目次
定置型蓄電システムで電気代を削減する方法:ピークカット・ピークシフトの徹底解説
10秒で読める要約
高圧需要家の電気代は「最大デマンド」に連動する契約電力で決まります。ピークカット(消費削減)とピークシフト(時間移動)で電気代を大幅削減できます。太陽光発電と蓄電池を組み合わせると、昼のピークを抑制し、基本料金と電力量料金の両方を削減。業種別の導入効果、メリット・デメリット、最新技術まで網羅的に解説します。
1. 電気料金とデマンド制度の基礎
1-1. 高圧と低圧で異なる料金体系
電気料金の仕組みは、需要家が高圧受電か低圧受電かで大きく異なります。低圧契約(主に家庭や小規模事業所)では契約アンペアに応じた基本料金(固定)+使用量に応じた電力量料金という構成で、基本料金はアンペア値によって定額です。一方、高圧契約(工場やビルなど)は基本料金+電力量料金+各種調整費からなり、特に基本料金が契約電力に比例して課金される点がポイントです。
基本料金(高圧) – 単位料金(円/kW) × 契約電力で算出。契約電力とはその契約者が示した最大需要容量のことですが、高圧小口契約では後述の最大デマンド値によって自動決定されます。
電力量料金 – 単位料金(円/kWh) × 使用電力量で算出。燃料費調整額や再エネ賦課金も含めて計算されます。低圧の場合と同様に、使った電力量に比例します。
再エネ発電促進賦課金 – 再生可能エネルギー固定価格買取(FIT)制度の費用負担分。使用1kWhあたり一定単価を乗じて課金されます。
カスタム料金プランの設定について (Biz) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
ワンポイント解説: 「高圧」「低圧」 – 日本では一般に受電電圧が6,000V以上を高圧(大口需要家向け)、それ未満を低圧(家庭・小規模向け)と区分。高圧では変圧器やキュービクル設置が必要だが単価が安く、大量需要なら有利です。
1-2. デマンド値と契約電力の決まり方
デマンド値(最大需要電力)とは、電力使用量の30分平均値のうち、その契約における最大値を指します。高圧小口契約では過去1年間の最大デマンド値がそのまま契約電力となり、基本料金計算の基礎になります。例えば直近1年間で最も消費電力が高かった30分間(例: 12月1日14:00-14:30)における平均使用電力が50kWなら、それが契約電力50kWとして翌月以降の基本料金に反映されます。この制度を実量制と呼びます。契約電力が大きい事業者(地域や契約種別により目安500kW超など)は協議制となり、事前に電力会社と協議で契約電力を定め(超過時は違約金)ます。
最大デマンド値を下げる重要性: 一度でもピーク(最大デマンド)を更新してしまうと、以後1年間は高い契約電力=高い基本料金が課され続けます。したがって、電気代削減にはピーク時の需要抑制が極めて重要になります。
高圧大口契約: 協議制では需要家と電力会社が契約電力を設定し、月ごとのデマンドがそれを超えると違約金(割増基本料金)を支払う必要があります。大規模工場等ではこの契約形態となります。
ワンポイント解説: 「デマンド監視」 – 需要のピークを抑えるため、30分デマンド値をリアルタイムに監視し、閾値に近づくとアラームを出すデマンドモニター/コントローラーが普及しています。空調や動力設備を自動一時停止することでピークオーバーを防ぐ仕組みです。
1-3. デマンドデータの取得・可視化方法
電力使用状況を把握するには、スマートメーターや計測器から30分毎の使用電力量データを取得します。具体的な方法には以下があります:
スマートメータBルートサービス: 電力会社のスマートメーターから需要データを無線で取得する仕組み。専門端末を設置し、自社で30分値や電流値を収集可能です。クラウドサービスと連携すればWEBでグラフ表示もできます。
EMSによる計測: 工場やビルではエネルギー管理システム(EMS)を導入し、各分電盤や負荷の電流を計測して需要プロファイルを詳細に可視化します。これによりピーク発生要因の分析が可能です。
需要家向けWebサービス: 新電力や需要監視事業者が提供する見える化WEBを利用し、過去の30分値データや予測を閲覧する方法もあります。
可視化されたロードカーブ(需要曲線)を分析することで、ピーク発生時間帯・要因の特定やピークカット対策立案に繋がります。
デマンドデータがなくてもシミュレーションできますか?業種別ロードカーブテンプレートはありますか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
1-4. 電気料金単価の相場と地域差
高圧契約の基本料金単価は地域電力会社や契約種別により異なりますが、概ね1kWあたり1,200~2,000円程度が多く見られます(例: 東京電力の高圧契約: 約1,800円/kW)。電力量単価も契約プランで差異がありますが、昼間は15~20円/kWh前後、夜間は割安(8~12円/kWh程度)のプランが一般的です。以下に東京電力エナジーパートナーの季節別時間帯別電力プラン単価例を示します:
夏季平日13~16時(ピーク時間帯): 23.20円/kWh
その他平日昼間(8~22時): 22.49円/kWh
夜間時間帯(22~翌8時): 15.74円/kWh
このように時間帯による単価差があるため、需要を夜間にシフトできれば電力量料金の削減につながります。地域別にも単価は異なり、例えば北海道電力管内は本州より燃料費調整単価が高め、沖縄電力管内も離島補正で割高です。**本レポートのシミュレーションでは、全国10電力会社の平均的な料金単価(基本料金1,700円/kW・昼間単価17円/kWh・夜間12円/kWh 等)**を前提に計算しています。各地域で若干差異がある点に留意してください。
電気料金プラン単価照会機能(ASP・Biz共通) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
2. ピークカットの詳細
2-1. ピークカットとは何か?
