
この記事の結論
単価、自家消費率、設備費、資金コストが3指標をどう動かすかを感度で確認します。
データの扱い:本文中のIRR・コスト水準は、案件の規模・金利・契約・基準日で変わります。全国一律の期待値ではなく、前提付きの試算例として扱ってください。
結論:オンサイトPPAに全国共通の「狙うべきIRR」はありません。投資家が定めるハードルレートを使い、同じ案件について事業者IRR、事業NPV、回収期間、需要家便益、屋根所有者の賃料を別台帳で確認します。IRRが高くても投資額が小さい、回収後CFが弱い、契約終了費が落ちている案件は成立案件とは限りません。
目次
IRR・NPV・回収期間の役割を分ける
| 指標 | 答える問い | 強み | 単独使用の弱点 |
|---|---|---|---|
| IRR | このCFの内部収益率は何%か | 案件規模が違う投資効率を比較 | 複数解、投資規模、再投資仮定に注意 |
| NPV | 目標収益率で割り引いた価値はいくらか | 金額価値とハードルを直接評価 | 割引率の設定が必要 |
| 回収期間 | 累積CFがいつ初期投資を超えるか | 資金拘束を直感的に説明 | 回収後CFと現在価値を軽視 |
| DSCR | 返済原資が元利返済を何倍カバーするか | 借入返済の安全性 | エクイティ価値とは別 |
事業者CFと需要家便益を混ぜない
PPA事業者FCF[y]
= PPA販売収入
+ 余剰売電・環境価値
+ 補助金
− CAPEX
− O&M・保険・税
− 資金費用
− 交換・撤去・契約終了費
需要家便益[y]
= 「PPAなしの請求額」
− 「PPAありの請求額」
− その他の需要家負担
PPA事業者の売上と需要家の支払は同じ取引の両側です。社会全体の便益として二重計上しません。屋根所有者が需要家と別なら、賃料、屋根・防水リスク、契約終了時の原状回復を三つ目の台帳へ置きます。
収益性の三角形:単価・販売量・投資
PPA単価だけでIRRは決まりません。30分ごとの需要と発電が重なる販売量、CAPEX、O&M、金利、契約期間、劣化、停止、残存価値が同時に効きます。

- PPA単価:安いほど需要家便益が増え、高いほど事業者売上が増える
- 自家消費率:販売可能量を決め、最低購入量や余剰条件と連動
- CAPEX:屋根、防水、受変電、連系、工事制約を含む
- 資金コスト:借入比率、金利、返済、リザーブ、税を区別
IRRの基本式と注意点
0 = Σ(t=0..T)CF[t] ÷ (1+IRR)^t
NPV(r) = Σ(t=0..T)CF[t] ÷ (1+r)^t
CFの符号が複数回変わる案件ではIRRが複数になる場合があります。IRRだけでなく、投資委員会の割引率によるNPV、累積CF、最小現金、DSCRを確認します。プロジェクトIRRとエクイティIRRも分けます。
感度分析で見る4変数
| 変数 | 慎重ケース | 確認する証拠 |
|---|---|---|
| 自家消費率 | 需要減、休日増、停止 | 30分需要、操業カレンダー、将来計画 |
| CAPEX | 工事費・連系費増 | EPC見積、接続回答、屋根調査 |
| PPA単価 | 競争・価格改定条件 | 契約案、料金式、見積 |
| 資金・期間 | 金利上昇、短期契約、残価ゼロ | 融資条件、契約、設備寿命 |
一点の「期待IRRレンジ」を示すより、どの単価、自家消費率、CAPEXでハードルを下回るかを示す方が、価格交渉とリスク配分に使えます。
屋根賃料は目標IRR後の残余から逆算
全国相場を先に当てはめず、賃料前の全CFを目標IRRで割り引いたNPVを、許容賃料の現在価値とします。CAPEXは初期投資へ一度だけ含め、別項目で二重控除しません。
NPV(賃料前の全CF, 目標IRR)
= 許容賃料PV
賃料の下限は屋根所有者の機会費用と負担、上限は事業者の残余です。下限が上限を超える案件は、相場交渉ではなく、単価、設備容量、工事、期間、リスク分担を再設計します。
投資委員会へ出す成果物
- 確定・見積・仮定・未確認を分けた前提表
- 需要家、PPA事業者、屋根所有者の別CF
- プロジェクトIRR、エクイティIRR、NPV、回収、DSCR
- PPA単価×自家消費率×CAPEXの感度
- 契約終了、撤去、譲渡、屋根・防水、需要減のストレス
- 未解決事項、追加資料、責任者、期限
エネがえるで試算する
需要家・事業者・屋根所有者の三面比較と賃料残余法は、PPA経済効果シミュレーション実務ガイドで詳しく解説しています。30分需要と料金、設備案を使う一次試算はエネがえるBiz、契約別CF、資金、感度、屋根賃料まで含む案件は経済効果試算BPOで範囲を定義します。
FAQ
オンサイトPPAのIRRは何%なら合格ですか?
全国一律の合格値はありません。投資家の資金コスト、リスク、契約、案件規模に応じたハードルレートで判定します。
IRRが高い案件ほどよいですか?
NPV、投資額、回収後CF、DSCR、契約・屋根リスクも確認します。IRRだけで順位を決めません。
需要家便益と事業者IRRを一つのROIへできますか?
しません。支払の両側を混ぜるためです。各主体の台帳を分け、同時成立する単価領域を探します。
最終結論:PPAのIRRは相場を当てる数字ではなく、需要、単価、投資、契約リスクが同時に成立するかを検査する指標です。NPVと回収、需要家便益、賃料残余を並べて初めて交渉可能な案件になります。
一次出典
PPA・自己所有の契約構造と導入検討の前提は、環境省「自家消費型太陽光発電・蓄電池の導入ガイド」を確認してください。IRR・NPV・回収期間は全国一律の期待値ではなく、案件のキャッシュフローと資金条件から再計算します。



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