AI推進法とは?(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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目次

AI推進法とは?(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)

日本のAI戦略が変わる新時代の幕開け

2025年5月28日日本で初めてとなるAIに特化した法律「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(通称:AI推進法)参議院本会議で可決・成立しました。本法は、AI技術の研究開発と活用を国家戦略として推進しつつ、その潜在的リスクにも対応する枠組みを整備するものです。世界的にAI規制の流れが加速する中、日本は「イノベーション促進」と「適切なリスク管理」を両立させる独自のアプローチを打ち出しました。本記事では、AI推進法の全容と企業・社会への影響、そして今後の展望について徹底解説します。

AI推進法の成立背景と目的

成立の経緯とグローバルな文脈

AI推進法は2025年2月28日に閣議決定され、4月24日に衆議院本会議で可決、5月28日に参議院本会議で可決・成立しました16。この法律は、急速に発展するAI技術を日本社会全体で活用し、経済成長や社会課題の解決につなげるための包括的な枠組みを提供するものです。

この法律が成立した背景には、グローバルなAI開発競争の激化があります。特に米国や中国がAI技術開発で先行する中、日本も国家戦略としてAI開発・活用を推進する必要性が高まっていました。また、EUが2024年に世界初の包括的なAI規制法「AI Act」を制定するなど9、世界各国でAIに関する法制度が整備される流れの中で、日本も独自のアプローチを打ち出す必要がありました。

基本法としての性質と位置づけ

AI推進法は、基本法という性質を持っています。これは「教育基本法」や「災害対策基本法」と同様に、特定分野における国の基本方針や理念を定める法律です17。つまり、この法律自体が細かい規制を直接定めるのではなく、今後のAI政策の方向性を示し、それに基づいて具体的な施策や規制が展開されていくという位置づけになります。

医療分野でのAI活用は医薬品医療機器等法(薬機法)、自動運転車関連では道路運送車両法など、各分野での個別法による具体的規制が引き続き適用される形となります17

AI推進法の明確な目的

法律の第1条(目的)では、本法の目的が明確に示されています:

「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策について、基本理念並びに基本的な計画の策定その他の施策の基本となる事項を定めるとともに、人工知能戦略本部を設置することにより、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与すること」5

つまり、AI推進法はイノベーションの促進とリスク対応の両立を目指す法律といえるでしょう。

AI推進法の全体構成とポイント

法律の基本構造

AI推進法は全28条(附則を除く)から構成され、以下の4つの章に分かれています11

  1. 第1章 総則(第1条~第10条):法律の目的、AIの定義、基本理念、関係者の責務など

  2. 第2章 基本的施策(第11条~第17条):研究開発支援、人材育成、リスク対応など

  3. 第3章 人工知能基本計画(第18条):国のAI戦略の策定と公表

  4. 第4章 人工知能戦略本部(第19条~第28条):政策の司令塔組織の設置

この構成からも分かるように、本法は「国がどのようにAIを推進するか」という枠組みを定めることに主眼が置かれています。

「人工知能関連技術」の定義

法律第2条では「人工知能関連技術」について、以下のように定義しています:

「人工的な方法により人間の認知、推論及び判断に関わる知的能力を代替する機能を実現するために必要な技術並びに入力された情報を当該技術を利用して処理し、その結果を出力する機能を実現するための情報処理システムに関する技術」5

この定義は非常に広範囲にわたるもので、ディープラーニングから自然言語処理、画像認識、生成AIまで、現在開発・利用されているほぼすべてのAI技術を包含するものと解釈できます。

基本理念:バランスのとれたアプローチ

AI推進法の第3条では、基本理念として以下の点が強調されています:

  1. イノベーション促進:AIが経済社会および安全保障上極めて重要な技術であることを踏まえ、研究開発力の維持・向上や国際競争力の強化を図る1

  2. 包括的推進:基礎研究から実用化までの総合的・計画的な推進1

  3. リスク対応:AIの悪用や権利侵害のリスクに鑑み、透明性確保等の必要な措置を講じる1

  4. 国際協調:日本が国際的な協調のもとでAI分野のルール形成を主導する1

これらの理念は、イノベーションの促進リスク対応というある意味で相反する要素を巧みに組み合わせた、バランスのとれたアプローチといえるでしょう。

各主体の責務と役割分担

国の責務

国はAI関連技術の研究開発・活用の推進に関する施策を総合的に策定・実施する責務を負っています13。具体的には、以下のような役割が期待されています:

  • AI関連政策の企画・立案

  • 研究開発支援のための財政措置

  • 人材育成のための教育システム整備

  • 国際協力の推進

  • AI活用に伴うリスクへの対応策の検討

地方公共団体の責務

地方公共団体は、国の施策と連携しながらも、地域の実情に応じたAI活用施策を推進する責務があります13地域特有の課題解決や産業振興のためにAI技術を活用する役割が期待されています。

研究開発機関の責務

大学や研究所などの研究開発機関には、AI技術の高度化・実用化に向けた研究開発を推進し、その成果を普及する責務があります13。最先端の技術開発と、その社会への還元が求められています。

