卒FITとは?制度のおさらいから卒FIT後の活用方法も解説

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

卒FITとは?制度のおさらいから卒FIT後の活用方法も解説

太陽光発電を設置している事業所や家庭では、「卒FIT」後の対策に苦慮しているケースも多いのではないでしょうか。卒FIT後にどの対策を選択するかは大きな課題です。

本記事では卒FITの基本から卒FIT後の対策の選択肢について、卒FITのメリット・デメリットなどを解説します。卒FIT電力を活用している事例もあわせて紹介するので、参考にしてください。

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卒FITについて

まずはFIT制度のおさらいと、卒FITについて解説します。

 

FIT制度のおさらい

FIT制度とは再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff)のことです。事業所や家庭において再生可能エネルギーで発電された電気は一定期間、固定価格で電力会社に買い取られることがFIT制度によって国に約束されています。FIT制度は再生可能エネルギーによる発電の普及促進を目的としています。

 

FIT制度の買取期間は発電方法・電力量によって異なり、例えば一般家庭に設置されることが多い10kW未満の太陽光発電の場合は10年間と定められています。つまり家庭に太陽光発電を導入した場合は、10年は決められた金額で余剰電力を買い取ってもらえるということです。

 

卒FITとは

卒FITとはFIT制度の適用期間が終了してしまうことをいいます。一般的にFIT制度の期間中は、市場価格より高く電力を買い取ってもらえます。卒FIT後は売電収入が激減してしまう可能性が高く、そのまま同じように売電を続けていても経済的なメリットが少ない場合があります。一例として、卒FIT後の大手電力会社の余剰電力買取価格は下記のとおりです。

 

電力会社

余剰電力買取価格(例・プランや条件によって買取価格は異なります)

四国電力

7円/kWh

九州電力

7円/kWh

中国電力

7.15円/kWh

沖縄電力

7.7円/kWh

北海道電力

8円/kWh

北陸電力

8円/kWh

中部電力

8円/kWh

関西電力

8円/kWh

東京電力

8.5円/kWh

東北電力

9円/kWh

 

2022年に適用されたFIT制度では17円/kWhでの買取が保証されており、上記の買取価格と比べて高価格に設定されていることが分かります。

 

卒FIT後の対策は3つの選択肢から選ぶ

卒FIT後の電力の買取価格下落への対策としては、主に以下の3つの選択肢があります。

 

・継続して同じ電力会社に電気を売電する

・電気を自宅に蓄電して消費する

・電気を売電する電力会社を自分で選びなおす

 

それぞれの選択肢の特徴やメリットを解説します。

継続して同じ電力会社に電力を売電する

卒FIT後も継続して、同じ電力会社に売電することが可能です。同じ電力会社と契約するなら、手間もあまりかかりません。また、売電契約はFIT後も自動継続に設定されているケースも多いため、その場合は特に手続きする必要がありません。手間が少なく簡単な方法ですが、電力の買取価格はFIT制度の期間中と比べて大幅に下がってしまうため、電力の自家消費を検討することもおすすめです。

 

電力を自宅に蓄電して消費する

卒FIT後は余剰電力を売るのではなく、家庭用蓄電池や電気自動車に貯めておくこともできます。太陽光発電による電力はその場で消費するだけでなく、昼間に作っておいて夜間に使ったり、電気自動車の動力として活用したり、非常用電源として蓄えておくことが可能です。

 

自宅で電気を発電し効率的に使えば、電力会社から購入する電力量を減らすことができ、毎月の電気代を節約できます。太陽光発電をうまく活用することで、電気料金0円も目指せるでしょう。また、普段から電力を自宅に蓄電しておくと、地震・台風などの自然災害の際も電気を使える心強い備えとなります。

 

電力を売電する電力会社を自分で選びなおす

卒FIT後はFIT期間中に売電していた電力会社をやめて、別の電力会社に売電することも可能です。例えば、「新電力」と呼ばれる電力会社に売電することで従来の大手電力会社よりも、余剰電力を高い価格で買い取ってもらえるケースがあります。

 

売電先の電力会社を変更するだけならば、余剰電力を買い取ってもらう点でFIT制度中と仕組みが変わらず、初期費用も必要ありません。実践のハードルが低く、お得な卒FIT対策としておすすめです。

 

卒FIT後のメリット

卒FIT後は売電価格が下がるため一見デメリットが大きいように見えますが、実は多くのメリットもあります。それぞれ解説します。

 

売電先の選択肢が増えて自由に選べる

FIT制度の期間中に売電する際は地域の大手電力会社が対象となり、電力会社を自由に選ぶことができません。一方、卒FIT後は売電先の選択肢が増えることがメリットです。

 

卒FIT後は大手電力会社だけでなく、前述した新電力も含めたさまざまな電力会社から売電先を決められます。売電先の選択肢にはガス会社やハウスメーカーも含まれており、自分自身のライフスタイルや価値観に基づいてマッチする企業を選択可能です。応援している企業があれば、それを売電先に選ぶことも1つの手です。

 

