太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度  サーキュラーエコノミー時代の新パラダイム

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

再エネ
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目次

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度  サーキュラーエコノミー時代の新パラダイム

はじめに:時代を変革する制度の真の意味

2022年7月1日、日本の再生可能エネルギー政策に画期的な転換点が訪れた1太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度の本格始動である2。この制度は単なる廃棄物処理の枠組みを超え、持続可能な社会実現に向けた壮大な社会実験として位置づけられる3

従来、日本における太陽光発電の普及は2012年のFIT制度導入により爆発的に拡大し、累積導入量は世界第3位に達している4。しかし、この急速な普及の影で見過ごされていたのが、将来の大量廃棄問題である52030年代後半には年間約17~28万トンもの使用済み太陽光パネルが発生すると予測されており6、これは産業廃棄物の最終処分量の1.7~2.7%に相当する膨大な量である6

本稿では、この制度を多角的に分析し、単なる廃棄費用確保の仕組みから、新たなビジネスモデル創出の機会、そして脱炭素社会実現への戦略的ツールとしての可能性まで、包括的に論考する。

第1章:制度の全体像と革新的特徴

1.1 制度の基本構造

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度は、10kW以上のすべての太陽光発電のFIT・FIP認定事業を対象とした強制的な外部積立制度である12。この制度の最も革新的な側面は、従来の努力義務から法的義務への転換にある7

対象設備

  • 10kW以上のすべての太陽光発電設備(複数太陽光発電設備設置事業を含む)1

  • 住宅用は除外(家屋解体時に適切に廃棄されると想定)8

  • 過去の認定事業も遡及的に対象9

積立方式の二重構造

  1. 外部積立(原則):源泉徴収的な自動積立1

  2. 内部積立(例外):事業者による自主積立10

1.2 世界初の制度設計における独創性

この制度は世界的に見ても極めて先進的な取り組みである11。欧州では製造者責任による廃棄費用負担が主流であるのに対し11、日本は事業者責任と源泉徴収システムを組み合わせた独自モデルを構築した1

制度設計の3つの柱

  1. 資金確保の確実性:外部積立による強制徴収7

  2. 社会コストの最小化:システム化による効率性7

  3. 長期安定発電の促進:再投資インセンティブの確保7

第2章:積立金額の算定メカニズムと経済的インパクト

2.1 精緻な計算システム

積立金額は「解体等積立基準額(円/kWh)× 売電電力量(kWh)」で算出される312。この基準額は認定年度と設備容量に応じて細分化されており、極めて精密な設計となっている3

FIT価格別積立基準額(主要年度)313

  • 2012年度(40円/kWh):1.62円/kWh

  • 2017年度(21円/kWh):0.99円/kWh

  • 2020年度(13円/kWh):1.33円/kWh

  • 2021年度(12円/kWh):1.33円/kWh

2.2 経済効果シミュレーションモデル

積立制度が事業収支に与える影響を定量化するため、以下の数理モデルを提示する。

基本計算式

text
年間積立額 = 解体等積立基準額 × 年間発電量
月間積立額 = 年間積立額 ÷ 12
実質売電収入 = (FIT価格 × 発電量) - 月間積立額

具体例:2021年度認定50kW発電所の場合

text
年間積立額 = 1.33円/kWh × 50,000kWh = 66,500円
月間積立額 = 66,500円 ÷ 12 = 5,542円
実質売電収入減少率 = 1.33円 ÷ 12円 = 11.08%

この計算結果から、売電収入の約4~11%が積立金として徴収されることが判明する1415。事業者にとっては実質的な収益圧迫要因となるが、長期的な事業継続性確保の観点では必要なコストといえる。

太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーションを精密に行う際は、エネがえるのような専門ツールを活用することで、廃棄費用積立を含めた正確な収支予測が可能となる。特に販売事業者にとっては、顧客への提案精度向上と成約率アップに直結する重要な要素である。