ピークカットとは、電力使用量が最大となる時間帯(ピーク時)の消費電力そのものを削減する施策です。平たく言えば「一番電気を食う時間帯の使用を控える(カットする)」ことで、最大デマンド値を引き下げる取り組みです。ピークカットを実施すると、年間を通じて契約電力が下がり基本料金の削減につながります。さらにピーク時間帯の消費を減らす分、電力量料金の節約効果(全体の使用量削減)も期待できます。
具体的なピークカット手法としては以下が挙げられます:
需要平準化: 不要な照明・空調をピーク時間帯に間引く、機器の稼働スケジュールをずらす等、人為的な節電努力で消費電力を抑制します。
自家発電の活用: ピーク時に自家用発電機や非常用発電設備を稼働させ、一部負荷をそちらでまかなうことで購入電力ピークを下げます。ただし燃料コストや排ガスの問題があります。
蓄電池の活用: 定置型蓄電システムを用いて、ピーク時間帯に電池から放電しグリッドからの受電を減らす方法です。近年はこれが主流で、太陽光発電と組み合わせて昼に蓄電し夕方ピークに放電することで無理のないピークカットが可能です。
【Biz】蓄電池の充放電時間帯の設定:自家消費最大(系統充電しない)するには?ピークカットするには?パターン別設定方法について| エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
ワンポイント解説: 「最大需要電力(デマンド値)」 – 30分平均の消費電力値の最大値。ピークカットの目的はこの最大デマンドを低減することです。例として、多くのオフィスでは猛暑日の14時頃に空調負荷が最大化しデマンドのピークとなりがちです。このピーク部分を削るのがピークカットです。
2-2. ピークカットの制御技術と実践例
ピークカットを実現するには、需要予測と制御が重要です。一般的な制御技術・流れは次の通り:
デマンド監視: 需要予測システムやデマンドモニターで現在の30分需要値を常時監視。予め設定した目標ピーク値(kW)に近づくとアラームや制御指令が出ます。
負荷遮断(デマンドコントロール): 需要が閾値を超えそうな場合、自動的に一部負荷(空調や蓄熱槽、可搬式の負荷など)を一時停止させます。これによりデマンド値が抑えられます。
蓄電池の放電: 同時に、蓄電池システムがあれば設定に従い即座に放電を開始し、不足分の電力を補給します。これによりグリッドからの受電を減らしピーク超過を防ぎます。
ピーク時間終了: ピーク時間帯を過ぎたら、停止していた負荷を再開し、蓄電池も必要に応じて充電モードに戻します。
制御の実例: あるスーパーではデマンドコントローラーを導入し、冷蔵ショーケースのコンプレッサー群を制御対象としました。ピークが近づくと一部コンプレッサーを停止し(庫内温度は許容範囲内で上昇)、蓄電池から数十kWを放電することで、ピーク時の買電電力を約15%削減することに成功しました。売上や食品温度へ影響を与えずに無理のないピークカットを実現した好例です。
別の事例として、工場において蓄熱式空調と蓄電池を組み合わせたケースでは、深夜電力で作った氷蓄熱を昼の空調に活用&蓄電池からの放電で、昼間デマンドを大幅に低減しました。この結果、契約電力を100kW以上下げ、年間数百万円規模の基本料金削減を達成しています。
2-3. ピークカットの経済効果の算出方法
ピークカットによる経済効果は主に基本料金削減額と電力量料金削減額の合計で算出します。
基本料金削減額: ピークカット前後の契約電力差 × 基本料金単価 × 12ヶ月。【例】契約電力を250kW→230kWに削減できた場合、単価1,800円/kWなら毎月(250-230)*1,800=36,000円削減、年間で約43万円の削減となります。
電力量料金削減額: ピークカットにより削減できた消費電力量(kWh) × 電力量単価で算出します。ピーク時間帯の使用を抑えた分だけ全体の消費も減少するため、その分電力量料金が節約されます。上記スーパーの例では、年間で約2万kWhの消費削減となり、単価17円/kWhとして約34万円/年の節約となりました。
その他効果: デマンドピークを下げると、変圧器の負荷低減による損失減や力率改善効果も得られる場合があります(ただし金額換算は小さい)。
以上より、総削減額=基本料金削減+電力量削減で評価します。投資採算性を見る際は、蓄電池導入コスト等と比較して**何年で元が取れるか(投資回収年数)**を算出します。基本料金の割合が大きい高圧需要家ほど、ピークカットの経済効果は顕著になります。
参考計算式: 蓄電池を用いたピークカットで必要な電力量を見積もる簡易式は次の通りです:
- 必要蓄電池容量(kWh)= ピーク電力削減量(kW) × ピーク継続時間(h)- 同期間の太陽光発電量 (kWh)
例えば「ピーク時に50kW減らしたい(ピーク継続1時間)、その時太陽光が20kWh発電すると予想」の場合、蓄電池容量=50×1-20=30kWh(効率100%仮定)となります。実際は充放電効率(90~95%程度)で割り戻して若干大きめに見積もる必要があります。
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2-4. ピークカット運用のポイント
ピークカットを効果的に行うには以下のポイントに留意します。
目標ピーク値の設定: 現状の最大デマンド値より何%低い値を目標にするか決めます。過去データから無理のない範囲で削減余地を見極めます(例: 10%削減など)。
対象負荷の選定: 一時停止や調整が可能な負荷(空調、冷凍機、ポンプ等)を選びます。生産やサービスへの影響が出ない範囲で実施します。
従業員への周知: 人手による節電協力も有効です。ピーク時間帯の不要照明消灯や機器の間歇運転など、省エネ意識向上もセットで行うと成果が出やすいです。
蓄電池との連携: 蓄電池を導入している場合、何時から何時まで何kW放電させるか、制御ロジックを最適化します。曇天時や蓄電池残量が少ない場合でも対応できるよう、余裕を持った設定(予備電力を残す等)を行います。
【Biz】蓄電池の充放電時間帯の設定:自家消費最大(系統充電しない)するには?ピークカットするには?パターン別設定方法について| エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
定期的な見直し: 生産量増減や店舗改装などで負荷パターンが変われば、目標ピーク値や制御設定を見直します。毎年の最大デマンド更新時期に合わせてPDCAを回すことが重要です。
3. ピークシフトの詳細
3-1. ピークシフトとは何か?
