「蓄電池って高いイメージがあるけれど、費用対効果はどうなんだろう?」
「蓄電池を設置しても、それほど電気代が安くならないなら意味がないのでは?」と思ったことはありませんか。
結論からお伝えすると、蓄電池の費用対効果は高いですが、導入費用がかかるため、直接的に電気代を大きく削減できるという意味での費用対効果は高くないと言えます。
具体的には、太陽光発電システムを設置しているオール電化の家庭では、蓄電池未設置の場合と比べた差額が、1ヶ月あたり16,623円(FIT期間中)、15,337円(FIT期間終了後)というシミュレーション結果が出ました。
この数字だけ見ると、費用対効果が高いように思えるかもしれません。しかし、蓄電池本体や設置に必要な費用が数百万円かかることを考えると、電気代削減という点からは費用対効果が高いかどうかは疑問です。
しかし、蓄電池には災害時に電気を確保できるという大きな利点があります。
とくに以下のような人たちにとっては、金銭面でメリットがないとしても、健康面や精神面の安定をはかるという意味で、費用対効果があると言えるでしょう。
在宅治療中の人や高齢者、ペットなどにとっては、電気を失うことで医療機器が止まってしまったり、エアコンが使えなかったりして命の危険につながる可能性があります。
しかし、蓄電池を導入することで、災害時にも電気を使えるため、命を守れる可能性が高くなるのです。
本記事では、以下についてお伝えしていきます。
本記事でわかること |
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・【タイプ別】蓄電池の費用対効果をシミュレーション |
「我が家の場合は、蓄電池を導入したら費用対効果はどうなのだろうか?」と気になっているのであれば、後ほどご紹介するシミュレーションを参考に、導入するか否かを判断してください。
また、蓄電池選びのポイントについても解説していますので、合わせてお読みください。
目次
【タイプ別】蓄電池の費用対効果をシミュレーション
蓄電池を使った場合、どのくらい電気代を抑えられるのか、費用対効果がどうなのかが気になるところでしょう。
本章では、太陽光発電システムを設置済みであることを前提として、蓄電池を導入した際は費用対効果が高いのかをシミュレーションしていきます。
その理由は、太陽光発電システムが設置されていない場合は、蓄電池で貯めることができる電力量よりも、明らかに電力消費量が上回るため、費用対効果がマイナスになってしまうというシミュレーションが出ているからです。
- 太陽光発電を設置済みの家庭が蓄電池を追加設置(オール電化)
- 太陽光発電を設置済みの家庭が蓄電池を追加設置(非オール電化)
条件が複雑になるため、今回は蓄電池の購入費用及び設置費用は考慮せず、電気代のみにフォーカスした形で、上記のタイプ別に電気代シミュレーションを行っていきます。
太陽光発電を設置済みの家庭が蓄電池を追加設置(オール電化)
シミュレーションの結論からお伝えすると、このケースでは費用対効果は高い計算となりました。
太陽光発電システムをすでに設置している家庭が蓄電池を追加で設置した場合(オール電化)のシミュレーションを、「エネがえる」を用いて以下の条件で行っていきます。
【オール電化住宅】太陽光発電システム設置済み&蓄電池を追加設置 |
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・神奈川県在住 |
電気料金の上昇率を年間2%と想定した場合、太陽光発電と蓄電池を合わせて利用することで、15年間で約318万円の節約が可能という結果が出ました。
1ヵ月あたりのシミュレーションについては、以下をご覧ください。
上記のように、1ヶ月のお得金額が16,623円(FIT期間中)と出ています。
FIT期間終了後はおよそ1,300円程度マイナスの15,337円となりますが、日中余った電気を蓄電池に貯めて後日使用できるようになるため、売電収入が下がった分をほぼ補えると言えるでしょう。
また、日中の太陽光発電をどのくらい蓄電池に貯められるかについては、以下のグラフをご覧ください。
もっとも充電量が少ない2月(約150kw)と8月(約237kw)を比べると90kw近くの差があるなど、月によって貯められる電気量は変わりますが、年間で合計すると2355.95kwの蓄電が可能になります。
費用対効果があるかどうかについては、蓄電池本体の価格と設置費用の合計次第で変わってきますが、200万円程度で蓄電池の導入が完了すれば、15年間で約118万円程度、年間にすると98,000円程度電気代が下がるであろうと予測できます。