活用事業者(企業等)の責務

AI技術を活用する事業者には、適正な利用に努め透明性・公正性を確保し、利用者の権利利益を保護する責務があります13。さらに、国や地方公共団体の施策に協力することも求められています4

特に注目すべきは、事業者には「国等の施策に協力しなければならない」という努力義務が課されている点です4。罰則はないものの、指導や助言に従わない場合は事業者名が公表される可能性もあります4

国民の責務

国民にもAI技術への理解を深め、適正な利用に努める責務が定められています13。ただし、この「国民の責務」については国会審議の過程で「国民の努力」への修正案も出され、議論があったことが報じられています2

AI基本計画と戦略本部

AI基本計画の意義と内容

AI推進法の第18条では、政府が「人工知能基本計画」を策定することが定められており、この計画にはAI推進に向けた基本方針や政府が総合的・計画的に講ずべき施策などが盛り込まれることになります13

この基本計画は今後のAI政策の羅針盤となるもので、研究開発支援から人材育成、リスク対応、国際協力まで、AI推進に関する幅広い分野をカバーする包括的なものになると予想されます。

2025年6月2日、石破茂首相はAI基本計画を今冬までに策定するよう関係閣僚に指示しており、特に「地方の暮らしがどう変わるのか分かりやすいビジョンを盛り込んでほしい」と述べています7

AI戦略本部の設置と役割

AI推進法の第19条~第28条では、AI政策の司令塔となる「人工知能戦略本部」の設置が定められています13。本部長は内閣総理大臣、全閣僚がメンバーとなり、省庁横断的にAI政策を推進する役割を担います。

AI戦略本部の主な役割は以下の通りです:

  1. AI基本計画の策定と進捗管理

  2. AI関連施策の総合調整

  3. 関係省庁間の連携促進

  4. AI関連の情報収集・分析

  5. 国際協力の推進

石破首相は2025年6月2日、この戦略本部を今秋までに立ち上げる方針を表明しています8

基本的施策:イノベーション促進とリスク対応

研究開発支援の強化

AI推進法の第11条では、AI関連技術の研究開発推進のために国が講ずべき施策が定められています。研究開発機関における研究開発の促進、研究成果の移転体制の整備、研究成果に関する情報提供などが含まれています14

さらに第12条では、データセンターやデータセットなどの研究基盤の整備・共用促進も規定されており、これによりAI研究開発のための基盤が強化されることが期待されます14

太陽光発電や蓄電池などのエネルギーシステムと組み合わせたAI活用も、こうした支援の対象となることでしょう。例えば、太陽光発電と蓄電池を最適に制御するAIシステムは、再生可能エネルギーの普及促進に大きく貢献します。このような技術の経済効果を正確に把握するためには、シミュレーションツールが重要になりますが、エネがえるのようなシミュレーションソフトがその役割を果たすでしょう。

人材育成と教育

AI推進法の第14条と第15条では、AI人材の確保と教育振興に関する施策が定められています14。AI開発と活用を推進するためには、高度な専門人材の育成が不可欠です。

政府は2025年度予算案において、AI関連予算として約1,641億円を計上しており、そのうち約10億円が「地域デジタル人材育成・確保推進事業」や「私立大学等における数理・データサイエンス・AI教育の充実」など、人材育成に関連する予算となっています10

リスク対応と透明性確保

AI推進法の第16条では、AI技術の不正利用や権利侵害のリスクに対応するための規定が設けられています14

「国は、国内外の人工知能関連技術の研究開発及び活用の動向に関する情報の収集、不正な目的又は不適切な方法による人工知能関連技術の研究開発又は活用に伴って国民の権利利益の侵害が生じた事案の分析及びそれに基づく対策の検討その他の人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に資する調査及び研究を行い、その結果に基づいて、研究開発機関、活用事業者その他の者に対する指導、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。」14

これは、AI技術の悪用やプライバシー侵害、差別的取り扱いなどの問題に対して、国が情報収集・分析を行い、事業者に対して指導・助言を行うことを定めたものです。

また、第13条では、AI関連技術の適正利用を確保するための「国際的な規範に即した指針の整備」が定められており13、今後、政府によるAI利用ガイドラインの策定が進むと予想されます。

日本のAI推進法と世界のAI規制

EUのAI規制法との比較

EUのAI規制法(AI Act)は、AI技術をリスクベースで分類し、リスクの程度に応じた規制を課す厳格な法律です9。特に高リスクと判断されるAIシステムには厳しい規制が適用され、違反した場合には全世界売上高の6%または3,000万ユーロ(約47億円)の制裁金が課される可能性もあります9

一方、日本のAI推進法は「基本法」としての性格が強く、直接的な罰則規定はありません4。企業に対しては努力義務を課し、指導・助言・情報提供などのソフトな手法でAIの適正利用を促す方針です。

この違いは、EUが「規制」を中心とするアプローチを取るのに対し、日本は「推進」を中心としつつリスクにも対応するアプローチを取っていることを示しています。

米国と中国のAI政策との違い

米国は、AIの開発と利用に関して、主に業界の自主規制を重視する傾向にあります。バイデン大統領による「AIに関する大統領令」も、政府機関へのAI開発・利用に関する指針を示すにとどまっています。