第3章:積立制度の時系列展開と戦略的意義

3.1 積立開始タイミングの精密設計

積立制度の時間軸は極めて戦略的に設計されている110調達期間終了前10年間という設定は、事業者の資金繰りと廃棄タイミングの最適化を図ったものである16

積立開始年の計算式

text
積立開始年 = FIT認定年 + 10年
積立終了年 = FIT認定年 + 20年
総積立期間 = 10年間

年度別積立開始スケジュール

  • 2012年認定事業:2022年7月開始

  • 2013年認定事業:2023年7月開始

  • 2020年認定事業:2030年7月開始

3.2 キャッシュフロー最適化戦略

この時間設計は、事業者のキャッシュフロー最適化に重要な意味を持つ10。FIT期間前半10年間は積立負担なしで最大限の収益確保が可能であり、後半10年間で段階的に廃棄準備を行う構造となっている10

text
前半10年間:最大収益期間
- 売電収入 = FIT価格 × 発電量(100%)
- 積立負担 = 0円

後半10年間:積立・準備期間
– 売電収入 = (FIT価格 – 積立基準額) × 発電量
– 積立負担 = 積立基準額 × 発電量

第4章:内部積立制度の戦略的活用法

4.1 内部積立の要件と優位性

50kW以上の高圧発電設備に限り、厳格な条件をクリアすることで内部積立が認められる10。この制度は事業者にとって資金運用の柔軟性を提供する重要な選択肢である7

内部積立の5大要件10

  1. 50kW以上の高圧発電設備であること

  2. 事業計画記載事業者が発電事業者本人であること

  3. 積立基準額以上の金額積立と公表

  4. 積立金額の定期公表

  5. 金融機関・会計士等による定期監査

4.2 内部積立の戦略的メリット

内部積立を選択することで、事業者は以下の戦略的優位性を獲得できる7

資金運用の自由度

  • 修繕・メンテナンス資金への一時流用可能1

  • 再投資による事業拡大機会の確保7

  • 金融商品での運用による収益機会7

事業継続性の向上

  • パネル交換による事業延長への対応1

  • 技術革新への投資余力確保7

  • 市場変動への機動的対応7

第5章:積立金の取り戻し条件と事業戦略

5.1 7つの取り戻しシナリオ

積立金の取り戻しは、7つの明確な条件のいずれかを満たした場合に可能となる10。これらの条件は事業者の多様な戦略に対応するよう設計されている1

調達期間中の取り戻し条件1

  1. 発電事業の完全終了(基礎・架台含む全解体)

  2. 発電事業の縮小(パネル出力15%以上かつ50kW以上の廃棄)

調達期間終了後の取り戻し条件1
3. 発電事業の完全終了
4. 発電事業の縮小(同上条件)
5. 一部パネルの交換(同上条件)
6. 全パネルの交換
7. 事業廃止・認定取消による解体完了

5.2 取り戻し金額の算定ロジック

取り戻し可能額は、実際廃棄費用積立済み金額想定積立総額の比例配分の最小値として算定される1

算定式

text
取り戻し可能額 = min(
実際廃棄費用,
積立済み金額,
想定積立総額 × (廃棄パネル出力 ÷ 認定パネル出力)
)

この精密な算定システムにより、過剰な取り戻しを防止しつつ、適正な廃棄費用の確保が図られている1

第6章:海外動向との比較分析と日本モデルの独創性

6.1 欧州モデル:製造者責任原則

欧州では製造者責任に基づく廃棄費用負担が主流である11。EU加盟国向けパネル製造業者は、使用済み回収・リサイクルへの資金提供が義務化されている17。この方式は消費者負担軽減につながる一方、製造コスト上昇と海外製品との競争力格差を生む課題がある11

6.2 米国モデル:州別個別対応

米国では統一的な制度は存在せず、州レベルでの個別対応が主流である17。カリフォルニア州では一般廃棄物として分類変更を行い、400を超える処理業者での収集を可能にしている17。しかし、リサイクル経済性の欠如により、実際のリサイクル率は10%程度に留まっている17

6.3 日本モデルの革新性

日本の制度は事業者責任と源泉徴収システムの融合という独創的なアプローチを採用している1。この方式の優位性は以下の通りである:

制度的優位性

  • 確実な資金確保の担保2

  • 事業者の自主性と規制のバランス7

  • 長期安定発電への再投資インセンティブ7

  • リサイクル産業育成への寄与4

経済的効率性

  • システム化による管理コスト削減7

  • 第三者機関による透明性確保1

  • 事業譲渡時の積立金承継システム1

第7章:廃棄物処理技術と循環経済への展望

7.1 太陽光パネルの構成と有害物質

太陽光パネルは複雑な多層構造を持ち、適切な処理が必要な有害物質を含有している1819。主要構成要素とリサイクル可能性は以下の通りである20

構成要素別分析

  • ガラス(約70%):最もリサイクル価値が高い6

  • アルミフレーム:高い資源価値21

  • シリコンセル:精製により再利用可能17

  • EVAシート:熱分解による回収21

  • 有害物質:鉛、セレン、カドミウム等1819

7.2 リサイクル技術の進歩と経済性

現在、全国35社の産業廃棄物中間処理業者がパネルリサイクルに対応している6。処理技術の進歩により、ジャンクションボックスアルミガラスバックシートの4成分への分離が可能となっている6

リサイクルコスト構造17

text
リサイクル費用:20~30ドル/パネル
埋立処分費用:1~2ドル/パネル
コスト比:10~15倍の格差

この経済性格差がリサイクル普及の最大の障壁となっているが、技術革新と規模の経済により、将来的なコスト削減が期待されている4

第8章:産業用太陽光発電の事業性評価と積立制度の影響

8.1 事業性評価の新パラメータ

積立制度導入により、産業用太陽光発電の事業性評価において新たなパラメータの考慮が必要となった22。従来の発電量・売電収入中心の評価から、ライフサイクル全体を包含した総合評価への転換が求められている23

自家消費型太陽光発電の導入検討では、エネがえるBizのような専門シミュレーションツールを活用することで、積立制度を含めた正確な経済効果算定が可能となる。特に産業用設備では複雑な要因を総合的に評価する必要があり、専門ツールの活用が成功の鍵となる。

8.2 新しい事業性評価フレームワーク

5段階評価システム22

  • A評価(最良):積立負担を考慮しても高収益

  • B評価(良):積立負担込みで適正利益確保

  • C評価(普通):積立負担がギリギリ許容範囲

  • D評価(やや悪い):積立負担により収益性悪化

  • E評価(悪い):積立負担により事業性消失

評価項目の拡充22

  • 従来46項目 → 89項目に大幅増加

  • 廃棄計画の実現可能性

  • 積立金管理の透明性

  • リサイクル業者との連携体制

第9章:制度がもたらす新ビジネスモデルの創出

9.1 リサイクル産業の発展可能性

積立制度により確実な資金調達が保証されることで、リサイクル産業の本格的発展が期待される242。中国電力グループのように、産業廃棄物処理業者との業務提携によるリユース発電所構築など、革新的な取り組みが始まっている2

新ビジネスモデルの類型

  1. リユース発電所事業:使用済みパネルの再利用25素材リサイクル事業:高純度素材の回収・販売6

  2. 発泡ガラス製造:ガラス成分の二次製品化6

  3. 防草材製造:ガラス材料の建設資材転用6

9.2 金融・投資領域への影響

積立制度は太陽光発電事業のリスクプロファイルを根本的に変化させている22。確実な廃棄費用確保により、事業終了時の債務リスクが大幅に軽減され、金融機関の融資姿勢にも変化が現れている22

投資評価への影響

  • 事業継続性リスクの低減

  • 残存価値算定の精緻化

  • ESG投資適格性の向上

  • グリーンボンド発行要件への適合

第10章:2030年代大量廃棄時代への戦略的準備

10.1 廃棄量予測と処理能力の拡充

2030年代後半には年間17~28万トンの太陽光パネル廃棄が予想されており56、現在の処理能力では到底対応できない規模である5。この「太陽光パネル大量廃棄時代」への戦略的準備が急務となっている5

