世界の無名な小都市に学ぶ30のクリエイティブなまちづくりアイデアと戦略フレームワーク(2025年版)

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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目次

世界の無名な小都市に学ぶ30のクリエイティブなまちづくりアイデアと戦略フレームワーク(2025年版)

発行日:2025年8月6日(水)

静かなる革命:世界の小都市はいかにして最大の課題を解決しているか

21世紀の都市開発の物語は、長らくメガシティの躍進イノベーションに焦点を当ててきた。

しかし、その影で、より静かで、しかし根源的な革命が進行している。それは、世界中の無名な小都市や農村地域で起きている、持続可能な開発、社会的一体性、そして経済的レジリエンス(強靭性)を追求する実験的な取り組みである 1。これらの地域は、人口減少や産業の衰退といった逆境を逆手に取り、21世紀の最も差し迫った課題に対する、機敏で独創的な解決策を生み出す実験室となっている。

本レポートの核心的な論点は、最も成功している地域再生の取り組みが、単一のトップダウン型巨大プロジェクトによって推進されるのではなく、5つの重要なパラダイム(参加、創造、再生、社会事業、人間開発)を統合した、ホリスティック(全体論的)かつシステム思考に基づいたアプローチによって実現されているという点にある。

これらのパラダイムは、単なるアイデアの寄せ集めではなく、地域社会が自らの未来を主体的に形成するための構造的なフレームワークを提供する。

本稿では、世界中から選りすぐった30の先進的な事例を、これら5つのパラダイムに沿って構造的に分析する。

読者には、単なる事例のリストではなく、これらのアイデアがなぜ機能するのかを理解し、それぞれの地域に合わせて応用するための思考の枠組みを提供することを約束する。

特に、日本の地方における再生可能エネルギー普及や脱炭素化という喫緊の課題に対し、これらのグローバルな知見がいかにして根源的な解決策を提示しうるかを、具体的かつ実践的なブループリントとして提示する。

まず、本レポートで取り上げる30の革新的なまちづくり事例の全体像を以下のマスターテーブルに示す。これは、レポート全体の羅針盤であり、読者が関心のある分野を迅速に把握するためのツールである。

表1:世界のまちづくり革新事例30のグローバルフレームワーク

No. パラダイム 事例名・所在地 中核コンセプト 主要なインパクト 日本の課題への示唆
I 参加
1 参加 ドイツの市民エネルギー協同組合 市民が再生可能エネルギー事業のオーナーとなる協同組合モデル 地域内での富の循環、エネルギー自給、社会的結束の強化 再エネ導入における「合意形成」の抜本的解決策
2 参加 米国ダラム市の参加型予算制度 住民が公共予算の一部使途を直接決定する民主的プロセス 市民スキルの向上、行政支出と住民ニーズの一致、行政への信頼醸成 公共事業における住民参加の具体的手法
3 参加 英国の農村コミュニティ・ランド・トラスト(CLT) 土地と建物の所有権を分離し、永続的な手頃な価格の住宅を供給 住宅価格の高騰抑制、若者世代の定住促進、地域コミュニティの維持 空き家問題と地方移住促進への応用
4 参加 スペイン・バルセロナのカン・バトリョ 住民運動により廃工場を自主管理の文化・コミュニティ拠点へ転換 公共空間の市民による共同創造、新たな「公共-コモンズ連携」モデル 遊休資産の創造的再利用と市民活動の拠点化
5 参加 イタリア、サン・ドナ・ディ・ピアーヴェ市 イタリア初の「参加型都市再生局」を設立し、公共空間を協働で再生 住民参加を制度化し、持続的なまちづくりプロセスを構築 地方自治体における住民協働の組織的フレームワーク
6 参加 スペイン、イグアラダ市 1,200人以上の市民参加により、廃墟と化した工業地帯を再生 遊休地の30%削減、地域アイデンティティと経済活動の活性化 産業構造転換後の地域資産の再生モデル
II 創造
7 創造 日本、越後妻有アートトリエンナーレ 過疎高齢化地域を舞台にした世界最大級の国際芸術祭 交流人口の創出(年間54万人)、経済効果(約65億円)、地域プライドの醸成 文化芸術を核とした持続的な地域経済エコシステムの構築
8 創造 オランダ、ヘールレン市 炭鉱閉山後の衰退地域をストリートアートで再生した「壁画の首都」 都市イメージの刷新、住民参加によるアート制作、新たな観光資源の創出 ネガティブな遺産をポジティブな地域資源へ転換する手法
9 創造 コロンビア、バリチャラ 植民地時代の街並みと伝統工芸を活かした「生きた遺産」観光モデル 真正性のある文化体験の提供、持続可能な観光経済の確立 歴史的景観保全と経済振興の両立モデル
10 創造 コロンビア、メデジン市のライブラリーパーク 最も危険な貧困地区に象徴的な建築の図書館公園を建設 「尊厳を生むシンボル」として機能、犯罪率の低下、教育・文化へのアクセス向上 公共建築による社会資本への戦略的投資
11 創造 台湾、台東市 豊かな自然と先進的な文化を融合させ、クリエイティブ層を誘致 アーティストや作家の移住促進、独自の都市ブランド形成 移住者を惹きつける文化的魅力の創造
12 創造 米国イリノイ州、アルトン 専門組織が主導する計画的かつ現実的な歴史的中心市街地の活性化 焦点の定まった戦略的介入による効率的な地域再生 「まちづくり会社」の役割と効果的な運営モデル
III 再生
13 再生 日本、上勝町 住民がゴミを45分別する「ゼロ・ウェイスト」宣言の町 リサイクル率80%超達成、環境意識の向上、新たな町ブランドの確立 循環型社会構築の究極モデルと、その社会的条件の探求
14 再生 コスタリカの環境サービス支払い(PES)プログラム 森林保全などの生態系サービスに対し、土地所有者に直接金銭を支払う国家制度 森林伐採の抑制、生物多様性の保全、農村部の新たな収入源創出 「正の外部性」の収益化による新たな地域経済モデル
15 再生 豪州、エア半島の環境再生型農業 農家グループ主導による土壌改善、炭素貯留、気候変動への適応 持続可能な農業への移行、生産者コミュニティの知識共有と強化 農林業における脱炭素と収益性向上の両立
16 再生 英国ウェールズ、フェアボーン 気候変動により英国で初めて「計画的撤退」が決定された沿岸の村 気候変動適応の現実的課題の提示、公正な移行プロセスの重要性 気候変動時代の防災・減災とコミュニティの未来設計
17 再生 参加型エコロジカル・アート(世界各地) アートを通じて市民が直接、生態系回復活動に参加するプロジェクト 環境への情緒的繋がりの醸成、回復活動の文化化・共同体化 環境問題への市民参加を促すソフトなアプローチ
18 再生 エコビレッジ(世界各地) パーマカルチャーやバイオ建築を基本とした持続可能な共同体 エネルギーと食料の自給、循環型ライフスタイルの実践モデル 地域資源を最大限に活用した自立分散型社会のプロトタイプ
IV 社会事業
19 社会事業 カナダ、フォゴ島イ​​ン 高級ホテルを核に、利益を全て地域に再投資するソーシャルビジネス 地域経済の活性化(年間50億円超)、雇用の創出、文化の継承 単一の社会事業が地域全体の「アンカー機関」となるモデル
20 社会事業 ウガンダ、ルボニ・コミュニティ・キャンプ 住民が主体となるコミュニティ・ベースド・ツーリズム(CBT) 貧困削減、伝統文化の保護、自然環境の保全 観光開発における地域への利益還元の仕組み
21 社会事業 日本、上勝町の「彩(いろどり)」事業 高齢女性が料理の「つまもの」を販売し、高収入を得るビジネス 高齢者の生きがいと経済的自立、地域資源の新たな価値創造 「負の資産」と見なされがちな要素を強みに転換する発想
22 社会事業 南アフリカ、グローボックス 「2 for 1」モデルで食料安全保障に取り組むポータブル菜園事業 貧困地域の食料アクセス改善、農業スキルの普及、起業家精神の育成 ビジネスの手法を用いた社会課題解決の具体例
23 社会事業 ルワンダ・ガーナのZipline社 ドローンで僻地に医薬品を配送し、医療アクセスを劇的に改善 救命率の向上、医療インフラ格差の是正、技術による社会課題解決 テクノロジーを活用した大規模な社会的インパクト創出
24 社会事業 ザンビアのCOMACO 野生動物保護と農家の生計向上を直結させたビジネスモデル 密猟の減少、持続可能な農産物の市場開拓、経済的インセンティブによる環境保全 環境保全と経済活動のWin-Win関係の構築
V 人間開発
25 人間開発 スロベニア、イドリヤ市 若者自身に公共空間の企画・実行を委ねるボトムアップ型都市開発 若者の地域への愛着と定着、実践的なスキル習得、行政への信頼醸成 若者を「解決すべき問題」ではなく「地域のインフラ」と捉える視点
26 人間開発 レッジョ・エミリア・アプローチ(世界) 地域全体を学習の場と捉え、学びを可視化する教育哲学 生涯学習文化の醸成、コミュニティ全体の創造性向上 学校教育の枠を超えた地域全体の学習エコシステム構築
27 人間開発 ブルーゾーン・プロジェクト(世界) 長寿地域の生活習慣を都市設計や政策に意図的に導入する取り組み 住民の健康寿命の延伸、医療費の削減、コミュニティの幸福度向上 ウェルビーイング(幸福)を経済開発の中心に据える戦略
28 人間開発 トランジション・タウン運動(世界) 脱炭素社会への移行に伴う心理的・社会的側面に取り組む「内なる移行」 変化への不安を乗り越え、共同体としてのレジリエンスを構築 社会変革における心理的・精神的側面の重要性
29 人間開発 インド、サトナヴリ村 ドローン農業や遠隔医療などを導入した「スマート・インテリジェント・ビレッジ」 公共サービスの質の向上、情報格差の是正、農村開発の新たなモデル テクノロジーによる生活の質の向上と持続可能性
30 人間開発 ベルギー、ルーヴェン市 市中心部の脱車社会化など、先進的な持続可能都市政策を推進 自転車利用が1年で32%増加、市民の健康増進、革新的な都市ブランドの確立 大胆な政策決定が市民の行動変容と生活の質を向上させる実例

