RE100ロードマップ策定ガイドライン 再エネ調達戦略シナリオの組み立て方

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

むずかしいエネルギー診断をカンタンにエネがえる
むずかしいエネルギー診断をカンタンにエネがえる

目次

RE100ロードマップ策定ガイドライン 再エネ調達戦略シナリオの組み立て方

はじめに:RE100と企業の使命

気候変動対策が待ったなしの状況で、企業が果たすべき役割はかつてなく重要になっています。RE100(Renewable Energy 100%)は、自社事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを誓約する国際イニシアチブです。

2014年の発足以来、年々参加企業が増え、2025年8月時点で世界で444社もの企業が加盟しています。日本企業の参加も拡大し、93社と米国と並んで最多の加盟国となりました。グローバル企業ではAppleやGoogle、トヨタのような製造業から金融・IT企業まで、多様な業種がRE100にコミットしています。日本初の加盟企業はリコー(2014年)でしたが、その後ソニー、パナソニック、ホンダ、日立など主要企業が続々と参加表明し、国内でもRE100が経営層の関心事となっています。

もっとも、RE100の達成は容易ではありません。 単に「再エネ100%を目指す」と宣言するだけでなく、科学的根拠に基づくロードマップ策定と着実な実行が不可欠です。RE100では加盟後1年以内に達成までの具体的な計画(ロードマップ)策定が求められ、進捗は毎年報告するルールがあります。さらに2030年に60%、2040年に90%の再エネ化という中間目標も設定されており、2050年またはそれ以前の100%目標に向けて段階的な努力が要求されます。

2025年には技術要件も改訂され、利用できるエネルギー源や調達手法に関する基準が一段と厳格化されました。例えば、運転開始から15年超の古い発電設備からの電力は原則カウントしない石炭混焼発電の電力は認めない再エネ証書は確実に償却(使用)して二重計上を防ぐなど、より「追加性(Additionality)」と環境性を重視したルールとなっています。

このようにRE100達成には社内外で多くのハードルがありますが、同時にエネルギー転換のチャンスでもあります。

本記事では、日本におけるRE100ロードマップ策定と実現のための戦略シナリオを、世界最高水準の知見にもとづき超高解像度で解説します。技術的アプローチから制度設計、経済性、リスク管理まで網羅し、各業界の事例や課題、解決策を比較しながら、ロードマップ策定のベストプラクティスを探ります。難解な専門用語や論点についてはポイント解説を挟み、読みやすさにも配慮しています。

最新(2025年10月時点)の情報を盛り込み、これからRE100達成を目指す企業担当者やコンサルタント、エネルギー事業者の方々にとって実践的に役立つ内容となるよう心がけました。

それでは、RE100実現へのロードマップ策定の旅路を始めましょう。

RE100とは:背景と現状

RE100の概要:RE100(Renewable Energy 100%)は英国の非営利団体「ザ・クライメイトグループ(The Climate Group)」がCDPと協働で運営する企業連合で、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることをコミットします。

2014年にニューヨークで開催されたClimate Weekで誕生し、当初は欧米の多国籍企業が中心でしたが、今ではアジアや南米も含めグローバルに拡大しています。参加には年間消費電力量が100GWh以上等の条件がありますが、影響力の大きな企業であれば多少小規模でも参加が認められるケースもあります。加盟企業は遅くとも2050年までに100%再エネを達成すると宣言し、中間目標の設定や毎年の進捗開示が求められます。

参加企業数の増加:前述の通り、2025年時点で加盟企業数は444社に達し、気候変動への企業の関心が年々高まっていることが伺えます。内訳を見ると、アメリカと日本が各93社と最多グループで、次いでイギリスやフランス、ドイツなど欧州勢が続きます。業種別では製造業とサービス業で全体の6割を占め、製造業(自動車、電機、素材等)からIT・通信、金融、小売、運輸、不動産まで幅広いセクターが参加しています。

日本企業では電子機器のソニー、パナソニック、富士通、日立製作所、精密機器のリコー、キャノン、自動車のホンダ、マツダ、タイヤのブリヂストン、化学の東レ、食品の味の素、アパレルのユニクロ(ファーストリテイリング)や、金融機関では三菱UFJやみずほFG、保険の東京海上HD、小売ではイオンやセブン&アイHD、運輸ではJR東日本など、多岐にわたります。各社がそれぞれ2030年~2050年の達成期限を掲げ、着実に再エネ比率を引き上げている段階です。

RE100参加の意義:企業がRE100を目指す動機は様々ですが、大きくは(1)気候変動対策としての企業責任、(2)ステークホルダーからの要請、(3)経営上のメリット、の三点があります。まず、自社の温室効果ガス排出削減(特にScope2:購入電力由来の排出)によってパリ協定の1.5℃目標実現に貢献できます。

次に、投資家や取引先、消費者から「クリーンな電力を使って生産された製品・サービス」を求める声が高まっており、RE100コミットは国際的な信用力向上につながります。特にサプライチェーン上位の大企業は取引先にも再エネ利用を求める傾向にあり、有名な例ではApple社がサプライヤーに2030年までの100%再エネ電力化を要求しています(2023年時点で世界で300社以上の供給企業が賛同し、日本企業も複数含まれる)。このように「RE100対応」はグローバル競争力の条件になりつつあります。

また(3)経営メリットとしては、再エネ設備の普及により電力コストの長期安定化や、エネルギー自給による地政学リスク低減が期待できます。太陽光や風力発電のコストは近年劇的に低下し、多くの地域で化石燃料発電より安価になってきました。日本でも電力自由化が進み、自社で電源を確保することで燃料価格高騰による電気料金値上げリスクを避ける動きが広がっています。特に2022年以降のエネルギー価格高騰時には、固定価格で調達できる再エネの価値が改めて見直されました。さらに脱炭素先進企業としてPRすることでブランド価値向上や優秀な人材の獲得にもつながるでしょう。

技術要件と質の高い再エネ調達:もっとも、再エネであれば何でも良いというわけではありません。RE100は「追加性」と「持続可能性」を重視しており、再エネ電力の質にもこだわります。再エネ電力の定義は太陽光・風力・地熱・水力・バイオマス(持続可能なもの)ですが、原子力は除外されます。

また2022~2025年の技術ガイダンス改訂で、新規案件からの調達を促すためのルール強化が行われました。例えば「環境証書で再エネ電力を調達する場合、その発電所の運転開始年が調達年から起算して15年以内であること」が求められています。これは単に昔からある大型水力発電の証書を買うだけではなく、新しい再エネ発電所を増やすような契約(追加性の高い調達)に誘導する狙いです。

また水力とバイオマスについては、ダム建設による環境破壊や森林伐採を避けるため厳格な持続可能性基準を満たすケースに限り認めるとしています。要するに、質の高い再エネ調達を企業に促し、単なる「数字上の100%」ではなく実質的な脱炭素インパクトを重視しているのです。この文脈でコーポレートPPA(後述)が注目されており、長期直接契約で新設の再エネ発電所から電力を買う企業にはCDP評価でも加点される仕組みです。

実際、CDPの2023年評価基準では「25%以上の再エネをPPAで調達している企業はスコア上優位」と明記されました。つまり社内でロードマップを策定する際も、なるべく新規プロジェクトからの直接調達を増やし、環境証書だけに頼りすぎない戦略が望ましいことになります。

日本における再エネ普及の現状と課題

日本では政府が「2050年カーボンニュートラル」「2030年温室効果ガス46%削減(2013年比)」という目標を掲げ、第6次エネルギー基本計画(2021年)で2030年に電源の36〜38%を再生可能エネルギーにする方針を定めました。さらに2025年2月にはエネルギー基本計画の見直しが行われ、2040年までに再エネ比率を40~50%程度に高める長期ビジョンや、2030年代に電力セクターのCO2排出を約7割削減する計画が示されています。

また、同時期に「地球温暖化対策計画」と経産省の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行環境整備戦略」が更新され、再エネ導入拡大や電化促進、カーボンプライシング強化など総合的な対策が打ち出されました。これら政策の追い風を受け、日本企業による再エネ調達の機運も高まっています。しかし一方で、日本固有の構造的な課題も依然存在し、企業のRE100達成を難しくしている側面があります。ここでは日本の再エネ普及加速を阻む根源的課題を整理します。

  • 課題1:用地の確保太陽光や風力など再エネ発電設備を大規模に導入するには、設置場所となる土地や空間を大量に確保する必要があります。日本は国土が狭く平坦地も限られるため、メガソーラー用地や風車設置場所の選定が容易ではありません。山間部では森林伐採への懸念、農地転用には規制があるなど、環境保全や景観面での調整も必要です。特に陸上風力は適地が限定的で、大規模導入しようとすると地域住民の合意形成に時間がかかります。対策として政府は太陽光パネル設置の規制緩和(例:遊休農地へのソーラーシェアリング)や、洋上風力の促進区域指定などを進めています。また企業側でも自社所有の遊休地・屋上を最大限活用したり、地方自治体や電力会社と協力して未利用地開拓を進める動きがあります。狭い土地を有効利用する技術(工場屋根や駐車場の上部空間の太陽光、ビル壁面ソーラー、農地上空ソーラー等)も重要です。

  • 課題2:送配電網への接続制約 – 発電設備を建設しても、それを電力系統に繋げなければ電気は使えません。しかし日本では地域ごとに送電網の空き容量が逼迫しており、新たな再エネ発電所が送電線に接続できないケースが問題化しています。特に再エネ導入が進んだ北海道・東北・九州では「系統のボトルネック」により接続待ち案件が多数発生しました。送電線増強には時間と費用がかかるため、現状では発電事業者が高額な接続工事費を負担して細い線を太くするか、接続自体をあきらめるかといった状況です。またオンサイトPPA(自家消費型太陽光)であっても、余剰電力を系統に売ろうとすると同様の制約に直面します。解決策として政府・送配電事業者は、地域間連系線の増強や既存送電網の運用見直し(ノンファーム型接続の拡充等)接続ルールの改善(先着順から公平配分へ)などを進めています。2024年には送配電網の更なる増強計画が策定され、2030年に向けて数兆円規模の投資が予定されています。企業側では、比較的接続しやすい低圧・高圧案件を積み上げる戦略(小規模太陽光を各地に分散設置)や、需要地に近い都市型太陽光の活用なども考えられます。

  • 課題3:出力抑制(カーテイルメント)のリスク – 晴天の昼間など再エネの発電が需要を上回る時、発電設備の出力を強制的に絞る「出力制御」が発動されることがあります。九州や北海道で太陽光・風力の大量導入が進んだ結果、近年こうした出力抑制の頻度が増加しています。せっかく発電しても止められては売上にならず、採算悪化に直結するため、新規投資の抑制要因となります。特に日本は他国に比べ再エネへの優先給電ルールが弱い(電力市場での調整力確保のため、再エネでも容赦なく止められる)と言われ、発電事業者にとって不安材料です。対策としては、政府が優先給電の徹底や蓄電池併設の促進を検討中です。送電網側でも需給予測の高度化やエリア間融通の拡大で抑制回避を図っています。需要家サイドでは、安定的な再エネ源(例:地熱や中小水力)をポートフォリオに加える蓄電池に余剰電力を蓄えて自家消費する、水素製造など余剰電力活用する、といった工夫でリスク低減が可能です。