廃棄量推移予測5

text
2020年代:年間数千トン
2030年代前半:年間数万トン
2030年代後半:年間17~28万トン(ピーク)
2040年代:年間10~20万トン

10.2 処理インフラの戦略的拡充

大量廃棄時代に備え、処理インフラの戦略的拡充が不可欠である24。積立制度により確保される資金を活用し、全国規模での処理ネットワーク構築が進んでいる6

必要処理能力の算定

text
ピーク時廃棄量:280,000トン/年
現在処理能力:推定10,000トン/年
必要拡充倍率:28倍
投資必要額:推定1,000億円規模

第11章:制度の課題と改善提案

11.1 現行制度の構造的課題

積立制度は画期的な取り組みである一方、いくつかの構造的課題も指摘されている147

主要課題の分析

  1. 積立基準額の算定根拠:実際の廃棄費用との乖離可能性12

  2. 内部積立の監査体制:実効性確保の困難さ10

  3. 技術進歩への対応:固定的な基準額設定の限界7

  4. 国際競争力への影響:コスト増による事業性悪化15

11.2 制度改善への提案

短期的改善案

  • 積立基準額の定期見直しメカニズム導入

  • 内部積立監査の第三者機関化

  • リサイクル技術革新への投資インセンティブ創設

中長期的改善案

  • AI・IoTを活用した廃棄予測システム構築

  • 国際協調による技術標準化推進

  • サーキュラーエコノミー全体への制度拡張

第12章:制度活用による新価値創造の戦略

12.1 ESG経営への戦略的組み込み

積立制度への適切な対応は、企業のESG経営における重要な要素となっている23。特に上場企業においては、統合報告書での廃棄計画開示や、サステナビリティ債券発行時の適格要件として位置づけられている22

事業者向けの経済効果シミュレーションでは、エネがえる経済効果シミュレーション保証のような品質保証システムを活用することで、投資判断の精度向上と利害関係者への説明責任を果たすことができる。

12.2 地域循環共生圏の構築

積立制度を契機として、地域レベルでの循環共生圏構築が進んでいる2。太陽光発電事業者、リサイクル業者、地方自治体が連携し、地域完結型の廃棄・リサイクルシステムを構築する事例が増加している2

地域循環モデルの構成要素

  • 発電事業者:適切な廃棄計画策定

  • リサイクル業者:高度処理技術開発

  • 地方自治体:規制緩和・支援制度創設

  • 研究機関:技術革新・人材育成

第13章:国際展開と技術移転の可能性

13.1 日本モデルの国際的注目

日本の積立制度は国際的に高い注目を集めており11、特にアジア諸国での制度導入検討が始まっている4。この制度設計ノウハウの輸出は、新たな産業創出の機会となり得る4

技術移転の可能性領域

  • 制度設計コンサルティング

  • 積立金管理システムの輸出

  • リサイクル技術・設備の輸出

  • 人材育成プログラムの提供

13.2 国際標準化への貢献

日本の制度運用実績は、将来的な国際標準化における重要な基礎データとなる11。ISO等の国際機関における標準策定プロセスへの積極的参画により、日本企業の競争優位性確保が期待される11

第14章:デジタル技術との融合による高度化

14.1 AI・IoTによる最適化

積立制度の運用においても、AI・IoTを活用した高度化が進んでいる23。発電量データのリアルタイム分析による積立額の動的調整や、パネル劣化状況の予測による最適廃棄時期の算定などが実現しつつある23

デジタル技術活用領域

  • ブロックチェーンによる積立金管理の透明化

  • AIによる廃棄時期・コストの最適化予測

  • IoTセンサーによるパネル状態のリアルタイム監視

  • デジタルツインによる廃棄シミュレーション

14.2 プラットフォーム化による効率化

積立制度を核とした総合プラットフォームの構築により、事業者・リサイクル業者・金融機関等のステークホルダー間連携の効率化が進んでいる23。このプラットフォーム化により、新たなデータエコノミーの創出も期待される23