第I部 参加パラダイム:ボトムアップで力を築く

地域再生の文脈において、「参加」という言葉はしばしば形骸化したスローガンとして消費されがちである。しかし、本質的な変革を遂げたコミュニティでは、参加は単なる意見聴取や協議の場ではない。それは、意思決定権と所有権を地域社会の手に取り戻し、住民が自らの資産を共同で創造し、管理する能動的なプロセスである。このパラダイムの核心は、参加が深まるほど、プロジェクトの持続可能性とレジリエンス(強靭性)もまた強固になるという点にある。

理論的レンズ:エリノア・オストロムの「コモンズ(共有資源)理論」

このパラダイムを分析する上で、ノーベル経済学賞受賞者エリノア・オストロムが提唱した「コモンズの悲劇」を乗り越えるための8つの原則が極めて有効なレンズとなる 4。オストロムは、森林、漁場、牧草地といった共有資源(コモンズ)が、国家による管理や市場原理による私有化のどちらか一方に委ねられると、しばしば過剰利用され枯渇するという「悲劇」を指摘した。しかし、彼女は世界中の成功事例を分析し、コミュニティ自身がルールを定め、主体的に管理することで、共有資源を持続的に利用できることを実証した。

その8つの原則には、「明確な境界線の設定」「地域の状況に適したルール」「集団的な意思決定への参加」「監視の仕組み」などが含まれる 5。これらの原則は、物理的な資源だけでなく、地域社会が共同で管理するあらゆる資産(エネルギー、住宅、公共空間など)に応用可能であり、なぜボトムアップのアプローチがトップダウンの管理よりも優れている場合が多いのかを理論的に説明してくれる。

ケーススタディと分析

1. ドイツの市民エネルギー協同組合(Bürgerenergiegesellschaften)

ドイツは、再生可能エネルギーへの移行(Energiewende)を国家戦略として掲げるが、その真の駆動力は国や大企業ではなく、地域社会にある。ドイツでは、再生可能エネルギー設備の65%以上が、個人、農家、そして地域コミュニティによって所有されている 6。この驚異的な数字を支えているのが、「市民エネルギー協同組合」という仕組みである。全国に1,700以上存在するこれらの協同組合は、市民が少額の資金を出し合って共同で太陽光パネルや風力タービンを所有・運営することを可能にする 7

このモデルの成功の鍵は、多様な法的枠組みの存在にある。小規模な太陽光プロジェクトには、設立が容易な「民法上の組合(GbR)」が、より大規模な事業には、出資者の有限責任を保証する「有限合名会社(GmbH & Co. KG)」や、民主的な運営を特徴とする「登録協同組合(eG)」が用いられる 6。これにより、市民は単なるエネルギーの消費者から、自らが生産し、利益を得る「プロシューマー」へと変貌する。この所有者としての当事者意識が、再生可能エネルギー施設に対する地域住民の受容性を劇的に高め、しばしば問題となる「NIMBY(Not In My Backyard)」現象を、「PIMBY(Please In My Backyard)」へと転換させている。

※参考:ドイツのエネルギー変革に関する動向調査(環境省)

2. 米国ダラム市の参加型予算制度(Participatory Budgeting)

市民参加をより直接的な形で実現するのが、参加型予算制度(PB)である。この制度は、1989年にブラジルのポルト・アレグレで始まり、現在では世界中の7,000以上の都市で導入されている 8米国ノースカロライナ州ダラム市は、その成功例の一つである。PBでは、市が公共予算の一部(例えば、市の裁量経費や特定の交付金)を確保し、その使い道を住民自身がアイデア出しから議論、最終的な投票までを通じて直接決定する 8

ダラム市の第3サイクルでは、住民から600以上のアイデアが寄せられ、最終的に「公園の照明追加」「歩行者の安全対策」「レクリエーションセンターへの若者向け設備の導入」などが採択・実施された 8。このプロセスの価値は、単にインフラが整備されること以上に、住民が地域の課題について学び、議論し、解決策を共創する中で、市民としてのスキルと政治的効力感(自らの行動が変化をもたらすという感覚)を育む点にある。行政にとっては、公共投資が真に住民のニーズを反映したものとなり、事業への理解と支持を得やすくなるという利点もある。

※参考:Durham ranks amongst Money Magazine Top Places to Live 2024 – Research Triangle Regional Partnership 

3. 英国の農村コミュニティ・ランド・トラスト(CLT)

多くの先進国で、農村地域の持続可能性を脅かす深刻な問題が、住宅価格の高騰である。若者や低所得者層が地元に住み続けられなくなり、コミュニティの活力や学校などの公共サービスが失われていく。この課題に対し、英国のデヴォン州やウィルトシャー州などの農村部では、コミュニティ・ランド・トラスト(CLT)が有効な解決策として急速に広まっている 10

CLTは、地域住民が設立・運営する非営利団体で、土地をコミュニティの資産として永久に所有し、その上の建物(住宅など)のみを、地域の所得水準に基づいた手頃な価格で販売または賃貸する仕組みである 12土地の所有権と建物の利用権を分離することで、不動産市場の投機的な価格上昇から住宅を切り離し、永続的な手頃さを保証する 14デヴォン州では、現在進行中の手頃な価格の住宅供給計画のパイプラインにおいて、住宅供給公社とのパートナーシップ案件はすべてCLT主導であるという事実は、このモデルがもはやニッチな試みではなく、農村部における住宅供給の主流な担い手となりつつあることを示している 10

※参考:共同所有がもたらす、これからの公共のかたち【NGG Research #12】|黒鳥社|blkswn publishers Inc. 

4. スペイン・バルセロナのカン・バトリョ(Can Batlló)

バルセロナのサンツ地区にあるカン・バトリョは、14ヘクタールに及ぶ広大な旧繊維工場跡地である。1976年の都市計画で公共施設用地と指定されながらも、所有者と行政の対立により長年放置されてきた 15。2009年、しびれを切らした住民たちが「カン・バトリョを我々の手に」というプラットフォームを結成し、2011年6月11日までに市が決断を下さなければ占拠すると宣言した。奇しくもその日は新市長の就任日であり、当時スペイン全土で盛り上がっていた「インディグナドス(怒れる者たち)運動」の社会的な圧力も背景に、市は住民プラットフォームとの対話を選択。最終的に、敷地内の一つの建物(ブロック・オンセ)の管理権を住民側に委譲するという画期的な決定がなされた 15

以来、住民たちは自らの手で建物を改修し、図書館、講堂、バー、工房などを備えた活気あるコミュニティハブへと変貌させた。この成功を受け、市はさらに踏み込み、非営利団体である住民組織に対して正式な都市計画コンセッション(事業権)を付与した。これは、市民が自ら都市空間を計画・管理する「アーバン・コモンズ」の先進的な事例であり、行政と市民が対立関係ではなく、協働して公共的価値を創造する「公共-コモンズ連携」の新たなモデルを提示している 16

※参考:歴史 | カサ・バトリョ 

5. イタリア、サン・ドナ・ディ・ピアーヴェ市

人口約4万人のこの小都市は、近隣のヴェネツィアやトレヴィーゾといった大都市の影に隠れがちだが、住民参加の制度化においてイタリア全土のモデルとなっている。同市は、イタリアで初めて「参加型都市再生局」を設立した自治体である 2。この部署の目的は、公共空間の再生や質の向上に関するプロジェクトにおいて、住民参加を単発のイベントではなく、持続的かつ制度的なプロセスとして組み込むことにある。特に、欧州の都市間ネットワークプログラムであるURBACTを通じて形成された「ローカル・グループ」を、長期的な協働のツールとして明確に位置づけている点が革新的である。これにより、行政、市民、専門家が継続的に対話し、実験的な手法で公共空間の新たな利用法を模索する土壌が育まれている。

6. スペイン、イグアラダ市

かつての産業の衰退により、多くの工業地帯が廃墟と化していたイグアラダ市は、放棄された地域の参加型変革と名付けられたプロジェクトを通じて、この課題に正面から取り組んだ 18。このプロジェクトの核心は、単に行政が再開発計画を提示するのではなく、1,200人を超える地域住民を計画の初期段階から巻き込んだことにある。住民たちはワークショップや協議会を通じて、どの空間をどのように再生したいかというビジョンを共有し、具体的な計画を練り上げた。その結果、打ち捨てられた工場跡地は、市民公園や文化施設、コミュニティハブといった、地域住民が真に必要とするダイナミックな空間へと生まれ変わった。このプロセスを通じて、市内の遊休地は30%も減少し、地域経済が活性化すると同時に、住民間の絆が深まり、地域への誇りが再醸成されるという多面的な効果を生み出した。

