験、料理教室、伝統食づくりワークショップなど
  • 生涯学習プログラム:地域の食文化や農業に関する講座・イベント
  • プロフェッショナル育成:地域食材を活かせる料理人、加工技術者の育成

小浜市の「生涯食育」の取り組みでは、幼児から高齢者まであらゆる世代を対象に、食を通じた学びの機会を提供しています。「キッズ・キッチン」では子どもたちが料理に挑戦し、「中年男子、厨房に入る」では男性の料理参加を促すなど、多様なプログラムを展開しています。

政策化と制度設計

地産地消まちづくりを持続的な取り組みとして定着させるためには、個人や団体の活動を超えて、政策・制度として位置づけることが重要です。

  • 条例制定:地産地消推進条例など、方針を明確化する法的基盤の整備
  • 計画策定:数値目標を含む実行計画の策定
  • 予算確保:継続的な活動のための財源確保
  • 評価システム:効果測定と改善のための評価の仕組み

今治市では、「今治市食と農のまちづくり条例」を制定し、地産地消、有機農業、食育を政策として位置づけ、継続的な取り組みを支える基盤としています。

デジタル技術の活用

地産地消まちづくりにおいても、デジタル技術の活用が新たな可能性を広げています。以下のような活用方法が考えられます。

  • オンラインマーケットプレイス:生産者と消費者を直接つなぐデジタルプラットフォーム
  • トレーサビリティシステム:ブロックチェーンなどを活用した生産・流通履歴の可視化
  • クラウドファンディング:新規事業やプロジェクトの資金調達
  • コミュニケーションツール:SNSやメッセージングアプリを活用した関係者間の連携強化

特に、再生可能エネルギーの地産地消においては、太陽光発電や蓄電池の導入効果をシミュレーションするツールが重要な役割を果たします。エネルギーの自給自足を目指す地域にとって、「エネがえる」のような経済効果シミュレーターは、投資判断や政策立案を支援する貴重なツールとなります。太陽光・蓄電池・EV・V2Hなどの組み合わせによる最適なエネルギーシステムの設計は、地域のエネルギー自立度を高め、災害時のレジリエンス強化にも貢献します。

7. 地産地消まちづくりの未来と展望

地産地消まちづくりは、現代社会が直面する様々な課題に対する統合的なアプローチとして、今後さらに重要性を増していくでしょう。ここでは、その未来と可能性について考察します。

デジタル時代の地産地消

デジタル技術の発展は、地産地消の概念を拡張し、新たな可能性を生み出しています。

  • 仮想コミュニティと物理的な地域の融合:オンラインで繋がりながらも、実際の地域での活動を促進する「デジタル田園都市構想」のような取り組み
  • データ駆動型の生産・流通最適化:AIや IoT を活用した需要予測と供給調整による食品ロス削減
  • プロシューマーの台頭:消費者が同時に生産者としての役割を担う新たな経済モデル

例えば、オンライン上で農産物の予約注文を受け付け、収穫量に応じて配分する「CSA(Community Supported Agriculture)」のデジタル版は、生産者のリスク分散と消費者の安定供給を両立させる新たなモデルとして注目されています。

複合的な地産地消への展開

地産地消の概念は食だけでなく、エネルギー、ケア、教育など多様な分野に広がっています。これらを統合的に捉える「複合的地産地消」の視点が重要です。

  • 食×エネルギー:バイオマス発電や食品廃棄物のエネルギー化など、食とエネルギーの循環
  • 食×ケア:農福連携や食を通じた高齢者の健康維持、コミュニティケア
  • 食×教育:食育を基盤とした地域学習、キャリア教育としての農業体験

例えば、エネルギーの地産地消は地域経済の自立性を高めるだけでなく、災害時のレジリエンスも強化します。食とエネルギーの複合的な地産地消を実現することで、より持続可能な地域システムを構築することができるでしょう。

グローバルとローカルの新たな関係性

地産地消は決してグローバル化と対立するものではなく、「グローカル」という新たな関係性を創出する可能性を持っています。

  • 知識と技術のグローバル共有:世界各地の成功事例や技術をローカルに応用
  • ローカルな多様性のグローバルな価値:各地域の独自性が世界的な文化的多様性を支える
  • ローカルトゥローカルネットワーク:中間媒介者を介さない地域間の直接交流