ピークシフトとは、電力需要の高い時間帯の使用を別の時間帯に**移動(シフト)**させることを指します。電力消費のピークそのものを削減するのではなく、「使用するタイミング」をずらすことで需要の波を平準化する手法です。例えば工場で昼間に使う電力の一部を深夜帯にまわしたり、夜間に蓄えた電力を昼間に使うことが該当します。
ピークシフトの代表的な方法は蓄電池の活用です。具体例として、「昼間に電力需要の多い工場で、早朝や夜間に蓄電池へ充電し、昼のピーク時にその電力を放電して使う」ことが挙げられます。こうすることで、全体の使用電力量は変えずに電力使用の時間配分を変えることができます。
【Biz】蓄電池の充放電時間帯の設定:自家消費最大(系統充電しない)するには?ピークカットするには?パターン別設定方法について| エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
ワンポイント解説: 「ピークカット vs ピークシフト」 – 両者の違いは全体の電力使用量にあります。ピークカットは需要ピーク時の使用を減らすため総使用量も減少します。一方、ピークシフトは使用時間をずらすだけなので総使用量は変わりません。どちらも基本料金削減に有効ですが、電力量削減効果はピークカットのみが持ちます。
3-2. ピークシフトと時間帯別料金の関係
ピークシフトは、時間帯別単価の差を活用して電気代を節約できるケースがあります。一般に電力プランでは「需要の多い昼間の単価が高く、需要の少ない夜間の単価が安い」傾向があります。そのため、夜間など安価な時間帯に電力を確保し、高価な時間帯で使用することで、同じ1kWhの消費でもコストを抑えられます。
例えば前節で紹介した東京電力のプランでは、夏季平日昼間(13~16時)が23.2円/kWh、一方夜間(22~翌8時)は15.74円/kWhと約7.5円/kWhもの差があります。仮に消費電力量自体は同じでも、夜間にシフトできればこの差額分の電力量料金を節減できます。
単価差が大きい例: 夏季昼間ピーク:30円/kWh、夜間:10円/kWhという極端な差のプランでは、1,000kWhの需要を昼→夜に移せば(30-10)*1000=2万円の節約になります。
単価差がない場合: 単一単価契約(時間帯区分なし)の場合、シフトしても電力量料金自体は変わりません。ただしピークシフトによって最大デマンドが下がれば基本料金減少効果があります。
実際には多くの高圧契約で昼夜の単価差が設定されているため、ピークシフトは**「電力量料金の削減」+「基本料金の削減」**という二重のメリットをもたらします。
電気料金プラン単価照会機能(ASP・Biz共通) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
※エネがえるでは、全国100社以上、3,000種類の電力会社・プラン毎に、基本料金や従量料金(季時別・時間帯別料金プラン含む)、月毎の燃料調整費単価(独自燃調費単価含む)、再エネ賦課金などの情報を参照できます。
3-3. ピークシフトの具体的手法
ピークシフトを達成する典型的な手段は以下の通りです。
蓄電池への夜間充電: 前述のとおり、定置型蓄電池に夜間電力を充電しておき、昼間に放電して使います。この方法が最も柔軟で、多くの工場・ビルで導入が進んでいます。
稼働シフト: 人や設備の稼働時間自体をずらす方法です。例えば工場で昼間稼働していた工程を夜間シフト勤務に変更したり、オフィスでフレックスタイムを導入し使用電力の平準化を図る等です。ただし実行のハードルが高く、現実的には困難な場合もあります。
デマンドレスポンス(DR)契約: 電力会社やアグリゲーターとの需給調整契約に参加し、逼迫時に消費削減する代わりにインセンティブを得る仕組みもあります。これは能動的なピークシフト(外部要請に応じた一時シフト)と言えます。
蓄電池を用いるピークシフトでは、蓄電池の容量と出力が鍵となります。十分な容量があれば長時間にわたり昼間の需要を賄えますし、高出力であればピーク時の大電力を一気に肩代わりできます。実際の導入では需要パターンに応じて**「何時から何時まで何kWシフトするか」**を設計し、それに見合った蓄電池スペックを選定します。
【Biz】蓄電池の充放電時間帯の設定:自家消費最大(系統充電しない)するには?ピークカットするには?パターン別設定方法について| エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
3-4. ピークシフトの経済効果と留意点
ピークシフトの経済メリットは主に電力量料金の差額分です。上記のように単価差×シフト電力量で算出できます。加えて、ピークシフトによって最大デマンド値を抑制できた場合、基本料金の削減も発生します。例えばピークシフトで最大デマンドを250kW→230kWに下げられれば、その分基本料金も減ります。
一方で、ピークシフトには以下の留意点もあります。
シフト先の需要増: 夜間などに需要を回すことで、夜間帯のデマンドが上昇し新たなピークになる可能性があります(元の昼ピークと逆転してしまう)。蓄電池制御で夜間充電を分散させる等の工夫が必要です。
蓄電損失: 蓄電池を介すると充放電ロス(round-trip効率90%前後)が生じます。移動させたエネルギーの一部が損失となるため、純粋なエネルギー効率は若干低下します。ただし経済的には夜→昼の単価差で十分カバーできるケースがほとんどです。
需要予測: 効果的なシフトには正確な需要予測が欠かせません。天候や稼働計画に応じて「翌日の何時にどれだけ放電すればピークを超えないか」をシミュレーションし、スケジュールを組む必要があります。
Biz:蓄電池設定の入力の際、目標ピーク値にどのような数値を入力するべきか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
4. 太陽光×蓄電池によるピーク制御と電気代削減の仕組み
4-1. 太陽光発電がもたらす効果
まず太陽光発電(以下PV)の自家消費効果をおさらいします。昼間の需要を自家発電で直接賄えるため、電力購入量の削減とデマンド抑制につながります。例えば工場屋根にPVを設置し日中の負荷をまかなえば、その分グリッドから買う電力が減り電気代削減につながります。さらに日中ピーク需要も低減されるため、ピークカット効果も得られます。太陽光発電=ピークカット向きと言われるゆえんです。