参加パラダイムからの洞察と日本への応用可能性

これらの事例は、単なる成功物語ではない。そこには、日本の地域課題、特に再生可能エネルギー導入における「合意形成」の難題を解決するための本質的なヒントが隠されている。

第一に、「所有」と「合意」の間の強力な因果関係である。ドイツのエネルギー協同組合の事例 6 が示すのは、「参加」の最も効果的な形態は「所有」であるという事実だ。住民がプロジェクトの単なる受益者や説明を受ける対象ではなく、金銭的な出資者、つまり共同オーナーになることで、プロジェクトへの当事者意識は根本的に変わる利益が地域に還元され、運営に自分たちの声が反映される仕組みがあって初めて、再生可能エネルギー施設は「迷惑施設」から「地域の資産」へと認識が変わる日本の地方で頻発する再エネ事業を巡る対立 2 の多くは、事業者が地域外の資本であり、利益のほとんどが地域に落ちない構造に起因する。真の合意形成は、より丁寧な説明会を開くことによってではなく、地域住民が事業の主体となる経済的・制度的枠組みを構築することによって達成される。

第二に、コミュニティ主導の取り組みをスケールさせるための「社会的インフラ」の重要性である。英国のCLTが示すモデル定款 21 や、ドイツの協同組合法 6 は、市民活動が単なる善意やボランティア精神に依存するのではなく、持続可能で信頼性の高い事業主体となるための、洗練された「社会的インフラ」である。これらの法的に整理されたテンプレートやガバナンス構造は、参加する住民にとっても、融資を行う金融機関や連携する行政にとっても、プロジェクトのリスクを大幅に低減させる。コミュニティ主導の取り組みが日本で本格的に広がるためには、こうした再現可能で堅牢な法的・組織的モデルを整備し、中間支援組織(デヴォン州のMiddlemarch CLHのように 10)を育成することが不可欠である。これにより、個々の熱意あるリーダーに依存した一点もののプロジェクトから、誰でも活用できる標準化されたプラットフォームへと進化させることができる。


第II部 創造パラダイム:文化を経済の織物へと編み込む

多くの衰退地域が直面する問題は、単なる経済的なものではなく、アイデンティティと物語の喪失である。創造パラダイムは、アート、文化遺産、地域の物語、そして独自の美意識といった無形の資産こそが、経済的・社会的な再生を駆動する最も強力なエンジンとなりうることを示す。クリエイティブ・プレイスメイキング(創造的な場づくり) 22 とは、単に街を装飾することではない。それは、地域のアイデンティティを再定義し、内外に向けた新たな物語を紡ぎ、経済の軌道を根本から描き直す戦略的行為である。

理論的レンズ:「文化資本」と「シビックプライド(市民の誇り)」

このパラダイムの有効性を理解するために、フランスの社会学者ピエール・ブルデューが提唱した「文化資本」の概念が役立つ 23。文化資本とは、学歴や資格といった制度化されたものだけでなく、地域に根付く伝統、職人の技術、特有の美意識やライフスタイルといった、金銭には換算できない文化的な資産を指す。創造的なまちづくりは、この潜在的な文化資本を掘り起こし、経済的・社会的な価値へと転換するプロセスである。

さらに、これらのプロジェクトがもたらす重要な成果の一つが「シビックプライド」の醸成である 24。シビックプライドとは、自らのコミュニティに対する誇りや愛着であり、これが高まることで、住民のさらなる地域活動への参加意欲や、地域に対する貢献意識が引き出される。成功した創造的プロジェクトは、経済的な指標だけでは測れない、この内面的な価値を育むことで、持続的な地域再生の好循環を生み出す

ケーススタディと分析

7. 日本、越後妻有アートトリエンナーレ

日本の過疎高齢化の象徴的な地域であった新潟県十日町市・津南町を舞台に、2000年から3年ごとに開催される世界最大級の国際芸術祭は、アートが地域を救うことを証明した壮大な社会実験である 26。この芸術祭は、美術館という閉じた空間ではなく、棚田や廃校、民家といった地域全体(760平方キロメートル)を展示空間とする 28国内外のアーティストが地域に滞在し、住民と協働しながら作品を制作するプロセスは、アートを地域固有の風土や文化と深く結びつける。

その結果は驚くべきものだった。2018年の開催時には、50日間で54万人以上が訪れ、約65億円の経済効果を生み出した 29。しかし、その価値は数字だけでは測れない。芸術祭は、地域外からの訪問者やボランティア、さらには移住者を呼び込み、新たな人の流れを生んだ。そして何より、地元住民、特に高齢者が作品の案内役や運営の担い手として活躍することで、失われかけていた地域への誇りを取り戻し、新たな生きがいを見出すきっかけとなった 29

※参考:過疎高齢化の進むまちに54万人を超える来訪。約65億円の経済効果を生んだ『大地の芸術祭』の成功の鍵とは | LOCAL LETTER 

8. オランダ、ヘールレン市

かつて炭鉱で栄えたオランダ南部の都市ヘールレンは、産業の崩壊後、多くの衰退地域と同様に、建物の老朽化や社会的な活力の低下に悩まされていた 30。この状況を打破するために市が採用したのが、ストリートアート、特に壁画(ミューラル)を活用した都市再生戦略であった。これは、行政が一方的にアーティストを招聘するのではなく、地域で自然発生的に生まれつつあった壁画アートのムーブメントを市が後押しするという、ボトムアップ型のアプローチを取った点が特徴である 2

アーティストは、地域住民や学校、企業、コミュニティ組織と対話し、その地域の歴史や人々の物語を反映した壁画を共同で制作した 30。この共創プロセスを通じて、これまでに67もの大規模なアートワークが市内に生み出された。これらの壁画は、単なる壁の装飾ではなく、地域のアイデンティティを可視化し、住民の共同所有意識を育む装置となった。結果として、ヘールレンは「オランダの壁画の首都」として国内外に知られるようになり、都市のイメージを劇的に向上させ、新たな観光客を惹きつけることに成功した。この取り組みは、URBACT(欧州の都市開発ネットワーク)によって、欧州のグッドプラクティスとして認定されている 30

※参考:MVRDVとZeccによる、オランダ・ヘールレンの「Heerlen Holy Water」。役目を終えた教会を転用した公共プール。新たな社会的機能を付与し歴史的要素も保存する為、かつての身廊をガラス壁で囲んで“床が上下するプール”とする計画を考案。床高の調整で様々な活動や催しへの対応が可能 | architecturephoto.net 

※参考:広告とまちづくりを共存させる、壁画(ミューラル)を使った新感覚広告が躍進の予感 

9. コロンビア、バリチャラ

コロンビアのサンタンデール県に位置するバリチャラは、コロンビアで最も美しい村と称される、見事に保存された植民地時代の遺産の町である 31。この町の特筆すべき点は、歴史的な街並みを静的な博物館として凍結させるのではなく、住民の生活と伝統的な手仕事が息づく「生きた遺産」として維持していることだ。アンダルシア様式の白い壁の家々や石畳の道は、住民自身によって愛情を込めて手入れされている 32

バリチャラの持続可能な観光経済の核となっているのは、石彫りや、リュウゼツラン科の植物の繊維から作られるフィケ紙といった、地域固有の職人技である 32観光客は、工房を訪れて職人の仕事を見学したり、実際に伝統工芸を体験したりすることができる。これにより、観光は単なる消費活動ではなく、地域の文化と経済を支える参加型の体験となる。バリチャラのモデルは、遺産保護が経済的負担ではなく、地域経済を豊かにし、コミュニティのアイデンティティを強化するための貴重な資源となりうることを示している 33

※参考:ノスタルジック!コロンビアで一番可愛い街「バリチャラ」で街散歩 | ORICON NEWS 

10. コロンビア、メデジン市のライブラリーパーク

かつて世界で最も危険な都市として知られたメデジンが、劇的な再生を遂げた物語の中心にあるのが、「ソーシャル・アーバニズム(社会都市計画)」という哲学である 34。その象徴的なプロジェクトが、市内で最も貧しく、暴力が蔓延していた地区(コムーナ)に建設された一連の「ライブラリーパーク(Parque Biblioteca)」35

これらの施設は、単なる図書館ではない。著名な建築家によって設計されたその象徴的な外観は、これまで行政から見捨てられてきた地域に対する国家の投資と敬意の表明であり、「尊厳を生み出すシンボル」として機能する 34。内部には、図書館機能に加え、コンピュータールーム、講堂、展示スペース、保育施設などが備えられ、教育、文化、そして安全な公共空間へのアクセスを地域住民に提供する。特に象徴的な「パルケ・ビブリオテカ・エスパーニャ」は、メデジンの変革のアイコンとして世界的に知られるようになった 35。この戦略は、質の高い公共建築が、物理的なインフラであると同時に、人々の心に希望と誇りを築くための強力な社会インフラとなりうることを示している。