例えば、アリス・ウォータースの「おいしい革命」の理念が日本各地に広がり、各地域の特性に合わせた形で実践されているように、理念や方法論はグローバルに共有しつつ、実践はローカルな文脈に根ざすというアプローチが有効です。

SDGsとの連携と統合

地産地消まちづくりはSDGs(持続可能な開発目標)の多くの目標と密接に関連しており、地域レベルでSDGsを実践する具体的なアプローチとして位置づけることができます。

  • 目標2(飢餓):持続可能な食料生産システムの確保
  • 目標11(都市):包摂的、安全、レジリエントで持続可能な都市の実現
  • 目標12(生産・消費):持続可能な生産・消費パターンの確保
  • 目標13(気候変動):気候変動への具体的対策
  • 目標15(陸上資源):陸域生態系の保全と持続可能な利用

地産地消まちづくりをSDGsの文脈で捉え直すことで、国際的な持続可能性目標と地域の取り組みを結びつけ、グローバルな課題解決に貢献する意義を明確にすることができます。

危機管理・レジリエンスの視点

気候変動、パンデミック、地政学的リスクなど、様々な危機に直面する現代社会において、地産地消まちづくりは地域のレジリエンス(復元力)を高める重要な戦略となります。

  • 食料安全保障:国際的なサプライチェーンの混乱に対する緩衝材
  • エネルギー自立:分散型エネルギーシステムによる災害時の電力確保
  • コミュニティの結束:危機時の相互扶助を支える社会関係資本の醸成

例えば、東日本大震災後の被災地では、地域内での食料・エネルギー供給体制の重要性が再認識され、レジリエンスを高める取り組みとして地産地消が注目されました。「よみがえりのレシピ」に描かれているような食文化の再生は、コミュニティの回復力を高める重要な要素です。

8. まとめ:地産地消まちづくりの実践に向けて

本記事では、地産地消まちづくりに関するインスピレーション溢れる本、音楽、映画を紹介しながら、その基本概念、経済効果、実践手法、未来展望について詳しく解説してきました。最後に、地産地消まちづくりを実践するためのポイントをまとめます。

地産地消まちづくりの5つの核心

  1. 循環と関係性:地産地消の本質は、モノやサービスの循環だけでなく、人と人、人と自然の関係性の再構築にある
  2. 多面的価値:経済的効果だけでなく、社会的、文化的、環境的な価値を総合的に評価する視点が重要
  3. 協働とプラットフォーム:多様な主体の参加と協働を促進するプラットフォームづくりが成功の鍵
  4. 教育と継承:次世代への知識と技術の継承、食育や環境教育との連携が持続可能性を高める
  5. 複合的アプローチ:食、エネルギー、ケア、教育など多様な分野の地産地消を統合的に推進する

実践のための第一歩

地産地消まちづくりに取り組むための第一歩として、以下のアクションをおすすめします。

  1. 地域資源の棚卸し:自分の地域にどんな資源(食材、伝統技術、文化、人材など)があるか調査する
  2. キーパーソンの発掘:地域内の生産者、料理人、教育者、行政担当者など、協働できるキーパーソンを見つける
  3. 小さな実験:マルシェの開催、料理教室、学校給食での地元食材使用など、できることから始める
  4. ストーリーづくりと発信:地域の食や農の背景にあるストーリーを発掘し、魅力的に発信する
  5. ネットワークへの参加:地産地消まちづくりに取り組む他地域との交流・情報交換を行う

パラダイムシフトとしての地産地消

最後に強調したいのは、地産地消まちづくりは単なる経済活動やトレンドを超えた、私たちの生き方や価値観に関わるパラダイムシフトを含むということです。

大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルから、適正規模での循環型経済への転換。グローバルな画一性よりもローカルな多様性を尊重する価値観。競争より協働を重視する社会関係。こうした根本的な変化を伴う取り組みだからこそ、地産地消まちづくりは持続可能な社会への具体的な道筋を示す可能性を秘めています。

本記事で紹介した本、音楽、映画から得られるインスピレーションを糧に、それぞれの地域に根ざした創造的な地産地消まちづくりが全国各地で花開くことを願ってやみません。

【無料】太陽光・蓄電池の導入を検討してる方限定
無料シミュレーション受付中
個人・企業どちらも対応可

エネがえるを活用して太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーションや提案をしてくれる信頼できる販売施工店を無料でご紹介・取次いたします。

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

コメント

たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
たった15秒でシミュレーション完了!
誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!