太陽光発電量の計算式と経済メリットの推計方法とは?

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

太陽光
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太陽光発電量の計算式と経済メリットの推計方法とは? NEDO METPV-20の詳細解説

30秒で読めるまとめ

NEDO日射量データベースのMETPV-20は、太陽光発電システムの設計や性能評価に必要な高精度な日射量データを提供します。2010年から2018年の統計期間で、全国835地点の時別データを含み、平均年、多照年、寡照年のデータを提供しています。機械学習を用いた日照-日射モデルの改良や、衛星データの活用により、従来よりも高精度かつ高解像度のデータが利用可能になりました。

はじめに

太陽光発電システムの導入を検討する際、発電量の正確な予測と経済メリットの適切な評価は極めて重要です。本記事では、太陽光発電量の計算式の基本的な仕組み、計算ロジック、数理モデル、具体的な計算例を詳細に解説します。特に、NEDO日射量データベースのMETPV-20に焦点を当て、その詳細な仕様、作成方法、利用方法について深く掘り下げていきます。

太陽光発電量の計算式

JIS発電量計算式の基本

JIS C 8907:2005で規定されている太陽光発電量の計算式は以下の通りです:

E = H × K × P × 365 ÷ 1

ここで、

  • E: 年間予想発電電力量 [kWh/年]
  • H: 年平均日射量 [kWh/m²/日]
  • K: 総合設計係数
  • P: 太陽電池アレイ出力 [kW]

基本設計係数について

総合設計係数(K)は以下の要素から構成されます:

  • 温度補正係数
  • インバータ効率
  • 配線損失
  • 日陰の影響
  • 経年劣化

これらの係数を適切に設定することで、より正確な発電量予測が可能になります。

NEDO日射量データベース概要

NEDO日射量データベースは、太陽光発電システムの設計や性能評価に必要な日射量データを提供するために開発されたデータベースです。このデータベースは、METPV-20とMONSOLA-20という2つの主要なコンポーネントで構成されています。

データベースの更新概要

  • 統計期間の更新と統一: 2010年~2018年に更新・統一されました。これにより、地球温暖化による気候変動や都市化に伴う局所的な気候変化を反映し、また日照時間の観測機器の変更による系統的な差異を避けることができました。
  • 高精度化: 日照-日射モデルを改良し、学習期間と統計期間の統一、気温データの追加、機械学習手法の導入により精度が向上しました。
  • 高密度化: MONSOLA-20では、衛星データ(ひまわり8号データ)を利用した「ハイブリッドメッシュ法」を導入し、より詳細な空間分布を表現しています。

METPV-20の概要

METPV-20(MEteorological Test data for PhotoVoltaic system)は、全国835地点における平均年、多照年、寡照年の毎時の推定値を収録したデータベースです。2010年から2018年の統計期間で、太陽光発電システムの設計や性能評価に必要な詳細な日射量データを提供しています。

METPV-20の作成方法

データの収集

METPV-20の作成には、以下のデータを使用しています:

  • 気象庁のアメダスデータ(気温、日照時間、降水量、風、日射量)
  • 収集地点:日照時間を観測している全国835地点
  • 期間:2010年~2018年

欠測の補間

統計期間(2010年~2018年)を通じて欠測補間を行い、欠測を含まないデータセットを作成しました。補間の対象となる要素は、日照時間、気温、風向・風速、降水量です。補間方法は、対象要素に関して月別相関係数が高い近隣地点の観測データで置換する方法を採用しています。

日射量データの整備

水平面全天日射量

欠測補間したデータセットに対して、機械学習により作成した「日照-日射モデル」を適用し、水平面全天日射量の推定値を算出しました。日射量観測地点(47か所)については、観測値をそのまま水平面全天日射量として収録しています。

直達・散乱日射量の算定

斜面日射量を算出するために、水平面全天日射量を直達成分と散乱成分に分離しました。直散分離モデルとして、晴天指数や太陽高度の他に日照率や積雪の影響、大気混濁度の季節変化も考慮した板垣らのモデルを使用しています。

斜面日射量の算出

斜面日射量は、直達成分、天空散乱成分、地面反射成分を個々に計算し、それらを合成して求めています。各成分の計算方法は以下の通りです:

  • 直達成分:直接法を使用
  • 地面反射成分:均一反射モデルを使用
  • 天空散乱成分:Perezのモデルを使用

代表年の選出

2010年~2018年の各年の月ごとの平均日射量を計算し、以下の基準で代表年を選出しました:

  • 平均年:9年間の平均値に最も近い年
  • 多照年:9年間で日射量が最も多い年
  • 寡照年:9年間で日射量が最も少ない年

月の境界データの補正

代表年データは月ごとに選出された年が異なるため、月の境界で大きな不連続が生じる場合があります。特に気温に関しては、当該月末日24時の気温と翌月初日1時の気温の差分を時刻の重み付きで分配することで補正を行いました。

METPV-20の仕様

METPV-20は、以下の特徴を持つデータベースです:

  • 統計期間:2010年~2018年
  • データ種別:代表年(平均年、多照年、寡照年)の時別値
  • 地点数:全国835地点
  • 日射量の推定方法:日照時間等から全天日射量を推定するモデル

METPV-20に収録されている要素は以下の通りです:

  1. 水平面全天日射量
  2. 水平面直達日射量
  3. 水平面散乱日射量
  4. 日照時間
  5. 気温
  6. 風向
  7. 風速
  8. 降水量
  9. 積雪深
  10. 可照時間
  11. 傾斜面日射量

METPV-20の利用方法

METPV-20は、主に以下のような用途で利用できます:

  1. 太陽光発電システムの設計・性能評価
  2. 建築物の省エネルギー設計
  3. 農業分野での日射量予測
  4. 気象学的研究

METPV-20のデータは、時別値で提供されているため、日変化や季節変化を考慮した詳細な分析が可能です。また、平均年、多照年、寡照年のデータが提供されているため、様々な気象条件下でのシミュレーションが可能です。

データの精度と限界

METPV-20の精度は、以下の要因により向上しています:

  • 統計期間の更新:最新の気象データを反映
  • 日照-日射モデルの改良:機械学習手法の導入により、推定精度が向上
  • 高密度化:衛星データの利用により、空間分解能が向上

ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 日射量の観測が行われていない地点では、推定値であるため、ある程度の誤差が含まれる
  • 局所的な地形や建物の影響は考慮されていないため、実際の日射量と異なる場合がある
  • 統計期間(2010年~2018年)以降の気候変動の影響は反映されていない
  • 極端な気象現象(例:火山噴火による大気汚染)の影響は考慮されていない

MONSOLA-20の概要

MONSOLA-20(MONthly mean SOLAr radiation data throughout Japan)は、全国1kmメッシュ、月平均の推定値を収録したデータベースです。METPV-20と同じく2010年から2018年の統計期間で、より詳細な空間分布を表現しています。

MONSOLA-20の特徴

  • 統計期間:2010年~2018年
  • データ種別:9年間の月平均値(推定値)
  • 解像度:全国1kmメッシュ
  • 日射量の推定方法:日照時間等から全天日射量を推定するモデル+ひまわり8号データから推定した日射量分布

MONSOLA-20の利用方法

MONSOLA-20は、主に以下のような用途で利用できます:

  1. 太陽光発電システムの導入可能性調査
  2. 地域エネルギー計画の策定
  3. 気候変動の影響評価
  4. 都市計画・地域開発

MONSOLA-20のデータは、1kmメッシュの高解像度で提供されているため、局所的な日射量の違いを考慮した分析が可能です。また、月平均値が提供されているため、年間を通じた日射量の変化を把握することができます。

経済メリットの推計方法

基本的な推計方法

太陽光発電システムの経済メリットを推計するには、以下の要素を考慮する必要があります:

  1. 年間発電量予測(METPV-20やMONSOLA-20のデータを活用)
  2. 電力単価(自家消費分と売電分)
  3. 初期投資費用
  4. 維持管理費用
  5. システムの耐用年数

これらの要素を用いて、投資回収期間やROI(投資収益率)を計算します。

自家消費と余剰売電のバランス

経済メリットを最大化するには、自家消費と余剰売電のバランスを適切に設計することが重要です。自家消費率が高いほど、一般的に経済メリットは大きくなります。METPV-20の時別データを活用することで、より精密な自家消費率の予測が可能になります。