※参考:メデジン―褐色のエスぺランサ_ Medellin-La Esperanza Parda – unicorn-support 

※参考:【コロンビア第二の都市】革新的変化を遂げたアート溢れる街!メデジンの楽しみ方5選 | 海外旅行、日本国内旅行のおすすめ情報 | ベルトラYOKKA | VELTRA 

11. 台湾、台東市

山と海に挟まれた台湾南東部の小さな都市、台東は、その美しい自然環境と進歩的な文化を戦略的に活用することで、独自の魅力を放つクリエイティブなハブへと変貌を遂げている 1この街の心地よいライフスタイルと開放的な雰囲気は、近年、多くの作家、アーティスト、そしてサーファーやクライマーといった冒険的なライフスタイルを求める人々を惹きつけている。台東の先進性を象徴するのが、国立台東大学にあるピラミッド型の図書館である。このユニークな建築は、単なる建物ではなく、学問と文化を重視し、創造性を歓迎するという街全体の姿勢を物語っている。台東の事例は、大規模な産業誘致に頼るのではなく、地域の持つ固有の文化的・環境的資産を磨き上げ、クリエイティブ・クラス(創造階級)にとって魅力的な「場」を育むことが、持続可能な都市開発の有効な戦略となりうることを示唆している。

12. 米国イリノイ州、アルトン

セントルイス郊外の歴史的な町アルトンは、多くの地方都市が直面する中心市街地の衰退という課題に対し、組織的かつ現実的なアプローチで取り組んでいる 36。この再生の動きを主導しているのが、「AltonWorks」という民間組織である。彼らのアプローチの特徴は、場当たり的なイベントや単発のプロジェクトに頼るのではなく、町の歴史的資産を活かしつつ、現代のニーズに合わせた商業・文化施設を計画的に配置するという、明確で実現可能なビジョンを掲げている点にある。この事例は、地域再生において、強力なビジョンと実行能力を持つ専門的な「まちづくり組織」が、行政や個々の商店主だけでは成し得ない、まとまりのある戦略的な変革を推進する上でいかに重要であるかを教えてくれる。

創造パラダイムからの洞察と日本への応用可能性

文化やアートを活用したまちづくりは、一見すると費用対効果が見えにくく、贅沢な投資と見なされがちである。しかし、これらの成功事例は、それが地域経済と社会のOSを書き換えるほどの強力な投資となりうることを示している。

第一に、「イベント」から「エコシステム」への転換という視点である。越後妻有アートトリエンナーレ 29 の真の成功は、3年に一度のイベントそのものにあるのではない。その成功は、芸術祭をきっかけに設立されたNPO法人「越後妻有里山協働機構」が、作品の維持管理、ツアーの企画、宿泊・飲食施設の運営など、年間を通じて事業を展開する恒久的なエコシステムを構築した点にある。イベントはあくまで起爆剤であり、その熱量をいかにして持続的な経済活動と社会関係資本に転換するかという「366日目の計画」こそが重要なのである。日本の多くの自治体が単発のイベントで終わってしまう中、この「イベントからエコシステムへ」という発想の転換は、持続可能な地域活性化の鍵を握る。

第二に、象徴的な公共建築は「社会インフラ」への戦略的投資であるという認識である。メデジンのライブラリーパーク 34 は、その建設費を巡って批判も受けた。しかし、その目的は単に本を貸し出すことではなかった。世界レベルの建築物を最も貧しい地区に建設するという行為自体が、住民に対する「あなた方は忘れられていない」という強力なメッセージであり、失われたシビックプライドを回復するための戦略的投資であった。機能性だけを追求した無味乾燥な公共施設ではなく、人々の心に誇りを刻むような質の高いデザインに投資することは、決して無駄なコストではない。それは、コミュニティの自己肯定感を高め、将来への希望を育む、最も効果的な「社会インフラ」投資の一つなのである。日本の公共事業がしばしば陥る純粋な功利主義的発想に、この視点は重要な問いを投げかける


第III部 再生パラダイム:自然と調和する経済を設計する

20世紀の開発モデルは、自然を収奪の対象と見なし、経済成長を追求してきた。その結果、私たちは気候変動や資源枯渇といった地球規模の課題に直面している。再生パラダイムは、この根本的な関係性を問い直し、人間社会を自然のサイクルの中に再統合することを目指す。このアプローチの核心は、抽出型(extractive)から再生型(regenerative)へと経済と社会のOSを転換し、廃棄物を資源とみなし、経済活動そのものが自然環境を回復させるような循環型システムを構築することにある。

理論的レンズ:「サーキュラー・エコノミー」と「トランジション・デザイン」

このパラダイムを理解するためのフレームワークとして、エレン・マッカーサー財団が提唱する「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」の3原則が有効である。それは、「廃棄物と汚染を出さない設計」「製品と原料を循環させ続ける」「自然システムを再生する」という3つの原則から構成される 37。これは単なるリサイクル推進ではなく、経済活動の入り口から出口まで、あらゆる段階で資源の価値を最大化し、環境負荷を最小化することを目指す包括的な設計思想である。

さらに、この壮大な転換をいかにして社会に実装するかという問いに対して、トランジション・デザインというアプローチが示唆を与える 38。これは、持続可能な未来への社会変革を意図的に 촉発するための実践志向のデザイン分野であり、個人のライフスタイルの変革から、コミュニティの取り組み、政策・インフラの変革まで、複数のスケールにまたがる介入を協調させていくことを重視する 40

ケーススタディと分析

13. 日本、上勝町:世界のゼロ・ウェイストの灯台

徳島県の山間部に位置する人口約1,500人のこの小さな町は、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)」を宣言し、世界的な注目を集めた 41。その取り組みは徹底している。住民は自らごみを「ゼロ・ウェイストセンター」に持ち込み、専門スタッフの助言を受けながら、紙類だけで9種類、金属類で6種類など、実に45ものカテゴリーに細かく分別する 42

この徹底した分別の結果、町のリサイクル率は80%を超え、焼却・埋め立てごみを大幅に削減することに成功した 41。さらに、町内には「くるくるショップ」と呼ばれる無料のリユース拠点があり、住民が不要になったものを持ち寄り、必要な人が自由に持ち帰ることができる 42。しかし、このモデルは成功の側面だけではない。高齢化が進む中で、複雑な分別やごみステーションまでの運搬が住民にとって大きな負担となっているという課題も顕在化している 43。上勝町の挑戦は、循環型社会の理想形を示すと同時に、その実現に必要な社会的条件の重要性を浮き彫りにしている。

※参考:上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY〈オフィシャルサイト〉 

※参考:環境省_グッドライフアワード_受賞者紹介 第6回グッドライフアワード 環境大臣賞最優秀賞 

14. コスタリカの環境サービス支払い(PES)プログラム

コスタリカは、1970年代から80年代にかけて世界で最も森林破壊が深刻な国の一つだった。しかし、1997年に導入された画期的な国家プログラム「環境サービス支払い(PES)によって、その状況を劇的に好転させた 46。PESは、森林が提供する「環境サービス」(二酸化炭素の吸収、水源の涵養、生物多様性の保全、景観の美しさ)に対して、国が土地所有者に直接金銭を支払う仕組みである 46

このプログラムの財源は、化石燃料税や水道料金の一部などから賄われる 46土地所有者は、森林を保護したり、植林を行ったり、持続可能な森林管理を実践したりすることで、5年または10年の契約に基づき支払いを受けることができる 48。この制度により、森林を伐採して短期的な利益を得るよりも、保全して継続的な収入を得る方が経済的に合理的になった。結果として、コスタリカの森林被覆率は回復し、これまでに18,000以上の農家がプログラムの恩恵を受け、生物多様性の保全と農村部の経済安定に大きく貢献している 46

※参考:PES(Payments for Ecosystem Services:生態系サービスへの支払い):株式会社 日立総合計画研究所 

※参考:環境と地域経済を両立させる仕組み「PES」とは? 

15. 豪州、エア半島の環境再生型農業

オーストラリア南部に位置するエア半島では、従来の集約的な農業がもたらす土壌劣化や干ばつへの脆弱性が深刻な課題となっていた。これに対し、地域の農家グループが主体となり、政府の支援を受けながら環境再生型農業(Regenerative Agriculture)」への転換を進めている 49

環境再生型農業とは、化学肥料や農薬の使用を最小限に抑え、不耕起栽培や被覆作物の導入、多様な作物の輪作などを通じて、土壌の健康そのものを回復・向上させることを目指す農法である。エア半島のプロジェクトでは、個々の農家が自身の農地を実証サイトとして提供し、様々な再生型農法を試行錯誤している 49。その成果や失敗の経験は、農家グループ内での勉強会やフィールドデーを通じて共有され、地域全体での知識と実践のレベルを引き上げている。このボトムアップ型のアプローチは、気候変動下における食料生産のレジリエンスを高める上で極めて重要なモデルとなっている。

16. 英国ウェールズ、フェアボーン:計画的撤退に直面するコミュニティ

再生パラダイムは、常に成長や回復の物語だけではない。時には、自然の力に適応するために「手放す」という選択も含まれる。ウェールズの沿岸に位置するフェアボーン村は、気候変動による海面上昇の影響で、英国で初めて「計画的撤退(Managed Retreat)」、すなわち村全体の移転と解体が決定されたコミュニティである 51