  • 課題4:経済性と長期契約のハードル – 再エネへの切替にはコストの問題もつきまといます。足元では太陽光発電の単価は下がったものの、依然として日本は設備費用や土地コストが高く、諸外国に比べ発電コストが割高です。また企業が発電事業者とPPA契約を結ぶ場合、15~20年といった長期コミットメントが求められますが、自社の事業見通しや電力需要がその先どうなるか不確実な中でコミットするのは勇気が要ります。仮に途中で工場を閉鎖したり設備トラブルで発電停止したら契約不履行になるリスクもあります。さらに直近では世界的なインフレと金利上昇により、再エネプロジェクトの資金調達コストや保険料が上昇し、以前ほどのコスト低減が見込みにくい状況です。対応策として、発電事業者側では中断リスクに備えて損害保険に加入したり、契約に「中途解約条項」を設けておく動きがあります。金融機関も、PPA契約に特化した保険商品やファイナンス手法を開発しつつあります。また企業は、再エネ導入による削減CO2量に内部価格を設定して投資判断に織り込む(カーボンプライシングを内部化)ことで、単純な電力コスト比較以上の価値を見出す工夫も有効です。実際、日本でも2023年にGXリーグという自主的排出量取引市場が立ち上がり、2026年には一部企業に排出上限を課す本格的な排出量取引制度(GX-ETS)の開始が予定されています。これにより炭素に価格がつけば、再エネ電力の相対的コスト優位性は高まります。長期契約については、企業連合で共同PPAに参加し需要変動リスクを分散するモデルや、契約途中で他の需要家にスライドできる契約スキームなど革新的な取り組みも期待されます。

以上のように、日本で再エネ100%を達成するには技術的・制度的・経済的にさまざまな障壁があります。しかし、これらは一つ一つ解決に向けた取り組みが進んでいます。企業としてはこれら課題を正しく認識し、リスクに備えた上で戦略を練ることが重要です。

次章では、特に日本企業にとってRE100への移行が「必須」と考えられる主要業界を取り上げ、それぞれの事情とロードマップ策定上のポイントを見てみましょう。

主要産業別:RE100が不可避なセクターと課題

RE100へのコミットは全業種に求められるものですが、特に日本において優先的に再エネ100%が求められる主要分野として、以下の3つが挙げられます。いずれも電力消費量・CO2排出量が多く、国内外のプレッシャーが強い業界です。それぞれの特徴と課題、戦略を概観します。

1. 製造業(自動車・電機・機械など輸出産業)

特徴:製造業は日本の基幹産業であり、工場で大量の電力を消費します。特に自動車産業は組立工場や部品サプライヤーで膨大な電力を使い、電機・電子(半導体、ディスプレイ、家電など)もクリーンルームの空調や生産装置稼働で電力需要が大きいセクターです。これら製造業は製品を世界中に輸出しており、グローバル市場での環境要請に直面しています。

欧州を中心にサプライチェーン全体での脱炭素化が求められており、例えば欧州連合(EU)は域外から輸入される鉄鋼やアルミ等に炭素税を課すCBAM制度を2026年導入予定です。将来、自動車や機械製品にも「製造時のCO2排出」が事実上の貿易条件になる可能性があります。そのため、日本の製造業も自社工場はもちろん、協力会社も含めて再エネ化を進めないと国際競争力を維持できなくなるリスクがあります。

現状:自動車業界ではトヨタ、ホンダ、日産など主要各社が2050年カーボンニュートラルを宣言し、工場排出ゼロ化の計画を立てています。トヨタは欧州の全工場で再エネ電力100%を既に達成し、日本国内でも再エネ利用比率を段階的に高めています(2019年度には国内MIRAI生産ラインを再エネ100%化)。ホンダは2040年カーボンニュートラル目標の中で再エネ活用を拡大中です。

電機ではソニーが2040年までに自社事業で100%再エネ(加盟はRE100ではなく独自目標)を掲げ、太陽光導入やグリーン電力証書活用を進めています。パナソニックも事業所でPPA導入を始めました。とはいえ製造業全般でみると、再エネ比率はまだ一桁~数十%台に留まる企業も多く、これから本格加速が必要です。

課題としては、「工場ごとに地域の電力事情が異なる」点があります。工場が立地する地域によって、利用可能な再エネ電源や電力メニューが違います。例えば太陽光に適した日照か、近隣に大規模太陽光・風力プロジェクトがあるか、電力小売各社の提供する再エネプランは何があるか等、千差万別です。また24時間稼働の生産ラインでは夜間電力をどう確保するか(蓄電や他電源の併用)が問題になります。製造業の場合、サプライチェーン全体の足並みも重要です。

完成品メーカーが再エネ100%でも、部品の製造過程で化石燃料由来電力が使われていれば、最終製品としてカーボンフットプリントは残ります。そこでトヨタや日産などは取引先にGHG排出削減を要請し、場合によっては共同で再エネ調達スキームを構築する動きもあります。自動車部品メーカーや電子部品メーカーなど中堅企業にもRE100が波及しつつあるのはこのためです。

戦略ポイント:製造業でRE100ロードマップを描くには、(1)拠点ごとの需要プロファイルと再エネ利用可能性の分析、(2)生産計画との整合(安定供給と品質維持)、(3)費用対効果の検証、がポイントになります。まず各工場・事業所ごとに年間・季節・日中夜の電力負荷を洗い出し、可能な対策をリストアップします。

オンサイト発電(工場屋根の太陽光や工場敷地内の風力設置)は有力ですが、敷地が限られる都市部工場では賄える割合も限定的です。そこでオフサイトPPA(後述)が鍵となります。例えば自動車メーカーA社は、自社工場の電力需要に見合う100MW規模の太陽光発電所を他県の土地に建設してもらい、長期契約でその電力を購入するという手法を取り得ます。

実際にデンソーやアイシンといったトヨタ系部品メーカーは、2022年以降九州や中部でメガソーラーとのPPA契約を締結しています。また電力会社の再エネメニュー活用も現実的です。たとえば東北電力はJR東日本向けに東北新幹線の電力を再エネ100%電力(非化石証書付きメニュー)で供給する契約を2025年に開始しました。

このように地元電力会社との協業で、大規模需要でも段階的に再エネ化を図ることが可能です。製造業では生産ラインの電源喪失は許されないため、バックアップ電源や蓄電池の併設も検討されます。万一再エネだけで賄えない時間帯や瞬停に備え、蓄電システムや自家発電(非常用ガスタービン等)を組み合わせてレジリエンスを確保します。最後に経済性ですが、大量需要ゆえにスケールメリットが働き、複数拠点まとめて交渉することでPPA価格を引き下げられる可能性があります。欧米ではメーカー数社が共同で電力購入協議会を作り、メガプロジェクトを誘致するケースもあるため、日本でも同業種連携が有効でしょう。

2. 素材・重工業(鉄鋼・化学・セメント・製紙など高エネルギー産業)

特徴:鉄鋼業や化学工業などはいわゆる「ハードトゥアベイト(削減困難)」産業で、膨大な化石燃料使用とCO2排出があります。鉄鋼の場合、主流の高炉法では石炭を還元剤に使うため、プロセス自体からCO2が出ます。一方、電気炉(EAF)は鉄スクラップを溶解する方式で、大量の電力を消費します。

日本では粗鋼の約3割が電気炉製で、電気炉鋼メーカーにとっては電力のカーボンフリー化が直結してCO2削減につながります。化学やセメントも高温熱源に化石燃料を使うため直接排出が多いですが、工場動力の電化や将来的な電気炉化が進めば電力需要がさらに増大し、それを再エネで賄う必要が出てきます。要するに、重工業では電力による脱炭素化(=再エネ化)と工程自体の革新(水素還元製鉄やCCUS等)が両輪となります。また、欧州のCBAMは真っ先に鉄鋼やアルミ、肥料、セメント等を対象にするため、日本の素材産業も海外輸出の観点から無視できません。たとえば日本製鉄やJFEなど大手高炉メーカーは欧州向け鋼材輸出もあるため、グリーンスチール(CO2フリー製鉄)への転換が避けられません。その文脈で製造時の再エネ電力使用は重要な要素です。

現状:鉄鋼業界では、日本製鉄が「カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、水素還元製鉄や製鉄プロセスの電化を進めようとしています。ただし実現には莫大な再エネ電力量が必要で、「製鉄プロセスを全て電気(再エネ)に置換するには原発○基分」などと言われるほど規模感が大きいです。現状で各社とも試験導入段階ですが、電気炉メーカーの東京製鐵はRE100に加盟し、再エネ電力調達に取り組んでいます。化学では三菱ケミカルや住友化学が2050年CN目標の中で再エネ活用を増やす計画です。住友化学はシンガポール工場で大規模太陽光導入を行うなど動き出しています。セメントはまだこれからですが、生コン工場等で太陽光パネル設置例が出てきました。これら素材産業の課題は、とにかく使用エネルギー量が巨大神だという点です。

単一拠点で数百MW級の電力を使うこともあり、工場丸ごと再エネ電力にするには、通常のオフサイトPPA規模(数十MW)では焼け石に水です。また24時間連続操業が基本のため、夜間含めたベースロード供給が必要です。現在主力の太陽光・風力は変動が大きく、これだけで重工業をフル稼働させるのは困難です。

従って将来的には蓄電池大規模化や地熱・大規模水力、新型原子炉や大量の水素による発電など、あらゆるゼロ炭素電源を組み合わせる必要があるでしょう。短期的には非化石証書の活用が主体となり得ます。日本政府は電力会社経由で「FIT非化石証書(再エネ由来)」や「トラッキング付き非化石証書」を発行しており、大量需要家でも購入できます。実際、ある大手素材メーカーは全工場電力について非化石証書を購入し、実質再エネ100%利用を達成したと公表しています。ただしこれには賛否があり、「追加的な再エネ発電が増えていないのでは」という批判もあります。そのため先述の通り、証書頼みは一時的措置とし、並行して発電設備の新設(自前またはPPA)を進めることが重要です。

戦略ポイント:素材・重工業では、ロードマップも超長期視点が求められます。2030年や40年までにどこまで再エネ電化し、足りない部分は将来どの技術で穴埋めするか、といったシナリオを描きます。鍵となるのは技術シナリオの複線化です。

例えば製鉄なら(シナリオA)電炉+再エネ電力でスクラップを溶かす路線と、(シナリオB)水素還元高炉でコークスを削減する路線の両方を想定し、それぞれで必要な再エネ電力量を試算します。どちらにせよ非常に大きな再エネ需要になるため、自社単独では難しく業界横断の取り組みがカギです。欧州では産業界コンソーシアムが風力発電事業に出資し、自ら電源を確保する例があります。

日本でも鉄鋼各社が合同で洋上風力に投資する、といったダイナミックな施策が考えられるでしょう。また重工業では立地地域との共生がポイントです。大規模工場はその地域のエネルギーセンターでもあります。地域の再エネ発電事業者・電力会社・自治体と協定を結び、工場と周辺コミュニティが一体で再エネを融通し合う「エネルギー地産地消モデル」を構築できれば、地元理解も得やすくWin-Winとなります。

経済性について言えば、炭素税や排出量取引によるコスト増が避けられない以上、再エネ投資は長期的には安上がりになる可能性が高いです。ロードマップ上は最初のうちコスト高でも、2040年頃には化石燃料より安価になるというトータルコスト見通しを示し、社内の合意形成を図ることが大事です。ファイナンス面でも、国のグリーンボンド発行支援や金融機関のトランジションローンなど活用し、大規模投資を段階的に進める計画が必要でしょう。

3. サービス・インフラ(情報通信・データセンター、鉄道・運輸、小売・ビル等)

特徴:第3の重要セクターは、サービス業や社会インフラ分野です。一見製造業より環境負荷が小さそうですが、実は情報通信(ICT)や鉄道といった電力依存型インフラは巨額の電力を消費しています。例えばデータセンターは大量のサーバーを冷却するため電力使用量が莫大で、「21世紀のエネルギー食い虫」とも称されます。

