ブンデスリーガとドイツサッカー界で最も革新的なサステナブル・サッカークラブ10選に学ぶサステナビリティ・脱炭素・GX戦略

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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目次

ブンデスリーガとドイツサッカー界で最も革新的なサステナブル・サッカークラブ10選に学ぶサステナビリティ・脱炭素・GX戦略

はじめに:グリーン・ブンデスリーガ – スポーツにおけるシステミックな革命

ドイツのプロサッカー界で現在進行しているサステナビリティへの取り組みは、単なる企業の社会的責任(CSR)活動の散発的な集合体ではない。それは、ドイツサッカーリーグ(DFL)が導入した画期的な規制、すなわちライセンス交付に必須のサステナビリティガイドラインという強力なレバーによって駆動される、セクター全体を巻き込んだシステミックな変革である。

この動きは、スポーツ界における脱炭素化の「生きた実験室」として世界的に類を見ない事例であり、日本の産業界やスポーツ界がGX(グリーン・トランスフォーメーション)を加速させるための、具体的かつ再現可能なモデルを提供している。

この変革の核心は、DFLが世界で初めて主要プロサッカーリーグとして、ライセンス規定にサステナビリティに関する必須項目を盛り込んだ点にある 1。この決定は2021年にはすでにDFLの定款に明記され、2023-24シーズンから施行された 1。このガイドラインは、環境(エコロジー)、経済、社会という3つの側面を網羅する包括的なものであり、クラブがサステナビリティを単なる環境対策ではなく、ガバナンスの根幹として捉えることを強制する 1。これにより、表面的な「グリーンウォッシング」を構造的に防止している。

導入は段階的に行われ、2023-24シーズンには「最小基準I」が、そして2024-25シーズンにはより要求水準の高い「最小基準IおよびII」が義務化された 3。この現実的なステップ・バイ・ステップのアプローチは、リーグ全体の基準を着実に引き上げている。そして、2025-26シーズンには、この取り組みは決定的な新段階へと移行する。全クラブは、これまで一部で認められていた自己申告に代わり、サステナビリティ基準を包括的に満たしていることの「独立した証明」を提出することが義務付けられる 5。これは、説明責任と透明性への劇的なシフトを意味する。

このドイツのモデルが示す最も重要な点は、「ライセンスをレバーとする」という変革メカニズムである。サステナビリティの達成をクラブの運営ライセンスと直接結びつけることで、このテーマは「任意」のCSR予算から「必須」の事業運営予算へと移行した。

これにより、チャンピオンズリーグ出場クラブから3部リーグからの昇格クラブまで、すべてのクラブがサステナビリティ責任者を任命し 4、エネルギー、水、排出量に関するデータを収集し 2、体制を構築することが不可欠となった 4。このトップダウンの義務化は、任意のアプローチでは決して達成できないスピードと規模で、セクター全体の変革を加速させている。企業の自主性に重きを置くことが多い日本にとって、このモデルは、業界の監督官庁(例えばJリーグや関連省庁)が「変革の設計者」となり、業界の参加ルールそのものにサステナビリティを組み込むことで、セクター全体のGXを強力に推進できる可能性を示唆している。

本レポートでは、このドイツの先進的な取り組みを徹底的に解析し、特にユニークな活動を行う10のサッカークラブをリーグの垣根を越えて紹介する。さらに、他のスポーツやアスリートの活動にも視野を広げ、ドイツスポーツ界全体のエコシステムを解き明かす。最終的に、これらの洞察を日本の状況に接続し、日本の再エネ普及と脱炭素化を加速させるための具体的かつ実効性のある処方箋を提示することを目的とする。


表1:ドイツで最も革新的なサステナブル・サッカークラブ10選(2025年)

クラブ名 所属リーグ(2024-25) 独自性の要約
VfLヴォルフスブルク ブンデスリーガ データ駆動型の包括的戦略で業界をリードする「システミック・リーダー」
SCフライブルク ブンデスリーガ 最新スタジアムを再生可能エネルギーの象徴とした「太陽光建築のパイオニア」
TSGホッフェンハイム ブンデスリーガ 廃棄物ゼロと国際貢献を両立させる「サーキュラーエコノミーの革新者」
FSVマインツ05 ブンデスリーガ 「気候ニュートラル」から「気候ディフェンダー」へと進化を遂げた「現実主義の先駆者」
ヴェルダー・ブレーメン ブンデスリーガ 環境保護と長年の社会貢献活動を統合した「社会的価値の体現者」
FCザンクトパウリ ブンデスリーガ クラブの価値観をインフラで表現する「アクティビズムの可視化」
ボルシア・ドルトムント ブンデスリーガ 巨大なスケールを活かしてインパクトを最大化する「エコシステム・オーケストレーター」
FCインテルナツィオナーレ・ベルリン1980 アマチュアリーグ 草の根活動で全国的な評価を得た「グラスルーツ・チャンピオン」
(参考)1.FCケルン 2. ブンデスリーガ 包括的なサステナビリティ戦略で高い評価を得ているクラブ
(参考)FCアウクスブルク ブンデスリーガ 世界初のカーボンニュートラルスタジアムを建設した初期のパイオニア

表2:DFLサステナビリティガイドライン – 主要必須要件(2025-26シーズン)

カテゴリ 主要な必須項目 概要
クラブ経営と組織 サステナビリティ戦略の策定 クラブ全体として、環境・社会・経済の側面を統合した公式な戦略を策定・文書化する。
サステナビリティ責任者の任命 サステナビリティに関する活動を統括し、推進する責任者を明確に任命する。
全従業員向け行動規範 差別禁止、多様性、インクルージョンを含む行動規範を策定し、全従業員に周知徹底する。
環境と資源 環境戦略の策定 クラブの拠点における環境への影響と排出量を分析し、具体的な目標と中間目標を設定する。
GHG排出量のデータ収集 温室効果ガス(GHG)排出量に関するデータを体系的に収集・文書化する。
エネルギー・水・排水のデータ収集 エネルギー消費量、水消費量、排水量に関するデータを年次で測定・記録する。
モビリティ・交通分析 ファン、従業員、チームの移動に関するデータを分析し、環境に配慮したモビリティコンセプトを策定する。
ステークホルダー ステークホルダーとの対話 ファン、スポンサー、地域社会など、主要なステークホルダーとの対話の仕組みを構築する。
証明と報告 独立機関による証明 2025-26シーズンより、サステナビリティ基準の遵守状況について、独立した第三者による証明を提出する。

