「道路脱炭素化基本方針案」と改正道路法の現状・課題・解決策を徹底解説(2025年)

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

エネがえるEV/V2H
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「道路脱炭素化基本方針案」と改正道路法の現状・課題・解決策を徹底解説(2025年)

日本政府は2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目標に掲げ、運輸部門(国内排出量の約18%)の脱炭素化を急務としています。

中でも道路分野は、自動車からのCO2排出が大部分を占める重要領域です。この記事では、2025年最新の国土交通省「道路脱炭素化基本方針案」および改正道路法に基づく取り組みを分析し、現状や課題、根源的なイシューと解決アイデアを解説します。

道路脱炭素化に関する最新データを参照しながら、難解な専門用語も平易に紐解き、ありそうでなかった実効性のあるソリューションも提案します。「道路 脱炭素化」というキーワードで充実の内容でお届けします。

国交省「道路脱炭素化基本方針案」とは?

道路脱炭素化基本方針案とは、国土交通省が2025年6月に公表した、道路分野の脱炭素化推進に向けた基本方針の草案です。この基本方針案は、2025年10月に予定される改正道路法の施行に合わせて正式策定される見込みで、全国の道路管理者(国、NEXCO等の高速道路会社、自治体)に対し、この基本方針に基づいた**「道路脱炭素化推進計画」の策定を求めるものです。言い換えれば、国がロードマップとなる基本方針を示し、それぞれの道路管理者が具体的な脱炭素計画を立てて実行する新たな枠組みです。

改正道路法で何が変わるのか?

2025年4月に公布された改正道路法では、道路分野の災害対策やメンテナンス方針に加えて環境対策(脱炭素化)が新たに盛り込まれました。改正のポイントは大きく2点あります。

  • (1) 基本方針と推進計画の制度化: 改正法では国土交通大臣が道路脱炭素化推進の基本方針を定め(道路法第48条の66)、道路管理者はそれに基づく脱炭素化推進計画を策定することが義務化されました。これにより、国から地方まで一貫した脱炭素化の目標設定と施策展開が行われることになります。国は各管理者向けに計画策定の手引き(マニュアル)も作成し、小規模自治体には共同計画策定も認める柔軟性を設けています。道路管理者が策定した計画は国へ報告され、進捗管理がなされる仕組みです。

  • (2) 道路空間の活用緩和: 脱炭素技術を道路で活用しやすくするため、道路占用許可の基準緩和が行われます。具体的には、太陽光パネルやEV充電設備、走行中給電装置など「脱炭素化に資する施設」を道路空間に設置する際の規制を緩和するものです。従来は道路法上、道路占用(道路敷地の一部を本来の交通以外の目的に使うこと)の許可基準が厳しく、道路上に設備を設置するハードルが高い状況でした。改正により、道路構造の原則に「脱炭素化への配慮」を位置付け、計画に基づく再エネ設備等の設置を促進できるようになります。これによって、民間事業者が道路空間を活用して発電設備や充電インフラを設置する取り組みが進み、官民協働で道路の脱炭素化を推進しやすくなるでしょう。

以上の制度変更により、日本の道路行政は「安全・防災」「老朽化対策」に加えて「環境・脱炭素」が三本目の柱として明確に据えられました。では、この基本方針案で具体的にどのような目標と施策が掲げられているのか、詳しく見ていきます。

基本方針案の目標:2040年度にCO2を73%削減

国交省の基本方針案では、ロードマップとなる数値目標として「2013年度比で2030年度に46%削減、2035年度に60%削減、2040年度に73%削減」という野心的な中長期目標が示されています。これは日本全体のNDC(2030年46%減)や2050年カーボンニュートラルと軌を一にする水準で、道路分野もその達成にしっかり貢献する姿勢を明確にしたものです。

特に2040年度に73%減という目標は、2050年に実質ゼロに到達するための中継目標として非常に高い水準です。背景には、道路は日本のCO2排出量の約18%を占める大きな源であり、ここを減らさないと2050年目標達成は困難だという問題意識があります。また、温室効果ガス削減だけでなく、大気汚染の改善やエネルギー安全保障の観点からも、交通部門の電動化・脱炭素化は喫緊の課題です。

さらに、2030年度までの短期目標として、国直轄道路での照明LED化と道路関係車両(維持作業車など)の電動化をそれぞれ100%達成することも掲げられました。公共インフラで率先して省エネ型設備や電動車を導入することで、民間にも波及効果を狙うものです。LED街路灯は従来の照明より消費電力を約56%削減でき、維持管理コストも抑えられます。道路維持車両も電動化することで排ガスゼロ・騒音低減を図り、沿道環境改善につながります。

しかし、現状の課題として、日本国内のEV(電気自動車)普及率はまだ低水準です。2024年のEV新車販売台数は約6万台で、全体の1.4%に留まりました。これは欧州のBEV(純粋な電気自動車)新車販売シェア13%、中国の27%などと比べ大きく遅れています