NTTやKDDIなど通信大手は国内に多数のデータセンターを抱え、今後のAI・クラウド需要増で電力消費はさらに急増する見込みです。既にNTTグループは2030年度までに全使用電力を再エネ化する目標を掲げ、全国で太陽光導入やPPA契約を結んでいます。IT業界では楽天グループが自社データセンターを含む電力を100%再エネ証書で調達済みと発表しています。

また鉄道も忘れてはなりません。新幹線や地下鉄など電気で動く鉄道は、大量の電力を消費する公共交通インフラです。JR東日本は「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を宣言し、将来の鉄道電力を全て再エネに置き換える方針です。既に東北新幹線では東北電力の水力由来電力を契約して一部区間で再エネ電力化を開始しました。私鉄各社や東京メトロなども再エネメニュー契約に動いています。小売・ビル分野でも、ショッピングモールやオフィスビルは照明・空調に電力を大量使用します。

イオン、セブン&アイといった大手流通は店舗や本部の再エネ化計画を策定中で、イオンは2030年までに自社電力の50%再エネを目指し、店舗屋上への太陽光パネル設置やPPAを進めています。不動産大手でも三菱地所や三井不動産が管理ビルの電力を順次再エネ化しています。テナント企業から「再エネ電力で運営されたビルを選びたい」というニーズも出てきており、不動産価値にも関わるようになっています。

課題:サービス・インフラ業の課題は大きく二つ、需要拡大への対応コスト増への対応です。データ通信量は指数関数的に伸びており、それを支えるデータセンターの電力需要も年10%以上で増加しています。再エネにしても絶対量が増え続けると追いつきません。そのため並行して省エネ技術の導入(サーバー効率向上、空調の高度化、不要サービス停止など)を極限まで進める必要があります。

鉄道やビルではピーク電力を下げるデマンドレスポンス(需要側調整)や蓄電池活用が鍵です。もう一つのコスト面では、再エネメニューや証書を大量購入するコストが利用者負担に転嫁される懸念があります。鉄道運賃やテナント料に影響するとなれば簡単には上乗せできません。従って、いかにコスト効率良く再エネを導入するかが求められます。

例えばデータセンター事業者なら立地選定で安価な再エネ電力が手に入る地域(海外では北欧や米国中西部が人気)を選ぶ戦略もあります。日本国内でも北海道や東北は再エネ電源に恵まれ電力価格も比較的安いので、将来的にデータセンター分散配置を進める可能性があります。鉄道では社有地に太陽光発電を設置し自営線で駅や変電所に送電する「自己託送」が考えられます(ただし日本では2024年に自営線託送ルールが厳格化され、電力事業者と一体でないと難しくなりました)。ビルでは、テナント企業と協力して同じビル内で再エネ電力をシェアする仕組みや、建物ごとに再エネ電力プランを提供する新電力の活用がポイントです。

戦略ポイント:サービス・インフラ業界では、顧客や利用者への説明責任も含めた戦略が求められます。つまり「自社が再エネ100%を達成することで、どのような付加価値を提供できるか」を明確に打ち出すことが重要です。

例えばクラウドサービス提供者が「当社のデータセンターは100%再生可能エネルギーで稼働しています」と宣言すれば、環境意識の高い企業は安心して利用できます。鉄道会社が「再エネで走るグリーン電車」をPRすれば利用者のイメージアップにつながるでしょう。このようにRE100達成自体をマーケティングにも活用し、ブランド価値やサービス価値の向上として位置づけると、多少のコスト増は投資と捉えやすくなります。

またロードマップ策定上は、(1)現在提供しているサービスの電力需要を正確に把握・予測すること、(2)可能な削減策や効率化策をまず全部盛り込むこと、(3)残り必要な電力をどう再エネ化するか検討、という手順になります。省エネと需要制御(デマンドレスポンス)は最優先の「隠れた電源」です。NTTは設備の集約や空調見直しで2030年までに20%以上の需要削減を見込むなど、まず無駄を省く計画を立てています。その上で、PPAや自己発電でどれだけ賄い、不足分は証書等で補完するか最適配分を検討します。

サービス業の場合、比較的小規模の需要拠点が多数あるケースも多いため、アグリゲーション(一括調達)が効果的です。チェーン店を展開する小売業では全店舗分をまとめて一つの大型PPA契約でカバーする発想もあります(実際、米ウォルマートは多数の店舗向けに一括して太陽光・風力を購入する取組みを進めています)。日本の小売業界でも共同で発電所を建設しシェアするモデルが出てくるかもしれません。総じて、サービス・インフラ分野では「需要を減らすスマートさ」と「調達する賢さ」が成否を分けるでしょう。

以上、3つの主要セクターについて概観しましたが、共通するのは「社内外の大きな変革が必要」という点です。RE100は単なる環境施策でなく事業戦略そのものを変えるインパクトがあります。次章では、その変革を実現するためのロードマップ策定の具体的手順**を解説します。

世界水準で見るRE100ロードマップ策定のステップ

いよいよ、RE100実現に向けたロードマップをどう策定するか、そのプロセスを詳細に見ていきましょう。一般にロードマップ策定は(1)現状把握→(2)目標設定→(3)シナリオ分析→(4)戦略立案→(5)実行計画というステップで進みます。以下に各ステップを順に解説します(企業の状況によって順序が前後したり一体的に行う場合もあります)。

1. 準備・現状のエネルギー使用量と構成の分析

まず取り組むべきは現状把握です。自社のエネルギー使用量とCO2排出量を網羅的に洗い出します。具体的には、全事業所・工場・店舗の電力消費量を月次・時間帯レベルでデータ収集し、電力以外のエネルギー(熱利用や燃料使用)は範囲外ですが併記しておくとベターです。使用している電力の調達先(契約している電力会社名、プラン名)や再エネ由来比率も可能な範囲で把握します。

さらに再エネの内訳(例えば自社購入電力のうち何%が既に再エネ電力なのか、証書利用はあるか)も確認します。温室効果ガス排出量で言えばGHGプロトコルのScope1,2排出量の最新インベントリを基礎資料に、どの部門・拠点がScope2排出の重点かを可視化します。このフェーズでは、必要に応じて計測装置の設置やシステム構築も行います。

特に大企業ではエネルギー管理担当部署が各拠点からデータを集約する仕組みを整え、エネルギー管理ダッシュボードで見える化する事例もあります(エネルギー管理システム「BEMS」等の活用)。現状分析のアウトプットとして、自社の電力需要特性(ベース負荷 vs ピーク負荷、季節変動、平日休日差など)と、現在の再エネ比率、他社とのベンチマーク状況などをまとめます

例えば「当社は年間○万MWh消費し再エネ率10%、同業平均は20%、最大拠点のA工場が全体の40%占める」等。これにより課題の輪郭が見えてきます。なお、企業グループ全体で取り組む場合は、国内外のグループ会社も含めてデータを集めます。グローバル企業では国ごとに電力事情が異なるため、国別ロードマップの土台となる情報整理が重要です。

2. 目標設定(RE100達成年と中間マイルストン)

次にゴールとタイムフレームを定めます。RE100加盟の場合は最終期限を2050年までに設定する必要がありますが、先進的な企業は2040年あるいは2030年代を達成目標に掲げています。また中間目標も欠かせません。

例えば「2030年までに再エネ60%、2035年80%、2040年100%」というように段階的な目標値を置きます。中間目標を設定するメリットは、進捗を定量的に管理できることと、組織内外にコミットメントを示しやすいことです。五年間隔くらいでマイルストンを置くのが一般的ですが、より詳細に毎年のターゲットを決める会社もあります。

日本企業の場合、2030年や2040年は政府のエネルギー戦略ともリンクする節目なので、それに合わせると説得力が増します。例えば政府方針が「2030年再エネ36%」であれば、自社としては「2030年50%を目指す(国全体より高い志)」などとするとステークホルダー受けも良いでしょう。

目標設定にあたって重要なのは「いつまでに何を100%にするか」の範囲です。RE100は基本的に自社の事業活動における購入電力全て(Scope2)を対象としますが、合併や事業拡大がある場合は対象範囲の定義も明確にします。またグローバル企業なら地域別達成時期をずらす戦略も考えられます(例:欧米事業は2030年、アジア事業は2035年に100%など)

ただし最終的には全社で達成する必要があります。目標設定段階では経営トップのコミットを取り付けることが極めて重要です。ここで決まった目標値が社外にも公表され、社内の他部門も巻き込んだ活動になるため、経営層の承認・メッセージ発信が必要になります。多くの企業では環境宣言やプレスリリースで「何年までにRE100を達成」と公表し、社内外への約束とします。これは後戻りできない覚悟を示す効果があり、実行段階での原動力にもなります。

3. シナリオ分析と戦略オプションの検討

目標を定めたら、その達成に向けた複数のシナリオを描きます。再エネ100%を実現する方法は一通りではなく、様々な組み合わせが考えられます。ここでは技術シナリオの検討シミュレーションによる評価を行います。

まず、利用可能な再エネ調達手段を洗い出します(詳細は後述の「調達戦略」で説明)。オンサイト発電、オフサイトPPA(フィジカル/バーチャル)、グリーン電力メニュー、非化石証書など、それぞれ導入可能な規模やコスト、インパクトが異なります。現状分析で把握した各拠点ごとの特性に合わせて、「〇〇工場は屋根に太陽光○kW設置可能」「△△事業所は電力会社の再エネプラン転換で全量賄える」等、施策オプションのリストアップをします。

その際、再エネ電源の種類ごとに見込まれる発電量プロファイル(季節・時間変動)も考慮に入れます。例えば太陽光中心の構成だと夏日中は需要超過になるが冬夕方は不足する、等です。続いて、オプションを組み合わせていくつかの達成シナリオを作成します。典型的には「自前主導シナリオ」「外部調達シナリオ」「ハイブリッドシナリオ」などです。

自前主導シナリオは、自社で発電設備を保有または直接契約し、追加性の高い再エネを中心に賄うパターンです。これは環境貢献度は高いですが、初期投資や運用負荷も大きくなります。

外部調達シナリオは、主に電力会社のグリーンメニューや証書購入で達成するパターンで、コストや難易度は低めですが追加性が低く見られがちです。

ハイブリッドシナリオはその中間で、一部はPPAや自家発電、残りは証書等で補完する現実解です。これらシナリオについて、エネルギー需給シミュレーションコスト試算を行います。

シミュレーションでは、各年次の需要予測に対し各電源からの供給を割り当て、需給バランスや不足超過をチェックします。また電力コスト(設備償却費+運用費+購入費)やCO2削減量を算出し、KPI(例えば2030年時点再エネ率や累計コスト、IRRなど)を比較します。さらに将来変動要素に対する感度分析も重要です。再エネ発電コストの低減スピード、電力市場価格、炭素価格、電力需要の増減などを変化させ、シナリオの頑健性を評価します。

例えば「電力需要が想定より10%増えた場合でも達成可能か」「PPA価格が予想より高騰したらどう影響するか」等です。こうした分析にはエネルギーモデルや専門コンサルのツールを用いる場合もありますが、中小規模ならエクセルでも対応可能です。近年はクラウド型のシミュレーションサービスも登場しており、需要データと候補電源を入力すると最適構成を提案してくれるツールもあります。いずれにせよ、科学的根拠に基づく検証がロードマップ策定の肝となります。この段階を経て、「どの戦略が現実的か」「どの組み合わせがコスト効率と環境効果のバランスが良いか」が見えてくるでしょう。