第1部 持続可能性のチャンピオンズリーグ:ブンデスリーガのエリート・パイオニアたち

このセクションでは、DFLの規制を遵守するだけでなく、スポーツにおけるサステナビリティの未来を積極的に切り拓いているトップティアのクラブを、高解像度のケーススタディとして分析する。

1.1. VfLヴォルフスブルク:システミック・リーダーにしてファーストムーバー

ヴォルフスブルクは、サステナビリティへの包括的、データ駆動型、そして戦略的に統合されたアプローチの基準となっている。彼らの活動は、環境保護がクラブのDNAと商業戦略に深く織り込まれ、いかにして価値を創造するかを示している。

先進性と報告のリーダーシップ

ヴォルフスブルクは、ドイツのクラブとして初めてGRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)基準に準拠したサステナビリティレポートを発行したクラブであり、透明性と体系的な管理への長期的なコミットメントを早くから示してきた 7。2024年に発行された最新のレポートでは、ダブルマテリアリティやTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークを導入し、報告の質をさらに高めている 10。

野心的な目標設定

クラブは国連の「Race to Zero」キャンペーンに署名しており、科学的根拠に基づいた明確な目標を掲げている。それは、2017-18シーズンを基準として、2030年までにスコープ1、2、3を含むすべての温室効果ガス排出量を55%削減するというものである 11。さらに、2025年までのネットゼロ達成という極めて野心的な目標も掲げている 14。

再生可能エネルギーとエネルギー効率

ヴォルフスブルクは、早くも2011年にクラブ施設全体の電力を100%再生可能エネルギー由来のものに切り替え、年間1,000トン以上のCO2排出量を削減している 11。スタジアムの投光照明をLEDに更新したことで、さらに12%の電力消費を削減した 14。

資源管理と循環性

特に注目すべきは、水資源の管理である。スタジアムや練習場のピッチの灌漑に、隣接するミッテルラント運河から取水した中水(工業用水)を利用することで、年間約1,100万から1,700万リットルの貴重な飲料水の使用を削減している 11。また、無水小便器や節水型水栓の導入も進めている。廃棄物管理においても、埋め立て廃棄物ゼロを達成し、リサイクル可能なバイオプラスチック製のカップを導入している 2。さらに、Grüne Fährte(緑の軌跡)」という独自ブランドの下で、サステナブルなファン向け商品を開発している 17。

ヴォルフスブルクの事例は、サステナビリティへの深く長期的なコミットメントが、いかにして商業的な資産となり得るかを示している。クラブのCSR責任者は、その先進的な姿勢が、従来のスポーツスポンサーシップの枠を超えた新しい商業パートナーを引きつけていると明言している 19。これは、サステナビリティ活動が信頼性を生み、ブランド価値を高め、新たな収益源を開拓し、その収益をさらなるサステナビリティ活動に再投資するという、強力なフィードバックループの存在を証明している。サステナビリティを単なるコストセンターと見なす旧来の考え方に対する、これは力強い反証である。日本の企業にとって、この事例は、信頼性のある長期的なGX戦略が競争上の差別化要因となり、価値観を共有する新たな市場やパートナーシップを切り拓く可能性を示している。

1.2. SCフライブルク:太陽光発電の要塞と建築のベンチマーク

SCフライブルクの新しい本拠地「オイローパ・パルク・シュタディオン」は、大規模インフラにサステナブルな設計をゼロから統合し、機能性と象徴性を兼ね備えた気候ニュートラルな施設をいかにして実現できるかを示す、世界最先端の事例である。

欧州最大級のスタジアム太陽光発電システム

新スタジアムの屋根には、15,000平方メートルの広さに6,200枚以上の太陽光発電モジュールが設置されている。この巨大なシステムは、年間約260万kWhの電力を発電し、欧州のサッカースタジアムに設置されたものとしては最大級の規模を誇る 20。旧スタジアムもドイツ初のソーラースタジアムであり、クラブの先進性を物語っている 21。

統合されたエネルギーコンセプト

このスタジアムは、隣接する工場の産業排熱を利用した地域熱供給ネットワークに接続することで、暖房需要を気候ニュートラルな形で完全に賄っている 20。これは、産業共生(インダストリアル・シンビオシス)の優れた実践例である。

持続可能なモビリティの徹底

クラブは環境に配慮した交通手段の推進に長い歴史を持つ。1993年から、試合のチケットで公共交通機関が無料になる「コンビチケット」を導入してきた 20。新スタジアムではこの取り組みがさらに強化され、大規模な駐輪スペースが確保された結果、ある試合では5,818人ものファンが自転車で来場した 20。さらに、ドイツ初となる太陽光発電機能を備えた自転車専用道路の開設にも貢献し、地域全体の持続可能な交通インフラ整備を牽引している 20。

包括的な報告体制

これらの先進的な取り組みは、2023年10月に発行されたクラブ初の詳細なサステナビリティレポートにまとめられており、透明性の高い情報開示を行っている 20。

フライブルクのスタジアムは単なる建築物ではなく、地域戦略における重要なインフラとして機能している。太陽光発電自転車道 20 や地域産業の排熱利用 20 といった取り組みは、クラブが周辺の「グリーン・インダストリー・パーク」構想の中核を担い、地域全体の脱炭素化を促進する触媒となっている 23スタジアムは、都市が掲げるGXへのコミットメントを日々可視化する、強力なシンボルとなる。これは、日本の都市開発プロジェクトにとって重要な示唆を与える。単体の「グリーンビルディング」を建設するのではなく、スタジアムやコンベンションセンター、交通ハブといった大規模インフラを、地域のエネルギー網や交通システムを統合し、地域のGX目標を象徴する「システム・インテグレーター」として設計することの重要性を示している。