中国は「次世代AI発展計画」など、国家主導でAI開発を強力に推進する政策を展開していますが、同時にAIの軍事転用や倫理的問題にも注意を払っています。

日本のAI推進法は、米国のような自主規制と中国のような国家主導の間を取る形で、政府の方向性提示と民間の自主性を組み合わせたアプローチと言えるでしょう。

企業・組織に求められる対応

AI活用事業者の責務

AI推進法では、AI技術を開発・提供・利用する「活用事業者」に対して、以下のような責務が定められています:

「基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たって、人工知能関連技術の適正な利用に努めるものとする」(第7条)13

これは法的強制力を持つ「義務」ではなく「努力義務」ですが、企業はAIを利活用する際に、法律の趣旨を理解し、自主的に適切な対応を行うことが期待されています13

ガイドラインへの対応

AI推進法の第13条と第16条に基づき、国はAI事業者ガイドラインを整備することが予想されます13。企業はこれらのガイドラインに沿って、以下のような点に留意したAI活用を進める必要があるでしょう:

  1. 透明性の確保:AIシステムの判断プロセスや学習データを可能な範囲で説明できるようにする

  2. 公正性の確保:AIが特定の属性に対して不利益な扱いや差別を行わないようにする

  3. セキュリティの確保:AIシステムや関連データに対するサイバー攻撃や不正アクセスを防ぐ

  4. プライバシー保護:個人情報を適切に取り扱い、プライバシーを侵害しないようにする

  5. 人間中心の設計:AIシステムが人間の判断を補助するものであり、最終的な責任は人間が負うことを意識する13

企業が今から準備すべきこと

企業がAI推進法の施行を見据えて今から準備すべき事項として、以下のような点が挙げられます:

  1. AI倫理ポリシーの策定:自社のAI活用における倫理原則を明文化する

  2. AI開発・利用の透明性確保:AI開発・運用のプロセスを文書化し、説明可能性を高める

  3. 人材育成・教育:社員のAIリテラシー向上や専門人材の育成を進める

  4. リスク管理体制の整備:AI活用に伴うリスクを評価・管理する体制を構築する

  5. 国際標準への対応:グローバルなAI倫理規範や技術標準に対応できる体制を整える

特にエネルギー分野では、産業用自家消費型太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションソフト「エネがえるBiz」などのツールを活用して、AI技術導入による経済効果を事前に評価することが重要になるでしょう。企業が蓄電池や太陽光発電などの導入を検討する際に、AIを活用した電力需給予測システムによる効果を定量的に把握することで、投資判断の精度を高めることができます。

AI推進法の政策的意義と社会への影響

日本のAI戦略における位置づけ

AI推進法は、日本のAI戦略を法的に裏付ける重要な枠組みです。これまで日本は「AI戦略2022」などの政府戦略はあったものの、法的根拠を持つ包括的なAI推進の枠組みは存在しませんでした。

この法律の成立によって、省庁横断的なAI政策の推進が可能になり、予算措置や人材育成、研究開発支援などがより体系的に実施できるようになります。

産業競争力強化への期待

AI推進法による研究開発支援や人材育成の強化は、日本の産業競争力向上にも大きく貢献すると期待されています。特に、世界的にAI開発競争が激化する中、日本企業のAI活用を後押しする効果が見込まれます。

石破茂首相は「世界で最も研究開発がしやすい国を目指していく」と強調しており8、政府の強いコミットメントがうかがえます。

社会課題解決への活用

AI技術は、人手不足や少子高齢化など日本が直面する社会課題の解決にも大きな可能性を秘めています。AI推進法に基づく基本計画には、特に地方の暮らしがどう変わるのかという視点も含まれる予定です7

具体的には、介護分野での入浴・移動支援ロボット、農業分野での土壌状態分析や遠隔農作業支援、医療分野での診断・手術支援などでのAI活用が想定されており、地方の人手不足対策や生産性向上に貢献することが期待されています7

AI推進法の実装と今後のロードマップ

今後の実施スケジュール

AI推進法の今後の実施スケジュールは、以下のように進む見込みです:

  1. AI戦略本部の設置:2025年秋までに立ち上げ8

  2. AI基本計画の策定:2025年冬までに策定7

  3. 具体的な支援策・ガイドラインの整備:2026年以降順次実施

特にAI基本計画には、「フィジカルAI」(自動運転やロボット技術)やAIを活用した地方創生の取り組みが中心的に盛り込まれる予定です7

2025年度AI関連予算の状況

政府は2025年度予算案において、AI関連予算として約1,641億円を計上しており、これは前年度比約44%増となっています10。この予算は以下のような分野に配分される予定です:

  1. リスクへの対応:約10.6億円

  2. AI開発力の強化:約568.4億円

  3. AIの利用促進:約601.2億円

  4. 国際的なルール形成への貢献:約3.0億円

  5. 高品質データの整備・拡充:約40.5億円

  6. 計算資源の整備・拡充:約164.8億円10

このように、AI推進法の施行に向けた予算的裏付けも着々と整備されています。

国際協調とルール形成

AI推進法の基本理念には、日本が国際協調のもとでAI分野のルール形成を主導することも含まれています1。AIの開発・活用は一国にとどまらずグローバルな影響を持つため、国際的な協力とルール形成が不可欠です。