4. ロードマップ(道筋)の策定

シナリオ分析の結果を踏まえ、採用する戦略シナリオを決定します。そして、具体的なロードマップ(工程表)を作ります。ロードマップとは、「いつまでに・何を・どの程度実行するか」を示すタイムライン付き計画です。

例えば、2025年に省エネ施策で需要を▲5%削減、2026年に工場Aでオンサイト太陽光○MW稼働、2027年にPPA第1号案件契約開始(○MWh/年)、…2030年50%達成、…という具合に時系列で主要マイルストンを書き出します。この際、単年度ごとの再エネ比率目標と主要施策をひも付けておくと分かりやすいです。「○年に△%にするには何をしなければならないか」を逆算する形です。バックキャスティング思考で最終目標から逆に現在を見渡すと、各段階で何をすべきかクリアになります。

ロードマップ策定では、施策の優先順位とスケジュールを慎重に決めます。即効性があり手軽なもの(例:電力メニュー切替)は早期に行い、時間がかかる大規模投資(例:風力発電所建設)は計画的に準備します。また、行政の制度変更や補助金スケジュールに合わせることも重要です。たとえば「○年度中に補助金申請すると有利」ならそれに間に合うよう前倒ししたり、電力会社との契約更新時期に合わせて切替を行うなど、外部要因も勘案します。

ここで一つ注意すべきは、柔軟性の確保です。エネルギーを取り巻く技術や市場は変化が激しいため、ロードマップも将来変更の可能性があります。そこで「毎年見直し」「想定外の事態に備えた代替策」も織り込んでおきます。これはシナリオAが不調ならシナリオBに切り替える、といったプランBの用意にも当たります。

例えば蓄電池価格が劇的に下がった場合は蓄電併設を前倒し導入する、など柔軟に対応できるようにします。最終的なロードマップ文書には、目標、基本戦略、主要施策、年次計画、必要投資額、CO2削減見込み、リスク要因と対策などを盛り込み、社内承認プロセスにかけます。承認が得られれば、いよいよロードマップに沿った実行フェーズに移行します。

5. 実行計画の具体化と体制整備

ロードマップが完成し経営承認を経たら、社内外に公表する企業も多いです(サステナビリティ報告書やプレスリリースで「当社の再エネ100%ロードマップ」を明示)。そうすることで社内の協力も得やすくなり、対外的な信頼性も高まります。

次に大事なのは実行に移すための詳細計画と体制構築です。ロードマップはあくまで大枠なので、各施策ごとにプロジェクト計画を立てます。例えばオンサイト太陽光導入なら、「いつまでにサイト調査・業者選定・工事・運用開始」といったタスクリストを作り、責任者を割り振ります。PPA契約なら、調達部門や法務部と連携し、入札・交渉プロセスを設計します。再エネ証書調達なら、必要量を見積もり信頼できる証書供給先(例えば非化石市場やJクレジット市場)を確保します。

同時に、社内体制の整備も欠かせません。多くの企業では、環境担当部署やエネルギー管理部署が主体となりますが、実行段階では設備投資を伴うため設備・エンジニア部門、契約交渉では購買・調達部門、コスト管理で財務部門など、横断的な協力が必要です。そこでプロジェクトチームや委員会を立ち上げ、定期的に進捗状況を共有・意思決定する仕組みを作ります。

トップマネジメントも関与し、重要な判断(例:大規模投資のGo判断や契約締結の承認)をタイムリーに行えるようにします。従業員教育・意識改革も実行フェーズのカギです。エネルギー使用の現場を担う工場スタッフやビル管理担当者に、再エネ推進の意義や具体的な協力事項(省エネの徹底など)を周知します。

また必要に応じて専門知識習得の研修や資格取得も支援します(エネルギーマネジメントや電気主任技術者などのスキル向上)。実行段階では、社内外のコミュニケーションも大事です。社内には節電キャンペーンや再エネ利用状況の見える化でモチベーションを高め、社外には進捗や成果を積極的に発信して企業価値向上につなげます。

例えば「今年度再エネ率○%達成、CO2×万トン削減」というニュースはESG評価向上につながります。最後に、モニタリングとレビューを継続します。毎年、計画通り進んでいるかKPIをチェックし、想定より遅れていれば原因分析と対策を講じます。例えば需要が増えて再エネ率が目標未達なら、追加の証書購入や次年度計画前倒しで補填する、といった対応です。PDCAサイクルを回しつつ、技術革新や新たな政策も取り込んで計画をアップデートしていきます。ロードマップは生きた文書であり、進化させながら最終ゴールに向かうイメージです。

以上がロードマップ策定から実行計画までの流れです。要約すると、「正確な現状把握」→「大胆かつ現実的な目標設定」→「エビデンスに基づく戦略シナリオ検討」→「明確な工程表の策定」→「組織を挙げた実行」というステップになります。次章では、このロードマップを支える具体的な再エネ調達戦略(PPAや証書など)について、選択肢ごとの特徴と最新動向を見ていきます。

再エネ電力の調達戦略:手法と最新動向

RE100を実現するには、どのように再生可能エネルギー電力を調達するかが核心になります。調達方法はいくつもあり、それぞれメリット・デメリットや適性が異なります。ここでは主要な調達手法を解説し、最新のトレンドや日本固有の事情にも触れます。自社の状況に応じて最適な組み合わせを選ぶ参考にしてください。

オンサイト自家発電(自社設備による再エネ発電)

概要:自社の敷地内や建物屋上に再エネ発電設備を設置し、その電力を自家消費する方法です。代表的なのは屋根置き太陽光発電です。この場合、発電設備は自社所有とし、発電した電力を電力会社の系統を介さずダイレクトに施設内で使うことになります(余剰が出れば系統に逆潮流させることも可能ですが、基本は自家利用)。風況が良ければ小型風力や中小水力、バイオマスボイラーからの蒸気発電等も考えられます。

参考:わずか10分で見える化「投資対効果・投資回収期間の自動計算機能」提供開始 ~産業用自家消費型太陽光・産業用蓄電池の販売事業者向け「エネがえるBiz」の診断レポートをバージョンアップ~ | 国際航業株式会社 

利点:なんと言っても追加性が高く直接的な手段です。自分の設備で発電して使うので環境価値の移転や証書の心配もなく、確実にRE100にカウントできます。電力購入費用の節約(削減した分の電気代が利益)につながり、余剰電力を売電すれば収入も得られます。また停電時にも自家発電設備があればBCP(事業継続計画)上プラスです。さらに社員や顧客に見える形で再エネ利用をアピールでき、CSR効果も高いでしょう。

課題設置スペースや初期投資が制約になります。ビル屋上や工場屋根の面積には限りがあり、大消費電力のごく一部しか賄えない場合も多いです。例えばオフィスビル全体を屋上太陽光だけでまかなうのは敷地面積的に不可能なことがほとんどです。また、初期導入コスト(設備購入・工事費)がかかるため、投資判断が必要です。

ただし太陽光はFIT(固定価格買取制度)期間が過ぎた中古パネルが安く手に入るなど、コスト低減も進んでいます。発電出力は天候に左右されるため、需要とのマッチングが課題です。ピーク発電の昼間に需要が少ないと余剰が出ますし、夜間や雨天時は他の電力が要ります。蓄電池を併設すれば調整できますがコスト増です。最後に、安全管理上の留意もあります。自家発電設備は電気工作物なので保守点検や資格保有者の選任が必要です。

日本の動向:日本ではFIT制度のおかげで、多くの企業が2010年代から屋根貸し太陽光などに取り組んできました。FIT終了後は自家消費型が増えており、経産省の調べでは2022年度の産業用太陽光導入の約半数が自家消費目的でした。補助制度も充実し、地方自治体が事業者向けに太陽光設備導入補助金を出す例があります。

大企業ではトヨタが工場屋上・敷地にメガワット級太陽光を複数設置、イオンは店舗約100か所で計20MW超の太陽光を展開、JR東日本も駅ビル屋上に太陽光パネルを載せています。最近はPPA事業者とのオンサイトPPAも増えています。これは自社で設備を持たず、第三者事業者が自社敷地に設備を設置・所有し、自家消費電力を一定単価で買い取る契約です。企業側は初期費用ゼロで屋根を貸すだけなので手軽です(電気料金削減メリットは所有するより少ないですが、リスクも低い)。

日本でもオンサイトPPAモデルが制度整備され、2021年以降急速に広まりました。契約期間中は事業者のもので期間後に設備を譲渡されるスキームもあります。オンサイト発電は基本的に低圧・高圧で自己利用するため、系統増強負担も小さく、早くから取り組める施策です。

まとめ:オンサイト自家発電は「できるだけやったほうが良い」施策です。再エネ100%には到底足りなくても、まず屋根や遊休地を見渡して設置可能容量を見極め、費用対効果を計算して導入を決めましょう。短期間で実現可能なためロードマップ前半の柱に据えると、序盤で成果を出しやすく社員の士気も上がります。ただし前述のように課題もあるので、オンサイトで足りない分は別手段で補うことになります。

オフサイトPPA(自社外拠点での電力購入契約)

概要:自社の敷地外にある再エネ発電所から電力を調達する契約をPPA(Power Purchase Agreement)と呼びます。オフサイトPPAには主に2形態あります。(A)電気と環境価値をまとめて受け取るフィジカルPPA(小売電気事業者経由での直接調達)と、(B)電気は市場経由で売り環境価値だけを受け取るバーチャルPPA(金融契約型)です。

フィジカルPPAは例えば「〇〇発電所の電力○MWhを当社向けに20年間供給してください」と契約し、送配電網を介して自社施設にその電力を届けてもらう形です。日本では小売電気事業者が仲介して需要家と発電事業者の間を取り持つ契約が一般的です。

一方、バーチャルPPAは「当社が発電所から環境価値(非化石証書)を買います。発電所は電気自体は市場に売って収入を得てください。当社は市場電力を通常購入します」という形で、電力そのものは直接届きませんが環境価値だけ取得します。この場合、電力価格差の精算(CfD契約のような形)を行うことが多いです。

利点オフサイトPPA最大のメリットは、スケールの大きな再エネ導入が可能になることです。オンサイトでは数百kW~数MWが限度でも、オフサイトなら数十~数百MW級のプロジェクトと契約できます。需要家にとっては設備投資せず長期に安価な再エネ電力を確保できる点も魅力です。一般にPPA価格は固定もしくは上限固定なので、将来の燃料価格変動リスクから遮断されます。

参考:オフサイトPPA見積もりシミュレーションは可能か?複数需要施設・発電施設や市場連動型料金プランに対応(PPA事業者:小売電気事業者→需要家向け提案) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

また新設プロジェクトと契約すれば追加的な再エネ電源を増やすことになり、社会的意義が大きいです。RE100の技術要件上も高く評価されます。バーチャルPPAの場合、地域や国を超えて契約できるため、自社需要地に再エネ資源が乏しくても他地域の恵まれた資源を活用できます(ただしRE100ルールで基本は同一国・同一電力市場内に限られます)。さらにフィジカルPPAでは実際に自社が消費する電力そのものを再エネ由来にできるため、24時間365日クリーン電力供給にも近づけます(後述の24/7 CFEには必須の手段です)。

課題:一番のハードルは契約の複雑さと長期拘束です。通常、PPAは15~20年単位の契約で、中途解約はペナルティが発生します。需要家はその期間ずっと電力を引き受け支払い続ける義務があり、事業縮小などが起きても調整が利きにくいです。また、発電事業者側がトラブルで発電できないリスクや、送電網側のルール変更リスク(託送料金アップなど)もゼロではありません。