1.3. TSGホッフェンハイム:サーキュラーエコノミーとグローバルインパクトの革新者

ホッフェンハイムは、廃棄物問題(サーキュラーエコノミー)や地球規模の責任(社会的側面を持つオフセット)といった複雑な課題に対し、パートナーシップを駆使した革新的なプロジェクトを創出することに長けている。

「PreZeroアレーナ」:廃棄物ゼロの実験室

環境サービス企業PreZeroとの深いパートナーシップを通じて、ホッフェンハイムのスタジアムはドイツで初めて「ゼロ・ウェイスト」認証を取得した施設となった 2。この認証は、高度な廃棄物分別システム、リユース可能なカップシステム(年間約50万個の使い捨てカップを削減)、そして約90%という高いリサイクル率によって達成されている 24。

創造的なアップサイクル

このクラブは、“廃棄物”の創造的な活用法で特に知られている。ピッチから刈り取られた芝生を乾燥させ、選手たちのサインカード用の紙や、さらにはスマートフォンケースの素材として再利用している 26。これは、サーキュラーエコノミーという抽象的な概念をファンにとって具体的で魅力的なものにする、優れたコミュニケーション手法である。

「クライマ・チケット」と国際貢献

ホッフェンハイムは、ファンがチケット購入時に少額(1ユーロ)を上乗せすることで、ウガンダでの植林プロジェクトに貢献できる「クライマ・チケット(気候チケット)」を導入している 19。この取り組みは、ドイツ連邦経済協力開発省が主導する「開発と気候のためのアライアンス」への参加の一環であり、地域の行動を地球規模のインパクトに結びつけている。単なるカーボンオフセットにとどまらず、現地の雇用創出や生物多様性の保全といった社会的な共同便益(コベネフィット)を生み出している点が特徴的である。

ネットゼロ目標

クラブは国連の「Race to Zero」に署名し、2030年までに50%削減、2040年までにネットゼロを達成するという目標を掲げている 27。

ホッフェンハイムが「コモンバリュー・アプローチ」と呼ぶこの手法は 27スポンサーシップのあり方を再定義するものである。単なる「資金と広告露出の交換」ではなく、廃棄物対策におけるPreZero、気候チケットにおけるHep Solar、モビリティにおけるMVVのように、共通のサステナビリティ目標を軸に、深く事業運営に根差したパートナーシップを構築している。これにより、スポンサーはクラブのサステナビリティ活動における能動的な協力者へと変貌する。このモデルは、伝統的なスポンサーシップが主流である日本にとって極めて示唆に富む。日本の企業とスポーツチームが、互いの専門知識を活用して社会課題を解決するサステナビリティ・イニシアチブを共同で創出することにより、単なるジャージのロゴよりもはるかに深く消費者の心に響く、本物のブランドストーリーを生み出すことができるだろう。

1.4. FSVマインツ05:現実主義の先駆者 – 「気候ニュートラル」から「気候ディフェンダー」へ

FSVマインツ05の歩みは、企業の気候変動に関する言説と戦略の進化における重要な教訓を提供している。彼らは、「気候ニュートラル」という誤解を招きかねない表現から、より透明性が高く行動に焦点を当てたアプローチへと成熟したシフトを遂げた。

真のパイオニア

マインツ05は、2010年に環境研究所と協力してCO2排出量を算定し、グリーン電力に切り替えることで、「世界初のカーボンニュートラルなクラブ」と称された先駆者である 7。

戦略的転換

しかし2023年、クラブは「klimaneutral(気候ニュートラル)」という呼称を今後使用しないと発表した 34。この決定は、環境団体からの指摘を契機としつつも、クラブ自身の戦略的な進化を反映したものであった。クラブ会長のシュテファン・ホフマン氏は、13年の間に「気候ニュートラル」という概念、特に避けられない排出量に対するカーボンオフセット証書の購入に対する社会や科学界の見方が大きく変化したと説明している 34。

新戦略「05ER Klimaverteidiger(05の気候ディフェンダー)」

この転換に伴い、クラブは国際的なオフセット証書の購入から、地域内のサステナビリティプロジェクト支援へと焦点を移した。彼らは引き続きCO2排出量の算定範囲を拡大し、ISO 50001認証のエネルギーマネジメントシステムを通じてエネルギー効率を最適化している 34。また、毎年「気候ディフェンダー週間」と題した啓発キャンペーンを実施している 37。

マインツの物語は失敗談ではなく、知的誠実さと戦略的成熟の証である。彼らは、気候変動を巡る議論が進化する中で、「気候ニュートラル」という言葉が、真の排出削減よりもオフセットに大きく依存している場合、グリーンウォッシングと見なされるリスクを認識した。「気候ディフェンダー」への転換は、洗練されたブランディング戦略である。それは、「我々はニュートラルである」という受動的な状態から、「我々は気候を守るために行動し続ける」という能動的で継続的なコミットメントへと物語を転換させる。これは日本の企業にとって極めて重要な教訓である。オフセットによる安易なカーボンニュートラル宣言は短期的な戦術に過ぎない。マインツが示すように、長期的で信頼性の高い戦略とは、排出削減の道のりを透明に伝え、課題を認め、具体的で検証可能な行動に焦点を当てることである。

1.5. ヴェルダー・ブレーメン:社会に根差した先駆者

ヴェルダー・ブレーメンは、環境サステナビリティを、クラブが長年培ってきた社会的責任への使命と深く、かつ効果的に統合し、包括的で信頼性の高いブランドアイデンティティを構築している模範である。

長年のコミットメント

ブレーメンは環境保護活動において長い歴史を持つ。その象徴が、20万個の太陽電池セルを備え、年間約80万kWhを発電する、欧州でも最大級のスタジアム一体型太陽光発電システムである 19。クラブは100%グリーン電力を利用し、2040年までのネットゼロを目標に掲げている 39。