こうした状況を踏まえ、政府はEV・次世代車の普及前提で道路側のインフラ施策を強化し、「鶏と卵」問題を解消しようとしています。つまり、「EVが少ないから充電器が増えない、充電器が少ないからEVが増えない」という悪循環を断ち切り、まずは道路側で積極的に充電インフラやエネルギー供給の場を整備することでEV普及を後押しする戦略です。

基本方針案に盛り込まれた具体的施策

基本方針案では、道路の建設・管理・利用の各段階でCO2排出を削減するための具体的施策の方針が幅広く提示されています。主な柱として、以下のような施策群が掲げられました。

  • ① 次世代自動車の普及促進(道路空間での発電・充電): 電気自動車(EV)や燃料電池車などの普及を後押しするため、道路空間を活用した再生可能エネルギー発電や送電・給電設備の導入を推進します。具体策として、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや一般道の「道の駅」への充電スタンド設置を加速させます。遠距離移動でもEVが安心して走れるよう、主要道路網に沿った充電網構築が重要です。また、後述する「走行中給電システム」(ダイナミック充電)のような、新技術の実証にも国が主導で取り組みます。さらに、道路管理施設(トンネル換気施設や信号機センター等)にも太陽光パネルなどを設置し、自らエネルギーを生み出すインフラへの転換を図ります。これらは「エネルギーの地産地消」にもつながり、災害時の非常電源にもなり得ます。

  • ② 道路交通の適正化(需要管理・渋滞対策): 道路上の無駄なCO2排出を減らすため、渋滞のボトルネック箇所の対策が講じられます。例えば慢性的に渋滞する交差点の改良、ボトルネックとなる車線絞り込み区間の解消、ITS技術を活用した信号制御の最適化、高速道路料金所のETC化などです。渋滞中のアイドリングに伴うCO2排出は、日本全体の約1.3%にも達するとの試算があり、渋滞緩和は脱炭素と経済損失削減の一石二鳥となります。また需要マネジメントとして、都市部へのロードプライシング(混雑料金)導入や、テレワーク推進によるピーク交通量の低減なども将来的な検討課題です。さらに基本方針案では、自転車利用の促進も施策例に挙げられました。自転車レーン整備やシェアサイクル推進で短距離移動をクルマからシフトさせれば、CO2削減と健康増進に寄与します。

  • ③ 道路インフラ自体の脱炭素化(建設・維持管理): 道路そのものを造る・維持する段階から排出削減するため、低炭素型の資材や工法、建設機械の導入を進めます。具体的には、アスファルト合材の製造温度を通常より約30℃下げる「低炭素アスファルト」の活用です。加熱温度を下げると製造時の燃料消費が減り、その分CO2排出を約15%削減できるとのデータがあります。実際に国内では中温化技術により30~40℃温度低減しても品質を確保できる舗装が開発され、CO2排出を最大18%削減できた事例も報告されています。国土交通省はこうした新技術の現地実証を主導し、技術基準作りに活かすとしています。また、道路構造物に使用するコンクリートの低炭素化(セメント製造時のCO2削減技術や、CO2を吸収する新素材の活用など)も重要テーマです。さらに、建設機械の脱炭素化も掲げられました。具体策として、電動ショベルや電動ローラーなどの導入、あるいは再生可能燃料(バイオディーゼルや水素燃料)の活用促進が考えられます。欧州では建機の電動化が進みつつあり、日本でも大手メーカーが電動建機・水素建機を試作中です。これら低炭素建機の普及は、工事現場のCO2と大気汚染物質を減らし、作業環境(騒音・排ガス)改善にもつながります。加えて、道路照明のLED化(省エネ)や道路維持作業の効率化(ICT活用による巡回最適化等)も推進し、トータルで道路管理業務のカーボンフットプリントを下げていきます。

  • ④ 脱炭素技術の実証と導入促進: 基本方針案では、「革新的技術の活用」が大きな柱となっています。国が率先して新技術の実証実験を行い、得られた知見を技術基準やガイドラインに反映させていく考えです。注目の技術が以下のとおりです。

    • 走行中給電システム(ダイナミックチャージング): 道路に埋設した送電コイルから、走行中または停車中のEVへ非接触で電力を送る技術です。「走りながら充電」できれば、EVは巨大なバッテリーを積む必要がなくなり車両価格の低減にもつながるため、世界各国で実用化競争が進んでいます。日本でも2024年度から千葉県柏市の公道(柏の葉スマートシティ)で東大や企業による実証実験が開始されました。この実験では、一般的なEVに受電コイルを取り付け、交差点などで10秒間コイル上に留まれば約1km走行分の電力を充電できることを検証します。車両が近づいた時だけ自動で送電する制御や、コイル・路面の耐久性も含めて検証し、将来の標準化に必要なデータを収集しています。海外では、スウェーデン政府が2035年までに走行中給電可能な高速道路網を3000km整備する計画を発表するなど、インフラ規模での展開も始まっています。2023年5月にはトヨタ自動車がイスラエル企業と共同開発したワイヤレス給電システムで、プラグインハイブリッド車RAV4を用い100時間・約2000kmの連続走行充電に成功するなど技術は着実に前進しています。日本もこれら最先端事例にキャッチアップすべく、国内実証を通じた技術確立と標準規格づくりへの貢献を目指しています。