最近の日本ではインバランス料金(計画と実発電のズレに対する精算金)が発電側に課されるルール強化があり、これがPPA価格に上乗せされるケースが出ています。バーチャルPPAでは為替や市場価格変動リスクも絡み、金融スワップ契約の理解が必要です。さらに、日本ではPPAを円滑にする制度整備が遅れていました。

電力系統の制約や小売事業者との三者契約の調整など、法的・実務的な課題がいくつかあり、ここ数年でようやく解消が進んでいます(2022年FITからFIPへの移行、自己託送ガイドライン改定など)。そのため欧米に比べ市場規模が小さく、2023年時点で日本のコーポレートPPA累計件数は数十件規模とも言われます。ただ2024年以降、制度改正が功を奏し案件数が急増しています。情報提供や仲介を行うプラットフォームも登場し、標準契約書の整備も進みつつあります。

日本の最新動向:2025年現在、日本でもオンサイト・オフサイト合わせてPPAが爆発的に広がり始めました。Renewable Energy Instituteの調査によれば、2024年度のPPA契約価格は前年並みで推移し、太陽光パネル価格下落分と設置費・保険料上昇分が相殺された形です。新規契約ではフィジカルPPAが依然主流ですが、最近は企業側の柔軟性を評価してバーチャルPPA(金融型)の採用も増加しています。

理由は、物理契約だと既存の電力契約を切り替える必要がありますが、仮想型なら既存契約はそのままで追加の再エネ価値を上乗せできるからです。特に本社決裁を取りやすい外資系企業を中心にVPPAが始まっています。さらに注目は風力発電とのPPAです。日本ではPPAは太陽光が大半でしたが、2024年頃から陸上風力とPPAを結ぶケースが現れました。

背景にはFIT期間終了を迎える風力発電所が増えてきたことがあります。FIT満了後はFIPに移行して市場売電となるため、その電力を企業がPPAで引き取る動きです。風力は発電量が夜間にも見込めるため、太陽光偏重による夜間不足を補いやすい利点があります。将来は洋上風力も有力ですが、現状はコストが高くPPA締結例はまだ報じられていません(ただ大規模洋上風を企業が共同購入する構想は各所で議論されています)。このように、PPA市場は今まさに転換点にあり、契約形態の多様化と対象電源の拡大が起きています。

まとめオフサイトPPARE100達成の切り札と言える手段ですが、長期契約の伴う責任と専門知識が必要です。ロードマップ上では中盤~後半で大きく貢献する手法として位置付け、入念な準備を経て導入するのが良いでしょう。まずは社内でPPAの理解を深め、小規模でもテスト契約をしてみるのも手です(例えば1MW程度の太陽光PPAを試し契約しノウハウを蓄積する)。実績ができれば経営も安心して大規模案件を承認しやすくなります。契約交渉には専門家の助言を仰ぎ、リスク分担(発電側・需要側・金融機関でリスクをどう配分するか)を詰めます。最後に、本質を言えばPPAは「需要家が発電所を一部所有するのに等しい関係」です。単なる電力購入ではなく、共にプロジェクトを成功させるパートナーシップの精神で臨むことが、長い契約を円満に運ぶコツでしょう。

電力会社の再エネメニュー・グリーンタリフ利用

概要:電力小売会社が提供する再生可能エネルギー電力メニューを契約し、電力を調達する方法です。要するに「電力会社から買う電気を再エネ由来100%プランに切り替える」だけなので最もシンプルです。

欧米ではこれをグリーンタリフ(Green Tariff)と呼び、多くのユーティリティが企業向けに用意しています。日本でも大手電力会社や新電力がこぞって再エネプランを提供しています。例えば東京電力の「アクアエナジー100」(水力100%メニュー)や関西電力の「再エネ100プラン」、みんな電力やエネットなど新電力も各種再エネメニューがあります。

基本的には電力会社側が再エネ電源や非化石証書を調達して裏付けており、需要家は追加料金やプレミアムを払う代わりに、自社は100%再エネ電力を使っているとみなせます。

利点:何と言っても手間がかからず確実な方法です。通常の電力契約をプラン変更するだけなので、複雑な契約交渉や新規設備投資も不要です。期間も契約自由化市場の範囲なので、1年や数年単位で見直しできます。PPAと比べ柔軟性が高く、電力需要が変動しても対応しやすいです。電力会社側で需給調整してくれるため、自社でバランス管理する必要もありません。また小規模需要や分散拠点でも容易に導入できます。店舗が100箇所あっても、各々で再エネプランに入れば全社の再エネ率を一気に上げられます。RE100報告上も認められる手段です(証書付きメニューであれば環境属性が伴うため)。

課題:一方で課題はコストと追加性です。再エネプランは通常の電気料金より割高になるケースが多いです。電力会社が再エネ電源調達や証書購入のコストを上乗せするためです。そのプレミアムは電力会社やメニューによって様々ですが、概ね数%から二桁%の範囲です。大量需要ではコスト増インパクトが大きくなります。

また既存の再エネ電源や証書を充当するだけなら、新たな設備投資を引き出す効果は限定的です。すでに存在する再エネを取り合うだけになりかねないとの批判もあります。そこで電力会社の中には「このプランの収益は新規再エネ開発に充てます」と約束しているところもあります(例えば特定の新設風力発電所と紐付けたメニュー等)。

ただ、需要家から見ると透明性が見えづらい面もあります。さらに電力メニュー切替は使える地域が限定される場合もあります。日本では電力広域化されどこでも買えるとはいえ、送電損失を考慮し近隣エリアの電力を買うのが普通です。特定地域限定の再エネプランも存在します(離島の再エネなど)。

日本の動向:ここ数年で企業向け再エネメニューは激増しました。背景には非化石証書マーケットの拡充があります。電力会社は市場から非化石証書(再エネ由来)を購入し、自社の供給電力に環境価値を付加できます。これにより比較的容易に「実質再エネ電力」を提供できるようになりました。価格も徐々に低下傾向で、非化石証書の取引価格は2022年頃ピークから下がり始めています。

また、電力会社自ら再エネ発電所を新設しその電気を直接提供する「実質再エネ100%」プランも登場しています。東北電力はJR東日本に自社水力発電の電気+証書で再エネ100%電力を供給する契約を締結しました。このように、大口需要に対してカスタマイズした再エネメニューを提案する動きもあります。

一方、新電力各社では全国の地域ごとの再エネ電源を組み合わせて100%プランを作るなど、創意工夫がされています。価格競争力も徐々に増し、大手電力標準メニューと遜色ない料金で再エネ電力を売るケースも出てきました(特に2022年の化石燃料高騰で電気代自体が上がったため、再エネメニューとの差が縮まった)。今後、カーボンプライシングが本格化すると化石燃料電力のほうが割高になる可能性もあり、再エネメニューが逆に安価になることも考えられます。

まとめ:電力会社の再エネメニュー利用は「確実だが受け身」な戦略とも言えます。自社で動かなくとも再エネ化できますが、裏を返せば市場次第です。ただ、ロードマップの早期段階で手っ取り早く再エネ比率を高めるには有効な手段です。多くの企業が「まず一部拠点で再エネプランに切替えて試行」「全社で証書付きメニューに切替えて50%達成」というように活用しています。

これをブリッジ戦略(橋渡し)として、並行でPPAや自家発電を準備し、そちらが実現したら順次置き換えていく、という使い方が賢明でしょう。また、証書の市場価格変動リスクを考え、長期のPPA導入までのつなぎと割り切る考え方です。コストは上がったり下がったりし得ますが、短期なら調整可能です。重要なのは、単に証書で間に合わせて終わりにしないことです。再エネメニューはあくまで入り口であり、最終的には自社の供給源を持つくらいの意気込みが望ましいでしょう。

再エネ電力証書の活用(非化石証書・Jクレジット等)

概要:再エネ電力の環境価値(=CO2排出を伴わない属性)を切り離し、それだけを取引するのが環境証書です。需要家は証書を買って手元の電力使用に充当することで、「その分は再エネから来たとみなす」ことができます。日本では代表的に非化石証書(非化石価値取引市場で売買)があります。

これは主にFIT電源由来の環境価値を証書化したもので、「再エネ指定」の非化石証書を買えば再エネ利用と認証されます。他にJ-クレジットという国のオフセットクレジット制度で、再エネ発電によるCO2削減分をクレジット化したものもあります(これを電力使用の排出相当量に当てればカーボンオフセットとみなせる)。国際的にはI-RECという再エネ証書もあり、これを導入している日本企業もわずかにありますが、国内では非化石証書で十分なので主流ではありません。また欧州で使われるGO(保証書)や米国のRECなどは基本その地域専用です。

利点:証書購入は再エネメニューと同様に即効性がありシンプルです。電力契約そのものは変えず、別途証書を購入・償却(使用)するだけなので、設備や契約変更なしで実質再エネ化できます。市場から欲しい分だけ購入可能で、需要変動への対応もしやすいです。特に中小企業や小規模拠点ではこれが現実的な選択肢になります。またコスト透明性が高いです。証書1MWh分いくらという価格で出ており、自社需要○MWhなら単純に掛け算できます。PPAのような複雑性はありません。

課題:最大の課題は追加性が乏しいことです。証書は既存発電の副産物なので、購入するだけでは新たな再エネ設備を増やす直接的貢献にはなりません(ただし証書市場の存在自体が再エネ価値に価格を与え間接的な収益源になるメリットはあります)。RE100的には証書調達も認めていますが、前述のように技術要件で15年以内の発電所限定など条件が付き、証書頼み一辺倒は推奨されなくなっています。

また将来的な価格上昇リスクもあります。証書の供給量が需要に追いつかない場合、価格が高騰する恐れがあります(実際、2021年前後に非化石証書価格は高騰しました)。そうなると長期の安定確保は難しく、コストメリットも薄れます。さらに、証書調達だけだとステークホルダーから評価されにくい場合もあります。社内外の「本当に再エネ使っているの?」という目に対し、証書の仕組みを理解してもらう必要があります。CDPでも証書のみよりPPA活用のほうが高評価になるように、ESG評価機関も実質性を考慮する傾向です。

日本の動向:日本では2018年に非化石証書市場が創設され、大手電力や新電力が主に活用してきました。当初、需要家個別が直接買うのは難しかったのですが、2021年からは大口需要家向けの「ダイレクト非化石証書取引枠」も設定され、企業が直接落札できるようになりました。価格は需給で変動しますが、再エネ指定の非化石証書は概ね数百円/MWhから数千円/ MWhで推移しています。

再エネ1MWhあたりCO2約0.0005tと換算されるので、カーボンプライスに換算するとまだ1トンあたり数千円程度と考えられ、割安な時期もありました。J-クレジットはもともと温対法のカーボンオフセット用途ですが、最近は再エネ電力由来のクレジットも増え、企業がRE100用途で買う例もあります。ただ非化石証書に比べ流通量が少なく価格も割高傾向です。

なお、日本独自のスキームとして「再エネ100宣言 RE Action」という中小規模団体向けの制度があり、これは環境省などがサポートする形で、学校や自治体、中小企業が電力会社経由で非化石証書を買って再エネ100%宣言するプログラムです。100GWh未満でも事実上RE100相当を名乗れる枠組みで、中小には利用価値があります。

まとめ:証書の活用は「足りない部分を埋める最後のピース」として考えるのが良策です。ロードマップ上も、2030年時点でどうしても届かない数%を証書購入で穴埋めする、といった使い方が現実的でしょう。最初から最後まで全部証書で達成というのは簡単ですが、外部評価も低くなりがちですし、証書の将来供給も無限ではありません。むしろ「初期に手軽に達成するブースター」として、RE100加盟の際にまず証書で初年度100%を実現→その後、自前施策で実質的転換を進め、証書依存度を下げていく、というロードマップが望ましいです。