2054年までに、村の防潮堤の維持は持続不可能になると判断され、行政は住民850人の移転を開始し、最終的には村を元の塩性湿地に戻す計画を立てた 51。この決定は、住民に深刻な社会的・経済的・心理的影響をもたらした。住宅価格は暴落し、将来への不安からコミュニティには動揺が広がった 53。フェアボーンの事例は、気候変動適応がもたらす厳しい現実を突きつけると同時に、このような不可避な変化に直面した際に、いかにして公正で、住民の尊厳を守り、コミュニティが主体となった移行計画を策定できるかという、未来の沿岸地域にとって極めて重要な問いを投げかけている 52

17. 参加型エコロジカル・アート(世界各地)

生態系の回復という課題は、科学的・技術的なアプローチだけでは人々の心を動かすことが難しい。ここでアートが果たす役割は大きい世界各地で見られる参加型エコロジカル・アートは、市民がアーティストと共に、あるいはアーティストの構想に導かれて、自ら生態系回復の担い手となるプロジェクトである 55

例えば、米国のアーティスト、ザビエル・コルタダの「フラワー・フォース」プロジェクトでは、参加した家族が自らの庭に在来の野草を植え、その証としてセラミック製の花の彫刻を設置する 56。これにより、個々の庭が繋がり、地域全体に広がる生態系回廊とパブリックアートが同時に創出される。また、アグネス・ディーンズの伝説的な作品「小麦畑—対決では、ニューヨークの金融街近くの埋立地に2エーカーの小麦畑を創り出し、都市と自然、経済と生命の対比を強烈に人々の意識に刻み込んだ 57。これらの実践は、生態系回復を専門家の仕事から、地域コミュニティ全体の文化的で創造的な共同作業へと変える力を持っている。

※参考:アートと気候危機のいま vol.2 「エコ・ヒーロー」と呼ばれるアーティスト、ジェシー・シュレシンジャー|美術手帖 

18. エコビレッジ(世界各地)

世界中に点在するエコビレッジは、再生可能なライフスタイルを包括的に実践する「生きた実験室」である 58エクアドルのジャングルからブラジルの農村、インドの山岳地帯まで、これらの意図的なコミュニティは、パーマカルチャー(自然の生態系の仕組みを応用した持続可能な農法や暮らしのデザイン)、バイオコンストラクション(土や竹など自然素材を用いた建築)、再生可能エネルギーの自給、そして協同的なガバナンスといった原則に基づいている。彼らの取り組みは、食料、エネルギー、住居といった生活の根幹を、グローバルなサプライチェーンから切り離し、地域内の循環で完結させることを目指す。エコビレッジは、まだ小規模な動きではあるが、化石燃料に依存した現代社会が直面する課題に対する、具体的で実践的な代替案のプロトタイプを提示している。

※参考:エコビレッジの意味とは 世界と日本の事例から学ぶ | ELEMINIST(エレミニスト) 

再生パラダイムからの洞察と日本への応用可能性

再生パラダイムの事例群は、環境問題への対症療法ではなく、経済社会システムの根本的な再設計の必要性を示唆している。

第一に、ラディカルな再生システムを支える「社会的条件」の存在である。上勝町のゼロ・ウェイスト 41 がしばしば技術的な分別システムとしてのみ語られるが、その本質を見誤ってはならない。あの複雑なシステムが機能しているのは、人口が少なく、住民間の信頼関係が厚いという、日本の農村が持つ高いソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が基盤にあるからだ。高齢化によってその担い手が減っているという現在の課題 44 は、この社会的基盤への依存度を逆説的に証明している。このことから導き出される教訓は、再生型システムは技術だけでは導入できない、ということだ。それを支えるコミュニティの結束や信頼関係といった社会的な土壌を、まず醸成することが不可欠なのである。

第二に、「正の外部性」を収益化する新たな経済戦略である。従来の経済学は、公害などの「負の外部性」を税や規制の対象としてきた。しかし、コスタリカのPESプログラム 46 は、この論理を完全に反転させるきれいな水や豊かな生物多様性といった「正の外部性」を、経済的な価値を持つ「サービス」として定義し、その対価を支払う市場を創出したのだ。これは、日本の地方、特に広大な山林を持つ地域にとって極めて重要な示唆を与える。木材を切り出して売るという従来の抽出型林業だけでなく、森林を適切に管理し、水源涵養や炭素吸収といった「生態系サービス」を提供すること自体を、新たな産業として確立する道筋を示している。これは、地域の自然資本を消費するのではなく、それを守り育てることで収益を生むという、経済ロジックの根本的な転換である。


第IV部 社会事業パラダイム:利益が人と場所のために奉仕する

21世紀の地域開発は、伝統的な営利企業と非営利団体の二項対立を超えた、新たな担い手を必要としている。それが、社会的・環境的課題の解決を第一の目的としながら、ビジネスの手法を用いて持続可能な収益を上げる「社会事業(ソーシャル・エンタープライズ)」である。

このパラダイムの核心は、地域から富を吸い上げる可能性のある従来の営利企業でもなく、助成金への依存から抜け出せないことの多い従来の非営利団体でもない、第三の道筋を提示する点にある。

社会事業は、生み出した利益を株主配当ではなく、コミュニティへの再投資や事業目的の達成のために用いることで、経済活動と社会的使命を統合する。

理論的レンズ:「聖なる経済学」と「ギフト・エコノミー」

この新しい経済主体を理解する上で、思想家チャールズ・アイゼンシュタインが提唱する「聖なる経済学(Sacred Economics)」の視点が示唆に富む 59。彼は、現代の貨幣システムが本質的に希少性、競争、そして人間と自然の分離を生み出すように設計されていると批判し、贈与、互酬性、そして繋がりを基盤とする経済への移行を呼びかける。社会事業は、利益をコミュニティという「コモンズ」に還元する(贈与する)ことで、この「聖なる経済学」の理念を具現化する存在と捉えることができる。その活動は、貨幣の交換だけでなく、「ギフト・エコノミー」の論理、すなわち見返りを求めない貢献や相互扶助の精神を、ビジネスの領域に再導入する試みでもある 61

ケーススタディと分析

19. カナダ、フォゴ島イ​​ン:ラディカルな地域経済モデル

カナダのニューファンドランド島沖に浮かぶ孤島、フォゴ島は、タラ漁の崩壊により壊滅的な打撃を受けた 63。この島出身の女性、ジータ・コブが設立した慈善団体「ショアファスト財団」は、この状況を打開するために前代未聞のプロジェクトを立ち上げた。それが、世界的な建築家が設計した最高級ホテル「フォゴ島イ​​ン」である 64

このホテルのビジネスモデルは徹底している。まず、建設や内装、家具、テキスタイルに至るまで、可能な限り島の職人や資源を活用し、地域にお金が落ちる仕組みを構築した 65。そして最も重要なのは、ホテル運営から生まれる全ての利益が、ショアファスト財団に寄付され、島の文化振興や若者の教育、他の小規模事業の支援など、コミュニティのために再投資されることである 64。さらに、宿泊客には「経済栄養表示ラベル」が提示され、支払った宿泊費のうち、いくらが人件費に、いくらが食料費に、そしていくらが地域への再投資に使われるかが透明に開示される 65。このモデルは、単なるホテルではなく、島全体の経済と文化を再生させるための強力なエンジンとして機能している。ただし、その高級志向な価格設定や、前衛的なデザインが地元住民の一部から理解されにくいといった批判や課題も存在する 67

※参考:住民総がかりで観光客をもてなす:フォーゴアイランド・イン | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト 

※参考:フォーゴ アイランド イン(カナダ・ニューファンドランド) | ティースタイル – オーダーメイドツアー 

20. ウガンダ、ルボニ・コミュニティ・キャンプ:観光によるエンパワーメント

アフリカにおける観光開発は、しばしば地域住民を置き去りにし、利益が海外資本に流出する構造的な問題を抱えてきた。これに対する強力なオルタナティブが、コミュニティ・ベースド・ツーリズム(CBT)である。ウガンダのルウェンゾリ山地の麓にあるルボニ・コミュニティ・キャンプは、その成功例69

このキャンプでは、観光客は単に景色を楽しむだけでなく、地域のバコンゾ族の人々と深く交流する体験ができる 69。ガイド付きの自然散策、伝統舞踊の鑑賞、工芸品の制作体験など、観光活動のあらゆる側面に地域住民が直接関与し、その収益が直接彼らの生活向上に繋がる。特に、地域の女性や若者が工芸品製作やエコツアーを通じて経済的に自立する機会を得ている 69。このモデルは、観光が地域の文化や自然環境を消費するのではなく、むしろそれを保護・育成するための持続可能な手段となりうることを示している。

※参考:【CBT】コミュニティベースド・ツーリズム | 【公式】タイ国政府観光庁 

21. 日本、上勝町の「彩(いろどり)」事業

徳島県上勝町は、ゼロ・ウェイストだけでなく、もう一つの画期的な社会事業の故郷でもある。1981年の寒波で町の主産業だったみかん栽培が壊滅的な被害を受けた後、地元の農協職員だった横石知二氏は、料理の「つまもの」(飾り付け用の葉や花)にビジネスチャンスを見出した 71。彼は株式会社いろどりを設立し、主に高齢の女性たちに、山の葉っぱを集めて商品化し、全国の高級料亭に出荷する事業を提案した。