    • ペロブスカイト太陽電池: 次世代の超軽量・柔軟な太陽光発電技術として期待されるのがペロブスカイト型太陽電池です。フィルム状にできて薄くて軽く、曲げられるのが特長で、シリコンパネルでは設置が難しい場所(建物の壁面や既存インフラの表面)にも適用できます。重量は従来パネルの1/10、厚さ1/20程度と極めて軽量薄型で、既存の防音壁や橋桁などに追加荷重をほとんどかけずに貼り付けられます。発電効率は現時点でシリコンにやや劣るものの、低コストな印刷プロセスで大量生産に向き、使用材料に日本が世界シェア3割を占めるヨウ素を使うため特定国に依存しないサプライチェーンを構築できる強みもあります。政府も「将来性が期待できる技術」として早期実用化を後押ししています。国交省は道路分野での活用として、例えば高速道路の防音壁や道路法面へのペロブスカイト太陽電池設置を視野に入れており、既にJR東海は新幹線防音壁にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を貼り付けた実証を開始しました。軽量ゆえに既存構造物を発電パネル化できるこの技術は、土地の限られた日本で「インフラそのものを発電所化」する切り札となり得ます。課題だった耐久性も徐々に改善しており、積水化学工業が開発したフィルム型では屋外10年相当の耐久性を実証済み、2025年度中に幅1mシートの実用化、2030年までに変換効率18%・耐久20年超を目指す計画です。防音壁と太陽電池で耐用年数が異なるため、ガイドレール式で容易にパネル交換できる設計も工夫されています。国交省はこうした新技術の実証結果を踏まえ、道路への本格導入に向けた基準整備や民間投資の促進策を検討していく方針です。

    • その他の先進技術: 上記以外にも、道路分野ではCO2吸着機能を持つ舗装材(走行中に大気中のCO2や大気汚染物質を吸収する特殊舗装)や、蓄電デバイスの活用(路面下に蓄電池を置き信号や照明の電源に再生エネを利用)、さらには廃熱利用(夏場熱くなる舗装から熱エネルギーを回収する技術)など、様々な研究開発が進んでいます。国交省は「i-Construction」などデジタル技術とも連携し、これら革新的ソリューションの社会実装を今後支援していくと考えられます。

以上、基本方針案には幅広い施策群が網羅されており、単なるスローガンではなく具体的で測定可能なターゲット実行可能な手段が提示されている点が特徴です。言い換えれば、「何をどれだけ減らすか」「そのために何をするか」が明確化されました。これは世界的に見ても包括的なロードマップであり、日本の道路脱炭素化の方向性を示す青写真となっています。

しかし、壮大な計画を実行に移す段階では、多くの課題やボトルネックが存在します。次に、こうした課題点と根源的なイシューを掘り下げ、その解決アイデアを探っていきましょう。

現状の課題とボトルネック解析

ロードマップは描かれたものの、実現への道筋にはいくつものハードルが予想されます。ここでは技術面・制度面・社会面それぞれの課題を整理し、本質的なイシューを明らかにします。

1. EV普及とエネルギー供給のジレンマ

最大の課題はEVの普及ペースクリーン電力供給の問題です。前述の通り日本のEV普及率は1~2%程度と低く、2030年代にガソリン車に代わる主力とするには飛躍的な普及が必要です。自動車メーカー各社もEV戦略を加速し始めましたが、国内メーカーはハイブリッド車に注力してきた経緯もあり、欧米中に比べてEVラインナップが少ない現状があります。消費者側も航続距離や充電時間への不安が根強く、需要側と供給側双方のテコ入れが必要です。

一方、仮にEVが急増した場合、その電力は本当にクリーンかという問題があります。現状、日本の発電電力量に占める再生可能エネルギーは約20%強(2019年度実績でFIT電源含め22%)で、火力発電依存が依然として高いです。EV自体は走行時ゼロエミッションでも、電力が化石燃料由来では排出の押し付けに過ぎません。したがって電力セクターの脱炭素化(再エネ拡大・電源非化石化)との歩調を合わせることが不可欠です。

この点で、道路空間に太陽光発電を導入したり、充電ステーションに蓄電池を置いて再エネ電力でEV充電する仕組みは理にかなっています。

例えば「道の駅」を地域のエネルギーハブと位置付け、太陽光+蓄電池+EV充電器を組み合わせれば、日中は太陽光で発電しEVに給電、余剰電力は蓄電し夜間照明に利用、災害時は非常用電源にもなる、といった多機能拠点となり得ます。こうしたエネルギー・交通統合のモデルを各地に作ることが、再エネ普及とEV拡大の双方を促す鍵となるでしょう。

2. 新技術の実用化とコスト

ダイナミック充電やペロブスカイト太陽電池など、期待が高い新技術の実用化にも課題があります。技術的なフィージビリティは徐々に証明されつつあるものの、大規模展開する際のコストや標準化の問題が残ります。