蓄電池システムの影響

蓄電池システムを併設する場合、以下の点を考慮して経済メリットを推計します:

  • 蓄電池の容量と効率
  • 充放電サイクルの最適化(METPV-20の時別データを活用)
  • ピークカット効果
  • 蓄電池システムの追加コスト

高度なトピック

過積載ピークカットと過積載ロスの計算

過積載設計では、パネル容量がインバータ容量を上回ります。これにより、低日射時の発電効率が向上しますが、高日射時にはピークカットが発生します。METPV-20の時別データを用いることで、より正確な過積載ロスの計算が可能になります。

過積載ロス = Σ(max(0, パネル出力 - インバータ定格出力)) × 時間間隔

エリア別日射量と発電量の比較

METPV-20とMONSOLA-20を組み合わせることで、エリア別の日射量と発電量を詳細に比較できます。METPV-20の835地点の時別データで詳細な時間変化を把握し、MONSOLA-20の1kmメッシュデータで空間的な変化を評価することができます。

積雪地帯での発電量低下の考慮

積雪地帯では、冬季の発電量低下を適切に見積もる必要があります。METPV-20の積雪データを活用し、以下の要素を考慮します:

  • 積雪による日射量の減少(METPV-20の時別積雪深データを使用)
  • パネル表面の積雪による発電効率の低下
  • 融雪システムの電力消費(設置する場合)

両面太陽光パネルの発電量計算

両面太陽光パネルの発電量計算には、METPV-20の詳細な日射量データが特に有用です。以下の追加要素を考慮します:

  • 裏面の受光効率
  • アルベド(地表面の反射率)
  • 設置角度と高さ
  • 時別の直達・散乱日射量比(METPV-20データを活用)

両面発電の効果を含めた発電量は、以下の式で概算できます:

総発電量 = 表面発電量 + (裏面発電量 × 裏面効率 × アルベド × 散乱日射率)

フレキシブルソーラーパネルの特性

フレキシブルソーラーパネルは、曲面への設置が可能ですが、一般的に効率が低いという特徴があります。METPV-20の詳細な日射量データを用いて、以下の点を考慮した発電量計算が可能です:

  • パネルの曲率による受光角度の変化(時別の太陽位置を考慮)
  • 設置面の形状に応じた日射量の変動
  • 温度上昇による効率低下(METPV-20の気温データを活用)

ペロブスカイト太陽電池の可能性

ペロブスカイト太陽電池は、高効率と低コストの可能性を秘めた次世代技術です。METPV-20のデータを活用することで、以下の特性を考慮したより精密な発電量予測が可能になります:

  • 高い理論効率(30%以上)
  • 温度係数の違い(METPV-20の時別気温データを活用)
  • 経時劣化の特性(長期安定性の課題)
  • スペクトル感度の違い(METPV-20の直達・散乱日射量データを活用)

ただし、ペロブスカイト太陽電池はまだ研究段階にあり、商用化には更なる開発が必要です。METPV-20のデータを用いた詳細なシミュレーションは、将来の技術開発に貢献する可能性があります。

まとめと今後の展望

NEDO日射量データベース、特にMETPV-20は、太陽光発電システムの設計、性能評価、経済性分析に不可欠なツールとなっています。高精度かつ高解像度の日射量データを提供することで、より信頼性の高い発電量予測と経済メリットの推計を可能にしています。

今後の展望として、以下のような発展が期待されます:

  • AI技術の更なる活用による予測精度の向上
  • 気候変動の影響を考慮した長期的な発電量予測モデルの開発
  • IoTデバイスとの連携によるリアルタイムデータ収集と予測の高度化
  • 新型太陽電池技術(ペロブスカイト等)に対応したシミュレーションモデルの開発
  • 地域特性をより詳細に反映した微気象モデルとの統合

METPV-20やMONSOLA-20のようなデータベースの継続的な更新と改良は、再生可能エネルギーの普及と持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たすでしょう。太陽光発電システムの導入を検討する際は、これらの高精度データを活用し、専門家のアドバイスも参考にしながら、最適な設計と運用を目指すことが重要です。

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