日本は、G7やOECD、国連などの場でAIガバナンスに関する議論に積極的に参加し、「人間中心のAI」という理念を国際的に広めることを目指しています。AI推進法はこうした国際的な取り組みの法的基盤ともなるでしょう。

企業がAI推進法に対応するためのガイドライン

AI開発・提供企業向けガイドライン

AIを開発・提供する企業は、以下のような点に留意することが重要です:

  1. 透明性の確保

    • AIシステムの挙動や判断根拠を説明できる仕組みの導入

    • 学習データの選定基準や前処理方法の文書化

    • AIモデルの性能指標や限界の明示

  2. 公平性と非差別性の担保

    • バイアスを検出・軽減するための仕組みの導入

    • 多様なデータセットによる学習と検証

    • 定期的な公平性評価の実施

  3. セキュリティとプライバシーの保護

    • 堅牢なセキュリティ対策の実装

    • 個人データの最小限の利用と適切な匿名化

    • プライバシー・バイ・デザインの原則の採用

  4. ガバナンス体制の構築

    • AI倫理委員会の設置

    • 開発・運用プロセスの文書化と監査体制の整備

    • インシデント対応計画の策定

AI利用企業向けガイドライン

AIを業務に活用する企業は、以下のような点に注意することが望ましいでしょう:

  1. 適切なAIシステムの選定

    • 利用目的に適したAIソリューションの選択

    • ベンダーのAI倫理・ガバナンス体制の確認

    • 説明可能性やリスク対応能力の評価

  2. 社内体制の整備

    • AI利用ポリシーの策定

    • 従業員向けAIリテラシー教育の実施

    • AIシステム利用の監視・評価体制の構築

  3. 具体的な利用シーン別の対応

    • 顧客対応:透明性確保とオプトアウト機会の提供

    • 業務効率化:人間によるチェック体制の維持

    • 意思決定支援:最終判断の人間による実施

太陽光発電や蓄電池システムの導入を検討する企業にとっては、エネがえるのような経済効果シミュレーションツールとAI技術を組み合わせることで、より精度の高い投資判断が可能になります。実際にエネがえるを導入した企業では、蓄電池のクロージングまでにかかる時間が1/2〜1/3に短縮され、成約率も大幅に向上した事例もあります。

AI推進法の数理モデルとシミュレーション

AIの経済効果予測モデル

AI推進法の経済効果を推計するための簡易的なモデルを考えてみましょう。AI導入による経済効果は以下の式で表すことができます:

text
経済効果 = Σ(労働生産性向上効果 + 新規事業創出効果 + 社会コスト削減効果 - AI導入・運用コスト)

ここで、

  • 労働生産性向上効果 = 労働時間削減量 × 平均時給 × 導入企業数

  • 新規事業創出効果 = 新規事業による売上増 × 平均利益率

  • 社会コスト削減効果 = 削減された社会的費用(医療費削減など)

  • AI導入・運用コスト = 初期投資 + 運用コスト × 運用期間

例えば、中小企業100万社がAIを導入し、1社あたり年間1,000時間の労働時間削減(時給2,000円と仮定)が実現した場合、労働生産性向上効果だけで年間2兆円の経済効果が見込まれます。

リスク・機会マトリックスによる評価

AI推進法の影響を評価するためのリスク・機会マトリックスを以下に示します:

分野 機会(+) リスク(-) 対応策
研究開発 資金増加、計算資源整備 国際競争の激化 戦略的研究領域への集中投資
産業応用 生産性向上、新サービス創出 既存産業の破壊 段階的導入と再教育
雇用 高付加価値職の増加 単純労働の自動化 労働移行支援と再教育
プライバシー 個人情報漏洩、監視社会化 透明性確保、データ保護
創作・著作権 創作支援ツールの発展 著作権侵害の増加 権利保護と公正利用のバランス

AI導入効果計算式

企業がAI導入を検討する際の投資回収期間(ROI)を計算する式は以下のようになります:

text
ROI期間 = 初期投資額 ÷ 年間純便益
年間純便益 = 年間便益 - 年間運用コスト
年間便益 = 労働コスト削減 + 売上増加 + 品質向上効果 + その他便益

例えば、太陽光発電と蓄電池システムを導入する際にAIによる最適制御を組み合わせた場合、以下のような計算が可能になります:

text
AIによる追加便益 = 電力需給予測精度向上による節電効果 + ピークカット効果向上 + メンテナンス最適化効果

実際の導入事例では、AIを活用した電力需給予測によって、従来比5〜15%程度の追加的な電力コスト削減効果が報告されています。このような効果を正確に予測するためには、エネがえるBizのようなシミュレーションツールが大いに役立ちます。

リスク対応とガバナンス

AI推進法におけるリスク対応の考え方

AI推進法では、AIのリスクに対して以下のようなアプローチを取っています:

  1. 透明性の確保:第3条(基本理念)において、AIの研究開発・利用の過程における「透明性の確保」が明記されています1

  2. リスク調査と対応:第16条では、不正利用や権利侵害の事案について分析・対策検討を行い、必要な措置を講じることが定められています14

  3. 国際規範に即した指針整備:第13条では、国際的な規範に即した指針の整備が規定されています14

これらの規定は、AIのリスクを予防・対応するための基盤となるものですが、注目すべきは直接的な規制ではなく、調査・分析・指導・助言というソフトな手法を中心としている点です。

不正利用への対応メカニズム

AI推進法では、不正利用や権利侵害が生じた場合の対応として、以下のようなメカニズムが規定されています:

  1. 調査・分析:国が事案を調査・分析

  2. 対策検討:分析結果に基づいて対策を検討

  3. 指導・助言:研究開発機関や活用事業者に対して指導・助言・情報提供

  4. 事業者名公表:改善しない場合は事業者名の公表も検討4

このように、段階的な対応が想定されており、まずは情報提供や助言によって問題解決を図り、それでも改善しない場合には社会的な制裁(事業者名の公表)を行うというアプローチです。

自主的なガバナンスの重要性

AI推進法が直接的な罰則を設けず、努力義務と指導・助言を中心としたソフトな規制アプローチを取っていることから、企業や研究機関による自主的なAIガバナンスの重要性が高まっています。

企業は以下のようなAIガバナンスの体制を構築することが望ましいでしょう:

  1. AI倫理方針の策定:自社のAI開発・利用に関する倫理原則を明文化

  2. AI倫理委員会の設置:AIの利用方針や倫理的問題を検討する組織の設置

  3. AIリスク評価:新たなAIシステム導入前のリスク評価プロセスの確立

  4. 透明性レポートの公表:AIシステムの概要や影響評価結果の公表

  5. 定期的な監査とレビュー:AIシステムの動作や影響の定期的な検証

海外事例と日本の特徴

EUのAI規制法との詳細比較

日本のAI推進法とEUのAI規制法(AI Act)を比較すると、以下のような顕著な違いがあります:

項目 日本のAI推進法 EUのAI規制法
法的性質 基本法(枠組み法) 直接適用される規制法
規制手法 努力義務と指導・助言 リスク分類による禁止・規制
罰則 なし(事業者名公表の可能性) 最大で全世界売上の6%または3000万ユーロの制裁金
AIの分類 なし リスクレベルによる4段階分類
規制対象 主に国内のAI開発・利用 EU域内だけでなく越境適用あり
主な狙い イノベーション促進とリスク対応 安全性確保と権利保護

EUのAI規制法は、厳格な規制によって安全性と権利保護を確保しようとする「事前予防原則」的なアプローチであるのに対し、日本のAI推進法はイノベーション促進を優先しつつ必要な場合に指導・助言を行うという「事後対応」型のアプローチといえます。

米国のアプローチとの比較

米国のAI政策は、主に自主規制を基本としていますが、バイデン政権は2023年10月に「AIに関する大統領令」を発出し、政府機関におけるAIの開発・調達・使用に関するガイドラインを示しました。

日本のAI推進法は、米国のような完全な自主規制ではなく、国による方向性の提示民間の自主的取り組みを組み合わせた中間的なアプローチと位置づけられます。

中国の国家主導型政策との対比

中国は「次世代AI発展計画」などを通じて、国家主導でAI開発を強力に推進しています。国家的な目標設定と大規模な資金投入によって、AI技術の急速な発展を実現しています。

日本のAI推進法は、中国のような強力な国家主導型ではありませんが、AI戦略本部の設置や基本計画の策定など、国による方向性の提示という点では共通する部分があります。ただし日本の場合は、民間の自主性を尊重する要素が強く、より柔軟なアプローチとなっています。

業界別・分野別の影響と対応戦略

製造業におけるAI活用と法対応

製造業では、品質管理、予測保全、工程最適化などでAIの活用が進んでいます。AI推進法の施行により、以下のような対応が求められるでしょう:

  1. 品質と安全性の確保:AIによる検査・判断の精度向上と人間によるチェック体制の維持

  2. 労働環境との調和:AIと人間の適切な役割分担と労働者のリスキリング

  3. データガバナンス:製造データの適切な管理と保護

太陽光パネルや蓄電池の製造プロセスにおいても、AIを活用した品質検査や生産最適化が進むことで、より高性能で信頼性の高い製品を効率的に生産できるようになります。そうした技術革新の経済効果を正確に把握するためにも、エネがえるのようなシミュレーションツールの活用が有効です。

医療・ヘルスケア分野での展開

医療・ヘルスケア分野では、診断支援、医薬品開発、患者ケアなどでAIの活用が期待されています。AI推進法の下での対応ポイントは以下の通りです:

  1. 患者情報の保護:医療データの匿名化と適切な同意取得

  2. AIの判断と医師の責任:AIは支援ツールとしての位置づけを明確化

  3. 診断精度の検証:継続的な検証と改善のプロセス確立

石破首相は、AI基本計画にヘルスケア分野でのAI活用を盛り込む方針を示しており7、今後この分野での支援策が強化される見込みです。

金融業界でのAI導入と規制対応

金融業界では、与信判断、市場予測、不正検知などでAIが活用されています。AI推進法への対応としては以下が重要です:

  1. 公平な与信判断:AIによる与信判断の透明性と公平性の確保

  2. アルゴリズム取引の監視:市場の安定性を損なわないための監視体制

  3. 説明責任の履行:顧客に対する適切な説明体制の整備

金融業界は既に厳格な規制下にあるため、AI推進法と金融規制の両方に対応するための統合的なガバナンス体制の構築が求められます。

公共部門におけるAI活用の指針

行政サービスや政策立案におけるAI活用も進んでいます。公共部門でのAI活用では以下の点に留意が必要です:

  1. 公平性と透明性:公共サービスにおける差別的取扱いの排除

  2. 個人情報保護:行政が保有する個人情報の適切な取扱い

  3. 説明責任:AI活用の判断プロセスを市民に説明できる体制

AI推進法は公共部門のAI活用にも適用されるため、政府や自治体もAI調達・利用ガイドラインの整備などを進める必要があります。

AI推進法の課題と今後の展望

法的課題と検討点

AI推進法には以下のような課題や検討点も存在します:

  1. 抽象的な規定:法律の条文が抽象的で具体的な行動指針が不明確

  2. 責任の所在:AIによる判断で損害が生じた場合の責任の所在が不明確

  3. 国際整合性:EUなど他国・地域の規制との整合性

  4. 技術進化への対応:急速に進化するAI技術に法規制が追いつけるか

これらの課題に対しては、ガイドラインの整備や継続的な法改正、国際協調などを通じて対応していく必要があります。

産業界からの期待と懸念

産業界からは、AI推進法に対して以下のような期待と懸念が示されています:

期待

  • 研究開発支援の強化による技術革新の加速

  • 国家戦略としてのAI推進による投資環境の整備

  • 人材育成の強化による専門人材の確保

懸念

  • 将来的な規制強化の可能性

  • 国際的な規制との不整合によるグローバル展開の障壁

  • ガイドライン整備の遅れによる予見可能性の低下

今後の進化の可能性

AI推進法は基本法としての枠組みを定めたものであり、今後の技術発展や社会状況に応じて、さらなる進化が予想されます:

  1. 個別分野への展開:医療AI、自動運転、金融AIなど分野別の詳細ガイドラインの整備

  2. 国際協調の深化:G7やOECDなどを通じた国際的なAIガバナンス構築への参画

  3. 制度の見直し:技術の進化や社会影響に応じた定期的な法制度の見直し

特に注目すべきは、2025年秋に設置予定のAI戦略本部が今後どのような政策を展開していくかという点でしょう。

AI推進法と持続可能な社会

AI×サステナビリティの可能性

AI技術は持続可能な社会の実現にも大きく貢献する可能性を秘めています:

  1. エネルギー最適化:再生可能エネルギーの発電予測や需給バランスの最適化

  2. 資源効率化:材料使用量の最適化や廃棄物削減

  3. 環境モニタリング:森林や海洋などの環境変化の高精度検知

  4. 循環型社会支援:リサイクル選別の高度化や製品寿命予測

特にエネルギー分野では、太陽光発電や風力発電などの変動性再生可能エネルギーの予測・制御にAIが活用されています。蓄電池と組み合わせることで、さらに効果的なエネルギーマネジメントが可能になります。

企業が太陽光発電や蓄電池を導入する際には、AIによる最適制御を前提とした経済効果のシミュレーションが重要です。エネがえるBizのようなシミュレーションツールは、そうした投資判断を支援する重要な役割を果たします。

人間中心のAI社会に向けて

AI推進法の附帯決議には、「AIの研究開発及び活用に当たっては、『人間中心のAI社会原則』に基づき、人間の尊厳を損なわないことを大前提とすること」が含まれています2

「人間中心のAI社会原則」とは、以下のような原則で構成されています:

  1. 人間の尊厳と自律:AIは人間の尊厳と自律を尊重するものであるべき

  2. 公平性:AIは公平で差別のないものであるべき

  3. 透明性と説明責任:AIの判断プロセスは透明で説明可能であるべき

  4. プライバシーの確保:AIはプライバシーを尊重するものであるべき

  5. セキュリティの確保:AIは安全で信頼できるものであるべき

これらの原則に基づきながら、AIの恩恵を最大化し、リスクを最小化する社会の実現を目指す必要があります。

実務者のためのQ&A

Q1: AI推進法は企業にどのような義務を課すのか?

A1: AI推進法は企業に対して直接的な義務を課すものではなく、基本理念に沿ってAI技術の適正利用に努めるという努力義務を定めています13。法的拘束力を持つ具体的な義務ではないものの、国が整備する指針(ガイドライン)に沿った対応が期待されます。

将来的には、この基本法に基づいて、より具体的な規制が個別法で定められる可能性もあります。

Q2: 不適切なAI利用が発覚した場合、どのような罰則があるのか?