当初は「葉っぱがカネになるわけがない」と笑われたこの事業は、IT技術の導入によって大成功を収める。高齢の生産者たちは、タブレット端末を駆使して全国の市場からの注文状況や価格動向をリアルタイムで確認し、互いに競い合いながら受注と出荷を行う 71。この事業は、年間2億6千万円以上を売り上げるまでに成長し、中には年収1,000万円を稼ぐ高齢女性も現れた 71。彩事業の真の価値は、経済的な成功以上に、高齢者に生きがいと社会的な役割、そして最新技術を使いこなす自信を与えた点にある。それは、地域の「弱み」と見なされがちな高齢化を、他に真似のできない「強み」へと転換した、見事な事例である。

※参考:株式会社いろどり | 葉っぱの町上勝町から人と社会に喜びと感動を

22. 南アフリカ、グローボックス:箱一つで食料安全保障に挑む

南アフリカのケープタウン周辺のタウンシップ(旧黒人居住区)は、高い失業率、貧困、そしてそれに伴う食料不安という深刻な課題に直面している 73。この問題に取り組むため、レンシア・マニュエルが立ち上げたのが「グローボックス」という社会事業である。グローボックスは、狭いスペースでも野菜を育てられるポータブルな木製プランターボックスを製造・販売している 74

そのビジネスモデルの核心は、「2-for-1」モデルにある。一般の顧客にボックスを2つ販売するごとに、1つのボックスが恵まれない家庭に寄付される 74。さらに、単に箱を提供するだけでなく、持続可能な有機農法や種子の保存方法、コンポスト作りといった農業スキルを地域住民、特に女性たちに教えることで、彼らが自らの手で食料を確保し、さらには余剰作物を販売して収入を得る道を開いている 73。グローボックスは、物理的なプロダクト(箱)を通じて、食料主権、スキル、そして起業家精神という無形の価値をコミュニティに根付かせている。

23. ルワンダ・ガーナのZipline社:空からの救命医療

アフリカの農村部では、劣悪な道路事情により、血液やワクチンといった緊急性の高い医薬品を必要な時に必要な場所へ届けることが極めて困難である。この「ラストマイル」問題を解決するために、Zipline社は自律飛行型のドローンを用いた医療品配送ネットワークを構築した 77

ルワンダやガーナの医療施設は、WhatsAppなどの簡単なメッセージングアプリで注文を送ると、Ziplineの配送センターからドローンが発進し、30分以内にパラシュート付きのパッケージで医薬品を投下する 77。このシステムにより、特に産後の大出血など、一刻を争う事態での救命率が劇的に向上した。Ziplineは、ルワンダの首都キガリを除く地域の血液供給の75%を担うなど、国の医療インフラに不可欠な存在となっている 79。これは、最先端技術を駆使して、最も脆弱なコミュニティの基本的なニーズに応えるという、インパクトの大きい社会事業の典型例である。

24. ザンビアのCOMACO:保全と生計を結びつける

ザンビアでは、貧困に起因する密猟が野生動物の生存を脅かしてきた。これに対し、COMACO(Community Markets for Conservation)は、罰則や規制強化ではなく、経済的インセンティブを通じてこの問題に取り組む 80。COMACOは、密猟をやめて環境保全型の農業に取り組むことを約束した農家と契約を結ぶ。そして、彼らが生産したピーナッツや米、はちみつといった農産物を、市場価格よりも高い値段で買い取り、「It’s Wild!」というブランドで加工・販売する。

消費者は、このブランドの商品を購入することで、間接的に野生動物保護を支援することになる。このモデルは、農家にとって、密猟という危険で不安定な収入源よりも、持続可能な農業の方が魅力的であるという状況を作り出す。これまでに14万人以上の農家がこのプログラムに参加し、密猟の減少と地域住民の所得向上の両方を実現している 80

社会事業パラダイムからの洞察と日本への応用可能性

社会事業は、単なる「良いことをするビジネス」ではない。それは、地域経済の構造そのものを変革する潜在力を持つ。

第一に、社会事業が地域の「アンカー機関」として機能する可能性である。フォゴ島イ​​ン 64 は、もはや単なる一企業ではない。それは、島の経済、文化、そして未来を支える中心的な「錨(アンカー)」である。その存在が他のビジネス(家具工房、食品加工、漁業協同組合との連携)を派生させ、ショアファスト財団を通じて島全体の社会プログラムを財政的に支えている 66

日本の多くの地方都市が、かつて地域を支えた大工場や中心的な公共施設の喪失に苦しんでいる。フォゴ島の事例は、一つの戦略的に設計された社会事業が、その失われたアンカーの役割を現代的な形で担うことができることを示している。その目的は、株主価値の最大化ではなく、地域生態系全体の繁栄を最大化することにある。

第二に、脆弱な地域ビジネスを支える「価値の多重化(Value Stacking)」戦略である。日本の「地域新電力」は、大手電力会社との価格競争で苦戦しているという課題が指摘されている 2。フォゴ島イ​​ンや彩事業が提供するヒントは、価格だけで戦わないことである。彼らが販売しているのは、単なる商品(宿泊、葉っぱ)ではない。彼らは、物語、場所との繋がり、コミュニティへの貢献という、複数の価値を「積み重ねて(stacking)」販売している。

日本の地域新電力も、単にキロワット時を売るのではなく、「エネルギー自給」「地域雇用」「子供たちへの環境教育」「故郷への誇り」といった価値を多重化し、それを「経済栄養表示ラベル」 65 のような透明性の高い方法で顧客に伝えるべきである。そうすることで、価格が多少高くても、単なる電力消費者ではなく、地域の未来への「投資家」として、喜んでその電気を選ぶ顧客層を育てることができる。これは、コモディティ化の罠から脱却し、地域に根差したビジネスが生き残るための本質的な戦略である。


第V部 人間開発パラダイム:人と繋がりへの投資

持続可能なコミュニティの最終的な基盤は、インフラや産業ではなく、そこに住む人々のウェルビーイング(幸福)、生涯にわたる学習機会、そして強固な社会的繋がりである。人間開発パラダイムは、経済成長を究極の目的とするのではなく、人々の幸福と潜在能力の開花を開発の中心に据えるアプローチである。このパラダイムは、質の高い教育、健康的な生活、そして信頼と協力に基づいた豊かな人間関係(ソーシャル・キャピタル)こそが、あらゆる経済的・環境的活動の前提条件であると主張する。

理論的レンズ:「ソーシャル・キャピタル」と「国民総幸福量(GNH)」

このパラダイムを支える重要な概念がソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」である。これは、人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高める「信頼、規範、ネットワーク」といった社会組織の諸特徴を指す 84。ソーシャル・キャピタルが豊かなコミュニティは、災害時などの危機に対して高いレジリエンスを発揮し、新たな課題にも協力して立ち向かうことができる

また、開発の目標設定において、ブータン王国が提唱した「国民総幸福量(Gross National Happiness, GNH)」が画期的な代替案を提示する 86。GNHは、GDP(国内総生産)のような経済的指標に代わり、「心理的な幸福」「健康」「教育」「コミュニティの活力」「環境の多様性」など9つの領域から、国の発展を多角的に測定する 87。このフレームワークは、経済成長が人々の幸福に必ずしも直結しないという認識に基づき、人間中心の開発がいかにあるべきかという問いに対する、包括的な答えを提供してくれる。

ケーススタディと分析

25. スロベニア、イドリヤ市:若者が主導する公共空間の創造

多くの地方都市が若者の流出に悩む中、スロベニアの小都市イドリヤは、若者を地域に繋ぎ止めるための独創的なアプローチを実践した 2市の市長は、若者のための施設を行政が計画して与えるのではなく、地元の若者たち自身に、町の公共空間で何を実現したいかを問い、そのための予算と権限を与えた。

若者たちは、自分たちでプロジェクトチームを組織し、スケートランプの設置、野外映画祭の開催、広場での大規模なボードゲームイベントなどを企画・実行した 89。このプロセスを通じて、若者たちは単なる公共サービスの消費者ではなく、自らが暮らす街を形作る能動的な主体となった。この経験は、彼らに実践的なスキルと成功体験をもたらし、地域への深い愛着と当事者意識を育んだ。イドリヤの事例は、若者を「解決すべき問題」としてではなく、「地域の最も貴重なインフラ」として捉え、彼らに投資することの重要性を示している。

※参考:【世界遺産】水銀の遺産アルマデンとイドリヤ|中世に思いを馳せる鉱山遺産 – skyticket 観光ガイド 

26. レッジョ・エミリア・アプローチ(世界的な応用)

イタリアの小都市レッジョ・エミリアで生まれたこの幼児教育哲学は、今や世界中の教育者に影響を与えているが、その本質は学校教育の枠を超えた、コミュニティ全体の学習モデルである 91。このアプローチの核心的な考え方の一つに、環境は第三の教師というものがある。これは、子どもたちが多くのことを学ぶのは、物理的な空間や教材、そして人間関係といった環境そのものからであるという思想92