このアプローチは前述のようにステークホルダー対策にもなります。最初から達成しておきつつ、「しかし我々はそれに甘んじず実体も伴う再エネ化を進めます」と宣言すれば、周囲の理解も得やすいでしょう。実際、日本企業の中には「2022年度に証書購入で全量カバーしRE100達成。しかしこれは通過点であり、2030年までに直接調達による100%に移行する計画」と表明している例があります。証書は使いようです。市場が成熟すれば、企業同士が証書を融通し合うビジネス機会も出てくるでしょう。

重要なのは、自社の理念とロードマップの中で、その役割を位置付け、戦略的に活用することです。


以上、主要な再エネ電力調達手段について解説しました。まとめると、オンサイト自家発電は手堅いが規模限界あり、オフサイトPPAは大量導入の本命だがお膳立て必要、再エネメニューは簡単だがコストや追加性課題、証書は便利だがお助け程度に留める、といった特徴です。

これらを組み合わせてポートフォリオを組むことが重要です。一社ですべて賄うのでなく、外部リソースもうまく使いつつ、自社にとって最適なミックスを見つけましょう。例えば「2030年までは太陽光PPAと証書、2030年以降は風力PPAを追加し証書を減らす」といったロードマップを描き、段階的にシフトする戦略も考えられます。

経済性の検証:コスト・投資回収とビジネスインパクト

RE100への移行は環境面で大きなメリットがありますが、企業にとってはコスト負担や投資対効果も無視できません。この章では、再エネ化の経済性を評価する視点と、コスト削減・価値創造につなげるポイントを探ります。

再エネ化によるコスト構造の変化

従来、再エネ電力は「高い」というイメージがありました。しかし状況は変わりつつあります。太陽光発電コストは過去10年で約8割下落し、陸上風力も大幅に低減しました。国際エネルギー機関(IEA)の報告では、地域にもよりますが新設再エネは既存火力より安価になったところが増えています。

日本では設備費用が欧米より高めですが、それでも太陽光は2020年代半ばには1kWhあたり10円台後半まで下がる予測があります。企業が契約する再エネ電力価格も徐々に低下しており、前述の通りPPA価格は2023~24年で横ばいながら長期的には低落傾向でしょう。一方で化石燃料由来の電力コストは燃料価格に大きく左右されます。

2022年のエネルギー価格高騰では、日本のスポット電力価格が一時1kWhあたり数十円に跳ね上がり、電気料金も過去最大の値上げとなりました。この経験から、多くの企業が電力コストリスクヘッジを意識するようになりました。再エネ100%を達成すれば、基本的に電気代の大半を固定化できます。

特にPPA契約では単価固定or上限設定が一般的なため、燃料市場の乱高下に巻き込まれずに済みます。また、各国で炭素税や排出取引が広がる中、化石燃料電力には炭素コストが上乗せされていく見通しです。日本でもGX-ETS(排出取引)の本格化や、将来的な炭素税導入が議論されています。仮に2030年にCO2価格が1トン=1万円になれば、火力由来電力1kWhあたり約10円程度コスト増になります(排出係数0.00095t-CO2/kWhの場合)。これは現在の電気料金に対し極めて大きな割合です。

つまりカーボンプライスが本格化すると、再エネ電力の方がトータル安価になる可能性が高いのです。したがって、中長期のコスト構造を考えれば、今のうちに再エネにシフトすることはむしろ経済的な選択とも言えます。

ロードマップ策定でも、この将来コスト構造の変化を考慮してNPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)を見積もるべきです。例えば、2030年以降炭素コスト○円/ tを仮定し、それを含めたシナリオ別電力コスト比較を行えば、再エネ導入の方が低コストと示せるかもしれません。企業内で投資承認を得る際も、このような包括的コスト評価が有効です。

投資回収とファイナンス

オンサイト発電設備導入やPPA契約は投資判断が必要です。投資回収の指標としては単純に何年で元が取れるか(回収期間)や、設備償却期間内のROI(投資利益率)などを算出します。例えば自社所有の太陽光設備なら初期費○円、年間発電量×電気代単価=年間削減額○円で、シンプルに○年で回収と出せます。最近では電気代高騰により太陽光の回収期間は5~10年程度まで短縮したケースも珍しくありません。

PPAの場合は初期投資こそ無いですが、契約単価が現行電気代より割高ならその差額を「再エネプレミアム」としてコスト計上し、これが将来どう変化するか見る必要があります。例えば「契約単価15円/kWhは現状電気代より+3円だが、2030年には標準電気代が上がり差額ゼロになる」という仮説なら、2030年以降はむしろ節約とみなせます。

企業内ファイナンス部門やCFOにプレゼンする際は、DCF法でのキャッシュフロー評価や、炭素価格シナリオ込みのNPV計算など、説得力ある数字を示すと良いでしょう。また外部資金調達の活用も視野に入ります。再エネ関連投資はグリーンボンド発行やサステナビリティ・リンク・ローン(ESG目標達成で金利優遇される融資)など調達手段が多様化しています。

特に資金制約がある場合は、再エネプロジェクト単体で金融スキームを組むこともできます(プロジェクトファイナンス等)。またオンサイトPPAでは設備投資をすべて事業者が担うため、自社は電気代として払うだけでバランスシート悪化を避けられます。財務戦略として、どの方式が自社に最適か(CAPEXとして投資するか、OPEXで払うか)という観点で選ぶのも有効です。

例えば「借入余力があり税制優遇も受けられるから自社で設備保有したほうが安い」とか「負債増やしたくないからオンサイトPPAにして賃貸扱いにしよう」などの判断です。加えて補助金や税制も調べておきます。日本では再エネ設備投資に対して固定資産税の軽減措置や、中小向け補助、場合によっては経産省や環境省の大型補助事業(地域新電力連携など)が適用できることがあります。国だけでなく地方自治体レベルでも補助があるので漏れなく活用しましょう。

ビジネスへのプラス効果

コスト面だけでなく、再エネ転換による非財務的な価値も計り知れません。まず、ESG評価や投資家評価の向上です。昨今、金融機関や機関投資家はポートフォリオ企業のRE100参加や再エネ比率を注視しています。RE100を達成した企業はESG指数やサステナビリティランキングで高く評価され、結果として株価や企業価値向上につながる可能性があります。

またレピュテーション向上による売上増効果も見逃せません。環境配慮型製品・サービスへの需要が拡大する中、「当社製品は再エネ電力で作られました」という付加価値はマーケティング上強力です。BtoBビジネスでも、取引先からの調達コード(サプライヤー行動規範)で再エネ使用が求められるケースが増えています。RE100を達成していれば、新規受注の際の優位性にもなります。

さらに社員のモチベーションや採用効果もあります。自社の電気が全てクリーンエネルギーだと胸を張れることは従業員の誇りとなり、エンゲージメント向上や優秀な人材のリクルーティングにプラスです。特に環境意識の高い若手人材にとって、企業の姿勢は就職先選びの重要な要素になっています。

また、再エネへの取り組みはイノベーションの契機にもなり得ます。エネルギー効率化やDX、蓄電・電動モビリティの導入など、副次的な技術革新を促します。例えばトヨタは生産工程で使う熱源を電化して再エネ対応する過程で、新たな高効率ヒートポンプ技術を開発したりしています。このように、再エネ転換は企業活動のあらゆる面を刷新し、新しいビジネスチャンスを生むポジティブフィードバックが期待できます。

コストに関するまとめ

以上を踏まえると、再エネ100%への挑戦は単なるコストではなく「未来への投資」と捉えるべきでしょう。初期費用やプレミアムコストは確かに発生しますが、長期的にはエネルギー調達コストの安定化、規制対応費用の削減、ブランド価値向上、収益拡大といったリターンがあります。ファクトベースで精緻に計算すれば、経済合理性は十分成り立つケースが多いはずです。

ロードマップ策定時にも、こうしたプラス効果を定量的・定性的に経営層へ示し、意思決定を後押し**することがポイントです。

政策・規制動向の把握と対応戦略

RE100ロードマップを実現するには、外部環境である政策・規制の変化にも敏感でなければなりません。日本および世界のエネルギー政策動向を踏まえ、企業が押さえておくべきポイントを整理します。

日本のエネルギー政策と支援策

前述したように、日本政府はエネルギー基本計画で2030年36-38%、2050年カーボンニュートラルを掲げ、再エネ最優先の方針を打ち出しています。2022年にFITからFIPへの移行を進め、再エネ発電の市場連携を促しました。企業向けには、経産省が「コーポレートPPA促進ガイド」発行やモデル契約例の提示を行い、環境省も地域の再エネ導入支援事業を展開しています。

資金面では、日本政策投資銀行(DBJ)や商工中金が再エネ・脱炭素プロジェクトへの低利融資制度を持っています。また、東京証券取引所ではプライム市場上場企業にTCFD等の気候情報開示を事実上義務付けました。これにより企業は自社の再エネ計画やGHG削減目標をステークホルダーに示す必要が生まれています。

そうした開示プレッシャーもRE100を後押しするでしょう。国内電力市場の規制面では、送配電網の課題に対処する方策が次々講じられています。ノンファーム接続(一定の出力保証せず接続する方式)の拡充や、新規送電線建設に向けた費用負担ルールの見直しが議論されています。また、優先給電ルールも検討課題となっており、将来は再エネが優先的に発電できる制度(ドイツの再エネ優先接続のような仕組み)が導入される可能性もあります。

企業としては、これら政策の動きを常にアップデートし、ロードマップに反映させることが重要です。例えば、ある補助金が得られれば計画前倒しする、接続ルール緩和で追加案件が可能になる、など柔軟に修正します。

また政策提言の機会(経団連委員会や業界団体)に積極的に参画し、自社や業界の課題を発信することも大切です。実際、RE100加盟企業が声を上げ続けたことで、日本でもPPA推進や証書制度改善が進んだ面があります。政策と企業行動は双方向です。自社に有利な環境を作る意味でも、政府との対話を重視しましょう。

海外動向とグローバル規制

グローバル企業にとっては、日本国内だけでなく海外の政策も視野に入れる必要があります。特にEUは環境規制の最先端を走っており、前述のCBAM(炭素国境調整措置)のように、直接輸出に影響する規制を導入予定です。CBAM対象品目企業は将来、輸出先EUで炭素費用を払うことになるため、自社製品のカーボンフットプリント削減が競争力に直結します。

その中で電力由来CO2の削減(=再エネ化)は重要な手段です。また欧州ではRE100を超えて24/7カーボンフリー電力目標(後述)を掲げる企業や自治体も増えています。GoogleやMicrosoftは2030年までに24時間365日クリーン電力を達成すると宣言し、EUの一部では企業に対し時間ごとの再エネ比率開示を義務付ける動きもあります。

将来的に「単なる100%より24/7達成企業を評価する」という時代が来る可能性があります。米国でもバイデン政権下でクリーンエネルギー投資を後押しする大規模な補助政策(インフレ削減法)が成立し、企業の再エネ導入に追い風です。中国やインドも再エネ大量導入に舵を切っており、世界的な競争が起きています。

これら海外動向をウォッチするには、国際エネルギー機関や各国政府の発表、業界ニュースを定期フォローすると良いでしょう。グローバル企業の場合、各国子会社ごとにロードマップ策定が必要になるため、本社が共通指針やベストプラクティスを提供し、各地域の政策対応をサポートする体制が求められます。