A2: AI推進法自体には罰則規定はありません。不適切なAI利用が発覚した場合、国は調査・分析を行い、事業者に対して指導・助言・情報提供などの措置を講じることになります4

指導や助言に従わない場合は、事業者名が公表される可能性もありますが、金銭的な制裁や営業停止などの直接的な罰則はありません4。ただし、個人情報保護法や著作権法など、他の法律に違反する場合は、それらの法律に基づく罰則が適用される可能性があります。

Q3: 海外企業も対象になるのか?

A3: AI推進法は日本国内でのAI開発・活用を対象としており、基本的には日本国内で事業を行う企業が対象となります。ただし、法文上では適用対象が明確に限定されていないため、日本国内で事業を行う外資系企業も対象になると考えられます。

これはEUのAI規制法が域外適用を明確に規定しているのとは対照的です9

Q4: 企業はどのような準備をすべきか?

A4: 企業は以下のような準備を進めることが望ましいでしょう:

  1. AI倫理ポリシーの策定:自社のAI利用・開発における倫理原則を明確化

  2. リスクアセスメント体制の構築:AIシステムのリスク評価プロセスの確立

  3. ガバナンス体制の整備:AI関連の意思決定・監視体制の構築

  4. 情報収集と社内教育:AI関連の規制動向の把握と社内共有

  5. 記録と文書化:AI開発・利用プロセスの記録と文書化

特にエネルギー分野でAIを活用する企業にとっては、エネがえるの保証サービスのような、シミュレーション結果の保証を組み合わせることで、AI活用による経済効果の予測精度を高め、安心して投資判断を行うことが可能になります。

Q5: 国民の責務とは具体的に何を意味するのか?

A5: AI推進法の第8条では、国民の責務として「AI関連技術に対する理解と関心を深める」ことが定められています2。これは法的強制力のある義務ではなく、AIリテラシーの向上や適切な利用を促す努力義務と解釈できます。

なお、衆院内閣委員会では「国民の責務」を「国民の努力」に改める修正案も出されましたが、否決されています2

産業別AI活用シナリオと経済効果

製造業におけるAI活用シナリオ

製造業では、AI推進法の下で以下のようなAI活用が加速すると予想されます:

  1. 予測保全:機械の故障を事前に予測し、ダウンタイム削減

  2. 品質管理:画像認識AIによる不良品検出の高精度化

  3. 生産計画最適化:需要予測AIを用いた最適生産計画の立案

  4. サプライチェーン最適化:リアルタイムデータに基づく在庫・物流の最適化

これらの活用によって、製造業全体で年間約3兆円の経済効果が見込まれるという試算もあります。特に中小企業へのAI導入支援が強化されることで、製造業全体の生産性向上が期待されます。

医療・介護分野での展開

医療・介護分野では、以下のようなAI活用シナリオが考えられます:

  1. 診断支援:画像診断AIによる早期発見率の向上

  2. 医薬品開発:AIによる創薬プロセスの効率化・スピードアップ

  3. 介護支援:入浴・移動支援ロボットによる介護者の負担軽減

  4. 遠隔医療:AIを活用した遠隔診断・モニタリングの高度化

これらの取り組みにより、医師の診断精度向上や地方の医療アクセス改善、介護人材不足の緩和などが期待されます。

農林水産業でのAI活用

農林水産業分野では、以下のようなAI活用が進むと見込まれます:

  1. 精密農業:AIによる土壌分析や作物生育状況の最適管理

  2. 収穫ロボット:AIを搭載した自動収穫ロボットによる労働力不足対応

  3. 病害虫予測:AIによる病害虫発生予測と対策の最適化

  4. 漁場予測:海洋データ分析AIによる漁場予測の高精度化

これらの技術により、人手不足が深刻な農林水産業の生産性向上と持続可能性の確保が期待されます。

エネルギー分野での革新

エネルギー分野では、以下のようなAI活用シナリオが想定されます:

  1. 需給予測:AIによる電力需給の高精度予測

  2. VPP制御:分散型エネルギーリソースの最適制御

  3. メンテナンス最適化:発電設備の予測保全

  4. エネルギー消費最適化:ビル・工場のエネルギー使用の効率化

太陽光発電や蓄電池といった再生可能エネルギーシステムとAIを組み合わせることで、より効率的なエネルギーマネジメントが可能になります。AIによる電力需給予測と蓄電池の充放電制御を組み合わせることで、再エネの自家消費率向上やピークカットなどの効果が高まります。

こうしたシステムの導入効果を事前に評価するためには、正確なシミュレーションが不可欠です。

まとめ:AI推進法がもたらす未来

日本のAIエコシステムへの影響

AI推進法の成立は、日本のAIエコシステムに以下のような影響をもたらすと予想されます:

  1. 研究開発の加速:政府支援の強化による研究開発の活性化

  2. 産学連携の強化:大学・研究機関と企業の連携促進

  3. 人材育成の充実:AI教育・リスキリングの拡充

  4. ガバナンスの進化:透明性や公正性を重視したAI開発・利用文化の醸成

これらの変化により、日本のAI開発・活用環境が大きく改善し、グローバルな競争力向上につながることが期待されます。

企業に求められる対応の要点

AI推進法の施行を見据えて、企業に求められる対応の要点は以下の通りです:

  1. 適正なAI利用のための体制整備:倫理ポリシーの策定、リスク管理体制の構築

  2. 透明性と説明責任の確保:AIシステムの挙動や判断根拠の説明体制

  3. 人材育成と教育:AIリテラシーの向上とAI専門人材の育成

  4. 最新動向の把握:AI推進法に基づくガイドラインや国際的な規制動向の把握

  5. 自主的なガバナンス:業界団体等を通じた自主規制やベストプラクティスの共有

未来への展望

AI推進法の施行は、日本のAI政策における大きなマイルストーンです。今後、AI戦略本部の設置(2025年秋予定)AI基本計画の策定(2025年冬予定)を通じて、より具体的な施策が展開されていくでしょう78

特に注目すべきは、「フィジカルAI」(自動運転やロボット技術)AIを活用した地方創生介護・農林水産業・医療分野でのAI活用です7。これらの分野では、人手不足対策や生産性向上のためのAI活用が積極的に推進されることになります。

AI推進法は、イノベーション促進とリスク対応のバランスを取りながら、日本のAI社会を着実に前進させる重要な法的基盤となるでしょう。企業や個人はこの新たな枠組みを理解し、適切に対応していくことが求められます。

AI推進法に関するよくある質問(FAQ)

Q1: AI推進法はいつから施行されるのか?

A1: AI推進法は2025年5月28日に成立し、公布日以降、速やかに施行される予定です。特にAI戦略本部の設置は2025年秋までに、AI基本計画の策定は2025年冬までに行われる見込みです78

Q2: AIの定義はどのように規定されているのか?

A2: AI推進法では「人工知能関連技術」を「人工的な方法により人間の認知、推論及び判断に関わる知的能力を代替する機能を実現するために必要な技術並びに入力された情報を当該技術を利用して処理し、その結果を出力する機能を実現するための情報処理システムに関する技術」と定義しています5

Q3: 企業がAI推進法に違反した場合の罰則はあるのか?

A3: AI推進法自体には直接的な罰則規定はありません。不適切なAI利用が発覚した場合、調査・分析に基づく指導・助言が行われ、それでも改善しない場合は事業者名の公表などの対応がなされる可能性があります4

Q4: AI推進法と他の法律(個人情報保護法など)との関係は?

A4: AI推進法は基本法であり、AIに関する大枠の方針を示すものです。個人情報保護法や著作権法など、既存の法律はそれぞれの領域で引き続き適用されます。AI推進法に基づいて新たなガイドラインが策定される場合も、既存法との整合性を図りながら運用されることになります。

Q5: 中小企業はAI推進法にどう対応すべきか?

A5: 中小企業においても、AI技術の適正利用に努める責務はありますが、対応の基本は以下の通りです:

  1. AI倫理への理解:基本的なAI倫理原則の理解と社内共有

  2. 利用するAIの把握:自社が利用するAIシステムの特性と限界の理解

  3. 適切なベンダー選定:信頼できるAIベンダーやソリューションの選択

  4. 段階的な導入:リスクの低い領域から段階的にAI導入を進める

  5. 支援制度の活用:政府の支援制度や補助金の積極的活用

特に太陽光発電や蓄電池の導入を検討している中小企業にとっては、AI活用による経済効果を事前に把握することが重要です。エネがえるのような経済効果シミュレーションツールを活用することで、より精度の高い投資判断が可能になります。

出典

1 https://zelojapan.com/lawsquare/56624
2 https://news.yahoo.co.jp/articles/4af30b91724736e2dc91eac9c07713f8139bd1fe
3 https://chihuahua-tech.com/2025/05/18/%E3%80%8Cai%E6%8E%A8%E9%80%B2%E6%B3%95%E6%A1%88%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F-%E6%B3%95%E6%A1%88%E3%81%AE%E7%9B%AE%E7%9A%84%E3%80%81%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%80%81%E6%A7%8B%E6%88%90%E3%82%92/
4 https://business.ntt-west.co.jp/bizclip/articles/bcl00071-160.html
5 https://note.com/informationlaw1/n/nea72aa2e6b7e
6 https://www.noandt.com/wp-content/uploads/2025/03/technology_no59_1.pdf
7 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0267B0S5A600C2000000/
8 https://www.risktaisaku.com/articles/-/103055
9 https://monolith.law/corporate/ai-law-regulation
10 https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_senryaku/5kai/shisaku.pdf
11 https://note.com/tama583/n/ne62b186851f9
12 https://innovatopia.jp/ai/ai-news/55995/
13 https://www.ai-souken.com/article/what-is-ai-promotion-law
14 https://www.noandt.com/wp-content/uploads/2025/03/technology_no59.pdf
15 https://www.noandt.com/publications/publication20250306-1/
16 https://note.com/digisapo/n/n139c6f364e87
17 https://prospire-law.com/articles_internetit/25041001/
18 https://www.hirataku.com/uploads/65d41b304bf0992d09793b08.pdf
19 https://ops-today.com/topics-12586/
20 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA262EF0W5A220C2000000/

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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