もちろん、蓄電池の故障などで修理費用が発生する可能性もあるため確実ではありませんが、このケースでは費用対効果が高いと言えるでしょう。
太陽光発電を設置済みの家庭が蓄電池を追加設置(非オール電化)
シミュレーションの結論からお伝えすると、このケースでは費用対効果が高い計算となりました。
太陽光発電システムをすでに設置している家庭が蓄電池を追加で設置した場合(非オール電化)のシミュレーションを、「エネがえる」を用いて以下の条件で行っていきます。
【オール電化ではない住宅】太陽光発電システム設置済み&蓄電池を追加設置 |
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・神奈川県在住 |
電気料金の上昇率を年間2%と想定した場合、太陽光発電と蓄電池を合わせて利用することで、15年間で約370万円の節約が可能という結果が出ました。
1ヵ月あたりのシミュレーションについては、以下をご覧ください。
上記のように、1ヶ月のお得金額が18,536円(FIT期間中)と出ています。
FIT期間終了後はおよそ800円程度マイナスの17,788円となりますが、日中余った電気を蓄電池に貯めて後日使用できるようになるため、売電収入が下がった分をほぼ補えると言えるでしょう。
また、日中の太陽光発電をどのくらい蓄電池に貯められるかについては、以下のグラフをご覧ください。
もっとも充電量が少ない2月(約41kw)と5月(約185kw)を比べると150kw近くの差があるなど、月によって貯められる電気量は変わりますが、年間で合計すると1210.13kwの蓄電が可能になります。
費用対効果があるかどうかについては、蓄電池本体の価格と設置費用の合計次第で変わってきますが、200万円程度で蓄電池の導入が完了すれば、15年間で約170万円程度、年間にすると113,000円程度電気代が下がるであろうと予測できます。
もちろん、蓄電池の故障などで修理費用が発生する可能性もあるため確実ではありませんが、このケースでは費用対効果が高いと言えるでしょう。
【結論】蓄電池の費用対効果は高いのか
まず、結論からお伝えすると、各家庭により電力会社の契約プランや電気使用量などが異なるため100%断言することはできませんが、蓄電池の費用対効果は高いと言えます。
しかし、電気代を削減できるという意味で費用対効果が高いのかといえば、必ずしもそうではありません。
その理由は、蓄電池の代金と設置費用の支払いが必要となり、合計で数百万円程度かかるからです。
つまり、本体代金と設置費用次第では電気代削減分が目減りしてしまい、年間にして数万円程度の削減にしかならない可能性もあるわけです。これでは、費用対効果が高いとは言えないでしょう。
しかし、蓄電池には電気代だけではないメリットがあるため、以下で詳しく解説していきます。
経済的なメリットは低い可能性が高い
各家庭によって電力使用量や在宅時間帯が異なるため、しっかりとシミュレーションを行ってからメリットがあるかどうかを判断するべきですが、蓄電池を導入しても、経済的なメリットはあまり感じられないケースがあると考えられます。
たとえば、月あたり1万円電気代が安くなった場合、年間で12万円の削減効果があります。
この場合、電気代が抑えられているのは事実ですが、蓄電池の導入費用が100万円〜200万円程度かかっているため、元を取るには最低でも9年間程度(蓄電池が100万円程度の場合)修理費用などの追加出費をせずに蓄電池を使い続けなくてはなりません。
蓄電池の導入費用が200万円程度になった場合は、金銭的な元を取るには最低でも18年間程度の使用が必要になるため、費用対効果があるとは感じにくい家庭が多いと言えるのです。
災害対策としては十分に効果的
蓄電池は、地震や台風といった災害時に非常用の電源として利用できるため効果的です。
災害時には不安な気持ちになりがちですが、蓄電池を活用することでエアコンや冷蔵庫、電子レンジや照明器具が使えると、精神的にもだいぶ安心できるでしょう。
とくに、以下のような人たちにとっては、蓄電池があるかないかで命に関わる事態を引き起こす可能性があります。
人工呼吸器などの医療器具を使用していたり、体調急変の可能性がある高齢者や月齢の小さい赤ちゃんが自宅にいる場合は、電気を失うことが即生命の危機に繋がることも考えられます。
また、災害時には避難所はペットの同行は不可となっている場合が多いですが、夏の暑い時期に、電気がなければペットの体調も急変してしまう恐れがあります。