カーボンプライシングとGXリーグ/ETS

繰り返しになりますが、カーボンプライシング制度への注目は極めて重要です。日本のGXリーグは2023年にプレ運用が始まり、500社以上が参加する世界最大級の試行的排出取引市場となりました。2026年にはこれを踏まえたGX-ETS(排出量取引制度)が強制力を持って開始される予定です。当初300~400社が対象見込みで、日本の排出量の5-6割をカバーすると言われます。

つまり多くの大企業が何らかの形で排出枠を負荷され、CO2削減努力が直接コストに繋がる仕組みになります。そうなると、再エネ調達で削減したCO2量「売却可能な資産」となる可能性もあります。実際GXリーグでは各社の削減分をクレジット化し、売買する枠組みがあります。再エネ導入で余剰に削減できれば、クレジットを売って収益化も可能です。

自社がRE100達成した暁に、さらに上乗せ削減分をGX市場に提供するといったビジネスも考えられます。反対に達成が遅れると、自社排出枠不足をクレジット購入で補わねばならず、その費用はかなりのものになります。したがってGX-ETS時代に備え、早めに再エネ化を進めてクレジット売り手側に回るくらいの戦略が有効です。

また、東京都や埼玉県では既にオフィスビル等に排出削減義務を課す地域ETSがあります。今後他自治体も追随する可能性があり、都市部で事業展開する企業はローカル規制にも注意が必要です。ビル電力を再エネ化すればこれら自治体の義務も達成できるので、一石二鳥です。このように、カーボンプライス=企業の電力調達戦略と切り離せなくなっています。

CFOや経営層にロードマップを説明する際も、「再エネ化しなければ将来いくらの排出コスト負担が発生するか」という試算を示すと理解が得やすいでしょう。

地政学リスクとサプライチェーン

最後に触れておきたいのは地政学リスクです。再エネのサプライチェーンは世界的に広がっており、例えば太陽光パネルの供給は中国に大きく依存しています。将来、国際対立や貿易規制により供給が滞れば、計画していた再エネプロジェクトに遅れが出るかもしれません。蓄電池も原材料のリチウムやコバルトの調達リスクがあります。企業は調達先多角化や在庫戦略などでこれに備える必要があります。

また、ウクライナ危機に端を発した化石燃料価格高騰は、再エネシフトを逆に加速させましたが、一時的にはエネルギー安全保障の観点から石炭火力延命などの動きもありました。このように国際情勢で政策優先度が変わる可能性もあります。ただ長期潮流としては脱炭素はもはや後戻りしないでしょう。むしろ地政学リスクへの対応として自前で賄える再エネの重要性が増しています。エネルギーを海外化石燃料に頼るより、国内で調達可能な再エネに転換することはエネルギー安全保障の観点でも合致します。日本企業も再エネ主力化=経営の安定化と捉え、多少の短期変動に惑わされず方針を維持することが肝要です。

社内外の調整・リスクマネジメント

技術・経済の面がクリアできても、人と組織、ステークホルダーの問題をクリアしなければ計画は絵に描いた餅です。ここでは社内外の調整事項や典型的な「つまずき」とその対策を述べます。

社内の巻き込みと意思決定

RE100ロードマップは環境部門だけで完結する話ではありません。全社横断プロジェクトとして推進する必要があります。まず社内でよくある壁は「コスト増への抵抗」です。生産部門や経理部門から、「なんでわざわざ高い電気を使うのか」「設備投資の優先順位を下げるべきでは」といった声が上がりがちです。これに対しては先に述べた経済性の論拠をしっかり共有し、長期的メリットを理解してもらうことが重要です。

同時に、社長や役員のコミットメントが威力を発揮します。トップダウンで「やるぞ」と宣言すれば現場も動かざるを得ません。ただトップの鶴の一声だけでは持続しないので、中間管理職層を含めた意識改革も必要です。各部門からメンバーを出してもらい推進委員会を作ることは先述しましたが、これに加え社内研修や勉強会で知識を底上げするのも有効です。

再エネや気候変動の基本を社員に教えるeラーニングを実施したり、先進企業の担当者を招いて事例を紹介するなどすると、腹落ち感が増します。また現場目線での課題も吸い上げましょう。例えば工場現場では「瞬停すると製品不良が出るから不安定電源は困る」という切実な声があるかもしれません。その場合はUPS(無停電電源)の増設など技術的対策を講じて安心してもらう必要があります。このように現場のニーズと計画をすり合わせる地道な対話が、最終的に実効性のあるロードマップに磨き上げるポイントです。

コミュニケーション戦略

外部への発信も戦略的に行いましょう。RE100コミットはPRチャンスです。事実、多くの企業がRE100加盟時や達成時にプレスリリースを打ち、各種メディアで取り上げられています。社外への情報発信では、具体的な数字やエビデンスを示すと信頼性が増します。「○年までに×万トンCO2削減」といった定量目標や、「△社とPPA契約締結」など進捗を公開すると良いでしょう。

また自社だけでなくバリューチェーン全体への波及も意識します。先述の通り、取引先や顧客に対して協働姿勢を示すことが重要です。「我が社は再エネ100%へ行きます、一緒にやりましょう」と呼びかけ、必要ならノウハウ提供や共同購買の提案も行います。特にサプライヤーに中小企業が多い場合、彼ら単独では難しくても大企業が音頭を取れば実現することもあります。

例えばトヨタは系列部品メーカー向けに脱炭素研修を行ったりしています。同様に再エネ調達のプラットフォームを産業クラスター単位で作ることも可能でしょう。こうしたエコシステム全体での取り組みが、日本全体の再エネ普及にも寄与します。

典型的なアンチパターンと対策

最後に、企業が陥りがちなアンチパターン(失敗パターン)をいくつか挙げ、それぞれ対策を示します。

  • アンチパターン1:「とりあえず証書買って安心してしまう」手軽さゆえ、証書購入で100%を達成した途端、社内関心が薄れてしまうケースです。これは戦略的には危険です。証書は前述の通り価格変動リスクがあり、将来入手困難になる可能性もあります。対策は、証書で達成したとしてもロードマップ自体は継続推進することです。証書依存度を毎年下げていくKPIを設定し、達成度合いを経営に報告する仕組みを作りましょう。

  • アンチパターン2:「丸投げして自社に知見が蓄積しない」コンサルや専門業者に任せきりで、社内メンバーが理解しないままプロジェクトが進む場合です。これでは担当者が異動した途端に止まってしまいます。対策は自前主義と外部活用のバランスです。専門知識は外部の力を借りつつ、必ず社内メンバーが深く関与して経験知を得るようにします。例えばPPA交渉では顧問のサポートを受けながらも、自社の購買部員が主要交渉を担う、といった体制です。

  • アンチパターン3:「社内インセンティブが無くモチベーション低下」 – 環境部門だけが頑張っても、他部署には評価も予算もないと協力を得にくいです。対策は制度設計です。社内で脱炭素KPIを経営評価指標に組み込み、部署や役職ごとに目標を割り振ります。たとえば工場長の評価項目に「再エネ率○%達成」を入れる、役員報酬の一部をESG目標連動にする、といったやり方があります。欧米ではCO2目標を業績指標にしている企業も増えています。

  • アンチパターン4:「電力会社や行政との調整不足で遅延」PPA接続工事に時間がかかり計画遅延、許認可申請で手間取り稼働が遅れる等の例です。対策は早め早めの協議と関係構築です。電力会社とは計画段階から情報共有し、系統増強の見通しを聞いておきます。行政の手続きは専門家に任せたり予備期間を長めに取るなどします。また時にはロビー活動も必要です。業界団体を通じ規制緩和を働きかけたり、自治体にプロジェクトの重要性を説いてサポートを仰ぐなど、主体的に動きます。

  • アンチパターン5:「計画が絵空事で実行力伴わず」 – 立派なロードマップを作っても、実行段階で何も進まないケースです。これが最悪のパターンです。原因は往々にして社内リソース不足や技術的検討漏れです。対策として、ロードマップ策定時から実現可能性を冷徹にチェックすることです。机上シナリオでなく、一つ一つ実現手段と必要リソースを検討します。その上で社内体制や予算を整え、小さくても早期に成功例を作ることが大事です。例えば、まず1拠点でオンサイトPPAを成功させ、それを社内にアピールして勢いをつける、などの戦術です。

以上のようなポイントに注意しながら、社内外のステークホルダーを巻き込み、リスクを管理していけば、ロードマップは着実に前進するでしょう。ロードマップ策定とは終わりでなく始まりです。日々の実行と改善がその成否を決めます。

24/7カーボンフリー電力:RE100の次のフロンティア

本記事の最後に、今後の展望として「24/7 Carbon-Free Energy(CFE)」について触れておきます。

これはRE100の進化形とも言える概念で、年間100%の再エネだけでなく毎時間ごとに消費電力をカーボンフリー電源で賄うことを目指すものです。Googleやマイクロソフトが提唱し、国連のコンパクトも発足して世界の170以上の企業・自治体が賛同しています(2025年3月時点)。24/7CFEでは、例えば夜間1時から2時までの1時間も、その時リアルタイムで発電している再エネ電源(あるいは蓄電池放電、原子力、水素発電等CO2フリー電源)で完全に賄うことを意味します。つまり時間平均ではなく瞬間瞬間で100%再エネにするチャレンジです。

これにより、再エネの変動性を克服し化石火力のバックアップもゼロにする究極の脱炭素電力システムが実現します。当然ながら難易度は高く、膨大な蓄電池や需要側調整、デジタル技術が求められます。GoogleはAIを使ってデータセンターの負荷を太陽光のある時間帯にシフトさせたり、各地で時間別再エネ充当率を計測して公表しています。

日本企業でも、NECやSoftBankがこの24/7CFEにコミットし始めました。今はまだ先進企業の試みですが、将来的にはRE100達成企業は次に24/7を目指す流れになるかもしれません。ロードマップ策定時にも、長期構想として「ゆくゆくは24/7対応を視野に蓄電池導入」など盛り込んでおくと、先見性ある計画になります。

現在、日本でも東京電力などが再エネの時間同期供給サービスの検討を開始しています。また国としても将来的な電力脱炭素化に向けスマートグリッド化を推進しています。24/7CFEの実現は10年単位の挑戦ですが、エネルギーの地産地消や地方創生にもつながる壮大なビジョンです。RE100ロードマップを策定する皆さんも、是非この次代のトレンドにアンテナを張りながら、未来志向の戦略を描いていただきたいと思います。

FAQ(よくある質問と回答)

Q1. RE100とは何ですか?参加するメリットは何でしょうか。

A1. RE100は企業が事業運営で使う電力を100%再生可能エネルギーに転換することを約束するイニシアチブです。参加企業は2050年までに目標達成を公約し、毎年進捗を報告します。メリットとして、気候変動対策へのリーダーシップを示せること、投資家や取引先からの評価向上、将来的な炭素コストリスクの低減、ブランド価値アップなどが挙げられます。また再エネ導入により電力調達コストの安定化やエネルギー自給率向上といった経営上の利点も期待できます。

Q2. RE100達成まで普通どのくらい時間がかかるものですか?

A2. 企業の状況によりますが、多くは2030~2040年頃の達成を目標に設定しています。早い企業では2020年代前半に100%を実現したところもあります。自社で再エネ電源を開発するか、購入で賄うかなどによって期間は異なります。大規模製造業などは設備更新サイクルも考慮し10~20年スパンで計画するケースが多いです。重要なのは1年ごとに着実に比率を上げていくことで、RE100では2030年までに60%、2040年90%という中間目標を推奨しています。

Q3. 再エネ100%にする具体的な方法には何がありますか?