例えば走行中給電は、道路へのコイル埋設や電源設備など初期投資が莫大になる可能性があります。限られた道路区間(例えば高速道路の特定レーンなど)から導入し、コスト削減と効果検証をしながら段階的に拡大する戦略が必要でしょう。また、車両側の受電コイル搭載にも標準規格が要ります。国際標準が確立していない現状では、日本独自仕様にするとガラパゴス化する懸念があるため、欧米中の動向を見据えたグローバル標準づくりへの参画が望まれます。トヨタが海外スタートアップと協業した例は、そうした標準化戦略の一環とも言えます。

ペロブスカイト太陽電池も、材料の耐久性(劣化や封止の問題)や鉛含有の環境影響など課題が残ります。しかしこれらは研究開発で解決可能であり、実用化の見通しは明るいと言えます。問題はコストと量産です。現時点では実証段階ゆえコスト高ですが、印刷技術でロール状に大量生産できれば、シリコンパネルを凌ぐ低コスト化も夢ではありません。それでもなお、インフラに広範囲に貼るとなると初期費用は巨額になります。ここで重要なのは費用対効果の高い適用箇所を選定することです。例えば、日当たりが良く面積の大きい高速道路沿いの防音壁や法面はペロブスカイト適用の好適地です。またトンネル坑口上部や料金所上屋など、これまで未活用だった空間にも展開できるでしょう。国としては実証を通じ、どのような場所でどの程度発電し、何年で回収できるかデータを集めることで、投資判断の指針を示すことが求められます。

低炭素アスファルトに関しては、技術自体は確立しつつあるものの、普及には業界の慣習も障壁となり得ます。舗装工事では長年の施工経験が重視され、新技術に慎重な面があります。中温化混合物は施工性も確保され品質に問題ないことがデータで示されていますが、現場技術者の理解醸成やプラント改造投資など乗り越えるべき課題があります。ここは国主導で標準仕様化し発注案件で採用を促す、補助金で設備更新を支援する等の措置が必要でしょう。実際、国交省直轄工事では低炭素型の新技術を積極採用する姿勢を打ち出しています。

3. 地方自治体・中小事業者の対応力

全国津々浦々の道路を管理するのは各自治体や道路会社ですが、そのリソースと技術力の差も課題です。大都市や大手高速会社は比較的人的・財政的余裕がありますが、地方の小規模自治体では専門人材も限られ、脱炭素計画を立てて実行する負荷は小さくありません。改正道路法では小規模自治体は共同で計画策定可能としましたが、それでも計画倒れにならないよう国の継続的な支援が不可欠です。

具体的には、国主導でモデル事例を示したり、各地整備局が自治体のコンサル役となって技術支援することが考えられます。さらに、財政支援も重要です。充電器設置や照明更新、電動車調達などには初期投資が必要であり、これを各自治体任せにすると進捗に格差が生じてしまいます。政府はすでに「グリーン改革予算」などで脱炭素関連の補助金枠を設けていますが、道路分野向けにも特化した交付金やインセンティブ制度を設け、計画達成度に応じて配分する仕組みなどを検討して良いでしょう。

また、中小の道路維持・建設業者にも脱炭素の波を浸透させる必要があります。建設機械の電動化などはゼネコンや大手リース会社でないと設備投資が難しい側面があります。そこを支援する政策(例えば電動建機のリース料補助や、使用燃料をバイオ燃料に転換する際の助成など)があれば、中小企業でも取り組みやすくなるでしょう。サプライチェーン全体で脱炭素化を進めないと、実質的な排出削減には繋がらないため、業界横断の支援策が望まれます。

4. 社会受容性と利用者の意識

新たな技術や施策を導入する際、社会の受容性や利用者の理解も欠かせない視点です。例えば道路へのソーラーパネル設置では、「眩しさで運転に支障ないか」「景観を損ねないか」といった声が出るかもしれません。また、走行中給電のために特定レーンを工事すると渋滞が一時的に悪化する懸念などもあります。こうした場合、事前に安全性を検証し丁寧に周知・説明することで不安を和らげることが重要です。

さらに、渋滞対策としてロードプライシング(混雑課金)や高速料金の変動制などを導入しようとすれば、利用者負担が増えるため反発も考えられます。そこで、「渋滞削減により結果的に燃料代や時間の節約になる」「得られた財源は公共交通や環境対策に充てる」といった効果と還元を示すことが必要でしょう。欧州の都市では既に実施例があり、渋滞と排ガスが大幅に改善したケースもあります。日本でも社会実験から始め、段階的に導入可否を探るアプローチが考えられます。

利用者の意識改革も求められます。エコドライブ(ふんわりアクセル・不要なアイドリングストップ等)やタイヤ空気圧管理など、小さな心がけで交通由来のCO2排出は削減できます。行政はドライバーへの啓発やインセンティブ提供(エコドライブ診断アプリでポイント付与等)によって、利用者参加型の脱炭素を促進すると効果的です。今後は「道路協力団体制度」を活用し、地域のボランティアや企業と協働して道路清掃・美化だけでなく、道路林の植樹やソーラーロードの維持管理などに参画してもらうなど、地域ぐるみの取組へと発展させることも期待されます。