一方、太陽光発電だけでは夜間や早朝の需要には貢献できません。昼間しか発電しないため、夕方以降のピーク(例えば商業施設の閉店前照明需要など)には対応できないのです。ここで蓄電池を組み合わせれば、昼間の余剰発電を蓄えて夕方・夜間に回したり、逆に夜間安価電力を貯めて朝の立ち上がりに使うといった柔軟なピークシフトが可能になります。
要点:
PVは昼のピークを直接カットするのに有効(電力使用量そのものを減らせる)
蓄電池は時間を移すのに有効(夜間充電→昼放電でピークシフト)
両者併用で「ピークカット+ピークシフト」の相乗効果を発揮
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4-2. PV+蓄電池併用によるピークカットの仕組み
PVと蓄電池を併用することで、ピークカットはより確実かつ大幅になります。具体的な動きの一例を示します。
晴天時昼ピーク: 太陽光発電が需要の大部分をカバーし、残りを蓄電池放電とわずかな買電でまかないます。グリッドからの需要は大幅に減少し、この時間帯のデマンド値は低く抑えられます。
曇天時昼ピーク: 太陽光発電量が不足する場合、蓄電池からフルパワー放電し、不足分を補います。これにより**「ピーク時グリッド使用量≦目標値」**を維持します。例えば目標デマンドを200kWに設定したら、PV発電が落ちても蓄電池放電でグリッドからの受電が200kWを超えないよう自動制御します。
ピーク以外の時間帯: 太陽光発電は自家需要に使いつつ余剰があれば蓄電池に充電します。夜間は蓄電池を必要に応じ充電(深夜電力活用)し、翌日のピークに備えます。
このように、**太陽光で昼の需要自体を減らし(カット)、蓄電池で不足時に穴埋めしつつ時間を融通(シフト)**することで、ピークカットの安定度が格段に上がります。単独のPVでは天候によりピークカット量が変動しますが、蓄電池併用なら天候不順時も蓄電池放電で目標ピークを維持でき、確実な契約電力削減につなげられます。
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4-3. PV+蓄電池併用によるピークシフトの仕組み
併用システムでは、さらに高度なピークシフトも可能です。太陽光発電の余剰電力を活用することで、昼から夜へのシフトも行えます。
昼→夕方へのシフト: 日中、需要を満たしてなお余る太陽光電力があれば蓄電池へ充電し、夕方~夜間の消費に回します。これにより夕方以降の購入電力ピーク(例えばオフィスのビル照明が点灯する17~19時)を低減します。
夜→朝へのシフト: 深夜電力を蓄電池へ充電し、朝の立ち上がり需要に放電して使います。朝は太陽光発電前で需要が上昇する時間帯ですが、蓄電池がカバーすることでグリッドからの受電増加を抑制します。
このようにPVと蓄電池を組み合わせると、昼から夜、夜から朝といった多方向のシフトが実現できます。一種のバーチャルPPA(仮想的な電力購入契約)のように、自家発電分を時間超越的に融通できるため、電力の有効利用とコスト最適化が進みます。
例えば、あるオフィスビルでは昼のPV余剰を電池に貯め、夜間の非常用照明やサーバーに供給する運用を行っています。これにより日中の基本料金削減+夜間の電力量料金節約を両立し、トータルの電気代を大幅に低減できました。
4-4. 経済効果の試算例
ケース: デマンド500kW、年間消費300万kWhの工場にPV500kW・蓄電池500kWhを導入した場合を考えます。
ピークカット効果: 年間最大デマンドを500→300kW程度に削減(▲40%)できたとします。基本料金単価1,700円/kWの場合、基本料金は年間約4,080万円→2,448万円に減少(約1,632万円削減)。
電力量削減効果: PV発電により年間60万kWhを自家消費、電力量購入が300万→240万kWhに減少(▲20%)したとします。単価15円/kWhなら電力量料金は4,500万円→3,600万円(約900万円削減)。
ピークシフト効果: 単価差のあるプランで夜間安価電力を有効活用できればさらに削減可能ですが、本ケースでは単価フラットと仮定します(効果ゼロとする)。
以上より、年間の電気代削減額は約2,532万円に達します。設備コスト(PV500kW+電池500kWhがおおよそ2.5~3億円規模)を考えると10~12年程度で投資回収できるイメージです。実際には補助金適用や電気代上昇見込みを織り込めばもう少し短縮されるでしょう。
もちろん効果は施設によって異なりますが、PV+蓄電池併用は電気代削減とCO₂削減を両立できる強力なソリューションと言えます。
<h2 id=”5″>5. 自家消費型太陽光+蓄電池導入のメリット</h2> <h3 id=”5-1″>5-1. メリット(1): BCP対策・非常時電源の確保</h3>
蓄電池を設置する最大の付加価値の一つが非常時の電力確保、すなわちBCP(Business Continuity Plan)対策です。蓄電池があれば停電時にも重要負荷へ電力供給が可能となり、事業を継続できます。例えば災害等で大規模停電が発生しても、自社の太陽光+蓄電池システムで照明や通信設備、工場の生産ラインの一部を動かし続けることができます。これは取引先や顧客からの信用力向上にも寄与し、企業のレジリエンス(強靭性)を高めます。
実例: 病院に太陽光100kWと蓄電池200kWhを導入したケースでは、停電時に手術室や通信設備への電力供給を4時間以上維持できるようになり、非常用発電機燃料が切れた後も一定の医療行為継続が可能となりました。
条件: 太陽光発電を非常用電源として利用するには、「パワコンの自立運転機能」や「アイランド運転モードへの切替機構」が必要です。適切な配電盤連携と制御設計を行えば、昼間だけでなく夜間も蓄電池からの電力で最低限の負荷を維持できます。
以上のように、再エネ+蓄電池はクリーンな自家発電設備兼大容量UPS(無停電電源装置)的な役割を果たし、非常時の事業継続に大きく貢献します。
【エネがえるBiz】投資回収期間やROIのレポート作成方法と劣化率反映の可否について | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
5-2. メリット(2): CO₂排出削減と環境貢献
自家消費型太陽光発電は、使用電力の一部を再生可能エネルギーで置き換えるため、直接的にCO₂排出量削減につながります。例えば年間100,000kWhを太陽光で賄えば、0.5kg-CO₂/kWhの排出係数で年間50トンのCO₂削減です。蓄電池自体は発電しませんが、ピークカットにより火力発電所のピーク運転を減らす効果など、間接的な環境メリットも指摘されています。
