目次
エネがえる先生の超絶わかりやすい!脱炭素教室 〜数字で見る日本のエネルギーと未来〜
はじめに
こんにちは!「エネがえる先生」こと江根芽留(えね・がえる)です。今日は都内のある小学校で行った6年生向けの特別授業「数字で見る!日本のエネルギーと未来」の様子をお届けします。
この授業では、難しいと思われがちな「エネルギー」や「脱炭素」というテーマを、子どもたちが自分ごととして捉えられるよう、身近な例え話や驚きの数字、体験型のワークを交えながら展開しました。学校の先生方にもすぐに活用いただける内容になっていますので、ぜひ参考にしてください!
第1時限目:「地球の熱の毛布」から考える脱炭素
授業の導入:温室効果ガスってなんだろう?
エネがえる先生:「みんな、おはよう!今日はエネルギーのお話をするよ。まず質問!夜、寒い時に何をかける?」
生徒たち:「毛布!」「布団!」
エネがえる先生:「そうだね!実は地球にも”毛布”があるんだ。それが『温室効果ガス』っていうんだよ。この毛布があるから、地球は生きるのにちょうどいい温度になっているんだ。でも今、その毛布が厚くなりすぎちゃって、地球が暑くなってきているんだ。」
ユウキ君:「えっ、じゃあ毛布を全部取っちゃえばいいんじゃないですか?」
エネがえる先生:「いい質問だね!でもね、毛布を全部取っちゃうと今度は寒すぎて困っちゃう。だから『ちょうどいい厚さ』にしなきゃいけないんだ。2050年までに『カーボンニュートラル』っていう、ちょうどいい状態にするために、日本も世界も頑張ってるんだよ。」
数字で見る日本の目標
エネがえる先生:「日本は2030年までに、温室効果ガスを2013年に比べて46%減らす目標を立てているんだ。これってどれくらいかというと…」
ここで先生は教室の前に14個の大きな風船を用意します。
エネがえる先生:「この風船が2013年の日本のCO₂など温室効果ガスの量だよ。14.08億トンっていう、とーっても大きな数字なんだ。2030年までにこれを7.6億トンまで減らさないといけないんだ。つまり…」
先生は14個のうち6個半の風船を割ります。パンパンパン!
生徒たち:「わぁ!」(驚きの声)
マリカさん:「すごい減らさないといけないんですね!」
エネがえる先生:「そうなんだ。でもね、2022年の時点ではこれくらい減らせてるよ。」
先生は残りの風船のうち3個を割ります。
エネがえる先生:「2022年は2013年に比べて19.3%減らせたんだ。でも2030年までに46%減らすには、まだまだ頑張らないといけないね。」
ワーク:「CO₂ダイエット大作戦」
生徒たちを5つのグループに分け、「どうやったらCO₂を減らせるか」を考えてもらいます。各グループに「家庭」「学校」「交通」「お店」「発電所」というテーマを割り当て、アイデアを出し合います。
10分後、各グループが発表します。
「家庭」グループ:「電気をこまめに消す!エアコンの温度を夏は28度、冬は20度にする!」
「学校」グループ:「給食を残さず食べる!(フードロス削減)」「校庭に太陽光パネルを置く!」
「交通」グループ:「歩いたり自転車で行けるところは車を使わない!」「電気自動車に乗る!」
エネがえる先生:「すばらしいアイデアがたくさん出たね!実は、日本全体でも同じようなことを考えているんだよ。」
第2時限目:電気はどこから来るの?