卒FIT後の電力利用方法が豊富

FIT制度の期間中における余剰電力の使い道は売電のみでした。一方、卒FIT後には売電以外にも余剰電力の使い道があります。例えば地域・社会貢献に関心がある場合は、前述した3つの卒FIT後対策の他に、余剰電力を寄付できるサービスの利用がおすすめです。

 

他にも、蓄電池がなく自宅で電気を貯められない場合は、余った電気を預かってもらえるシステムもあり余剰電力が多い家庭におすすめです。卒FIT後は電力の利用方法が大きく広がり、幅広く柔軟に選べることがメリットです。

 

自家消費のメリット

前述した3つの卒FIT後対策の中でも、自家消費には多くのメリットがあります。ここでは3つの代表的なメリットを紹介します。

 

・国・自治体の補助金交付がある

自家消費のために蓄電池を購入する場合は、国・自治体の補助金交付を受けられる場合があります。

 

・停電時の非常用電源にもなる

蓄電池に電力を貯めておくことで、停電時の非常用電源にもなり安心です。

 

・電気料金を節約できる

自家消費によって電力会社から購入する電力量を減らすことができ、電気代の節約になります。

 

卒FIT後のデメリット

卒FIT後の主なデメリットは売電価格が下がることと、自家消費にもデメリットがあることです。それぞれ解説します。

 

売電価格が大幅に下がる

前述したように、売電価格がFIT制度の適用期間と比べて大幅に下がってしまうことが、卒FIT後のデメリットです。例えば、2012年におけるFIT制度の売電価格は33~35円となっています。一方、現在の卒FIT後の売電価格は、大手電力会社の場合7~9円程度が一般的です。

 

仮に月100kWの電力を売電したとすると、FIT制度なら3,300~3,500円、卒FIT後では700~900円となるので、売電収入に大きな差が生じることが分かります。卒FIT後は売電における経済面には大きなデメリットがあるといえます。

 

自家消費のデメリット

太陽光発電の自家消費には大きなメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。例えば、発電した電力を貯めておくための、家庭用蓄電池や電気自動車の購入には大きな初期費用が必要です。

 

蓄電池の設置スペースも用意しなくてはならず、定期的なメンテナンスの実施も求められます。ただし、蓄電池導入に必要な初期費用は徐々に低価格化しており、大きなスペースを必要としない小型の蓄電池も登場しているため、自家消費のハードルは下がってきているともいえます。

 

卒FIT電力を活用している事例

卒FIT電力を活用している事例として、「イオン脱炭素ビジョン2050」「ゼロエミッション東京」の2つの取り組みを紹介します。

 

イオン脱炭素ビジョン2050

「イオン脱炭素ビジョン2050」とはイオングループによるCO2削減の取り組みです。店舗から排出されるCO2をはじめとした温室効果ガスの総量を、2050年までにゼロにすることを目標にしています。世界各国で推進される脱炭素化社会の実現に向けた施策といえるでしょう。

 

「イオン脱炭素ビジョン2050」の一環としては、卒FIT電源の調達に向けた取り組みが行われています。具体的には、卒FIT後の家庭が余剰電力を電力会社に売電した際に、イオンから該当家庭にWAONポイントを進呈するスキームが構築されています。代わりに、電力会社が買い取った余剰電力に含まれるCO2排出量ゼロの環境価値が、イオンに提供される仕組みです。WAONポイントは各電力会社によって設定されており、電力価格やポイント数は市場動向によって設定されることになっています。

 

ゼロエミッション東京

「ゼロエミッション東京」は2050年までに東京都のCO2排出量ゼロを目指す取り組みです。目標実現に向けた最初のステップとして、まずは2030年までに都所有の施設のおける電力を、「再生可能エネルギー100%の電力」にすることが推進されています。

 

「再生可能エネルギー100%の電力」とは全て太陽光や風力などの自然のエネルギーで発電された電力のことです。具体的な施策としては、都の廃棄物埋立管理事務所や都立特別支援学校において、「再生可能エネルギー100%の電力」を利用する「とちょう電力プラン」が実施されています。

 

まとめ

電力の買取価格を保証するFIT制度には期間の制限があり、卒FIT後は売電価格が大幅に下がるため対策が必要となります。卒FIT後の主な対策は同じ電力会社への売電を継続すること、電力を自家消費すること、別の電力会社に売電することの3つです。

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著者プロフィール(太陽光・蓄電池シミュレーションエキスパート)

会社名:国際航業株式会社
部署名:公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG
執筆者名:樋口 悟

執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。

太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションの国内唯一のエキスパートとして、大手電力・ガス会社、有名太陽光・蓄電池メーカー、全国販売施工店・工務店など約700社以上と、最近ではエネルギー政策立案サイド(国・官公庁・地方自治体)で太陽光・蓄電池推進政策をしている方々へもエネがえるを活用した太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションやアドバイスを提供している。

執筆記事:https://energy-shift.com/news/author/71cbba7e-dbbc-4728-9349-9cdbed975c6e

執筆者のSNS:
・Twitter:@satoruhiguchi
・LinkedInプロフィール:https://www.linkedin.com/in/satoruhiguchi/
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