このように、非常時に備えたいという目的で蓄電池を導入するのであれば、費用面で元が取れるかどうかは大きな問題とはならないでしょう。むしろ、災害時の保険として蓄電池を導入することで安心感が増すため、費用対効果があると感じるのではないでしょうか。
蓄電池導入で費用対効果を感じやすい人とは
前章で蓄電池の費用対効果は高いとお伝えしましたが、具体的には以下に当てはまる人にとって費用対効果が高いと考えられます。
- FIT期間終了後に電気を自家消費したい人
- 停電や非常時に電気を使いたい人
以下で、ひとつずつ解説していきます。
FIT期間終了後に電気を自家消費したい人
FIT(固定価格買取制度)は、20年の買取期間が保証されています。つまり、期間終了後には売電できなくなるため、余った電気を自家消費したい人にとっては、蓄電池の費用対効果は大きいと言えるでしょう。
また、20年間のうち固定価格で買い取ってもらえるのは10年間で、11年目以降は電力会社と改めて契約を結ぶ形になり、売電収入が下がる傾向があります。そのため、まだFIT期間中であっても蓄電池を導入し、売電収入が下がった分を補うことも可能です。
蓄電池がなければ、FIT期間終了後は余った電気を捨ててしまうことになるため、自家消費したい人にとっては蓄電池の導入がオススメです。
停電や非常時に電気を使いたい人
2章でもお伝えしましたが、台風や地震などが原因で発生する停電時に電気を使いたい人にとっては、蓄電池導入を導入することで精神的な安定が得られるため、費用対効果が高いと言えるでしょう。
暑さ寒さが厳しい時期であれば、エアコンがないと体調に不安がある人もいるでしょうし、電気を使う医療器具を常用している人にとっては、電気を失うと命に関わる可能性があります。
体調不安がない人であっても、停電時に冷蔵庫が使えれば、ある程度日常と変わらない食生活を送ることも可能になるため、精神的にも安心できるでしょう。
このように、停電や非常時にも不便なく電気を使用したい人にとっては、蓄電池を設置することで費用対効果を感じやすくなると言えます。
費用対効果を考えた蓄電池選びのポイント
「蓄電池を導入してみよう」と思った場合、次に大切なのは、以下のポイントを考慮して自身の状況に最適な蓄電池を選ぶことです。
- 停電時に使いたい家電を考慮して選ぶ
- 将来の生活の変化を考慮して選ぶ
- 安くて質の良い業者から購入する
- 補助金を利用する
以下で、ひとつずつ解説していきます。
停電時に使いたい家電を考慮して選ぶ
停電時に電気を供給してくれる蓄電池ですが、どの家電を停電時に利用したいのかを確認しましょう。
なぜなら、蓄電池は出力できる最大量が決まっているため、利用したい家電すべてを動かせるとは限らないからです。
蓄電池には、以下の2つのタイプがあります。
蓄電池のタイプ | 対応ボルト | 供給範囲 | 導入費用 |
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全負荷 | 200Vまで | 家中すべての電気機器 | 高め |
特定負荷 | 100Vのみ | 家の一部の電気機器 | 安め |
エアコンや照明、冷蔵庫、テレビなどすべての家電を利用したいのであれば、全負荷型200V対応の蓄電池を選ばなくてはなりません。
一方で、停電時には特定の部屋で特定の家電のみ使えれば良いと考えている場合は、特定負荷型の蓄電池が向いているでしょう。
暑さ寒さが厳しい時期に停電となった場合、エアコンが動くかどうかを気にする人が多いと思いますが、エアコンによって100V対応、200V対応と異なります。
停電時にはひとつの部屋に集まり、特定の家電のみ動けば良いと考えているのであれば特定負荷の蓄電池、すべての部屋で日常と同じように電気を使いたいと考えている場合は、全負荷の蓄電池を選ぶ必要があるため、購入前に考えておいてください。
将来の生活の変化を考慮して選ぶ
蓄電池の容量を決める際は、将来の生活スタイルの変化を考慮して選ぶようにしてください。
たとえば、数年以内に子供を持とうと考えている30代前半の夫婦の場合を考えてみましょう。
現在は共働きで日中はほとんど家にいませんが、出産後は、日中も電気使用量が大幅に増えます。そのまま、何年間もその生活スタイルが続く場合、日中の電気使用量は現在よりも増えたまま生活していくことになるでしょう。
多くの蓄電池の寿命は15年〜20年程度なので、この夫婦の場合、現在の電気使用量に合わせて小さめの蓄電池を購入すると、容量が足りないまま使い続けていく可能性があります。
このように、生活スタイルの変化を5年〜10年単位で予測して、必要と思われる蓄電池を選ぶようにしてください。