企業にとって、再エネ導入によるCO₂削減はESG評価や企業価値向上にもつながります。脱炭素経営を掲げる大手需要家では、太陽光+蓄電池導入をRE100やカーボンニュートラル目標の一環としてアピールする例も多いです。
また自治体にとっても、地域の再エネ導入促進と防災力向上(非常時電源)は重要な政策目標であり、太陽光+蓄電池普及に補助金を設けるケースが増えています(後述)。
エネがえるのCO2排出削減量の計算式と係数は? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
ワンポイント解説: 「環境価値の創出」 – 太陽光自家消費によるCO₂削減量は非化石証書やJクレジットとして取引可能な場合があります。蓄電池併用で余剰電力を極小化すれば、再エネ証書購入量を減らせるメリットもあります。
5-3. メリット(3): 電力レジリエンスと地域貢献
ピークカット・シフトは単なる自社コスト削減策に留まらず、広い視点では電力系統全体の安定化に寄与します。需要家がピークを平準化すれば、電力会社側の設備負荷や供給予備力の余裕が増え、大規模停電のリスク低減や新規設備投資の抑制につながります。
特に蓄電池は系統調整力として注目され、**VPP(仮想発電所)**のリソースとして活用が進んでいます(第7章で詳述)。需要家が持つ蓄電池を束ねて制御することで、地域全体で需給バランスをとるような取り組みも始まっています。
さらに、多くの需要家が太陽光+蓄電池を備えることは、災害時の地域の避難所電源や近隣支援にも役立ちます。例えばある自治体では、商業施設の蓄電池を平時はピークシフトに使い、災害時には避難者のスマホ充電や電気ポット用に開放する協定を結んでいます。こうした地域貢献ができる点も見逃せないメリットです。
5-4. メリット(4): 税制優遇・補助金の活用
再エネ設備導入には国や自治体からの支援策も多く、うまく活用すれば初期コスト圧縮と早期投資回収に寄与します。2025年時点で代表的なもの:
即時償却/税額控除: カーボンニュートラル投資促進税制により、一定要件下で太陽光・蓄電池設備の即時償却または税額控除(10%)が可能です。投資回収を事実上1年に短縮できるインパクトがあります。
国庫補助: 経産省の「再エネ導入支援補助金」では、産業用蓄電池の初期費用最大50%補助など大規模支援があります。これは要件(DR参加など)がありますが、数千万円規模の補助が得られるケースもあります。
地方自治体補助: 自治体独自の補助も数多く、都道府県や市町村レベルで太陽光や蓄電池導入に対し数十万円~数百万円の補助金が交付されています。最新情報を調査し二重取りできるものは積極的に申請すべきです。
資金面メリット: 上記制度を活用すれば初期投資のハードルが下がり、ROI(投資利益率)が向上します。特にピークカット効果で得られる基本料金削減は安定した固定的メリットなので、補助活用で初期費用を抑えれば、その後の年間削減額が純利益として長期間寄与することになります。
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6. 自家消費型太陽光+蓄電池導入のデメリット・留意点
6-1. デメリット(1): 初期費用が高い・投資回収に時間
蓄電池システムは依然として初期費用が高額です。太陽光発電は近年大幅に低価格化しましたが、蓄電池は1kWhあたり数万円以上のコストがかかり、大容量になると数千万円~億円単位の投資となります。結果として回収期間が長期化しやすい点がデメリットです。企業の場合、設備償却期間(耐用年数)が定められているため、減価償却が終わるまでに十分な経済効果を出せるか見極めが必要です。
例: ある工場で蓄電池500kWh導入に2億円の費用がかかったケースでは、年間電気代削減効果約2,000万円で単純計算10年回収と試算されました。しかし蓄電池の保証期間は10年程度であり、実質的な利益寄与が出始める頃に更新時期を迎える懸念があります。
改善策: 補助金の活用やリース/サービス契約(蓄電池を第三者所有で月額サービス利用するモデル)を検討することで、初期負担を軽減しつつ導入ハードルを下げることができます。また、電気代高騰局面では想定より早く回収できる可能性もあります。
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6-2. デメリット(2): 設置スペース・施工上の制約
太陽光パネルと蓄電池ユニットにはまとまった設置スペースが必要です。特に産業用蓄電池は重量・体積とも大きく、屋内外のどこに置くか計画が重要になります。蓄電池ユニットは発熱や防火上の観点から通風や間隔を確保する必要があり、狭い場所には設置できません。加えて既存施設に後付けする場合、耐荷重(床や屋根に載せる重量負荷)や配線経路にも注意が必要です。
例: テナントビルでは所有者の許可や共有スペース利用の問題で大容量蓄電池の設置が難しいケースがあります。郊外工場でも、屋外スペースをトラックヤードに使っており蓄電池用地確保に苦労した例があります。
改善策: 蓄電池のコンパクト化が進んでおり、ラック式のモジュールを屋内機械室に収容できるタイプも出ています。また一部はコンテナ型で屋外に設置し雨風をしのげる設計になっています。事前にメーカーと調整し、最適なレイアウトを検討しましょう。
エネルギーBPO/BPaaS(エネがえるBPO)とは?太陽光・蓄電池・再エネ関連の設計代行・試算代行など業務代行サービス | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
6-3. デメリット(3): 蓄電池の経年劣化と交換コスト
蓄電池(特にリチウムイオン電池)は経年劣化し、容量が徐々に低下します。一般的に5年で初期容量の90%、10年で80%程度に減ると言われます(使用条件による)。定期的なメンテナンスや将来的なモジュール交換が必要になる点も留意すべきです。交換には当然コストがかかり、せっかく電気代で稼いだ分を再投資に充てざるを得ない可能性もあります。
保証と実績: 多くの産業用蓄電池は10年保証が付与されていますが、保証期間終了後も使い続ける場合は性能低下を織り込んだ運用となります。実効容量が減るとピークカット効果も低減するため、契約電力見直しや追加導入検討が必要になるかもしれません。
