経済効果の見える化による再生可能エネルギー普及加速戦略 | 東京都・川崎市・京都府など太陽光・蓄電池普及施策の鍵は経済効果の可視化

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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経済効果の見える化による再生可能エネルギー普及加速戦略 | 東京都・川崎市・京都府など太陽光・蓄電池普及施策の鍵は経済効果の可視化

10秒で読める要約

東京都をはじめとする自治体で新築住宅への太陽光パネル設置義務化が進む中、再エネ普及のボトルネックは「経済効果の不透明さ」にある。本記事では、自治体・住宅メーカー・工務店・金融機関・需要家の共創による普及加速モデルを提案。特に「エネがえる」シリーズによる経済効果の見える化が再エネ導入の意思決定を支援し、義務化政策の効果を最大化する可能性を分析。政策立案者・事業者・需要家それぞれへの実践的アプローチを示し、海外事例との比較から日本に適した普及戦略を提言する。

1. 再エネ義務化の政策背景と現状の課題

日本では2050年カーボンニュートラル実現に向け、建築物への再生可能エネルギー導入義務化が各地で進み始めています。東京都は2030年までに温室効果ガス排出量50%削減(「カーボンハーフ」)を目標とし、その達成策の一つとして2025年4月より新築戸建住宅への太陽光パネル設置義務化に踏み切りました。特に東京都ではCO2排出量の約70%が建物のエネルギー起源と言われ、新築住宅への太陽光発電設備義務化は家庭部門の排出削減に不可欠な施策です。

義務化の対象は延べ床面積2,000㎡未満の中小規模新築建築物で、大手住宅供給事業者(年間供給戸数が一定以上の約50社)に対し戸建住宅への設備設置を求める内容となっています。既に先行する自治体もあり、京都府は2016年に国内初の再エネ導入促進条例を全面施行、2022年の改正で延べ床300㎡以上の新築に再エネ設備を義務化する先進例を示しています。また群馬県でも「5つのゼロ宣言」条例(2023年施行)で太陽光義務化に踏み出し、神奈川県川崎市も東京都と同じ2025年4月から独自条例を施行予定です。

川崎市は産業都市ゆえに政令市最大のCO2排出量を抱え、脱炭素化の遅れは市域の環境・経済に大打撃となると危機感を強めています。こうした背景から川崎市も東京都制度に倣い、中小規模新築・特定建築事業者を対象に太陽光発電設備設置を義務付ける条例を制定し、さらに独自の補助金(スマートハウス補助金)による支援策を講じています。

再エネ義務化の現状課題

  • 対象の限定: 東京都や川崎市の制度はいずれも大手事業者による新築が中心で、中小の工務店施工や既存住宅には義務が及ばず、それらへの普及策が別途必要です。
  • 経済面の不安: 住宅購入者や市民の視点では「初期費用負担増への懸念」や「本当に元が取れるのか?」といった不安が根強く、行政担当者の82.4%が「再エネ施策に市民の理解が得られていない」と感じています。
  • 施工面の課題: 急速な需要増に対する人材育成や施工品質の確保(屋根への負荷やメンテナンス等)の課題があります。

こうしたボトルネックを解消し、義務化を効果的な普及加速につなげるには、経済メリットを見える化して関係者の不安や疑問を取り除くことが不可欠です。本稿では、自治体・住宅業界・工務店・需要家・金融機関が共創的な関係を築きながら普及のボトルネックを解消するための具体策と、その中核を担う経済効果見える化ソリューションの可能性について考察します。

住宅用太陽光・オール電化・蓄電池経済効果可視化ツール(エネがえるASP)

産業用自家消費型太陽光・産業用蓄電池経済効果可視化ツール(エネがえるBiz)

EV・V2H経済効果可視化ツール(エネがえるEV・V2H)

Web太陽光・蓄電池経済効果シミュレーター丸投げパッケージ(発電Dr with エネがえるAPI)

エネがえる 太陽光発電量を基準とした経済効果シミュレーション保証

再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 ~大手新電力、EV充電器メーカー、産業用太陽光・蓄電池メーカー、商社が続々導入~ | 国際航業株式会社 

「自治体スマエネ補助金データAPIサービス」を提供開始 ~約2,000件に及ぶ補助金情報活用のDXを推進し、開発工数削減とシステム連携を強化~ | 国際航業株式会社 

2. 経済効果の見える化がもたらすインパクト

再生可能エネルギー導入の費用対効果を「見える化」することは、普及加速のゲームチェンジャーになり得ます。太陽光発電や蓄電池、オール電化設備を導入することで得られる電気代削減や収支改善効果を具体的な数字で示すことで、従来不透明だったメリットを直感的に理解できるようになります。

例えば、「太陽光パネルを設置すれば電気代が年間○万円減り、○年で投資回収できる」「オール電化によりガス代がゼロになりトータルの光熱費が○%削減」といったシミュレーション結果を示されれば、一般の家庭や企業も再エネ設備導入の経済的利点を実感しやすくなります。その結果、導入意欲の向上につながり、義務化対象外の自主的な設置も促進される効果が期待できます。