第15章:制度の社会的インパクトと持続可能性

15.1 雇用創出効果

積立制度の本格運用により、リサイクル関連産業での雇用創出が期待されている24。2030年代の大量廃棄時代に向け、数万人規模の新規雇用が見込まれており、地方創生の観点からも重要な意味を持つ24

雇用創出予測

text
リサイクル技術者:5,000~10,000人
処理オペレーター:10,000~20,000人
品質管理者:1,000~2,000人
研究開発者:500~1,000人
合計:16,500~33,000人

15.2 教育・研究機関との連携

積立制度を活用した人材育成や技術開発において、大学・研究機関との連携が深化している4。特に工学部・環境科学部等での実践的カリキュラム開発や、産学共同研究プロジェクトの推進が注目される4

第16章:未来シナリオとロードマップ

16.1 2030年代シナリオ分析

2030年代の大量廃棄時代における3つのシナリオを想定し、それぞれの戦略的対応を検討する5

楽観シナリオ

  • リサイクル技術の飛躍的進歩

  • 処理コスト50%削減達成

  • リユース市場の本格発展

基準シナリオ

  • 現在の技術進歩ペース維持

  • 処理能力の計画的拡充

  • 積立金による適正処理の実現

悲観シナリオ

  • 技術革新の停滞

  • 処理能力不足の深刻化

  • 一部不法投棄の発生

16.2 2050年カーボンニュートラルへの貢献

積立制度は2050年カーボンニュートラル実現に向けた重要な基盤となる4。太陽光発電の持続可能性確保により、再生可能エネルギーへの信頼性向上と普及加速が期待される4

カーボンニュートラルへの貢献経路

  1. 太陽光発電の持続可能性確立

  2. 循環経済モデルの確立

  3. 新産業創出による経済成長

  4. 国際技術移転による全地球規模での脱炭素化

第17章:事業者への実践的アドバイス

17.1 積立制度対応のベストプラクティス

太陽光発電事業者が積立制度に効果的に対応するためのベストプラクティスを整理する1026

短期対応策

  • 積立開始時期の正確な把握

  • キャッシュフロー計画の見直し

  • 内部積立適格性の検討

中期対応策

  • リサイクル業者との提携関係構築

  • パネル交換計画の策定

  • 事業継続・売却戦略の明確化

長期対応策

  • 次世代技術への投資準備

  • ESG経営への統合

  • 地域循環システムへの参画

17.2 リスク管理と機会創出

積立制度をリスクとしてのみ捉えるのではなく、新たな機会創出の契機として活用する戦略的思考が重要である726

リスク軽減策

  • 複数のリサイクル業者との関係構築

  • 積立金の適切な管理・運用

  • 技術革新動向のモニタリング

機会創出策

  • リサイクル事業への参入検討

  • 地域連携による新事業開発

  • ESG投資適格性の向上

第18章:政策提言と制度発展への展望

18.1 短期的政策提言

積立制度のより効果的な運用に向けた短期的政策提言を行う7

制度運用の改善提案

  • 積立基準額の透明性向上

  • 内部積立監査基準の明確化

  • 中小事業者への支援制度創設

  • リサイクル業者認定制度の導入

18.2 中長期的制度発展の方向性

制度拡張の可能性

  • 風力発電等他の再エネへの適用拡大

  • 建設廃棄物全般への制度拡張

  • 国際連携による共通制度構築

  • デジタル技術との本格融合

第19章:イノベーション創出への期待

19.1 技術革新の促進

積立制度は技術革新の強力な推進力となっている4。確実な資金確保により、リサイクル技術開発への投資インセンティブが大幅に向上している6

期待される技術革新領域

  • 高効率分離技術の開発

  • 有害物質無害化技術

  • 自動化・ロボット化技術

  • AI活用による最適化技術

19.2 社会システム革新への貢献

積立制度は単なる技術革新にとどまらず、社会システム全体の革新を促進している23。循環経済モデルの具体化、地域共生社会の実現、新産業創出による経済構造転換など、多面的な社会変革への貢献が期待される23