Werder bewegt – lebenslang(ヴェルダーは動かす – 生涯にわたって)」

これは、クラブのすべての社会的・環境的活動を統合する包括的なCSRブランドである 40。環境保護活動は、「lebenslang umweltbewusst(生涯にわたる環境意識)」という柱の下で推進されている。

社会的・環境的目標の統合

クラブの活動は、常に社会的側面と環境的側面を結びつけている。例えば、気候変動対策を訴える若者たちの運動「フライデーズ・フォー・フューチャー」を支持し、従業員のデモ参加を公式に認めた 19。クラブのサステナビリティ担当役員であるアンネ=カトリン・ラウフマン氏は、サステナビリティが20年以上にわたる地域社会への責任に根差した、クラブのアイデンティティの核となる価値観であると強調している 43。

グリーンモビリティ

フライブルクと同様、ブレーメンも公共交通機関と連携したチケット制度の長い歴史を持ち、スタジアムへの自転車でのアクセスを奨励している 38。

ヴェルダー・ブレーメンにとって、サステナビリティは規制に対応するために近年採用された現代的な戦略ではない。それは、クラブが地域社会に深く根差した会員制クラブとして持つ、長年の「Vereinskultur(クラブカルチャー)」の延長線上にある。彼らの行動が信頼性を感じさせるのは、数十年にわたる社会貢献の歴史と一貫しているからである。これは、サステナビリティが真に効果的で強靭なものとなるための重要な成功要因を示している。すなわち、それは組織の核となる価値観やアイデンティティと結びついていなければならない。日本の企業にとって、これは最も成功するGX戦略が、外部から押し付けられた異質な概念としてではなく、自社の企業理念(例えば「三方よし」の精神)と本質的に結びつけることができるものであることを示唆している。

第2部 トップリーグの枠を越えて:多様なリーグからのユニークなイニシアチブ

このセクションでは、サステナビリティへの革新が富裕なクラブだけに限定されないことを証明し、このムーブメントの裾野の広さを示す

2.1. FCザンクトパウリ(ブンデスリーガ):可視化されたアクティビズム

FCザンクトパウリは、その世界的に有名な社会的・政治的アクティビズムの物理的な現れとしてサステナビリティ・イニシアチブを巧みに活用し、インフラをインクルージョンと進歩の強力なステートメントへと昇華させている。

虹色のソーラールーフ

2025年、クラブは本拠地ミラントア・シュタディオンの屋根に、虹色に彩られた1,080枚の太陽光発電パネルを設置した 44。このプロジェクトは、ドイツの「多様性の日」に合わせて発表され、LGBTQ+コミュニティを支援するという明確な意思表示となっている。

アクティビズムと効率性の両立

このシステムは1,800平方メートルをカバーし、年間約28万5,000kWhの電力を発電、約140トンのCO2を削減する見込みである 45。クラブは、特殊な着色技術により5~13%の発電効率の低下があることを認めつつも、「最大の発電量よりも、象徴的な力とインクルーシビティを意図的に優先した」と公言している 44。

脱炭素化目標

このプロジェクトは、2030-31シーズンまでにスコープ1および2の排出量を少なくとも50%削減し、2040年までに1.5℃目標に整合させるという明確な変革計画の一部である 44。

サステナブルなパートナーシップ

クラブは、リサイクル素材からユニフォームを製造するためにPUMAと 46、持続可能なモビリティを推進するために電気自動車メーカーのSmartと提携している 48。

ザンクトパウリでは、ブランドとサステナビリティ活動が相互に強化し合う共生関係にある。進歩的で活動的な組織というクラブの確立されたアイデンティティが、虹色のソーラールーフのような先進的なプロジェクトを実行する「許可」を社会から得ている。そして、そのソーラールーフは、クラブのブランドアイデンティティをさらに強化し、現代化する世界的に認知されるシンボルとなる。これは、ブランドの物語と行動を一致させることの重要性を示す見事な事例である。サステナビリティ分野で評価を確立しようとする日本のブランドにとって、これは重要な教訓となる。行動は、企業の核となるアイデンティティと一致していなければならない。イノベーションで知られる企業は新技術を開拓すべきであり、地域貢献で知られる企業は地域プロジェクトを優先すべきである。この一致が欠けると、行動は信頼性を失い、グリーンウォッシングと見なされる危険性がある。

2.2. ボルシア・ドルトムント:メガクラブのスケールを活かしたインパクト

常にファーストムーバーではないかもしれないが、ボルシア・ドルトムントのようなメガクラブは、その巨大な規模、ブランド力、そして戦略的な企業パートナーシップを活用して、いかにインパクトの大きいプロジェクトを実施し、広大なファンベースに影響を与えることができるかを示している。

大規模な再生可能エネルギー・パートナーシップ

2024年8月、BVBは大手エネルギー企業RWEとの大規模なサステナビリティ・パートナーシップを発表した 49。この提携には、スタジアム屋根の太陽光発電容量の大幅な拡大と、蓄電池システムの導入が含まれる。

顕著なエネルギー生産

クラブは、屋根で発電されるグリーン電力が、年間の全ホームゲームで消費される電力を「計算上、上回る」と述べている 49。これは、試合日の運営におけるエネルギー自給に向けた大きな一歩である。

社会貢献の「灯台プロジェクト」

クラブの財団「leuchte auf(輝け)」は、ドルトムントの恵まれない地域でストリートサッカーリーグを運営する「ノルトシュタットリーガ」など、大規模な社会貢献プロジェクト(灯台プロジェクト)を展開している 50。これらの活動は主として社会的側面を持つが、責任ある組織としてのクラブの信頼性を構築し、環境メッセージを伝える土台となっている。