安くて質の良い業者から購入する
蓄電池は複数の業者を比較して、安く、そしてサービスの質が良い業者から購入するようにしましょう。
蓄電池の容量や性能にもよりますが、工事費込みで100万円〜200万円程度の購入費用がかかります。しかし、訪問販売などで飛び込み営業をしている業者の場合、300万円以上などの高額提案をするケースもあります。
家庭に合った蓄電池を選ぶためには、以下のような業者を選んでください。
- メリットばかりではなくデメリットも合わせて説明してくれる
- 現在の電力使用状況を踏まえたうえで具体的なシミュレーションをしてくれる
- 質問に対して明確な返答をしてくれる
購入したら15年〜20年使う製品です。できるだけ安く、しかしアフターケアなども充実した信頼できる業者から購入するようにしましょう。
補助金を利用する
蓄電池の購入は高額なため、国や地方自治体が実施している補助金を利用して、自己負担額を減らしていくようにしましょう。
国からの補助金として、毎年経済産業省が環境共創イニシアチブを通して交付しているのが「DR補助金」です。条件を満たせば、最大60万円の補助金が支給されます。
2023年度のDR補助金はすで予算額に達したため終了してしまいましたが、詳細は資源エネルギー庁「VPP・DR普及に関する施策」でご確認ください。
また、補助金制度を持つ地方自治体もあります。都道府県だけではなく、市町村単位で出していることもあるため、地方自治体のホームページを確認してみましょう。
たとえば東京都では、1kWhあたり15万円、最大120万円の補助金を受けられます。詳しい条件については、公式ホームページをご覧ください。
国からの補助金と地方自治体からの補助金は、併用可能です。自己負担額をできるだけ抑えるために、情報は漏らさずチェックし、申請するようにしましょう。
蓄電池の費用対効果をシミュレーションするならエネがえるがオススメ
本記事では、蓄電池の費用対効果シミュレーションをするにあたり、「エネがえる」のシミュレーションを活用してきました。
エネがえるは、蓄電池の費用対効果をさまざまな条件を元にシミュレーションできるサービスで、2023年9月現在700社近くが導入しています。
蓄電池は一度購入したら15年〜20年といった長期間使うことになります。価格も100万円〜200万円程度と考えると、安い買い物ではないので「失敗したら買い替えればいい」とは考えられないでしょう。
適切な蓄電池を選ぶためには、以下のポイントを押さえたうえで、高精度のシミュレーションを行う必要があります。
- 家族構成
- 電気使用量
- 主な電気の使用時間帯
- 日照条件
- 停電時に使いたい家電
こういった複数の条件のうち、どれかひとつが異なるだけでも費用対効果が変わってくるため、エネがえるを使って詳細なシミュレーションをすることが欠かせないのです。
必要事項を入力していくだけで簡単に使え、最短15秒で診断結果が出るため、蓄電池メーカーはもちろん、電力会社や蓄電池の販売施工店にとっては必須のツールと言えるでしょう。
「我が家で蓄電池を導入したら、電気代や費用対効果はどうなのだろう」と気になっている場合は、エネがえるを導入している販売店でシミュレーションしてもらうことをオススメします。
まとめ
本記事では、蓄電池を導入した場合の費用対効果について解説してきました。
結論からお伝えすると、費用対効果は高いが、電気代を削減できるという意味では必ずしもそうとはいえないという結果になりました。
その理由は、蓄電池本体の購入費用や設置費用がかかるため、必ずしも大幅な削減にはつながらない可能性が高いからです。
しかし、蓄電池には、地震や台風といった災害時に非常用の電源として使えるというメリットがあります。
とくに、以下のような人たちにとっては、電気を失うことで命に関わる事態を引き起こす可能性があるため、たとえ費用がかかって元が取れなかったとしても、蓄電池の費用対効果は高くなるのではないでしょうか。
停電や非常時に電気を使いたい人以外に、FIT期間終了後に電気を自家消費したい人にも蓄電池の導入がオススメです。
20年間のFIT期間中は売電収入を得られますが、FITが終了すると、余った電気を自家消費したい人にとっては、蓄電池の費用対効果は大きいと言えるでしょう。
そして、適切な蓄電池を選ぶためには、詳細なシミュレーションが必要です。ぜひ、お近くの販売店に依頼して、エネがえるのシミュレーションを利用することをオススメします。
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