もう一つの重要な実践がペタゴジカル・ドキュメンテーション(教育の記録)である 93教師は、写真やビデオ、子どもたちの言葉の書き起こしなどを用いて、彼らの学びのプロセスを注意深く記録し、それを美しい形で壁に展示する。これにより、子どもたちの思考や探求の軌跡が「見える化」され、子ども自身が学びを振り返るだけでなく、保護者や地域住民も子どもたちの学びの世界に参加することができる 95。この哲学を地域全体に応用すれば、図書館や公園、商店街といったあらゆる場所が「学びの場」となり、地域全体が相互に学び合う巨大なエコシステムへと変貌する可能性を秘めている。

※参考:「こそだて家族を解放する、幸せな新視点」第2弾 幼児教育の場が「まちにひらく」とは? 子どもの自主性を伸ばしていく「まちの保育園」の取り組み |博報堂WEBマガジン センタードット 

27. ブルーゾーン・プロジェクト(世界的な応用)

ジャーナリストのダン・ベットナーは、沖縄(日本)、サルデーニャ(イタリア)、イカリア(ギリシャ)など、世界に5存在する百寿者が突出して多い地域を「ブルーゾーン」と名付け、その共通のライフスタイルを分析した 96。その原則には、「自然な運動(ジムではなく、庭仕事など)」「生きがい(目的意識)」「腹八分目」「信頼できる仲間(Right Tribe)」などが含まれる。

ブルーゾーン・プロジェクト」は、これらの原則を、他の地域に意図的に導入し、コミュニティ全体の健康と幸福度を向上させることを目指す社会実験である。例えば、米国のミネソタ州アルバート・リーという小さな町では、このプロジェクトを通じて、歩道の整備、自転車専用レーンの設置、レストランのメニューに健康的な選択肢を増やす働きかけ、そして住民が共通の目的で集まるウォーキンググループの結成などを推進した 96。その結果、住民の平均余命が延び、医療費が削減されるといった具体的な成果が報告されている。これは、個人の努力だけに頼るのではなく、人々が健康的な選択を「無意識に」できるような環境を地域ぐるみでデザインすることの有効性を示している。

※参考:ブルーゾーン 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール

28. トランジション・タウン運動(世界)

2005年に英国のトットネスで始まったこの市民運動は、気候変動や石油資源の枯渇といった地球規模の課題に対し、地域レベルでのレジリエンス(強靭性)を高めることを目指す 97。その活動は、地域通貨の導入、コミュニティ農園の運営、再生可能エネルギーの推進など多岐にわたるが、この運動がユニークなのは、「インナー・トランジション(内なる移行)」という側面を重視している点である 97

これは、脱炭素社会への移行が、技術や制度の変革だけでなく、人々の価値観や世界観、そして心理的な変容を伴うという認識に基づいている。地球の未来に対する不安や喪失感といった感情に正直に向き合い、それをコミュニティで共有し、希望や創造性へと転換していくためのワークショップや対話の場が設けられる。トランジション・タウン運動は、持続可能な社会への移行が、外面的な行動変容だけでなく、私たちの内面的な在り方の変容と不可分であることを教えてくれる。

29. インド、サトナヴリ村:スマート・インテリジェント・ビレッジ

インド中部のナグプール近郊にある人口1,800人の小さな村、サトナヴリは、インド初の「スマート・インテリジェント・ビレッジ」を目指す国家的なパイロットプロジェクトの舞台となっている 99。このプロジェクトは、最先端のデジタル技術を農村の日常生活に統合し、生活の質の向上と持続可能な発展を両立させることを目的としている。

具体的には、ドローンを活用した精密農業やスマート灌漑システム、全住民への電子健康カードの発行と遠隔医療サービスの提供、AIを統合したデジタル教材を導入した学校や保育施設(アンガンワディ)、そして村役場(グラム・パンチャヤット)でのリアルタイムデータに基づいた行政サービスなどが導入されている 99。この取り組みは、テクノロジーが都市部だけでなく、最もインフラが脆弱な農村地域においてこそ、教育、医療、農業、行政といった基本的なサービスを飛躍的に向上させるポテンシャルを持つことを示している。

30. ベルギー、ルーヴェン市

人口約10万人の大学都市ルーヴェンは、その規模に不釣り合いなほど野心的な持続可能都市政策で世界から注目されている 1モハメド・リドゥアニ市長の強力なリーダーシップの下、市は「欧州イノベーション首都賞」を受賞するに至った数々の先進的な取り組みを推進してきた。

その代表例が、市中心部から自動車を段階的に締め出し、広範な歩行者専用ゾーンと自転車レーンネットワークを整備したことである。この大胆な政策転換の結果、わずか1年で自転車での移動が32%も増加した 1。さらに、バスネットワークへの投資や、公共空間の緑化も積極的に進められている。ルーヴェンの事例は、気候変動対策や生活の質の向上が、市民に不便を強いるものではなく、むしろより快適で健康的な都市生活を実現するものであることを示している。そして、そのためには、明確なビジョンと政治的な意思決定がいかに重要であるかを物語っている。

※参考:自動車の乗り入れ禁止でサイクリング天国に、ベルギーの都市ルーヴェン | PLUGO JOURNAL 

人間開発パラダイムからの洞察と日本への応用可能性

人間開発パラダイムは、地域再生の最終的な目標が、人口増加や企業誘致といった中間指標ではなく、住民一人ひとりの幸福であることを再確認させる。

第一に、若者を「地域のインフラ」として捉え直す視点である。日本の多くの地方創生計画は、都市部からの若者の「移住誘致」に多額の予算を投じている。しかし、スロベニアのイドリヤ市の事例 2 は、より根本的で持続可能なアプローチを示唆する。それは、今いる地元の若者に投資することだ。彼らに本物の権限とリソースを与え、地域の未来を創る主役として扱うことで、彼らのスキルは向上し、地域への愛着は深まり、結果として定着に繋がる

外部から人を呼び込む前に、内部の人材を育てる。若者は「解決すべき問題」なのではなく、投資すべき最も重要な「未来のインフラ」なのである。

第二に、ウェルビーイング(幸福)は社会コストではなく、経済の駆動力であるという認識の転換である。ブルーゾーン・プロジェクト 96 が示すように、歩きやすく、社会的な繋がりが生まれやすく、健康的な食事が手に入りやすい街をデザインすることは、単なる公衆衛生政策ではない。それは、街の魅力を高め、不動産価値を安定させ、長期的には医療費という最大の社会コストを削減する、極めて効果的な経済開発戦略である。ブータンのGNH 87 は、この考え方を国家レベルの政策フレームワークに昇華させた。人口減少に直面する日本の自治体にとって、工場誘致のような従来の経済モデルを追い求めるのではなく、「日本で最も健康な町」「日本で最も人との繋がりが豊かな町」を目指すことが、結果として最も持続可能で強力な経済戦略となりうる。


第VI部 統合と応用:日本の再生可能エネルギーと脱炭素化の未来に向けた設計図

これまで分析してきた世界30の事例とそこから得られた10の洞察は、単なる興味深い物語ではない。それらは、日本の地方が直面する再生可能エネルギー導入と脱炭素化という喫緊の課題を解決するための、具体的で実践的なツールキットである。経済産業省や環境省の報告書が指摘するように、日本の地方における再エネ導入は、主に4つの根源的な課題に直面している 2。本章では、これらの課題に対し、グローバルな知見を応用した解決策のブループリントを提示する。

1. 「対立」から「共創」へ:合意形成(Consensus Building)の問題を解決する

課題の特定

日本の地方における再エネプロジェクトの最大の障壁は、技術や資金ではなく、「合意形成」の難しさにある。地域住民との対話不足や、事業者の情報不透明性、景観や安全への懸念から、計画が頓挫するケースが後を絶たない 19。これは、プロジェクトが地域にとって「他人事」であり、しばしば「迷惑施設」と見なされることに根本的な原因がある。

解決策のブループリント

  • ドイツの協同組合モデル(洞察1)の導入: 最大の処方箋は、住民を「説得の対象」から「事業の主体」へと転換することである。ドイツの市民エネルギー協同組合 6 に倣い、地域住民が少額から出資し、再エネ事業の共同オーナーになれる法的・金融的枠組みを整備する。具体的には、地域金融機関と連携した「市民エネルギーファンド」の創設や、協同組合設立を支援する専門NPOの育成が考えられる。利益が配当として地域住民に還元され、運営方針に住民の意思が反映されるようになれば、再エネ事業は自らの資産となり、合意形成は内発的に達成される。

  • 「イベントからエコシステムへ」(洞察3)の発想の適用: 再エネ施設を、単なる発電所としてではなく、越後妻有 29 のように、地域全体の活性化の中核をなす「文化装置」として位置づける。例えば、風力発電所の建設と同時に、その利益を原資として、廃校を改修した環境教育センターや、地元の食材を使ったレストランを併設する。発電所そのものが、地域の新たな物語と誇りのシンボルとなり、教育ツーリズムや産業観光の拠点となるような、複合的な事業計画を策定することが重要である。

2. 地域のアクターをエンパワーする:人材不足(Human Resource Gap)の問題を解決する

課題の特定

特に小規模な地方自治体では、脱炭素化や再エネ導入といった専門的な政策を立案・実行するための人材が絶望的に不足している 101頻繁な人事異動も、専門性の蓄積を妨げている。結果として、計画策定が進まない、あるいは外部のコンサルタントに丸投げとなり、地域の実情に合わない計画が作られるといった事態が生じている。