ドルトムントほどの規模のクラブは、単一の主体としてではなく、むしろ「エコシステムの指揮者(オーケストレーター)」として機能する。RWEとのパートナーシップは、単にグリーン電力を購入するだけでなく、大規模なエネルギーソリューションを共同で創造するものである。財団の活動は 50、市のパートナー、NGO、地域の学校を巻き込む。彼らの決定は、その巨大な規模ゆえに、広範なサプライヤー、スポンサー、そして数百万人のファンに波及効果をもたらす。このモデルは、日本の最大手企業(例えば経団連加盟企業)にとって示唆に富む。彼らがGXで果たすべき役割は、自社の事業活動を脱炭素化するだけでなく、その絶大な影響力と購買力を利用して、サプライチェーン全体、ひいてはビジネスエコシステム全体の変革を指揮することである。

2.3. FCインテルナツィオナーレ・ベルリン1980(アマチュアリーグ):グラスルーツのチャンピオン

ベルリンを拠点とするこのアマチュアクラブは、インパクトのある全国的に認められたサステナビリティ活動が、巨額の予算ではなく、地域社会との深い結びつき、明確な価値観、そして献身的なボランティアの努力によって可能であることを証明している。

ドイツ・サステナビリティ賞2024の受賞

FCインテルナツィオナーレ・ベルリンは、ヴェルダー・ブレーメンやSCパーダーボルン07といったプロクラブを抑え、権威あるドイツ・サステナビリティ賞の「スポーツ経済」部門で最優秀賞を受賞した 52。これはアマチュアクラブにとって驚くべき快挙である。

設立当初からの価値観

このクラブは1980年の設立当初から社会政治的な理念を持っており、80年代には平和トーナメントを主催し、90年代にはユニフォームに「NO RACISM」の文字を掲げた 54。サステナビリティへのコミットメントは、これらの長年培われた価値観の自然な延長線上にある。

地域に根差したイニシアチブ

彼らのサステナビリティ・イベントのモットーは「Support your local planet(あなたの地域の地球を支えよう)」であり、地域内での社会的・環境的貢献に焦点を当てている 55。これは、草の根からのボトムアップ型アプローチを示している。

ブンデスリーガのクラブが数百万ユーロを投じてソーラールーフや複雑なエネルギーシステムを導入する一方で、FCインテルナツィオナーレの成功は異なる原則に基づいている。それは、地域社会の結束、教育、そして行動変容である。彼らがサステナビリティ賞を受賞したという事実は 53、テクノロジーは解決策の一部に過ぎないという強力なメッセージを送っている。コミュニティの参加、教育、そして価値観に基づいたリーダーシップといった「ソフトウェア」が、同等かそれ以上に重要なのである。これは、日本の小規模企業、地方自治体、NPOにとって、非常に勇気づけられるモデルである。大規模な設備投資がなくとも、地域コミュニティを動員し、サステナビリティの文化を育むことで、意義のある気候変動対策が可能であることを示している。

第3部 ドイツスポーツ界の広範なエコシステム:マルチスポーツの視点

このセクションでは、サステナビリティへの動きがドイツのスポーツ界全体に広がる全国的な現象であり、相互に強化し合う強力なエコシステムを形成していることを示す。

3.1. サッカーの枠を越えて:スポーツ横断的な相乗効果

サステナビリティへの推進力はサッカー界に留まらない。他のプロリーグも同様の戦略を採用し、より広範な社会的インパクトを生み出し、スポーツにおける気候変動対策を常識へと変えつつある

ハンドボール – フュクセ・ベルリン

2022年、世界初の気候ニュートラルなハンドボールクラブとなることを宣言 56。環境コンサルティング会社ClimatePartnerと協力してCO2排出量を算定(2021-22シーズンで650トン)し、移動に伴う排出量を削減するためにトレーニングキャンプ地を南欧から地元のシュプレーヴァルトに変更、さらに年間3万本のペットボトルをろ過システムの導入によって削減するなど、具体的な削減努力を重ねている 57。彼らもまた、2024年のドイツ・サステナビリティ賞のファイナリストである 52。

バスケットボール – アルバ・ベルリン

このクラブは、リサイクル・環境サービス企業であるALBA Group / Interzeroと30年以上にわたるパートナーシップを結んでいる 58。この関係は単なるスポンサーシップを超え、「携帯電話を寄付して、未来を贈ろう」という共同イニシアチブにまで及んでいる。このプログラムでは、ファンから回収した古い携帯電話を専門的に再生し、その収益を若者向けプログラムの資金とする一方で、資源と排出量を削減している 59。

国内の複数の主要スポーツリーグやトップクラブがサステナビリティを中核原則として採用すると、強力な「正常化効果(Normalization Effect)」が生まれる

気候変動対策はニッチなトピックではなくなり、プロスポーツマネジメントにおける期待される基準となる。これにより、「ファンがそれを期待し、スポンサーがそれを求め、メディアがそれを取り上げる」という好循環が生まれ、他のチームやリーグにも行動を促す圧力が高まる。このスポーツ横断的な勢いは、日本が積極的に育成できるものである。Jリーグ、プロ野球(NPB)、Bリーグが連携してサステナビリティ・イニシアチブを立ち上げれば、その累積的な効果は、個々の努力の総和をはるかに超える社会的認識と企業行動の変化をもたらすだろう。

3.2. 個人の力:アスリート・アクティビスト

ドイツの著名なアスリートたちは、自らのプラットフォームを活用し、単なるアンバサダーの役割を超えて、信頼性の高い活動家やプロジェクト創始者へと進化している。彼らは公の議論を大きく形成し、具体的な環境プロジェクトを推進している。

セバスチャン・ベッテル(F1)

4度のF1ワールドチャンピオンであるベッテルは、引退後、モータースポーツ界における環境保護の主要な代弁者となった。彼の活動は実践的である。主要なイベントで自身のクラシックF1マシンをカーボンニュートラルな合成燃料で走行させ 62、生物多様性の重要性を訴えるために日本の鈴鹿サーキットを含むレーストラックに昆虫ホテルを設置する「Buzzin’ Corner」プロジェクトを立ち上げた 62。

フェリックス・ノイロイター(アルペンスキー)