改善策: 過度な深放電を避け蓄電池寿命を延ばす運用が推奨されます(例: 80%放電止め運用)。またメーカーによっては15年長期保証オプションも登場しています。更新時に古い電池をリユース(他の用途へ転用)するビジネスも進んでおり、交換コスト低減が期待されます。
6-4. デメリット(4): 制度・運用上の注意点
制度面では、電力会社との契約や系統接続条件に関する留意事項があります。
逆潮流禁止契約: 自家消費型で余剰電力を一切系統に送らない約款を結ぶケースがあります(低圧ではよくある)。蓄電池導入で誤って系統に逆潮流すると違約となる可能性があるため、逆潮流防止リレーの設置など確実な対策が必要です。
出力制御対応: 太陽光発電に出力制御義務がある地域(北海道・東北・九州等)では、発電出力を抑制される場合があります。蓄電池があっても制御信号に従いインバータ出力を落とす必要があります。結果として想定より発電電力量が減り、経済効果が目減りするリスクもあります。
運用の複雑さ: 太陽光+蓄電池は高度なエネルギーマネジメントを要します。設定やモニタリングが煩雑になるため、エネルギー管理担当者のスキルが求められます。適切な研修や、メーカーのリモート監視サービス利用などで対応しましょう。
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6-5. デメリット(5): その他
その他、ピークカット・シフト施策全般に言える注意点として以下があります。
生産・快適性への影響: 無理なピークカット(過度の負荷遮断)は生産性や快適性を損なう恐れがあります。省エネとのバランスを取りつつKPIを設定すべきです。
電力契約メニュー: 時間帯別料金メニューに変更すると逆に基本単価が上がるケースもあり、総額で損得を見極める必要があります。電力会社や新電力のプランをよく比較検討しましょう。
メンテナンス負荷: 新たな設備導入に伴い、点検・維持管理項目が増えます。蓄電池や太陽光パワコンの定期点検費用も事前に把握しておくべきです。
7. 提案TIPS・ノウハウ(営業・技術担当向け)
7-1. Tip(1): 目標ピーク値を現実的に設定する
ピークカットの目標(契約電力の目標値)は高すぎても低すぎても良くありません。野心的に下げすぎると蓄電池容量不足や運用負荷が増し、達成できないリスクがあります。一方、緩すぎると十分なコスト削減効果が出ません。過去のデータからピーク持続時間や頻度を分析し、最小化できそうな現実ラインを見極めます。
例: 過去1年間で最大デマンド500kW、次点が480kWだった場合、ひとまず480kWを目標値とするのが現実的です(4%削減)。様子を見て更に下げられそうなら段階的に挑戦します。一気に400kWを目指すと対応困難なピークが出るかもしれません。
ばらつき対策: 季節変動が大きい需要家では、夏季と冬季で異なる目標を設定することも検討します(電力会社と協議して契約電力変更も可)。ピーク値リセットのタイミング(毎年〇月など)に合わせ、季節ごとの最適ピーク値を狙います。
Biz:蓄電池設定の入力の際、目標ピーク値にどのような数値を入力するべきか? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
7-2. Tip(2): 蓄電池容量と出力のバランス検討
実効容量とは、蓄電池の実際に有効に使える容量のことです。カタログ上の容量から劣化や効率、予備を差し引いた値で考えます。提案時は目的に応じた容量の目安を示すと良いでしょう。【例】ピークカット重視ならPV容量の0.5~1倍程度、夜間活用重視なら1~2倍程度が推奨されています。
ピークカット目的: 太陽光パネル容量に対し蓄電池容量は0.5~1倍程度。日中数時間のピークに対応できれば良いため、PV出力の一部を補完できる程度で済みます。
ピークシフト目的: 夜間充電→昼放電など長時間のシフトを狙う場合、1~2倍程度と大きめが望ましいです。例えば日中6時間分の負荷を賄いたい場合、PV日射にもよりますがかなり大容量が必要になります。
BCP目的: 非常用電源としても期待するなら、必要とするバックアップ時間×重要負荷電力を容量に換算し、それに見合うシステムを提案します。災害用としては少なくとも数十kWh以上は欲しいところです。
また蓄電池出力(kW)も重要で、ピークカットでは必要削減量を瞬時に供給できる出力が求められます。例えば50kW分カットしたければ50kW以上の放電能力が必要です。容量(kWh)と出力(kW)は別物なので混同しないよう注意します。
【Biz】蓄電池の充放電時間帯の設定:自家消費最大(系統充電しない)するには?ピークカットするには?パターン別設定方法について| エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
7-3. Tip(3): 蓄電池「最低残量」や「最低購買電力」の設定
蓄電池運用では、空っぽにしすぎない・使いすぎない設定も重要です。100%まで放電してしまうと非常時の余力が無くなり、電池劣化も早めます。提案時には何割を予備容量として残すか決めておきます(例: 常時20%は残す)。
エネルギーシミュレーションツール「エネがえるBiz」では最低購買電力というパラメータで、一定量の電力はあえて購入し自家消費を抑える設定があります。これは負荷追従のロスや制御余裕を見るための機能で、完全に買電ゼロを目指さず少し余裕を持つ考え方です。現実の制御でも「ピーク時でも最低◯kWは系統から取る」という設定にすると、万一の制御ずれで逆潮流するリスクを避けられます。
【Biz】最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
7-4. Tip(4): 業種別ロードカーブテンプレートの活用
需要家の負荷パターンを把握できない場合でも、業種や稼働形態から想定ロードカーブを描くことができます。例えば工場昼勤のみやスーパー営業10-22時などの典型パターンです。国際航業の「エネがえるBiz」には11業種・45パターンものロードカーブテンプレートが用意されており、30分値データが無い場合でも業種と規模を選ぶだけで需要パターンを推定できます。提案段階ではこれらテンプレートを活用し、シミュレーションに反映させることでスピーディーな試算が可能です。
業種別ロードカーブパターンサンプルの提供開始 (Biz) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