【保存版】住宅用太陽光発電と蓄電池を購入した場合の経済効果シミュレーション 

この「シミュレーション結果の保証」とは、試算どおり発電しなかった場合に差分を補填する仕組みで、導入者のリスク不安を取り除くものです。例えばシミュレーション通りの発電量・経済効果を長期間保証するサービスがあれば、「本当に元が取れるか」という懸念が大きく緩和されます。

こうした経済メリットの見える化とリスク低減策により、市民や企業が再エネ導入に前向きになる効果は大きく、結果として地域全体での導入件数増加に直結します。さらにそのインパクトは個々の家計・企業のコスト削減にとどまらず、エネルギー支出の地域内循環や雇用創出といった地域経済への波及効果も期待できます。

例えば、家庭が太陽光自家消費で電気料金を節約すれば浮いた資金が他の消費に回り地域経済を潤しますし、設置工事やメンテナンス需要の増加は地元企業や人材の雇用機会を増やします。東京都は新制度により2030年度に年間14,000トンのCO2削減効果を見込んでいますが、同時に都民の光熱費負担軽減や関連市場の拡大といった経済波及にも注目すべきでしょう。

見える化された経済メリットは、単なる環境対策を超えて「お得になるからやる」という自発的な行動変容を引き起こし、結果的に政策目標の達成を大きく後押しするのです。このようなアプローチこそが、義務化政策の実効性を高め、普及率を大幅に向上させる鍵となります。

[独自レポートVol.25] CO2排出量可視化ツールを導入する企業のうち、排出量削減に取り組むのは3社に1社に留まる 〜約7割から、CO2排出量の可視化が「直接的な利益やコスト削減につながっていない」と悩みの声〜 | エネがえる総合ブログ – リサーチ | 商品・サービス | 国際航業株式会社 

[独自レポートVol.24]【太陽光・蓄電池の販売施工店の人事担当者に調査】90.7%が技術職の人材確保に「難しさ」を実感 その理由「必須資格を保有する応募者が少ない」が63.6%で最多 〜経済効果シミュレーションツールの導入により営業が戦力化することで、 技術職の「キャパシティ向上に繋がる」と85.3%が期待〜 | エネがえる総合ブログ – リサーチ | 商品・サービス | 国際航業株式会社 

3. ステークホルダー別の役割と連携の可能性

再エネ普及を加速するには、行政から個人まで多様なステークホルダーがそれぞれの立場で役割を果たし、横断的に連携することが重要です。以下に主要なステークホルダー別の戦略的視点と連携の可能性を整理します。

3.1 地方自治体(行政)の役割

自治体は規制と支援策の両面でカギを握ります。東京都や川崎市のように条例による義務化や目標設定で方向性を示すとともに、補助金や税優遇などのインセンティブ制度で初期費用負担を和らげ、民間の投資を誘導します。

加えて、自治体自らが情報プラットフォームを提供し、市民や事業者に対して再エネ導入メリットのデータやシミュレーションツールを公開することで理解促進を図れます。地域の実情に応じて金融機関や施工事業者との協働事業(例えばワンストップ相談窓口や共同説明会の開催)を企画し、地域全体での共創モデルを推進する役割も担えます。

自治体間連携や国の支援策活用によって、京都府のような先進事例や他地域の知見を共有し、自地域の施策にフィードバックすることも重要です。これにより、地域特性に応じた最適な普及策を構築できます。

先進事例:川崎市のスマートハウス補助金

川崎市は太陽光発電設備設置の義務化に加え、独自のスマートハウス補助金制度を設けることで、市民の初期費用負担を軽減し積極的な導入を促進しています。義務化と経済的インセンティブを組み合わせた典型的な好例です。

3.2 金融機関(地銀・信金等)の役割

金融界は資金面の支援を通じた普及促進に寄与できます。具体的には、住宅太陽光や蓄電池向けの低利ローン商品やリーススキームの提供、さらには電力会社・工務店と連携したPPAモデル(第三者所有モデル、いわゆる初期費用0円ソーラー)の展開です。

経済効果がデータで示されることで、金融機関も融資審査を行いやすくなり、将来の光熱費削減分を織り込んだローン計画(エネルギーセービングローン)の提案が可能になります。自治体が再エネ設備の導入者に利子補給を行うスキームを組めば、実質無利子融資による導入促進も期待できます。

さらに金融機関は地域のエネルギー関連事業者や自治体を繋ぐハブとなり、ESG投資や地元企業のSDGs達成支援の一環として太陽光・蓄電池事業への出資、人材育成支援など多面的な協力が可能です。例えば、地域内でのグリーンボンド発行や再エネファンドの組成など、新たな資金調達手法を開発・提供することも重要な役割となります。

提案:エネルギーセービングローン

将来の光熱費削減効果をローン審査に組み込み、通常より返済可能額を大きく設定できる融資商品。「エネがえる」などのシミュレーターで算出された経済効果を根拠に融資条件を優遇し、初期費用の障壁を下げることができます。