A3. 主な方法は:(1)自社敷地で太陽光などオンサイト発電して使う、(2)再エネ発電事業者から長期契約で電力を買うオフサイトPPA(物理契約や仮想契約)、(3)電力会社の提供する再エネ電力メニューを利用する、(4)市場で非化石証書など環境価値を購入して自社使用電力に充当する、の4つです。多くの企業はこれらを組み合わせます。まず省エネを徹底した上で、自家発電やPPAで電源を確保し、不足分を再エネメニューや証書で補う、といった形です。

Q4. PPAとは何ですか?フィジカルPPAとバーチャルPPAの違いは?

A4. PPA(Power Purchase Agreement)は発電事業者との電力販売契約です。フィジカルPPAは発電所から自社施設に実際に電力を送る契約で、小売電気事業者を介して行います。バーチャルPPAは電力そのものは市場に売り、需要家は環境価値だけ取得する契約で、金融的な価格精算を伴います。フィジカルは自社電力が直接クリーンになるメリットがありますが、供給手続きが複雑です。バーチャルは契約上柔軟で既存電力契約を変えずに導入できますが、市場価格連動のリスクがあります。両者とも再エネ発電所を新たに作る後押しになる点が共通です。

Q5. 日本で企業が再エネ調達するのが難しいと言われるのはなぜですか?

A5. 主な理由として、(1)再エネ電源を増やそうにも土地や適地が限られる、(2)電力系統(送電網)の容量制約で新規接続や遠隔地からの送電が難しい、(3)既存の電力市場制度が再エネ長期取引に十分適していなかった、(4)再エネ電力コストが海外より高め、などが挙げられます。また日本は原子力や化石燃料への依存度が高く、再エネ比率がまだ20%程度(2022年度)と低い現状もあります。ただ、近年は制度改善が進みPPA案件が増えるなど環境は整いつつあります。非化石証書市場も活発化し、コストも徐々に低減しています。

Q6. 再エネ証書だけ買っていればRE100を達成できますか?問題はありますか?

A6. はい、書類上は非化石証書など環境価値の購入だけでもRE100達成と見なされます。しかし、RE100運営側は新規再エネ電源からの調達(追加性)を推奨しており、証書依存だけでは評価が高くありません。実際、投資家やNGOから「お金で解決しているだけではないか」という批判が出ることがあります。証書は手軽な反面、再エネ発電を実際に増やす効果が限定的だからです。そのため、多くの企業は証書も活用しつつ、徐々にPPAや自家発電に切り替える戦略を取っています。

Q7. RE100とカーボンニュートラルやゼロエミッションの違いは何ですか?

A7. RE100は電力使用に限定した目標で、購入電力を100%再生可能エネルギーにすることです。一方、カーボンニュートラルゼロエミッションは企業活動全体で温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを指し、燃料の燃焼やプロセス排出も含めます。つまりRE100はカーボンニュートラル実現の一部(Scope2排出のゼロ化)と言えます。企業が2050年カーボンニュートラルを目指す場合、まずは比較的対応しやすい電力の再エネ化(RE100)が入り口となり、並行して燃料の転換や省エネ、カーボンオフセットなど総合対策が必要です。

Q8. RE100に参加する条件はありますか?中小企業でも参加できますか?

A8. RE100公式には、原則として年間電力使用量100GWh(=10万MWh)以上の企業が対象とされています。ただしそれ未満でも影響力が大きい企業(例:フォーチュン1000企業など)は例外的に参加認められることがあります。日本では100GWh未満の中堅企業はRE100ではなく、環境省などが支援する「再エネ100宣言 RE Action」というプログラムがあります。こちらは使用量要件なく自治体や学校、中小企業も参加可能です。RE100と同様に100%目標とロードマップ公表を求められます。中小企業はまず地域の再エネ電力メニュー活用や省エネで50%程度を目指し、残りを証書で補うなど段階的に進めると良いでしょう。

Q9. 24/7カーボンフリー電力(CFE)とは何ですか?RE100とどう違いますか?

A9. 24/7 CFEとは、年間を通じて毎時間ごとに消費電力をカーボンフリー(CO2排出ゼロ)電源で満たすことを目指す取り組みです。RE100が年間トータルで100%ならOKなのに対し、24/7は時間単位の達成を求めます。例えばRE100企業でも夜間は火力発電の電気を使い、昼間に余剰の再エネ証書で帳消しにしていれば良いのですが、24/7では夜間も実際に無炭素電源(風力や蓄電池放電など)で供給されていなければ達成になりません。より高度で電力網全体の脱炭素化に資するアプローチです。Googleなどが2030年までの実現を掲げており、将来的に先進企業を中心に広がる可能性があります。

Q10. 再エネ化に二の足を踏んでいます。まず何から始めれば良いでしょう?

A10. 最初の一歩としては、自社の電力使用実態の可視化が重要です。どの拠点でどれだけ電力を使っているか、現状の再エネ比率は何%か、電力コストはいくらか、といったデータを集めましょう。次に、比較的簡単にできる施策から着手します。例えば本社や主要工場で電力会社の再エネプランに切り替えてみる、屋上にパネルを載せられないか検討する、といった具合です。それと並行して経営層に再エネの重要性を訴求し、社内プロジェクトを立ち上げられれば理想的です。幸い、同業他社や先行企業の事例が増えているので、そうした成功事例を参考にすると社内説得もしやすいでしょう。小さく始めて、実績をつくり、そこから徐々にスケールアップしていくのが現実的です。

おわりに:未来へのロードマップを描こう

以上、RE100ロードマップ策定に必要な要素を世界最高水準の知見で徹底解説しました。日本企業にとって再生可能エネルギー100%への転換は挑戦ではありますが、確実に実現可能な目標です。それどころか、それを成し遂げた企業こそが次の時代の産業リーダーとなるでしょう。気候危機に立ち向かうにはスピード感が求められます。科学が示す通り、2030年までの行動が1.5℃目標の成否を左右します。RE100ロードマップは単なる電力調達計画ではなく、企業が未来にコミットする覚悟の表明です。

幸い、日本には優れた技術力と創意工夫があります。課題を乗り越えるソリューションも日々生まれています。洋上風力や蓄電池、水素といった新技術も加わり、再エネの可能性はますます広がっています。政策面でも官民が協力してボトルネック解消に動き始めました。グローバルに見ても、日本企業が再エネ活用で遅れをとる理由はありません。むしろ、エネルギー転換をチャンスと捉え、新たな市場とビジネスモデルを切り開いていくぐらいの意気込みが必要です。

ロードマップは未来への地図です。地図がなければ我々は目的地にたどり着けません。確かなエビデンスと戦略思考で描かれたロードマップがあれば、多少の嵐が来ても軌道修正しながら進めるでしょう。そしてその先にあるのは、持続可能で競争力ある企業像です。日本の産業がクリーンエネルギーで躍動する未来を実現するために、共に大胆に行動を起こしましょう。RE100達成に向けた旅路は決して平坦ではありませんが、一歩一歩進む先に必ずゴールがあります。その時、この取り組みが次世代への最高の財産となっているはずです。


参考文献・出典一覧

  1. ブルードットグリーン「〖2025年最新〗RE100とは?RE100の最新技術要件について徹底解説!」(2025年8月25日更新) – RE100の概要、参加企業数や2025年改定の技術要件について詳しく解説しています。特に2025年時点で世界444社・日本93社が参加といった最新動向を示しています。

    URL: https://www.bluedotgreen.co.jp/column/credit/re100_2025/

  2. Nossa Data (ESG Simplified)「RE100 and CDP: How are RE100 companies doing on CDP and reporting their renewable electricity progress?」 – RE100加盟企業の統計データやCDPスコアとの関係を分析したブログ記事(2024年)。参加企業444社や国別内訳、日本と米国が各93社で最多であること、中間目標(2030年60%、2040年90%)の必要性などが示されています。

    URL: https://www.nossadata.com/blog/re100-cdp

  3. 自然エネルギー財団「インフォパック:コーポレートPPA 日本の最新動向 2025年版」(2025年3月25日) – 日本における企業のコーポレートPPAの契約形態、コスト、事例、課題と解決策をまとめた報告書。送配電網への接続制約、出力抑制、長期契約リスクなど日本特有の課題と、その政府・事業者・需要家それぞれの対応策が詳細に整理されています。

    URL: https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20250325.php

    (PDF全文)https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_JPCorporatePPA_2025.pdf

  4. ウェイストボックス「再生可能エネルギーの最新動向『RE100から24/7CFEに向けて』」(投稿日2025年3月6日、最終更新2025年7月28日) – 再エネに関するイニシアチブ動向としてRE100の技術要件強化(追加性重視、15年以内ルール導入、持続可能性基準)やCDPスコアリング連動(PPA比率25%以上で高評価等)、そして新潮流である24/7カーボンフリー電力について解説したコラム記事。

    URL: https://wastebox.net/column/trends/p6568/

  5. PR TIMESプレスリリース「RE100達成に向けたロードマップ策定支援パッケージをリリース」(渋谷ブレンドグリーンエナジー株式会社・E4G株式会社、2023年8月30日) – RE100ロードマップ策定のプロセス(準備→可視化・目標設定→策定→実行→保守)や、ロードマップの策定ステップ詳細(現状分析、目標設定、再エネ源評価、予算策定、クレジット活用)を具体例と共に紹介。初年度から証書で100%にし徐々に実質転換するアプローチなども言及されています。

    URL: https://www.excite.co.jp/news/article/Prtimes_2023-08-30-121500-6/

  6. Carbon Direct「Inside Japan’s GX-ETS carbon market and its global climate impact」(2025年4月14日) – 日本のGXリーグとGX-ETS(排出量取引)の段階的導入について解説した記事。2023年の試行的なGX-ETSから2026年の義務的ETS移行、2050年に向けた1兆ドル規模のGX投資計画、GXリーグに550社参加(日本排出量の50%以上)など、国内のカーボンプライシング最新動向を伝えています。

    URL: https://www.carbon-direct.com/insights/inside-japan-s-gx-ets-carbon-market-and-its-global-climate-impact

  7. King & Wood Mallesons「Redefining energy in Japan: Game-changing corporate PPAs shape the future」(2025年) – 日本のコーポレートPPA市場に関する法律事務所からの分析記事。2025年2月のエネルギー基本計画改訂や温暖化対策計画、GX2040年ビジョンによって2040年再エネ40-50%・温室ガス73%減が目標となり、企業の再エネ購入に見通しが生まれたことなどを指摘しています。制度改正(自己託送ガイドライン厳格化やFIT→FIP移行)にも触れています。

    URL: https://www.kwm.com/global/en/insights/latest-thinking/redefining-energy-in-japan-game-changing-corporate-ppas-shape-the-future.html

  8. Apple Newsroom「Appleと世界中のサプライヤーが再生可能エネルギーを13.7ギガワットに拡大」(Apple日本法人プレスリリース、2023年4月5日) – Appleがサプライヤークリーンエネルギープログラムの進展として、28か国250社以上の供給企業が2030年までにApple製造に使う電力を全て再エネ化すると確約したことなどを発表。Apple自身も日本と中国で500MWの再エネ発電に直接投資するなど、サプライチェーン全体の脱炭素化を推進している。グローバル企業が取引先に再エネ100%を求める事例として参考になる。

    URL: https://www.apple.com/jp/newsroom/2023/04/apple-and-global-suppliers-expand-renewable-energy-to-13-point-7-gigawatts/

無料30日お試し登録
今すぐエネがえるBizの全機能を
体験してみませんか?

無料トライアル後に勝手に課金されることはありません。安心してお試しください。

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

コメント

たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
たった15秒でシミュレーション完了!
誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!