解決策のブループリント

  • 地域の「アンカー社会事業」(洞察7)の育成: 行政職員だけに頼るのではなく、フォゴ島のショアファスト財団 64 のように、地域のエネルギー転換を専門に担う「社会事業(ソーシャル・エンタープライズ)」を意図的に育成する。この組織は、行政からの業務委託や、エネルギー事業そのものから収益を上げ、専門人材を独自に雇用・育成する。これにより、行政の枠を超えて、長期的かつ安定的に地域の脱炭素化を牽引する専門家集団を地域内に確保することができる。

  • 「インフラとしての若者」(洞察9)への投資: スロベニアのイドリヤ市 89 の発想を応用し、地元の高校や大学と連携した「地域エネルギー・イノベーター育成プログラム」を創設する。学生たちが、実際の再エネ導入プロジェクトの計画策定や、省エネキャンペーンの企画・運営に実践的に関わる機会を提供する。これは、単なる職業体験ではなく、地域の未来を担う人材への先行投資であり、彼らが卒業後も地域に残り、エネルギー分野で活躍する素地を育む

3. レジリエントな地域グリッドを構築する:系統制約(Grid Constraints)の問題を解決する

課題の特定

北海道や東北など、再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域ほど、大消費地から遠く、既存の送電網(グリッド)の容量が不足している 20。これにより、せっかく発電した電気が送れずに抑制される「出力制御」が頻発し、新たな再エネ導入のボトルネックとなっている 107

解決策のブループリント

  • 自立分散型コミュニティグリッドの推進: 国の基幹送電網に100%依存するのではなく、エコビレッジの思想 58 に学び、地域内でエネルギーを地産地消する「マイクログリッド」の構築を政策的に支援する。ドイツの電力システム研究が示すように、技術的には高い比率の変動性再エネ(VRES)を安定的に統合することは可能である 107公共施設や避難所、地域の主要産業などを中心に、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた自立型のエネルギーネットワークを構築することで、国の系統への負担を軽減すると同時に、災害時のエネルギーレジリエンスを飛躍的に高めることができる。

4. 地域エネルギー事業を収益化する:地域新電力の脆弱な事業モデルを解決する

課題の特定

自治体などが出資して設立される「地域新電力」は、地域経済循環の担い手として期待されているが、その多くが経営に苦戦している 105。大手電力会社との価格競争力に乏しく、顧客獲得が難しい上、電力調達コストの変動リスクに晒されやすい 82。従業員ゼロで、業務のほとんどを地域外の事業者に丸投げしているケースも少なくない 106

解決策のブループリント

  • 「価値の多重化(Value Stacking)」と経済的透明性(洞察8)の実践: 地域新電力は、安売り競争から脱却しなければならない。フォゴ島イ​​ンの「経済栄養表示ラベル」 65 のコンセプトを応用し、電気料金の内訳を透明化する。「あなたの電気代のX%が、地元の小学校の環境教育プログラムに使われます」「Y%が、地域の雇用創出に繋がっています」といった形で、顧客が支払う電気代が、単なるエネルギーの対価ではなく、地域コミュニティへの投資であることを明確に伝える。これにより、価格以外の付加価値で顧客のロイヤルティを獲得する。

  • 「正の外部性」の収益化(洞察6)モデルの構築: コスタリカのPESプログラム 46 のように、地域新電力が提供する「エネルギー以外の価値」を収益源とする仕組みを構築する。例えば、地域新電力が木質バイオマス発電所を運営する場合、単に電気を売るだけでなく、発電所の周辺の森林を管理することで得られる「水源涵養効果」や「生物多様性保全効果」を自治体や地域の企業が評価し、その対価を支払う「地域版PES」を導入する。これにより、事業の収益構造が多角化し、経営の安定性が向上する。


結論:未来は建設されるのではなく、育てられる

本レポートで探求してきた世界30の小都市の物語は、一つの共通した真実を指し示している。それは、真にレジリエントで活力ある未来は、外部から巨大な資本や計画によって「建設」されるものではなく、地域の内側から、その場所固有の文化、人間関係、そして自然との繋がりを基盤として、有機的に「育てられる」ものであるということだ。

ドイツの農民がエネルギー協同組合を組織し、メデジンの若者がライブラリーパークに集い、上勝町の高齢者が一枚の葉に新たな価値を見出す。これらの行為は、一見すると小さく、取るに足らないように見えるかもしれない。しかし、それらが積み重なる時、地域社会のOSそのものを書き換えるほどの強力な変革の力となる

日本の地方が直面する課題は深刻である。しかし、それは同時に新たな価値創造の機会でもある

本レポートが提示した5つのパラダイムと10の洞察は、そのための羅針盤となるはずだ。今、日本の政策決定者に求められているのは、単にインフラに資金を投じることではない。ドイツの協同組合法や英国のCLTモデルのように、人々が自らの手で未来を育むための「土壌」、すなわち制度的・社会的なエコシステムに投資することである。

未来は、遠いどこかで誰かが作るものではない。それは、今日、この場所で、私たち一人ひとりが、隣人と手を取り合い、自らの地域の可能性を信じて行動を起こすことによって、ゆっくりと、しかし確実に育てられていくものなのである。


よくある質問(FAQ)

Q1: 地域再生に取り組みたい小さな町にとって、最も効果的な最初のステップは何ですか?

A1: 最も効果的な最初のステップは、大規模なプロジェクトを計画することではなく、地域内に存在する「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」を可視化し、強化することです。具体的には、地域のキーパーソン、活動的なグループ、潜在的なリーダーを特定し、彼らが集い、対話し、小さな成功体験を共有できるプラットフォーム(定期的なワークショップや交流会など)を作ることです。トランジション・タウン運動 98 が示すように、まず人々の繋がりと信頼関係を醸成することが、あらゆるプロジェクトの成功の土台となります。

Q2: このような革新的なプロジェクトの資金は、どのように調達すればよいですか?

A2: 資金調達は多様なアプローチを組み合わせることが重要です。

  1. 市民出資: ドイツのエネルギー協同組合 6 のように、多くの住民から少額の出資を募るモデルは、資金調達と合意形成を同時に達成できます。

  2. 公的助成金と民間財団: 特にプロジェクトの初期段階では、コミュニティ住宅基金(英国CLTの例 10)のような公的資金や、民間の助成金が不可欠です。

  3. 社会事業からの収益: フォゴ島イ​​ン 64 のように、収益性の高い社会事業を立ち上げ、その利益を他の非営利活動に再投資するモデルは、長期的な財政的自立を可能にします。

  4. 新たな価値の収益化: コスタリカのPESプログラム 46 のように、これまで無償とされてきた環境サービスなどに価値をつけ、新たな収入源とすることも可能です。

Q3: 経済的な指標以外で、コミュニティプロジェクトの成功をどのように測定できますか?

A3: 成功の測定には、経済的指標に加えて、社会的・人間的な側面を捉える多角的な視点が必要です。

  1. シビックプライド(市民の誇り): アンケート調査などを用いて、プロジェクト前後で住民の地域への誇りや愛着がどう変化したかを測定します 24

  2. ソーシャル・キャピタル: 地域のイベントへの参加率、ボランティア活動への参加時間、住民間の交流頻度などを測定し、コミュニティ内のネットワークの密度や質を評価します 85

  3. ウェルビーイング(幸福度): ブータンのGNH 87 を参考に、健康、教育、コミュニティの活力など、住民の主観的な幸福度や生活の質に関する指標を定点観測します。

Q4: コミュニティがこれらのアイデアを実行しようとする際に犯しがちな最大の過ちは何ですか?

A4: 最大の過ちは、「解決策の性急な導入」です。他の地域で成功したモデルを、自らの地域の文脈や社会的条件を十分に理解しないまま、表面的に模倣しようとすることです。上勝町のゼロ・ウェイスト 41 が成功したのは、その背景に強固なコミュニティの結束があったからであり、その社会的基盤なしに分別システムだけを導入しても機能しません。まず、自らの地域の固有の資産(文化、人材、自然)と課題を、住民自身が深く対話し、理解するプロセス(トランジション・デザインで言うところの現状分析 38)を省略することが、最も失敗につながりやすいです。

Q5: これらの小都市のモデルは、本当に大都市圏にも応用可能ですか?

A5: はい、応用可能です。ただし、スケールを変換する工夫が必要です。大都市全体で一つのモデルを適用するのではなく、特定の「地区」や「近隣住区」を単位として考えることが有効です。例えば、メデジンのライブラリーパーク 35 は、大都市の中の特定の貧困地区を対象とした介入でした。バルセロナのカン・バトリョ 15 も、サンツという一つの地区の住民運動から始まっています。大都市においては、これらの小都市のモデルを、より小さなコミュニティ単位での「プロトタイプ」として導入し、成功すれば他の地区へ展開していくというアプローチが現実的かつ効果的です。


ファクトチェック・サマリー

本レポートは、2025年7月時点で公表されている学術論文、業界レポート、及び事例研究の網羅的な分析に基づいています。全ての統計データ、プロジェクトの詳細、引用された成果は、提示された出典資料(22109269)と照合されています。本レポートにおける分析と洞察は、これらのデータに対する専門的な解釈を代表するものであり、事実に関する主張は、入手可能な証拠に基づき可能な限り正確に記述されています。透明性と更なる検証のため、主要な出典は本文中にハイパーリンク形式で示されています。

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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