元スキー界のスターであるノイロイターは、子供たちの健康と運動を促進する財団を設立した 65。この活動は、気候変動、環境保護、そして子供たちの健康との関連性を明確に結びつける「Gesunde Erde. Gesunde Kinder.(健康な地球、健康な子供たち)」イニシアチブとの戦略的パートナーシップへと発展した 67。彼はまた、清潔な山と氷河を守るための国連アンバサダーにも任命されている。

ベッテルとノイロイターは、アスリートエンゲージメントの新しいモデルを体現している。彼らはスポンサーから与えられた台本を読む単なる「広報担当者」ではない。深い知識と情熱を持ち、自らプロジェクトを立ち上げ、資金を調達し、運営する、真の「ステークホルダー(利害関係者)」である。ベッテルの合成燃料に関する取り組みは、彼が属するスポーツの核心的な技術論争への直接的な介入である。ノイロイターの気候と健康の関連性への着目は、この問題を洗練された形で提起している。これは、アスリートが単なるマーケティング資産ではなく、真のパートナーでありリーダーとしてエンパワーメントされたときに、変革を加速させる計り知れない可能性を秘めていることを示している。日本のスポーツマネジメント会社やスポンサー企業は、このモデルを採用し、アスリートとより深く、よりインパクトのあるパートナーシップを育むことができるだろう。

3.3. 実現を可能にする枠組み:アライアンスと資金援助

個々のクラブやアスリートの成功は、資源を提供し、知識を共有し、野心的な目標を奨励する、支援的な国内エコシステムによって増幅される。

Sports for Future

気候変動対策に取り組むアスリート、クラブ、協会からなるアライアンス 69。植林プロジェクトなど、共同プロジェクトや統一された意見を発信するプラットフォームを提供している 69。

政府による資金援助

ドイツには、スポーツ施設を含む地方自治体の施設の持続可能な改修を支援する、特定の連邦政府プログラムが存在する 70。国家気候保護イニシアチブ(NKI)は、LED照明や高効率換気システムといった対策に資金を提供している 71。さらに、アマチュアクラブ向けに、柔軟で事務手続きの少ない資金を提供する恒久的な「スポーツのための気候基金」の設立も提案されている 70。

UEFA気候基金

EURO 2024に際し、UEFAはドイツのアマチュアサッカークラブを対象に、エネルギー、水、廃棄物削減プロジェクトへの投資を目的とした700万ユーロの基金を設立した。この基金は、プロジェクト費用の最大90%をカバーする 75。

ドイツのモデルは、クラブレベルでの行動が不可欠である一方で、そのスピードと規模は、周囲のエコシステムの質によって決定されることを示している。「Sports for Future」のようなアライアンスは、クラブが車輪の再発明をすることを防ぎ、政策提言のための統一された声を提供する。ターゲットを絞った政府の資金援助は、特に資本の限られた小規模クラブにとって、持続可能なインフラへの投資リスクを低減する。このエコシステムは、個々の野心をセクター全体の勢いに変えるために必要な知識、ネットワーク、そして資金という潤滑油を提供する「加速器」として機能する。

日本の取り組みも、協力的なアライアンスと、スポーツ庁や環境省からのターゲットを絞った資金援助を組み合わせた、スポーツのサステナビリティに特化した支援エコシステムを構築することで、大幅に増幅させることができるだろう。

第4部 日本への処方箋:ブンデスリーガからJリーグへ

この最終セクションでは、これまでの分析を統合し、日本のための具体的で実行可能なフレームワークを提示する。

4.1. ドイツのレンズを通して見る日本の根源的課題

ドイツのスポーツモデルと日本の現状を比較することで、日本の広範な脱炭素化の進展を妨げている、根本的かつシステミックな課題を特定することができる。

課題1:自主性への過度な依存 vs. 「ライセンスをレバーとする」モデル

日本の企業のサステナビリティは、コーポレートガバナンス・コードのような自主的な規範や業界の自主規制に導かれることが多い。DFLのモデルは、義務的で交渉の余地のない枠組みが、セクター全体でより迅速かつ均一な変化を推進できることを示している。

課題2:「オフセット優先」の思考 vs. 成熟への道筋

多くの日本企業は、カーボンクレジットを安易に購入し、ニュートラルを宣言する傾向がある。FSVマインツ05の事例は、その危険性を示唆し、より成熟した道筋を提示する。すなわち、安易なオフセット宣言よりも、真の削減努力と地域へのインパクトを優先することの重要性である。

課題3:分断されたインフラプロジェクト vs. 「システムとしてのスタジアム」

日本は個々のハイテク建築物には優れているが、システムとしての統合の機会を逃しがちである。SCフライブルクのモデルは、大規模インフラが地域のエネルギー・モビリティシステムの触媒となり得ることを示しており、この概念は日本の都市開発にも応用可能である。

課題4:伝統的スポンサーシップ vs. 「コモンバリュー」パートナーシップ

日本のスポーツスポンサーシップは、ブランド露出に重点が置かれすぎている。TSGホッフェンハイムの深く事業に根差したパートナーシップモデルは、企業とスポーツチームが価値を共創し、社会課題を解決するための新しいパラダイムを提供する。

課題5:統一された物語の欠如 vs. 「クラブカルチャーとしてのサステナビリティ」

多くの日本企業は強力な企業理念を持つ一方で、それをサステナビリティと本質的に結びつけることに苦労している。ヴェルダー・ブレーメンやFCザンクトパウリの事例は、サステナビリティを組織の核となるアイデンティティに織り込み、それを強力で信頼性のある物語として発信する方法を示している。

4.2. 日本のための実行可能なソリューションと斬新なアイデア

ドイツの分析に基づき、日本の移行を加速させるための一連の具体的、スケーラブル、そして時に斬新なソリューションを提案する。

政策・リーグレベルの提案

  • 「Jリーグ・サステナビリティ・ライセンス」の導入: DFLガイドラインをモデルとした、段階的かつ義務的なシステムを導入する。まずはデータ収集と戦略策定から始め、次に検証済みのパフォーマンス目標へと移行する。これが変革のための最も強力なレバーとなるだろう。