ワンポイント解説: 「ロードカーブ」 – 1日の時間帯ごとの消費電力の推移グラフです。業種によって典型的な形があります(例: 学校は昼ピーク型、24h工場は平坦型など)。これを把握すると、ピークカット/シフトの余地も見えてきます。
7-5. Tip(5): 複数シナリオで提案し選択肢を提示
お客様への提案では、「蓄電池なしの太陽光のみプラン」「小容量電池プラン」「大容量電池フルピークカットプラン」など複数案を示し、それぞれの効果・費用を比較検討してもらうのが有効です。特に蓄電池は費用インパクトが大きいため、段階的導入(まずPV+小電池、その後増設)など柔軟なプランも提案します。
実際、エネがえるBizのユーザー事例では「太陽光のみ案」「太陽光+50kWh蓄電池案」「太陽光+200kWh蓄電池案」でシミュレーションレポートを提示し、投資対効果やCO₂削減量、BCP効果を比較したところ、お客様理解が深まり成約率が上がったとの報告があります。
【エネがえるBiz】投資回収期間やROIのレポート作成方法と劣化率反映の可否について | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
7-6. Tip(6): その他ノウハウ集
デマンドデータ自動変換機能の活用: 面倒で複雑な電力会社毎のデマンドデータ(30分値)の扱いをエネがえるBizのデマンドデータ自動変換機能を使うと一瞬でエネがえるBizインポート用専用CSVファイルに自動変換できます。試算の前工程が楽に完了します。
スモールスタート: 迷われている顧客には、まず小規模に始めて効果検証→拡大というステップを提案します。例えば蓄電池をレンタル導入し、効果が確実なら本格導入する方法もあります。
電力会社との連携: 需要家によっては契約種別変更や計量器交換など事前調整が必要なケースがあります。電力会社OBの知見や新電力の協力を得て、スムーズな導入をサポートしましょう。
エネがえるBiz 30分値デマンドデータ自動変換機能とは? | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
8. 2025年時点の最新技術・制度動向
8-1. 技術トレンド: 大容量蓄電システムとAI制御
ここ数年で蓄電技術は飛躍的に進展しています。リチウムイオン電池の改良に加え、以下のような新技術が注目されています。
全固体電池・レドックスフロー電池: 安全性や長寿命を備えた次世代電池として研究開発が進行中。商用化が進めば更なる寿命延長・コスト低減が期待されます。
EV車載電池の再利用: 使用済みEVバッテリーを定置型に再利用するプロジェクトが多数進行しています。これによりコストを約半分に抑えた蓄電池導入が可能になる見込みです。
AI需給最適制御: 天気予報データと電力需要データをAIが解析し、蓄電池の充放電スケジュールを自動最適化するシステムが実用化されています。天候変動による太陽光発電の揺らぎを事前に織り込んで蓄電池制御することで、ピークカット・シフト効率を高めています。大手EMSメーカーや電力会社系ベンチャーがこの分野に参入しています。
また、日本ガイシ社のNAS電池(大型ナトリウム硫黄電池)が世界最大級規模で九州電力に導入され話題となりました。出力5万kW/容量30万kWhという巨大な蓄電池変電所が稼働開始しており、電力系統用としても大容量蓄電が現実解となりつつあります。
8-2. 制度・補助金: 最新情報
補助金制度: 2025年度も国は積極的な蓄電池導入支援を行っています。前述のDR補助金(需要側調整契約型)では、家庭・小規模事業者向けに最大60万円補助(導入費用1/3or容量単価3.7万円/kWhの低い方)という条件で公募が実施されています。予算規模約66.8億円で既に受付が始まっており、短期間で締切となる可能性があります。産業用についても、前述の経産省補助金枠が継続しており最大50%補助が受けられます。自治体レベルでも東京都、神奈川県、大阪府などで独自に企業向け蓄電池補助を創設・拡充する動きがあります。
電力制度改革: 系統側では2024年より充電制限契約という新たなメニューが検討されています。これは大量の系統用蓄電池が接続される中で、電力が有り余る時間帯(主に昼過剰太陽光時)に蓄電池への充電を一時制限するものです。需要家側から見ると少し特殊な制度ですが、将来的に需要家蓄電池がVPP経由で系統調整に使われる際には、こうしたルールを意識する必要が出てくるでしょう。
電源調達と市場: 再エネ電力の調達手段として、非FIT電源の活用や自家消費型PPAモデルがさらに広がっています。自社で太陽光+蓄電池を持たずとも、PPA事業者から電力調達しピークシフトメリットを享受するケース(例えば「夜間安価電力+デマンドサービス」をパッケージ提供する新電力)が増えています。営業担当者としては、自家設置と比較してこうしたサービス利用が有利かどうかも踏まえて提案できるとベターです。
8-3. VPPと需給調整市場の動向
**VPP(Virtual Power Plant)**とは、蓄電池や需要側の柔軟な負荷を集合体として制御し、一つの発電所のように機能させる仕組みです。日本でも実証を経て本格展開期に入りました。需要家の蓄電池がVPPに参加すると、必要時に遠隔制御で放電/充電され、電力市場(調整力市場や容量市場)から収入を得ることができます。
2025年現在、経産省の補助事業によりVPP参加蓄電池への優遇措置が取られており、先述のDR補助金もその一環です。「〇〇エリアでVPP構築のための設備導入をすれば補助」という形で、通信機器や蓄電池導入が補助されています。東京電力や関西電力エリアでは、既に家庭用蓄電池数千台を束ねたVPPが調整力市場で入札に参加するなど、実ビジネスとして動いています。
需要家にとってVPP参加のメリットは新たな収益源です。普段はピークカットに使っている蓄電池を、電力逼迫時にはディスパッチ(送電指令)に応じて放電し、報酬を得ることが可能です。報酬額は需給調整市場価格に左右されますが、蓄電池を遊休時にも有効活用できるため経済性向上に寄与します。
提案の際は「蓄電池を導入すれば、自家消費効果に加えて需給調整市場へ売電参加するオプションもあります」と付け加えると将来性を感じてもらえるでしょう。実際にVPPアグリゲーター(需要家の蓄電池を集約して市場参入する事業者)と契約するには、通信回線設置やソフトの導入などありますが、難しいものではありません。今後はこうした蓄電池の副収入モデルが普及し、ピークカット単体では合わなかった投資がペイする可能性も高まります。
8-4. 系統連系制限とその対策