日本の電気の作り方
エネがえる先生:「さて、みんなの家の電気はどこから来てると思う?」
ケンタ君:「コンセントから!」
生徒たち:(笑い)
エネがえる先生:「そうだね!でもそのコンセントに来る電気はどうやって作られてるんだろう?」
教室の壁に大きな円グラフが貼られています。
エネがえる先生:「これが日本の電気の作り方だよ。2023年の数字なんだ。」
先生はグラフを指しながら説明します。
エネがえる先生:「日本の電気の約7割は『火力発電』といって、石油や石炭、ガスを燃やして作っているんだ。これらは『化石燃料』と呼ばれるものだよ。」
サヤカさん:「先生、化石って恐竜の骨みたいなやつですよね?」
エネがえる先生:「いい質問だね!実はその通り、化石燃料は太古の植物や生き物が地中に埋まって、何百万年もかけて変化したエネルギーなんだ。だから『一度使ったら二度と増えない』貴重なものなんだよ。」
エネがえる先生:「そして、日本の電気の約26%は『再生可能エネルギー』、つまり何度でも使えるエネルギーで作られているんだ。太陽光や風力、水力などだね。」
体験!人力発電チャレンジ
教室の前に自転車型の人力発電機を用意します。
エネがえる先生:「さあ、電気がどれだけ大変か体験してみよう!この自転車をこいで、電球をつけることができるかな?」
生徒たちが順番に挑戦します。
アキラ君:(一生懸命こぎながら)「うわー、きついー!」
小さなLED電球がようやく点灯します。
エネがえる先生:「アキラ君、すごい!でもね、これは小さなLED電球1個をつけただけ。家のテレビをつけるには、10倍以上こがないといけないんだよ。電気って実は大変な力なんだね。」
生徒たちは驚いた表情を見せます。
エネがえる先生:「日本は今、この電気の作り方を変えようとしているんだ。2030年までに、再生可能エネルギーの割合を36〜38%まで増やす計画なんだよ。」
実験:ソーラーパネルで競争!
生徒たちを再びグループに分け、小型のソーラーパネルと簡易モーターカーのキットを配ります。
エネがえる先生:「これから太陽の力で車を走らせる競争をしよう!どのグループが一番工夫して速く走らせられるかな?」
生徒たちは太陽の当たる校庭に出て、パネルの角度や車体の軽量化などを工夫しながら競争します。
エネがえる先生:「すごいね!みんな太陽光エンジニアみたいだよ。実は日本の太陽光発電は急速に増えていて、2023年には日本の電気の11.2%を作るようになったんだ。10年前は2%くらいだったから、ものすごい増え方だね!」
第3時限目:未来のエネルギーと私たちにできること
日本の課題:エネルギー自給率
エネがえる先生:「みんな、お弁当持ってきた人?」
ほとんどの生徒が手を挙げます。
エネがえる先生:「じゃあ、もしお弁当を持ってこなくて、お友達からもらうとしたら、不安に感じない?」
ミサキさん:「うーん、お友達が忘れちゃったらお昼ごはん食べられなくなりますね…」
エネがえる先生:「その通り!実は日本は『エネルギーのお弁当』のほとんどを外国からもらっているような状態なんだ。日本のエネルギー自給率は約13%しかないんだよ。残りの87%は外国から買っているんだ。」
教室の床にテープで「日本列島」の形を作り、生徒13人に「日本で作れるエネルギー」役として島の中に立ってもらい、残りの生徒87人は「外国から買うエネルギー」役として島の外に立ってもらいます。
エネがえる先生:「こんな感じなんだ。だから日本はもっと自分でエネルギーを作れるようになることが大切なんだよ。」
未来のエネルギー技術
エネがえる先生:「さて、これからの時代はどんなエネルギーが注目されているか知ってる?」
リョウタ君:「太陽光ですか?」
ユミさん:「風力発電!」
エネがえる先生:「その通り!でもまだあるよ。例えば『水素』というエネルギーも注目されているんだ。」
先生は小さな燃料電池車のおもちゃを取り出します。水を入れると、水素と酸素に分解され、その力で車が動き出します。
生徒たち:「わぁ!水だけで動くの!?」
エネがえる先生:「すごいでしょ?日本は2030年までに300万トン、2050年までに2,000万トンの水素を使う計画なんだ。今はまだほとんど使われていないから、これからすごく増えるんだね。」
次に、小型の蓄電池と電球のセットを見せます。
エネがえる先生:「これは『蓄電池』というもので、電気をためておけるんだ。太陽が出ているときに電気を作って、夜に使うことができるよ。家庭用の蓄電池は、2017年には26万円/kWhだったのが、2023年には11.1万円/kWhまで安くなったんだ。」
ナオキ君:「え?どういう意味ですか?」
エネがえる先生:「いい質問だね!1kWhというのは、例えばエアコンを1時間つけられるくらいの電気の量なんだ。その電気をためておける箱の値段が、6年で半分以下になったってことだよ。2030年には7万円以下になる予定なんだ。」
ゲーム:2050年カーボンニュートラル都市を作ろう!