5. 全体最適の視点とシステム思考

最後に、課題の根本にあるシステム全体の最適化について触れます。道路脱炭素化はあくまで手段であり、究極の目的は温室効果ガス排出を減らし気候変動を抑制することです。そのためには、道路だけではなく交通全体系の最適化が必要です。専門的には「Avoid(交通需要回避)」「Shift(モード転換)」「Improve(技術改善)」の3つのアプローチを統合することが重要とされます。

今回の基本方針は主に技術改善(Improve)と一部モード転換(Shift、自転車促進)を扱っていますが、長期的には都市構造の見直しや公共交通充実による自動車需要そのものの適正化(Avoid)も避けて通れません。

また、2050年カーボンニュートラルに向けて、日本全体で足並みを揃える必要があります。例えば、自動車そのもののゼロエミッション化(乗用車・商用車を含め2035年以降新車は全て電動車にする政策目標など)や、電力100%脱炭素化など他分野の取り組みともリンクさせ、システム思考で政策を設計することが重要です。道路分野だけCO2削減しても、他分野で増えては意味がありません。逆に、道路インフラが変わることで新たな価値創出も可能です。EVが普及すれば車載バッテリー群が巨大な分散型蓄電池となり、V2G(Vehicle to Grid)技術で電力網の調整に活用できるようになります。再エネが余る時間帯にEVに給電し、需要期にEVからグリッドに戻すことで、再エネ大量導入時代の調整力として機能し得るのです。道路上のEV充電インフラは将来こうしたエネルギーマネジメントにも関与してくるでしょう。

加えて、適応策との統合も見逃せません。気候変動による豪雨・災害が頻発する中、道路インフラの強靭化と脱炭素化は両輪で進める必要があります。例えば道路沿いに植栽帯を整備すればCO2吸収源になるとともに、ヒートアイランド緩和や雨水流出抑制にも役立ちます透水性舗装やクール舗装の導入も、夏季の路面温度低減と建物冷房負荷軽減につながりますシステム全体で相乗効果を生む設計が、最終的なゴール達成には不可欠なのです。

以上のように、技術・制度・社会それぞれの課題がありますが、それぞれクリアする方策も見えてきます。では次に、これら課題を乗り越え道路脱炭素化を加速するための具体的な解決アイデアと今後の展望を示します。

解決アイデアと今後の展望

前節で洗い出した課題に対し、ここでは実効性のある解決策や新たな発想によるソリューションを提案します。日本の道路脱炭素化を世界最高水準で推進していくためのキーとなるアイデアや政策オプションをまとめます。

1. インフラ投資とグリーンファイナンスの活用

大規模な設備導入には資金が不可欠です。そこで、政府予算に頼るだけでなくグリーンファイナンスを活用する発想が重要です。具体的には、道路公社や自治体が発行するグリーンボンド(環境債)で資金調達し、調達資金を充電インフラ整備やLED化プロジェクトに充てる方法があります。ESG投資マネーを呼び込むことで、財政に負担をかけず一気に資金を集めることが可能です。実際、海外では自治体がグリーンボンドで街路照明LED化を実現した例もあります。また、民間企業の余剰資金をインフラ運営に誘導する官民連携スキームも有望です。道路占用基準の緩和によって、例えば電力会社や再エネ事業者が高速道路の斜面に太陽光パネルを設置し発電事業を行う、といったモデルも考えられます。この場合、民間は売電収入を得つつ道路側に電力供給し、道路管理者は設備投資なしで再エネ電力を利用できるWin-Winの関係となります。こうしたPPP(Public-Private Partnership)の枠組みを積極的に構築することが解決策の一つです。

2. モデルケース創出とナレッジ共有

技術導入や制度運用で成功事例を作り、それを水平展開する戦略が有効です。例えば、「脱炭素道路モデル事業」として、全国から数区間を選び集中的に先進施策を投入します。高速道路のあるサービスエリアでは、太陽光と蓄電池で運営するエネルギー自給型スマート休憩所を実現する。地方のある自治体では、幹線道路で低炭素アスファルトと電動建機のみを使ったゼロエミッション舗装工事を行う。都市部のある道路では、AI信号制御やカーシェア連携で渋滞ゼロ・最適交通を達成する。――こうした尖ったモデルケースを作り、定量的な成果データを収集します。それを国交省が中心となってナレッジ共有し、ガイドラインや設計マニュアルとして全国に展開すれば、各地で迷わず実践できるようになります。

また、人材育成も重要です。地域の技術系職員向けに脱炭素道路アカデミーのような研修プログラムを作り、最新技術や計画策定のノウハウを学べる場を提供します。産学官連携でロードマップ策定を演習する場を設け、自治体職員・大学研究者・コンサルが一緒にプランを練ることで実効性の高い計画が生まれるでしょう。知見の共有と人材ネットワーク形成が解決の鍵です。