3.3 住宅メーカー・ハウスビルダーの役割

大手ハウスメーカーは新築時の太陽光パネル標準搭載を進め、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)仕様の普及をリードする役割があります。東京都条例の主要対象でもあるため、法順守はもちろん、自社の商品価値向上策として前向きに再エネ設備提案を行うことが重要です。

販売現場では、顧客に対する経済メリットの分かりやすい提示が営業成約率アップのポイントになります。各家庭の電気使用データや間取りに応じて最適な太陽光・蓄電池容量をシミュレーションし、「〇〇様邸の場合、設置で月々〇円お得になります」と定量的に示すことで、オプション提案から標準搭載へと意識転換を促せます。

大手メーカーは自社内に専門部隊を設けて高度な提案を行う余力がありますが、業界全体で見ると営業担当者の知識や提案力に差があるため、業界標準ツールの活用や研修プログラムの整備によって底上げを図り、どの担当者でも一定水準の提案ができる体制作りが望まれます。

エネルギーBPO/BPaaS(エネがえるBPO)とは?太陽光・蓄電池・再エネ関連の業務代行サービス | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

さらに、デジタルマーケティングを活用した顧客啓発や、バーチャルショールームでのシミュレーション体験提供など、新たな提案方法も積極的に取り入れるべきでしょう。これにより、再エネ導入のイメージを具体化し、顧客の意思決定を後押しできます。

デジタルツールを活用した経済メリット提案

住宅展示場のタブレットで簡単に操作できる経済効果シミュレーターを導入し、来場者がその場で自宅の電気代削減効果を確認できるようにする。月々のローン増加額と電気代削減額を比較表示し、実質負担の少なさを視覚的に訴求するアプローチが効果的です。

3.4 工務店・地域の施工業者の役割

地域密着の中小工務店や電気工事店は、戸建リフォームや小規模住宅への太陽光・蓄電池普及の現場を担います。大手の義務化対象外であっても、今後は自治体補助や顧客ニーズ拡大に伴い工務店経由の設置件数が増加すると見込まれます。

この層では人材やノウハウ不足が課題となりがちなため、外部リソースの活用や共同体制で補完する戦略が有効です。例えば、設計・見積り業務を専門サービスに外注したり、メーカー主催の研修に参加して知識を深めたりすることで対応力を強化できます。

地域の工事店同士や異業種との協業(例:電気店と工務店がチームを組んで住宅の再エネ化サービスを提供)も選択肢です。自治体がこれら事業者を支援するコーディネーター役となり、補助金情報の提供やマッチングを行えば、地域内での共創による受注拡大が図れるでしょう。

小規模事業者が抱える業務負荷(設計・申請・アフターサービス等)を低減し本来業務に集中できる環境を整えることが、結果的に地域全体の施工キャパシティ拡大と普及率向上につながります。これには後述する「エネがえるBPO」のようなアウトソーシングサービスの活用が有効です。

[独自レポートVol.21]住宅用太陽光・蓄電池の営業で自信を持つカギは「シミュレーション結果の保証にあり」 〜83.9%の営業担当者が、お客様から「経済効果シミュレーション結果の信憑性」を疑われた経験あり〜 | エネがえる総合ブログ – リサーチ | 商品・サービス | 国際航業株式会社  

地域共創モデル:施工業者ネットワーク

地域の工務店、電気工事店、リフォーム会社などが連携し、共同で太陽光・蓄電池の提案・施工チームを結成。専門性を持ち寄ることで、個々の事業者では対応できなかった総合提案が可能になり、質の高い施工サービスを提供できます。

3.5 需要家(企業・家庭のユーザー)の役割

再エネ設備の最終的な導入主体である一般家庭や事業者(需要家)は、「環境に良いから」だけではなく「経済的に得をするから導入する」という動機付けが重要です。家庭であれば光熱費削減や非常時の備え、企業であれば電力コスト削減やCSR効果がメリットとなります。

需要家側の役割は、自ら情報を収集し賢く設備を選択する「プロシューマー(生産消費者)」になることです。近年は自治体や民間企業が提供するシミュレーションWebサイトや、電力会社の電気利用データ提供サービスなどが充実し、自宅や自社ビルで太陽光を載せた場合の発電量や経済効果を誰でも試算できる環境が整いつつあります。

需要家はこうしたツールを活用して知見を深め、補助金や金融商品も活用しながら自律的に投資判断を下す主体となることが期待されます。ただ個々の判断だけでなく、地域の共同購入スキームやエネルギー協同組合に参加する動きも有効です。

複数世帯での共同発注によりコスト引下げを図ったり、近隣で融通し合うコミュニティ蓄電の仕組みを構築したりと、需要家同士の連携によるスケールメリットを追求することも、地域共創の一形態と言えるでしょう。「ご近所ソーラー」のような共同購入モデルは、欧米で既に成功事例が多数あります。

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