授業の最後に、床に大きな模造紙を広げ、「2050年の未来都市」をグループで作るゲームを行います。各グループに「住宅エリア」「商業エリア」「工場エリア」「交通システム」「発電所」などの担当を割り振り、脱炭素技術を取り入れた街づくりを考えてもらいます。
「住宅エリア」グループ:「全部の家に太陽光パネルと蓄電池があって、電気自動車の充電もできます!」
「発電所」グループ:「火力発電所は全部なくして、洋上風力発電所をたくさん作ります!日本の洋上風力は2021年から始まって、1.7GWも作る計画があるんです!」
エネがえる先生:「1.7GWというのは、原子力発電所1〜2基分くらいの大きさだね。すごいね!」
「交通システム」グループ:「電気自動車と水素自動車だけの街にします!今、日本の新車の電気自動車は約2%しかないけど、将来は100%にします!」
各グループの発表が終わると、全員で作った街を見渡します。
エネがえる先生:「みんな、すばらしい未来の街ができたね!実は今、日本の多くの市や町が『ゼロカーボン宣言』をしているんだ。なんと1161もの自治体が、2050年までにCO₂を出さない街にすると宣言しているんだよ。」
まとめ:子どもたちの感想と学び
授業の最後に、生徒たちに今日の感想を書いてもらいました。
ケイタ君:「電気を作るのがこんなに大変だとは知らなかった。これからは無駄に使わないようにしたい。」
アヤカさん:「日本のエネルギー自給率が13%しかないことにびっくりした。もっと太陽や風の力を使えばいいと思った。」
ショウタ君:「2030年の目標を達成するのは大変そうだけど、僕たちにもできることがあると分かった。家でも電気をこまめに消すようにする。」
ミドリさん:「水素の実験がすごかった!未来は水素の時代になるのかな?科学者になって研究してみたい。」
先生方へのアドバイス
この授業では、難しい数字や概念を子どもたちが自分ごととして捉えられるよう、以下の工夫をしました。
- 体感できる数字に変換する:大きな数字(14.08億トンなど)は、風船や人数など目に見える形で表現
- 身近な例え話を使う:温室効果ガスを「地球の毛布」に例えるなど
- 体験型の学習を取り入れる:人力発電、ソーラーカー競争など
- グループワークで協働学習:多様な視点からアイデアを出し合う機会を作る
- 最新データを活用する:子どもたちに「今」の課題を伝える
特に数値については、子どもたちが理解しやすいよう工夫しつつも、正確な情報を伝えることを心がけました。例えば「日本の再エネ比率25.7%」という数値は、円グラフで視覚的に示しながら、「4分の1ちょっと」という言い方も併用しています。
発展学習のアイデア
この授業の後、さらに発展させる学習として以下のようなテーマが考えられます。
- 地域のエネルギー調査:学校や地域にある再エネ設備を調査する
- 家庭のCO₂排出量計算:一週間の電気・ガスの使用量からCO₂排出量を計算する
- 未来の発電所デザインコンテスト:創造力を活かした発電所のアイデアを考える
- 省エネ技術の調査・発表:身近な省エネ技術(LED電球など)について調べる
- 地球温暖化の影響調査:地域の気候変動の影響(例:桜の開花時期の変化など)を調べる
おわりに
エネルギーや気候変動という大きな課題でも、子どもたちの目線に立って「見て、触って、考える」機会を作ることで、主体的な学びにつながります。今回の授業を通じて、子どもたちが「自分にもできることがある」と感じてくれたことが何よりの成果です。
地球の未来を担う子どもたちに、正確な情報と希望を持って行動する力を育むために、これからも様々な形でエネルギー環境教育に取り組んでいきたいと思います。