3. ユーザビリティの向上とインセンティブ設計

利用者視点に立った施策デザインで、無理なく脱炭素に誘導することも大切です。例えば、EVドライバーにとって充電ストレスを減らす工夫として、充電スタンドのリアルタイム空き情報提供予約システムの導入があります。高速道路会社のアプリ等で、先の休憩所の充電器が何台空いているか表示し、必要なら予約できるようにすれば「寄ったのに満席だった」という無駄走行を減らせます。また、充電時間に応じた課金を細かく設定し、長時間の占有を防ぐ施策も考えられます(EV普及初期にはマナーの問題も顕在化するため)。

エコドライブ推進には見える化報酬が効きます。車載テレマティクスやスマホアプリで運転のエコ度をスコア化し、良いドライバーには保険料割引やポイント付与するといったインセンティブをつけるのです。国交省が中心となり保険会社やテレマ業界と協定を結べば、全国規模で展開できます。欧米ではUBI(運転行動連動型保険)が普及しつつあり、日本でも脱炭素目的でこれを拡大して良いでしょう。

渋滞対策では変動料金快適走行の両面で誘導します。例えば高速道路料金をピーク時高く・オフピーク時安く設定し時間シフトを促す一方、ピークを避けた車には道路上の電子表示板で「現在は渋滞なし、快適走行できます!」とポジティブメッセージを出すなど、心理的満足感も与えます。人は混雑を避けたい気持ちと、お得感・特別感に動かされる側面があるため、このようなソフト施策は案外効果を発揮します。

4. 規制と支援のハイブリッド政策

脱炭素化を確実に進めるには、アメとムチ双方の政策が必要です。まず規制(ムチ)としては、一定時期以降の高燃費車の新規登録禁止(例えば2035年以降ガソリン車新車販売禁止)や、トラックの排出基準強化タイヤやオイルの低炭素製品使用の義務化などが考えられます。すでにEUやカリフォルニア州では2035年にガソリン車販売禁止が決まっており、日本も国際的な流れに合わせる可能性があります。規制は強力ですが、産業や生活への影響を考慮しつつ段階的に導入することが肝要です。

一方、支援策(アメ)としては、購入補助金や税制優遇があります。現在もクリーンエネルギー自動車導入補助金が出ていますが、予算を拡充し2030年頃まではEV購入補助を手厚くするくらいの思い切った支援があっても良いでしょう。また道路管理者向けには、脱炭素化推進計画の達成度に応じて交付税措置や補助金加算を行う仕組みも有効です。これにより自治体のモチベーションが上がり、計画の実現性が高まります。

カーボンプライシングの導入も長期的には避けられません。燃料への炭素税強化や排出量取引で、CO2排出に価格を付けることで、経済全体を脱炭素へ誘導します。自動車燃料への課税を上げるのは政治的にハードルが高いですが、炭素税収をすべて国民に還元する炭素税(カーボン・キャッシュバック)などの方式を取れば受容されやすいとの研究もあります。将来的には道路セクターも排出削減目標達成のために経済的手法を導入することになるでしょう。

5. イノベーションと創造力で未来志向の道路へ

最後に、創造的な発想で道路の価値を再定義する未来像を描いてみます。脱炭素化は単なる環境制約ではなく、道路を次世代インフラへアップグレードするチャンスでもあります。

例えば、「エネルギーを生み出す道路」。ソーラーパネルだけでなく、風の強い橋梁上に小型風車を設置したり、車の振動で発電する圧電素子を路面に埋め込む試みも考えられます。これら一つ一つの発電量は小さくても、全国数十万kmの道路ネットワークで集めれば大きなエネルギー源になります。

デジタルと融合した道路」という視点もあります。道路にセンサー網を張り巡らせ、交通量・速度・環境データをリアルタイム収集しAIで最適制御するスマート道路は、渋滞や事故を激減させCO2を削減するだけでなく、物流効率化や快適性向上という副次効果も生みます。データを匿名加工してマーケットに提供すれば、新たなビジネスモデルも創出可能です。

自然共生の道路」も未来志向のコンセプトです。道路法面に太陽光と一緒に地域特産の花を植え観光資源化する、街路樹をCO2吸収だけでなく夏はミスト散布で気化熱冷却する装置と組み合わせヒートアイランド対策とする、などグリーンインフラの考え方を取り入れます。脱炭素と生物多様性保全を両立する道路は、SDGs時代にふさわしいインフラ像でしょう。

そして究極的には、自動車偏重から人中心の街づくりへの転換も視野に入ります。便利さを保ちつつ車の走行距離自体を減らしていければ、それが最も確実なCO2削減になります。コンパクトシティ化や公共交通充実、モビリティサービス(MaaS)の普及により、将来的には「道路が静かでクリーン、渋滞もない」という社会が実現できるかもしれません。道路そのものも電線地中化や緑地帯整備で美しくなり、人々が歩きたくなる空間となれば、車依存からの脱却にもつながります

このように、システム思考とラテラル思考で視野を広げれば、道路脱炭素化は単なる排出削減プロジェクトではなく、街づくり・暮らし改革の起爆剤になり得るのです。日本は高度経済成長期に全国に道路網を整備し豊かさの基盤を築きましたが、今度はその道路網を21世紀型にアップデートするタイミングに来ています。脱炭素化という世界的なメガトレンドを追い風に、どこよりも構造的で詳細な戦略を持って挑めば、日本の道路行政は再び世界をリードできるでしょう。

FAQ(よくある質問と回答)

Q1. 改正道路法で道路管理者に求められることは何ですか?