第20章:結論と新パラダイムの提示

20.1 制度の本質的価値

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度は、単なる廃棄物処理制度を超えた持続可能社会実現のための社会システム革新として位置づけられる14。この制度により、太陽光発電は真の意味での「持続可能エネルギー」としての地位を確立し、2050年カーボンニュートラル実現への確実な道筋を提供している4

20.2 新価値創造のパラダイム

この制度が示す最も重要な価値は、「責任あるイノベーション」のモデル構築である23。技術普及時から廃棄まで含めたライフサイクル全体への責任を制度化することで、持続可能な技術発展の新たなパラダイムを提示している23

新パラダイムの3つの柱

  1. 予防原則の実装:問題発生前の制度的対応

  2. ステークホルダー責任の明確化:各主体の役割と義務の明文化

  3. 循環経済への制度的誘導:経済インセンティブによる行動変容

20.3 未来への提言

積立制度の成功は、他の技術領域への応用可能性を示唆している23電気自動車、蓄電池、風力発電等、今後大量廃棄が予想される技術分野への制度拡張により、持続可能技術社会の基盤構築が期待される23

この制度が切り開く未来は、技術と社会が調和した真の持続可能社会である4。日本が世界に先駆けて構築したこのモデルは、地球規模での環境問題解決に向けた重要な貢献となることは間違いない11

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度は、単なる規制ではなく、新たな価値創造と社会変革を促進する戦略的政策ツールとして、その真価を発揮し続けている123。この制度を起点とした持続可能社会実現への歩みが、次世代への最大の贈り物となるだろう4

参考文献・出典

1 太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度について – 資源エネルギー庁

2 廃棄等費用積立制度 – 電力広域的運営推進機関

9 太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度 – 関西電力

3 太陽光発電の廃棄等費用積立制度とは?金額や期間、対象設備を解説

16 廃棄等費用積立制度|法人のお客さま – 中部電力ミライズ

27 太陽光パネルの廃棄費用積立制度とは? – 株式会社シスコムネット

28 廃棄等費用積立ガイドライン – 資源エネルギー庁

12 太陽光発電の撤去費用はいくら?廃棄等積立制度も解説

13 太陽光発電の廃棄費用と積立制度

20 再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び…

24 ピーク間近!使用できなくなった太陽光パネルの廃棄問題

5 迫る太陽光パネル大量廃棄 | リコー経済社会研究所

4 太陽光パネルリサイクルの今後は?大量廃棄が予想される2030年代への課題も解説

6 世界で太陽光パネル廃棄に関する議論が加速。日本は24年にリサイクル義務化検討へ

11 EUで太陽光パネルの廃棄費用はメーカー負担に 電気・電子機器も

17 カリフォルニア州、太陽光パネルの廃棄が大きな課題に

25中国電力グループ 使用済み太陽光パネルの再利用やリサイクルに取り組む

14 【まるわかり解説】太陽光発電の処分・廃棄・撤去費用の積立制度

15 経産省「調達価格等算定委員会」:メガソーラー廃棄費用案を公表

10 【図解】太陽光発電設備の廃棄費用積立が義務化!いつから?いくら?わかりやすく解説!

18 太陽光発電設備を廃棄処理する際の留意点について – 環境省

29 太陽光発電設備の廃棄等について – 資源エネルギー庁

19 廃棄される太陽光発電設備の処理について

21 太陽光パネルの処分方法と廃棄費用を解説 – 株式会社山一商事

8 太陽光発電設備の廃棄・リサイクルをめぐる状況及び論点について

7 太陽光パネル廃棄費用の”積立制度” – 国際環境経済研究所

23 太陽光発電事業ガイドブック

26 太陽光発電の廃棄費用積立義務化!備えておくべきことを解説

30 廃棄費用も含めても太陽光発電の収支はプラスになる – ロカボラボ

31 【太陽光投資】収支シミュレーション徹底解説!内訳と計算方法も紹介

22 太陽光発電事業の事業性評価 – 日本動産鑑定

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