再エネ導入が拡大した地域では、系統の空き容量不足や出力制御の問題が顕在化しています。代表例が九州エリアで、太陽光発電の大量導入により電力需要を上回る発電が発生する事態から、年間の出力制御量(捨てざるを得ない再エネ電力)が2023年度で6.7%にのぼります。全国平均2%弱に対し九州は突出して高い値です。このような状況では、新規に太陽光を繋ぎたくても系統側が受け入れ困難となり、実質的な接続制約がかかるケースがあります。
こうした再エネ受入れ制限への一つの解は大容量蓄電池の設置です。前述の九州電力の例では、福岡県豊前市の発電所構内に世界最大級の蓄電池変電所(出力5万kW、容量30万kWh)を設置し、余剰太陽光を充電して他時間帯に放電する取り組みを行っています。この蓄電池により九州~本州連系線を通じた送電量を30万kW拡大でき、再エネの有効利用が図られています。
需要家側でも、系統側事情に配慮した設計が必要になる場合があります。例えば接続申請時に出力抑制機能付きパワコンの導入が義務付けられたり、一定容量以上の蓄電池を併設する条件でないと認可されないケースも出ています。北海道や東北地方では「○○kW以上の太陽光を繋ぐ場合、蓄電池容量○○kWh以上または出力制御枠内」といった要件が実際にあります。
提案時には、その地域の電力会社ガイドラインを確認し、必要であれば蓄電池設置を系統対策として位置づける説明も重要です。「御社エリアでは出力制御が頻繁に発生する可能性があるため、蓄電池で余剰電力を有効活用し発電ロスを最小化します」といった具合に、単なるコストメリットだけでなく**導入しないと発電できない(蓄電池がないと太陽光の価値をフルに享受できない)**背景を伝えると理解が進みます。
また将来的な系統側の施策として、配電網のデジタル化や需給調整マーケットの拡充が予告されています。系統連系制限は技術的には徐々に緩和していく方向ですが、少なくとも2030年頃までは一部地域で制約が残る見込みです。対策としての蓄電池活用は引き続き重要なテーマです。
9. 業種別ロードカーブと導入効果シミュレーション比較
最後に、業種ごとの典型的な負荷特性(ロードカーブ)と、太陽光・蓄電池導入によるピーク削減効果や自家消費率、電気代削減額を比較します。工場、物流倉庫、スーパー、病院、学校の5業種についてシミュレーションした結果を以下の表にまとめました(※全国平均単価をベースに試算)。各業種の電力使用パターンに応じて効果が異なる点に注目してください。
業種 | 導入後ピーク需要 (kW,削減率) | 太陽光自家消費率 | 年間電気代削減額 (万円,削減率) |
---|---|---|---|
工場 (昼夜連続操業・大型) | 400 (▲20%) | ~100% | 約600 (▲12%) |
物流倉庫 (24時間冷蔵あり) | 210 (▲30%) | ~95% | 約700 (▲20%) |
スーパーマーケット (10-22時営業) | 140 (▲30%) | ~90% | 約400 (▲20%) |
病院 (常時稼働・大型) | 300 (▲25%) | ~100% | 約1000 (▲15%) |
学校 (平日日中のみ) | 50 (▲50%) | ~70% | 約200 (▲30%) |
※上記はモデルケースに基づく概算値です(各業種に太陽光と適切な蓄電池容量を導入した想定)。削減額は年間ベース、万円単位で記載。業種・設備規模により大きく異なりますので参考値としてご覧ください。
考察:
工場: 昼夜を通じ負荷が高い工場では、太陽光で昼間の一部を賄っても夜間の需要が大きいためピーク削減率は20%程度に留まります。しかし太陽光発電はすべて自家消費され(自家消費率ほぼ100%)、電力量削減効果は高いです。電気代全体の1割強が削減できました。
物流倉庫: 冷蔵設備など夜間も一定負荷がありますが、昼間の積み込み作業時間にピークが集中する物流倉庫では、ピークカット・シフト効果が大きく出ます。ピークは約3割削減され、自家消費率も高めです。電気代削減率も2割前後と優秀です。
スーパー: 営業時間帯に負荷が集中し夜間は冷蔵庫程度の負荷のみという典型的なパターンです。太陽光が日中のかなりの部分を賄い、蓄電池で夕方~閉店時のピークもかなり抑制できるため、ピーク30%減を達成しています。自家消費率は高いですが、週末休みがないためPV余剰は少なく90%程度が自己利用されています。削減額は20%程度で、利益率の低い小売業では大きな経費圧縮効果といえます。
病院: 24時間稼働で常に高負荷な病院では、太陽光で日中の購入電力を減らせても夜間のベースが高いため、新たなピークが夜間に立つ傾向があります。そのためピーク削減率は25%程度と限定的です。ただ年間消費量が大きいため、絶対額の削減は大きくなります。また非常電源価値を考慮すると蓄電池導入の意義は費用以上に高いでしょう。
学校: 平日昼のみ電力使用があり夜間・休日はほぼゼロというパターンです。太陽光発電は平日日中の需要をほぼ置き換え、蓄電池で残りを補えば購入電力ピークを大幅に下げられます。例ではピーク半減(50%減)を実現しました。ただ土日や長期休暇中はPV発電が余剰となりやすく、自家消費率は70%程度に留まります。それでも年間電気代の約30%削減と、大きな効果が得られます。
以上の比較から、「昼間集中型負荷」ほどピークカット・自家消費効果が大きいことがわかります。一方24時間負荷型ではピークカットよりもエネルギー削減主体の効果となり、ピーク削減率は控えめです。提案時には、このような業種ごとの特性を踏まえて効果を説明することが重要です。
なお、地域ごとの電力単価差も効果に影響します。基本料金単価の高い地域(例: 北海道電力管内)では基本料金削減効果が本州よりも高く出ますし、夜間安価な関西電力管内ではピークシフトによる電力量差益が小さいなどの違いがあります。シミュレーションでは各地域の料金メニューを正しく設定し、お客様の所在地に合わせた効果試算を心がけましょう。
シミュレーション用のマニュアルはありますか?(エネがえるBiz/産業用) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)
参考文献・出典
自家消費型太陽光発電とは? – 環境省:再エネ導入方法ガイド (2023年)
産業用自家消費型太陽光と産業用蓄電池の最適な容量はどうやって計算すればよいか? – エネがえるFAQ (2023年更新)
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