A: 改正道路法(2025年施行予定)では、国の基本方針に基づき各道路管理者(国、NEXCO、都道府県市町村など)が「道路脱炭素化推進計画」を策定することが義務化されます。また道路構造の原則に脱炭素化への配慮が追加され、脱炭素化に資する設備(太陽光パネルや充電設備等)の道路占用許可基準が緩和されました。要するに、国のガイドラインに沿った脱炭素計画を作り、それを実行していく責務が各管理主体に課される形です。

Q2. 道路脱炭素化基本方針案の数値目標はどの程度高いのですか?

A: 基本方針案では、2013年度比で2030年度にCO2を46%削減、2040年度には73%削減する目標が掲げられています。2040年に73%減というのは、日本全体の2050年カーボンニュートラル(100%減=実質ゼロ)に匹敵する非常に高い水準です。2030年46%減は日本のNDC目標と同じで、道路分野も他部門と足並みを揃えて削減を進める計画です。また2035年度に60%減という中間目標も設定され、5年ごとに着実な削減を図る姿勢が示されています。

Q3. EVの走行中給電システムとは何ですか?

A: 走行中給電システム(ダイナミックチャージング)とは、道路上に設置した送電装置から走行中の電気自動車にワイヤレスで電力を送り、走りながら充電できるようにする技術です。スマホのワイヤレス充電の車版と考えると分かりやすいでしょう。車両底部に受電コイルを設置し、道路埋設の送電コイルに近づくと非接触で電力伝送が行われます。日本では2024年度から千葉県柏市の公道で東大などによる実証が始まり、コイル上に10秒停車すれば1km走行分を充電できる性能が確認されています。この技術が実用化すればEVは大型バッテリーを積む必要がなくなるため、車両価格低減や軽量化による電費向上が期待できます。現在各国で実証中で、スウェーデンでは2035年までに3000kmの電化道路網を整備する計画も進んでいます。

Q4. ペロブスカイト太陽電池とは何ですか?道路でどう活用するのですか?

A: ペロブスカイト太陽電池は、新しい材料(ペロブスカイト構造の化合物)を用いた薄膜状の太陽電池です。非常に薄くて軽く、曲げられる柔軟性を持つのが特徴で、従来のシリコンパネルでは難しかった場所にも設置できます。例えば建物の壁面や高速道路の防音壁にシート状に貼り付けて発電するといった応用が可能です。シリコンより変換効率はまだ低めですが、フィルムをロール印刷で大量生産できるため低コスト化が期待されています。道路分野では、未活用だった広い面積(法面や遮音壁、橋桁など)を発電スペースとして活用できる技術として注目されています。JR東海が新幹線防音壁で実証中で、重量1/10の軽さゆえ既存構造物に追加負荷をかけずに設置できています。国交省はこの技術の実証結果を踏まえ、道路インフラへの本格導入を検討していく方針です。

Q5. 低炭素アスファルトとは何ですか?

A: 低炭素アスファルトとは、舗装に使うアスファルト合材を通常より低い温度で加熱製造することで製造時のCO2排出を減らしたアスファルト混合物のことです。典型的には従来160~170℃で製造するところを、130~140℃程度(30~40℃低減)で混合できる添加剤や発泡技術を用います。それによって加熱に必要な燃料を節約でき、CO2排出量を約15%程度削減できます(条件により7~18%程度の削減幅)。また温度が低い分、舗設後の冷却が早くなり交通開放までの待ち時間短縮や、夏場工事の作業環境改善(熱中症リスク低減)といった副次効果もあります。品質は従来の舗装と同等であることが実証されており、今後は道路工事でこちらへの切替が進む見込みです。

Q6. 渋滞対策で本当にCO2は減るのですか?

A: はい、渋滞を緩和することはCO2削減に直結します。渋滞中は車両がノロノロ運転やアイドリングを強いられ、本来不要な燃料を消費してCO2を排出します。推計では渋滞による余分なCO2排出が日本全体排出量の約1.3%に相当するとされます。これは鉄道等他部門の排出にも匹敵する大きな量です。例えば都市高速のボトルネックを解消して渋滞がなくなれば、その区間を通る車すべての燃費が向上し、排出削減になります。またアイドリングストップ車能動導入や信号最適化で停車時間を減らすことも効果的です。渋滞ゼロのスムーズな交通流は、時間損失や事故リスクも減らすため、経済的メリットや安全面のメリットもあります。したがって渋滞対策は重要な脱炭素施策の一つです。

Q7. 道路脱炭素化で日本は世界に遅れていませんか?