エネがえる先生(江根芽留)プロフィール 元エネルギー企業勤務の理科教育専門家。全国の学校で「数字で楽しむエネルギー教室」を開催。著書に『子どもと学ぶSDGs・エネルギー』『小学生でもわかる!脱炭素とエネルギーの未来』など。趣味は自作ソーラークッカーでのアウトドア料理。
以下は、「エネがえる先生の超絶わかりやすい!脱炭素教室」に登場する主な数値や情報のファクトチェック結果です。信頼性の高い最新データをもとに検証しました。
✅ ファクトチェック結果
1. 日本の温室効果ガス排出削減目標
主張:日本は2030年までに2013年比で46%削減を目指している。
事実:正確です。日本政府は2021年に、2030年度までに2013年度比で温室効果ガス排出量を46%削減する目標を設定しました。さらに、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指しています。 citeturn0search6
2. 2013年の排出量と2030年目標値
主張:2013年の排出量は14.08億トン、2030年目標は7.6億トン。
事実:概ね正確です。2013年度の温室効果ガス排出量は約14.08億トンで、46%削減すると約7.6億トンになります。
3. 2022年時点の削減実績
主張:2013年比で19.3%削減。
事実:正確です。2022年度の温室効果ガス排出量は、2013年度比で約19.3%減少しています。 citeturn0search10
4. 日本の電源構成(2023年)
主張:火力発電が約7割、再生可能エネルギーが約26%。
事実:ほぼ正確です。2023年度の日本の電源構成は、火力発電が約66.2%、再生可能エネルギーが約25.7%でした。 citeturn0search1
5. 太陽光発電の割合
主張:2023年に11.2%。
事実:正確です。2023年の太陽光発電は、全体の発電量の11.2%を占めました。 citeturn0search3
6. 2030年の再生可能エネルギー目標
主張:36〜38%。
事実:正確です。日本政府は2030年度までに再生可能エネルギーの割合を36〜38%に引き上げる目標を掲げています。 citeturn0search7
7. エネルギー自給率
主張:約13%。
事実:正確です。日本のエネルギー自給率は約13%で、残りの約87%を海外からの輸入に依存しています。 citeturn0search11
8. 水素利用の目標
主張:2030年に300万トン、2050年に2,000万トン。
事実:正確です。日本政府は2030年までに水素の利用量を300万トン、2050年までに2,000万トンに増やす計画を立てています。 citeturn0search7
9. 蓄電池の価格推移
主張:2017年に26万円/kWh、2023年に11.1万円/kWh、2030年に7万円以下。
事実:概ね正確です。蓄電池の価格は年々低下しており、2030年には7万円以下になると予測されています。 citeturn0search7
10. 洋上風力発電の導入計画
主張:2021年から始まり、1.7GWの計画。
事実:正確です。日本は洋上風力発電の導入を進めており、2021年から1.7GWの導入計画が始まりました。 citeturn0search7
11. 電気自動車の新車販売割合
主張:約2%。
事実:正確です。2023年時点で、日本における電気自動車(EV)の新車販売割合は約2%です。 citeturn0search7
12. ゼロカーボン宣言自治体の数
主張:1161自治体。
事実:正確です。日本全国で1,161の自治体が2050年までにCO₂排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言しています。
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