  • 「日本のスポーツのための気候基金」の設立: スポーツ庁や大手企業が元入金を提供し、官民パートナーシップとして設立する。ドイツやUEFAのモデルに倣い 70、アマチュアおよびプロクラブの持続可能なインフラ改修に助成金を提供する。

クラブ・企業レベルの提案

  • 「システムとしてスタジアム」アプローチの採用: Jリーグやプロ野球の新規または改修スタジアムにおいて、エネルギー、水、廃棄物、モビリティの統合計画を初期段階から義務付ける。

  • 「コモンバリュー」パートナーシップの試験的導入: 日本の大手企業がJリーグクラブと提携し、象徴的なサステナビリティプロジェクトを共同で創出する(例:テクノロジー企業とクラブがファン向けのスマートモビリティアプリを開発、食品会社とクラブが食品廃棄物ゼロのケータリングシステムを開発)。

  • 「クライメート・ディフェンダー」の物語の採用: FSVマインツ05のモデルに倣い、企業が単なる「ニュートラル」宣言を超え、削減の道のりと地域へのインパクトを透明性をもって伝えることを奨励する。

斬新なアイデア:「超ローカル・アップサイクリング」イニシアチブ

TSGホッフェンハイムの芝生から紙を作るプロジェクトに触発され 26、Jリーグクラブが地元の職人や小規模事業者と提携し、スタジアムの「廃棄物」からユニークな商品を開発する(例:古いゴールネットをバッグに、壊れた座席をアート作品に、食品廃棄物を地域菜園の堆肥に)。これは、低コストでエンゲージメントが高く、地域との深いつながりを築くことができるイニシアチブである。


表3:ドイツのクラブの取り組みのユースケース別比較分析

カテゴリ VfLヴォルフスブルク SCフライブルク TSGホッフェンハイム FSVマインツ05 FCザンクトパウリ
再生可能エネルギー

2011年から100%グリーン電力。太陽光発電導入計画あり 11

欧州最大級のスタジアム屋根太陽光発電システム(年間260万kWh)20

スタジアムと練習場に太陽光発電システムを設置(合計年間130万kWh)27

2010年からグリーン電力に切り替え 32

虹色の太陽光発電パネルを設置(年間28.5万kWh)44

エネルギー効率

LED投光照明(12%削減)、中央ビルエネルギー制御、ピッチ暖房に地域暖房の戻り熱を利用 14

産業排熱を利用した気候ニュートラルな地域暖房 20

LED照明への転換、ビル管理システムによるエネルギー消費の追跡 27

ISO 50001認証のエネルギーマネジメントシステムによる継続的な最適化 35

2030/31年までにスコープ1&2排出量を50%削減する目標 44

廃棄物管理/循環性

埋め立て廃棄物ゼロ、リサイクル可能なバイオカップ、サステナブルなファン商品開発 2

1996年からリユースカップシステムを導入 20

ドイツ初の「ゼロ・ウェイスト」認証スタジアム。芝生をサインカードやスマホケースにアップサイクル 25

リユースカップシステムを導入 76

PUMAと提携し、リサイクル素材からユニフォームを製造 46

水資源の保護

運河の中水を利用してピッチを灌漑し、年間最大1,700万リットルの飲料水を節約 11

節水型設備の導入と従業員向け環境トレーニング 20

芝生から紙への加工プロセスで水と化学薬品の使用を大幅に削減 26

節水型設備の導入を推進。 包括的な環境戦略の一環として水効率向上に取り組む。
持続可能なモビリティ

ファン向けにe-モビリティ充電ステーションを拡充 17

1993年から公共交通無料のコンビチケット。ドイツ初の太陽光発電自転車道を整備 20

MVV(エネルギー供給会社)と協力し、モビリティソリューションと充電インフラを整備 27

公共交通機関や自転車での来場をファンに呼びかけ 32

電気自動車メーカーSmartと提携し、持続可能なモビリティを推進 48

ファンエンゲージメント

気候ニュートラルチケットの提供、ファンとの清掃活動や植樹活動 14

観客の環境意識を高めるためのインタラクティブなゴミ箱を設置 20

ファンが1ユーロ追加でウガンダの植林に貢献できる「クライマ・チケット」 19

毎年「気候ディフェンダー週間」を開催し、ファンや地域社会への啓発を行う 37

虹色のソーラールーフは、ファンとの価値観共有とエンゲージメントの強力なツール。
サプライチェーン

インドの小規模農家が有機栽培に転換するのを支援するプロジェクトに参加 9

地域社会の持続可能なプロジェクトを支援する「FAIR ways Förderpreis」を運営 20

ウガンダで持続可能な繊維ブランドを立ち上げ、現地の経済的厚生に貢献 19

地元の持続可能性プロジェクトを05ER Klimaverteidigerパートナーと共に支援 35

PUMAとの提携により、FCSP向け製品の生産のかなりの部分を欧州に移管 47


結論:無策への最後の笛

ドイツのスポーツエコシステムは、厳格な規制、大胆なイノベーション、そして本質的な文化の統合という組み合わせが、産業全体を脱炭素化の強力なエンジンに変えることができることを証明した。この分析から明らかになるのは、スポーツが持つ独特の感情的な訴求力とコミュニティを動かす力は、日本の気候変動戦略において未だ十分に活用されていない資産であるということだ。

ブンデスリーガのクラブは、再生可能エネルギーの導入や資源の循環利用といった技術的な解決策だけでなく、ファンや地域社会を巻き込み、サステナビリティをクラブのアイデンティティそのものに昇華させることで、行動変容を促している。彼らの成功は、トップダウンの規制がボトムアップのイノベーションをいかにして引き出すか、そして、サステナビリティがコストではなく、新たな価値と商業的機会を創造する源泉となり得ることを示している。

日本がこのモデルから学ぶべきは、単一の技術やプロジェクトの模倣ではない。それは、業界全体を動かすための「システム思考」である。JリーグがDFLのような役割を担い、ライセンス制度を通じて基準を設定すること。企業がスポンサーシップを「価値共創」の機会と捉え直すこと。そして、クラブが自らの文化的ルーツとサステナビリティを結びつけ、信頼性のある物語を紡ぐこと。これらが組み合わさったとき、変革は加速する。

ドイツのスタジアムで鳴り響く歓声は、単なる試合への熱狂ではない。それは、スポーツが未来への責任を果たすことができるという、力強い肯定の声でもある。日本にとって、今こそ無策に最後の笛を吹き、スポーツという巨大なプラットフォームをGXのフィールドとして活用する時である。

よくある質問(FAQ)

Q1: ドイツのサッカークラブがサステナビリティに取り組むようになった主なきっかけは何ですか?