A: 一部では遅れがありますが、巻き返しの余地は十分にあります。EV普及率では欧州・中国に後れを取っていますが、日本はハイブリッド技術などの蓄積があり、今後EV投入が本格化すれば技術的な競争力は高いです。また、走行中給電やペロブスカイト太陽電池などの先端技術では国内でも大学・企業が独自のアイデアで研究をリードしている部分があります。政策面でも、今回のように道路法に脱炭素目標を明記し全国統一のプラン策定を義務付けたのは世界的に見ても先進的です。欧米でも道路管理者が脱炭素計画を作る例はまだ多くありません。むしろ日本はこの総力戦アプローチで知見を蓄積し、アジアなど他国のモデルになり得ます。今後は国際標準化活動に積極参加し、日本発の技術・ルールを世界展開するぐらいの気概で取り組むべきでしょう。

Q8. 目標達成の見通しは本当に立っているのでしょうか?

A: 正直に言えば、2040年に73%削減という目標は非常にチャレンジングで、現時点で確実なシナリオが描けているわけではありません。しかし「高い目標を掲げないと技術革新や社会変革が起きない」のも事実です。例えば自動車燃費規制も、厳しい基準を示すことでメーカーが必死に技術開発し達成してきた歴史があります。同様に、この道路脱炭素化目標も各方面に強い動機付けを与えるでしょう。重要なのはPDCAサイクルで、5年ごとに中間評価し、進捗が遅れれば追加策(規制強化や支援拡充)を講じることです。日本の官民には環境目標を達成してきた実績(公害克服や省エネ技術向上など)があるため、オールジャパンで知恵を出し合えば不可能な数字ではないと考えます。むしろ、これを契機にイノベーションが促進され、新たな産業や雇用が生まれるポジティブな循環を期待したいところです。

おわりに

国交省の道路脱炭素化基本方針案と改正道路法は、日本の道路行政にとってエpoックメイキングな転換点となるものです。単なる環境対策の一施策に留まらず、道路インフラの在り方を根本から見直し、エネルギー・交通・都市計画を統合したシステムへと進化させる挑戦と言えます。本記事では世界最高水準の知見を動員し、現状分析から課題抽出、解決策の提案まで網羅的に論じました。脱炭素化は決して容易な道ではありませんが、日本には技術力と現場力があります。システム思考で全体を俯瞰しつつ、細部も実証データに基づき詰めていくことで、必ずや道は拓けるでしょう。

私たち一人ひとりも、ドライバーや生活者の立場でできることがあります。エコドライブや公共交通利用、身近な道路美化活動への参加など、小さなアクションが集まれば大きな波になります。50年後、「日本の道路は世界で最もクリーンでスマートだ」と言われる未来を目指し、官民挙げて挑戦を続けていきましょう。


ファクトチェックと出典

本記事の内容は最新の公式情報や信頼できるデータに基づいています。主要なファクトと出典を以下にまとめます。

  • 基本方針案の公表内容: 国土交通省は2025年6月に道路脱炭素化基本方針案を有識者会議で提示。EV走行中給電やペロブスカイト太陽電池など新技術の実証、2040年度に13年度比73%減目標などが盛り込まれました【29】【31】(日刊自動車新聞6月25日付、および日本工業経済新聞6月23日付の報道で確認)。

  • 改正道路法のポイント: 2025年4月公布の改正道路法により、国の基本方針策定と道路管理者の推進計画策定が義務化。道路占用許可基準の緩和(脱炭素施設導入促進)も明記されています【33】(国交省報道発表資料)。

  • 数値目標の信頼性: 2030年度46%減・2040年度73%減という数値は基本方針案で公式に示されたものです【31】。また2030年までに国管理道路のLED化・路車両電動化100%も公表されています【29】。

  • EV普及率データ: 2024年の国内EV販売は約6万台・シェア1.4%とする数値は、自動車専門メディアの分析に基づきます【22】。欧州・中国のBEVシェア(EU13%、中国27%)はBCGの2025年報告のデータです【24】。

  • 走行中給電の実証: 千葉・柏の葉の実証やトヨタの2000km走行成功、スウェーデンの計画はForbes JAPAN記事等で報じられた事実です【12】【25】。記事内の技術説明も東京大学や関連企業の発表情報に沿っています。

  • ペロブスカイト太陽電池: 特性・実証状況についてはYahooニュース(鉄道チャンネル記事)およびメーカー発表資料から引用しています【15】【17】。重量1/10・厚さ1/20等のデータや、積水化学の効率15%・耐久10年の実績も出典通りです【15】。

  • 低炭素アスファルト: 製造温度30℃低減でCO2約15%削減という数値は、舗装業界の技術資料で示されたものです【20】。国交省の資料にも7~18%削減可能とあり【29】、複数ソースで裏付けています。

  • 渋滞によるCO2排出1.3%: 日刊自動車新聞の報道に基づく数値です【29】。国の審議会資料にも類似の分析値があり、信ぴょう性は高いです。

以上、引用・参照した出典は本文中に示したリンク【番号】から辿ることができます。官公庁発表や専門メディアの記事を中心にエビデンスを集めており、記載した事実関係は2025年8月時点で最新かつ信頼性の高いものです。本記事はこれら確かな情報源をもとに執筆しており、読者の皆様に裏付けのある知見を提供することを心がけています。今後も新たな動きがあり次第、情報をアップデートしてまいります。

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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