A1: 最も強力なきっかけは、ドイツサッカーリーグ(DFL)が2023-24シーズンから、リーグ参加ライセンスの取得要件としてサステナビリティに関する基準の遵守を義務付けたことです 1。これにより、すべてのクラブが体系的に取り組むことが不可欠となりました。ただし、VfLヴォルフスブルクやFSVマインツ05のように、それ以前から自主的に先進的な活動を行ってきたクラブも存在します 7。

Q2: クラブがサステナビリティに取り組むための費用はどの程度かかりますか?

A2: 費用は取り組みの規模によって大きく異なります。SCフライブルクの新スタジアムのような大規模なインフラ投資は多額の費用を要しますが、これはスタジアム建設という特殊な機会を捉えたものです。一方で、LED照明への交換や節水設備の導入は比較的低コストで高い効果が期待できます。また、FCインテルナツィオナーレ・ベルリンのように、予算が限られるアマチュアクラブでも、コミュニティとの連携や教育活動といった「ソフト面」の取り組みで全国的な評価を得ることが可能です 53。さらに、ドイツでは政府やUEFAによる補助金制度も整備されており、初期投資の負担を軽減しています 73。

Q3: これらのドイツのモデルは、文化や経済構造が異なる日本でも応用可能ですか?

A3: はい、応用可能です。重要なのは、個々のプロジェクトをそのままコピーするのではなく、その背景にある「変革のメカニズム」を理解し、日本の文脈に合わせて適用することです。例えば、「ライセンスをレバーとする」というDFLの規制モデルはJリーグに、「コモンバリュー」パートナーシップは日本の企業とクラブの関係に、そして「クラブカルチャーとの融合」は日本の企業の理念経営に応用できます。技術的な解決策(太陽光発電、廃棄物管理など)は普遍的であり、日本の技術力をもってすれば、さらに高度化させることも可能でしょう。

Q4: 日本のスポーツクラブがサステナビリティに取り組むための最初のステップは何ですか?

A4: 最初の、そして最も重要なステップは、自らの現状を把握することです。具体的には、エネルギー消費量、水使用量、廃棄物排出量、そしてファンやチームの移動に伴うCO2排出量など、自クラブの環境フットプリントを測定・算定することから始めます。これにより、どこに最も大きなインパクト(と削減の機会)があるのかが明確になります。DFLも各クラブにデータ収集を義務付けており 2、これがすべての戦略の基礎となります。

Q5: ファンはクラブのサステナビリティ活動にどのように貢献できますか?

A5: ファンは非常に重要な役割を担います。公共交通機関や自転車を利用してスタジアムへ行くこと、スタジアムでのゴミの分別に協力すること、リユースカップシステムを利用することなどが直接的な貢献です。さらに、TSGホッフェンハイムの「クライマ・チケット」のように 19、クラブが提供するサステナブルな選択肢を積極的に利用することも大きな支援となります。最終的には、サステナビリティに真摯に取り組むクラブを応援し、その活動を支持する声を上げることが、クラブの取り組みをさらに後押しする力になります。

ファクトチェック・サマリー

本レポートで言及された主要な事実とデータは、以下の出典に基づいています。

  • DFLのサステナビリティガイドライン: ブンデスリーガと2.ブンデスリーガは、主要プロサッカーリーグとして世界で初めて、ライセンス規定にサステナビリティガイドラインを義務付けました(2023-24シーズンから施行)1。2025-26シーズンからは、基準遵守の独立した証明が必要となります 6

  • VfLヴォルフスブルク: 2030年までにGHG排出量を55%削減(2017-18年比)する目標を掲げています 11。運河の中水を利用して年間最大1,700万リットルの飲料水を節約しています 11

  • SCフライブルク: 新スタジアムの太陽光発電システムは年間約260万kWhを発電します 20。スタジアムの暖房は、隣接工場の産業排熱を利用した地域熱供給で賄われています 20

  • TSGホッフェンハイム: PreZeroアレーナはドイツ初の「ゼロ・ウェイスト」認証スタジアムであり、リサイクル率は約90%です 24。ファンは「クライマ・チケット」を通じてウガンダの植林プロジェクトに貢献できます 30

  • FSVマインツ05: 2010年に世界初の「カーボンニュートラル」クラブとされましたが 32、2023年にこの呼称の使用を中止し、「気候ディフェンダー」としての活動に移行しました 34

  • ヴェルダー・ブレーメン: スタジアムの太陽光発電システムは年間約80万kWhを発電します 19。2040年までのネットゼロを目標としています 39

  • FCザンクトパウリ: 虹色の太陽光発電パネルを設置し、年間約28万5,000kWhを発電、約140トンのCO2を削減します 45

  • FCインテルナツィオナーレ・ベルリン1980: アマチュアクラブでありながら、2024年のドイツ・サステナビリティ賞(スポーツ経済部門)を受賞しました 53

  • フュクセ・ベルリン(ハンドボール): 2021-22シーズンのCO2排出量は650トンでした 57。トレーニングキャンプ地を変更し、移動に伴う排出量を削減しています 57

  • セバスチャン・ベッテル(F1): 生物多様性を訴えるため、日本の鈴鹿サーキットに昆虫ホテルを設置する「Buzzin’ Corner」プロジェクトを立ち上げました 63

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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